説明

第一鉄/第二鉄アノード反応を使用して銅を電気採取するための方法および装置

【課題】電解採取効率、エネルギー消費および酸ミストの発生の低減された新規電解採取システムを提供する。
【解決手段】第一鉄/第二鉄アノード反応を使用する銅の電解採取のための装置200において、通り抜け式アノード23を使用することにより、約1.5V未満の全セル電位および1平方フィートあたり約26A(約280A/m)より大きい電流密度での第一鉄/第二鉄アノード反応を採用する銅の電解採取システムの効率的かつ費用効果性の高い操作を可能にし、酸ミストの発生を低減する。このシステムは、先行技術のシステムに比べて、高品質の商業的に販売可能な生成物を生成しつつ、電解質中における低い第一鉄の鉄の濃度および最適化された電解質の流量の使用を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明者)
Scot P.Sandoval、Tim G.Robinson、およびPaul R.Cook
(発明の分野)
本発明は、概して、金属を電解採取するための方法および装置に関し、そしてより具体的には、第一鉄/第二鉄アノード反応を使用する銅の電解採取のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
銅の電解採取の効率および費用有効性は、国内の銅産業の競争力にとって現在重要であり、しかも長い間そうであった。従って、この領域における過去の研究開発の努力は、少なくとも一部は、銅の電解採取に対する全エネルギー要求量を減少させるための機構に焦点を当ててきており、全エネルギー要求量を減少させることは、電解採取プロセスの費用有効性に直接影響を与える。
【0003】
電解質水溶液を用いて銅が不純物を含むアノードから実質的に純粋なカソードへメッキされる従来の銅の電解採取は、以下の反応式:
(カソード反応:)
Cu2+ + SO2− +2e → Cu + SO2−
(E=+0.345V)
(アノード反応:)
O → 1/2O + 2H + 2e (E=−1.230V)
(全体のセル反応)
Cu2+ + SO2− + HO →
Cu + 2H + SO2− + 1/2O
(E=−0.855V)
により生じる。
【0004】
しかし、上記の反応に従う従来の銅の電解採取は、とりわけ、経済性の改良、効率の向上、および酸ミストの発生の低減についての潜在的な改良のためのいくつかの領域を示す。第一に、従来の銅の電解採取では、アノードでの水の分解反応が酸素(O)ガスを生成する。遊離した酸素ガスの泡が、電解質浴の表面を壊す際に、それらは酸ミストを生成する。酸ミストの減少または排除が望ましい。第二に、従来の電解採取において使用されるアノードでの水の分解反応は、アノード反応平衡電位および過電位を介してセル全体に有意に寄与する。アノードでの水の分解反応は、1.23ボルト(V)の標準電位を示し、これは、従来の銅の電解採取に必要とされる全電位に有意に寄与する。代表的な全セル電位は、約2.0Vである。アノード反応平衡電位および/または過電位の低下は、セル電位を低下させ、従ってエネルギーを節約し、電解採取操作の全運転費を低下させる。
【0005】
銅の電解採取のためのエネルギー要求量を潜在的に低下させるために見出された1つの方法は、第一鉄/第二鉄アノード反応を使用することであり、この反応は、以下の反応式:
(カソード反応:)
Cu2+ + SO2− +2e → Cu + SO2−
(E=+0.345V)
(アノード反応:)
2Fe2+ → 2Fe3+ + 2e (E=−0.770V)
(全体のセル反応)
Cu2+ + SO2− + 2Fe2+
Cu + 2Fe3+ + SO2−
(E=−0.425V)
により生じる。
【0006】
この全セル反応の結果としてアノードで発生する第二鉄の鉄は、以下:
(溶液反応)
2Fe3+ + SO + 2HO → 2Fe3+ + 4H + SO2−
のように、二酸化硫黄を使用して、第一鉄の鉄に還元して戻され得る。
【0007】
銅電解採取セルにおける第一鉄/第二鉄アノード反応の使用は、アノードでの水の分解反応を用いる従来の銅電解採取セルと比べて、それらのセルのエネルギー消費を低下させる。なぜなら、第一鉄の鉄(Fe2+)の第二鉄の鉄(Fe3+)への酸化は、水の分解が起こるよりも低い電位で起こるからである。しかし、第一鉄の鉄および第二鉄の鉄の、それぞれ、セルのアノードへの有効な輸送およびセルのアノードからの有効な輸送が達成されなければ、最大電位低下(従って最大エネルギー低下)は、第一鉄/第二鉄アノード反応を用いて起こり得ない。これは、銅電解質中での第一鉄の鉄の第二鉄への酸化が、拡散制御反応だからである。この原理は、とりわけ、U.S.Bureau of Mines Reno Research CenterおよびSandovalらにより認識され、そして「Electrolyte Circulation Manifold for Copper Electrowinning Cells Which Use the Ferrous/Ferric Anode Reaction」と題する特許文献1に出願されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5492608号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、銅電解採取に関連した第一鉄/第二鉄アノード反応の使用は公知であるが、銅電解採取プロセスにおける第一鉄/第二鉄アノード反応の実際の実施に関して、先行技術において多くの欠陥が明らかである。例えば、銅の電解採取操作における第一鉄/第二鉄アノード反応の先行する実施形態は、一般に、大低は、第一鉄の鉄のアノードへの十分に大きい拡散速度およびアノードからの第二鉄の十分に大きい拡散速度を得ることができないことの結果として、作動電流密度の限界を操作することを特徴とする。別の言い方をすると、これらの先行適用は、電気化学的セルにおいてアノードへの第一鉄イオンの最適の輸送およびアノードからの第二鉄イオンの最適な輸送を獲得することができなかったために、第一鉄/第二鉄アノード反応の先行適用は、従来の構造的特徴を用いる電気化学的セルにおいて、費用有効的に銅カソードを生成することができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、とりわけ先行技術の電解採取システムの上述の欠点に対処するよう設計された、改良された銅の電解採取プロセスおよび装置に関する。本明細書中に開示される改良されたプロセスおよび装置は、第一鉄/第二鉄アノード反応を本発明の他の局面と組み合わせて利用することにより、従来の銅電解採取プロセス、およびこの第一鉄/第二鉄アノード反応を銅の電解採取操作に適用しようとする以前の試みに比べて、電解採取効率、エネルギー消費、および酸ミストの発生の低減において有意な増強を可能にする銅の電解採取システムを提供することにより、当該分野における進歩を達成する。本明細書中で使用される場合、「代替のアノード反応」とは、上記第一鉄/第二鉄アノード反応をいい、そして「代替のアノード反応プロセス」とは、この第一鉄/第二鉄アノード反応が採用される任意の電解採取プロセスをいう。
【0011】
電極間の電解採取セル中の電解質の循環を増強することは、カソードへの銅イオンの輸送を容易にし、第一鉄の鉄のアノードへの拡散速度を高め、アノードからの第二鉄の鉄の輸送を容易にする。最も有意には、第一鉄の鉄のアノードへの拡散速度が高くなるにつれて、全体のセル電位が一般に低下し、代替のアノード反応プロセスを使用して銅を電解採取するために必要とされる電力の低下をもたらす。
【0012】
本発明がこれらの欠点に対処し、これらの利点を提供する方法は、以下により詳細に考察されるが、一般に、(効果的な電解質循環システムと結合された)通り抜け式アノードの使用は、上記第一鉄/第二鉄アノード反応を採用する銅の電解採取システムの、約1.5V未満の全セル電位および1平方フィートあたり約26アンペア(約280A/m)より大きい電流密度での効率的かつ費用有効的な操作を可能にし、酸ミスト発生を低減する。さらに、このようなシステムの使用は、先行技術のシステムに比べて、高品質の、商業的に販売可能な生成物(すなわち、LME等級Aの銅カソードまたは等価物)を生成しつつ、低い第二鉄の鉄濃度および最適化された電解質流量の使用を許容し、このことは、有利である。
【0013】
本発明の例示の実施形態の1つの局面に従って、電気化学的セルは、活性カソードの約26アンペア/ft(280A/m)より大きい電流密度を維持しつつ、銅の電解採取が、代替のアノード反応プロセスにおいて達成され得るような構成である。
【0014】
本発明の例示の実施形態の別の局面に従って、電気化学的セルは、代替のアノード反応プロセスの作動の間、セル電位が約1.5V未満に維持されるような構成である。
【0015】
本発明のさらに別の例示の実施形態の1つの局面に従って、代替のアノード反応プロセスは、その電解質中の鉄の濃度が1リットルあたり約10〜約60グラムのレベルに維持されるように作動される。
【0016】
本発明のさらに別の例示の実施形態の1つの局面に従って、代替のアノード反応プロセスは、温度が約110°F(約43℃)〜約180°F(約83℃)に維持されるように作動される。
【0017】
本発明のこれらの特徴および利点ならびに他の特徴および利点は、添付の図面と組み合わせて考慮される場合、以下の詳細な説明を読むことにより、当業者に明らかとなり、その添付の図面には本発明の種々の例示的な実施形態が示され、説明されている。
【0018】
本発明の主題は、本明細書の結びの部分で特に指摘され、明確に主張される。しかし、本発明のより完全な理解は、図面に関連して考慮される場合、詳細な説明および請求の範囲を参照することにより、最良に得られ得、それらの図面では、類似の数字は、類似の要素を示す。
より特定すれば、本発明は以下の項目に関し得る。
(項目1)
銅を電解採取する方法であって、上記方法は、以下:
少なくとも1つのアノードおよび少なくとも1つのカソードを備える電気化学的セルを提供する工程であって、上記カソードは、活性表面積を有する、工程;
上記電気化学的セルを通る電解質の流れを提供する工程であって、上記電解質が銅および可溶化第一鉄の鉄を含む、工程;
上記少なくとも1つのアノードで上記電解質中の上記可溶化第一鉄の鉄の少なくとも一部を、第一鉄の鉄から第二鉄の鉄へ酸化する工程;
上記少なくとも1つのカソードで上記銅の少なくとも一部を上記電解質から除去する工程;ならびに
上記電気化学的セルをあるセル電位およびある電流密度で作動させる工程、
を包含し、ここで上記セル電位は、約1.5ボルト未満であり、上記電流密度は、活性カソードの1平方メートルあたり約280アンペアより大きい、方法。
(項目2)
上記電気化学的セルを通る電解質の流れを提供する工程が、1分あたり、活性カソードの1平方メートルあたり約4〜約40リットルの電解質流量を提供する工程、を包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記酸化する工程が、上記電解質中の上記可溶化第一鉄の鉄の少なくとも一部を、電気化学的に活性なコーティングを有するチタンメッシュを備えるアノードで酸化する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記電解質の流れを提供する工程が、約10g/L〜約60g/Lの鉄濃度を有する電解質の流れを提供する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記電解質の流れを提供する工程が、上記電解質の温度を約43℃〜約82℃の範囲に維持する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目6)
上記電解質の流れを提供する工程が、上記電解質の温度を約66℃未満に維持する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目7)
さらに、
電解質再生ストリームにおいて、上記第二鉄の鉄の少なくとも一部を、上記電気化学的セルから除去する工程;
上記電解質再生ストリームにおいて、上記第二鉄の鉄の少なくとも一部を第一鉄の鉄に還元して、再生電解質ストリームを形成する工程;および
上記再生電解質ストリームの少なくとも一部を上記電気化学的セルに戻す工程、
を包含する、項目1に記載の方法。
(項目8)
上記第二鉄の鉄の少なくとも一部を還元する工程が、上記第二鉄の鉄を触媒の存在下で還元剤と接触させる工程を包含する、項目7に記載の方法。
(項目9)
銅および第一鉄の鉄を含有する電解質ストリームから銅を電解採取するためのプロセスであって、上記プロセスは、
少なくとも1つのアノードおよび少なくとも1つのカソードを備える電気化学的セルを提供する工程、
を包含し、ここで第一鉄の鉄は上記アノードで酸化されて第二鉄を形成し、銅は上記カソードでメッキされ、そして上記カソードは、活性表面積を有し、改良は、上記電気化学的セルの作動が、約1.5ボルト未満のセル電位および活性カソードの1平方メートルあたり280アンペアを越える電流密度で実施され得るように、少なくとも1つの通り抜け式アノードを提供する工程、および上記電気化学的セル内で上記電解質を効果的に循環する工程を包含する、プロセス。
(項目10)
上記改良が、さらに、1分あたり、活性カソードの1平方メートルあたり約4〜約10リットルの流量で上記電気化学的セルを通る電解質の流れを提供することにより、効果的な電解質の循環を促進する工程を包含する、項目9に記載のプロセス。
(項目11)
上記改良が、さらに、以下:
電解質再生ストリームにおいて、上記第二鉄の鉄の少なくとも一部を、上記電気化学的セルから除去する工程;
上記電解質再生ストリームにおいて、上記第二鉄の鉄の少なくとも一部を第一鉄の鉄に還元して、再生電解質ストリームを形成する工程;および
上記再生電解質ストリームの少なくとも一部を上記電気化学的セルに戻す工程、
を包含する、項目9に記載のプロセス。
(項目12)
銅含有電解質から銅を電解採取するためのシステムであって、上記システムは、以下:
電解質ストリームであって、銅および鉄を含み、上記電解質ストリーム中の鉄の濃度が1リットルあたり約10〜約60グラムである、電解質ストリーム;
電気化学的セルであって、少なくとも1つのアノード、少なくとも1つのカソード、および電解質流れマニホールドを備え、上記少なくとも1つのアノードが、少なくとも1つの通り抜け式アノードを備える、電気化学的セル、
を備える、システム。
(項目13)
上記電解質ストリームが、第一鉄の鉄および第二鉄の鉄を含有し、そして上記電解質ストリーム中の第二鉄の鉄の濃度が、1リットルあたり約0.001〜約10グラムである、項目12に記載のシステム。
(項目14)
上記電解質ストリームが、第一鉄の鉄および第二鉄の鉄を含有し、そして上記電解質ストリーム中の第二鉄の鉄の濃度が、1リットルあたり約1〜約6グラムである、項目12に記載のシステム。
(項目15)
上記電解質ストリームが、第一鉄の鉄および第二鉄の鉄を含有し、そして上記電解質ストリーム中の第二鉄の鉄の濃度が、1リットルあたり約2〜約4グラムである、項目12に記載のシステム。
(項目16)
さらに、上記第二鉄の鉄を触媒の存在下で二酸化硫黄ガスと接触させることにより、上記電解質ストリーム中の上記第二鉄の鉄の少なくとも一部を第一鉄の鉄に還元するための手段、を備える、項目12に記載のシステム。
(項目17)
上記電気化学的セルが、電気化学的に活性なコーティングを有する金属メッシュを備える少なくとも1つのアノードを備える、項目12に記載のシステム。
(項目18)
上記電気化学的セルが、酸化イリジウムベースのコーティングを有するチタンメッシュを備える少なくとも1つのアノードを備える、項目17に記載のシステム。
(項目19)
上記電気化学的セルが、酸化ルテニウムベースのコーティングを有するチタンメッシュを備える少なくとも1つのアノードを備える、項目17に記載のシステム。 (発明の効果)
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の1つの実施形態に従う電解採取プロセスに対するフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の1つの例示の実施形態に従って作動するような構成である、電気化学的セルを示す。
【図3】図3は、本発明の別の例示の実施形態の1つの局面に従うアノード内電解質注入マニホールドを伴う通り抜け式アノードの例を示す。
【図4】図4は、本発明の別の例示の実施形態の1つの局面に従うアノード内電解質注入マニホールドの別の例を伴う通り抜け式アノードのさらに別の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(詳細な説明)
本発明は、特にプロセス効率、プロセスの経済性、および酸ミスト発生の低下に関連して、先行技術のプロセスに対して有意な進歩を示す。さらに、従来の電解採取プロセスシークエンスを利用する現存の銅回収プロセスは、多くの実例において、本発明が提供する多くの商業的利益を利用するために、容易に改装され得る。
【0021】
最初に図1を参照して、本発明の例示的な実施形態の種々の局面を図示する電解採取プロセス100が提供される。電解採取プロセス100は、一般に、電解採取段階101、第一鉄の鉄再生段階103、および酸除去段階105を包含する。銅に富んだ市販の電解質11が、その中の銅の回収のために、電解採取段階101に導入される。電解採取段階101は、カソード銅(ストリームは示さず)および第二鉄に富んだ電解質ストリーム13を生成する。第二鉄に富んだ電解質ストリーム13の少なくとも一部は、第一鉄の鉄再生段階103に、電解質再生ストリーム15として導入される。マニホールド循環ストリーム16は、第一鉄の鉄再生段階103に送られない第二鉄に富んだ電解質ストリーム13の一部、ならびに第一鉄の鉄再生段階103および酸除去段階105からの、それぞれ、再循環ストリーム12および14を含み、本明細書中下記で考察される本発明の1つの局面に従って、流れ制御および流体攪拌機構として作用する。
【0022】
一般的に言えば、電解採取セルにおける作動電流密度を増加することは、セル電位を増加させる。この電位需要の増加は、銅を生成するためのエネルギー費用の増加につながり、このことは、電解採取操作の収益性に影響を及ぼす。他方、例えば、温度および電解質中の鉄濃度のような代替のアノード反応プロセスの特定の他のパラメータは、セル電位に対する電流密度の増加の効果を緩和する様式で制御され得る。例えば、電解質の温度が高くなるにつれて、セル電位は、低下する傾向がある。同様に、電解質中の鉄濃度が高くなるにつれて、電位は、代替のアノード反応を採用する電解採取セルにおいて低下する傾向がある。しかしながら、温度の上昇および鉄濃度の上昇の高セル電位に対する緩和効果には限界がある。
【0023】
一般に、本発明の種々の実施形態に従って構成されるプロセスおよびシステムは、約1.5V未満のセル電位および約26A/ft(約280A/m)より大きい電流密度での銅の電解採取における代替のアノード反応の効率的かつ費用効果性の高い利用を可能にする。さらに、このようなプロセスおよび/またはシステムの使用は、先行技術のシステムと比較して、酸ミストの発生を低減し、電解質中における低第一鉄の鉄濃度および最適化された電解質の流量の使用を許容し、他方、高品質で商業的に市販可能な生成物を生成する。
【0024】
電気化学的セルにおけるアノードとカソードとの種々の構成ならびに組合せが、本発明の種々の実施形態とともに効果的に使用され得、好ましくは、通り抜け式アノードが使用され、そして電解質の循環は、電解採取セル内の電解質の満足な流れおよび循環を維持し得る電解質流れマニホールドを使用して提供される。
【0025】
本発明の他の例示的な実施形態に従って、代替のアノード反応プロセスを作動させるためのシステムは、少なくとも1つの通り抜け式アノードおよび少なくとも1つのカソードを備えた電気化学的セルを含み、ここでこのセルは、このセル内の電解質の流れおよび循環によってセルが約1.5V未満のセル電位および約26A/ftより大きい電流密度で有利に作動されるような構成である。種々の機構が、本発明に従って使用され、本明細書中に詳述されるように、電解質流れを増強し得る。例えば、電解質をアノードに注入するような構成である電解質流れマニホールド、ならびに曝露された「床マット」型のマニホールド構成および他の強制対流循環手段が、使用され得る。本発明の種々の実施形態に従って、電解採取セルが、約1.5V未満のセル電位および約26A/ftより大きい電流密度で作動され得るように、アノードへ第一鉄の鉄を輸送し、アノードから第二鉄の鉄を輸送し、そして銅イオンをカソードへ輸送するに有効な電解質流れを提供する任意の流れ機構が適切である。
【0026】
本発明のこれらの例示的な局面および他の例示的な局面は、本明細書中以下で詳細に考察される。
【0027】
本発明の1つの局面に従って、第一鉄の鉄が、例えば硫酸第一鉄(FeSO)の形態で、電解採取に供されるべき銅に富む電解質に添加され、第一鉄/第二鉄(Fe2+/Fe3+)対をアノード反応とならせる。そうすることにおいて、この第一鉄/第二鉄アノード反応は、アノードでの水の分解反応に置き換わる。上で考察されたように、第一鉄/第二鉄アノード反応において生成される酸素ガスは存在しないので、電気化学的セルにおける反応の結果としての「酸ミスト」の発生は、排除される。加えて、Fe2+/Fe3+対の平衡電位(すなわち、E=−0.770V)は、水の分解に対する平衡電位(すなわち、E=−1.230V)より小さいので、セル電位は低下され、それによりセルのエネルギー消費が低下する。
【0028】
さらに、本明細書中以下でより詳細に考察されるように、電極間での電解質の増強された循環は、第一鉄のアノードへの拡散速度を高める。アノードへの第一鉄の拡散速度が高まるにつれて、全体のセル電位は一般に低下し、銅の電解採取のために必要とされる電力の低下をもたらす。
【0029】
本発明の1つの例示的な実施形態に従って、電解質注入マニホールドを有する通り抜け式アノードが、図2に示されるセルに組込まれる。本明細書中で使用される場合、用語「通り抜け式アノード」とは、電解質にそれを通過させ得るような構成である任意のアノードをいう。このマニホールドからの流体流れは、電解質の移動を提供するが、通り抜け式アノードは、電気化学的セル中の電解質が、電解採取プロセスの間、そのアノードを通って流れることを可能にする。マニホールド電解質注入を有する通り抜け式アノードの使用は、アノードへの第一鉄の鉄の拡散の増強を介して、先行技術に比べてより低い電解質流れ、および、先行技術に比べてより低い電解質鉄濃度におけるセル電位を低下させる。例えば、先行技術のシステムは、それらの試みにおける電解採取操作における電流密を高めること、電解質流量、電解質温度、および電解質鉄濃度を高めることに対する「力まかせ」アプローチに頼る。しかし、先行技術の試みは、26A/ftまでの最大電流密度を達成したに過ぎず、そしてその場合でさえ、平均セル電位は、1.0Vの十分上であった。しかし、有効な電解質注入と組合せて通り抜け式アノードを利用して、本発明者らは、26A/ftの電流密度および1.0Vの十分下のセル電位で電解採取プロセスを作動することが可能であり、他方、また電解質流量および電解質鉄濃度を劇的に低下させる。電解採取操作の効率または品質に有害な影響を及ぼすことなく鉄濃度を低下させることは、経済的に好ましい。なぜなら、そうすることは、鉄補充物の要求を低減し、電解質の硫酸塩飽和温度を低下させ、従って、電解採取セルを作動する費用を低減するからである。
【0030】
本発明の例示的な実施形態の種々の局面に従って、底注入、側面注入および/またはアノード内注入を有する電解質注入マニホールドが、セルに組込まれ、第一鉄の鉄の拡散が増強される。本明細書中の実施例1は、セル電位を低下させるためのアノード内電解質注入マニホールドの有効性を実証する。
【0031】
本発明の1つの例示的実施形態に従って、約1.5V未満の全体のセル電位、好ましくは約1.20V未満または約1.25V未満の全体のセル電位、そしてより好ましくは約0.9Vまたは約1.0Vの全体のセル電位の全体のセル電位が達成される。
【0032】
一般的に言えば、電気化学的セルにおける作動電流密度が上昇するにつれて、銅のメッキ速度は、上昇する。別の言い方をすれば、作動電流密度が高くなるにつれて、所定の時間およびカソード活性表面積に対して、より低い作動電流密度が達成された場合よりも、より多くのカソードの銅が生成される。あるいは、作動電流密度を高めることによって、同じ量の銅が、所定の時間内であるが、より小さい活性カソード表面積(すなわち、より少ないかより小さいカソードであり、これはより低い資本設備費およびより低い運転費に対応する)を用いて生成され得る。
【0033】
第一鉄/第二鉄アノード反応を使用して電流密度が高くなるにつれて、セル電位は、アノード表面での第一鉄の欠乏に一部は起因して、高くなる傾向がある。このことは、低セル電位を維持するために、電流密度が高くなるにつれて、アノードへの第一鉄イオンの輸送を増すことによって、補償され得る。多くの部分は第一鉄の鉄輸送の限界に起因して、先行技術は、第一鉄/第二鉄アノード反応を使用する銅の電解採取に対して、26A/ft(280A/m)以下の電流密度に限定されている。別の言い方をすれば、電解質中の流量を増加し、そして鉄濃度を増加して高電流密度を達成した以前の試みは、全体のセル電位を低下させるという点において不首尾であった。本発明の種々の実施形態によって、1.5V未満のセル電位を維持しつつ、26A/ftより上(そして有意に26A/ftより上)の電流密度での作動が可能となる。
【0034】
本明細書中以下でより詳細に記載されるように、本発明の例示的な実施形態は、約1.0V未満のセル電位で、約26〜約35A/ftの電流密度;約1.25V未満のセル電位で、約40A/ftまでの電流密度;約1.5V未満のセル電位での、約50A/ftまでまたは50A/ftより大きい電流密度で第一鉄/第二鉄アノード反応を使用する電気化学的セルの作動を可能にする。
【0035】
本発明の例示的な実施形態に従って、活性カソードの平方フィートあたり約20〜約50アンペア(約215A/m〜約538A/m)の電流密度が維持され、好ましくは活性カソードの約26A/ft(280A/m)より大きい電流密度、そしてより好ましくは約30A/ft(323A/m)より大きい電流密度が維持される。しかし、本発明の種々の実施形態に従って達成可能な最大作動電流密度は、プロセス装置の特定の構成に依存し、従って活性カソードの50A/ft(538A/m)より大きい電流密度は、本発明に従って達成可能であり得ることが認識されるべきである。
【0036】
本発明の種々の実施形態に従って構成されるプロセスの1つの明瞭な利点は、強制対流マニホールド電解質注入を有する通り抜け式アノードを使用する場合、先行技術に比べて、より高い電流密度が同じセル電位で達成可能であることである。例えば、S.P.Sandovalら、「A Substituted Anode Reaction for Electrowinning Copper」,Proceedings of Copper 95−COBRE 95 International Conference,v.III,pp.423−435(1995)」に報告されるように、U.S.Bureau of Minesは、実験による試験において約258A/m(約24.0A/ft)の電流密度を達成したに過ぎず、その試験では、2つの従来のカソードおよび3つの従来のアノード(すなわち、非通り抜け式アノード)を用いて、そして側面注入循環マニホールドを用いて、電解採取セルは5日間連続的に作動された。その電解質流量は、約0.24gpm/ftであり、電解質温度は、約104°Fであった。電解質中の鉄濃度は、約28g/Lと測定され、そして5日間の試験期間にわたる平均セル電位は、0.94Vであった。
【0037】
しかし、本発明の例示的な実施形態に従って実施された実験による試験の結果は、先行技術に対する本発明の利益を明瞭に実証する。このような試験において、約30A/ftの電流密度(U.S.Bureau of Minesの試験で達成された電流密度よりも25%大きい)が、3つの従来のカソードおよび4つの通り抜け式アノード(この例では、酸化イリジウムベースのコーティングを有するチタンメッシュアノード)を有し、そして底注入式「床マット」循環マニホールドを有する電解採取セルを使用して達成された。電解質の鉄濃度、電解質流量、温度およびセル電位は、U.S.Bureau of
Minesの試験で採用されたのと類似であった。
【0038】
本発明の利益をさらに図示するために、本明細書中の実施例1は、約1.0Vおよび約1.25Vのセル電位が、それぞれ、約35A/ft(377A/m)および約40A/ft(430A/m)の電流密度で達成可能であることを実証する。
【0039】
アノードでの水の分解反応を利用する従来の電解採取プロセスでは、電解質混合および電気化学的セルを通る電解質流れは、電気化学的セルを通って電解質を循環することにより、そしてアノードでの酸素の泡の発生により達成され、この酸素の泡の発生は、酸素の泡がセル中で電解質の表面に浮上するにつれて、電解質溶液の攪拌をもたらす。しかし、第一鉄/第二鉄アノード反応は、アノードで酸素の泡を発生しないので、電解質の循環が、電気化学的セル中の混合の主要な源である。本発明者らは、代替のアノード反応を利用する場合に、電解質流れ特性および電解質循環特性を増強することにより、アノード(例えば、第一鉄イオン/第二鉄イオン)とカソード(例えば、銅イオン)との間で関連する化学種の質量輸送の有意な増加を可能にするような構成である電気化学的セルが有利であることを認識することにより当該分野における進歩を達成した。
【0040】
電極間の増強された電解質の循環は、電極表面へのイオンの輸送および電極表面からのイオンの輸送(例えば、銅イオンをカソードに、第一鉄イオンをアノードに、そして第二鉄イオンをアノードから離して)の速度を高め、そして、結果として、全体のセル電位をおおむね低下させる。セル電位を低下させることは、電解採取に対する電力需要の低下をもたらす。しかし、この電解質の循環を増強することは、一般に、電解質ポンプ輸送システムの電力需要の増加を必要とする。従って、セル電位を低下させることの目的、および電解質の循環を高めることの目的は、好ましくは均衡される。本発明の例示的な実施形態の1つの局面に従って、上記電気化学的セルの全体の電力要求量は、この電気化学的セルを通って電解質を循環させるために必要とされる電力およびカソードで銅を電解採取するために使用される電力の合計を最小にすることにより、最適化され得る。
【0041】
ここで図2を参照して、本発明の例示的な実施形態の種々の局面に従う電気化学的セル200が提供される。電気化学的セル200は、一般に、セル21、少なくとも1つのアノード23、少なくとも1つのカソード25、およびセル21の少なくとも一部分の全体に分布する複数の注入穴29を備える電解質流れマニホールド27を備える。本発明の1つの実施形態の1つの局面に従って、電気化学的セル200は、図1に図示された電解採取プロセス100の電解採取段階101の実施のための例示的な装置を備える。これらの例示的な局面および他の例示的な局面は、本明細書中以下でより詳細に考察される。
【0042】
本発明の例示的な実施形態の1つの局面に従って、アノード23は、電解質がそれを通って流れることが可能であるような構成である。本明細書中で使用される場合、用語「通り抜け式アノード」とは、本発明の1つの実施形態に従ってそのように構成されているアノードをいう。
【0043】
任意の今では公知または今後考案される通り抜け式アノードが、本発明に種々の局面に従って利用される。可能な構成としては、金属ウールまたは金属織布、エキスパンド多孔性金属構造体、金属メッシュ、多数の金属ストリップ、多数の金属ワイヤもしくは金属棒、穿孔した金属シートなど、またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、適切なアノード構成は、平面構成に限定されず、任意の適切な多平面の幾何学的構成を含み得る。
【0044】
操作の任意の特定の理論により結び付けられることは望まないが、そのような構成であるアノードは、酸化のための第一鉄の鉄のアノード表面へのよりよい輸送、および上記アノード表面から離れる第二鉄の鉄のよりよい輸送を可能にする。従って、このような輸送を許容する任意の構成は、本発明の範囲内にある。
【0045】
従来の電解採取操作で採用されるアノードは、代表的には、鉛または例えばPb−Sn−Caのような鉛合金を含む。このようなアノードの1つの欠点は、電解採取操作の間に少量の鉛がそのアノードの表面から放出され、最後には所望でない沈殿物である「スラッジ」(その電解質の中に懸濁する粒子状物質)、または電気化学的セル中の腐食生成物の発生および銅カソード生成物の汚染を引き起こす。例えば、鉛含有アノードを用いる操作において生成される銅カソードは、代表的には、約1ppm〜約4ppmのレベルの鉛汚染物を含む。さらに、鉛含有アノードは、約4〜7年に限定された代表的な耐用年数を有する。本発明の好ましい実施形態の1つの局面に従って、上記アノードは、実質的に鉛を含まない。こうして、鉛含有沈殿物である「スラッジ」(電解質の中に懸濁する粒子状物質)または電気化学的セル中の他の腐食生成物の発生、およびその結果生じる、上記アノード由来の鉛による上記銅カソードの汚染は回避される。
【0046】
好ましくは、本発明の1つの例示的な実施形態に従って、上記アノードは、いわゆる「バルブ」金属のうちの1つから形成され、この「バルブ」金属としては、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、またはニオブ(Nb)が挙げられる。上記アノードはまた、ニッケルのような他の金属または合金、金属間混合物、または1つ以上のバルブ金属を含むセラミックもしくはサーメットから形成され得る。例えば、チタンはニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、または銅(Cu)と合金を形成され得、適切なアノードを形成し得る。好ましくは、上記アノードは、チタンを含む。なぜなら、とりわけ、チタンは丈夫であり、耐腐食性があるからである。例えば、本発明の種々の実施形態に従って使用される場合、チタンアノードは、潜在的に15年までかそれ以上の耐用年数を有する。
【0047】
上記アノードはまた、任意の電気化学的に活性なコーティングを含み得る。例示的なコーティングとしては、白金、ルテニウム、イリジウムまたは他のVIII族金属、VIII族金属酸化物、またはVIII族金属を含む化合物、およびチタン、モリブデン、タンタルの酸化物および化合物、ならびに/またはこれらの混合物および組合せから提供されるコーティングが挙げられる。酸化ルテニウムおよび酸化イリジウムが、チタンアノードが本発明の種々の実施形態と関連して採用される場合、このようなアノード上の電気化学的に活性なコーティングとしての使用のために好ましい。本発明の1つの実施形態に従って、このアノードは、イリジウムベースの酸化物コーティングでコーティングされたチタン金属メッシュから形成される。本発明の別の実施形態では、このアノードは、ルテニウムベースの酸化物コーティングでコーティングされたチタンメッシュから形成される。本発明の種々の実施形態に従う使用のために適切なアノードは、種々の供給業者から入手可能である。
【0048】
従来の銅電解採取操作は、銅スターターシートまたはステンレス鋼もしくはチタン「ブランク」をカソードとして使用する。本発明の例示的な実施形態の1つの局面に従って、このカソードは、金属シートとして構成される。このカソードは、銅、銅合金、ステンレス鋼、チタン、あるいは別の金属、または金属および/もしくは他の材料との組合せから形成され得る。図2に示されるように、そして当該分野で一般に周知のように、カソード25は、代表的には、そのカソードの一部が、セル内に浸漬され、一部(一般には、そのカソードの全表面積の約20%未満の、比較的小さい部分)がその電解質浴の外に留まるように、電気化学的セルの上部から吊り下げられている。電気化学的セルの作動の間、その電解質に浸漬されているカソードの部分の全表面積は、本明細書中で、そして一般に文献の中で、カソードの「活性」表面積と称される。これは、電解採取の間、銅がメッキされる、カソードの部分である。
【0049】
本発明の種々の実施形態に従って、このカソードは、今では公知であるか、または今後当業者により考案される任意の様式で、構成され得る。
【0050】
本発明の特定の実施形態では、カソード反応に対する増強された電解質循環の効果は、銅イオンの効果的な輸送を促進することである。高品質のカソード析出を促進するために、この電解質循環システムは、カソード表面への銅イオンの効果的な拡散を促進すべきである。この銅の拡散速度が十分に妨げられる場合、結晶成長パターンは、荒いカソード表面をもたらし得る好ましくない構造へ変化し得る。過剰なカソード表面粗さは、カソード表面に電解質、従って不純物を巻き込み得る多孔度の増加を引き起こし得る。銅の効果的な拡散速度は、滑らかな、高品質のカソードのために好ましい結晶成長を促進する拡散速度である。より高い電流密度は、カソード表面へのより高い銅の移動速度を必要とする。高品質の商業的に受容可能なカソードの生成のために、最大の実際の電流密度は、部分的には、好ましい結晶成長パターンを促進する銅の拡散速度によって制限される。本発明では、アノードへの、またはアノードからのイオン輸送を促進するために上記電気化学的セル内で利用される電解質循環システムはまた、カソードへの銅イオンの効果的な拡散を促進することに効果的である。例えば、通り抜け式アノードの使用は、アノードへの、またはアノードからの第一鉄イオン移動および第二鉄イオン移動に類似の様式で、カソードへの銅イオン移動を増強する。
【0051】
本発明の例示的な実施形態に従って、電解採取のための電解質中の銅濃度は、有利には、電解質1リットルあたり約20〜約60グラムの銅のレベルに維持される。好ましくは、銅濃度は、約30〜約50g/L、そしてより好ましくは約40〜約45g/Lのレベルに維持される。しかし、本発明の種々の局面は、これらのレベルの上および/または下の銅濃度を採用するプロセスに、有益に適用され得る。
【0052】
一般的に言えば、本明細書中に記載されるプロセス仕様が実施可能であるように、電気化学的セル中の電極間で電解質の満足な流れおよび循環を維持し得る任意の電解質のポンプ輸送システム、循環システム、または攪拌システムが、本発明の種々の実施形態に従って使用され得る。
【0053】
上記電解質の電気化学的セルへの注入速度は、この電解質が通ってその電気化学的セルに入る穴のサイズおよび/または幾何構造を変えることにより、変更され得る。例えば、電解質流れマニホールド27が注入穴29を有するセル21の内側の管材または配管として構成されている図2を参照して、注入穴29の直径が小さくされる場合、上記電解質の注入速度は増加し、とりわけ、この電解質の増加した攪拌をもたらす。さらに、セルの壁および電極に対する電気化学的セルへの電解質の注入の角度は、所望される任意の方法で構成され得る。ほぼ垂直な電解質注入の構成が、参考のために図2に示されているが、任意の数の、様々に方向付けられ、間隔を空けられた注入穴の構成が可能である。例えば、図2に示される注入穴は、互いにほぼ平行であり、同様に方向付けられているが、複数の対向する注入ストリームまたは横切る注入ストリームを含む構成が、本発明の種々の実施形態に従って有益であり得る。
【0054】
本発明の1つの実施形態に従って、上記電解質流れマニホールドは、例えば、例示的な通り抜け式アノードのメッシュ側面の間に挿入されるような、上記アノード構造体に、適切に一体化され、それに取付けられ、またはそれの内部に取付けられる管材または配管を備える。このような実施形態は、例えば、図3に示されており、ここでマニホールド31は、アノード32のメッシュ側面33および34の間に電解質を注入するような構成である。さらに別の例示的な実施形態が図4に示され、ここでマニホールド41は、アノード42のメッシュ側面43および44の間に電解質を注入するような構成である。マニホールド41は、複数の相互接続されたパイプまたは管45を備え、このパイプまたは管45は、アノード42のメッシュ側面43および44にほぼ平行に延び、各々が多数47の穴を有し、この穴47は、好ましくは、図4に示されるように、メッシュ側面43および44にほぼ平行に流れるストリームで、電解質をアノード42に注入するために、パイプまたは管45の中に形成される。
【0055】
本発明の別の実施形態に従って、上記電解質流れマニホールドは、露わになった「床マット」型マニホールドを備え、この「床マット」型マニホールドは、一般に、上記セルの底に沿って長く位置している一群の平行なパイプを備える。このような構成の例示的なマニホールドの詳細は、本明細書中の実施例に開示される。
【0056】
本発明のさらに別の実施形態に従って、高流量かつ強制対流電解質流れマニホールドは、例えば、電解質注入ストリームが逆向きかつ電極に平行に向けられるように、上記電気化学的セルの対向する側壁および/または底に一体化されるかまたは取付けられる。他の構成は、当然、可能である。
【0057】
本発明の種々の実施形態に従って、上記電解採取セルが、約1.5V未満のセル電位および約26A/ftより大きい電流密度で作動され得るように、第一鉄の鉄をアノードに輸送し、第二鉄の鉄をアノードから輸送し、そして銅イオンをカソードへ輸送するに有効な電解質流れを提供する任意の電解質流れマニホールドの構成が適切である。
【0058】
本発明の例示の実施形態に従って、電解質の流量は、1分あたり、活性カソードの1平方フィートあたり、約0.1ガロン(約4.0L/分/m)〜1分あたり、活性カソードの1平方フィートあたり、約1.0ガロン(約40.0L/分/m)のレベルに維持される。好ましくは、電解質の流量は、1分あたり、活性カソードの1平方フィートあたり、約0.1ガロン(約4.0L/分/m)〜1分あたり、活性カソードの1平方フィートあたり、約0.25ガロン(約10.0L/分/m)のレベルに維持される。しかし、本発明に従って有用である最適の作動可能な電解質流量は、上記プロセス装置の特定の構成に依存し、従って1分あたり、活性カソードの1平方フィートあたり、約1.0ガロンを超える(約40.0L/分/mを超える)流量または1分あたり、活性カソードの1平方フィートあたり、約0.1ガロン未満の(約4.0L/分/m未満の)流量が、本発明の種々の実施形態に従って、最適となり得ることが認識されるべきである。
【0059】
一般に、上記電気化学的セル(例えば、上記電解質)の作動温度が高くなるにつれて、カソードでのより良好なメッキが達成可能である。特定の理論に結び付けられることは望まないが、上昇した電解質温度は、さらなる反応エネルギーを提供し、そして温度が高くなるにつれて、一定のセル電位で、上記電解質中の銅の拡散の増加をもたらす熱力学的な反応増強を提供し得ると考えられる。さらに、温度の上昇はまた、第一鉄の拡散も高め得、そしてセル電位の全体としての低下をもたらし得、このことは、今度はより高い経済的な効率をもたらし得る。実施例2は、電解質温度の上昇に伴う、セル電位の低下を示す。従来の銅の電解採取セルは、代表的には、約115°F〜約125°F(約46℃〜約52℃)の温度で作動する。
【0060】
本発明の例示的な実施形態の1つの局面に従って、上記電気化学的セルは、約110°F〜約180°F(約43℃〜約83℃)の温度で作動される。好ましくは、この電気化学的セルは、約115°F(約46℃)または約120°F(約48℃)より上の温度で、そして好ましくは約140°F(約60℃)または約150°F(約65℃)より下の温度で、作動される。しかし、特定の用途では、約155°F(約68℃)〜約165°F(約74℃)の範囲の温度が、有利であり得る。
【0061】
しかし、上に概略を述べた理由からより高い作動温度が有益であり得る一方で、このようなより高い温度での作動は、より過酷な作動条件に満足に耐えるように設計され選択された構成の材料の使用を必要とし得る。さらに、より高温での作動は、エネルギー需要の増加を必要とし得る。
【0062】
上記電気化学的セルの作動温度は、当該分野で周知の種々の手段のいずれか1つまたはそれより多くを介して制御され得、この手段としては、例えば、浸漬加熱要素、インライン加熱デバイス(例えば、熱交換器)などが挙げられ、好ましくは、これらは効率的なプロセス制御のための1つ以上のフィードバック式の温度制御手段に結合され得る。
【0063】
滑らかなメッキ表面がカソードの品質および純度のために最適である。なぜなら、滑らかなカソード表面はより稠密であり、より少ない空洞を有し、この空洞には、電解質が巻き込まれ得、従ってこの表面に不純物を導入し得る。電流密度および電解質流量のパラメーターが、滑らかなカソードメッキ表面が達成可能であるように制御されることが好ましいが、高電流密度で上記電気化学的セルを作動することは、しかしながら、粗いカソード表面をもたらしがちである。従って、本発明の例示的な実施形態の1つの局面に従って、有効量のメッキ試薬が上記電解質ストリームに添加されて、上記カソードのメッキ特性−そして、従って表面特性−が増強され、改善されたカソード純度がもたらされる。メッキ表面特性、つまりカソードの滑らかさおよび多孔度を改善することにおいて効果的な任意のメッキ試薬が、使用され得る。例えば、適切なメッキ試薬(「平滑化剤(smoothing agent)」と呼ばれることがある)としては、チオ尿素、ガーゴム、加工デンプン、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、塩化物イオンが挙げられ得、そして/またはこれらの組合せがこの目的のために有効であり得る。使用される場合、上記電解質中のこのメッキ化試薬の有効な濃度は、または別の言い方をすれば、必要とされるメッキ化試薬の有効量は、採用される特定のメッキ化試薬の性質に常に依存する;しかし、このメッキ化試薬の濃度は、一般に、メッキされる銅1トンあたり約20グラムのメッキ化試薬〜1000g/トンの範囲である。
【0064】
第一鉄の鉄が上記電気化学的セル中のアノードで酸化されるにつれて、上記電解質中の第一鉄の鉄の濃度は当然に枯渇し、他方、電解質中の第二鉄の鉄の濃度は、当然に増加する。本発明の例示的な実施形態の1つの局面に従って、電解質中の第一鉄の鉄の濃度は、その電解質への硫酸第一鉄の添加により制御される。本発明の別の実施形態に従って、その電解質中の第一鉄の鉄の濃度は、銅の浸出溶液からの鉄の溶液抽出(SX)により制御される。
【0065】
第一鉄/第二鉄対が連続的なアノード反応を維持するために、アノードで発生された第二鉄の鉄は、好ましくは、電解質中の満足な第一鉄濃度を維持するために、第一鉄の鉄に還元して戻される。さらに、第二鉄の鉄の濃度は、好ましくは電気化学的セルにおける満足な電流効率を達成するために制御される。
【0066】
本発明の例示的な実施形態に従って、上記電解質中の全鉄濃度は、電解質1リットルあたり約10〜約60グラムの鉄のレベルに維持される。好ましくは、電解質中の全鉄濃度は、約20g/L〜約40g/Lのレベル、そしてより好ましくは約25g/L〜約35g/Lのレベルに維持される。しかし、電解質中の全鉄濃度は、本発明の種々の実施形態に従って変動することが注記される。なぜなら、鉄濃度は、電解質中の鉄の溶解度の関数だからである。電解質中の鉄の溶解度は、例えば酸濃度、銅濃度、および温度のような他のプロセスパラメータとともに変動する。本明細書中上記で説明されたように、電解質中の鉄濃度の減少は、一般に経済的に望ましい。なぜなら、そうすることは、鉄の補充要求量を減少し、そして電解質硫酸塩飽和温度を低下させ、そして従って電解採取セルの作動の費用を低減するからである。
【0067】
本発明の例示的な実施形態に従って、電解質中の第二鉄の鉄の濃度は、電解質1リットルあたり約0.001〜約10グラムの第二鉄の鉄のレベルに維持される。好ましくは、電解質中の第二鉄の鉄の濃度は、約1g/L〜約6g/Lのレベル、そしてより好ましくは約2g/L〜約4g/Lのレベルに維持される。
【0068】
再び図1を参照して、本発明の例示的な実施形態の別の局面に従って、電気化学的セル内の電解質中の第二鉄の鉄の濃度は、例えば、プロセス100の電解質再生ストリーム15として図1に示されるように、その電気化学的セルから電解質の少なくとも一部を取り除くことにより、制御される。
【0069】
本発明の例示の実施形態の1つの局面に従って、二酸化硫黄17が、電解質再生ストリーム15において第二鉄の鉄を還元するために使用され得る。第一鉄再生段階103における電解質再生ストリーム15中のFe3+のFe2+への還元は、任意の適切な還元剤または方法を使用して達成され得るが、二酸化硫黄は、Fe3+に対する還元剤として特に魅力的である。なぜなら、それは、他の銅処理操作から利用可能であるからであり、そして硫酸が副生成物として生成されるからである。銅含有電解質中の第二鉄の鉄と反応する際に、この二酸化硫黄は、酸化され、硫酸を形成する。第二鉄の鉄との二酸化硫黄の反応は、上記電気化学的セル中で生成される銅の各モルに対して2モルの硫酸を生成し、これは溶液抽出(SX)が電解採取とあわせて使用される場合、銅抽出プロセス全体内での酸均衡を維持するために代表的には必要とされるよりも1モル多い酸である。この過剰の硫酸は、例えば、浸出操作のような他の操作における使用のために第一鉄再生段階で発生されるその酸に富んだ電解質(ストリーム18として図1に示される)から抽出され得る。
【0070】
図1を参照して、第一鉄再生段階103からのこの酸に富んだ電解質ストリーム18は、酸に富んだ電解質ストリーム18の一部が電解採取段階101に戻り、そして一部は酸除去段階105に続くように、電解質再循環ストリーム12および16を経由して電解採取段階101へ戻されてもよく、さらなる処理のために酸除去段階105に導入されてもよく、または(図1に示されるように)廃棄されてもよい。酸除去段階105では、過剰の硫酸は、酸に富んだ電解質から抽出され、酸ストリーム19を経由してそのプロセスを離れ、中和されるか、好ましくは例えば野積み浸出操作のような他の操作において使用される。酸が減少した電解質ストリーム14は、図1に示されるように、次いで、電解質再循環ストリーム16を経由して電解採取段階101に戻され得る。
【0071】
要約すれば、本発明の1つの実施形態に従う第一鉄/第二鉄アノード反応を使用する銅の電解採取は、2つの生成物−カソードの銅および硫酸を生成する。
【0072】
本発明の例示的な実施形態の別の局面に従って、上記第二鉄に富んだ電解質は、例えば、瀝青炭から製造された活性炭、または適切な活性表面および適切な構造を有する別の型の炭素のような触媒の存在下で、二酸化硫黄と接触される。二酸化硫黄と第二鉄の鉄との反応は、好ましくは、第一鉄再生段階で生成された酸に富んだ電解質ストリーム中の第二鉄の鉄および第一鉄の鉄の濃度が制御され得るように、モニタリングされる。本発明の別の実施形態の1つの局面に従って、2つ以上の酸化還元電位(ORP)センサー(少なくとも、二酸化硫黄の注入地点から上流の第二鉄に富む電解質ライン中の少なくとも1つのORPセンサー、および第二鉄に乏しい電解質中の触媒反応地点から下流の少なくとも1つのORPセンサー)が使用される。ORPの測定値は、その溶液中の第二鉄/第一鉄比の指標を提供する;しかし、正確な測定値は、任意の特定の適用に独特であり得る溶液状態全体に依存する。当業者は、任意の数の方法および/または装置が、その溶液中の第二鉄/第一鉄比をモニタリングしかつ制御するために利用され得ることを認識する。第二鉄に富む電解質は、1リット
ルあたり約0.001〜約10グラムの第二鉄の鉄を含み、そして第二鉄に乏しい電解質は、1リットルあたり約6グラムまでの第二鉄の鉄を含む。
【0073】
以下の実施例は、本発明を例証するが、限定はしない。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
表1は、低セル電位を達成するためのアノード内電解質注入を伴う通り抜け式アノードの利点を実証する。アノード内マニホールドは、底注入に対して、同一の流れでより低いセル電位を生成するか、または同一の電流密度で流れ要求量を低減する。表1はまた、1.10V未満のセル電位が約35A/ft(377A/m)の電流密度で達成可能であり、1.25V未満のセル電位が約40A/ft(430A/m)の電流密度で達成可能であることを実証する。
【0075】
テストランA〜Fを、3つのフルサイズの従来のカソードおよび4つのフルサイズの通り抜け式アノードを備えた、ほぼ標準的な設計の電解採取セルを用いて実施した。そのカソードを、316ステンレス鋼から構築し、そして各々は41.5インチの活性深さおよび37.5インチの活性幅を有した(カソード1つあたり21.6ftの全活性表面積)。各アノードは、35.5インチの活性幅および39.5インチの活性深さを有し、イリジウムベースのコーティングを有するチタンメッシュから構築した。この実施例1に従って使用するアノードを、Strongsville,Ohio,USAのRepublic Anode Fabricatorsから入手した。
【0076】
試験継続期間は、5日間(テストランC、D、EおよびFを除く。これらは、一定条件で電位のみを測定するように設計した60分試験であった)であり、ほぼ一定条件で電解採取セルを連続24時間作動させた。電位測定を、1日あたり1回、手持ち式の電圧計を用いて行い、電位を、母線 対 母線で測定した。表1の平均セル電位について示した値は、6日間の試験期間にわたる平均の電位の値を示す。電解質流れの測定を、連続電子流量計(Magmeter)により実施し、表1のすべての電解質流量を、電解質の1分あたり、カソードのメッキ領域の1平方フィートあたりのガロンで示す。すべてのテストランで利用したメッキ試薬は、PD 4201加工デンプンであり、これをChemstar(Minneapolis,Minesota)から入手した。電解質中のメッキ試薬の濃度を、メッキされた銅1トンあたり250〜450グラムの範囲であった。
【0077】
電解質温度を、自動電気ヒーター(Chromalox)を使用して制御した。この電解質への鉄の添加を、硫酸第一鉄の結晶を使用して実施した(18%の鉄)。銅濃度アッセイおよび鉄濃度アッセイを、標準的な原子吸光試験を用いて実施した。上記電解質中の銅濃度を、溶液抽出を用いて、約41〜46g/Lのレベルに維持した。
【0078】
上記電解質中の硫酸の濃度を、Eco−Tec硫酸抽出ユニット(酸遅延プロセス)を使用して、約150〜160g/Lのレベルに維持した。
【0079】
各電解採取セルへの電流を、標準的な整流器を用いて設定した。各テストランに対する作動電流密度を、整流器の設定値上の全アンペアを全カソードのメッキ面積(すなわち、64.8ft)で割ることにより計算した。
【0080】
第一鉄再生を二酸化硫黄ガスを使用して達成した。その二酸化硫黄ガスを電解質再循環ストリームに注入し、上記第二鉄還元反応を触媒させるために次いで活性炭床を通した。この反応を、(標準塩化銀参照接点に対して)390〜410mVの範囲でORPを測定するORPセンサーを使用して制御した。十分な二酸化硫黄を、このORPを390〜410mVの範囲内に維持するように、上記電解質再循環ストリーム中に注入した。
【0081】
30A/ftの電流密度で作動させたすべてのテストランAおよびBに対する平均銅生成速度は、1日あたり112ポンドであった。テストランAおよびBに対して生成した銅カソードは、0.3ppm未満の鉛および5ppm未満の硫黄を測定した。銅の純度は、採用した特定の試験条件によれば、全体としては変化しなかった。比較的短い試験継続期間のために、テストランC〜Fについての銅アッセイは、実施しなかった。
【0082】
テストランA、C、およびEを、底注入「床マット」式注入マニホールド構成を使用して実施した。この底注入マニホールドに、上記電解採取セルの長さを走る(すなわち、上記電極の活性表面にほぼ垂直である)ような構成である11本の直径1インチのPVCパイプを含めた。その11本のパイプの各々に、各電極の隙間に1つの直径3/16インチの穴を配置した(すなわち、各電極の隙間内にほぼ均等な間隔を空けて11個の穴が存在した)。
【0083】
テストランA、D、およびFを、アノード内注入マニホールド構成を使用して実施した。このアノード内注入マニホールドを、この電極に隣接する分配供給ラインを使用して構成し、直接の電解質供給ラインは、この分配供給ラインから分岐し各アノードへ通じる内径3/8インチ×外径1/2インチまたは内径1/4インチ×外径3/8インチのポリプロピレン配管を備えた。各電解質供給ラインは、この電解質供給ラインから分岐して、アノードに直接電解質を注入するように、アノードのメッシュ表面の間に配置した、5つの等間隔の滴下チューブを備えた。カソードに隣接しては、電解質の直接注入は、行わなかった。
【0084】
【表1】

(実施例2)
表2は、温度を上昇させることは、セル電位を低下させることを示す。
【0085】
テストランA〜Cを、3つのフルサイズの従来のカソードおよび4つのフルサイズの通り抜け式アノードを備える、ほぼ標準的な設計の電解採取セルを使用して実施した。これらのカソードを、316ステンレス鋼から構築し、その各々は、41.5インチの活性深さおよび37.5インチの活性幅(カソード1つあたり21.6ftの全活性表面積)を有した。各アノードは、35.5インチの活性幅および39.5インチの活性深さを有し、酸化イリジウムベースのコーティングを有するチタンメッシュから構築した。この実施例2に従って使用したアノードをStrongsville,Ohio,USAのRepublic Anode Fabricatorsから入手した。
【0086】
試験継続期間は、6日間であり、ほぼ一定条件で電解採取セルを連続24時間作動させた。電位測定を、1日あたり1回、手持ち式の電圧計を用いて行い、電位を、母線 対 母線で測定した。表2の平均セル電位について示した値は、6日間の試験期間にわたる平均の電位の値を示す。電解質流れの測定を、連続電子流量計(Magmeter)により実施し、表2のすべての電解質流量を、電解質の1分あたり、カソードのメッキ領域の1平方フィートあたりのガロンで示す。すべてのテストランで利用したメッキ試薬は、PD
4201加工デンプンであり、これをChemstar(Minneapolis,Minesota)から入手した。電解質中のメッキ試薬の濃度を、メッキされた銅1トンあたり250〜450グラムの範囲に維持した。
【0087】
電解質温度を、自動電気ヒーター(Chromalox)を使用して制御した。この電解質への鉄の添加を、硫酸第一鉄の結晶を使用して実施した(18%の鉄)。銅濃度アッセイおよび鉄濃度アッセイを、標準的な原子吸光試験を用いて実施した。上記電解質中の銅濃度を、溶液抽出を用いて、約41〜46g/Lのレベルに維持した。
【0088】
上記電解質中の硫酸の濃度を、Eco−Tec硫酸抽出ユニット(酸遅延プロセス)を使用して、約150〜160g/Lのレベルに維持した。
【0089】
各電解採取セルへの電流を、標準的な整流器を用いて設定した。各テストランに対する作動電流密度を、整流器の設定値上の全アンペアを全カソードのメッキ面積(すなわち、64.8ft)で割ることにより計算した。
【0090】
第一鉄再生を二酸化硫黄ガスを使用して達成した。その二酸化硫黄ガスを電解質再循環ストリームに注入し、上記第二鉄還元反応を触媒させるために次いで活性炭床を通した。この反応を、(標準塩化銀参照接点に対して)390〜410mVの範囲でORPを測定するORPセンサーを使用して制御した。十分な二酸化硫黄を、このORPを390〜410mVの範囲内に維持するように、上記電解質再循環ストリーム中に注入した。
【0091】
30A/ftの電流密度で作動させたすべてのテストランに対する平均銅生成速度は、1日あたり112ポンドであった。すべてのテストランに対して生成した銅カソードは、一般に、0.3ppm未満の鉛および5ppm未満の硫黄を測定した。銅の純度は、採用した特定の試験条件によれば、全体としては変化しなかった。
【0092】
テストランを、底注入「床マット」式注入マニホールド構成を使用して実施した。この底注入マニホールドに、上記電解採取セルの長さを走る(すなわち、上記電極の活性表面にほぼ垂直である)ような構成である11本の直径1インチのPVCパイプを含めた。その11本のパイプの各々に、各電極の隙間に1つの直径3/16インチの穴を配置した(すなわち、各電極の隙間内にほぼ均等な間隔を空けて11個の穴が存在した)。
【0093】
【表2】

第一鉄/第二鉄−二酸化硫黄アノード反応を使用する銅の電解採取の効果的かつ効率よい方法が、本明細書中で提示された。さらに、本発明者らは、銅の電解採取プロセスと組み合わせて第一鉄/第二鉄アノード反応を使用することの利点を認識することにより、銅の湿式精錬の技術を進め、第一鉄/第二鉄アノード反応を利用するために改良されたシステムを開発して従来の銅の電解採取プロセスに対してより大きい効率を達成した。
【0094】
本発明は、多くの例示の実施形態および実施例を参照して上に記載されてきた。本明細書中に示されかつ記載された特定の実施形態は、本発明およびその最良の様式を例示しており、決して、請求の範囲に示される本発明の範囲を限定することは意図されていないことが理解されるべきである。本開示を読んだ当業者は、変更および改変が、本発明の範囲から逸脱することなく、上記例示の実施形態に対してなされ得ることを認識する。これらおよび他の変更または改変は、添付の請求の範囲に示されるように、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
21 セル
23 アノード
25 カソード
27 マニホールド
29 注入穴
200 電気化学的セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅含有電解質から銅を電解採取するためのシステムであって、該システムは、以下:
電解質ストリームであって、銅および鉄を含む、電解質ストリーム;
電気化学的セルであって、少なくとも1つのアノード、少なくとも1つのカソード、および電解質流れマニホールドを備え、該少なくとも1つのアノードが、少なくとも1つの通り抜け式アノードを備える、電気化学的セル、を備える、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−161860(P2009−161860A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33312(P2009−33312)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【分割の表示】特願2006−521998(P2006−521998)の分割
【原出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(506029233)フェルプス ドッジ コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】