説明

等化装置及び等化方法

【課題】同期外れや回線断等による等化器の発散を即時に判定して、速やかに再同期を行うこと。
【解決手段】同期外れ判定処理部104は、等化処理部101から出力されたトレーニング完了時の等化誤差、連続検出処理部103から出力された同じパターンの硬判定値の繰返し連続回数、の少なくとも1つの情報に基づいて、同期外れまたは通信回線の回線断の有無を判定し、等化誤差が閾値以上のとき、または硬判定値の繰返し連続回数がN回以上のとき、の少なくとも1つに該当するときは、同期外れまたは回線断と判定する。回線断判定処理部105は、同期外れ判定処理部104から出力された同期外れ判定結果と、RSSI算出部102から出力されたRSSIの情報とに基づいて回線断の有無を判定し、同期外れであり、かつRSSIが閾値以下のときに回線断と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信路で遅延した受信信号の遅延量を補正するための等化処理を行う等化装置及び等化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
0.技術の背景と課題
0.1.従来の装置構成
無線通信システムにおいては、電波が建物などに反射されて幾つもの伝搬経路を辿るマルチパスの影響を受けるために通信信号に符号間干渉が生じ、それによって通信品質が劣化することが知られている。そのため、マルチパスの影響を低減させるために遅延等化器(等化装置)が用いられている。
【0003】
遅延等化器は、デジタルフィルタからなる2つのFIR(Finite Impulse Response)フィルタで構成され、既知シンボルを用いたトレーニングにより、等化処理部による等化結果と既知シンボルとの誤差(等化誤差)が最小となるようにタップ係数を制御させている。遅延等化器は、トレーニング終了後のタップ係数を初期値として、既知シンボル以外のデータ系列の等化処理を行う。
【0004】
このように、遅延等化器は、既知シンボルを用いたトレーニングにより伝搬路状態を推定し、その推定情報を用いて最適な等化処理を行っている。このとき、同期外れや回線断などにより伝搬路状態の推定が適切に出来ない場合は、遅延等化器のタップ係数が収束せずに発散し、正しく復調が出来なかったデータを遅延等化器の後段処理に出力してしまうおそれがある。この場合、遅延等化器の後段処理(デインタリーブ処理、誤り訂正処理など)が複数フレームの信号を必要とすることから、遅延等化器の後段処理で同期外れや回線断の判定を行うと、判定が遅れてしまい回線品質を悪化おそれがある。そのため、同期外れや回線断を速やかに検知する必要がある。そこで、このような問題を解決するための技術が例えば特許文献1などに開示されている。
【0005】
0.2.特許文献1に開示の等化器
特許文献1には、遅延等化器の中心タップ係数を常時監視し、その中心タップ係数がある閾値を超えた場合には遅延等化器が発散したとみなしてタップ係数を初期化する技術が開示されている。この技術によれば、遅延等化器の中心タップ係数の変移を常時監視することにより、同期外れや回線断などの異常状態による遅延等化器の発散を速やかに検出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−280936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
0.3.本発明の課題
しかしながら、上述した特許文献1に開示された技術では、中心タップ係数に基づいて等化器(遅延等化器)の発散の有無を判定しているため、正確な発散具合を監視することは容易ではない。特に無線通信においては、監視用の中心タップ係数の閾値を決定するためには、受信信号の様々な伝搬状態において検証を行う必要があり困難である。さらに、既知系列のトレーニング信号でトレーニングを行うような等化器の構成の場合は、タップ係数の初期化を行っても等化器の発散を収束させる効果を期待することはできない。
【0008】
0.4.本発明の目的
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、同期外れや回線断等による等化器のタップ係数の発散を即時に判定して速やかに再同期を行うことができる等化装置及び等化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の等化装置は、トレーニング完了時における既知シンボルと受信信号の等化結果との等化誤差を出力すると共に、前記等化結果から得られる硬判定値を出力する等化処理手段と、前記等化処理手段から出力された前記等化誤差及び前記硬判定値の少なくとも1つの情報に基づいて、前記受信信号の同期外れの有無を示す同期外れ判定結果を出力する同期外れ判定処理手段とを具備する構成を採る。
【0010】
好ましくは、前記等化処理手段から出力された前記硬判定値が同じパターンで繰り返される連続回数をカウントし、カウントされた連続回数を硬判定値連続回数として出力する連続検出処理手段を具備し、前記同期外れ判定処理手段は、前記硬判定値の情報として前記連続検出処理手段から出力された前記硬判定値連続回数を取得し、該硬判定値連続回数に基づいて前記受信信号の同期外れの有無を判定する構成を採ることが望ましい。
【0011】
また、本発明の等化装置は、さらに、前記受信信号のRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度)を算出し、算出されたRSSIを出力するRSSI算出手段と、前記同期外れ判定処理手段から出力された前記同期外れ判定結果と、前記RSSI算出手段から出力されたRSSIとに基づいて、前記通信回線の回線断の有無を示す回線断判定結果を出力する回線断判定処理手段とを具備する構成を追加してもよい。
【0012】
本発明の等化方法は、トレーニング完了時における既知シンボルと受信信号の等化結果との等化誤差を出力すると共に、前記等化結果から得られる硬判定値を出力する等化処理工程と、前記等化処理工程において出力された前記硬判定値が同じパターンで繰り返される連続回数をカウントし、カウントされた連続回数を硬判定値連続回数として出力する連続検出処理工程と、前記等化処理手工程において出力された前記等化誤差、及び、前記連続検出処理工程において出力された前記硬判定値連続回数、の少なくとも1つの情報に基づいて、前記受信信号の同期外れの有無を示す同期外れ判定結果を出力する同期外れ判定処理工程と、を含むようにした。
【0013】
また、本発明の等化方法は、さらに、前記受信信号のRSSIを算出し、算出されたRSSIを出力するRSSI算出工程と、前記同期外れ判定処理工程において出力された前記同期外れ判定結果と、前記RSSI算出手段から出力されたRSSIとに基づいて、前記通信回線の回線断の有無を示す回線断判定結果を出力する回線断判定処理工程とを追加してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、同期外れや回線断の状態を等化装置の後段で検出するのではなく、等化装置の出力の等化結果によって即時に検出しているので、同期外れなどが生じた場合は速やかに再同期を行うことができる。したがって、等化装置の性能と信頼性を向上させることができると共に、通信品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る等化装置の構成を示すブロック図
【図2】図1における等化処理部の内部構成を示すブロック図
【図3】本発明の一実施の形態に係るフレーム構成を示す図
【図4】本発明の一実施形態に係る等化装置において、等化結果の第1の判定方法を説明するための1フレームの符号列を示す図
【図5】本発明の一実施形態に係る等化装置において、等化結果の第2の判定方法を説明するための1フレームの符号列を示す図であり、(a)は同期追従時、(b)は同期外れ時を示す図
【図6】本発明の一実施形態に係る等化装置において、等化結果の第3の判定方法を説明するための1フレームの符号列とRSSIを示す図であり、(a)は通常時の等化結果、(b)は発散時の等化結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.概要
1.1.本発明の一実施の形態の概要
本発明の一実施の形態に係る等化装置は、同期外れや回線断の状態を等化装置の後段で検出するのではなく、等化装置の出力信号(等化結果)によって同期外れや回線断の状態を即時に検出し、速やかに再同期を行うことができるように構成したことを特徴とする。具体的には、次のような方法によって同期外れや回線断の状態を判定する。
【0017】
(1)等化装置の出力の等化信号(等化結果)の硬判定値がN回数以上(但し、Nは2以上の整数)連続して同じパターンであるときは、同期外れまたは回線断であると判定する。
(2)等化装置のトレーニングが完了したときの既知シンボルと等化信号(等化結果)との等化誤差が所定の閾値以上であるときは、同期外れまたは回線断であると判定する。
(3)等化装置の出力の等化信号(等化結果)の硬判定値がN回数以上連続して同じパターンであり、かつ、RSSIが所定の閾値以下であるときは、回線断であると判定する。
(4)等化器のトレーニングが完了したときの既知シンボルと等化信号(等化結果)との等化誤差が所定の閾値以上であり、かつ、RSSIが所定の閾値以下であるときは、回線断であると判定する。
【0018】
ここで、前述の(1)、(2)における「同期外れまたは回線断」の判定については、信号(または回線)が存在しているが受信側において同期外れを起こした場合、または、信号(または回線)が存在していないために受信側で同期外れを起こした場合の何れかが発生したと判定する状態を示している。このような判定がなされた場合の一般的な後処理としては、無線通信装置の制御部で再同期等の通信復活のための処理を行い、再同期が出来なかったときは通信終了処理に移る。
【0019】
また、前述の(3)、(4)における「回線断」の判定については、信号(または回線)が存在していないために受信側で同期外れを起こしたと判定する状態を示している。このような判定がなされた場合の一般的な後処理としては、無線通信装置の制御部において通信終了等を行う。
【0020】
以下、本発明に係る等化装置の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
2.一実施の形態
2.1.等化装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る等化装置100の構成を示すブロック図である。図1において、等化装置100は、等化処理部101と、RSSI算出部102と、連続検出処理部103と、同期外れ判定処理部104と、回線断判定処理部105とを備えて構成されている。
【0022】
等化処理部101は、所定のパラメータによって選択されたタップ数(FFタップ数及とFBタップ数)及びタップ係数と忘却係数とを用いて、入力された受信信号の等化処理を実行し、遅延量の補正された等化信号(等化結果)を出力する。また、この等化処理部101は、トレーニングの完了時において、既知シンボルと受信信号を等化処理した等化信号(等化結果)との等化誤差を求めて、この等化誤差を同期外れ判定処理部104へ出力すると共に、受信信号が等化処理された等化信号(等化結果)の硬判定値を連続検出処理部103へ出力する。
【0023】
RSSI算出部102は、等化処理部101へ入力される受信信号のRSSI(受信信号強度)を算出し、算出されたRSSIを回線断判定処理部105へ出力する。
【0024】
連続検出処理部103は、等化処理部101から出力された等化信号(等化結果)の硬判定値を連続的に検出し、硬判定値が同じパターン(符号)で繰り返される連続回数の情報を同期外れ判定処理部104へ出力する。
【0025】
同期外れ判定処理部104は、等化処理部101から出力された等化誤差、または、連続検出処理部103から出力された、硬判定値が同じパターン(符号)で繰り返される連続回数に基づいて同期外れ(等化装置の発散)が発生したか否かを判定し、同期外れ判定結果を無線通信装置の制御部または同期部(何れも図示せず)へ出力する。すなわち、同期外れ判定処理部104は、等化装置出力の等化信号(等化結果)の硬判定値がN回数以上連続して同じパターンであるとき、または等化装置のトレーニングが完了したときの既知シンボルと等化信号(等化結果)との等化誤差が閾値以上であるときは同期外れであると判定して、同期外れ判定結果を図示しない無線通信装置の制御部または同期部へ出力する。
【0026】
回線断判定処理部105は、同期外れ判定処理部104から出力された同期外れ判定結果と、RSSI算出部102から出力されたRSSIのレベルとに基づいて回線断が発生したか否かを判定し、回線断判定結果を無線通信装置の制御部または同期部(何れも図示せず)へ出力する。すなわち、回線断判定処理部105は、等化装置出力の等化信号(等化結果)の硬判定値がN回数以上連続して同じパターンであり(つまり、同期外れであり)、かつ、RSSIが閾値以下であるとき、または、等化器のトレーニングが完了したときの既知シンボルと等化信号(等化結果)との等化誤差が閾値以上であり(つまり、同期外れであり)かつ、RSSIが閾値以下であるとき、の何れかの場合は回線断であると判定して、回線断判定結果を図示しない無線通信装置の制御部または同期部へ出力する。
【0027】
2.2.等化処理部の構成
図2は、図1における等化処理部101の内部構成を示す図である。図2に示すように、等化処理部101は、FF(フィードフォワード)タップ部201と、FB(フィードバック)タップ部202と、データ判定部203と、誤差推定部204と、タップ係数更新部205と、切替えスイッチ206と、を備えて構成されている。
【0028】
FFタップ部201は、受信信号を入力し、FFタップ部201の一番右側のタップ(センタータップ)から見て現在又は未来のデータを合成する。また、FBタップ部202は、後述するデータ判定部203から出力された軟判定結果の判定値を入力し、センタータップから見て過去のデータを合成する。ただし、FBタップ部202は、初期値を設定する場合は、既知の信号系列であって電源投入時などにおいて回線状態を調べるためのトレーニング信号を入力する。
【0029】
データ判定部203は、FFタップ部201の出力信号とFBタップ部202の出力信号との加算結果を入力し、送信シンボルを推定する。送信シンボルの推定結果は、硬判定結果(等化信号)として等化処理部101から出力されると共に、軟判定結果としてFBタップ部202及び誤差推定部204へ出力される。
【0030】
誤差推定部204は、FFタップ部201の出力信号とFBタップ部202の出力信号との加算結果と、データ判定部203から出力された送信シンボル推定結果(軟判定結果)との差分、すなわち、誤差を推定してタップ係数更新部205へ出力する。ただし、等化処理部101が初期値を設定する場合は、切替えスイッチ206を切り替えることによってトレーニング信号が誤差推定部204へ入力され、トレーニング信号と、FFタップ部201の出力信号及びFBタップ部202の出力信号の加算結果との差分を誤差として推定する。
【0031】
タップ係数更新部205は、誤差推定部204から出力された誤差、及び、パラメータセット選択部(図示せず)ら出力されたタップ数(FFタップ数とFBタップ数)及び忘却係数を用いて、タップ係数を更新し、更新されたタップ係数をFBタップ部202及びFFタップ部201へ出力する。
【0032】
なお、切替えスイッチ206は、データ判定部203から出力された軟判定結果とトレーニング信号とを適宜に切り替えて、FBタップ部202と誤差推定部204へ出力するためのスイッチである。また、図2に示すタップ(T/F)のFはフラクショナル数であって、シンボル間隔等化であればF=1、分数間隔等化であればFは任意の整数である。ただし、F>1である。
【0033】
2.3.等化信号のフレーム構成
図3は、本発明の一実施形態に係る等化信号のフレーム構成を示す図である。図3に示すようなフレーム構成において、フレームの先頭に既知シンボルの符号列が配置され、既知シンボルの符号列に後続してデータの符号列が配置されている。このようなフレーム構成において、順方向等化処理を行うときは、現フレームの既知シンボルの符号列を用いて先頭から後端に向かって順方向に(時間軸に沿って)トレーニングを行い、現フレームのデータ区間の符号列については順方向にトラッキングを行う。
【0034】
また、逆方向等化処理を行うときは、次フレームの既知シンボルの符号列を用いて後端から先頭に向かって逆方向に(時間軸を遡って)トレーニングを行い、現フレームのデータ区間の符号列については逆方向にトラッキングを行う。これにより、同一データ区間の符号列で順方向等化結果と逆方向等化結果の2つの等化結果を得ることができる。なお、順方向トレーニングと逆方向トレーニングは、片方のみまたは両方実施してもよい。両方実施した場合は2つの等化信号(等化結果)を比較することで、より精度の高い結果を得ることも出来る。
【0035】
ここで、トレーニングを行う既知シンボル区間、またはトラッキングを行うデータ区間の受信レベルがフェージング等により落ち込んだ場合は、等化装置のタップ係数が最適値に収束しないで発散するために、等化装置出力の等化信号(等化結果)の符号列(硬判定値)は同じ値の符号が連続する傾向がある。
【0036】
2.4.等化結果の第1の判定方法
図4は、本発明の一実施形態に係る等化装置において、等化結果の第1の判定方法を説明するための1フレームの符号列を示す図である。すなわち、図4の上図は等化装置の通常時における等化結果の1フレームの符号列を示し、下図は等化装置の発散時における等化結果の1フレームの符号列を示し、何れも横方向が時間の流れを示している。図4に示すように、等化結果の1フレームの符号列は、先頭の既知シンボル区間に続いてデータ区間が配置されている。
【0037】
このとき、図4の上図に示すような、等化装置の通常時における等化結果の符号列に対して、等化装置が発散すると、図4の下図に示すように、先頭のトレーニング区間に続くデータ区間の符号列においてN回以上に亘って同じ値(符号)が連続して発生する。言い換えると、等化装置が発散すると、硬判定値はN回以上に亘って同じパターンの値(符号)が連続して発生する。
【0038】
すなわち、図1に示す等化装置100における等化処理部101の等化結果の符号列、すなわち硬判定値がN回数以上連続して同じパターン(符号)であるときは、等化装置100が発散したと判定し、受信信号に同期外れまたは回線断が発生した旨の情報を無線通信装置の制御部または同期部へ通知する。
【0039】
言い換えると、回線断や同期外れによって、既知シンボルによってトレーニングを行うトレーニング区間が想定したデータではない場合は、図2に示す等化処理部101のタップ係数が最適値に収束しないで発散していることがある。このようにしてタップ係数が発散すると、トレーニング区間に後続するデータ区間の等化結果の符号列は同じ値の符号が連続する傾向となる。つまり、データ区間では符号列が誤り伝搬の状態となる。したがって、タップ係数ではなく、等化処理部101の出力の等化結果における硬判定値(符号列)の値を判定することにより、等化装置100の発散状態の有無を正確に判定することができる。その結果、同期外れまたは回線断の有無を判定することができる。すなわち、通信回線は存在しているが受信側で同期外れを起こしたか、または、通信回線に回線断が生じたために受信側で同期外れを起こしたかのどちらかであると判定することができる。
【0040】
2.5.等化結果の第2の判定方法
図5は、本発明の一実施形態に係る等化装置において、等化結果の第2の判定方法を説明するための1フレームの符号列を示す図であり、(a)は同期追従時、(b)は同期外れ時を示している。なお、図5における横方向は時間の流れを示している。すなわち、図5(a)は、同期追従時における1フレーム間の受信信号の等化結果と既知シンボルの符号列を示し、同図(b)は同期外れ時における1フレーム間の受信信号の等化結果と既知シンボルの符号列を示している。なお、図5の(a)、(b)いずれの図も、受信信号の等化結果の符号列は、先頭が既知シンボル区間であり、後続がデータ区間である。
【0041】
すなわち、図5(a)に示すように、受信信号が同期追従している場合は、トレーニング区間において、既知シンボル(同期ワード)の符号列と同じ符号列が受信信号の等化結果の同期ワード位置に存在する。言い換えると、受信信号が同期追従している場合は、トレーニング区間のトレーニングで伝搬路に適したタップ係数が求められるので、受信信号の等化結果の先頭に存在する同期ワード位置の符号列は、既知シンボルと同じ値の符号列となる。
【0042】
このような同期追従時の場合は、受信信号のトレーニング区間に後続するデータ区間の符号列は、適切なタップ係数に基づいて正常な符号列となっている。このように、データ区間において正常な符号列となっているときは、等化装置は収束して動作しているので、同期外れや回線断などは発生していないと判断できる。
【0043】
一方、図5(b)に示すように、受信信号に同期外れが発生した場合は、トレーニング区間において、受信信号の等化結果の先頭の符号列は既知シンボル(同期ワード)の符号列と一致しない。言い換えると、受信信号に同期外れが発生した場合は、受信信号の等化結果はトレーニング区間より時間的にずれた時点において既知シンボルの同期ワード位置が存在するために、トレーニング区間における受信信号の等化結果の先頭の符号列は既知シンボル(同期ワード)の符号列と一致しなくなる。そのため、トレーニング処理では不適切なタップ係数が選択されることとなる。
【0044】
すなわち、受信信号に同期外れまたは回線断が発生した場合は、受信信号の等化結果は、トレーニング完了後のデータ区間において既知シンボルと等化結果との間に等化誤差が生じる。したがって、トレーニング完了後において、このような等化誤差が所定の閾値以上であるときは、等化装置100が発散したと判定し、同期外れまたは回線断を無線通信装置の制御部または同期部へ通知する。
【0045】
等化結果の第2の判定方法では、既知シンボルと等化信号との誤差信号に基づいて、トレーニング完了後の等化誤差が所定の閾値以上であるか否かによって等化装置100の発散の有無(すなわち、同期外れまたは回線断)を判定しているので、等化装置100の発散判定の性能が一段と向上する。
【0046】
なお、等化結果の第2の判定方法をさらに拡大して、トレーニング完了後の等化誤差が所定の閾値以上であるか否かの判定に加えて、前述した等化結果の第1の判定方法による等化結果の硬判定値がN回以上連続して同じパターンであるか否かの判定を併用し、等化装置100の発散の有無を判定して同期外れまたは回線断の有無を判定することもできる。
【0047】
2.6.等化結果の第3の判定方法
図6は、本発明の一実施形態に係る等化装置において、等化結果の第3の判定方法を説明するための1フレームの符号列とRSSIを示す図であり、(a)は通常時の等化結果、(b)は発散時の等化結果を示している。なお、図6における横方向は時間の流れを示している。
【0048】
図6(a)に示すように、通常時の等化結果においては、先頭のトレーニング区間に続くデータ区間の符号列(硬判定値)において、N回以上に亘って同じ値(符号)が連続して発生していても、RSSIのレベルが所定の閾値以上であるため、等化装置100は回線断による発散ではないと判定する。すなわち、通信回線には回線断は発生していないと判定する。
【0049】
一方、図6(b)に示すように、発散時の等化結果においては、先頭のトレーニング区間に続くデータ区間の符号列(硬判定値)において、N回以上に亘って同じ値(符号)が連続して発生していると共に、RSSIのレベルが所定の閾値以下であるために、等化装置100が発散して回線断が発生していると判定する。すなわち、通信回線には回線断が発生していると判定する。
【0050】
言い換えると、等化装置100における等化結果の硬判定値がN回数以上連続して同じパターン(符号)であり、かつ、RSSIが所定の閾値以下であるときは、等化装置100が回線断で発散したと判定して、回線断の情報を無線通信装置の制御部または同期部へ通知する。これによって、受信ビットパターンが連続している場合の誤判定を防止することができるので、等化装置100の発散判定の性能が一段と向上する。また、RSSIが長時間に亘って低下した場合は回線断と判定することができる。
【0051】
なお、等化結果の第3の判定方法では、等化結果の硬判定値がN回数以上連続して同じパターン(符号)であり、かつ、RSSIが所定の閾値以下であるときは、等化装置100が回線断で発散したと判定したが、RSSIを併用した判定方法は、前述した等化結果の第2の判定方法にも適用することができる。すなわち、トレーニング完了後の等化誤差が所定の閾値以上であり、かつ、RSSIが所定の閾値以下であるときは、等化装置100が発散したと判定して回線断が発生したと判定することもできる。
【0052】
ここで、等化結果の硬判定値がN回数以上連続して同じパターン(符号)であり、かつ、RSSIが所定の閾値以下であるときは、等化装置100が発散して回線断が発生したしたと判定する方法は、同期外れ判定結果の情報とRSSIが所定の閾値以下である情報とに基づいて等化装置100が発散して回線断が発生したしたと判定する方法に置き換えることができる(図1に示す回線断判定処理部105の信号シーケンス参照)。後者のような判定方法の場合は処理が簡略化される。
【0053】
同様にして、等化結果の硬判定値がN回数以上連続して同じパターン(符号)であり、かつ、RSSIが所定の閾値以下であるときは、等化装置100が発散して回線断が発生したしたと判定する方法も、同期外れ判定結果の情報とRSSIが所定の閾値以下である情報とに基づいて等化装置100が発散して回線断が発生したしたと判定する方法に置き換えることができる(図1に示す回線断判定処理部105の信号シーケンス参照)。この場合も後者の判定方法の場合は処理が簡略化される。
【0054】
2.7.本実施の形態の効果
以上説明したように、本実施の形態によれば、等化装置の硬判定値がN回数以上連続して同じパターン(符号)であるとき、または、等化装置のトレーニング終了後の等化誤差が所定の閾値以上であるときは同期外れまたは回線断が発生したと判定することができる。また、等化装置の硬判定値がN回数以上連続して同じパターンであり、かつ、RSSIが所定の閾値以下のとき、または、等化装置のトレーニング終了後の等化誤差が所定の閾値以上であり、かつ、RSSIが所定の閾値以下のときは、回線断が発生したと判定することができる。
【0055】
このような等化装置の判定方法によれば、同期外れや回線断の状態を等化装置の後段で検出するのではなく、等化装置の内部で高速に検出することができるので、同期外れ等が発生した場合には、速やかに再同期を行うことが可能となる。その結果、通信品質が高く、かつ通信の信頼性が高い無線通信装置を実現することができる。
【0056】
なお、本実施の形態では、トレーニングに用いる系列を既知シンボルとして説明したが、既知シンボルに限らず、同期ワードやパイロットなどであってもよい。また、本実施の形態では、等化装置の発散による回線断の有無の判定にRSSIを用いたが、RSSIに限らず、受信信号の信号レベルを示す他の指標を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明にかかる等化装置及び等化方法は、例えば、無線通信装置等に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
100 等化装置
101 等化処理部
102 RSSI算出部
103 連続検出処理部
104 同期外れ判定処理部
105 回線断判定処理部
201 FFタップ部
202 FBタップ部
203 データ判定部
204 誤差推定部
205 タップ係数更新部
206 切替えスイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーニング完了時における既知シンボルと受信信号の等化結果との等化誤差を出力すると共に、前記等化結果から得られる硬判定値を出力する等化処理手段と、
前記等化処理手段から出力された前記等化誤差及び前記硬判定値の少なくとも1つの情報に基づいて、前記受信信号の同期外れの有無を示す同期外れ判定結果を出力する同期外れ判定処理手段と
を具備する等化装置。
【請求項2】
前記等化処理手段から出力された前記硬判定値が同じパターンで繰り返される連続回数をカウントし、カウントされた連続回数を硬判定値連続回数として出力する連続検出処理手段を具備し、
前記同期外れ判定処理手段は、前記硬判定値の情報として前記連続検出処理手段から出力された前記硬判定値連続回数を取得し、該硬判定値連続回数に基づいて前記受信信号の同期外れの有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の等化装置。
【請求項3】
前記同期外れ判定処理手段は、前記硬判定値連続回数がN回以上(但し、Nは2以上の整数)であるときには、前記受信信号は同期外れであると判定することを特徴とする請求項2に記載の等化装置。
【請求項4】
前記同期外れ判定処理手段は、前記等化処理手段から出力された前記等化誤差が所定の閾値以上であるときは、前記受信信号は同期外れであると判定することを特徴とする請求項1に記載の等化装置。
【請求項5】
前記同期外れ判定処理手段は、通信回線が存在していて受信側で同期外れを発生させたとき、または、前記通信回線が回線断されていて受信側で同期外れを発生させたとき、の少なくとも一方が発生したときに同期外れと判定することを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の等化装置。
【請求項6】
前記受信信号のRSSIを算出し、算出されたRSSIを出力するRSSI算出手段と、
前記同期外れ判定処理手段から出力された前記同期外れ判定結果と、前記RSSI算出手段から出力されたRSSIとに基づいて、前記通信回線の回線断の有無を示す回線断判定結果を出力する回線断判定処理手段と、
を具備することを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の等化装置。
【請求項7】
前記回線断判定処理手段は、前記同期外れ判定処理手段から出力された前記同期外れ判定結果が同期外れであり、かつ前記RSSI算出手段から出力されたRSSIが所定の閾値以下であるときは、前記通信回線は回線断であると判定することを特徴とする請求項6に記載の等化装置。
【請求項8】
前記回線断判定処理手段は、前記硬判定値連続回数がN回以上(但し、Nは2以上の整数)であるとき、トレーニングが完了したときの前記等化誤差が所定の閾値以下であるとき、の少なくとも一方の情報に基づいて、前記同期外れ判定結果は同期外れであると判定することを特徴とする請求項6に記載の等化装置。
【請求項9】
トレーニング完了時における既知シンボルと受信信号の等化結果との等化誤差を出力すると共に、前記等化結果から得られる硬判定値を出力する等化処理工程と、
前記等化処理工程において出力された前記硬判定値が同じパターンで繰り返される連続回数をカウントし、カウントされた連続回数を硬判定値連続回数として出力する連続検出処理工程と、
前記等化処理手工程において出力された前記等化誤差、及び、前記連続検出処理工程において出力された前記硬判定値連続回数、の少なくとも1つの情報に基づいて、前記受信信号の同期外れの有無を示す同期外れ判定結果を出力する同期外れ判定処理工程と
を含む等化方法。
【請求項10】
前記同期外れ判定処理工程においては、前記硬判定値連続回数がN回以上(但し、Nは2以上の整数)であるときには、前記受信信号は同期外れであると判定する同期外れ判定結果を出力することを特徴とする請求項9に記載の等化方法。
【請求項11】
前記同期外れ判定処理工程においては、前記等化処理工程において出力された前記等化誤差が所定の閾値以上であるときは、前記受信信号は同期外れであると判定する同期外れ判定結果を出力することを特徴とする請求項9に記載の等化方法。
【請求項12】
前記受信信号のRSSIを算出し、算出されたRSSIを出力するRSSI算出工程と、
前記同期外れ判定処理工程において出力された前記同期外れ判定結果と、前記RSSI算出手段から出力されたRSSIとに基づいて、前記通信回線の回線断の有無を示す回線断判定結果を出力する回線断判定処理工程と、
を含むことを特徴とする請求項9から請求項11の何れかに記載の等化方法。
【請求項13】
前記回線断判定処理工程においては、前記同期外れ判定処理工程において出力された前記同期外れ判定結果が同期外れであり、かつ前記RSSI算出工程において出力されたRSSIが所定の閾値以下であるときは、前記通信回線は回線断であると判定する回線断判定結果を出力することを特徴とする請求項12に記載の等化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−244257(P2012−244257A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109902(P2011−109902)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【特許番号】特許第4850979号(P4850979)
【特許公報発行日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】