説明

竹杭組みとそれを用いた護岸構造及びその形成方法

【課題】 軽く安価な材料を利用し、運搬や施工を手作業で容易に行え、土留や流砂抑制の杭に使用できる竹杭組みとそれを用いた護岸構造及びその形成方法を提供すること。
【解決手段】 3本の竹を組み合わせて構成した竹杭組みであって、節抜きにより筒内に通気性を具備した略筒状の竹杭を、略同一の長さで3本束ねて、略三角棒状に一体化させたことを特徴とする。竹杭組みの下端を、略三角錐状に切断加工して杭打ちを行いやすくし、竹杭組みの複数箇所で縄により縛って一体化して強度向上させてもよい。竹杭組みを土留用の杭に用いてもよいし、竹杭組みを多数用い、その互いに隣接する竹杭組みの略三角形の辺同士が対向する配置で、岸に対して略垂直な方向に略直線状に配列して植設して護岸構造を形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜面や階段等の土留や、湖沼や河川や海岸等の岸辺の護岸構造などに用いられる杭と、その杭を使用した構造物、並びに、その構造物の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
斜面や階段等の土留に使用される従来の杭は、コンクリートの成型物や丸太であり、重量や価格の点で芳しくなかった。
【0003】
また、水流によって岸辺の土砂が流されるのを防止する護岸手段には、コンクリート等によって岸を被覆したり、杭打ちを施すことが知られている。
コンクリート等によって岸を被覆する従来技術には、例えば特許文献1が挙げられる。
しかし、そのような人工的な建造は、施工に多大の経費がかかり、自然の景観を損ねたり、生態系への影響が出ることがある。
【0004】
【特許文献1】特開平11−181738「護岸材」
【0005】
杭打ちを施すことで護岸する従来技術としては、特許文献2〜6が挙げられる。
しかし、従来使用される杭は、径20cm程の丸太等の重い材料であった。重いために、その施工方法は、例えば特許文献6に開示されているように船舶や重機を要し、運搬や施工が大がかりである。また、丸太自体の価格も安くはない。
【0006】
【特許文献2】特開2003−328336「環境保全型護岸構造体」
【特許文献3】特開2003−253644「護岸構造」
【特許文献4】特開2001−172935「杭打ち護岸工法」
【特許文献5】特開平11−166217「護岸構造」
【特許文献6】特開平9−195273「護岸などにおける杭打込み用孔の形成方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、軽く安価な材料を利用し、運搬や施工を手作業で容易に行え、土留や流砂抑制の杭に使用できる竹杭組みとそれを用いた護岸構造及びその形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の竹杭組みは次の構成を備える。
すなわち、3本の竹を組み合わせて構成した竹杭組みであって、節抜きにより筒内に通気性を具備した略筒状の竹杭を、略同一の長さで3本束ねて、略三角棒状に一体化させたことを特徴とする。
【0009】
ここで、竹杭組みの下端を、略三角錐状に切断加工して、杭打ちを行いやすくしてもよい。
【0010】
竹杭組みの複数箇所で縄により縛られ一体化されたものを用い、一体化の強度に寄与させてもよい。
【0011】
本発明の護岸構造は、岸辺に杭打ちを施して流砂を抑制する護岸構造であって、前記の竹杭組みを多数用い、その互いに隣接する竹杭組みの略三角形の辺同士が対向する配置で、岸に対して略垂直な方向に略直線状に配列して植設したことを特徴とする。
【0012】
ここで、岸から遠隔の竹杭の上部に、危険性を周知させる標識手段を付設して、安全性に寄与させてもよい。
【0013】
竹杭の径としては、4〜13cm、より好ましくは6〜11cm、竹杭の長さとしては、100〜400cm、より好ましくは200〜250cm、竹杭組みの下端の尖鋭角度としては、10〜50°、より好ましくは20〜40°、竹杭組みの土壌への植設深度としては、50〜230cm、より好ましくは120〜210cm、多数の竹杭組みを配列する距離としては、5〜50m、より好ましくは20〜40mが有効である。
【0014】
本発明の護岸構造の形成方法は、岸辺に杭打ちを施して流砂を抑制する護岸構造の形成方法であって、前記の竹杭組みを多数用い、竹杭組みを植設する位置の土壌を、水圧により掘って穴を形成し、その穴に竹杭組みを植設し、隣接する竹杭組みを、略三角形の辺同士が互いに対向する配置で、岸に対して略垂直な方向に略直線状に配列して植設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記構成を備えることにより次の効果を奏する。
すなわち、節抜きにより筒内に通気性を具備した略筒状の竹杭を用いるため、従来の丸太等に比べ軽く安価であり、運搬や施工を容易に行える。また、竹材には、耐久性に優れ、自然の景観を保つ効果もある。
その竹杭を斜面や階段等に使用すれば土留に有効であり、岸辺に用いれば護岸に寄与する。なお、竹材を護岸工事に利用することで、竹資源の新たな利用が拡大され、竹資源の有効活用を図ることができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記の例示に限らず、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で、前記特許文献など従来公知の技術を用いて適宜設計変更可能である。
【0017】
図1は、竹杭組みの要部を示す正面図及び平面図である。
各竹杭(10)は、土壌への植設時の抵抗を軽減させたり、植設後に水中で浮かないように、予め節抜きにより筒内に通気性が具備されたものを使用する。
3本の竹杭(10)を束ねて、荒縄等の縄類(20)により縛って一体化し、略三角棒状の竹杭組み(30)を形成する。荒縄(20)によって縛る部位は、3〜4箇所などの複数箇所で縛って固定する。
竹杭(10)の径としては、4〜13cm、より好ましくは6〜11cmであり、竹杭(10)の長さとしては、100〜400cm、より好ましくは200〜250cmである。
【0018】
竹杭組み(30)の下端(31)は、鋸等によって略三角錐状に切断加工され、杭打ちを行いやすくする。下端(31)の形状は略三角錐状に限らず、略四角錐状や、略六角錐状や、略円錐状などでもよい。
竹杭組み(30)の下端(31)の尖鋭角度としては、10〜50°、より好ましくは20〜40°である。
この竹杭組み(30)は、軽量で耐久性にも優れるので単品として、斜面や階段等の土留に使用される杭に有効である。
【0019】
図2は、竹杭組みを岸辺に配設する様態を示す平面説明図である。
竹杭組み(30)は、隣接する竹杭組み(30)(30)の略三角形の辺同士が対向するように配置され、竹杭組み(30)の列が、隙間少なく略線状に構成される。
その竹杭組み(30)の列は、陸域(40)から水域(50)にかけて、略直線状に植設される。図示の例のように、岸に対して略垂直な方向に直線状に植設してもよいし、岸に垂直な方向に対して30°程傾斜させてもよいし、緩曲線状に配列してもよい。
【0020】
図3は、別実施例の竹杭組みの要部を示す正面図及び平面図である。
図1に示した竹杭組み(30)とは、荒縄(20)によって縛られた3本の竹杭(10)の隙間に、細いポール(21)が付設されている点が異なる。ポール(21)の上部には、蛍光テープや旗等の標識手段(22)を設けられている。
この竹杭組み(30a)は、岸から遠隔の位置に配設する。これにより、水深が増して多くの竹杭組み(30)が水没した時にも、竹杭組み(30)の存在を示して、危険性を周知させることができる。
【0021】
図4は、竹杭組みを植設する様態を示す正面説明図である。
放水装置(60)のノズル(61)を、竹杭組み(30)を植設する位置の土壌(41)に向け、水圧により穴を掘って竹杭組み(30)を設置しやすくする。
竹杭組み(30)の土壌への植設深度としては、50〜230cm、より好ましくは120〜210cmである。
【0022】
図5は、竹杭組みを岸辺に配設し、流砂を抑制した様態を示す平面説明図である。
多数の竹杭組み(30)を配列する距離としては、5〜50m、より好ましくは20〜40mが有効である。
流砂(42)は、略直線状に配列された竹杭組み(30)の列によって移動が抑制され、水流の向きに応じて、竹杭組み(30)の列のいずれかの側に堆積する。
【0023】
図6のように、竹杭組み(30)の列の先端部に、岸と略平行な方向へ、竹杭組み(30b)の列を付設してもよい。これによると、竹杭組み(30)の先端部で流砂(42)が滞留するので、流砂(42)の移動を一層抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によると、運搬や施工を容易に行え、斜面や階段等の土留に使用される杭に有効であり、また、岸辺の水流によって移動される流砂を有効に抑制できるので、湖沼や河川や海岸等の様々な岸辺の護岸に適用可能であり、産業上利用価値が高い。なお、竹材を護岸工事に利用することで、竹資源の新たな利用が拡大され、竹資源の有効活用を図ることができる。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】竹杭組みの要部を示す正面図及び平面図
【図2】竹杭組みを岸辺に配設する様態を示す平面説明図
【図3】別実施例の竹杭組みの要部を示す正面図及び平面図
【図4】竹杭組みを植設する様態を示す正面説明図
【図5】竹杭組みを岸辺に配設し流砂を抑制した様態を示す平面説明図
【図6】同、別実施例
【符号の説明】
【0026】
10 竹杭
11 節
20 縄類
21 ポール
22 標識手段
30、30a、30b 竹杭組み
31 竹杭組みの下端
40 陸域
41 土壌
42 流砂
50 水域
51 水
60 放水装置
61 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本の竹を組み合わせて構成した竹杭組みであって、
節抜きにより筒内に通気性を具備した略筒状の竹杭を、
略同一の長さで3本束ねて、略三角棒状に一体化させた
ことを特徴とする竹杭組み。
【請求項2】
竹杭組みが、
複数箇所で縄により縛られ一体化され、
竹杭組みの下端が、
略三角錐状に切断加工された
請求項1に記載の竹杭組み。
【請求項3】
岸辺に杭打ちを施して流砂を抑制する護岸構造であって、
請求項1または2に記載の竹杭組みを多数用い、
その互いに隣接する竹杭組みの略三角形の辺同士が対向する配置で、岸に対して略垂直な方向に略直線状に配列して植設し、
岸から遠隔の竹杭の上部に、
危険性を周知させる標識手段を付設し、
竹杭の径が、4〜13cm、より好ましくは6〜11cm、
竹杭の長さが、100〜400cm、より好ましくは200〜250cm、
竹杭組みの下端の尖鋭角度が、10〜50°、より好ましくは20〜40°、
竹杭組みの土壌への植設深度が、50〜230cm、より好ましくは120〜210cm、
多数の竹杭組みを配列する距離が、5〜50m、より好ましくは20〜40mである
請求項1または2に記載の護岸構造。
【請求項4】
岸辺に杭打ちを施して流砂を抑制する護岸構造の形成方法であって、
請求項1ないし3に記載の竹杭組みを多数用い、
竹杭組みを植設する位置の土壌を、水圧により掘って穴を形成し、
その穴に竹杭組みを植設し、
隣接する竹杭組みを、略三角形の辺同士が互いに対向する配置で、岸に対して略垂直な方向に略直線状に配列して植設する
ことを特徴とする護岸構造の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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