端子金具と電線の接続構造
【課題】電線の導体と端子金具とが異種の金属である場合において、導体と端子金具との接続部分における電食の発生防止を図る。
【解決手段】端子金具20Aに形成したオープンバレル状の電線圧着部26と、端子金具20Aとは異種の金属からなる導体11を絶縁被覆12で包囲した電線10の前端部とが接続される。絶縁被覆12を除去して露出させた導体11のうち電線圧着部22の前端から前方へ突出した部分は、覆い部30で覆われているので、電解液が付着する虞がなく、電解液の付着に起因する電食の発生を防止することができる。
【解決手段】端子金具20Aに形成したオープンバレル状の電線圧着部26と、端子金具20Aとは異種の金属からなる導体11を絶縁被覆12で包囲した電線10の前端部とが接続される。絶縁被覆12を除去して露出させた導体11のうち電線圧着部22の前端から前方へ突出した部分は、覆い部30で覆われているので、電解液が付着する虞がなく、電解液の付着に起因する電食の発生を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具と電線の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、端子金具と電線の接続構造において、電線の軽量化を図るために、銅合金製の従来の導体に代えてアルミ製の導体を使用した技術が開示されている。この接続構造において、端子金具については、従来通りの銅合金が用いられている。
【特許文献1】特開2003−317817公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように電線の導体と端子金具とが異種の金属である場合には、両者の接続部分に水分等の電解液が介在すると電食、即ち両金属が電解液中にイオンとして溶け込んで電気化学的反応により腐食が進行する現象が発生する虞がある。電食が発生すると、導体と端子金具との間の接触抵抗が増大するため、対策が必要となる。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の導体と端子金具とが異種の金属である場合において、導体と端子金具との接続部分における電食の発生防止を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、端子金具に形成したオープンバレル状の電線圧着部と、前記端子金具とは異種の金属からなる導体を絶縁被覆で包囲した電線の前端部とを接続するための接続構造であって、前記端子金具には、前記絶縁被覆を除去して露出させた前記導体のうち前記電線圧着部の前端から前方へ突出した部分を覆う覆い部が設けられているところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記電線圧着部が、底板と、前記底板の左右両側縁から立ち上がる一対のカシメ片とを備えており、前記導体が、前記底板と前記一対のカシメ片とで包囲された状態で圧着されており、前記覆い部が、前記カシメ片の前端から前方へ延出した形態であるところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記端子金具が、相手側端子との接続手段として機能する端子接続部と、前記端子接続部の後端と前記電線圧着部の前端とを連結する連結部とを有し、前記導体のうち前記電線圧着部から前方へ突出した部分が、前記連結部内に位置しており、前記覆い部が、前記連結部から延出した形態であるところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記電線圧着部が、前記導体が圧着により接続するワイヤバレル部と、前記ワイヤバレル部よりも後方に位置して前記電線のうち前記絶縁被覆で覆われている部分が圧着されるインシュレーションバレル部とを備えて構成され、前記電線圧着部には、前記ワイヤバレル部の後端から後方へ延出して前記絶縁被覆の前端部の外周に重なる形態の庇部が形成されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載のものにおいて、前記庇部の後端が、前記インシュレーションバレル部に連なっているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
従来では、導体のうち電線圧着部の前端から前方へ突出した部分は、露出していて水等の電解液が付着し易いため、電食の発生し易い箇所であった。これに対し、本発明では、導体のうち電線圧着部の前端から前方へ突出した部分は、覆い部で覆われているので、電解液が付着する虞がなく、電解液の付着に起因する電食の発生を防止することができる。
【0011】
<請求項2の発明>
覆い部がカシメ片と一体に形成されているので、覆い部とカシメ片との隙間から電解液が浸入して導体に付着する虞はない。
【0012】
<請求項3の発明>
覆い部が連結部と一体に形成されているので、覆い部と連結部との隙間から電解液が浸入して導体に付着する虞はない。
【0013】
<請求項4の発明>
導体のうちワイヤバレル部よりも後方において絶縁被覆が除去されている部分は、庇部によって覆い隠されるので、ワイヤバレル部とインシュレーションバレル部との隙間において電解液が導体に付着する虞はない。
【0014】
<請求項5の発明>
庇部の後端がインシュレーションバレル部に連なっているので、庇部とインシュレーションバレル部との隙間に電解液が浸入する虞はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1及び図2を参照して説明する。本実施形態1の電線10は、電線10は、複数本の金属細線を撚り合わせた撚り線からなる導体11と、導体11を包囲する絶縁被覆12とから構成されている。電線10の前端部においては、端子金具20Aとの接続準備として、予め、絶縁被覆12が除去されることにより導体11の前端部が露出した状態となっている。尚、導体11の材料としては、アルミニウム球はアルミニウム合金が用いられている。この導体11の材料の特性は、銅よりも剛性が高く、また銅よりも導電率の低いというものである。
【0016】
この電線10の前端部には端子金具20Aが圧着により接続されている。端子金具20Aは、導体11とは異種の金属(即ち、銅又は銅合金)からなり、所定形状に打ち抜いた金属板材(図示せず)に曲げ加工等を施すことによって形成されている。端子金具20Aは、雌形のものであり、前端側部分(図1及び図2における左側部分)は角筒状をなす端子接続部21となっている。端子接続部21は、雄形の相手端子の細長いタブ(図示せず)との接続手段として機能する周知形態のものである。
【0017】
端子接続部21の後端には、連結部22が連なっている。連結部22は、端子接続部21の底面壁に連なる平板状の底壁23と、底壁23の左右両側縁から略直角に立ち上がる左右対称な一対の側壁24とから構成される。側壁24の高さは、端子接続部21よりも低い。かかる連結部22の内部には、上方へ開放された収容空間25が形成されている。
【0018】
連結部22の後端には、電線10の前端部を圧着するための電線圧着部26が連なっている。電線圧着部26の前端側部分はワイヤバレル部27となっており、電線圧着部26の後端側部分はインシュレーションバレル部28となっている。ワイヤバレル部27の後端とインシュレーションバレル部28の前端とは繋ぎ部29によって連なっている。繋ぎ部29は、底面板29aの左右両側縁から左右対称な一対の側面板29bを立ち上げた形態である。
【0019】
ワイヤバレル部27は、導体11の前端部を圧着するためのものであり、第1底板27aの左右両側縁から左右対称な一対の第1カシメ片27bを延出させた形態である。ワイヤバレル部27に圧着された導体11は、第1底板27aと一対の第1カシメ片27bとにより全周に亘って包囲されて加圧され、この加圧により生じた固着力によりワイヤバレル部27に対して導通可能に固着される。圧着状態では、導体11の前端部は、第1カシメ片27bの前端縁よりも更に前方へ突出して連結部22内の収容空間25内に位置している。
【0020】
インシュレーションバレル部28は、電線10の前端部のうち絶縁被覆12で覆われている部分を圧着するためのものであり、第2底板28aの左右両側縁から左右対称な一対の第2カシメ片28bを延出させた形態である。インシュレーションバレル部28に圧着された電線10は、第2底板28aと一対の第2カシメ片28bとにより全周に亘って包囲されて加圧され、この加圧により生じた固着力によりインシュレーションバレル部28に固着される。
【0021】
圧着状態では、絶縁被覆12の前端部は、第2カシメ片28bの前端縁よりも更に前方へ突出し、第1カシメ片27bの後端縁よりも前方に位置する。前後方向において第1カシメ片27bと第2カシメ片28bとの間の領域(繋ぎ部29と対応する領域)には、導体11の露出部分の後端部と絶縁被覆12の前端部とが位置している。
【0022】
端子金具20Aには、絶縁被覆12を除去して露出させた導体11のうちワイヤバレル部27の前端から前方へ突出した部分を覆うための覆い部30が一体に形成されている。覆い部30は、ワイヤバレル部27の第1カシメ片27bの前端縁、及び連結部22の側壁24の立ち上がり端縁(上端縁)に連なっている。つまり、覆い部30は、第1カシメ片27bから前方へ延出し、導体11の前端部の外周を上方から覆っているとともに、導体11の前端面を前方から覆っている。
【0023】
さらに、電線圧着部26には、ワイヤバレル部27の第1カシメ片27bの後端から後方へ延出して絶縁被覆12の前端部の外周に重なる形態の庇部31が一体に形成されている。庇部31は、第1カシメ片27bの後端縁、第2カシメ片28bの前端縁及び繋ぎ部29の側面板29bの立ち上がり端縁(上端縁)に連なっている。したがって、ワイヤバレル部27とインシュレーションバレル部28との間では、導体11と絶縁被覆12は完全に覆われて外部には露出していない。
【0024】
従来では、導体のうち電線圧着部の前端から前方へ突出した部分は、露出していて水等の電解液が付着し易いため、電食の発生し易い箇所であった。これに対し、本実施形態1では、導体11のうち電線圧着部26の前端から前方へ突出した部分を覆い部30で覆っているので、導体11の前端部(ワイヤバレル部27から前方へ突出した部分)には、電解液が付着する虞がなく、電解液の付着に起因する電食の発生を防止することができる。
【0025】
特に、本実施形態では覆い部30の後端が第1カシメ片27bに連なっているとともに、覆い部30の側縁が連結部22の側壁24に連なっているので、覆い部30と第1カシメ片27bとの隙間においても、覆い部30と側壁24との間においても、電解液の浸入が確実に防止されている。
【0026】
また、ワイヤバレル部27とインシュレーションバレル部28との間に庇部31を形成し、導体11と絶縁被覆12が露出しないようにしているので、ワイヤバレル部27とインシュレーションバレル部28との隙間から電解液が浸入する虞はない。特に、庇部31の前端が第1カシメ片27bに連なり、庇部31の後端が第2カシメ片28bに連なり、庇部31の側縁が側面板29bに連なっているので、電解液の浸入が確実に防止されている。
【0027】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図3及び図4を参照して説明する。本実施形態2の端子金具20Bは、覆い部32と庇部34を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0028】
本実施形態2の覆い部32は、ワイヤバレル部27の第1カシメ片27bの前端縁から前方へ延出した形態であり、連結部22の側壁24には直接連なってはいない。かかる覆い部32は、導体11の前端部の外周を上方から覆っているとともに、導体11の前端面を前方から覆っている。また、覆い部32の前端側部分は、前方に向かって底壁23に接近するように前傾した傾斜部33となっている。この傾斜部33は左右両側壁24の間に位置し、傾斜部33の前端側部分は、収容空間25内に収容されて導体11を前方から覆っている。一方、第1カシメ片27bの後端から後方へ延出して絶縁被覆12の前端部の外周に重なる庇部34は、第1カシメ片27bの後端縁と繋ぎ部29の側面板29bの立ち上がり端縁(上端縁)の前端側領域に連なっているが、第2カシメ片28bには直接連なってはいない。したがって、庇部34の後端と第2カシメ片28bとの間には、絶縁被覆12の一部が露出している。
【0029】
<実施形態3>
次に、本発明を具体化した実施形態3を図5乃至図7を参照して説明する。本実施形態3の端子金具20Cは、覆い部32を上記実施形態2と同じ形態としたものであり、また、庇部を有していないという点において実施形態1及び実施形態2とは相違している。また、覆い部32の略前半領域(前端側領域)は、前方に向かって連結部22の底壁23に接近するように前傾した傾斜部33となっているが、導体11の前端面11Fは、傾斜部33に合わせて斜めに切断されている。そして、この導体11の斜めに切断された前端面11Fは、覆い部32の傾斜部33に対して後方から突き当たるように当接している。その他の構成については上記実施形態1又は実施形態2と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0030】
<実施形態4>
次に、本発明を具体化した実施形態4を図8及び図9を参照して説明する。本実施形態4の端子金具20Dは、覆い部35を上記実施形態1〜3とは異なる構成とし、実施形態2と同じ形態の庇部34を形成したものである。本実施形態4の覆い部35は、連結部22の左右両側壁24に一体に形成されている。覆い部35の前端側部分(略前半領域)は、前方に向かって連結部22の底壁23に接近するように傾斜した傾斜部36となっている。傾斜部36は、連結部22の収容空間25内に配され、前方から導体11を覆うように位置する。覆い部35の側縁における略後半領域は、側壁24の立ち上がり端縁に連なっているが、覆い部35の側縁における略前半領域(即ち、傾斜部36の側縁)は、側壁24の立ち上がり端縁とは直接連なってはいない。また、覆い部35は、ワイヤバレル部27の第1カシメ片27bとは直接連なってはいない。その他の構成については上記実施形態1又は実施形態2と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0031】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1〜4では、覆い部を端子金具に一体に形成したが、覆い部は、端子金具とは別体の部品であってもよい。
(2)実施形態1の覆い部がワイヤバレル部と連結部の両方に連なった形態は、実施形態2〜4にも適用できる。
(3)実施形態1の庇部がインシュレーションバレル部に連なった形態は、実施形態2〜4にも適用できる。
(4)実施形態2の庇部とインシュレーションバレル部とが直接連なっていない形態は、実施形態1にも適用できる。
(5)実施形態2,3の覆い部と連結部とが直接連なっていない形態は、実施形態1にも適用できる。
(6)実施形態1,2,4の庇部を形成する形態は、実施形態3にも適用できる。
(7)実施形態4の覆い部がワイヤバレル部と直接連なっていない形態は、実施形態1〜3にも適用できる。
(8)実施形態3の覆い部が導体の前端面に当接する形態は、実施形態1,2,4にも適用できる。
(9)実施形態3の導体の前端面を電線の軸線に対して斜めにする形態は、実施形態1,2,4にも適用できる。
(10)上記実施形態1〜4では端子接続部が角筒状をなす雌形の端子金具について説明したが、本発明は、端子接続部が細長いタブを有する雄形の端子金具にも適用できる。
(11)上記実施形態では導体を撚り線としたが、本発明は、導体が単芯線である場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態1の側面図
【図2】平面図
【図3】実施形態2の側面図
【図4】平面図
【図5】実施形態3の側面図
【図6】平面図
【図7】一部切欠断面図
【図8】実施形態4の側面図
【図9】平面図
【符号の説明】
【0033】
10…電線
11…導体
12…絶縁被覆
20A…端子金具
21…端子接続部
22…連結部
26…電線圧着部
27…ワイヤバレル部
27a…第1底板
27b…第1カシメ片
29…インシュレーションバレル部
30…覆い部
31…庇部
20B,20C,20D…端子金具
32,35…覆い部
34…庇部
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具と電線の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、端子金具と電線の接続構造において、電線の軽量化を図るために、銅合金製の従来の導体に代えてアルミ製の導体を使用した技術が開示されている。この接続構造において、端子金具については、従来通りの銅合金が用いられている。
【特許文献1】特開2003−317817公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように電線の導体と端子金具とが異種の金属である場合には、両者の接続部分に水分等の電解液が介在すると電食、即ち両金属が電解液中にイオンとして溶け込んで電気化学的反応により腐食が進行する現象が発生する虞がある。電食が発生すると、導体と端子金具との間の接触抵抗が増大するため、対策が必要となる。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の導体と端子金具とが異種の金属である場合において、導体と端子金具との接続部分における電食の発生防止を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、端子金具に形成したオープンバレル状の電線圧着部と、前記端子金具とは異種の金属からなる導体を絶縁被覆で包囲した電線の前端部とを接続するための接続構造であって、前記端子金具には、前記絶縁被覆を除去して露出させた前記導体のうち前記電線圧着部の前端から前方へ突出した部分を覆う覆い部が設けられているところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記電線圧着部が、底板と、前記底板の左右両側縁から立ち上がる一対のカシメ片とを備えており、前記導体が、前記底板と前記一対のカシメ片とで包囲された状態で圧着されており、前記覆い部が、前記カシメ片の前端から前方へ延出した形態であるところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記端子金具が、相手側端子との接続手段として機能する端子接続部と、前記端子接続部の後端と前記電線圧着部の前端とを連結する連結部とを有し、前記導体のうち前記電線圧着部から前方へ突出した部分が、前記連結部内に位置しており、前記覆い部が、前記連結部から延出した形態であるところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記電線圧着部が、前記導体が圧着により接続するワイヤバレル部と、前記ワイヤバレル部よりも後方に位置して前記電線のうち前記絶縁被覆で覆われている部分が圧着されるインシュレーションバレル部とを備えて構成され、前記電線圧着部には、前記ワイヤバレル部の後端から後方へ延出して前記絶縁被覆の前端部の外周に重なる形態の庇部が形成されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載のものにおいて、前記庇部の後端が、前記インシュレーションバレル部に連なっているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
従来では、導体のうち電線圧着部の前端から前方へ突出した部分は、露出していて水等の電解液が付着し易いため、電食の発生し易い箇所であった。これに対し、本発明では、導体のうち電線圧着部の前端から前方へ突出した部分は、覆い部で覆われているので、電解液が付着する虞がなく、電解液の付着に起因する電食の発生を防止することができる。
【0011】
<請求項2の発明>
覆い部がカシメ片と一体に形成されているので、覆い部とカシメ片との隙間から電解液が浸入して導体に付着する虞はない。
【0012】
<請求項3の発明>
覆い部が連結部と一体に形成されているので、覆い部と連結部との隙間から電解液が浸入して導体に付着する虞はない。
【0013】
<請求項4の発明>
導体のうちワイヤバレル部よりも後方において絶縁被覆が除去されている部分は、庇部によって覆い隠されるので、ワイヤバレル部とインシュレーションバレル部との隙間において電解液が導体に付着する虞はない。
【0014】
<請求項5の発明>
庇部の後端がインシュレーションバレル部に連なっているので、庇部とインシュレーションバレル部との隙間に電解液が浸入する虞はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1及び図2を参照して説明する。本実施形態1の電線10は、電線10は、複数本の金属細線を撚り合わせた撚り線からなる導体11と、導体11を包囲する絶縁被覆12とから構成されている。電線10の前端部においては、端子金具20Aとの接続準備として、予め、絶縁被覆12が除去されることにより導体11の前端部が露出した状態となっている。尚、導体11の材料としては、アルミニウム球はアルミニウム合金が用いられている。この導体11の材料の特性は、銅よりも剛性が高く、また銅よりも導電率の低いというものである。
【0016】
この電線10の前端部には端子金具20Aが圧着により接続されている。端子金具20Aは、導体11とは異種の金属(即ち、銅又は銅合金)からなり、所定形状に打ち抜いた金属板材(図示せず)に曲げ加工等を施すことによって形成されている。端子金具20Aは、雌形のものであり、前端側部分(図1及び図2における左側部分)は角筒状をなす端子接続部21となっている。端子接続部21は、雄形の相手端子の細長いタブ(図示せず)との接続手段として機能する周知形態のものである。
【0017】
端子接続部21の後端には、連結部22が連なっている。連結部22は、端子接続部21の底面壁に連なる平板状の底壁23と、底壁23の左右両側縁から略直角に立ち上がる左右対称な一対の側壁24とから構成される。側壁24の高さは、端子接続部21よりも低い。かかる連結部22の内部には、上方へ開放された収容空間25が形成されている。
【0018】
連結部22の後端には、電線10の前端部を圧着するための電線圧着部26が連なっている。電線圧着部26の前端側部分はワイヤバレル部27となっており、電線圧着部26の後端側部分はインシュレーションバレル部28となっている。ワイヤバレル部27の後端とインシュレーションバレル部28の前端とは繋ぎ部29によって連なっている。繋ぎ部29は、底面板29aの左右両側縁から左右対称な一対の側面板29bを立ち上げた形態である。
【0019】
ワイヤバレル部27は、導体11の前端部を圧着するためのものであり、第1底板27aの左右両側縁から左右対称な一対の第1カシメ片27bを延出させた形態である。ワイヤバレル部27に圧着された導体11は、第1底板27aと一対の第1カシメ片27bとにより全周に亘って包囲されて加圧され、この加圧により生じた固着力によりワイヤバレル部27に対して導通可能に固着される。圧着状態では、導体11の前端部は、第1カシメ片27bの前端縁よりも更に前方へ突出して連結部22内の収容空間25内に位置している。
【0020】
インシュレーションバレル部28は、電線10の前端部のうち絶縁被覆12で覆われている部分を圧着するためのものであり、第2底板28aの左右両側縁から左右対称な一対の第2カシメ片28bを延出させた形態である。インシュレーションバレル部28に圧着された電線10は、第2底板28aと一対の第2カシメ片28bとにより全周に亘って包囲されて加圧され、この加圧により生じた固着力によりインシュレーションバレル部28に固着される。
【0021】
圧着状態では、絶縁被覆12の前端部は、第2カシメ片28bの前端縁よりも更に前方へ突出し、第1カシメ片27bの後端縁よりも前方に位置する。前後方向において第1カシメ片27bと第2カシメ片28bとの間の領域(繋ぎ部29と対応する領域)には、導体11の露出部分の後端部と絶縁被覆12の前端部とが位置している。
【0022】
端子金具20Aには、絶縁被覆12を除去して露出させた導体11のうちワイヤバレル部27の前端から前方へ突出した部分を覆うための覆い部30が一体に形成されている。覆い部30は、ワイヤバレル部27の第1カシメ片27bの前端縁、及び連結部22の側壁24の立ち上がり端縁(上端縁)に連なっている。つまり、覆い部30は、第1カシメ片27bから前方へ延出し、導体11の前端部の外周を上方から覆っているとともに、導体11の前端面を前方から覆っている。
【0023】
さらに、電線圧着部26には、ワイヤバレル部27の第1カシメ片27bの後端から後方へ延出して絶縁被覆12の前端部の外周に重なる形態の庇部31が一体に形成されている。庇部31は、第1カシメ片27bの後端縁、第2カシメ片28bの前端縁及び繋ぎ部29の側面板29bの立ち上がり端縁(上端縁)に連なっている。したがって、ワイヤバレル部27とインシュレーションバレル部28との間では、導体11と絶縁被覆12は完全に覆われて外部には露出していない。
【0024】
従来では、導体のうち電線圧着部の前端から前方へ突出した部分は、露出していて水等の電解液が付着し易いため、電食の発生し易い箇所であった。これに対し、本実施形態1では、導体11のうち電線圧着部26の前端から前方へ突出した部分を覆い部30で覆っているので、導体11の前端部(ワイヤバレル部27から前方へ突出した部分)には、電解液が付着する虞がなく、電解液の付着に起因する電食の発生を防止することができる。
【0025】
特に、本実施形態では覆い部30の後端が第1カシメ片27bに連なっているとともに、覆い部30の側縁が連結部22の側壁24に連なっているので、覆い部30と第1カシメ片27bとの隙間においても、覆い部30と側壁24との間においても、電解液の浸入が確実に防止されている。
【0026】
また、ワイヤバレル部27とインシュレーションバレル部28との間に庇部31を形成し、導体11と絶縁被覆12が露出しないようにしているので、ワイヤバレル部27とインシュレーションバレル部28との隙間から電解液が浸入する虞はない。特に、庇部31の前端が第1カシメ片27bに連なり、庇部31の後端が第2カシメ片28bに連なり、庇部31の側縁が側面板29bに連なっているので、電解液の浸入が確実に防止されている。
【0027】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図3及び図4を参照して説明する。本実施形態2の端子金具20Bは、覆い部32と庇部34を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0028】
本実施形態2の覆い部32は、ワイヤバレル部27の第1カシメ片27bの前端縁から前方へ延出した形態であり、連結部22の側壁24には直接連なってはいない。かかる覆い部32は、導体11の前端部の外周を上方から覆っているとともに、導体11の前端面を前方から覆っている。また、覆い部32の前端側部分は、前方に向かって底壁23に接近するように前傾した傾斜部33となっている。この傾斜部33は左右両側壁24の間に位置し、傾斜部33の前端側部分は、収容空間25内に収容されて導体11を前方から覆っている。一方、第1カシメ片27bの後端から後方へ延出して絶縁被覆12の前端部の外周に重なる庇部34は、第1カシメ片27bの後端縁と繋ぎ部29の側面板29bの立ち上がり端縁(上端縁)の前端側領域に連なっているが、第2カシメ片28bには直接連なってはいない。したがって、庇部34の後端と第2カシメ片28bとの間には、絶縁被覆12の一部が露出している。
【0029】
<実施形態3>
次に、本発明を具体化した実施形態3を図5乃至図7を参照して説明する。本実施形態3の端子金具20Cは、覆い部32を上記実施形態2と同じ形態としたものであり、また、庇部を有していないという点において実施形態1及び実施形態2とは相違している。また、覆い部32の略前半領域(前端側領域)は、前方に向かって連結部22の底壁23に接近するように前傾した傾斜部33となっているが、導体11の前端面11Fは、傾斜部33に合わせて斜めに切断されている。そして、この導体11の斜めに切断された前端面11Fは、覆い部32の傾斜部33に対して後方から突き当たるように当接している。その他の構成については上記実施形態1又は実施形態2と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0030】
<実施形態4>
次に、本発明を具体化した実施形態4を図8及び図9を参照して説明する。本実施形態4の端子金具20Dは、覆い部35を上記実施形態1〜3とは異なる構成とし、実施形態2と同じ形態の庇部34を形成したものである。本実施形態4の覆い部35は、連結部22の左右両側壁24に一体に形成されている。覆い部35の前端側部分(略前半領域)は、前方に向かって連結部22の底壁23に接近するように傾斜した傾斜部36となっている。傾斜部36は、連結部22の収容空間25内に配され、前方から導体11を覆うように位置する。覆い部35の側縁における略後半領域は、側壁24の立ち上がり端縁に連なっているが、覆い部35の側縁における略前半領域(即ち、傾斜部36の側縁)は、側壁24の立ち上がり端縁とは直接連なってはいない。また、覆い部35は、ワイヤバレル部27の第1カシメ片27bとは直接連なってはいない。その他の構成については上記実施形態1又は実施形態2と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0031】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1〜4では、覆い部を端子金具に一体に形成したが、覆い部は、端子金具とは別体の部品であってもよい。
(2)実施形態1の覆い部がワイヤバレル部と連結部の両方に連なった形態は、実施形態2〜4にも適用できる。
(3)実施形態1の庇部がインシュレーションバレル部に連なった形態は、実施形態2〜4にも適用できる。
(4)実施形態2の庇部とインシュレーションバレル部とが直接連なっていない形態は、実施形態1にも適用できる。
(5)実施形態2,3の覆い部と連結部とが直接連なっていない形態は、実施形態1にも適用できる。
(6)実施形態1,2,4の庇部を形成する形態は、実施形態3にも適用できる。
(7)実施形態4の覆い部がワイヤバレル部と直接連なっていない形態は、実施形態1〜3にも適用できる。
(8)実施形態3の覆い部が導体の前端面に当接する形態は、実施形態1,2,4にも適用できる。
(9)実施形態3の導体の前端面を電線の軸線に対して斜めにする形態は、実施形態1,2,4にも適用できる。
(10)上記実施形態1〜4では端子接続部が角筒状をなす雌形の端子金具について説明したが、本発明は、端子接続部が細長いタブを有する雄形の端子金具にも適用できる。
(11)上記実施形態では導体を撚り線としたが、本発明は、導体が単芯線である場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態1の側面図
【図2】平面図
【図3】実施形態2の側面図
【図4】平面図
【図5】実施形態3の側面図
【図6】平面図
【図7】一部切欠断面図
【図8】実施形態4の側面図
【図9】平面図
【符号の説明】
【0033】
10…電線
11…導体
12…絶縁被覆
20A…端子金具
21…端子接続部
22…連結部
26…電線圧着部
27…ワイヤバレル部
27a…第1底板
27b…第1カシメ片
29…インシュレーションバレル部
30…覆い部
31…庇部
20B,20C,20D…端子金具
32,35…覆い部
34…庇部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具に形成したオープンバレル状の電線圧着部と、前記端子金具とは異種の金属からなる導体を絶縁被覆で包囲した電線の前端部とを接続するための接続構造であって、
前記端子金具には、前記絶縁被覆を除去して露出させた前記導体のうち前記電線圧着部の前端から前方へ突出した部分を覆う覆い部が設けられていることを特徴とする端子金具と電線の接続構造。
【請求項2】
前記電線圧着部が、底板と、前記底板の左右両側縁から立ち上がる一対のカシメ片とを備えており、
前記導体が、前記底板と前記一対のカシメ片とで包囲された状態で圧着されており、
前記覆い部が、前記カシメ片の前端から前方へ延出した形態であることを特徴とする請求項1記載の端子金具と電線の接続構造。
【請求項3】
前記端子金具が、相手側端子との接続手段として機能する端子接続部と、前記端子接続部の後端と前記電線圧着部の前端とを連結する連結部とを有し、
前記導体のうち前記電線圧着部から前方へ突出した部分が、前記連結部内に位置しており、
前記覆い部が、前記連結部から延出した形態であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の端子金具と電線の接続構造。
【請求項4】
前記電線圧着部が、前記導体が圧着により接続するワイヤバレル部と、前記ワイヤバレル部よりも後方に位置して前記電線のうち前記絶縁被覆で覆われている部分が圧着されるインシュレーションバレル部とを備えて構成され、
前記電線圧着部には、前記ワイヤバレル部の後端から後方へ延出して前記絶縁被覆の前端部の外周に重なる形態の庇部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の端子金具と電線の接続構造。
【請求項5】
前記庇部の後端が、前記インシュレーションバレル部に連なっていることを特徴とする請求項4記載の端子金具と電線の接続構造。
【請求項1】
端子金具に形成したオープンバレル状の電線圧着部と、前記端子金具とは異種の金属からなる導体を絶縁被覆で包囲した電線の前端部とを接続するための接続構造であって、
前記端子金具には、前記絶縁被覆を除去して露出させた前記導体のうち前記電線圧着部の前端から前方へ突出した部分を覆う覆い部が設けられていることを特徴とする端子金具と電線の接続構造。
【請求項2】
前記電線圧着部が、底板と、前記底板の左右両側縁から立ち上がる一対のカシメ片とを備えており、
前記導体が、前記底板と前記一対のカシメ片とで包囲された状態で圧着されており、
前記覆い部が、前記カシメ片の前端から前方へ延出した形態であることを特徴とする請求項1記載の端子金具と電線の接続構造。
【請求項3】
前記端子金具が、相手側端子との接続手段として機能する端子接続部と、前記端子接続部の後端と前記電線圧着部の前端とを連結する連結部とを有し、
前記導体のうち前記電線圧着部から前方へ突出した部分が、前記連結部内に位置しており、
前記覆い部が、前記連結部から延出した形態であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の端子金具と電線の接続構造。
【請求項4】
前記電線圧着部が、前記導体が圧着により接続するワイヤバレル部と、前記ワイヤバレル部よりも後方に位置して前記電線のうち前記絶縁被覆で覆われている部分が圧着されるインシュレーションバレル部とを備えて構成され、
前記電線圧着部には、前記ワイヤバレル部の後端から後方へ延出して前記絶縁被覆の前端部の外周に重なる形態の庇部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の端子金具と電線の接続構造。
【請求項5】
前記庇部の後端が、前記インシュレーションバレル部に連なっていることを特徴とする請求項4記載の端子金具と電線の接続構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−55874(P2010−55874A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218190(P2008−218190)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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