説明

等速自在継手の内輪およびその加工方法

【解決手段】球面状の外周面24を有し、中心軸線と平行なボール溝26が、円周方向に等間隔に形成してある内輪20の前記外周面24を切削するにあたり、内輪20を中心軸線と直交し揺動中心を通る直線Xのまわりに回転させ、外周面24に切削工具42を当てて切削する。このようにして切削加工した等速自在継手内輪20は、外周面24に中心軸線と実質的に平行な切削目(条痕)がある。
【効果】加工時の断続回数が減少するため切削工具寿命が向上する。切削工具の空転部分は早送りすることにより無駄な時間を省いて効率的な加工ができる。切削目(条痕)が内輪の中心軸線と実質的に平行となるため、内輪の揺動方向の面粗度がよくなり、耐久性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は等速自在継手の内輪およびその加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ボールを使用したボールタイプの等速自在継手が記載されている。この等速自在継手は、図4に示すように、外側継手部材としての外輪10と、内側継手部材としての内輪20と、外輪と内輪との間に介在させたころがり部材としての複数のボール30と、すべてのボール30を同一平面に保持するためのケージ32を有している。
【0003】
内輪20は球面状の外周面24を有し、軸心部に形成したスプライン(またはセレーション、以下同じ)孔22でシャフト(従動軸または原動軸)40とトルク伝達可能に接続するようになっている。内輪20の外周面24に、円周方向に等間隔に、中心軸線と平行なボール溝26が形成してある。図5に示すように、外周面24と、ボール溝26の側壁との稜線部分を面取りしてチャンファ25が形成してある。
【0004】
特許文献1には、内輪の外周面を焼入れ後の切削面とすることが記載されている。従来、熱処理後の研削加工により外周面を仕上げるようにしていたところ、それに代えて焼入れ後切削により仕上げるというもので、加工時間が短縮できるほか、熱処理歪みがあっても切削加工により除去できるため完成した内輪の外周面の精度が確保でき、例えば研削加工と同等の寸法精度を得ることも可能である。しかも、研削ではなく切削であるため、環境上好ましくないクーラントを使用しないドライカットとすることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−188653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、内輪20の外周面24を切削加工する場合、図6に示すように、内輪20を中心軸線のまわりに回転させながら、矢印aで示す内輪20の揺動方向に切削工具42を送るようにしている。また、外周面24とボール溝26の側壁との稜線部分に形成したチャンファ25(図5(C))は、外周面24とは別工程で、単独の設備で加工している。
【0007】
上記従来の技術では、内輪20の横断面すなわち中心軸線に垂直な断面で見ると、外周面24はボール溝26によって分断されているため、断続切削となり、切削工具42は断続的に衝撃を受ける。たとえばボール溝26の数が6の場合、1回転する間に6回、衝撃を受けることになる。その衝撃によって切削工具42が損傷を受け、工具寿命の要因となる。
【0008】
また、内輪20の製品機能上、揺動方向の面粗度の方がより重要であるが、従来の加工方法では送り速度や工具摩耗の影響を強く受けるため、それと直角方向の面粗度よりも通常悪い。さらに、内輪20の外周面24の切削加工とチャンファ25の加工を同一工程で行なうことはできない。
【0009】
この発明は、述べたような従来の技術の問題点を解消することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、内輪の中心軸線と直交する回転軸のまわりに回転させつつ内輪の外周面を切削することによって課題を解決したものである。すなわち、この発明の等速自在継手内輪は、球面状の外周面を有し、中心軸線と平行なボール溝が、円周方向に等間隔に形成してある等速自在継手の内輪であって、前記外周面に中心軸線と実質的に平行な切削目があることを特徴とするものである(請求項1)。
【0011】
外周面とボール溝との稜線部分を面取りしたものにも適用することができる(請求項2)。
【0012】
さらに、外周面に中心軸線と平行な油溝を形成したものにも適用することができる(請求項3)。外周面に油溝を加工することにより、当該内輪を使用した等速自在継手の潤滑性能が向上する。
【0013】
上述の内輪を使用する等速自在継手は、外側継手部材としての外輪と、内側継手部材としての内輪と、外輪と内輪との間に介在するころがり部材としてのボールと、すべてのボールを同一平面に保持するケージとで構成される(請求項4)。外輪は球面状の内周面を有し、中心軸線と平行なボール溝が、円周方向に等間隔に形成してある。内輪は球面状の外周面を有し、中心軸線と平行なボール溝が、円周方向に等間隔に形成してある。ボールは、対をなす外輪のボール溝と内輪のボール溝との間に1個ずつ組み込んである。ケージは、内輪の外周面と外輪の内周面との間に介在してボールを収容するポケットが円周方向に所定間隔で形成してある。
【0014】
この発明の等速自在継手内輪の加工方法は、球面状の外周面を有し、中心軸線と平行なボール溝が、円周方向に等間隔に形成してある内輪の前記外周面を切削するにあたり、前記内輪を中心軸線と直交し揺動中心を通る直線のまわりに回転させ、前記外周面に切削工具を当てて切削することを特徴とするものである(請求項5)。
【0015】
内輪の中心軸線に対して垂直な平面内で、内輪の半径方向とそれに直交する方向に移動可能に切削工具を保持するようにしてもよい(請求項6)。
【0016】
あるいは、製品における内輪外周面の輪郭と同一の断面形状を有する切削工具を使用してもよい(請求項7)。この場合、切削工具は1軸方向すなわち内輪の半径方向に移動可能に保持すればよい。
【0017】
外周面とボール溝との稜線部分の面取り(チャンファ)を外周面と同一工程で切削してもよい(請求項8)。また、外周面に形成する中心軸線と平行な油溝を外周面と同一工程で切削してもよい(請求項9)。面取りおよび/または油溝を外周面と同一工程で加工することにより、設備費を削減できるほか、リードタイムを削減して加工時間の短縮、ひいては加工費の低減が可能となる。
【0018】
外周面と面取りおよび/または油溝を同一工程で加工する場合、切削工具の送り経路をプログラム制御するほか、外周面と油溝の輪郭を転写した断面形状をした総型バイトを使用して内輪の半径方向に切り込むようにしてもよい(請求項10)。
【0019】
この発明は、内輪の、熱処理前の荒加工もしくは熱処理後の仕上げ加工または両方に適用することができる。熱処理前の荒加工にのみ適用する場合、熱処理後の仕上げ加工は切削でも研削でもよい。熱処理後の仕上げ加工または両方に適用した場合、仕上げ加工は焼入れ後の、いわゆる焼入れ鋼切削となる。熱処理後の仕上げ加工により熱処理歪みや変形を除去することができ、また、クーラントを使用しないドライカットとすることにより、クーラントを使用する研削に比べて環境に対する負荷が少ないという点で有利である。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、上に述べた従来の技術にまつわる問題点をすべて解消することができる。すなわち、加工時の断続回数が減少するため切削工具寿命が向上する。切削加工時の断続回数はボール溝の数に関係なく2回だけであるため、従来の技術に比べて断続回数が減少する。たとえば、ボール溝の数が6の場合は断続回数は1/3に減少し、ボール溝の数が8の場合は断続回数は1/4に減少する。
【0021】
なお、上記「断続回数」は、内輪1回転あたりの断続回数である。したがって、厳密には、これだけで内輪1個加工した時の断続回数を比較することはできない。内輪1個加工するのに発生する断続の回数は、(内輪1回転あたりの断続回数)×(内輪1個加工するのに必要な回転の数)で表される。そして、内輪1個加工するのに必要な回転の数は円弧長さ(図7参照)に比例する。円弧長さについて説明すると、図7(A)はこの発明の場合であって、内輪の円弧長さをCとすると、C=c1+c2+c3(ボール溝の数が6の場合)で表される。図7(B)は従来の技術の場合であって、内輪の円弧長さを符号Dで示してある。よって、断続回数が減少するのは、たとえばボール溝の数が6の場合は円弧長さCの1/3の長さ、ボール溝の数が8の場合は円弧長さCの1/4が、円弧長さDよりも短いことが前提になる。
【0022】
また、切削工具の空転部分は早送りすることにより無駄な時間を省いて効率的な加工ができる。さらに、切削目(条痕)が内輪の中心軸線と平行となるため、内輪の揺動方向の面粗度がよくなる。その結果、内輪の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施例を示す模式図である。
【図2】別の実施例を示す模式図である。
【図3】(A)はさらに別の実施例を示す模式図、(B)は切削工具の送り経路を示す略図である。
【図4】等速自在継手の縦断面図である。
【図5】(A)は図4における内輪の拡大図、(B)は正面図、(C)は図5(B)の部分拡大図である。
【図6】従来の技術を示す模式図である。
【図7】円弧長さの説明図であって、(A)はこの発明の場合、(B)は従来の技術の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に従ってこの発明の実施の形態を説明する。
まず、図4を参照して等速自在継手の基本構成について述べる。なお、図4に示した等速自在継手はツェッパジョイントと呼ばれる固定式等速自在継手であるが、この発明は球面状の外周面を有する内輪であれば他のタイプの等速自在継手内輪にも適用することができる。図4に示す等速自在継手は、外側継手部材としての外輪10と、内側継手部材としての内輪20と、外輪と内輪との間に介在するころがり部材としての複数のボール30と、すべてのボール30を同一平面に保持するためのケージ32を有している。
【0025】
外輪10は、マウス部12とステム部18とからなり、ステム部18に形成したスプライン(またはセレーション、以下同じ)軸部で、図示しない原動軸または従動軸とトルク伝達可能に接続するようになっている。マウス部12はベル型で、球面状の内周面14を有し、円周方向に等間隔に、軸線と平行なボール溝16が形成してある。
【0026】
内輪20は球面状の外周面24を有し、軸心部に形成したスプライン孔22で、シャフト(従動軸または原動軸)40とトルク伝達可能に接続するようになっている。内輪20の外周面24に、円周方向に等間隔に、軸線と平行なボール溝26が形成してある。図5に示すように、外周面24と、ボール溝26の側壁との稜線部分には面取りをしてチャンファ25が形成してある。
【0027】
外輪10のボール溝16と内輪20のボール溝26は対をなし、各対のボール溝16、26間に1個ずつ、ボール30が組み込んである。ボール30の数、したがってまた外輪10および内輪20のボール溝16、26の数は、任意であって、ここでは6本の場合が例示してあるが、例えば8本とすることもできる。ボール30はケージ32のポケットに収容され、ケージ32によってすべてのボール30は同一平面に保持される。ケージ32は外輪10と内輪20の間に介在させてあり、ケージ32の外周面は外輪10の内周面14と球面接触し、ケージ32の内周面は内輪20の外周面24と球面接触する。
【0028】
縦断面(図4)において、外輪10のボール溝16および内輪20のボール溝26の溝底は円弧状である。そして、外輪10のボール溝16の溝底の曲率中心O1と、内輪20のボール溝26の溝底の曲率中心O2は、継手の折り曲げ中心O0から互いに反対側に、軸方向に等距離fだけオフセットさせてある。継手の折り曲げ中心O0は、外輪10の内周面14および内輪20の外周面24の球面中心と一致する。図4は継手の作動角が0の状態、言い換えれば原動軸と従動軸が一直線をなしている状態であるが、例えば原動軸に対して従動軸を折り曲げるときには、ボール30がころがることによって、外輪10に対して内輪20を円滑に揺動させる。このときの内輪20の揺動中心は継手の折り曲げ中心O0である。
【0029】
次に、内輪20の製造方法について述べる。
内輪20の製造工程では、肌焼鋼その他の素材の準備、鍛造、荒加工、熱処理(焼入れ)、仕上げ加工、および、必要な場合の表面処理層の処理、を順に行う。荒加工および仕上げ加工の対象は外周面24とボール溝26であるが、通常、荒加工は切削、仕上げ加工は研削または切削で行う。切削の具体例を挙げるならば、外周面24については旋削、ボール溝26を仕上げ加工する場合はミーリングである。
【0030】
まず、棒鋼を所定寸法に寸断して円柱状の素材を得る。この素材に、潤滑被膜付与の表面処理を施す。この表面処理は、後の鍛造時にダイス表面での滑りをよくするための処理であり、潤滑被膜としては、ボンデライド処理(ボンデ社)などで用いるリン酸塩被膜等が好ましい。
【0031】
このようにして準備した表面処理済みの素材を、前鍛造工程において、球面状の外周面24aおよびボール溝26aを有する形状の前鍛造素材に、冷間で鍛造成形する。この鍛造は、ダイス内に素材を入れ、上下一対のポンチにより、素材を両端から圧縮することにより行う。この鍛造工程で得られた前鍛造素材は、スプライン孔22の下穴が形成されておらず、次の孔あけ工程で下穴を抜く。この孔あけは、プレスによる打ち抜き等で行う。
【0032】
孔あけの完了した前鍛造素材を、次のサイジング工程でサイジングすなわち寸法矯正する。このサイジングは、前鍛造素材をサイジングダイス内にポンチで押し込むことにより行い、ボール溝26を仕上がり形状に矯正する。このサイジングでは、主に、ボール溝26のピッチ円直径PCDが正確に得られるように矯正する。このサイジング工程は、マルチサイジングとしてもよい。すなわち、寸法調整状態の異なる複数種類のサイジングダイスを用い、寸法範囲の異なる複数種の鍛完品を得るようにしてもよい。
【0033】
この後、旋削工程で外周面24および端面の旋削を行い、焼入れ等の熱処理を行って内輪20の完成品とする。例えば、肌焼鋼等からなる内輪20の外周面24に浸炭焼入れにより表面硬化層を設ける。
下穴は、例えば上記の旋削工程の前または後にスプライン加工を施してスプライン孔22となす。内輪20の外周面24aは、上記の熱処理の後に切削(焼入れ後切削)を行って外周面24に仕上げる。
【0034】
次に、内輪20の外周面24の仕上げ加工について述べる。すでに述べたとおり、この仕上げ加工は、内輪20の、熱処理前の荒加工および熱処理後の仕上げ加工のどちらにも適用することができる。たとえば、荒加工または仕上げ加工にのみ適用してもよいし、両方に適用してもよい。
【0035】
図1に示すように、使用する加工設備は、ワーク(内輪20)の中心軸線を回転軸としたインデックス機構をもっており、図示するようにボール溝26の数が6の場合は60度間隔で、ボール溝26の数が8の場合は45度間隔で、加工位置を割り出すことができる。矢印bはこのインデックス機能を表している。図1はボール溝26の数が6の場合の例であるから、隣り合うボール溝26間の1つの外周面24を加工したら、矢印bで示すようにワーク(内輪20)を60°回転させて、次の外周面24を加工する。これを外周面24の数だけ繰り返すと、1つのワーク(内輪20)について、外周面24の加工が完了する。
【0036】
切削加工中にワーク(内輪20)を回転させるときの回転軸Xは、ワーク(内輪20)の中心軸線と直交し揺動中心を通る直線である。図1では、内輪20の中心軸線は一点鎖線の交点で図1の紙面に垂直に伸びており、回転軸は中心軸線と直交し図1の左右方向に伸びている。対比のために付言するならば、従来の技術を示す図6では、内輪20の中心軸線と、外周面24を加工するときに内輪20を回転させる回転軸とが一致している。
【0037】
図1に示す実施例は、第1軸と第2軸という直交する2方向の工具移動軸を持った設備で、一般の旋削工具42を用いて加工する場合の例である。第1軸と第2軸は、図1(内輪20の中心軸線に対して垂直な平面)に即して言うならば、内輪20の半径方向とそれに直交する方向である。切削工具42を第1軸方向に移動させることにより切込みを変更することができる。切削工具42を第2軸方向に移動させることにより送りを与えることができる。回転軸Xを中心としてワーク(内輪20)を一方向に回転させながら、切削工具42に適当な切込みを与えて矢印aで示すように送りをかけることにより、内輪20の外周面24を切削加工する。
【0038】
この場合、切削工具42は、ワーク(内輪20)が1回転する間に、直径方向に対向した2つの外周面24を切削加工することになるが、1つの外周面24からもう一つの外周面24に移動する間と、さらに最初の外周面24に移動する間との計2回、空切削をする。この空切削の回数はボール溝16の数に関係なく常に2回である。したがって、ボール溝16の数と等しい回数だけ空切削を行なっていた従来の技術に比べて切削工具42に与える衝撃の回数が減少することで工具損傷が軽減されて寿命が延びる。
【0039】
ここでも、上記の空切削の回数は、内輪1回転あたりの回数であって、厳密には、これだけで内輪1個加工した時の空切削の回数を比較することはできない。図7を参照して上で述べたように、内輪1個加工するのに発生する断続の回数は、(内輪1回転あたりの断続回数)×(内輪1個加工するのに必要な回転の数)で表される。そして、内輪1個加工するのに必要な回転の数は円弧長さ(図7参照)に比例する。
【0040】
切削工具42の送りが、内輪20の中心軸線と実質的に平行となるため、外周面24には中心軸線と実質的に平行な切削目(条痕)が形成される。これにより、内輪20の揺動方向の面粗度がよくなり、内輪20の耐久性が向上する。
【0041】
図2に示す実施例は、ワーク(内輪20)の半径方向の1軸のみの工具移動軸をもった設備で、切削工具44を用いて加工するようにした例である。この場合、ワーク(内輪20)を回転軸Xのまわりに回転させながら、切削工具44に適当な切込みを与えることによって外周面24を切削加工する。このような切削工具44の動きは研削加工におけるプランジカットに類似している。切削工具44は、仕上げるべき外周面24と同じ断面形状をしたいわゆる総型工具、たとえば総型バイトである。
【0042】
図3に示すように、外周面24の加工と同一工程でチャンファ25や油溝28の加工をすることも可能である。チャンファ25は外周面24とボール溝26の側壁との稜線部分に形成した面取りである。油溝28は内輪20の外周面に形成した凹部で、内輪20の中心軸線と平行に、内輪20の全長にわたって延びている。油溝28は潤滑剤を保持することができるため、内輪20の外周面とケージ32の内周面との間に潤滑油を供給して良好な潤滑状態を維持するうえで役立つ。
【0043】
図3(A)は、バイトのような切削工具42の送り経路(図3(B))を制御するようにした例であるが、これに代えて上述の総型工具44を使用してもよい。この場合、総型工具は、図3(A)に示すチャンファ25と油溝28部分を含む外周面24の輪郭を転写した断面形状となる。
【0044】
完成した内輪20は、ピッチ円直径PCD寸法のランク別に選別し、その選別された内輪20を、マッチング工程において、対応するピッチ円直径PCDのランクの外輪10と組み合わせる。選別工程におけるピッチ円直径PCDの測定は、例えば、測定器に設けた一対のマスタボールを、直径方向に対向した2本のボール溝26内に押し当てることによって行う。マッチングにより組み合わされた外輪10と内輪20の組は、次の組立工程(図示せず)でボール30およびケージ32と組み合わせ、図4に示す等速自在継手に組み立てる。
【0045】
図面に例示したところに従ってこの発明の実施の形態を説明したが、この発明はその本旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えて実施をすることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 外輪
12 マウス部
14 内周面
16 ボール溝
18 ステム部
20 内輪
22 スプライン孔
24 外周面
25 チャンファ
26 ボール溝
28 油溝
30 ボール
32 ケージ
34 ポケット
36 外周面
38 内周面
40 シャフト
42 切削工具
44 切削工具(総型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球面状の外周面を有し、中心軸線と平行なボール溝が、円周方向に等間隔に形成してある等速自在継手の内輪であって、前記外周面に中心軸線と平行な切削目がある等速自在継手内輪。
【請求項2】
外周面とボール溝との稜線部分を面取りした請求項1の等速自在継手内輪。
【請求項3】
外周面に中心軸線と平行な油溝を形成した請求項1または2の等速自在継手内輪。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項の内輪と、
球面状の内周面を有し、中心軸線と平行なボール溝が、円周方向に等間隔に形成してある外輪と、
対をなす内輪のボール溝と外輪のボール溝との間に組み込んだボールと、
内輪の外周面と外輪の内周面との間に介在して前記ボールを収容するポケットを円周方向に所定間隔で形成したケージと
を有する等速自在継手。
【請求項5】
球面状の外周面を有し、中心軸線と平行なボール溝が、円周方向に等間隔に形成してある内輪の前記外周面を切削するにあたり、前記内輪を中心軸線と直交し揺動中心を通る直線のまわりに回転させ、前記外周面に切削工具を当てて切削する等速自在継手内輪の加工方法。
【請求項6】
内輪の中心軸線に対して垂直な平面内で、内輪の半径方向とそれに直交する方向に移動可能に切削工具を保持する請求項5の加工方法。
【請求項7】
製品における内輪外周面の輪郭と同一の断面形状を有する切削工具を使用する請求項5の加工方法。
【請求項8】
外周面とボール溝との稜線部分の面取りを外周面と同一工程で切削する請求項5、6または7の加工方法。
【請求項9】
外周面に形成する中心軸線と平行な油溝を外周面と同一工程で切削する請求項5から8のいずれか1項の加工方法。
【請求項10】
外周面と油溝の輪郭を転写した断面形状をした総型バイトを使用する請求項9の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−270857(P2010−270857A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124282(P2009−124282)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】