説明

端子接続装置

【課題】 ボルト、ナットを外すことなく接続、切り離しが可能で、しかも、接続を良好、堅固にする。
【解決手段】 ナット5のネジ孔周縁に突起部5bを設け、第1の接続端子2に、ボルト4を挿入する第1の貫通孔2bを形成し、第2の接続端子3に、大孔部31aと小孔部31bと連結部31cとを有する第2の貫通孔31を形成する。大孔部31aは、ナット5が挿入可能な大きさに設定し、連結部31cは、ボルト4のネジ部4aが挿入可能でナット5の突起部5bが挿入不可能な大きさに設定し、小孔部31bは、ナット5の突起部5bが挿入可能でナット5が挿入不可能な大きさに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力線などの端部同士を接続する端子接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、2本の電力線を接続する場合、それぞれの電力線の端部に接続端子を圧着し、接続端子と接続端子とを重ね合わせた状態で、接続端子に形成された貫通孔にボルトを挿入し、ボルトにナットを締め付けていた。しかし、電力線の接続、切り離しを行う際には、ボルト、ナットを接続端子から完全に取り外さなければならず、作業性が悪いばかりでなく、ボルト、ナットを落下させるおそれがある。
【0003】
このため、一方の接続端子に、ボルト、ナットを取り付けた状態で、電力線の接続、切り離しが可能な導電接続装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この導電接続装置は、一方の接続端子には、ボルトを挿入可能な円形の貫通孔が形成され、他方の接続端子には、ボルトを側面から出し入れ可能な切欠き状の開口が形成されている。そして、一方の接続端子の貫通孔にボルトを挿入し、ナットを取り付けた状態で、他方の接続端子の開口に対してボルトを出し入れすることで、接続端子の接続、切り離しを可能にする、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−101518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の導電接続装置では、他方の接続端子に対して、ボルトを切欠き状の開口から(一方向から)出し入れするため、例えば、4つのボルトを縦横に配設する場合には、適用することができない。また、他方の接続端子には切欠き状の開口が形成されているため、一方の接続端子との接触面積およびボルト、ナットによる締結面積が小さく、接続強度が低くなるという問題がある。さらに、ボルト、ナットが緩んだ場合、開口からボルトが抜けてしまうおそれがある。
【0006】
そこでこの発明は、ボルト、ナットを外すことなく接続、切り離しが可能で、しかも、接続が良好、堅固な端子接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、第1の接続端子と、第2の接続端子と、ボルトと、前記ボルトに螺合するナットと、を備えた端子接続装置であって、前記ナットのネジ孔周縁に、前記ボルト側に突出する突起部が設けられ、前記第1の接続端子に、前記ボルトが挿入される第1の貫通孔が形成され、前記第2の接続端子に、大孔部と小孔部と前記大孔部と小孔部とを結ぶ連結部とを有する第2の貫通孔が形成され、前記第2の貫通孔の大孔部は、前記ナットが挿入可能な大きさに設定され、前記連結部は、前記ボルトが挿入可能で前記ナットの突起部が挿入不可能な大きさに設定され、前記小孔部は、前記ナットの突起部が挿入可能で前記ナットが挿入不可能な大きさに設定されている、ことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、第1の接続端子の第1の貫通孔にボルトを挿入し、このボルトにナットを取り付ける。この状態で、第2の接続端子の第2の貫通孔の大孔部にナットを挿入し、ボルトを連結部に挿入した状態で、ボルト、ナットを小孔部まで位置させる。そして、ナットを締め付けると、ナットの突起部が小孔部に挿入し、ボルト、ナットによって第1の接続端子と第2の接続端子とが締結(接続)される。この締結状態では、ナットの突起部が第2の貫通孔の小孔部に挿入され、しかも連結部にはナットの突起部が挿入不可能なため、第2の接続端子がナットに対して移動する(ずれる)ことがない。
【0009】
一方、締結を解除するには、ナットを緩めて突起部を小孔部から外し、ボルトを連結部に挿入した状態で、ボルト、ナットを大孔部まで位置させる。そして、大孔部にナットを通すことで、第2の接続端子が第1の接続端子から切り離される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の端子接続装置において、前記第1の接続端子の前記第2の接続端子側に嵌合部が設けられ、前記第2の接続端子の前記第1の接続端子側には被嵌合部が設けられ、前記第1の接続端子と第2の接続端子とを重ね合わせた際に、前記嵌合部と被嵌合部とが嵌合するように、前記嵌合部と被嵌合部とが設けられている、ことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、第1の接続端子と第2の接続端子とを重ね合わせて、ボルト、ナットによって締結すると、第1の接続端子の嵌合部と第2の接続端子の被嵌合部とが嵌合する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、第1の接続端子と第2の接続端子とを締結した状態では、第2の接続端子がボルト、ナットに対して、つまり第1の接続端子に対してずれることがない。また、第1の貫通孔および第2の貫通孔が切欠き状ではないため、接触面積および締結面積が大きく、また、ボルト、ナットが緩んだとしても、ボルトが抜けてしまうことがない。これらの結果、両接続端子の接続が良好、堅固となる。また、締結を解除する場合でも、ボルト、ナットを第1の接続端子から外す必要がない。さらに、第1の貫通孔および第2の貫通孔に対して、ボルト、ナットを挿入するため(一方向から出し入れするものではないため)、4つのボルトを縦横に配設する場合などにも適用することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、第1の接続端子と第2の接続端子とを締結した際に、嵌合部と被嵌合部とが嵌合するため、第1の接続端子と第2の接続端子とがずれることがなく、両接続端子の接続がより良好、堅固となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態に係る端子接続装置を示す斜視図である。
【図2】図1の端子接続装置のナットを示す斜視図である。
【図3】図1の端子接続装置において、ナットを大孔部に挿入した状態を示す正面図(a)と平面図(b)である。
【図4】図1の端子接続装置において、ボルトを連結部に挿入した状態を示す正面図(a)と平面図(b)である。
【図5】図1の端子接続装置において、ナットの突起部を小孔部に挿入した状態を示す正面図(a)と平面図(b)である。
【図6】図1の端子接続装置の嵌合部と被嵌合部とを示す斜視図である。
【図7】図1の端子接続装置の別の嵌合部と被嵌合部とを示す正面図(a)と平面図(b)と側面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0016】
図1は、この発明の実施の形態に係る端子接続装置1を示す斜視図である。この端子接続装置1は、電力線などを接続するための装置であり、主として、1対の第1の接続端子2と第2の接続端子3と、4対のボルト4とナット5、を備えている。また、ナット5は、ボルト4に螺合し、図2に示すように、ネジ孔5aの周縁には、ボルト側(後述する第2の接続端子3側)に突出する円環状の突起部5bが形成されている。この突起部5bの外径は、後述するズレを防止できるだけの強度があり、かつ、ナット5の締結面積(接触面積)ができるだけ大きくなるように、設定されている。
【0017】
第1の接続端子2と第2の接続端子3は、ともに同形状の平板状で、電力線(図示せず)を挿入して圧着する圧着部2a、3aが形成されている。また、第1の接続端子2には、ボルト4のネジ部(軸部)を挿入する第1の貫通孔2bが、縦横に(四方に)4つ形成されている。この第1の貫通孔2bは、円形で、その径がボルト4のネジ部よりもやや大きく設定されている。
【0018】
第2の接続端子3には第2の貫通孔31が、縦横に4つ形成されている。この第2の貫通孔31は、図3〜図5に示すような略ひょうたん形で、大孔部31aと小孔部31bと大孔部31aと小孔部31bとを結ぶ連結部31cとを有し、それぞれの形状と大きさは、次のように設定されている。すなわち、大孔部31aは略円形で、図3に示すように、ナット5を挿入できる大きさに設定されている。小孔部31bも略円形で、図5に示すように、ナット5の突起部5bのみを挿入でき、ナット5全体は挿入できないように、大きさが設定されている。また、連結部31cは、一定の幅を持った直線状で、図4に示すように、ボルト4のネジ部4aを挿入でき、ナット5の突起部5bを挿入できないように、大きさ(幅)が設定されている。そして、第1の接続端子2と第2の接続端子3とを重ね合わせた際に、すべての小孔部31bの中心が第1の貫通孔2bの中心と一致するように、4つの第2の接続端子3が形成されている。
【0019】
また、図6に示すように、第1の接続端子2の第2の接続端子3側の面の両端には、凹部(嵌合部)21が形成されている。この凹部21は、略逆三角形で、第1の接続端子2の板厚方向に窪んで形成されている。一方、第2の接続端子3の第1の接続端子2側の面の両端には、凸部(被嵌合部)32が形成されている。この凸部32は、凹部21と同じ略逆三角形で、第2の接続端子3の板面から突出して形成されている。これらの凹部21と凸部32は、第1の接続端子2と第2の接続端子3とを重ね合わせた際に、凹部21と凸部32とが嵌合するように、位置と形状が設定されている。
【0020】
ここで、凹部21と凸部32とを略逆三角形にしているのは、嵌合した状態で、第1の接続端子2と第2の接続端子3とが、縦方向(図中X方向)や横方向(図中Y方向)にずれないようにするためである。従って、略逆三角形に限らず、例えば、図7に示すように、凹部21と凸部32とを略三角形に形成してもよい。なお、図6、7においては、凹部21と凸部32の形状をわかりやすくするために、第1の貫通孔2bおよび第2の貫通孔31を図示省略している。
【0021】
次に、このような構成の端子接続装置1の作用および、この端子接続装置1による電力線の接続方法などについて説明する。
【0022】
電力線同士を接続する場合、まず、一方の電力線の端部を第1の接続端子2の圧着部2aに挿入して圧着し、他方の電力線の端部を第2の接続端子3の圧着部3aに挿入して圧着する。次に、ボルト4とナット5を第1の接続端子2に取り付ける(仮止めする)。すなわち、図1に示すように、ボルト4を第1の貫通孔2bに挿入し、ボルト4のネジ部4aにナット5を螺合させ、ネジ部4aの先端部にナット5を位置させる。
【0023】
続いて、図3に示すように、第2の接続端子3の第2の貫通孔31の大孔部31aにナット5を挿入し、図4に示すように、ボルト4のネジ部4aを連結部31cに位置させながら、ボルト4、ナット5を小孔部31bまで位置(移動)させる。この位置で第1の接続端子2と第2の接続端子3とを重ね合わせて、ナット5を締め付けると、図5に示すように、ナット5の突起部5bが小孔部31bに挿入される。このような締め付けをすべてのボルト4、ナット5に対して行うことで、第1の接続端子2と第2の接続端子3とが締結(接続)される。ここで、4対のボルト4、ナット5を所定置に位置させる場合に、平板などで4つのボルト4の頭部に持ち上げ、図1に示すように、ネジ部4aを第1の接続端子2から突出させると、作業がしやすい。
【0024】
上記の締結状態では、ナット5の突起部5bが第2の貫通孔31の小孔部31bに挿入され、しかも連結部31c側には突起部5bが通らないため、外力が加わったとしても、第2の接続端子3が第1の接続端子2(ナット5)に対してずれることがない。さらに、この締結状態では、第1の接続端子2の凹部21と第2の接続端子3の凸部32とが嵌合し、第1の接続端子2と第2の接続端子3とのズレが、より抑制、防止される。
【0025】
一方、電力線同士の接続を解除するには、ナット5を緩めて突起部5bを小孔部31bから外し、ボルト4のネジ部4aを連結部31cに位置させながら、ボルト4、ナット5を大孔部31aまで位置(移動)させる。そして、大孔部31aにナット5を通してナット5を第2の貫通孔31から外すことで、第1の接続端子2と第2の接続端子3とが切り離される。この切り離し状態では、ボルト4とナット5とが、第1の接続端子2に取り付けられたままの状態となっている。
【0026】
以上のように、この端子接続装置1および接続方法によれば、締結および切り離しの際に、ボルト4、ナット5を第1の接続端子2から外す必要がないため、作業性が良好であるとともに、ボルト4、ナット5を落下させることもない。また、第1の接続端子2と第2の接続端子3とを締結した状態では、ナット5の突起部5bが小孔部31bに挿入、固定され、しかも、凹部21と凸部32とが嵌合しているため、第1の接続端子2と第2の接続端子3とがずれることがない。しかも、第1の貫通孔2bおよび第2の貫通孔31が切欠き状ではないため、接触面積および締結面積が大きく、また、ボルト4、ナット5が緩んだとしても、ボルト5が抜けてしまうことがない。これらの結果、両接続端子2、3の締結が良好、堅固となる。また、第1の貫通孔2bおよび第2の貫通孔31に対して、ボルト4、ナット5を挿入するため(一方向から出し入れするものではないため)、上記のように4対のボルト4、ナット5を縦横に配設することができ、締結強度を高めることが可能となる。
【0027】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、第2の貫通孔31を略ひょうたん形としているが、大孔部31a、小孔部31bおよび連結部31cの大きさが、上記のような関係になっていれば、その他の形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明は、電力線同士の接続に限らず、各種ワイヤの接続などにも利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 端子接続装置
2 第1の接続端子
2b 第1の貫通孔
21 凹部(嵌合部)
3 第2の接続端子
31 第2の貫通孔
31a 大孔部
31b 小孔部
31c 連結部
32 凸部(被嵌合部)
4 ボルト
5 ナット
5b 突起部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接続端子と、第2の接続端子と、ボルトと、前記ボルトに螺合するナットと、を備えた端子接続装置であって、
前記ナットのネジ孔周縁に、前記ボルト側に突出する突起部が設けられ、
前記第1の接続端子に、前記ボルトが挿入される第1の貫通孔が形成され、
前記第2の接続端子に、大孔部と小孔部と前記大孔部と小孔部とを結ぶ連結部とを有する第2の貫通孔が形成され、
前記第2の貫通孔の大孔部は、前記ナットが挿入可能な大きさに設定され、前記連結部は、前記ボルトが挿入可能で前記ナットの突起部が挿入不可能な大きさに設定され、前記小孔部は、前記ナットの突起部が挿入可能で前記ナットが挿入不可能な大きさに設定されている、ことを特徴とする端子接続装置。
【請求項2】
前記第1の接続端子の前記第2の接続端子側に嵌合部が設けられ、前記第2の接続端子の前記第1の接続端子側には被嵌合部が設けられ、
前記第1の接続端子と第2の接続端子とを重ね合わせた際に、前記嵌合部と被嵌合部とが嵌合するように、前記嵌合部と被嵌合部とが設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の端子接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−287354(P2010−287354A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138749(P2009−138749)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】