端末装置、端末装置の制御方法、その制御プログラム及びその記録媒体
【課題】積算時間を長くする必要がある弱電界下において、実際の受信周波数がサーチ周波数から乖離したとしても、衛星信号との同期を実現することができる端末装置等を提供すること。
【解決手段】予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本モード、又は、サーチ周波数ごとに第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で衛星信号をサーチする特殊モードで衛星信号をサーチする信号サーチ手段を有し、特殊モードM3においては、サーチ周波数で衛星信号をサーチするとともに、所定間隔よりも狭い間隔でサーチ周波数から乖離する周波数であって、端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で衛星信号をサーチし、サーチ周波数と補助周波数の双方における積算結果を加算するように構成されている。
【解決手段】予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本モード、又は、サーチ周波数ごとに第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で衛星信号をサーチする特殊モードで衛星信号をサーチする信号サーチ手段を有し、特殊モードM3においては、サーチ周波数で衛星信号をサーチするとともに、所定間隔よりも狭い間隔でサーチ周波数から乖離する周波数であって、端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で衛星信号をサーチし、サーチ周波数と補助周波数の双方における積算結果を加算するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置、端末装置の制御方法、端末装置の制御プログラム、端末装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、位置情報衛星を使用するSPS(Satellite Positioning
System)である例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機(以下、「受信機」と呼ぶ)の現在位置を測位する測位システムが実用化されている。
受信機は、予め保存してあるGPS衛星の軌道情報等に基づいて、GPS衛星(以下、単に「衛星」とも呼ぶ)から受信する信号の信号周波数を予測して、その周波数(以下、「予測周波数」と呼ぶ)と同期することによって衛星からの信号(以下、「衛星信号」と呼ぶ)を受信するように構成されている。受信機は、そのアンテナで受信した衛星信号の周波数を、受信機内部の局部発振器のクロックを使用してダウンコンバートした上で、同期を行う。
しかし、受信機の局部発振器は、温度によって周波数が変化する(以下、「ドリフト」と呼ぶ)から、何らかの手段を講じない場合には、ダウンコンバート後の周波数(以下、「実際の受信周波数」と呼ぶ)が、予測周波数と乖離し、迅速に同期することができない。
これに対して、前回測位した時の受信機の周波数のずれを示す情報を保持し、次回の衛星からの信号受信の際には、前回の周波数のずれを示す情報に基づいて同期する技術が提案されている。
【特許文献1】特開平5−256926号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
受信機は、衛星信号を受信するために衛星信号に含まれるC/A(Coarse/Acquisition)コードと受信機が保持するレプリカC/Aコードとの相関処理を行う。
相関処理においては、コヒーレントとインコヒーレント(積算)を行う。
受信機は、予測周波数を中心とする一定の周波数帯域において、所定の周波数ステップで、相関処理を行う(以下、各周波数ステップにおける周波数を、「サーチ周波数」と呼ぶ。)。
受信機は、積算時間においては、受信機側のサーチ周波数を固定する。ところが、積算時間中においても、ドリフトは発生する。
このため、ドリフトによって、積算時間中に実際の受信周波数から乖離し、衛星信号との同期をとることができない場合がある。
特に、屋内等、衛星信号の電界強度が弱い弱電界下においては、衛星信号とノイズとの区別が難しいため、衛星信号をノイズと区別して受信するために、相関処理における積算時間(インコヒーレント時間)を長くする必要がある。
しかし、積算時間を長くすると、ドリフトが大きくなるため、実際の受信周波数は、サーチ周波数から大きく乖離し、衛星信号を効率的に受信することができないという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、実際の受信周波数がサーチ周波数から乖離したとしても、衛星信号との同期を実現することができる端末装置、端末装置の制御方法、端末装置の制御プログラム、端末装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置であって、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本モード、又は、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊モードで前記衛星信号をサーチする信号サーチ手段を有し、前記特殊モードにおいては、前記サーチ周波数ごとに前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記予想受信周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算するように構成されていることを特徴とする端末装置によって達成される。
【0006】
第1の発明の構成によれば、前記端末装置は、前記特殊モードで前記衛星信号をサーチすることができる。前記特殊モードにおける前記第2積算時間は、前記第1積算時間よりも長く規定されているから、前記特殊モードは、弱電界下において好適なサーチモードである。
そして、前記特殊モードにおいては、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチすることに加えて、複数の前記補助周波数で前記衛星信号をサーチするように構成されている。前記補助周波数は、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される。
すなわち、前記特殊モードにおいては、前記衛星信号をサーチするための周波数は、前記ドリフトを考慮して規定されている。このため、前記端末装置において前記ドリフトが生じたとしても、前記サーチ周波数と前記補助周波数において、相応の相関結果(積算結果)を得ることができる。
そして、前記特殊モードにおいては、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算するように構成されている。このため、前記端末装置は、弱電界下においても、前記衛星信号をノイズと区別することができる。
これにより、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、実際の受信周波数がサーチ周波数から乖離したとしても、衛星信号との同期を実現することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記補助周波数は、前記サーチ周波数よりも低い周波数と、前記サーチ周波数よりも高い周波数として設定されることを特徴とする端末装置である。
【0008】
第2の発明の構成によれば、ドリフトによって実際の受信周波数が高くずれても低くずれても、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、衛星信号と効率的に受信することができる。
【0009】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明のいずれかの構成において、前記補助周波数は、前記第2積算時間におけるドリフトの最大値に基づいて規定されることを特徴とする端末装置である。
【0010】
第3の発明の構成によれば、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、確実に、衛星信号と効率的に受信することができる。
【0011】
前記目的は、第4の発明によれば、SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置が、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本サーチステップと、前記端末装置が、前記基本サーチステップにおいて前記衛星信号を受信することができなかった場合に、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊サーチステップを有し、前記特殊サーチステップにおいては、 前記端末装置は、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算することを特徴とする端末装置の制御方法によって達成される。
【0012】
第4の発明の構成によれば、第1の発明の構成と同様に、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、実際の受信周波数がサーチ周波数から乖離したとしても、衛星信号との同期を実現することができる。
【0013】
前記目的は、第5の発明によれば、コンピュータに、SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置が、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本サーチステップと、前記端末装置が、前記基本サーチステップにおいて前記衛星信号を受信することができなかった場合に、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊サーチステップと、を実行させ、前記特殊サーチステップにおいては、前記端末装置は、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算することを特徴とする端末装置の制御プログラムによって達成される。
【0014】
前記目的は、第6の発明によれば、コンピュータに、SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置が、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本サーチステップと、前記端末装置が、前記基本サーチステップにおいて前記衛星信号を受信することができなかった場合に、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊サーチステップと、を実行させ、前記特殊サーチステップにおいては、前記端末装置は、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算することを特徴とする端末装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態である端末20等を示す概略図である。
図1に示すように、端末20は、複数のSPS衛星である例えば、GPS衛星12a,12b,12c及び12dから信号S1,S2,S3及びS4を受信する。そして、端末20は、信号S1等を使用して現在位置の測位を行う。端末20は、端末装置の一例である。
【0017】
図1に示すように、端末20は、建物11内に位置する。さらに、端末20は、建物11内の入口11aや窓11bから離れた場所に位置する。このため、端末20の位置において、信号S1等の電界強度は極めて弱い超弱電界である。ここで、超弱電界とは、例えば、マイナス(−)166dBm以上マイナス(−)160dBm未満を意味する。
端末20は、超弱電界においても、信号S1等を受信することができるように、以下の構成を有する。
【0018】
端末20は例えば、携帯電話機であるが、PHS(Personal Handy−phone System)、PDA(Personal Digital Assistance)等であってもよい。
【0019】
(端末20の主なハードウエア構成について)
図2は端末20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図2に示すように、端末20は、例えばコンピュータを有しており、コンピュータは、バス22を有す。バス22には、CPU(Central Processing Unit)24、記憶装置26等が接続されている。CPU24は所定のプログラムの処理を行う他、バス22に接続された記憶装置26等を制御する制御部である。記憶装置26は例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等である。
【0020】
また、このバス22には信号S1等を受信するためのGPS装置32、各種情報を表示するための表示装置34、図示しない基地局及び通信網を介して他の端末等と通信するための通信装置36が接続されている。
さらに、このバス22には時計38が接続されている。
【0021】
端末20は、CPU24等が動作するための基準クロックを発生する発振器である例えば水晶発振器(図示せず)を有する。
水晶発振器は、ドリフトが発生する。このドリフトは、温度による周波数変化である。ドリフトの特性は、端末20の製造時に測定することができる。
【0022】
上述のように、GPS装置32は、信号S1等を受信するための構成である。GPS装置32は、信号S1等をサーチし、サーチが成功するとトラッキングする。本明細書において、「サーチが成功する」ということは、「信号を受信する」と同義で使用する。
【0023】
(端末20の主なソフトウエア構成について)
図3は、端末20の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図3に示すように、端末20は、各部を制御する制御部100、図2のGPS装置32に対応するGPS部102、時計38に対応する計時部104等を有する。
端末20は、また、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する第2記憶部150を有する。
【0024】
図3に示すように、端末20は、第2記憶部150に、航法メッセージ152を格納している。航法メッセージ152は、すべてのGPS衛星12a等の概略の軌道を示すアルマナック(Almanac)152a、及び、各GPS衛星12a等の精密な軌道を示すエフェメリス(Ephemeris)152bを含む。端末20は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを、GPS衛星12a等からの信号S1等を受信してデコードすることによって取得する。
端末20は、航法メッセージ152を、信号S1等に基づく測位に使用する。
【0025】
図3に示すように、端末20は、第2記憶部150に、初期位置情報154を格納している。初期位置情報154は、初期位置P0を示す情報である。初期位置P0は、例えば、前回測位時の測位位置である。
端末20は、初期位置P0を、観測可能なGPS衛星12a等の算出等に使用する。
【0026】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、衛星信号受信プログラム112を格納している。衛星信号受信プログラム112は、制御部100が、GPS衛星12a等から、信号S1等を受信するためのプログラムである。
具体的には、制御部100は、まず、アルマナック152aを参照して、計時部104によって計測した現在時刻において観測可能なGPS衛星12a等を判断する。このとき、基準となる自己位置は、初期位置P0を使用する。
そして、制御部100は、観測可能なGPS衛星12a等からの信号S1等をサーチする。すなわち、衛星信号受信プログラム112と制御部100は、サーチ手段の一例である。
【0027】
制御部100は、信号S1等のサーチに成功すると、それらの信号S1等をトラッキング(追尾)する。なお、本明細書において、信号S1等のサーチとGPS衛星12a等のサーチは同義で使用し、信号S1等のトラッキングとGPS衛星12a等のトラッキングは同義で使用する。
【0028】
制御部100は、信号S1等を受信するために、端末20が受信したC/Aコードと、端末20内部で発生するレプリカC/Aコードとの相関をとる。
【0029】
図4は、測位方法の一例を示す概念図である。
図4は、コードフェーズを使用した測位方法を示している。
図4に示すように、例えば、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードが連続的に並んでいると観念することができる。そして、GPS衛星12aと端末20との間の距離は、C/Aコードの長さ(300キロメートル(km))の整数倍とは限らないから、コード端数部C/Aaが存在する。つまり、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードの整数倍の部分と、端数部分が存在する。C/Aコードの整数倍の部分と端数部分の合計の長さが擬似距離である。端末20は、3個以上のGPS衛星12a等についての擬似距離を使用して測位を行う。
本明細書において、C/Aコードの端数部C/Aaをコードフェーズと呼ぶ。コードフェーズは、例えば、C/Aコードの1,023あるチップの何番目かで示すこともできるし、距離に換算して示すこともできる。擬似距離を算出するときには、コードフェーズを距離に換算している。
【0030】
GPS衛星12aの軌道上の位置はエフェメリスを使用して算出可能である。エフェメリスは、GPS衛星12aの精密な軌道を示す情報である。そして、例えば、GPS衛星12aの軌道上の位置と後述の初期位置Q0との距離を算出すれば、C/Aコードの整数倍の部分を特定することができる。なお、C/Aコードの長さが300キロメートル(km)であるから、初期位置P0の位置誤差は、150キロメートル(km)以内である必要がある。
【0031】
そして、端末20は、コードフェーズ及び周波数を変動させながら、相関処理を行う。この相関処理は、後述のコヒーレント処理及びインコヒーレント処理で構成される。
相関積算値が最大になった位相がコード端数C/Aaである。
【0032】
図5及び図6は、相関処理の説明図である。
相関処理は、コヒーレントとインコヒーレントで構成される。
コヒーレントは、端末20が受信したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関をとる処理である。例えば、図5(a)に示すように、コヒーレント時間が5msecであれば、5msecの時間において同期積算したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関値等を算出する。コヒーレント処理の結果、相関をとった位相(コードフェーズ)と、相関値が出力される。
インコヒーレントは、コヒーレント結果の相関値を積算することによって、相関積算値(インコヒーレント値)を算出する処理である。インコヒーレントを行う時間を積算時間と呼ぶ。
相関処理の結果、コヒーレント処理で出力されたコードフェーズと、相関積算値が出力される。
図5(b)に示すように、相関積算値Pの最大値Pmaxに対応するコードフェーズCP1が、受信したC/Aコードのコードフェーズである。端末20は、このコードフェーズCP1を使用して、擬似距離を算出する。
【0033】
図6(a)に示すように、端末20は、C/Aコードの1チップを例えば、等間隔で分割して、相関処理を行う。C/Aコードの1チップは、例えば、32等分される。すなわち、32分の1チップの位相幅(位相幅W1)間隔で相関処理を行う。
図6(b)に示すように、端末20は、例えば、C/Aコードの第1チップから第1,023チップまでをサーチする。
このとき、端末20は、サーチ中心周波数Aを中心として、所定の幅の周波数において信号S1等をサーチする。例えば、(A−100)kHzの周波数から(A+100)kHzの周波数の範囲(以下、「サーチ範囲」と呼ぶ)を、20Hzごとの周波数で信号S1等をサーチする。
サーチ範囲は、予め規定した周波数範囲の一例である。20Hzごとの周波数は、所定間隔のサーチ周波数の一例である。
【0034】
一般的には、GPS受信器は、GPS衛星12a等からの発信周波数H1にドップラー偏移(予想ドップラー周波数)H2を加え、さらにドリフトDRを加えて、サーチ中心周波数Aを算出する。GPS衛星12a等からの発信周波数H1は既知であり、例えば、1,575.42MHzである。
ドップラー偏移は、各GPS衛星12a等とGPS受信機との相対移動によって生じる。GPS受信機は、エフェメリスによって現在時刻における各GPS衛星12a等の視線速度(端末20の方向に対する速度)を算出する。そして、その視線速度に基づいて、予想ドップラー周波数H2を算出する。
GPS受信機は、各GPS衛星12a等ごとに、サーチ中心周波数Aを算出する。
【0035】
図3に示すように、衛星信号受信プログラム112は、サーチモードM1,サーチモードM2及びサーチモードM3を有する。すなわち、制御部100は、M1,M2及びM3の3つのサーチモードを使用して、各信号S1等を受信することができる。
【0036】
図7は、サーチモードM1等の説明図である。
図8は、サーチモードM1の説明図である。
図9は、サーチモードM2の説明図である。
図10及び図11は、サーチモードM3の説明図である。
図7に示すように、サーチモードM1は、コヒーレント時間が5ミリ秒(ms)であり、積算時間が1秒(s)である。サーチモードM1は、例えば、マイナス(−)150dBm以上の強電界において好適なサーチモードである。
【0037】
図8に示すように、サーチモードM1においては、例えば、サーチ中心周波数Aにおいて、第1回目のサーチsr1が実施される。このサーチsr1の積算時間は1秒(s)である。そして、サーチ中心周波数Aを中心に、20ヘルツ(Hz)の周波数間隔で、サーチsr2乃至sr7等が実際され、サーチ範囲をサーチする。なお、各サーチsr2等においては、位相をずらせてサーチが行われるが、説明を省略する。
20ヘルツ(Hz)の周波数間隔で行うサーチSr1等を、基本サーチSr1等とも呼ぶ。基本サーチに対応する周波数、すなわち、A±20Hz×nがサーチ周波である。
【0038】
図7に示すように、サーチモードM2は、コヒーレント時間が5ミリ秒(ms)であり、積算時間が16秒(s)である。サーチモードM2は、例えば、マイナス(−)160dBm以上マイナス(−)150dBm未満の弱電界において好適なサーチモードである。
【0039】
図9に示すように、サーチモードM2においては、例えば、サーチ中心周波数Aにおいて、第1回目のサーチsr1が実施される。このサーチsr1の積算時間は16秒(s)である。そして、サーチ中心周波数Aを中心に、20ヘルツ(Hz)の周波数間隔で、サーチsr2乃至sr7等が実際され、サーチ範囲をサーチする。
上述のサーチモードM1及びサーチモードM2は、基本モードの一例である。サーチモードM1の積算時間1秒(s)及びサーチモードM2の積算時間16秒(s)は、第1積算時間の一例である。
【0040】
図7に示すように、サーチモードM3は、コヒーレント時間が5ミリ秒(ms)であり、積算時間が120秒(s)である。サーチモードM3は、例えば、マイナス(−)166dBm以上マイナス(−)160dBm未満の超弱電界において好適なサーチモードである。サーチモードM3は、特殊モードの一例である。サーチモードM3の積算時間120秒(s)は、第2積算時間の一例である。
サーチモードM3の積算時間120秒(s)は、サーチモードM1の積算時間及びサーチモードM2の積算時間よりも長い積算時間として予め規定されている。
【0041】
図10に示すように、サーチモードM3においては、例えば、サーチ中心周波数Aにおいて、第1回目のサーチsr1が実施される。このサーチsr1の積算時間は120秒(s)である。
そして、サーチsr1と並行して、補助サーチsr1a及びsr1bが実施される。
補助サーチsr1a等が実施される周波数(以下、「補助周波数」と呼ぶ)は、サーチ中心周波数Aから、例えば、5ヘルツ(Hz)乖離している。補助サーチsr1aの周波数は、サーチ中心周波数Aから、5ヘルツ(Hz)低い周波数である。補助サーチsr1bの周波数は、サーチ中心周波数Aから、5ヘルツ(Hz)高い周波数である。
補助周波数は、基本となるサーチsr1,sr2等の周波数間隔よりも狭い間隔において規定され。また、補助周波数は、サーチモードM3の積算時間における基準発振器のドリフトに基づいて規定される。具体的には、サーチモードM3の積算時間である120秒(s)の間のドリフトは、予め計測することができ、その最大値は、例えば、5ヘルツ(Hz)である。ドリフトの最大値によって規定される範囲、すなわち、サーチ中心周波数の前後5ヘルツ(Hz)の範囲をドリフト範囲と呼ぶ。
補助周波数の周波数間隔は、このドリフトの最大値以上において規定される。すなわち、補助周波数の周波数間隔は、ドリフトの最大値以上であって、基本となるサーチsr1,sr2等の周波数間隔未満である。
【0042】
制御部100は、基本サーチsr2においても、補助サーチsr2a及びsr2bを行う。同様に、基本サーチsr3乃至sr7においても補助サーチを行う。
【0043】
図11に示すように、例えば、基本サーチsr1においてはPmaxはHであり、このときのコードフェーズはCP1である。補助サーチsr1aにおいてはPmaxはHaであり、このときのコードフェーズはCP1aである。補助サーチsr1bにおいてはPmaxはHbであり、このときのコードフェーズはCP1bである。
制御部100は、基本サーチsr1におけるPmaxと、補助サーチsr1a及びsr1bにおけるPmaxを加算する。すなわち、第1回目のサーチ(基本サーチsr1及び補助サーチsr1a及びsr1b)における相関値Pmax1fは、式2に示すように、Pmax1f=H+Ha+Hbとなる。これにより、信号S1等をノイズと区別することができる。
また、コードフェーズは、基本サーチsr1及び補助サーチsr1a及びsr1bの平均とする。すなわち、第1回目のサーチ(基本サーチsr1及び補助サーチsr1a及びsr1b)におけるコードフェーズCP1fは、式3に示すように、CP1f=(CP1+CP1a+CP1b)/3となる
【0044】
制御部100は、サーチモードM1で信号S1等を受信することができない場合にサーチモードM2を起動し、サーチモードM2で信号S1等を受信することができない場合にサーチモードM3を起動するようになっている。制御部100は、各GPS衛星12a等ごとに、サーチモードM1等の切り替えを行うようになっている。
制御部100は、上述の各サーチモードM1乃至M3の積算時間の終了時に、実際のドリフトを示す情報を保持し、次回の相関処理のときの中心周波数Aの算出に使用するようになっている。具体的な方法は、例えば、上述の特開平5−256926号公報と同様である。
【0045】
制御部100は、信号S1等を受信すると、各GPS衛星12a等ごとのC/Aコードのコードフェーズを算出し、そのコードフェーズ示すメジャメント情報156を生成し、第2記憶部150に格納する。
【0046】
なお、本実施の形態とは異なり、各サーチモードM1乃至M3等における基本サーチsr1等は、同時に行うようにしてもよい。
また、本実施の形態とは異なり、サーチモードM3における補助サーチsr1a等は、中心周波数Aを中心として低い側の周波数と高い側の周波数において、それぞれ1回に限る必要はない。例えば、上述のドリフト範囲において、複数の補助サーチsr1a等を行ってもよい。図10の例では、補助サーチsr1aと基本サーチsr1との間に、1ヘルツ(Hz)の周波数間隔で3つの補助サーチを追加し、基本サーチsr1と補助サーチsr1bとの間に、1ヘルツ(Hz)の周波数間隔で3つの補助サーチを追加してもよい。補助サーチを増やすほど、効率的に信号S1等を受信することができる。すなわち、補助サーチによって基本サーチの周波数範囲以下であって、ドリフト範囲以上の周波数をカバーすることができる限り、補助サーチの数は多いほど、効率的に信号S1等を受信することができる。
【0047】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位プログラム114を格納している。測位プログラム114は、制御部100が、4個以上のGPS衛星12a等についてのコードフェーズが算出された場合に、それらのコードフェーズを使用して測位位置P1を算出するためのプログラムである。
制御部100は、測位位置P1を示す測位位置情報158を第2記憶部150に格納する。
【0048】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位位置出力プログラム116を格納している。測位位置出力プログラム116は、制御部100が、測位位置情報158を表示装置34(図2参照)に表示するためのプログラムである。
【0049】
端末20は、上述のように構成されている。
端末20は、サーチモードM3で信号S1等をサーチすることができる。サーチモードM3における積算時間は、サーチモードM1及びサーチモードM2の積算時間よりも長く規定されているから、サーチモードM3は、弱電界下において好適なサーチモードである。
そして、サーチモードM3においては、信号S1等を基本周波数でサーチすることに加えて、複数の補助周波数でサーチするように構成されている。補助周波数は、端末20の基準発振器のサーチモードM3における積算時間におけるドリフトに基づいて規定される。
すなわち、サーチモードM3においては、信号S1等をサーチするための周波数は、ドリフトを考慮して規定されている。言い換えると、端末20においてドリフトが生じたとしても、基本周波数と補助周波数において、相応の相関結果(積算結果)を得ることができる。
そして、サーチモードM3においては、基本サーチと補助サーチの双方における積算結果を加算するように構成されている。このため、端末20は、弱電界下においても、信号S1等をノイズと区別することができる。
これにより、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、実際の受信周波数がサーチ周波数から乖離したとしても、衛星信号との同期を実現することができる。
また、本実施の形態によれば、例えば、第1回目のサーチにおいて、実際の受信周波数が中心周波数A(図10参照)と乖離していたとしても、その乖離している周波数が、中心周波数Aから5Hz以内であれば、基本サーチと補助サーチの双方において相応の相関結果を得ることができ、迅速に同期を実現することができる。
本実施の形態は、積算時間を長くする必要がある、例えば、マイナス(−)160dBm以下の超弱電界下において、特に有効である。
【0050】
(本実施の形態の端末20の動作例等について)
以上のように、端末20は構成されるが、以下その動作例を説明する。
図12は端末20の動作例を示す概略フローチャートである。
まず、端末20は、サーチモードM1で信号S1等の信号受信(サーチ)を開始する(図12のステップST1)。
続いて、端末20は、サーチモードM1で信号S1等の受信ができたか否かを判断する(ステップST2)。
端末20は、サーチモードM1で信号S1等の受信ができたと判断した場合には、ステップST7に進む。
端末20は、サーチモードM1で信号S1等の受信ができないと判断した場合には、サーチモードM2で信号S1等の信号受信(サーチ)を開始する(ステップST3)。
【0051】
続いて、端末20は、サーチモードM2で信号S1等の受信ができたか否かを判断する(ステップST4)。
端末20は、サーチモードM2で信号S1等の受信ができたと判断した場合には、ステップST7に進む。
端末20は、サーチモードM2で信号S1等の受信ができないと判断した場合には、サーチモードM3で信号S1等の信号受信(サーチ)を開始する(ステップST5)。
【0052】
続いて、端末20は、サーチモードM3で信号S1等の受信ができたか否かを判断する(ステップST6)。
端末20は、サーチモードM3で信号S1等の受信ができないと判断した場合には、該当する衛星についてのサーチを中心する(ステップST7A)。
これに対して、端末20は、サーチモードM3で信号S1等の受信ができたと判断した場合には、メジャメント(C/Aコードのコードフェーズ)を算出する(ステップST7)。
【0053】
端末20は、観測可能な各GPS衛星12a等について、上述のステップST1乃至ST7を実施する。
続いて、端末20は、測位に必要な衛星数のメジャメントを算出したか否かを判断し(ステップST8)、測位に必要な衛星数のメジャメントを算出したと判断した場合には、測位を行い(ステップST9)、測位位置P1を出力する(ステップST10)。
これに対して、測位に必要な衛星数のメジャメントを算出していないと判断した場合には、ステップST1に戻る。
上述のステップによって、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、実際の受信周波数がサーチ周波数から乖離したとしても、衛星信号との同期を実現することができる。
【0054】
(プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等について)
コンピュータに上述の動作例の基本サーチステップと、特殊サーチステップ等を実行させるための端末装置の制御プログラムとすることができる。
また、このような端末装置の制御プログラム等を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等とすることもできる。
【0055】
これら端末装置の制御プログラム等をコンピュータにインストールし、コンピュータによって実行可能な状態とするために用いられるプラグラム格納媒体は、例えばフロッピー(登録商標)のようなフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc−Recordable)、CD−RW(Compact Disc−Rewritable)、DVD(Digital Versatile Disc)などのパッケージメディアのみならず、プログラムが一時的若しくは永続的に格納される半導体メモリ、磁気ディスクあるいは光磁気ディスクなどで実現することができる。
【0056】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。さらに、上述の各実施の形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態である端末等を示す概略図である。
【図2】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図3】端末の主なソフトウエア構成等を示す概略図である。
【図4】測位方法の説明図である。
【図5】相関処理の説明図である。
【図6】相関処理の説明図である。
【図7】サーチモードM1等の説明図である。
【図8】サーチモードM1の説明図である。
【図9】サーチモードM2の説明図である。
【図10】サーチモードM3の説明図である。
【図11】サーチモードM3の説明図である。
【図12】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
12a,12b,12c,12d・・・GPS衛星、20・・・端末、112・・・衛星信号受信プログラム、114・・・測位プログラム、116・・・測位位置出力プログラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置、端末装置の制御方法、端末装置の制御プログラム、端末装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、位置情報衛星を使用するSPS(Satellite Positioning
System)である例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機(以下、「受信機」と呼ぶ)の現在位置を測位する測位システムが実用化されている。
受信機は、予め保存してあるGPS衛星の軌道情報等に基づいて、GPS衛星(以下、単に「衛星」とも呼ぶ)から受信する信号の信号周波数を予測して、その周波数(以下、「予測周波数」と呼ぶ)と同期することによって衛星からの信号(以下、「衛星信号」と呼ぶ)を受信するように構成されている。受信機は、そのアンテナで受信した衛星信号の周波数を、受信機内部の局部発振器のクロックを使用してダウンコンバートした上で、同期を行う。
しかし、受信機の局部発振器は、温度によって周波数が変化する(以下、「ドリフト」と呼ぶ)から、何らかの手段を講じない場合には、ダウンコンバート後の周波数(以下、「実際の受信周波数」と呼ぶ)が、予測周波数と乖離し、迅速に同期することができない。
これに対して、前回測位した時の受信機の周波数のずれを示す情報を保持し、次回の衛星からの信号受信の際には、前回の周波数のずれを示す情報に基づいて同期する技術が提案されている。
【特許文献1】特開平5−256926号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
受信機は、衛星信号を受信するために衛星信号に含まれるC/A(Coarse/Acquisition)コードと受信機が保持するレプリカC/Aコードとの相関処理を行う。
相関処理においては、コヒーレントとインコヒーレント(積算)を行う。
受信機は、予測周波数を中心とする一定の周波数帯域において、所定の周波数ステップで、相関処理を行う(以下、各周波数ステップにおける周波数を、「サーチ周波数」と呼ぶ。)。
受信機は、積算時間においては、受信機側のサーチ周波数を固定する。ところが、積算時間中においても、ドリフトは発生する。
このため、ドリフトによって、積算時間中に実際の受信周波数から乖離し、衛星信号との同期をとることができない場合がある。
特に、屋内等、衛星信号の電界強度が弱い弱電界下においては、衛星信号とノイズとの区別が難しいため、衛星信号をノイズと区別して受信するために、相関処理における積算時間(インコヒーレント時間)を長くする必要がある。
しかし、積算時間を長くすると、ドリフトが大きくなるため、実際の受信周波数は、サーチ周波数から大きく乖離し、衛星信号を効率的に受信することができないという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、実際の受信周波数がサーチ周波数から乖離したとしても、衛星信号との同期を実現することができる端末装置、端末装置の制御方法、端末装置の制御プログラム、端末装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置であって、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本モード、又は、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊モードで前記衛星信号をサーチする信号サーチ手段を有し、前記特殊モードにおいては、前記サーチ周波数ごとに前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記予想受信周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算するように構成されていることを特徴とする端末装置によって達成される。
【0006】
第1の発明の構成によれば、前記端末装置は、前記特殊モードで前記衛星信号をサーチすることができる。前記特殊モードにおける前記第2積算時間は、前記第1積算時間よりも長く規定されているから、前記特殊モードは、弱電界下において好適なサーチモードである。
そして、前記特殊モードにおいては、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチすることに加えて、複数の前記補助周波数で前記衛星信号をサーチするように構成されている。前記補助周波数は、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される。
すなわち、前記特殊モードにおいては、前記衛星信号をサーチするための周波数は、前記ドリフトを考慮して規定されている。このため、前記端末装置において前記ドリフトが生じたとしても、前記サーチ周波数と前記補助周波数において、相応の相関結果(積算結果)を得ることができる。
そして、前記特殊モードにおいては、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算するように構成されている。このため、前記端末装置は、弱電界下においても、前記衛星信号をノイズと区別することができる。
これにより、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、実際の受信周波数がサーチ周波数から乖離したとしても、衛星信号との同期を実現することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記補助周波数は、前記サーチ周波数よりも低い周波数と、前記サーチ周波数よりも高い周波数として設定されることを特徴とする端末装置である。
【0008】
第2の発明の構成によれば、ドリフトによって実際の受信周波数が高くずれても低くずれても、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、衛星信号と効率的に受信することができる。
【0009】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明のいずれかの構成において、前記補助周波数は、前記第2積算時間におけるドリフトの最大値に基づいて規定されることを特徴とする端末装置である。
【0010】
第3の発明の構成によれば、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、確実に、衛星信号と効率的に受信することができる。
【0011】
前記目的は、第4の発明によれば、SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置が、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本サーチステップと、前記端末装置が、前記基本サーチステップにおいて前記衛星信号を受信することができなかった場合に、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊サーチステップを有し、前記特殊サーチステップにおいては、 前記端末装置は、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算することを特徴とする端末装置の制御方法によって達成される。
【0012】
第4の発明の構成によれば、第1の発明の構成と同様に、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、実際の受信周波数がサーチ周波数から乖離したとしても、衛星信号との同期を実現することができる。
【0013】
前記目的は、第5の発明によれば、コンピュータに、SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置が、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本サーチステップと、前記端末装置が、前記基本サーチステップにおいて前記衛星信号を受信することができなかった場合に、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊サーチステップと、を実行させ、前記特殊サーチステップにおいては、前記端末装置は、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算することを特徴とする端末装置の制御プログラムによって達成される。
【0014】
前記目的は、第6の発明によれば、コンピュータに、SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置が、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本サーチステップと、前記端末装置が、前記基本サーチステップにおいて前記衛星信号を受信することができなかった場合に、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊サーチステップと、を実行させ、前記特殊サーチステップにおいては、前記端末装置は、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算することを特徴とする端末装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態である端末20等を示す概略図である。
図1に示すように、端末20は、複数のSPS衛星である例えば、GPS衛星12a,12b,12c及び12dから信号S1,S2,S3及びS4を受信する。そして、端末20は、信号S1等を使用して現在位置の測位を行う。端末20は、端末装置の一例である。
【0017】
図1に示すように、端末20は、建物11内に位置する。さらに、端末20は、建物11内の入口11aや窓11bから離れた場所に位置する。このため、端末20の位置において、信号S1等の電界強度は極めて弱い超弱電界である。ここで、超弱電界とは、例えば、マイナス(−)166dBm以上マイナス(−)160dBm未満を意味する。
端末20は、超弱電界においても、信号S1等を受信することができるように、以下の構成を有する。
【0018】
端末20は例えば、携帯電話機であるが、PHS(Personal Handy−phone System)、PDA(Personal Digital Assistance)等であってもよい。
【0019】
(端末20の主なハードウエア構成について)
図2は端末20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図2に示すように、端末20は、例えばコンピュータを有しており、コンピュータは、バス22を有す。バス22には、CPU(Central Processing Unit)24、記憶装置26等が接続されている。CPU24は所定のプログラムの処理を行う他、バス22に接続された記憶装置26等を制御する制御部である。記憶装置26は例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等である。
【0020】
また、このバス22には信号S1等を受信するためのGPS装置32、各種情報を表示するための表示装置34、図示しない基地局及び通信網を介して他の端末等と通信するための通信装置36が接続されている。
さらに、このバス22には時計38が接続されている。
【0021】
端末20は、CPU24等が動作するための基準クロックを発生する発振器である例えば水晶発振器(図示せず)を有する。
水晶発振器は、ドリフトが発生する。このドリフトは、温度による周波数変化である。ドリフトの特性は、端末20の製造時に測定することができる。
【0022】
上述のように、GPS装置32は、信号S1等を受信するための構成である。GPS装置32は、信号S1等をサーチし、サーチが成功するとトラッキングする。本明細書において、「サーチが成功する」ということは、「信号を受信する」と同義で使用する。
【0023】
(端末20の主なソフトウエア構成について)
図3は、端末20の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図3に示すように、端末20は、各部を制御する制御部100、図2のGPS装置32に対応するGPS部102、時計38に対応する計時部104等を有する。
端末20は、また、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する第2記憶部150を有する。
【0024】
図3に示すように、端末20は、第2記憶部150に、航法メッセージ152を格納している。航法メッセージ152は、すべてのGPS衛星12a等の概略の軌道を示すアルマナック(Almanac)152a、及び、各GPS衛星12a等の精密な軌道を示すエフェメリス(Ephemeris)152bを含む。端末20は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを、GPS衛星12a等からの信号S1等を受信してデコードすることによって取得する。
端末20は、航法メッセージ152を、信号S1等に基づく測位に使用する。
【0025】
図3に示すように、端末20は、第2記憶部150に、初期位置情報154を格納している。初期位置情報154は、初期位置P0を示す情報である。初期位置P0は、例えば、前回測位時の測位位置である。
端末20は、初期位置P0を、観測可能なGPS衛星12a等の算出等に使用する。
【0026】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、衛星信号受信プログラム112を格納している。衛星信号受信プログラム112は、制御部100が、GPS衛星12a等から、信号S1等を受信するためのプログラムである。
具体的には、制御部100は、まず、アルマナック152aを参照して、計時部104によって計測した現在時刻において観測可能なGPS衛星12a等を判断する。このとき、基準となる自己位置は、初期位置P0を使用する。
そして、制御部100は、観測可能なGPS衛星12a等からの信号S1等をサーチする。すなわち、衛星信号受信プログラム112と制御部100は、サーチ手段の一例である。
【0027】
制御部100は、信号S1等のサーチに成功すると、それらの信号S1等をトラッキング(追尾)する。なお、本明細書において、信号S1等のサーチとGPS衛星12a等のサーチは同義で使用し、信号S1等のトラッキングとGPS衛星12a等のトラッキングは同義で使用する。
【0028】
制御部100は、信号S1等を受信するために、端末20が受信したC/Aコードと、端末20内部で発生するレプリカC/Aコードとの相関をとる。
【0029】
図4は、測位方法の一例を示す概念図である。
図4は、コードフェーズを使用した測位方法を示している。
図4に示すように、例えば、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードが連続的に並んでいると観念することができる。そして、GPS衛星12aと端末20との間の距離は、C/Aコードの長さ(300キロメートル(km))の整数倍とは限らないから、コード端数部C/Aaが存在する。つまり、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードの整数倍の部分と、端数部分が存在する。C/Aコードの整数倍の部分と端数部分の合計の長さが擬似距離である。端末20は、3個以上のGPS衛星12a等についての擬似距離を使用して測位を行う。
本明細書において、C/Aコードの端数部C/Aaをコードフェーズと呼ぶ。コードフェーズは、例えば、C/Aコードの1,023あるチップの何番目かで示すこともできるし、距離に換算して示すこともできる。擬似距離を算出するときには、コードフェーズを距離に換算している。
【0030】
GPS衛星12aの軌道上の位置はエフェメリスを使用して算出可能である。エフェメリスは、GPS衛星12aの精密な軌道を示す情報である。そして、例えば、GPS衛星12aの軌道上の位置と後述の初期位置Q0との距離を算出すれば、C/Aコードの整数倍の部分を特定することができる。なお、C/Aコードの長さが300キロメートル(km)であるから、初期位置P0の位置誤差は、150キロメートル(km)以内である必要がある。
【0031】
そして、端末20は、コードフェーズ及び周波数を変動させながら、相関処理を行う。この相関処理は、後述のコヒーレント処理及びインコヒーレント処理で構成される。
相関積算値が最大になった位相がコード端数C/Aaである。
【0032】
図5及び図6は、相関処理の説明図である。
相関処理は、コヒーレントとインコヒーレントで構成される。
コヒーレントは、端末20が受信したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関をとる処理である。例えば、図5(a)に示すように、コヒーレント時間が5msecであれば、5msecの時間において同期積算したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関値等を算出する。コヒーレント処理の結果、相関をとった位相(コードフェーズ)と、相関値が出力される。
インコヒーレントは、コヒーレント結果の相関値を積算することによって、相関積算値(インコヒーレント値)を算出する処理である。インコヒーレントを行う時間を積算時間と呼ぶ。
相関処理の結果、コヒーレント処理で出力されたコードフェーズと、相関積算値が出力される。
図5(b)に示すように、相関積算値Pの最大値Pmaxに対応するコードフェーズCP1が、受信したC/Aコードのコードフェーズである。端末20は、このコードフェーズCP1を使用して、擬似距離を算出する。
【0033】
図6(a)に示すように、端末20は、C/Aコードの1チップを例えば、等間隔で分割して、相関処理を行う。C/Aコードの1チップは、例えば、32等分される。すなわち、32分の1チップの位相幅(位相幅W1)間隔で相関処理を行う。
図6(b)に示すように、端末20は、例えば、C/Aコードの第1チップから第1,023チップまでをサーチする。
このとき、端末20は、サーチ中心周波数Aを中心として、所定の幅の周波数において信号S1等をサーチする。例えば、(A−100)kHzの周波数から(A+100)kHzの周波数の範囲(以下、「サーチ範囲」と呼ぶ)を、20Hzごとの周波数で信号S1等をサーチする。
サーチ範囲は、予め規定した周波数範囲の一例である。20Hzごとの周波数は、所定間隔のサーチ周波数の一例である。
【0034】
一般的には、GPS受信器は、GPS衛星12a等からの発信周波数H1にドップラー偏移(予想ドップラー周波数)H2を加え、さらにドリフトDRを加えて、サーチ中心周波数Aを算出する。GPS衛星12a等からの発信周波数H1は既知であり、例えば、1,575.42MHzである。
ドップラー偏移は、各GPS衛星12a等とGPS受信機との相対移動によって生じる。GPS受信機は、エフェメリスによって現在時刻における各GPS衛星12a等の視線速度(端末20の方向に対する速度)を算出する。そして、その視線速度に基づいて、予想ドップラー周波数H2を算出する。
GPS受信機は、各GPS衛星12a等ごとに、サーチ中心周波数Aを算出する。
【0035】
図3に示すように、衛星信号受信プログラム112は、サーチモードM1,サーチモードM2及びサーチモードM3を有する。すなわち、制御部100は、M1,M2及びM3の3つのサーチモードを使用して、各信号S1等を受信することができる。
【0036】
図7は、サーチモードM1等の説明図である。
図8は、サーチモードM1の説明図である。
図9は、サーチモードM2の説明図である。
図10及び図11は、サーチモードM3の説明図である。
図7に示すように、サーチモードM1は、コヒーレント時間が5ミリ秒(ms)であり、積算時間が1秒(s)である。サーチモードM1は、例えば、マイナス(−)150dBm以上の強電界において好適なサーチモードである。
【0037】
図8に示すように、サーチモードM1においては、例えば、サーチ中心周波数Aにおいて、第1回目のサーチsr1が実施される。このサーチsr1の積算時間は1秒(s)である。そして、サーチ中心周波数Aを中心に、20ヘルツ(Hz)の周波数間隔で、サーチsr2乃至sr7等が実際され、サーチ範囲をサーチする。なお、各サーチsr2等においては、位相をずらせてサーチが行われるが、説明を省略する。
20ヘルツ(Hz)の周波数間隔で行うサーチSr1等を、基本サーチSr1等とも呼ぶ。基本サーチに対応する周波数、すなわち、A±20Hz×nがサーチ周波である。
【0038】
図7に示すように、サーチモードM2は、コヒーレント時間が5ミリ秒(ms)であり、積算時間が16秒(s)である。サーチモードM2は、例えば、マイナス(−)160dBm以上マイナス(−)150dBm未満の弱電界において好適なサーチモードである。
【0039】
図9に示すように、サーチモードM2においては、例えば、サーチ中心周波数Aにおいて、第1回目のサーチsr1が実施される。このサーチsr1の積算時間は16秒(s)である。そして、サーチ中心周波数Aを中心に、20ヘルツ(Hz)の周波数間隔で、サーチsr2乃至sr7等が実際され、サーチ範囲をサーチする。
上述のサーチモードM1及びサーチモードM2は、基本モードの一例である。サーチモードM1の積算時間1秒(s)及びサーチモードM2の積算時間16秒(s)は、第1積算時間の一例である。
【0040】
図7に示すように、サーチモードM3は、コヒーレント時間が5ミリ秒(ms)であり、積算時間が120秒(s)である。サーチモードM3は、例えば、マイナス(−)166dBm以上マイナス(−)160dBm未満の超弱電界において好適なサーチモードである。サーチモードM3は、特殊モードの一例である。サーチモードM3の積算時間120秒(s)は、第2積算時間の一例である。
サーチモードM3の積算時間120秒(s)は、サーチモードM1の積算時間及びサーチモードM2の積算時間よりも長い積算時間として予め規定されている。
【0041】
図10に示すように、サーチモードM3においては、例えば、サーチ中心周波数Aにおいて、第1回目のサーチsr1が実施される。このサーチsr1の積算時間は120秒(s)である。
そして、サーチsr1と並行して、補助サーチsr1a及びsr1bが実施される。
補助サーチsr1a等が実施される周波数(以下、「補助周波数」と呼ぶ)は、サーチ中心周波数Aから、例えば、5ヘルツ(Hz)乖離している。補助サーチsr1aの周波数は、サーチ中心周波数Aから、5ヘルツ(Hz)低い周波数である。補助サーチsr1bの周波数は、サーチ中心周波数Aから、5ヘルツ(Hz)高い周波数である。
補助周波数は、基本となるサーチsr1,sr2等の周波数間隔よりも狭い間隔において規定され。また、補助周波数は、サーチモードM3の積算時間における基準発振器のドリフトに基づいて規定される。具体的には、サーチモードM3の積算時間である120秒(s)の間のドリフトは、予め計測することができ、その最大値は、例えば、5ヘルツ(Hz)である。ドリフトの最大値によって規定される範囲、すなわち、サーチ中心周波数の前後5ヘルツ(Hz)の範囲をドリフト範囲と呼ぶ。
補助周波数の周波数間隔は、このドリフトの最大値以上において規定される。すなわち、補助周波数の周波数間隔は、ドリフトの最大値以上であって、基本となるサーチsr1,sr2等の周波数間隔未満である。
【0042】
制御部100は、基本サーチsr2においても、補助サーチsr2a及びsr2bを行う。同様に、基本サーチsr3乃至sr7においても補助サーチを行う。
【0043】
図11に示すように、例えば、基本サーチsr1においてはPmaxはHであり、このときのコードフェーズはCP1である。補助サーチsr1aにおいてはPmaxはHaであり、このときのコードフェーズはCP1aである。補助サーチsr1bにおいてはPmaxはHbであり、このときのコードフェーズはCP1bである。
制御部100は、基本サーチsr1におけるPmaxと、補助サーチsr1a及びsr1bにおけるPmaxを加算する。すなわち、第1回目のサーチ(基本サーチsr1及び補助サーチsr1a及びsr1b)における相関値Pmax1fは、式2に示すように、Pmax1f=H+Ha+Hbとなる。これにより、信号S1等をノイズと区別することができる。
また、コードフェーズは、基本サーチsr1及び補助サーチsr1a及びsr1bの平均とする。すなわち、第1回目のサーチ(基本サーチsr1及び補助サーチsr1a及びsr1b)におけるコードフェーズCP1fは、式3に示すように、CP1f=(CP1+CP1a+CP1b)/3となる
【0044】
制御部100は、サーチモードM1で信号S1等を受信することができない場合にサーチモードM2を起動し、サーチモードM2で信号S1等を受信することができない場合にサーチモードM3を起動するようになっている。制御部100は、各GPS衛星12a等ごとに、サーチモードM1等の切り替えを行うようになっている。
制御部100は、上述の各サーチモードM1乃至M3の積算時間の終了時に、実際のドリフトを示す情報を保持し、次回の相関処理のときの中心周波数Aの算出に使用するようになっている。具体的な方法は、例えば、上述の特開平5−256926号公報と同様である。
【0045】
制御部100は、信号S1等を受信すると、各GPS衛星12a等ごとのC/Aコードのコードフェーズを算出し、そのコードフェーズ示すメジャメント情報156を生成し、第2記憶部150に格納する。
【0046】
なお、本実施の形態とは異なり、各サーチモードM1乃至M3等における基本サーチsr1等は、同時に行うようにしてもよい。
また、本実施の形態とは異なり、サーチモードM3における補助サーチsr1a等は、中心周波数Aを中心として低い側の周波数と高い側の周波数において、それぞれ1回に限る必要はない。例えば、上述のドリフト範囲において、複数の補助サーチsr1a等を行ってもよい。図10の例では、補助サーチsr1aと基本サーチsr1との間に、1ヘルツ(Hz)の周波数間隔で3つの補助サーチを追加し、基本サーチsr1と補助サーチsr1bとの間に、1ヘルツ(Hz)の周波数間隔で3つの補助サーチを追加してもよい。補助サーチを増やすほど、効率的に信号S1等を受信することができる。すなわち、補助サーチによって基本サーチの周波数範囲以下であって、ドリフト範囲以上の周波数をカバーすることができる限り、補助サーチの数は多いほど、効率的に信号S1等を受信することができる。
【0047】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位プログラム114を格納している。測位プログラム114は、制御部100が、4個以上のGPS衛星12a等についてのコードフェーズが算出された場合に、それらのコードフェーズを使用して測位位置P1を算出するためのプログラムである。
制御部100は、測位位置P1を示す測位位置情報158を第2記憶部150に格納する。
【0048】
図3に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位位置出力プログラム116を格納している。測位位置出力プログラム116は、制御部100が、測位位置情報158を表示装置34(図2参照)に表示するためのプログラムである。
【0049】
端末20は、上述のように構成されている。
端末20は、サーチモードM3で信号S1等をサーチすることができる。サーチモードM3における積算時間は、サーチモードM1及びサーチモードM2の積算時間よりも長く規定されているから、サーチモードM3は、弱電界下において好適なサーチモードである。
そして、サーチモードM3においては、信号S1等を基本周波数でサーチすることに加えて、複数の補助周波数でサーチするように構成されている。補助周波数は、端末20の基準発振器のサーチモードM3における積算時間におけるドリフトに基づいて規定される。
すなわち、サーチモードM3においては、信号S1等をサーチするための周波数は、ドリフトを考慮して規定されている。言い換えると、端末20においてドリフトが生じたとしても、基本周波数と補助周波数において、相応の相関結果(積算結果)を得ることができる。
そして、サーチモードM3においては、基本サーチと補助サーチの双方における積算結果を加算するように構成されている。このため、端末20は、弱電界下においても、信号S1等をノイズと区別することができる。
これにより、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、実際の受信周波数がサーチ周波数から乖離したとしても、衛星信号との同期を実現することができる。
また、本実施の形態によれば、例えば、第1回目のサーチにおいて、実際の受信周波数が中心周波数A(図10参照)と乖離していたとしても、その乖離している周波数が、中心周波数Aから5Hz以内であれば、基本サーチと補助サーチの双方において相応の相関結果を得ることができ、迅速に同期を実現することができる。
本実施の形態は、積算時間を長くする必要がある、例えば、マイナス(−)160dBm以下の超弱電界下において、特に有効である。
【0050】
(本実施の形態の端末20の動作例等について)
以上のように、端末20は構成されるが、以下その動作例を説明する。
図12は端末20の動作例を示す概略フローチャートである。
まず、端末20は、サーチモードM1で信号S1等の信号受信(サーチ)を開始する(図12のステップST1)。
続いて、端末20は、サーチモードM1で信号S1等の受信ができたか否かを判断する(ステップST2)。
端末20は、サーチモードM1で信号S1等の受信ができたと判断した場合には、ステップST7に進む。
端末20は、サーチモードM1で信号S1等の受信ができないと判断した場合には、サーチモードM2で信号S1等の信号受信(サーチ)を開始する(ステップST3)。
【0051】
続いて、端末20は、サーチモードM2で信号S1等の受信ができたか否かを判断する(ステップST4)。
端末20は、サーチモードM2で信号S1等の受信ができたと判断した場合には、ステップST7に進む。
端末20は、サーチモードM2で信号S1等の受信ができないと判断した場合には、サーチモードM3で信号S1等の信号受信(サーチ)を開始する(ステップST5)。
【0052】
続いて、端末20は、サーチモードM3で信号S1等の受信ができたか否かを判断する(ステップST6)。
端末20は、サーチモードM3で信号S1等の受信ができないと判断した場合には、該当する衛星についてのサーチを中心する(ステップST7A)。
これに対して、端末20は、サーチモードM3で信号S1等の受信ができたと判断した場合には、メジャメント(C/Aコードのコードフェーズ)を算出する(ステップST7)。
【0053】
端末20は、観測可能な各GPS衛星12a等について、上述のステップST1乃至ST7を実施する。
続いて、端末20は、測位に必要な衛星数のメジャメントを算出したか否かを判断し(ステップST8)、測位に必要な衛星数のメジャメントを算出したと判断した場合には、測位を行い(ステップST9)、測位位置P1を出力する(ステップST10)。
これに対して、測位に必要な衛星数のメジャメントを算出していないと判断した場合には、ステップST1に戻る。
上述のステップによって、積算時間を長くする必要がある弱電界下において、実際の受信周波数がサーチ周波数から乖離したとしても、衛星信号との同期を実現することができる。
【0054】
(プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等について)
コンピュータに上述の動作例の基本サーチステップと、特殊サーチステップ等を実行させるための端末装置の制御プログラムとすることができる。
また、このような端末装置の制御プログラム等を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等とすることもできる。
【0055】
これら端末装置の制御プログラム等をコンピュータにインストールし、コンピュータによって実行可能な状態とするために用いられるプラグラム格納媒体は、例えばフロッピー(登録商標)のようなフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc−Recordable)、CD−RW(Compact Disc−Rewritable)、DVD(Digital Versatile Disc)などのパッケージメディアのみならず、プログラムが一時的若しくは永続的に格納される半導体メモリ、磁気ディスクあるいは光磁気ディスクなどで実現することができる。
【0056】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。さらに、上述の各実施の形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態である端末等を示す概略図である。
【図2】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図3】端末の主なソフトウエア構成等を示す概略図である。
【図4】測位方法の説明図である。
【図5】相関処理の説明図である。
【図6】相関処理の説明図である。
【図7】サーチモードM1等の説明図である。
【図8】サーチモードM1の説明図である。
【図9】サーチモードM2の説明図である。
【図10】サーチモードM3の説明図である。
【図11】サーチモードM3の説明図である。
【図12】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
12a,12b,12c,12d・・・GPS衛星、20・・・端末、112・・・衛星信号受信プログラム、114・・・測位プログラム、116・・・測位位置出力プログラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SPS(Satellite Positioing System)衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置であって、
予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本モード、又は、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊モードで前記衛星信号をサーチする信号サーチ手段を有し、
前記特殊モードにおいては、
前記サーチ周波数ごとに前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記予想受信周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算するように構成されていることを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記補助周波数は、前記サーチ周波数よりも低い周波数と、前記サーチ周波数よりも高い周波数として設定されることを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記補助周波数は、前記第2積算時間におけるドリフトの最大値に基づいて規定されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の端末装置。
【請求項4】
SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置が、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本サーチステップと、
前記端末装置が、前記基本サーチステップにおいて前記衛星信号を受信することができなかった場合に、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊サーチステップを有し、
前記特殊サーチステップにおいては、
前記端末装置は、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算することを特徴とする端末装置の制御方法。
【請求項5】
コンピュータに、
SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置が、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本サーチステップと、
前記端末装置が、前記基本サーチステップにおいて前記衛星信号を受信することができなかった場合に、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊サーチステップと、
を実行させ、
前記特殊サーチステップにおいては、
前記端末装置は、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算することを特徴とする端末装置の制御プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置が、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本サーチステップと、
前記端末装置が、前記基本サーチステップにおいて前記衛星信号を受信することができなかった場合に、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊サーチステップと、
を実行させ、
前記特殊サーチステップにおいては、
前記端末装置は、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算することを特徴とする端末装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
SPS(Satellite Positioing System)衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置であって、
予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本モード、又は、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊モードで前記衛星信号をサーチする信号サーチ手段を有し、
前記特殊モードにおいては、
前記サーチ周波数ごとに前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記予想受信周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算するように構成されていることを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記補助周波数は、前記サーチ周波数よりも低い周波数と、前記サーチ周波数よりも高い周波数として設定されることを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記補助周波数は、前記第2積算時間におけるドリフトの最大値に基づいて規定されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の端末装置。
【請求項4】
SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置が、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本サーチステップと、
前記端末装置が、前記基本サーチステップにおいて前記衛星信号を受信することができなかった場合に、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊サーチステップを有し、
前記特殊サーチステップにおいては、
前記端末装置は、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算することを特徴とする端末装置の制御方法。
【請求項5】
コンピュータに、
SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置が、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本サーチステップと、
前記端末装置が、前記基本サーチステップにおいて前記衛星信号を受信することができなかった場合に、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊サーチステップと、
を実行させ、
前記特殊サーチステップにおいては、
前記端末装置は、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算することを特徴とする端末装置の制御プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
SPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う端末装置が、予め規定した周波数範囲を所定間隔のサーチ周波数ごとに予め規定した第1積算時間で前記衛星信号をサーチする基本サーチステップと、
前記端末装置が、前記基本サーチステップにおいて前記衛星信号を受信することができなかった場合に、前記サーチ周波数ごとに前記第1積算時間よりも長い積算時間として予め規定した第2積算時間で前記衛星信号をサーチする特殊サーチステップと、
を実行させ、
前記特殊サーチステップにおいては、
前記端末装置は、前記サーチ周波数で前記衛星信号をサーチするとともに、前記所定間隔よりも狭い間隔で前記サーチ周波数から乖離する周波数であって、前記端末装置の基準発振器の前記第2積算時間におけるドリフトに基づいて規定される複数の補助周波数で前記衛星信号をサーチし、前記サーチ周波数と前記補助周波数の双方における積算結果を加算することを特徴とする端末装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−64589(P2008−64589A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242421(P2006−242421)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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