説明

端末コネクタ受け治具、端末コネクタの固定方法及びワイヤハーネス組み立て方法

【課題】ワイヤハーネスの組み立てに際して、端末コネクタの固定と引き抜きとが容易に行える端末コネクタ受け治具を提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス端末に備わる端末コネクタ7を固定するための端末コネクタ受け治具1であって、端末コネクタ7をセットする載置台5上に、端末コネクタ7におけるワイヤ29の接続面に対向し、ワイヤ29が挿通可能な間隔で立設された複数の棒状体からなるクシ歯部3と、そのクシ歯部3とで端末コネクタ7を挟持固定するコネクタ固定部4とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は複数のワイヤからなるワイヤハーネスの組み立てにおいて、ワイヤハーネス端末に備わるコネクタを固定するのに用いる端末コネクタ受け治具に関する。
具体的には、ワイヤハーネスの組み立て時に、ワイヤハーネス端末に備わるコネクタ(端末コネクタと称す)を精度良く固定し、且つ端末コネクタの取り外しが容易であって、更に、種々の大きさの端末コネクタに適用する高い汎用性を有した安価な端末コネクタ受け治具と、その端末コネクタ受け治具を用いた端末コネクタの固定方法とワイヤハーネスの組み立て方法とを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスの組み立てにおいて、ワイヤハーネス端末を位置決めするために、この端末に設けられる端末コネクタを随時精度良く固定することが望まれる。
この端末コネクタの固定には、通常、端末コネクタ受け治具と呼ばれる治具が使用されている。従来から、図8および図9で代表される端末コネクタ受け治具が使用されている。
【0003】
図8で示される端末コネクタ受け治具100では、樹脂製枠101で端末コネクタ102を受け、端末コネクタ102の位置を規制して固定するために、その位置精度は正確なものとなるが、治具そのものは、端末コネクタ一品ごとの対応となることから、コストアップ及び使用する端末コネクタ毎に使用する治具を変更する必要があり、開発設計、製作に非常に多くの工数が発生するという課題があった。
【0004】
一方、図9の端末コネクタ受け治具110では、端末コネクタ112を挟み込んで押さえる先端押さえ治具111aおよびU字治具111bを別途用意し、この先端押さえ治具111aおよびU字治具111bを治具盤(図に表示せず)に取り付ける工数が発生し、又、使用する端末コネクタ毎に先端押さえ治具の位置が異なることによる先端押さえ治具の取り付け穴を設定しなければならないなどの工数増加の問題が生じていた。
【0005】
このような状況の中で、特許文献1及び特許文献2で示される改良された端末コネクタ受け治具が提案されている。
特許文献1明細書中で開示されたものは、図10に示すように、先ず端末コネクタCを係止部150から伸びるU字形立設部151に配置し、次いで端末コネクタ締結体152を端末コネクタCの周囲に配して固定するというものである。なお、図10中の符号において、Wは分岐電線、Lは分岐寸法を示す。
【0006】
特許文献2明細書中で開示されたものは、図11に示すように、寸法管理台200に各種端末コネクタ寸法に対応した位置に設けた一対の穴60A−3、60B−3にU字棒51A、51Bを通し、壁板61とU字棒51A、51Bとの間に端末コネクタ56を配置して固定するものであって、幾つかの寸法に対応可能な治具である。
【0007】
【特許文献1】特開平10−106369号公報
【特許文献2】特開平11−213782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で提案されているものでは、端末コネクタCの固定に2段階の作業手順が必要となっている。即ち、図10で示されるように、第一手順として、端末コネクタCを係止部150から伸びるU字形立設部151に配置する手順、次いで第二手順として、固定部155として一端をベース部153に設けた端末コネクタ締結体152の他端を締結部154として、大きく延ばして端末コネクタCの周囲に巻きつけ、U字形立設部151の先端に端末コネクタ締結体152を引っ掛けることで端末コネクタCを固定する手順の2段階の作業手順を必要としている。
【0009】
また、特許文献2に提案されているものは、ある寸法の端末コネクタから異なる寸法の端末コネクタに替える場合には、その替える端末コネクタの寸法に適した寸法管理台200に設けられている一対の穴60A−3、60B−3にU字棒51A、51Bを再び通さねばならず、その分の作業手順の増加は否めず、作業効率が低下してしまう。
【0010】
そこで、本発明はこのような状況に鑑みなされたもので、ワイヤハーネスの組み立てに際して、その端末コネクタの固定と引き抜きとが容易に行える端末コネクタ受け治具及び端末コネクタの固定方法と、さらにはワイヤハーネス組み立て方法とを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ワイヤハーネス端末に備わる端末コネクタを固定するための端末コネクタ受け治具であって、端末コネクタをセットする載置台上に、端末コネクタにおけるワイヤの接続面に対向し、ワイヤが挿通可能な間隔で立設された複数の棒状体からなるクシ歯部と、そのクシ歯部とで端末コネクタを挟持固定するコネクタ固定部とを設けたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の目的に加えて、端末コネクタ受け治具の剛性を高めるために、クシ歯部及びコネクタ固定部を載置台に一体形成したものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の目的に加えて、端末コネクタの挟持固定をより確実に行うために、コネクタ固定部は、載置台上の端末コネクタをクシ歯部側へ弾性的に押圧する弾性部位を備える構成としたものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの目的に加えて、弾性部位を簡単に構成するために、弾性部位を逆U字形湾曲部としたものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかの目的に加えて、載置台上での端末コネクタの横ずれに起因するワイヤハーネス結束時の位置ずれやワイヤへの応力付加を防止するために、載置台に、当該載置台上にセットされた端末コネクタのクシ歯部に対する左右の横ずれを規制する規制部を設けたものである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れかの目的に加えて、単独のワイヤが作業の邪魔にならないようにしてワイヤハーネスの組立効率を高めるために、クシ歯部内又はクシ歯部に隣接して、一又は複数のワイヤを仮止可能なワイヤ仮止部を設けたものである。
請求項7に記載の発明は、請求項6の目的に加えて、必要なときのみワイヤ仮止部を使用できるようにするために、ワイヤ仮止部は着脱可能に設けたものである。
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7の目的に加えて、ワイヤの仮止と取り外しとが容易に行えるワイヤ仮止部を得るために、ワイヤ仮止部を、クシ歯部の棒状体と平行に立設される複数の仮止ピンと、一又は複数の仮止ピンに外装される弾性ローラとで形成して、ワイヤを、仮止ピンと弾性ローラとの間、若しくは複数の弾性ローラの間で弾性的に挟持させることで仮止可能としたものである。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項9に記載の発明は、端末コネクタの固定方法であって、請求項1乃至8の何れかに記載の端末コネクタ受け治具に、ワイヤハーネス端末に備わる端末コネクタを、ワイヤの接続面をクシ歯部側にした状態で載置台の上方からクシ歯部とコネクタ固定部との間に配置して、クシ歯部とコネクタ固定部との間で端末コネクタを挟持固定させることを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項10に記載の発明は、ワイヤハーネス端末に備わる端末コネクタを固定してワイヤハーネスの位置規制を行い、ワイヤハーネスを組み立てる方法であって、請求項1乃至8の何れかに記載の端末コネクタ受け治具に、端末コネクタを、ワイヤの接続面をクシ歯部側にした状態で載置台の上方からクシ歯部とコネクタ固定部との間に配置して、クシ歯部とコネクタ固定部との間で端末コネクタを挟持固定させて、ワイヤハーネスの位置規制を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ワイヤハーネスの端末に備わる端末コネクタを容易、且つ精度良く装着、固定、引き抜きすることができると共に、種々の大きさの端末コネクタに対して、生産工数を増加させることなく適応可能となる。よって、汎用性にも優れ、ワイヤハーネス組み立て工程の生産効率、生産コストの低減に顕著な効果を奏する。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、端末コネクタ受け治具の剛性を高めることができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、端末コネクタの挟持固定をより確実に行うことができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかの効果に加えて、弾性部位を簡単に構成することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の何れかの効果に加えて、規制部の採用により、載置台上での端末コネクタの横ずれに起因するワイヤハーネス結束時の位置ずれやワイヤへの応力付加を防止することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の何れかの効果に加えて、ワイヤ仮止部の採用により、単独のワイヤが作業の邪魔になることがなくなり、ワイヤハーネスの組立効率を高めることができる。
請求項7に記載の発明によれば、請求項6の効果に加えて、必要なときのみワイヤ仮止部を使用可能となり、使い勝手が向上する。
請求項8に記載の発明によれば、請求項6又は7の効果に加えて、ワイヤの仮止と取り外しとが容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は第一の実施形態を示す端末コネクタ受け治具の斜視図で、(a)は全体図を表し、(b)は載置台を表している。1は本実施形態の端末コネクタ受け治具、2は支持台、3はクシ歯部、4は逆U字形湾曲部4aを有してばね性を備えるコネクタ固定部、5は載置台、5aはクシ歯部3をはめ込むための取り付け穴、6は載置台5のたわみ防止リブ、7は端末コネクタ、29はワイヤである。
【0019】
図1(a)、(b)において、端末コネクタ受け治具1は、上方向に向けて立設された複数の棒状体からなるクシ歯部3を備えた支持台2と、一端部に弾性部位となる逆U字形湾曲部4aを有したコネクタ固定部4を備える載置台5とからなり、載置台5の他端部に設けた取り付け穴5aにクシ歯部3を差込み、取り付け穴5aとクシ歯部3とを嵌合させることで、支持台2と載置台5とが一体化される。6は、載置台5の下面に形成されたたわみ防止リブで、このたわみ防止リブ6は、支持台2と載置台5との組み付け状態で支持台2の背面に当接することで、載置台5の下方へのたわみを防止するものである。
【0020】
このように、端末コネクタ受け治具1を支持台2と載置台5とを組み合わせる構造にすることで、端末コネクタの大きさに応じた複数の載置台5を用意しておけば、適時端末コネクタ7に合わせて最適な載置台5を選択でき、広範囲な種々の大きさの端末コネクタ7に対応できる。
【0021】
次に、前記端末コネクタ受け治具1への端末コネクタ7の装着、固定および引き抜きの方法について説明する。
図2は、本発明に係る実施形態における端末コネクタ受け治具の端末コネクタの固定に関する説明図で、ここで示すように、端末コネクタ7の長さをA、クシ歯部3とコネクタ固定部4との間隔Bにおける自然長をBneu、その最大長をBmaxとした場合の端末コネクタ7及び端末コネクタ受け治具1との関係を、Bmax>A≧Bneuとなるように設定する。
【0022】
端末コネクタ7の装着および固定に際しては、先の条件Bmax>A≧Bneuのもとで、端末コネクタ7を、ワイヤ29の接続側をクシ歯部3側にした状態で、ワイヤ端末コネクタ受け治具1の載置台5へ上方から差し入れていくと、クシ歯部3にワイヤ29が挟み込まれるとともに、クシ歯部3とコネクタ固定部4の間隔が、コネクタ固定部4が有するばね性により開いていく。間隔Bが自然長Bneuから端末コネクタ7を固定する長さ(およそAに等しい)に到達すると、端末コネクタ7がコネクタ固定部4とクシ歯部3とに挟まれる格好になって、クシ歯部3を基準点とする規定位置に装着される。これにより、コネクタ固定部4が有するばね性によりコネクタ固定部4とクシ歯部3とで端末コネクタ7が挟み込まれ、しっかりと固定される。
【0023】
一方、端末コネクタ7の引き抜き(取り外し)に際しては、クシ歯部3とコネクタ固定部4との間隔Bを端末コネクタ7の長さAより大きくするように端末コネクタ7を上方に引き抜くことで、容易に端末コネクタ7を引き抜くことができる。
【0024】
前記端末コネクタの装着、固定、引き抜きに関する方法は、本発明に係る実施形態全てに共通するものであって、ワイヤハーネス組み立て工程における生産効率の向上と生産コストの削減を実現できるものである。
即ち、ワイヤハーネス組み立て工程において、コネクタ固定部が有するばね性により、治具盤に固定されている支持台に備わるクシ歯部に端末コネクタが押し付けられることで、ワイヤハーネス端末の位置規制が精度良く且つ容易に行われ、端末コネクタの装着、固定及び引き抜きに関しても、ばね性を利用してワンアクションで容易に行うことができる。
更に、クシ歯部とコネクタ固定部との間隔Bが可変であることから、長さの異なる多様な端末コネクタの装着、固定を治具の交換をせずに行うことができる。よって、その作業効率を低下させないと共に、一つの端末コネクタ受け治具で複数の種類の端末コネクタに対応でき、生産コストの削減に寄与可能となる。
【0025】
このように、上記形態の端末コネクタ受け治具及び端末コネクタの固定方法、ワイヤハーネス組み立て方法によれば、端末コネクタ7を容易、且つ精度良く装着、固定、引き抜きすることができると共に、種々の大きさの端末コネクタ7に対して、生産工数を増加させることなく適応可能となる。よって、汎用性にも優れ、ワイヤハーネス組み立て工程の生産効率、生産コストの低減に顕著な効果を奏する。
また、ここでは、コネクタ固定部4は、載置台5上の端末コネクタ7をクシ歯部3側へ弾性的に押圧する弾性部位(逆U字形湾曲部4a)を備えるので、端末コネクタ7の挟持固定をより確実に行うことができる。特に、弾性部位を逆U字形湾曲部4aとしたことで、弾性部位が簡単に構成可能となっている。
【0026】
次に、図3に示す第二の実施形態は、第一の実施形態における支持台2と載置台5とを一体として形成したものである。
図3において、11は端末コネクタ受け治具、13はクシ歯部、14はコネクタ固定部、14aは逆U字形湾曲部でばね性を有する。本実施形態は支持台2と載置台5とを一体として形成せしめたことにより、先の第一の実施形態のような嵌合部を有しないために、非常に剛性の高い端末コネクタ受け治具となっている。
なお、本実施形態では、第一の実施形態のような広範囲の大きさの端末コネクタには対応できないが、先に述べた端末コネクタの装着、固定、引き抜きに関する方法から、ある大きさの範囲で端末コネクタに対応は可能であり、汎用性を有している。
【0027】
図4は第三の実施形態を示す端末コネクタ受け治具21の斜視図である。端末コネクタ受け治具21において、22は支持台、23はクシ歯部、24はコネクタ固定部、24aは逆U字形湾曲部、25は載置台で、ここでは、載置台25の端部に側面より壁を立ち上げ、クシ歯部23内の最外部位にワイヤ仮止部28を設けている。29はワイヤである。
すなわち、端末コネクタ7に全てのワイヤが接続されておらず、一部のワイヤが未接続となっている場合、そのワイヤの絶縁被覆部分を、ワイヤ仮止部28と最外の棒状体との間に上方から差し込むことで、ワイヤ仮止部28と棒状体との間でワイヤ29を挟持させてワイヤ29を仮止できるようにしたものである。なお、当該ワイヤ29が必要なときにはワイヤ仮止部28と棒状体との間から上方へ抜き取るようにすれば簡単に取り外すことができる。
このように、上記形態によれば、クシ歯部23内にワイヤ29を仮止可能なワイヤ仮止部28を設けたことで、単独のワイヤ29が作業の邪魔になることがなくなり、ワイヤハーネスの組立効率を高めることができる。
【0028】
図5に示す第四の実施形態は、コネクタ固定部の弾性部位の変更例に関するもので、コネクタ固定部にばね性を与える様々な形態を採っている。
図5(a)は、コネクタ固定部と一体の逆U字形湾曲部30aを有することでばね性を発現させる板ばね形態のコネクタ固定部30、(b)は、ばね性を示すスナップ部32aを有するコネクタ固定部32、(c)は、円環曲部31aによりばね性を発現させる円環ばね形態のコネクタ固定部31、(d)は、板ばね部材33aを設けることによりばね性を発現させる板ばね形態のコネクタ固定部33となっている。
【0029】
図6は第五の実施形態を示すもので、この端末コネクタ受け治具40において、まず端末コネクタ7をセットする載置台41の手前側には、クシ歯部42の棒状体となる複数の金属ピン42a,42a・・が、所定間隔で互いに平行に差し込み装着されると共に、載置台41の両サイドには、端末コネクタ7のセット状態でその外面に近接する規制部としての横壁43,43が互いに平行に立設されている。44はコネクタ固定部、44aは逆U字形湾曲部である。
【0030】
また、載置台41には、ワイヤ仮止部となる仮止ユニット45が着脱可能に設けられている。この仮止ユニット45は、載置台41におけるクシ歯部42の左右両外に凹設された差込孔41a,41aに差し込み可能な差込部46と、その差込部46の上部に形成される矩形状の台部47と、その台部47上に所定間隔で立設される一対の仮止ピン48,48と、一方の仮止ピン48に外装される弾性ローラ49とを有し、差込孔41aの一方を選択して差込部46を差し込むと、仮止ピン48,48が、平面視でクシ歯部42の金属ピン42aと同じ間隔で直線状に並ぶようになっている。50は、台部47の下面に突設された三角形状の当接片で、差込孔41aへの差込部46の差し込み状態で、当接片50の側縁が端末コネクタ受け治具40の側面に当接して、載置台41の側方へ突出する台部47を水平に保持するものである。
【0031】
そして、弾性ローラ49は、複数の突条49a,49a・・を等間隔で放射状に突出して横断面が星形となるゴム製で、仮止ピン48への外装状態では、突条49aの先端が隣接する仮止ピン48に近接して、端末コネクタ7に接続されるワイヤ29よりも僅かに小さい隙間が形成されるようになっている。
【0032】
よって、この形態の端末コネクタ受け治具40においては、図7に示すように、端末コネクタ7を載置台41にセットすると、端末コネクタ7の左右側に横壁43,43が位置して左右方向への移動が規制されることになる。先の形態の端末コネクタ受け治具1,11等では、端末コネクタ7をセットした際に端末コネクタ7が左右方向に横ずれするおそれがあり、このためワイヤハーネス結束時に位置ずれの原因となったり、クシ歯部を通るワイヤに不要な応力が加わったりすることがあったが、この形態では、端末コネクタ7のクシ歯部42に対する左右の横ずれを規制する横壁43を設けたことで、載置台41上での端末コネクタ7の横ずれに起因するワイヤハーネス結束時の位置ずれやワイヤ29への応力付加を防止することができる。
【0033】
一方、端末コネクタ7に全てのワイヤが接続されておらず、一部のワイヤが未接続となっている場合、そのワイヤ29aの絶縁被覆部分を、図7のように仮止ユニット45において仮止ピン48と弾性ローラ49との間に上方から差し込むと、当該ワイヤ29aが仮止ピン48と弾性ローラ49との間で弾性的に挟持されてクシ歯部42の外側で仮止される。よって、ワイヤ29aがワイヤハーネスの組立作業の邪魔になることがない。当該ワイヤ29aが必要なときには仮止ピン48と弾性ローラ49との間から上方へ抜き取るようにすれば簡単に取り外すことができる。
【0034】
このように、この形態でも、クシ歯部42に隣接して一又は複数のワイヤ29aを仮止可能な仮止ユニット45を設けたことで、単独のワイヤ29aが作業の邪魔になることがなくなり、ワイヤハーネスの組立効率を高めることができる。
また、仮止ユニット45は着脱可能に設けられるので、必要なときのみ仮止ユニット45を使用可能となり、使い勝手が向上する。特に、仮止ユニット45は載置台41の左右何れか選択して着脱可能となっているため、作業状態に応じてワイヤ29aを仮止するサイドを適宜選択できる。なお、ここでは、弾性ローラ49も仮止ピン48に対して着脱可能であることから、仮止ピン48は載置台41に立設させたまま常態でクシ歯部として利用し、仮止が必要なときに弾性ローラ49を外装する使用形態も考えられる。
さらに、仮止ユニット45を、クシ歯部42の金属ピン42aと平行に立設される複数の仮止ピン48と、一の仮止ピン48に外装される弾性ローラ49とで形成し、ワイヤ29aを仮止ピン48と弾性ローラ49との間で弾性的に挟持させるようにしたことで、ワイヤ29aの仮止と取り外しとが容易に行えるようになっている。
【0035】
なお、規制部は、上記形態のような壁体にする必要はなく、端末コネクタの横ずれを規制できるものであれば、一又は複数の棒状体や突起を載置台の両サイドに立設する等、適宜設計変更して差し支えない。
また、ワイヤ仮止部も、上記仮止ユニットのように着脱可能な構造に限るものではなく、図4の形態と同様に載置台から仮止ピンを一体に立設したり、仮止ピンの数を増やしてワイヤの仮止位置を増やしたりしてもよい。よって、弾性ローラも、仮止ピンに着脱可能とするのに限らず、仮止ピンに一体に外装したり、複数の仮止ピンに夫々設けるようにしたりして差し支えない。勿論突条を設けた上記星形に限らず、単純な横断面円形とする等、ワイヤの挟持が可能であれば他の形状も採用できる。但し、上記形態のように放射方向へ均等な形状とすれば、弾性ローラの異方性がなくなるため、仮止ピンへの外装時に向きを考慮する必要がなく、組み付けが楽となる。
さらに、仮止ピンと弾性ローラとでワイヤを挟持するものに限らず、複数の仮止ピンに夫々弾性ローラを外装して、弾性ローラの間でワイヤを弾性的に挟持するようにしてもよい。
【0036】
本発明の実施形態は、先に述べた実施形態に限定されるものではなく、端末コネクタ受け治具の上方より端末コネクタを挿入し、コネクタ固定部とクシ歯部で構成するばね部で固定する方法、及び端末コネクタを載置台の所定の位置に配置した後、ばね性を有するコネクタ固定部で端末コネクタを押さえる方法も採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第一の実施形態の斜視図であり、(a)は端末コネクタ受け治具全体を示し、(b)は載置台のみを示す。
【図2】端末コネクタ受け治具への端末コネクタの装着、固定方法の説明図である。
【図3】第二の実施形態の斜視図である。
【図4】第三の実施形態の斜視図である。
【図5】第四の実施形態としてコネクタ固定部の変更例を示す断面図である。
【図6】第五の実施形態の斜視図である。
【図7】端末コネクタ受け治具の平面図である。
【図8】従来の端末コネクタ受け治具の斜視図である。
【図9】従来の端末コネクタ受け治具の斜視図である。
【図10】特許文献1の図1である。
【図11】特許文献2の図5である。
【符号の説明】
【0038】
1、11、21、40・・端末コネクタ受け治具、2、22・・支持台、3、13、23、42・・クシ歯部、4、14、24、30〜33、44・・コネクタ固定部、4a、14a、24a、44a・・逆U字形湾曲部、5、25・・載置台、5a・・取り付け穴、6・・たわみ防止リブ、7・・端末コネクタ、28・・ワイヤ仮止部、29・・ワイヤ、43・・横壁、45・・仮止ユニット、48・・仮止ピン、49・・弾性ローラ、51A、51B・・U字棒、56・・端末コネクタ、60・・平板部、60A−3,60B−3・・穴、61・・壁板、200・・ワイヤハーネス寸法管理治具、100、110・・端末コネクタ受け治具、101・・樹脂製枠、102、112・・端末コネクタ、111a・・先端抑え治具、111b・・U字治具、150・・係止部、151・・立設部、152・・端末コネクタ締結体、153・・ベース部、154・・端末コネクタ締結体締結部、155・・端末コネクタ締結体固定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネス端末に備わる端末コネクタを固定するための端末コネクタ受け治具であって、
前記端末コネクタをセットする載置台上に、前記端末コネクタにおけるワイヤの接続面に対向し、前記ワイヤが挿通可能な間隔で立設された複数の棒状体からなるクシ歯部と、そのクシ歯部とで前記端末コネクタを挟持固定するコネクタ固定部とを設けたことを特徴とする端末コネクタ受け治具。
【請求項2】
クシ歯部及びコネクタ固定部が載置台に一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載の端末コネクタ受け治具。
【請求項3】
コネクタ固定部は、載置台上の端末コネクタをクシ歯部側へ弾性的に押圧する弾性部位を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の端末コネクタ受け治具。
【請求項4】
弾性部位は逆U字形湾曲部であることを特徴とする請求項3に記載の端末コネクタ受け治具。
【請求項5】
載置台に、当該載置台上にセットされた端末コネクタのクシ歯部に対する左右の横ずれを規制する規制部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の端末コネクタ受け治具。
【請求項6】
クシ歯部内又はクシ歯部に隣接して、一又は複数のワイヤを仮止可能なワイヤ仮止部を設けたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の端末コネクタ受け治具。
【請求項7】
ワイヤ仮止部は着脱可能に設けられることを特徴とする請求項6に記載の端末コネクタ受け治具。
【請求項8】
ワイヤ仮止部は、クシ歯部の棒状体と平行に立設される複数の仮止ピンと、一又は複数の前記仮止ピンに外装される弾性ローラとで形成され、ワイヤを、前記仮止ピンと弾性ローラとの間、若しくは複数の前記弾性ローラの間で弾性的に挟持させることで仮止可能としたことを特徴とする請求項6又は7に記載の端末コネクタ受け治具。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の端末コネクタ受け治具に、ワイヤハーネス端末に備わる端末コネクタを、ワイヤの接続面をクシ歯部側にした状態で載置台の上方から前記クシ歯部とコネクタ固定部との間に配置して、前記クシ歯部とコネクタ固定部との間で前記端末コネクタを挟持固定させることを特徴とする端末コネクタの固定方法。
【請求項10】
ワイヤハーネス端末に備わる端末コネクタを固定してワイヤハーネスの位置規制を行い、ワイヤハーネスを組み立てる方法であって、
請求項1乃至8の何れかに記載の端末コネクタ受け治具に、前記端末コネクタを、ワイヤの接続面をクシ歯部側にした状態で載置台の上方から前記クシ歯部とコネクタ固定部との間に配置して、前記クシ歯部とコネクタ固定部との間で前記端末コネクタを挟持固定させて、前記ワイヤハーネスの位置規制を行うことを特徴とするワイヤハーネス組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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