説明

筆記具又は塗布具用油性インキ

【課題】 経時的に酸化チタンの硬い沈降物を生成することを防止する。
【解決手段】 酸化チタンと、炭化水素系溶剤と、酸化チタン1重量%に対し0.02重量%以上0.25重量%以下の水又は電解質水溶液とから少なくともなり、インキ中の酸化チタンの表面電位の絶対値が20mV以下である筆記具又は塗布具用油性インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素系溶剤を主媒体とした油性インキに関し、サインペンやボールペンなどの筆記具や、修正液のような塗布具に使用する油性インキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化チタンなどの白色顔料と、溶剤としてメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤や水などと、該炭化水素系溶剤や水に可溶なアクリル樹脂やスチレンブタジエン系熱可塑性エラストマーなどの樹脂とより少なくともなる修正液、マーカー用インキが知られている。(特許文献1、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭54−72122号公報
【特許文献2】特開平8−231916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化チタンは比重が高く沈降し易いため、酸化チタンを使用した修正液やマーカー用インキは容器の中に金属やガラス製の攪拌体を入れ、使用前に容器を振り、沈降した酸化チタンを再分散して使用するものであった。
しかし、沈降した酸化チタンは、経時的に、ハードケーキと呼ばれる硬い沈降層となり、容器を攪拌しても攪拌体が動かず再分散できないものになってしまうという問題を有していた。
【0005】
特許文献1に記載されている修正液のように、界面活性剤や分散剤としての樹脂を添加することによって、酸化チタンを極力沈降しないようにする分散維持を向上することはなされてきた。
しかし、比重の高い酸化チタンは経時的に沈降し、密な沈降層を形成してしまう。
また、特許文献2に記載されている吸油量30(g/100g)以上、等電点がpH7以下の酸化チタンと、水溶性(メタ)アクリル系樹脂と、水とを少なくとも含む水性白色顔料組成物は、顔料表面を負帯電させることにより、嵩高な弱い凝集体を生成している。このインキは6ヶ月程度放置しても沈降は問題ないが、3年以上の長期間放置した場合には、親水性の酸化チタンを水に分散しているため、徐々に濡れが進み、嵩高な弱い凝集構造が重力により押し固められ、再分散しにくいものとなってしまう。
【0006】
本願発明は、長期間放置し酸化チタンが沈降しても硬い沈降層を形成せず、撹拌体を入れた容器を振ることにより、容易に再分散できる油性インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この改善策として本発明は、主液媒体としての炭化水素溶剤と、着色材としての親水性顔料と、水とを少なくとも含有し、レーザードップラー法にて測定した前記親水性顔料の表面電位の絶対値が20mV以下である筆記具又は塗布具用油性インキを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
炭化水素溶剤中の水は非極性の炭化水素溶剤には溶解しないので、親水性顔料に吸着する。インキ中の水が吸着した親水性顔料は炭化水素系溶剤に濡れにくくなるため、インキ中の水が吸着した親水性顔料同士が接触するとその状態が保たれ連続的につながり弱い嵩高な凝集構造を形成し易くなる。
親水性顔料の表面電位の絶対値が20mV以下であると、顔料表面に水以外の物質は吸着しにくくなり、長期にわたって嵩高な凝集構造が保たれるので、固い沈降物が形成されず、弱い力で容易に再分散させることができるものと推察される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
親水性顔料は、顔料表面に水酸基をもつ金属酸化物である。一例をあげると酸化チタン、鉄黒、水酸化鉄、ベンガラ、酸化亜鉛などが挙げられる。
親水性顔料が酸化チタンの場合、隠蔽性のある筆跡を形成することができる。酸化チタンは分散性や耐候性のために表面にアルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなどで表面処理されている。この酸化チタンは使用する表面処理剤の比率により、等電点が変わり、添加する水溶液のpHにより帯電する電荷が変わる。等電点は、顔料の表面電位がゼロとなるpHである。具体例としては、TITANIX JR−600A(アルミナ処理、等電点pH7.4、)、同JR−600E(アルミナ処理、等電点pH8.0、)、JR−603(アルミナ、酸化ジルコニウム処理、等電点pH7.6、)、JR−NC(アルミナ、シリカ、酸化亜鉛処理、等電点pH6.9、)、JR−701(アルミナ処理、等電点pH7.0、比)、JR−800(アルミナ、シリカ処理、等電点pH4.6、)、JR−805(アルミナ、シリカ処理、等電点pH6.0)、JR−806(アルミナ、シリカ処理、等電点pH6.0)、JR(未処理、等電点pH6.0、)(以上、テイカ(株)製)、TIPAQUE R−780(アルミナ、シリカ処理、等電点pH5.0、比表面積17m/g)、R−780−2(アルミナ、シリカ処理、等電点pH4.5、)(以上、石原産業(株)製)、TITONE R7E(アルミナ、シリカ処理、等電点pH4.5、)(以上、堺化学工業(株)製)などが挙げられる。酸化チタンの添加量は30〜50重量%が好ましい。
親水性顔料の等電点は、蒸留水に親水性顔料を分散し、レーザードップラー法にて表面電位がゼロになるpHを測定した(ELS−Z2、大塚電子(株)製)。尚、pH調整には希塩酸と希アンモニウム水を使用した。
電気泳動している粒子にレーザー光を照射すると粒子からの散乱光は、ドップラー効果により周波数がシフトする。レーザードップラー法はこのシフト量が粒子の泳動速度に比例することから、このシフト量を測定することにより粒子の泳動速度求め、表面電位を算出する方法である。
表面電位の絶対値が20mV以下のである親水性顔料は、炭化水素溶剤と、親水性顔料と、水とから少なくともなるインキをボールミルなどで分散処理することにより、親水性顔料に少なくとも水が吸着することにより得られる。
【0010】
炭化水素溶剤は、油性インキの粘度を調製するために使用するもので、塗膜の乾燥性を考慮すると沸点40〜150℃の溶剤が好ましい。具体的には、ノルマルペンタン(沸点36.0℃)、シクロペンタン(沸点49.2℃)、メチルシクロペンタン(沸点71.8℃)ノルマルヘキサン(沸点68.7℃)、イソヘキサン(沸点62℃)、ノルマルヘプタン(沸点98.4℃)、ノルマルオクタンなど脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン(沸点80.0℃)、メチルシクロヘキサン(沸点100.9℃)、エチルシクロヘキサン(沸点132℃)等の他、エクソールDSP 100/140(初留点102℃、乾点138℃)(以上、エクソン化学(株)製)等の脂肪族炭化水素系溶剤の混合品などが挙げられる。これらは、単独もしくは混合して使用可能である。使用量はインキ全量に対して30〜60重量%が好ましい。
【0011】
水は非極性の炭化水素溶剤中で親水性顔料を帯電させるために使用する。その添加量は、親水性顔料1重量部に対し、0.02重量%以上0.25重量%以下が好ましい。親水性顔料1重量%に対し水分が0.02重量%未満では、親水性顔料表面の帯電が不十分で分散され難い。親水性顔料1重量%に対し、水分が0.25重量%以上では、親水性顔料が吸着できる水分量を超え、炭化水素溶剤に溶解しない水分が上澄みとして分離する。そうなると紙面などに塗布した際に、使用前に撹拌しても水の層と油性白色インキに分かれ、斑な塗膜になりやすくなる。
【0012】
親水性顔料の表面電位の絶対値を20mV以下に制御するため、添加する水を酸、又はアルカリ剤でpH調整することも出来る。水に溶解する酸性物質またはアルカリ性物質の具体例として、酸性物質は、塩酸、硝酸、過塩素酸、硫酸、酢酸、蟻酸、炭酸、リン酸、アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどが挙げられる。
【0013】
その他樹脂は顔料の分散や修正液の紙面等への定着のため使用することも出来る。
上記炭化水素系有機溶剤を使用した場合、一例を挙げると。マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、熱可塑性エラストマー、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂なども使用できるが、顔料分散性、紙面への定着性などを考慮するとアクリル系の樹脂が好ましい。
以下、アクリル系樹脂について説明する。使用可能なモノマーはアクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ノルマルブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、オレイルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどが挙げられる。また、アミノ基を含有するモノマーとして、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジシクロヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,Nジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらのモノマー以外にも酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン、マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、N−チロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、グリシジルメタクリレートなどの共重合可能なビニルモノマーを含有することもできる。
その使用量は樹脂固形分量がインキ全体の3〜15重量%が好ましい。
【0014】
体質顔料、樹脂粒子なども適宜使用でき、その形状も特に限定されるものではない。具体例としては、球状、塊状の粒子としては、炭微粒子酸化チタン、架橋ポリメタクリル酸メチル、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、シリカ、炭酸カルシウム、板状の粒子としては、マイカ、タルク、窒化ホウ素、二硫化モリブデンなどがある。針状の粒子としては、窒化ケイ素ウィスカー、炭化ケイ素ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、ウィスカー状炭酸カルシウム、ウィスカー状酸化チタン、アルミナ径ウィスカー、マグネシアウィスカー、ムライトウィスカー、ホウ酸マグネシウムウィスカー、ホウ化チタンウィスカー、アルミナ及びアルミナシリカ短繊維、シリカ短繊維、ジルコニアファイバー(短繊維)、カオリン系セラミックス短繊維などが挙げられる。その使用量は、0.5〜15重量%が好ましい。
【0015】
また、顔料分散安定性の為に、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリカルボン酸高分子などの陰イオン性界面活性剤、ポリエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤、第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩などの分散剤を添加することが出来る
【0016】
本発明の修正液は、上記各成分をボールミル、アトライター、サンドグラインダー、インペラー等の攪拌分散機を使用して分散混合することによって得られる。
【実施例】
【0017】
実施例1
TITANIX JR602(酸化チタン、等電点8.0、テイカ(株)製)
40.0重量部
メチルシクロヘキサン 48.3重量部
ダイヤナールBR105(アクリル樹脂、三菱レイヨン(株)製) 8.7重量部
水(pH7.9、pH調整剤 アンモニア) 2.0重量部
Disperbyk101(界面活性剤、BYK−Chemie(独国)製)
1.0重量部
上記各成分をダイノミルtypeKDLを使用し下記条件で分散した。酸化チタン1重量部%に対し、水分が0.050重量%の油性白色インキを得た。尚、インキ中の粒子の表面電位は−20mVであった。
<分散条件>
ディスク周速 15m/sec
使用ビーズ ジルコニア0.6mm
ビーズ充填量 85%
インキ処理量 12リットル/時間
【0018】
実施例2
TITANIX JR805(酸化チタン、等電点6.0、テイカ(株)製)
40.0重量部
メチルシクロヘキサン 44.9重量部
ダイヤナールBR105(前述) 8.7重量部
水(pH7.0、pH調整剤 未使用) 5.4重量部
Disperbyk101(前述) 1.0重量部
上記各成分を実施例1と同様に分散し、酸化チタン1重量部%に対し、水分が0.136重量%の油性白色インキを得た。尚、インキ中の粒子の表面電位は−20mVであった。
【0019】
実施例3
TITANIX JR800(酸化チタン、等電点4.6、テイカ(株)製)
40.0重量部
メチルシクロヘキサン 38.0重量部
YSポリスターT100(テルペンフェノール共重合体、ヤスハラケミカル(株)製)
20.0重量部
水(pH5.4、pH調整剤 希塩酸) 1.0重量部
Disperbyk101(前述) 1.0重量部
上記各成分を実施例1と同様に分散し、酸化チタン1重量部%に対し、水分が0.030重量%の油性白色インキを得た。尚、pH5.4の時の粒子の表面電位は−20mVであった。
【0020】
実施例4
TITANIX JR800(酸化チタン、等電点4.6、テイカ(株)製)
40.0重量部
メチルシクロヘキサン 49.0重量部
YSポリスターT100(テルペンフェノール共重合体、ヤスハラケミカル(株)製)
9.0重量部
水(pH5.0、pH調整剤 希塩酸) 1.0重量部
Disperbyk101(前述) 1.0重量部
上記各成分を実施例1と同様に分散し、酸化チタン1重量部%に対し、水分が0.030重量%の油性白色インキを得た。尚、インキ中の粒子の表面電位は−10mVであった。
【0021】
実施例5
TITANIX JR701(酸化チタン、等電点7.0、テイカ(株)製)
40.0重量部
メチルシクロヘキサン 49.0重量部
ダイヤナールBR105(前述) 9.0重量部
水(pH4.7、pH調整剤 希塩酸) 1.0重量部
Disperbyk101(前述) 1.0重量部
上記各成分を実施例1と同様に分散し、酸化チタン1重量部%に対し、水分が0.030重量%の油性白色インキを得た。尚、インキ中の粒子の表面電位は−5mVであった。
【0022】
実施例6
TITANIX JR600A(酸化チタン、等電点pH7.4) 30.0重量部
メチルシクロヘキサン 68.0重量部
水(pH7.0、pH調整剤 無添加) 1.0重量部
Disperbyk101(前述) 1.0重量部
上記各成分を実施例1と同様に分散し、酸化チタン1重量部%に対し、水分が0.030重量%の油性白色インキを得た。尚、インキ中の粒子の表面電位は5mVであった。
【0023】
実施例7
TITANIX JR701(前述) 30.0重量部
ダイヤナールBR105(前述) 5.0重量部
メチルシクロヘキサン 63.7重量部
水(pH7.0、pH調整剤無添加) 0.3重量部
Disperbyk101(前述) 1.0重量部
上記各成分を実施例1と同様に分散し、酸化チタン1重量部%に対し、水分が0.030重量%の油性白色インキを得た。尚、インキ中の粒子の表面電位は10mVであった。
【0024】
実施例8
TITANIX JR701(酸化チタン、等電点7.0、テイカ(株)製)
40.0重量部
メチルシクロヘキサン 48.3重量部
ダイヤナールBR105(前述) 8.7重量部
水(pH7.0、pH調整剤 無添加) 2.0重量部
Disperbyk101(前述) 1.0重量部
上記各成分を実施例1と同様に分散し、酸化チタン1重量部%に対し、水分が0.051重量%の油性白色インキを得た。尚、インキ中の粒子の表面電位は0mVであった。
【0025】
実施例9
TAROX R−110−7(ベンガラ、等電点9.5、チタン工業(株)製)
40.0重量部
メチルシクロヘキサン 38.0重量部
ダイヤナールBR105(前述) 20.0重量部
水(pH9.2、pH調整剤 アンモニア) 1.0重量部
Disperbyk101(前述) 1.0重量部
上記各成分を実施例1と同様に分散し、ベンガラ1重量部%に対し、水分が0.030重量%の油性赤色インキを得た。尚、pH9.2の時の粒子の表面電位は20mVであった。
【0026】
比較例1
JR800(前述) 40.0重量部
JONCRYL61J(スチレン−アクリル樹脂、不揮発分30.5重量%、BASF製
(独国)) 30.0重量部
TL10(界面活性剤、日光ケミカルズ(株)製) 1.0重量部
水 29.0重量部
上記各成分を実施例1と同様に分散し、pH7.3の水性白色インキを得た。尚、インキ中の粒子の表面電位は33mVであった。
【0027】
比較例2
TITANIX JR602(酸化チタン、等電点8.0、テイカ(株)製)
40.0重量部
メチルシクロヘキサン 49.6重量部
ダイヤナールBR105(アクリル樹脂、三菱レイヨン(株)製) 8.7重量部
水(pH9.0、pH調整剤 水酸化ナトリウム) 1.0重量部
Disperbyk101(界面活性剤、BYK−Chemie(独国)製)
1.0重量部
上記各成分を実施例1と同様に分散し、酸化チタン1重量部%に対し、水分が0.026重量%の油性白色インキを得た。尚、インキ中の粒子の表面電位は−30mVであった。
【0028】
表面電位測定
各実施例、比較例で得た油性白色インキをそれぞれの主溶媒で10000倍に希釈し、ELS−Z2(大塚電子(株)製)で、レーザードップラー法にて測定した。
【0029】
沈降物硬さ測定
各実施例、比較例で得た油性白色インキを底面の直径19mmのネジ口瓶に高さ5cmまで充填し、室温で3年放置する。その後、FUDOHレオメーター((株)レオテック)で沈降層の底の部分の硬さを測定した。
測定条件
使用アダプター:φ10の円盤
測定スピード:2cm/分
【0030】
再分散試験
各実施例、比較例で得た油性白色インキを直径8mm、重さ2gのボールを入れた、底面の直径19mmのネジ口瓶に高さ5cmまで充填し、室温で3年放置する。その後、ネジ口瓶を振り、ボールが動き出すまでの回数を測定した。
【0031】
【表1】

【0032】
以上、各実施例で示したようにインキ中に水分を含有し、酸化チタンの表面電位の絶対値が20mV以下のインキは、比較例1の酸化チタンの等電点以下の電解質水溶液添加した油性白色インキに比べ、沈降物硬さが小さく、再分散の振り回数が少ない、経時安定性が良好な物である。実施例3〜8より表面電位の絶対値がより小さくなると再分散性、硬さがより小さくなる。また、実施例1〜3を比較すると同じ表面電位でも等電点の高い実施例1がやや再分散性、硬さが高い値を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主液媒体としての炭化水素溶剤と、着色材としての親水性顔料と、水とを少なくとも含有し、レーザードップラー法にて測定した前記親水性顔料の表面電位の絶対値が20mV以下である筆記具又は塗布具用油性インキ。
【請求項2】
前記親水性顔料が酸化チタンであり、その酸化チタンの等電点が4〜7である請求項1記載の筆記具又は塗布具用油性インキ。