説明

端子接続構造及びコネクタ接続構造

【課題】 オス端子とメス端子との確実な接触を確保しつつ、メス端子との間でオス端子を容易に脱着させることが可能な端子接続構造を提供する。
【解決手段】 本端子接続構造におけるオス端子21の先端部21aは、棒状部分の先端に球状部分が固着された形状である。メス端子12の湾曲部12aは、薄板状の金属上で、オス端子21の挿入方向Aへと、凹状に湾曲して形成されている。メス端子12の穴部12bは、湾曲部12aの底となる位置に、オス端子21の先端部21aが挿通可能に形成される。先端部21aが穴部12bに挿入された状態で、先端部21aの球状部分が、湾曲部12aにおける穴部12bの周縁に接触しつつ係合するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オス端子とメス端子との端子接続構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られた端子接続構造の一つでは、レーザの照射によって、2つの接続端子が溶接されるようになっている(特許文献1参照)。即ち、2つの接続端子の先端付近が接触した状態で、その接触部分にレーザが照射され、これにより、2つの接続端子の先端が溶融し接合する。ここで、この端子接続構造は、エンジンコントロールユニット(ECU)内で、バスバー側から延びる接続端子と、電子部品側から延びる接続端子とを接続している。
【0003】
【特許文献1】特開2006−302543(図3、段落0038、0039等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の端子接続構造では、車両走行中における振動等が考慮され、レーザ溶接により、接続端子間の接触が確実になっていたものの、これら接続端子の接続を解き、ECUから、接続されていた電子部品を取り外すことは容易ではなかった。
【0005】
本発明の目的は、このような課題を解決することができる端子接続構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、オス端子とメス端子との端子接続構造であって、前記オス端子は、棒状部分の先端に塊状部分が固着された形状の先端部を有し、前記メス端子は、薄板上に、前記オス端子の挿入方向へ、凹状に湾曲して形成された湾曲部と、該湾曲部の底となる位置に、前記オス端子の前記先端部が挿通可能に形成されると共に、前記オス端子の該先端部が挿入された状態で、該先端部の前記塊状部分が、周縁に接触しつつ係合する穴部とを有することを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る端子接続構造において、前記オス端子の前記先端部の前記塊状部分が、前記メス端子の前記穴部に係合されている状態で、前記オス端子又は前記メス端子に所定の作用力が印加されても、前記湾曲部が弾性的に変形することにより、前記オス端子と前記メス端子との間の係合が維持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の端子接続構造では、オス端子の先端部の塊状部分と、メス端子の穴部の周縁とにより確実な接触が確保されている。これと共に、作業者は、その接続を解いたり、その後に、再接続を行ったりといった、メス端子に対するオス端子の脱着を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
(最良の実施の形態)
本発明の最良の実施の形態である、ECUコネクタとECU基板とにおける端子接続構造につき説明する。図1に模式的に示したように、このECU基板1には、バスバー11a〜cがインサート成形されており、CPU、抵抗素子、センサ、コンデンサなどの電子部品(電子素子)を実装可能である。
【0009】
また、ECU基板1上には、ECUコネクタ2が接続され、このECUコネクタ2を介して、他の電子部品等が実装されるようになっている。ここでは、ECUコネクタ2に、接続部22が設けられており、この接続部22内にタブ22aが収容されている。各タブ22aは、各オス端子21と接続されていて、ECUコネクタ2の接続部22と、その相手方となる他の電子部品の接続部とが嵌合されることにより、ECUコネクタ2のオス端子21と、電子部品の対応する端子とが、電気的に接続されるようになっている。
【0010】
これらのように、基板1上に実装される各電子部品(ECUコネクタ2を介するものと介しないもの)の各端子が、上記バスバー11a〜cにより接続され、これによって、エンジン制御等に関わる所定の電子回路が構成されている。
【0011】
本発明の特徴の一つは、ECUコネクタ2側に設けられたオス端子21と、ECU基板1側に設けられたメス端子12との接続構造にある。以下、この特徴について述べる。ECUコネクタ2のオス端子21の先端部21aは、図2(a)の斜視図、同図2(b)の断面図のように、棒状部分の先端に球状部分が固着された形状をしている。この先端部21aの形状は、例えば、銅合金、銅などの金属からなる線状の端子の先端を丸ピン加工することにより得られる。
【0012】
ECU基板1のメス端子12は、同図2(a)、(b)のように、湾曲部12aと、穴部12bとを有する。この湾曲部12aは、例えば、銅合金、銅、ステンレスなどの薄板状の金属が、プレス加工により、オス端子21の挿入方向A(図1)へとすり鉢状に湾曲されて形成される。穴部12bは、穴抜き加工により、湾曲部12aの底となる位置に形成される。この穴部12bの径は、オス端子21が先端部21aから挿通可能なサイズとなっている。
【0013】
作業者が、ECUコネクタ2のオス端子21の先端部21aを、メス端子12の穴部12bに差し込む(挿通する)際、湾曲部12a及び穴部12bは、その形状により、その差し込みを誘導するようになっている(図3(a))。即ち、湾曲部12aの最底部に、穴部12bが形成されていて、先端部21aの下端側が穴部12bに嵌まるようになっているため、作業者は、オス端子21の先端部21aの穴部12bに対する位置を確認することが可能である。
【0014】
オス端子21の先端部21aの下端側が、メス端子12の穴部12bに嵌まった状態で、ECUコネクタ2を下方へと押し込むことによって、先端部21aが穴部12bを瞬間的に弾性変形させ、先端部21aが穴部12bに差し込まれることになる(図3(b))。差し込み後のこの状態では、先端部21aの球状部分の上部が、穴部12bの周縁に係合しつつ接触しており、その接触部分Cが、オス端子21とメス端子12との接点となる。
【0015】
そして、オス端子21の先端部21aが、一旦、メス端子12の穴部12bに差し込まれると、ECU基板1及びECUコネクタ2の周辺が、車両の走行により振動したとしても、接触部分Cの近傍での先端部21aの上部と穴部12bの周縁との接触が保たれる。即ち、先端部21aの上下への僅かな動きに応じて、湾曲部12aが上下に弾性的に変形し、これにより、オス端子21がメス端子12から外れることが防がれるようになっている(図3(c))。
【0016】
つまり、このような湾曲部12aのバネ効果ともいうべき効果によって、車両走行中の振動等による、ECU基板1及びECUコネクタ2への衝撃が吸収され、安定した接続が維持されている。
【0017】
さらに、作業者が、必要に応じて、ECUコネクタ2をECU基板1から取り外す際、ECUコネクタ2を上方へと引き抜いていくと、下方に湾曲していた湾曲部12aが、上方へと反転する(図3(d))。この状態から、作業者が、ECUコネクタ2を強く引き抜くと、オス端子21は、メス端子12から完全に離脱する(図3(e))。
【0018】
上方へと反転した湾曲部12aによって、例えば、複数のECUコネクタ2のために、多数のメス端子12がECU基板1上に設けられていたとしても、作業者は、オス端子21が挿入されていたメス端子12の位置を容易に特定することができる。また、作業者が、過度の力で、ECUコネクタ2を引き抜いたとしても、その力の一部は、湾曲部12aを反転させるために使われることになり、メス端子12の穴部12bの周囲やオス端子21の先端部21aが破損するといったことが防がれる。
【0019】
以上のように、ECU基板1上のメス端子12と、ECUコネクタ2のオス端子21との接続では、オス端子21の先端部21aの球状部分と、メス端子12の穴部12bの周縁との係合によって、確実な接触が確保されている。従来のようなレーザ溶接、半田付け等が用いられていないため、作業者は、ECUコネクタ2を、ECU基板1との間で簡便に脱着することができる。例えば、作業者が、ECU基板1上でECUコネクタ2の取り付け位置を誤ったとしても、再度、取り付け直すといったことが容易である。
【0020】
メス端子12及びオス端子21のそれぞれの構造は、簡素であり、総合的に製造コストの低減が図られることになる。特に、メス端子12は、ECU基板1上で薄く形成されるから、ECU基板1への組み付け後のECUコネクタ2の高さを低く抑える(低背化する)ことが可能である。
【0021】
(他の実施の形態等)
以上、具体的な実施の形態により本発明を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することができる。
a. 例えば、上記実施の形態において、ECU基板1へのECUコネクタ2の固定は、オス端子21の先端部21aの上部を、メス端子12の穴部12bの周縁に係合させることのみにより行われるようになっている。先端部21aのサイズと、穴部12bのサイズとを調節すること等により、例えば、車両走行中の振動には耐えつつ、作業者による脱着を可能にするといった適度な引き抜き抵抗を持たせることが可能である。
【0022】
これに加えて、ECU基板1上へのECUコネクタ2の固着を補強することが可能である。例えば、(1)ECUコネクタをECU基板にネジ止めしたり、(2)ECUコネクタの一部となる係止部をECU基板に係止させたりして、そのような補強を行う。
【0023】
(1)ネジ止めを用いる場合、図4のように、ECU基板3には、メス端子12の並びの左右両端に2つのネジ孔31が設けられる。ECUコネクタ4には、左右両側面から側方へと突出した2つの突出部42が設けられており、突出部41のそれぞれには、ネジ孔31に対応する位置に挿通孔42が形成されている。作業者が、ネジ43を挿通孔42に挿通させて、ネジ孔31に螺合させるようになっている。このようなネジ止めが用いられる場合であっても、従来のようにレーザ溶接等が用いられる場合に比べて、簡便に、作業者は、ECUコネクタ4をECU基板3との間で脱着させることが可能である。もちろん、ECUコネクタの1又は3以上の側面から突出するように突出部を設けて、各突出部をネジでECU基板側に固着することもできる。
【0024】
(2)係止による場合、図5のように、ECU基板5に、メス端子12の並びの両端に2つの係止孔51が設けられ、ECUコネクタ6には、両側方で下方へと突出した2つの係止爪61が設けられる。爪部61aは、この係止爪61の先端にあり、その上面側が側方へと突出するように形成されている。作業者は、電子部品が嵌着された状態のコネクタ2を、爪部61aの下端側が、係止孔51の上方に接する位置から押し込んで、爪部61aの上面側をECU基板5の裏面に係止させる。このような係止による場合でも、作業者は、簡便に、ECUコネクタ6をECU基板5との間で脱着させることが可能である。
【0025】
b. オス端子21及びメス端子12の端子数は2本としたが、当然ながら、3本以上とすることが可能である。
【0026】
c. 湾曲部12aは、すり鉢状としたが、球面その他の曲面状に、凹状に形成されるものとしてよい。また、三角錐面、四角錘面等といった角錐面状に形成することも可能である。この場合、その頭頂点に相当する位置に設けられる穴部は、角錐面の端部に合わせた多角形状に形成される。また、オス端子21の先端部21aは、球状であるものとしたが、オス端子の先端には、楕円球状、多角錐状等の他の塊状部分を形成してもよい。
【0027】
d. ECU基板1周辺では、主に、上下方向への振動が生じ、湾曲部12aに、そのような振動を吸収させることを想定した。湾曲部12aの形状等を調整することによって、横方向(図3に向かい左右方向)への振動を吸収させることも可能である。
【0028】
e. ECUコネクタ2の接続部22には、オス端子となるタブ22aが収容されるものとした。当然ながら、その接続部には、メス端子が形成されていてもよい。さらに、電子部品のオス端子を、ECUコネクタ2のオス端子21の先端部21aと同様に、球状等に形成し、この電子部品のオス端子を、ECU基板1上のメス端子12に直接取り付けるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ECUコネクタとECU基板との端子接続構造を模式的に示す斜視図
【図2】ECUコネクタのオス端子と、ECU基板のメス端子とを示す拡大図
【図3】メス端子の湾曲部を説明するための断面図
【図4】ECUコネクタとECU基板との固着を補強する第1の補強手段を示す図
【図5】ECUコネクタとECU基板との固着を補強する第2の補強手段を示す図
【符号の説明】
【0030】
1,3,5…………ECU基板
2,4,6…………ECUコネクタ
11a,b,c……バスバー
12…………………メス端子
12a………………メス端子の湾曲部
12b………………メス端子の穴部
21…………………オス端子
21a………………オス端子の先端部
22…………………ECUコネクタの接続部
22a………………接続部に収容されたタブ
31…………………ネジ孔
41…………………突出部(第1の補強手段の一部)
42…………………挿通孔
43…………………ネジ(第1の補強手段の一部)
51…………………係止孔
61…………………係止爪(第2の補強手段の一部)
61a………………爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オス端子とメス端子との端子接続構造であって、
前記オス端子は、
棒状部分の先端に塊状部分が固着された形状の先端部を有し、
前記メス端子は、
薄板上に、前記オス端子の挿入方向へ、凹状に湾曲して形成された湾曲部と、
該湾曲部の底となる位置に、前記オス端子の前記先端部が挿通可能に形成されると共に、前記オス端子の該先端部が挿入された状態で、該先端部の前記塊状部分が、周縁に接触しつつ係合する穴部とを有することを特徴とする端子接続構造。
【請求項2】
前記オス端子の前記先端部の前記塊状部分が、前記メス端子の前記穴部に係合されている状態において、前記オス端子又は前記メス端子に所定の作用力が印加されても、前記湾曲部が弾性的に変形することにより、前記オス端子と前記メス端子との間の係合が維持されることを特徴とする請求項1に記載の端子接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−129565(P2009−129565A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300325(P2007−300325)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)