説明

竹炭成形炭及びその製造方法

【課題】軽鬆で吸着性の高い竹炭粉砕粒子を、デンプンとショ糖のみを固着剤として、人畜無害な材料のみで作られた竹炭成形炭及びその製造方法を提供する。また、備長炭等の堅炭以上の機能と特徴を有し、使い勝手の良い竹炭成形炭及びその製造方法を提供する。
【解決手段】竹炭を粉砕した竹炭粉粒体に、ショ糖の水溶液を混合したデンプンを混練して、圧縮固化することで、デンプンにアルカリ水溶液等を作用させて糊化することなく、固く固化した竹炭成形炭とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹炭及び人体に無害な材料のみを原料とする、着火が容易で火持ちが良く、燃焼時の臭気が少ない竹炭成形炭及びその製造方法に関し、更には、白炭化された竹炭が有する、燃焼温度、吸着性、調湿性、遠赤外線放出性などの優れた性質を損なうことなく、備長炭に代表される白炭化された堅炭に匹敵する燃焼時間を有し、着火性(着火温度)及び燃焼時間のコントロールが可能な、竹炭成形炭及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、雑炭を粉砕し成形して燃料炭とすることで、バイオマス資源の有効活用が図られている。成形には固着剤(粘結剤)を使用するが、例えば練炭等の石炭原料の成形炭は、石炭が高密で硬いいわゆる石状であるため、固着剤(粘結剤)に粘ちゅうな液体、例えば工業用途はタール、民生用途ではデンプンを分解糊化したデキストリンを使用し、粉粒体に混合して固めることが可能であるが、竹炭を含めた雑炭は軽鬆で表面積が大きく吸着性が高いので、粘ちゅうな粘結剤で粉粒体表面をおおうのは困難であり、強い固着性が得られず、商品価値のある固い成形炭を製造するのが難しかった。
【0003】
そこで、雑炭粉粒体に粉の生デンプンを予め均一に混合分散させてから、苛性ソーダ水溶液を添加し、デンプンを分解糊化して、強固に固着された雑炭成形炭を得る製造方法が、農林省林業試験場から提案された(特許文献1参照のこと)。
【0004】
このような雑炭成形炭は耐圧強度が大きく、発熱量も大きく、無臭で燃焼する、灰分の少ない成形炭であるが、苛性ソーダは皮膚を侵す劇物であるから、成形炭を素手で扱うのは問題があり、更に、点火時には苛性ソーダを含んだ蒸気が発生して鼻粘膜を侵すため、民生用途の燃料炭としては問題が在る。
【0005】
また、備長炭に代表される白炭化された堅炭は、優れた燃料炭としてだけでなく、脱臭機能や水の浄化機能、衣料品などにおける遠赤外線放出機能、電磁波遮蔽機能等、多くの機能を有する材料として利用されている。しかし近年、楢、樫、特にうばめがし等の白炭の原料となる堅い原木の入手が困難となり、これらに替わる白炭の原料として安価で生育の早い竹類が着目されている。
【0006】
竹類を原料とする白炭化された竹炭は、脱臭機能や水の浄化機能、遠赤外線放出機能、電磁波遮蔽機能においては、備長炭と比較しても遜色がないばかりか、それらを凌駕する機能を発揮するものも製造されている(例えば、特許文献2,特許文献3を参照のこと)。
【特許文献1】特公昭34−7225号公報
【特許文献2】特開平9−86910号公報
【特許文献3】特開2004−224646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、素手の取り扱いがためらわれる成形炭では民生用途向け商品としては問題があり、また白炭の竹炭を燃料炭としてみた場合、一本の炭の火持ちが劣る、即ち原料となる竹の形状に由来する、炭の肉厚が薄いために一本の燃焼時間が短いという問題と、竹炭に限らず白炭化された堅炭に共通する問題である着火性が劣る、即ち炭化が高度に進んでいるため着火温度が高く、熾火を使用しないと火が着かず、取り扱いが不便である、という三つの問題が在った。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、人体に無害な材料のみで固く成形された竹炭成形炭及びその製造方法を提供することを第一の課題とする。
【0009】
そして、白炭化された竹炭が有する機能と特徴を最大限に生かしながら、燃料炭としての特性を改善し、一本の炭で2時間から3時間の燃焼が行えると共に、熾火を使用しなくとも着火ができ、以て、あらゆる面で備長炭等の木を原料とする堅炭以上の機能と特徴を有する竹炭成形炭及びその製造方法を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、竹炭を粉砕した竹炭粉粒体が、貯蔵性デンプンと二糖類との混合物を固着剤として圧縮固化された竹炭成形炭としたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記竹炭粉粒体は、平均粒子径が0.5mm乃至5.0mmとなるように粉砕されたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加えて、前記固着剤は、前記竹炭成形炭に成形された状態において、前記貯蔵性デンプン100質量部に対し前記二糖類0.25乃至4質量部の比率の混合物であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の構成に加えて、前記竹炭成形炭は、外径φ30mm乃至φ40mm、内径φ10乃至φ15mm、長さ80mm乃至100mmの略円筒形状に成形されたことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の構成に加えて、前記竹炭成形炭は、外径φ30mm乃至φ40mm、長さ20mm乃至25mmの略円筒形状又は略円柱形状に成形されたことを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか一つに記載の構成に加えて、前記貯蔵性デンプンは馬鈴薯デンプン、前記二糖類はショ糖であることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れか一つに記載の構成に加えて、前記竹炭粉粒体は、白炭化した竹炭を粉砕したものであることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れか一つに記載の竹炭成形炭の製造方法において、前記固着剤は、前記貯蔵性デンプン100質量部に対し、水100質量部に前記二糖類3乃至5質量部を溶解した水溶液200乃至300質量部を混合分散した湿ったデンプン粉凝集体とし、次いで、前記竹炭粉粒体100質量部に対し、前記デンプン粉凝集体を25質量部乃至30質量部添加混練し、圧縮して乾燥固化することを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の竹炭成形炭の製造方法において、前記竹炭粉粒体と前記固着剤とを混練したものを、200kg/cm乃至300kg/cmの圧力で圧縮し、乾燥固化することにより成形することを特徴とする竹炭成形炭の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の竹炭成形炭によれば、従来需要の乏しい竹バイオマスを燃料炭として有効に活用できるのは勿論、竹炭粉粒体の固着剤は貯蔵性デンプンと二糖類だけだから人畜や環境に無害であり、安心して取り扱うことができる。そして着火し易いとともに、燃焼時に臭気や煙は殆ど発生せず、発熱量の大きい、燃焼後の灰分も少なく、固く固着された竹炭成形炭が提供できる。
【0020】
請求項2に記載の竹炭成形炭によれば、竹炭粉粒体の平均粒子径が0.5mm乃至5.0mmであるから、固くなり過ぎず着火し易いと共に、空隙が少なく空気の量が制限され、燃焼時間の長い竹炭成形炭が提供できる。
【0021】
請求項3に記載の竹炭成形炭によれば、固着剤は、竹炭成形炭の状態で、貯蔵性デンプン100質量部に対し二糖類0.25乃至4質量部の比率の混合物となっているから、固く固着させることができると共に、貯蔵性デンプン100部に対して二糖類は4部以下であるから、燃焼時に二糖類特有の甘い匂いがしない。
【0022】
請求項4に記載の竹炭成形炭によれば、外径φ30mm乃至φ40mm、内径φ10乃至φ15mm、長さ80mm乃至100mmの略円筒形状に成形されているので、従来流通している木炭等と類似の大きさだから火鉢等でそのまま使用ができ、燃焼時間や発熱量もほぼ等しく、木炭と同様に使用ができて便利である。
【0023】
請求項5に記載の竹炭成形炭によれば、外径φ30mm乃至φ40mm、長さ20mm乃至25mmの略円筒形状又は略円柱形状に成形されているので、小型の鍋の加熱等に用いるのに極めて使い勝手が良い。
【0024】
請求項6に記載の竹炭成形炭によれば、固着剤が馬鈴薯デンプンとショ糖であるから、ショ糖は上白糖やグラニュ糖として高純度の製品が安価かつ容易に入手でき、馬鈴薯デンプンも入手が容易であると共に、馬鈴薯デンプンとグラニュ糖又は上白糖からなる固着剤が最も接着効果が高く、固く固着した竹炭成形炭が提供できる。
【0025】
請求項7に記載の竹炭成形炭によれば、白炭化した竹炭の粉粒体を使用しているから、得られる竹炭成形炭も「堅炭」としての特徴を有し、上記の効果に加えて、好みの形状として調湿・消臭作用が高い、マイナスイオン発生効果も在るインテリアとして使用ができ、燃料として使用した場合には、通常の「堅炭」は熾火が無いと着火が困難であるが、成形炭としているからガスコンロ等で容易に着火できる、そして燃焼温度が高く、備長炭に代表される木炭系堅炭に替わって同様に用いることができる竹炭成形炭が提供できる。
【0026】
請求項8に記載の竹炭成形炭の製造方法によれば、固着剤を湿ったデンプン粉凝集体として竹炭粉粒体と混練しているから、上記の効果を有し、固着剤の分散が良く、固く固着された竹炭成形炭を製造できる。
【0027】
請求項9に記載の竹炭成形炭の製造方法によれば、竹炭粉粒体と固着剤との混練物を200kg/cm乃至300kg/cmの圧力で圧縮し、乾燥固化させるから、充分な固さに圧縮固化できると共に、固くなり過ぎないから着火が容易で、燃焼時間が長い竹炭成形炭が製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
竹材を炭化した竹炭も焼く温度と火の消し方によって、白炭と黒炭とに焼き分けることができる。本発明の竹炭は白炭と黒炭いずれも用いることができ、圧縮固化して成形炭とすることができる。
【0030】
原料の竹材としては、孟宗竹、淡竹、真竹、苦竹、黒竹、金明孟宗竹、布袋竹、唐竹、などが使用できるが、特に限定されるものではない。熱帯アジア産の巨竹などの大型の竹や、インド実竹などのように、内部に中空のない竹も使用できる。
【0031】
黒炭竹炭の場合、400〜700度で炭化した後、かま口や煙道口を石や粘度で密閉して火を消したものである。
【0032】
白炭竹炭の場合、一般に「堅炭」と呼ばれているウバメガシ製の備長炭、ナラ白炭、カシ白炭などの木炭と同様に、800℃以上、より好ましくは1000℃以上で焼成し、真っ赤な炭をかま口から取り出し、灰と土を混ぜ、水分を含ませた消粉をかぶせて素早く冷やしながら火を消しすような方法により、水分やガス分が殆ど燃焼されて炭化が高度に進んだ竹炭である。通電竹炭などとも呼ばれる。
【0033】
好ましくは400℃乃至700℃で黒炭化した後(1次焼成)、更に800℃以上の温度で数時間焼成すると(2次焼成)、良質の白炭化された竹炭が得られる。2次焼成の後、窯から出さずに、消し粉を使わず消火・急冷却して白炭化したものがより好ましい。
【0034】
白炭化された竹炭は、木炭の「堅炭」と同様に、火力が強く、火持ちがよい、燃焼時には煙りを出さない特徴を有し、また「堅炭」と同様に着火性が悪く、熾火が無いと着火は困難である。更に備長炭の約3倍といわれる比表面積を有するので、吸着性が高く、優れた脱臭機能や水の浄化機能、調湿機能が在る。遠赤外線放出機能も木炭の比ではなく、また金属並みの導通性があるので電磁波遮蔽機能が在る。近年の研究では、マイナスイオンの発生機能にも優れるとの結果が報告されている。
【0035】
竹炭を粉砕する大きさは、平均粒子径が0.5mm〜5.0mmとなるように粉砕すると良い。0.5mmよりも小さく粉砕すると固く固化して着火性が悪くなってしまう。5.0mmよりも大きいと、空隙が多くなるので燃焼時間が短くなる。平均粒子径0.5mm〜5.0mmの範囲とするのが着火性と燃焼時間のバランスがよい。
【0036】
竹炭の粉砕に用いる粉砕機としては、従来より知られているいずれのものでも使用できる、具体的にはメッシュ式が用いられる。粉粒末の粒径を調節することで、着火後の火持ち時間や燃焼温度を自在に変えることができる。なお、破砕の際に生じる微粉末は、集塵機などによって別に集めて、微粉末の混入を避けるとよい。
【0037】
固着剤に使用する二糖類としては、ショ糖、麦芽糖、乳糖、何れでも使用することができるが、糖分が95%以上、好ましくは97%以上のものでないと充分な固着力が得られない。この点でショ糖は上白糖又はグラニュ糖として高純度のものが安価かつ容易に入手でき、竹炭の持つ吸着性なども損なうことがないので、好ましく使用できる。
【0038】
高濃度のショ糖水溶液は、それだけで竹炭粉粒体を固めることも可能であるが、そうすると燃料炭として燃やしたときにショ糖特有の甘い匂いがするので、適当な濃度としては、水100mlにショ糖を3g〜5g溶かすと良い。このような濃度であれば、甘い匂いはせず、充分な固着性が得られる。
【0039】
固着剤に使用する貯蔵性デンプンとしては、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉等を用いることができるが、固着性の面から馬鈴薯澱粉がより好ましい。
【0040】
固着剤は、上記の貯蔵性デンプン100gに対して、水200mlにショ糖を3g〜5g溶かした水溶液を200cc〜300cc添加して混練分散させて調整する。
【0041】
上記のように調整した固着剤を、竹炭粉粒体70〜75質量部に対して、30〜25質量部、合計100部となるように加えて混練し、圧縮して、乾燥固化すれば、固く固化した竹炭成形炭となる。
【0042】
竹炭粉砕粒子と固着剤との混練物を圧縮固化するとき、圧力は200kg/cm乃至300kg/cmの圧力で圧縮するのがよい。200kg/cm以下の圧力では出来た成形炭が崩れ易く、一方、300kg/cmを越える圧力で圧縮すると、竹炭粒子が潰されてカチカチに固化してしまい、燃焼時間は長い(火持ちは良い)成形炭となるが、通常の堅炭と同様、着火性が悪いものとなってしまい、本願発明の竹炭成形炭の課題を達成することができない、また空気に接触する表面積も少なくなるから、脱臭作用などの竹炭の特徴が発揮されにくい成形炭となってしまう。
【0043】
圧縮して固化するには、圧縮成形に使用する金型を高温にしておき圧縮と同時に乾燥する方法、金型に隙間を設けておき温風を循環させて乾燥させる方法、金型から取り出した後に温風乾燥する、又は自然乾燥する方法、何れであっても構わない。
【0044】
成形炭の外観の大きさは使用目的によって選ばれるので、どのような大きさが良いというものではないが、直径φ30mm前後、長さ100mm前後の円柱状で、一本の炭が2〜3時間火持ちするものが、燃料用に一般に用いられる大きさなので、同じ用途で代替使用することを考慮すると、外径φ30mm乃至φ40mm、内径φ10乃至φ15mm、長さ80mm乃至100mmの略円筒形状に成形された竹炭成形炭が、燃料炭としては好ましい。
【0045】
また、外径φ30mm乃至φ40mm、長さ20mm乃至25mmの略円筒形状又は略円柱形状に成形された竹炭成形炭とすれば、小型の鍋の加熱等に用いるのに極めて使い勝手が良い。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げてこの発明をより具体的に説明するが、この発明の主旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
【0047】
黒炭竹炭を粒径が1mm〜3mmになるように粉砕し竹炭粉粒体とした。
【0048】
グラニュ糖50gを室温の水1Lに溶かし、ショ糖の水溶液とした。
【0049】
馬鈴薯デンプン10kgに対して、上記のショ糖の水溶液30000ccを50℃〜70℃に加熱して、それを加えて分散混合し、固着剤とした。
【0050】
上記竹炭粉粒体30kgに対して、上記固着剤10kgを加え、ミキサーで混練し、70℃に加熱した所定の金型(加熱は必ずしも必要ではない)で、300kg/cm の圧力で圧縮しつつ、外径φ36mm、内径φ12、長さ100mmの円筒状に乾燥し固化させた。取り出したものは、竹炭粉粒体がしっかりと固着した竹炭成形炭となっていた。
【0051】
上記竹炭成形炭はガスライター式のチャッカマン(商品名)で着火することができ、臭気も殆ど出さずに燃焼した。
[実施例2]
【0052】
白炭竹炭を粒径が1mm〜3mmになるように粉砕し竹炭粉粒体とした。
【0053】
上記白炭竹炭粉粒体を、実施例1と同様の手順で成形した。
【0054】
上記白炭竹炭成形炭を、ガスコンロの炎で約2分間炙った後に七輪に移すと、接炎部に着火が見られ、送風すると着火は除々に全体に拡がり、木炭の「堅炭」と同様、燃焼時に煙や嫌な臭いを発生することなく、約3時間燃焼した。また「堅炭」の燃焼時に見られる爆跳現象も殆どなかった。なお、白炭竹炭と備長炭をガスコンロの炎で約2分間炙っても、着火はできなかった。
[実施例3]
【0055】
実施例2の白炭竹炭粉粒体を200kg/cm の圧力で圧縮した以外は、実施例1と同様にして竹炭成形炭を作製した。この白炭竹炭成形炭はガスライター式のチャッカマン(商品名)で着火することができ、送風すると着火は除々に全体に拡がり、約2時間燃焼した。
[比較例1]
【0056】
ショ糖飽和水溶液の代わりに水を用いた以外、実施例1と同様に竹炭成形炭を作製した。この竹炭成形炭は崩れやすく、成形炭としての商品価値が低いものであった。
[比較例2]
【0057】
白炭竹炭を平均粒径が0.3mmになるように粉砕し、400kg/cm の圧力で圧縮した以外は、実施例1と同様にして竹炭成形炭を作製した。この白炭竹炭成形炭は本当の備長炭の様に硬く、着火性も悪くなり、ガスコンロの炎で数分間炙った程度では着火しなかった。
[比較例3]
【0058】
白炭竹炭を平均粒径が5.0mmになるように粉砕した以外は、実施例1と同様にして竹炭成形炭を作製した。この竹炭成形炭は白炭で有りなから着火が非常に容易であったが、約1時間しか燃焼せず、火持ちが悪かった。
【0059】
実施例1の結果から、馬鈴薯デンプンが湿る程度にショ糖水溶液を加えたものを固着剤として混合すると、軽鬆で吸着性の高い竹炭粉粒体に対して分散性が良く、この混合物を圧縮して乾燥すれば固く固化した竹炭成形炭ができる。比較例1の結果から、馬鈴薯デンプンに水を添加しただけでは竹炭を固着させるには不十分であることが判る。1Lの水にショ糖を30g乃至50gを溶解したショ糖水溶液を用いることで、デンプンを糊化する工程を経ず、またアルカリ等のデンプン糊化を促進する物質を使用せずに、充分な固着力が得られるものである。
【0060】
実施例2と比較例2の結果から、着火し難い白炭化した竹炭を用いて竹炭成形炭を製造する場合、平均粒径が0.5mm乃至5mmになるように粉砕し、圧縮の圧力は300kg/cm 以下とすると、白炭に特有の着火性の悪さが改善され、燃焼時間や燃焼温度は損なわれることなく、備長炭等に代表される「堅炭」の代替となる竹炭成形炭ができるのが判る。竹炭粉砕粒子の平均粒径が0.5mm未満となったり、圧縮の圧力が300kg/cm を越える圧力とすると、竹炭成形炭は密な構造になり、本当の備長炭のように硬くなるが、それに連れて着火温度も高くなってしまい、着火性が悪くなり、備長炭と同様に使い勝手が不便なものとなってしまう。
【0061】
比較例3の結果から、竹炭を平均粒径が5.0mmを越える大きさにすると、竹炭成形炭は粗な構造になり、着火性は良いが、燃焼時間が短く、いわゆる、火持ちの悪い炭となってしまうのが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹炭を粉砕した竹炭粉粒体が、貯蔵性デンプンと二糖類との混合物を固着剤として圧縮固化されたことを特徴とする竹炭成形炭。
【請求項2】
前記竹炭粉粒体は、平均粒子径が0.5mm乃至5.0mmとなるように粉砕されたことを特徴とする請求項1に記載の竹炭成形炭。
【請求項3】
前記固着剤は、前記竹炭成形炭に成形された状態において、前記貯蔵性デンプン100質量部に対し前記二糖類0.25乃至4質量部の比率の混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の竹炭成形炭。
【請求項4】
前記竹炭成形炭は、外径φ30mm乃至φ40mm、内径φ10乃至φ15mm、長さ80mm乃至100mmの略円筒形状に成形されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の竹炭成形炭。
【請求項5】
前記竹炭成形炭は、外径φ30mm乃至φ40mm、長さ20mm乃至25mmの略円筒形状又は略円柱形状に成形されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の竹炭成形炭。
【請求項6】
前記貯蔵性デンプンは馬鈴薯デンプン、前記二糖類はショ糖であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の竹炭成形炭。
【請求項7】
前記竹炭粉粒体は、白炭化した竹炭を粉砕したものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の竹炭成形炭。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一つに記載の竹炭成形炭の製造方法において、前記固着剤は、前記貯蔵性デンプン100質量部に対し、水100質量部に前記二糖類3乃至5質量部を溶解した水溶液200乃至300質量部を混合分散した湿ったデンプン粉凝集体とし、次いで、前記竹炭粉粒体100質量部に対し、前記デンプン粉凝集体を25質量部乃至30質量部添加混練し、圧縮して乾燥固化することを特徴とする竹炭成形炭の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の竹炭成形炭の製造方法において、前記竹炭粉粒体と前記固着剤とを混練したものを、200kg/cm乃至300kg/cmの圧力で圧縮し、乾燥固化することにより成形することを特徴とする竹炭成形炭の製造方法。

【公開番号】特開2007−297425(P2007−297425A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124171(P2006−124171)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(506146873)バンブーバイオマス技研株式会社 (1)
【Fターム(参考)】