説明

端子群の先端位置矯正方法および先端位置矯正装置

【課題】絶縁基台上に列をなして複数本立設した柱状の金属製端子群の各端子の先端位置を、基準位置に精度よく矯正する。
【解決手段】列方向をX方向、X方向と直角をなす方向をY方向としたとき、各端子の先端部分を、それぞれの基準位置を挟んでY方向の一方の側から他方の側へ押し遣り、次いで他方の側から一方の側へ押し戻す1往復移動操作を単位として、当該1往復移動操作を複数回行ない、少なくとも初回は各端子の弾性限界を越える移動幅で1往復移動操作を実施する。2回目以降は、前記1往復移動操作の移動幅をその前回の移動幅より小さくする1往復移動操作を複数回実施する。前述したY方向の1往復移動操作の工程と同様の工程をX方向についても実施する工程を経る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子群の先端位置矯正方法に関する。また、前記方法の実施に使用する先端位置矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本の端子が突出して設けられている電気・電子部品は、その製造工程や搬送・取扱い中に端子が曲がることが多い。こうなると、端子を相手部品・部材と接続するときに、当該相手部品・部材との間に位置ずれを生じる。その修正には工数が掛かり、特に前記接続の工程を自動化するときに障害となる。電気・電子部品から突出する複数本の端子の曲がりを、相手部品・部材と良好に接続できる所定の基準位置に矯正する方法として、特許文献1に示す技術が開示されている。
この技術は、電気・電子部品から外方へ突出する複数本の端子の先端を、矯正用治具を用いて平面のX方向とY方向のいずれか一方向へ、端子の弾性限界を越えて一往復運動させて曲げ伸ばしする。そして、全ての端子が弾性限界を越えて曲がりその位置が揃ったところで、前記端子が弾性により基準位置に戻る分を見込んで、前記矯正用治具を前記往復運動の往路方向へ移動させて端子を再度曲げることにより、端子群の先端位置を基準位置に矯正するというものである。
上記の矯正用治具は、端子の数と同数の菱形の穴を、端子が正規の基準位置に整列しているときの端子間間隔と菱形の穴の中心間隔が一致する間隔で設けてある。そして、この菱形の穴に端子の先端を挿通し矯正用治具を移動させることにより、矯正操作を実施している。
【0003】
上記の技術により端子先端部分の位置が矯正される状況を、図1、図4を用いて説明する。
先ず、図1(A)に示すように、端子群の端子11-1〜16-1をY方向への位置ずれ矯正のための基準位置(各端子の基準位置は、X方向の同一線上にある)を挟んでY方向の一方の側から他方の側へ各端子の弾性限界を越えて押し遣る。ここで、押し遣る力を解放すると、スプリングバックにより、端子11-2〜16-2の位置にそれぞれ矯正される。
次に、図1(B)に示すように、端子11-2〜16-2を上記他方の側から一方の側へ、端子の弾性限界を越えて押し戻す。ここで、押し戻す力を解放すると、スプリングバックにより、端子11-3〜16-3の位置にそれぞれ矯正される。
【0004】
そして、図4(A)に示すように、端子11-3〜16-3が弾性により基準位置(端子11−4’〜16−4’)に戻ることを見込んだ位置(移動幅がa4となる位置)まで端子を再度曲げることにより、端子群の先端部分を矯正する。しかし、実際には、図4(B)に示すように、スプリングバックや、弾性により戻る量にはばらつきがあり、端子11−4’〜16−4’は全てが同じ位置に揃うとは限らず、ばらつきを生じることが多い。特に、端子の長さが長い場合、端子の断面積が小さい場合、先端位置精度が厳しい場合などでは、端子群の一部が公差範囲内(公差上限と公差下限の範囲内)から外れる心配がある(図4(B)では、14−4’、15−4’、16−4’が公差範囲内から外れている)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−106798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術では、端子群の先端部分に、端子の弾性限界を越えて一往復運動の曲げ動作を加え、その後に、弾性による戻り量を見込んで前記往復運動の往路方向へ1回の曲げ操作を追加している。しかし、前記追加の曲げ操作では、スプリングバックや、弾性により戻る量にはばらつきがあるため、端子群の全ての端子が同じ位置に揃うとは限らず、ばらつきが生じやすい。特に、端子の長さが長い場合、端子の断面積が小さい場合、先端位置精度の要求が厳しい場合は、端子群の一部の端子が基準位置の公差範囲内から外れる心配がある。また、全ての端子が公差範囲内に矯正される場合でも、基準位置からのばらつきが大きい。
【0007】
また、上記従来技術では、板状体に菱形の穴を形成した矯正用治具が開示されており、前記菱形の穴に端子の先端を挿通して端子の曲げ操作を実施している。端子間の間隔が狭い場合には菱形の穴を小さくせざるを得ず、また、矯正しようとする端子の初期状態の曲がりが大きい場合などでは、矯正操作の開始に当り、端子の先端を菱形の穴に挿通することが難しくなる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、絶縁基台上に列をなして複数本立設した柱状の金属製端子群の各端子の先端位置を、前記列方向をX方向、X方向と直角をなす方向をY方向として、XY方向所定の基準位置へ向かって矯正するに当り、端子群の各端子が基準位置に精度よく矯正される端子群の先端位置矯正方法を提供することである。また、前記方法に使用することができる先端位置矯正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る方法は、絶縁基台上に列をなして複数本立設した柱状の金属製端子群の各端子の先端位置を、前記列方向をX方向、X方向と直角をなす方向をY方向として、XY方向所定の基準位置へ向かって矯正する端子群の先端位置矯正方法であって、下記の工程(a)(b)を経ることを特徴とする(請求項1)。
(a)前記各端子の先端部分を、それぞれの基準位置を挟んでY方向の一方の側から他方の側へ押し遣り、次いで前記Y方向の他方の側から一方の側へ押し戻す1往復移動操作を単位として、当該1往復移動操作を複数回行ない、少なくとも初回は各端子の弾性限界を越える移動幅で1往復移動操作を実施し、2回目以降は、前記1往復移動操作の移動幅をその前回の移動幅より小さくする1往復移動操作を複数回実施する工程、
(b)前記各端子の先端部分を、それぞれの基準位置を挟んでX方向の一方の側から他方の側へ押し遣り、次いで前記X方向の他方の側から一方の側へ押し戻す1往復移動操作を単位として、当該1往復移動操作を複数回行ない、少なくとも初回は各端子の弾性限界を越える移動幅で1往復移動操作を実施し、2回目以降は、前記1往復移動操作の移動幅をその前回の移動幅より小さくする1往復移動操作を複数回実施する工程。
【0010】
ここで、絶縁基台上に立設した端子群が1列である場合には、下記の操作(c)(d)により行なうことが好ましい(請求項2)。
(c)Y方向への1往復移動操作は、端子群の列長さに対応する長さの矯正バーを各端子の先端部分に適用して往復移動する矯正バーに当接した端子に対して行ない、
(d)X方向への1往復移動操作は、端子の立設間隔に対応する間隙の櫛歯形状矯正治具を端子群の先端部分に差し込み適用して往復移動する櫛歯形状矯正治具に当接した端子に対して行なう。そして、前記差し込み適用は、先ず、櫛歯形状矯正治具を端子群に絶縁基台側で差し込んで端子の先端へすくい上げるように行なう。
【0011】
また、本発明に係る装置は、前記方法の実施に使用する先端位置矯正装置であって、端子群の列長さに対応する長さとY方向への往復移動機能とを有し各端子の先端部分に適用される矯正バーと、端子の立設間隔に対応する間隙の櫛歯形状とX方向への往復移動機能とを有し端子群に差し込んで各端子の先端部分に適用される櫛歯形状矯正治具を備える。
そして、前記矯正バーは、それぞれの端子先端部分の基準位置を挟んでY方向の一方の側から他方の側へ、次いで前記Y方向の他方の側から一方の側への1往復移動操作を単位として、当該1往復移動操作を複数回繰り返し、前記1往復移動操作の移動幅を、1往復移動操作の回を重ねるごとに減じるように制御される。
また、前記櫛歯形状矯正治具は、端子群に絶縁基台側で差し込んで端子の先端へ移動するように制御されると共に、それぞれの端子先端部分の基準位置を挟んでX方向の一方の側から他方の側へ、次いで前記X方向の他方の側から一方の側への1往復移動操作を単位として、当該1往復移動操作を複数回繰り返し、前記1往復移動操作の移動幅を、1往復移動操作の回を重ねるごとに減じるように制御されることを特徴とする(請求項3)。
【0012】
前記矯正バーは、所定間隔を以って保持された第1バーと第2バーの一対からなりその内側に端子群の列が位置するように構成され、第1バーが1往復移動操作の往路で機能し、第2バーが復路で機能することが好ましい(請求項4)。
さらに、前記櫛歯形状矯正治具は、矯正バーに併設されていることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る方法によれば、1往復移動操作の移動幅をその前回の移動幅より小さくし、基準位置へ向かって収束するように矯正するので、端子群全体の基準位置からのばらつきが小さくなる先端位置の矯正をできる。少なくとも初回は各端子の弾性限界を越える移動幅で1往復移動操作を実施すること、2回目以降は1往復移動操作の移動幅をその前回の移動幅より小さくする1往復移動操作を複数回実施することが、回を重ねるごとに、各端子の先端部分をそれぞれの基準位置に向かって収束させるように作用している。
【0014】
また、本発明に係る装置は、Y方向には矯正バーで、またX方向には櫛歯形状矯正治具で、それぞれ一括して矯正することができる。さらに、櫛歯形状矯正治具を端子群に絶縁基台側で差し込んだ後、櫛歯形状矯正治具を端子の先端へ移動することによって、端子の立設間隔が狭い場合や矯正しようとする端子の初期状態の曲がりが大きい場合などにおいても、矯正用治具を端子群の先端位置に容易にセットすることができる。端子の先端部分に曲がりが発生していても、櫛歯形状矯正治具を差し込む端子群の絶縁基台側では、前記先端部分の曲がりの影響を受けることが少なく、当初の基準位置をよく保持しているからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る端子群の先端位置矯正方法を、図面を参照しながら説明する。図1および図4は、端子群の先端を上方より観察したときの説明図である。絶縁基台上に立設した端子群の列方向をX方向、X方向と直角をなす方向をY方向として、以下説明する。
【0016】
本発明に係る端子群の先端位置矯正方法は、各端子の先端部分を、それぞれの基準位置を挟んでY方向の一方の側から他方の側へ押し遣り、次いで前記Y方向の他方の側から一方の側へ押し戻す1往復移動操作を単位として、当該1往復移動操作を複数回行なう。そして、少なくとも初回は各端子の弾性限界を越える移動幅で1往復移動操作を実施する。
【0017】
すなわち、先ず、図1(A)に示すように、端子群の端子11-1〜16-1をY方向への位置ずれ矯正のための基準位置(各端子の基準位置は、X方向の同一線上にある)を挟んでY方向の一方の側から他方の側へ各端子の弾性限界を越えて押し遣る。この操作は、例えば、端子群の列長さ(X方向)に対応する長さの矯正バー2を各端子の先端部分に適用して、Y方向に移動する矯正バー2に当接した端子に対して行なう。このとき、矯正バー2の基準位置からの移動幅をa1とする。ここで、矯正バー2を後退させると、スプリングバックにより、端子11-2〜16-2の位置にそれぞれ矯正される。このように、端子群の列長さに対応する長さの矯正バー2を使用すると、基準位置から大きく外れた状態にある端子を含め、端子群全体を一括で矯正作業の対象とすることができる。
矯正バー2の採用は、絶縁基台上に立設した端子群が1列である場合を前提としているが、端子群が複数列あっても、特定の端子群の列に対するY方向への1往復移動操作に、隣接する列の端子群が障害とならなければ、これも端子群が1列である場合として考える。
次に、図1(B)に示すように、矯正バー2を使用し、端子11-2〜16-2を上記他方の側から一方の側へ、端子の弾性限界を越えて押し戻す。このとき、矯正バー2の基準位置からの移動幅をa1’とする。ここで、矯正バー2を後退させると、スプリングバックにより、端子11-3〜16-3の位置にそれぞれ矯正される。移動幅a1、a1’は、各端子の弾性限界を越える移動幅であり、移動幅a1’は、移動幅a1と同等か小さくすることが好ましい。
上記のように1往復移動操作を実施し、少なくとも初回は、端子の弾性限界を越える移動幅a1、a1’の往復移動操作とする。
【0018】
2回目以降の1往復移動操作は、1往復移動操作の移動幅をその前回の移動幅より小さくし、これを複数回実施する。すなわち、図2(A)に示すように、矯正バー(図示せず)を使用し、端子群の端子11-3〜16-3をX方向の基準位置を挟んでY方向の一方の側から他方の側へ押し遣る。このとき、矯正バーの基準位置からの移動幅をa2とする。ここで、矯正バーを後退させると、スプリングバックにより、端子11-4〜16-4の位置にそれぞれ矯正される。移動幅a2は、移動幅a1より小さく設定する。移動幅a2を、端子の弾性限界を越える移動幅とするか、弾性限界内の移動幅とするかは、最終的に端子の先端部分に要求される位置精度に従って決定する。
次に、図2(B)に示すように、矯正バーを使用し、端子11-4〜16-4を上記他方の側から一方の側へ押し戻す。このとき、矯正バーの基準位置からの移動幅をa2’とする。ここで、矯正バーを後退させると、スプリングバックにより、端子11-5〜16-5の位置にそれぞれ矯正される。なお、この例では、端子11-4は、他の端子よりいち早く基準位置に揃ったことを示している。移動幅a2’は、移動幅a2と同等か小さくする。
【0019】
さらに、上記の1往復移動操作を1回以上行なう。
すなわち、図2(C)に示すように、矯正バー(図示せず)を使用し、端子群の端子11-5〜16-5をX方向の基準位置を挟んでY方向の一方の側から他方の側へ押し遣る。このとき、矯正バーの基準位置からの移動幅をa3とする。ここで、矯正バーを後退させると、スプリングバックにより、端子11-6〜16-6の位置にそれぞれ矯正される。移動幅a3は、移動幅a2より小さく設定する。なお、この例では、端子11-5〜12-5は、操作前のほぼ元の位置(11-6〜12-6)に戻ったことを示している。
次に、図2(D)に示すように、矯正バー(図示せず)を使用し、端子11-6〜16-6を上記他方の側から一方の側へ押し戻す。このとき、矯正バーの基準位置からの移動幅をa3’とする。ここで、矯正バーを後退させると、端子11-7〜16-7の位置にそれぞれ矯正される。なお、この例では、端子11-6〜13-6は、操作前のほぼ元の位置(11-7〜13-7)に戻ったことを示している。ここで、移動幅a3’は、移動幅a3以下と同等か小さくする。
図2(D)は、11-7〜16-7の全ての端子の先端部分が、Y方向への位置ずれ矯正のための基準位置からの公差上下限値内に矯正されたことを示している。
【0020】
上述したY方向の1往復移動操作の工程と同様の工程をX方向についても実施する。これにより、全ての端子の先端部分が、X方向への位置ずれ矯正のための基準位置からの公差上下限値内に矯正される。
ここで、X方向への1往復移動操作は、端子の立設間隔に対応する間隙の櫛歯形状矯正治具(図3(A)における符号23を参照)を採用し、先ず、櫛歯形状矯正治具23を端子群1に絶縁基台3側で差し込んだ後、端子の先端へすくい上げるように行なう。端子間の間隔が狭い場合や矯正しようとする端子の初期状態の曲がりが大きい場合などにおいても、櫛歯形状矯正治具を差し込む端子群の絶縁基3台側では、前記先端部分の曲がりの影響を受けることが少なく、当初の基準位置をよく保持しているので、櫛歯形状矯正治具を端子群に差し込む作業が容易となる。
【0021】
本発明に係る先端位置矯正装置は、例えば、図3に示すような構成である。すなわち、端子群1の列長さに対応する長さとY方向への往復移動機能とを有する矯正バー2と、端子の立設間隔に対応する間隙の櫛歯形状とX方向への往復移動機能とを有する櫛歯形状矯正治具23を備える。
矯正バー2は、図3(B)に示すように、所定間隔を以って保持された第1バー21と第2バー21’の一対から構成されている。そして、その内側に端子群1の列が位置するように配置され、第1バー21が1往復移動操作の往路で機能し、第2バー21’が復路で機能する。矯正バー2を単一のバーとし、これを1往復移動操作の往路と復路の両方で使用するようにしてもよいが、往路と復路で矯正バー2と当接する端子の面を換えなければならない(矯正バー2の端子への当接を一方の側から他方の側へ変更しなければならない)ので、その分工数がかかる。前述した図3(B)の構成とすると、前記工数がかからないので、1往復移動操作を効率よく実施できる。
矯正バー21、21’の形状は、特に限定するものではないが、端子群1の各端子に当接する部分がR形状(曲面)をした突起22、22’を備えることが好ましい。これにより、端子表面の擦り傷を低減することができる。
櫛歯形状矯正治具23は、図3(A)に示すように、矯正バー21に併設することができる。しかし、矯正バー21と櫛歯形状矯正治具23がそれぞれ独立していてもよい。櫛歯形状矯正治具23の形状は、特に限定するものではないが、端子1に当接する部分がR形状(曲面)であることが好ましい。これにより、端子表面の擦り傷を低減することができる。櫛歯形状矯正治具23を端子群1に絶縁基台3側(図3(A)におけるbの位置)で差し込んだ後、端子の先端部分(同cの位置)へ移動する。端子の曲がりが発生している場合、その程度は、端子の絶縁基台3側(bの位置)が先端部分(cの位置)より小さいため、端子の立設間隔が狭い場合や矯正しようとする端子の初期状態の曲がりが大きい場合などにおいても、矯正用治具を端子群の先端部分に容易にセットすることができる。
【0022】
従来の技術では、1往復移動操作が1往復と片側移動であるため、位置を矯正した端子にひずみが残留し、経時変化により端子の曲がりが復元する心配があった。しかし、本発明は、1往復移動操作の繰り返しであり、移動幅を前回の操作より小さくする方法であるので、端子に残留するひずみを良好に低減することができる。
【実施例】
【0023】
実施例1〜4
図3(A)に示すように、柱状の端子(中程から先端部分に亘っての断面:X方向0.6mm×Y方向0.4mm、中程から基部に亘っての断面:X方向2mm×Y方向0.4mm、材質:C2680−1/2H)をインサート成形により1列に55個立設した熱可塑性樹脂成形品(絶縁基台)を準備した。各端子は、絶縁基台上から先端までの長さを28mmとして立設されている。そして、初期状態として、各端子に任意の方向へ2mmの曲がりを付与した。
【0024】
図3(B)に示すように、上記端子群の先端から下方へ2mmの位置に矯正バーを当接して、1往復移動操作毎に移動幅を変化させ、表1に示す移動幅および繰り返し回数でY方向の先端位置の矯正を行なった。なお、この1往復移動操作において端子曲がりの弾性限界となる移動幅は、4mmであることを予め確認している。
次に、図3(C)に示すように、上記端子群の先端から下方へ2mmの位置に櫛歯形状部材を当接して、1往復移動操作毎に移動幅を変化させ、表1に示す移動幅および繰り返し回数でX方向の先端位置の矯正を行なった。なお、この1往復移動操作において端子曲がりの弾性限界となる移動幅は、2mmであることを予め確認している。
【0025】
比較例1〜3
実施例1において、1往復移動操作の移動幅および繰り返し回数を表1に示すとおりとする以外は実施例1と同様にしてY方向およびX方向の先端位置の矯正を行なった。
【0026】
従来例1
実施例1において、1往復移動操作の移動幅および繰り返し回数を表2に示すとおりとする以外は実施例1と同様にしてY方向およびX方向の先端位置の矯正を行なった。なお、本例においては、2回目は、往復移動は行なわず、往路のみの移動とした。
【0027】
上記各例において、端子群の各端子の先端位置の位置精度を確認した結果を表1〜2に示す。測定方法は、以下に示すとおりである。
先端位置の位置精度:三次元測定器を使用し、各端子のY方向とX方向の基準位置からのずれ量を測定し、n=55本の最大値、最小値、平均値および標準偏差で評価した。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
実施例1と比較例1〜2の対照から、少なくとも初回は各端子の弾性限界を越える移動幅で1往復移動操作を実施することにより、平均値が小さく基準位置に近づくとともに、標準偏差が小さくばらつきが小さくなり、先端位置の位置精度が向上することが理解できる。比較例1は、Y方向において初回の移動幅が各端子の弾性限界を越えていないので、Y方向の先端位置の位置精度が向上していない。また、比較例2は、X方向において初回の移動幅が各端子の弾性限界を越えていないので、X方向の先端位置の位置精度が向上していない。
また、実施例1と比較例3の対照から、2回目以降は1往復移動操作の移動幅をその前回の移動幅より小さくする1往復移動操作を複数回実施することにより、先端位置の位置精度が向上することを理解できる。
【0031】
ここで、X方向は、端子の横断面形状から相対的に剛性が高く、初期状態の曲がりが小さいため、1往復移動操作を3回実施することにより、従来例1と比較して先端位置の位置精度が大幅に向上している(実施例1〜4)。また、Y方向は、端子の横断面形状から相対的に剛性が低く、初期状態の曲がりが大きいため、1往復移動操作を8回以上実施することにより、他の実施例と比較しても先端位置の位置精度が大幅に向上している(実施例3〜4)。
【0032】
各実施例と従来例1とを比較すると、初回における両者の操作は同等であるが、その次からの操作は両者で全く相違するので、この相違に基づき位置精度において顕著な差があることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(A)〜(B)は、本発明の実施の形態と従来例に係る端子群の先端位置矯正方法の初回の操作の説明図であって、端子群の先端を上方より観察したものである。
【図2】(A)〜(D)は、本発明の実施の形態に係る端子群の先端位置矯正方法の2回目以降の操作の説明図であって、端子群の先端を上方より観察したものである。
【図3】本発明の実施の形態に係る先端位置矯正装置の説明図であって、(A)はX方向矯正時の正面図、(B)はY方向矯正時の断面図、(C)はX方向矯正時の断面図を示したものである。
【図4】(A)〜(B)は、従来の端子群の先端位置矯正方法の説明図であって、端子群の先端を上方より観察したものである。
【符号の説明】
【0034】
1は端子群
11、12、13、14、15、16は端子
2は矯正バー
21は第1バー
21’は第2バー
22、22’は突起
23は櫛歯形状矯正治具
3は絶縁基台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基台上に列をなして複数本立設した柱状の金属製端子群の各端子の先端位置を、前記列方向をX方向、X方向と直角をなす方向をY方向として、XY方向所定の基準位置へ向かって矯正する方法であって、
前記各端子の先端部分を、それぞれの基準位置を挟んでY方向の一方の側から他方の側へ押し遣り、次いで前記Y方向の他方の側から一方の側へ押し戻す1往復移動操作を単位として、当該1往復移動操作を複数回行ない、少なくとも初回は各端子の弾性限界を越える移動幅で1往復移動操作を実施し、2回目以降は、前記1往復移動操作の移動幅をその前回の移動幅より小さくする1往復移動操作を複数回実施する工程、
前記各端子の先端部分を、それぞれの基準位置を挟んでX方向の一方の側から他方の側へ押し遣り、次いで前記X方向の他方の側から一方の側へ押し戻す1往復移動操作を単位として、当該1往復移動操作を複数回行ない、少なくとも初回は各端子の弾性限界を越える移動幅で1往復移動操作を実施し、2回目以降は、前記1往復移動操作の移動幅をその前回の移動幅より小さくする1往復移動操作を複数回実施する工程、
を経ることを特徴とする端子群の先端位置矯正方法。
【請求項2】
絶縁基台上に立設した端子群が1列であり、
Y方向への1往復移動操作は、端子群の列長さに対応する長さの矯正バーを各端子の先端部分に適用して往復移動する矯正バーに当接した端子に対して行ない、
X方向への1往復移動操作は、端子の立設間隔に対応する間隙の櫛歯形状矯正治具を端子群の先端部分に差し込み適用して往復移動する櫛歯形状矯正治具に当接した端子に対して行ない、前記差し込み適用は、先ず、櫛歯形状矯正治具を端子群に絶縁基台側で差し込んで端子の先端へすくい上げるように行なうことを特徴とする請求項1記載の端子群の先端位置矯正方法。
【請求項3】
絶縁基台上に1列に複数本立設した柱状の金属製端子群の各端子の先端位置を、前記列方向をX方向、X方向と直角をなす方向をY方向として、XY方向所定の基準位置へ向かって矯正する装置であって、
端子群の列長さに対応する長さとY方向への往復移動機能とを有し各端子の先端部分に適用される矯正バーと、
端子の立設間隔に対応する間隙の櫛歯形状とX方向への往復移動機能とを有し端子群に差し込んで各端子の先端部分に適用される櫛歯形状矯正治具を備え、
前記矯正バーは、それぞれの端子先端部分の基準位置を挟んでY方向の一方の側から他方の側へ、次いで前記Y方向の他方の側から一方の側への1往復移動操作を単位として、当該1往復移動操作を複数回繰り返し、前記1往復移動操作の移動幅を、1往復移動操作の回を重ねるごとに減じるように制御され、
前記櫛歯形状矯正治具は、端子群に絶縁基台側で差し込んで端子の先端へ移動するように制御されると共に、それぞれの端子先端部分の基準位置を挟んでX方向の一方の側から他方の側へ、次いで前記X方向の他方の側から一方の側への1往復移動操作を単位として、当該1往復移動操作を複数回繰り返し、前記1往復移動操作の移動幅を、1往復移動操作の回を重ねるごとに減じるように制御されることを特徴とする端子群の先端位置矯正装置。
【請求項4】
矯正バーは、所定間隔を以って保持された第1バーと第2バーの一対からなりその内側に端子群の列が位置するように構成され、第1バーが1往復移動操作の往路で機能し、第2バーが復路で機能することを特徴とする請求項3記載の端子群の先端位置矯正装置。
【請求項5】
矯正バーに櫛歯形状矯正治具が併設されている請求項3又は4記載の端子群の先端位置矯正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−188077(P2009−188077A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24803(P2008−24803)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【出願人】(390017617)新神戸プラテックス株式会社 (9)
【Fターム(参考)】