説明

筋肉の痙攣及び筋肉痛を予防するためのリボースの利用

【課題】運動誘導筋肉痙攣及び痛みの抑制又は予防。
【解決手段】運動の前及び直後の双方で摂取するリボースは運動誘導筋肉痙攣及び痛みを更に抑制又は予防する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筋肉痙攣及び筋肉痛の予防のための方法及び組成物に関する。本発明の方法及び組成物は経口投与のために特に適し、そして運動誘導筋肉痙攣及び筋肉痛を予防又は抑制するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
激しく運動する者の多数は運動中及び後に筋肉痙攣及び筋肉痛を体感し、それは不快であり、苦痛であり、また無活動期間を強いることがある。このような苦痛な徴候を引き起こすのに十分な度合いの運動は人によって異なりうる。プロフェッショナルのアスリート又はフィジカルフィットネスに専念する者は筋肉の痙攣や痛みが誘導されることなく毎日極めてハードに運動することができうる。ほとんどの者はそのようなレベルのコンディショニングに達しない。平均的な者にとって、運動は週に数回に制約され、そしてこのような者は往々にして「ウィークエンドウォリアー(週末の戦士)」と称されている。運動に費やすのに限られた時間は、筋肉痙攣・痛を起こすことなく激しく運動することを可能にするコンディショニングレベルに達することの妨げとなる。低い肺機能をもつ者はこのような徴候をわずかな運動で体感しうる。
【0003】
筋肉の痙攣の原因は不明である。運動は多少の低酸素症を引き起こすものと考えられている。提唱されているメカニズムにはアデノシン三リン酸の分解中間体由来のフリーラジカルの生成、又は解糖、電気分解不均衡及び乳酸の生成がある。筋肉痛の原因もわかっていない。ミオグロビン及び電解質の喪失の原因となる筋肉に対する障害も一因として挙げられ、治癒の炎症反応に由来する痛みをもたらす。このようなメカニズムとは関係なく、筋肉の痙攣及び痛みを予防又は緩和する簡単且つ有効な手段についてのニーズが残っている。
【0004】
題名が「COMPOSITION FOR INCREASING ENERGY IN VIVO 」であり、1999年12月23日に公開された同時係属出願WO99/65476はリボースが心臓血管病又は末梢血管病を有する健丈人の活力(エネルギー)を高めるのに有用であることを開示する。
【発明の概要】
【0005】
驚くべきことに、運動の前又は後での有効量のリボースの単独で、又は電解質及びその他の炭水化物との組合せでの摂取は、運動による筋肉の痙攣及び痛みを抑制又は軽減できることが観察された。従って、リボース及びそれを含む組成物は運動をしたがっており、また筋肉痙攣及び筋肉痛のおそれについて考えているが、WO99/65476に開示されているやり方でその活力レベルを高めることまで必要と考えてはいない健丈人にとって驚くべきほどに価値があることがわかった。
【0006】
従って、一の観点において、本発明は哺乳動物(ヒトを含む)の骨格筋の運動誘導筋肉痙攣及び筋肉痛を予防するための方法を提供し、この方法は有効量のリボースをその哺乳動物に対し、運動中にその哺乳動物の骨格筋の中にリボースが存在するよう、運動を開始する十分な時間前に投与することを含んで成る。
【0007】
更なる観点において、本発明は運動誘導筋肉痙攣又は痛みの発症を抑制するために運動開始前に哺乳動物(ヒトを含む)に投与するためのダイエタリー組成物の製造におけるリボースの利用を提供する。
【0008】
発明の詳細な説明
筋収縮の際、酸素要求量が酸素有効量を超えることがあり、即ち、筋肉が低酸素症となることがある。運動中の低酸素筋肉中では、エネルギー製造はアデノシン三リン酸(ATP)の好気性から嫌気性生産へと移り変わる。グルコースからの嫌気性エネルギー製造、即ち解糖は最終産物として乳酸を提供する。同時に、ATPは分解してイノシン及びヒポキサンチンとなり、その更なる代謝は細胞障害を及ぼしうる非常に反応性な分子であるフリーラジカルの生成につながる。乳酸の存在、フリーラジカルにより引き起こされる障害、又は何らかのその他のメカニズムが筋肉の痙攣及び痛みの主因であるかどうかはわかっていない。
【0009】
驚くべきことに、リボースは運動誘導筋肉痙攣及び筋肉痛を緩和できることもこの度見い出された。理論に拘束されるつもりはないが、運動の際のリボースの存在は運動の直接的な作用、即ち痙攣を緩和し、一方で運動後のリボースの投与による筋肉中へのリボースの補給は後発的な痛みを緩和するものと考えられる。
【0010】
本発明の運動により誘導される筋肉の痙攣及び痛みの予防又は緩和のための、単独で、並びに電解質及びその他の炭水化物との組合せでのリボースを提供する。本発明は更に最高に有益な効果のための用量及びプロトコールを提供する。
【0011】
リボースは単純な糖であり、若干の甘味を有する。痙攣を予防するのに必要な量は約2〜10g、又は茶さじ約1/4〜1杯分の乾燥粉末である。この粉末を摂取するか、シリアルにまぶすか、又は任意の慣用の液体、例えば水、ジュース、茶もしくはコーヒーに混ぜてよい。運動するたいていの者は「代替」溶液、例えばGatorade(登録商標)、Thirst Quencher(登録商標)又はMax(登録商標)を飲むことを好む。このような持続エネルギー製剤は一般に以下のもの一部又は全てから成る:炭水化物、例えばコーンシロップ、スクロース、フルクトース及びマルトデキストリン;タンパク質、例えばカゼイン及びダイズタンパク質;並びに脂質、例えばトウモロコシ、ダイズ、サフラワー及びカノラ油、並びに中鎖トリグリセリド。リボースはこのような食料品に容易に加えることができる。リボースは痙攣及び筋肉痛を予防するのに十分な量で、いわゆる「エネルギーバー」、例えばBalance(登録商標)又はPower Bar(登録商標)に加えてもよい。
【0012】
我々は運動の際のリボースの存在が痙攣を予防するのに有効であることを見い出した。従って、リボースを投与する好適な態様が何であろうと、リボースを十分に前もった時期において投与し、リボースが運動の際に骨格筋へと運ばれるようにすることが重要である。もしリボースを液体、例えば水又はジュースに溶かすなら、リボースが循還系へと導入され、筋肉にまで輸送されるのに15分で足りるであろう。リボースを固体食品と共に投与するなら、吸収は1時間ほどの長さへと遅延されうる。我々は痛みの最良な予防のため、リボースを運動の直後に再度摂取することが有効であることを見い出した。従って、痙攣及び痛みの双方を予防するため、運動の前及び直後の双方にてリボースを摂取することを推奨する。
【0013】
以下の実施例は本発明の好適な態様を説明するために含ませる。各実施例において、D−リボースが好適な態様として開示する。しかしながら、当業者にとって、一定のペントース、例えばキシリトール及びリブロースがin vivoで容易にD−リボースへと変換されることが知られている。従って、「リボース」なる語はD−リボース及びかかるその前駆体を含むことを意図する。以下の実施例の中で開示する方法及び用量は本発明の実施においてよく機能することが本発明者によって見い出された方法及び用量を代表するものであり、従って好適な実施形態を構成するものと考慮されるべきである。しかしながら、開示する態様に様々な変更を本発明の範囲を逸脱することなく施すことができることを当業者は理解するであろう。
【実施例】
【0014】
実施例1.長距離ランナー
経験豊かな男性マラソンランナー、年齢43才は15回マラソンを完了している。彼のトレーニングメニューは週当り4〜5回、8〜10マイル走ることから成る。トレーニング走行の際、並びに特にマラソンレースの際及び後に、彼は様々な度合いの筋肉痙攣及び筋肉痛を体感している。彼は走った後に疲労を感じている。
【0015】
彼は1日3回、D−リボースを2〜5g、経口摂取した。予想通り、彼は活力の向上を感じ、そして驚くべきことに、彼は筋肉痙攣を受けなかった。彼の次のマラソンでは、「私は疲労のなさ及び痙攣が事実上ないことに喜び、驚いている。私は「壁に当たる」ことを待ち続けていたが、リボースを伴うトレーニングの後でそれが起こることはなかった。事実、私は26.2マイルの走行中ずっと非常に良い活力を感じていた。」。
【0016】
実施例2.運動誘導筋肉痛の緩和
週に1又は2回2マイルのジョギングをする41才の女性は、運動の5〜10時間後に始まり、そして2〜3日間持続する運動誘導筋肉痛を経験している。この痛みは彼女が快適に仕事ができないほどにひどいものであった。
【0017】
彼女は走る15〜20分前に約200mlの水の中の2〜5gのD−リボースを摂取し始めた。彼女の20〜30分の日常の練習及びストレッチングの後、彼女は水に溶かした更に1gのD−リボースを摂取した。1回目のリボースの摂取の直後に彼女は通常の筋肉痛の緩和を感じた。一方で、リボースの摂取の前には、彼女は5時間目にて始まり、24時間目にて頂点に達する痛みを感じ、リボース摂取後は、彼女は24時間目にて軽い剛直だけを感じ、それは彼女が運動する気を失わせるに足りるものではなかった。彼女が1週間にわたりリボースを摂取した後、彼女は活力の向上と疲労の低下を感じた。
【0018】
この対象者はリボースを体操の前後に摂取することを続け、そして運動後に軽い剛直及び痛みだけを感じ、そして活力の向上と疲労の低下を体感し続けた。その結果、彼女は週1〜2回の練習回数を週2〜4回に増やすことができ、規則的な日常の生活の中で活力及びスタミナの向上といった追加の利益を被った。
【0019】
実施例3.気腫患者の筋肉痙攣の緩和
気腫を患う老女患者は彼女の手足において筋肉痙攣及び痛みを感じていた。これらの徴候は軽い運動によってさえも増強された。彼女は毎朝D−リボースを2〜4gの用量で摂取し始めた。彼女は用量をその日の彼女の予測の活動レベルに従って調節し、より活動の多い日にはより多い用量を摂取した。彼女は痙攣の即効且つ完全な緩和を体感した。この緩和は4ヶ月間のリボース摂取の間維持された。
【0020】
実施例4.テニスプレーヤーの筋肉痛の緩和
週末トーナメントにてテニスをする68才の男性を各ゲームの翌日に疲労及び筋肉痛を感じていた。彼は痛み、剛直及び疲労のために2日連続でテニスするのは困難と考え、それが原因で2日目のゲームでは集中力を欠いてしまっていた。このような徴候の結果、彼はラウンド−ロビントーナメントを所望通りに終了することができなかった。週末トーナメントが非常に暑く、多湿な気候で行われる間、彼は1日目のゲームの後にオレンジジュース中の3gのD−リボースを摂取した。翌日、通常の痛み及び疲労を感じるのではなく、彼はピークレベルでテニスをすることができた。
【0021】
開示する組成物及び方法は全て本開示内容のもとで過度な実験を要せずに実施、実行できる。本発明を好適な態様で説明してきたが、当業者は本発明の範囲を逸脱することなく開示の組成物及び方法に様々な変更を施すことができるであろう。詳しくは、化学的及び物理学的に関連する所定の試薬を本明細書に記載の試薬に代えて使用し、似たような結果を達成することができるであろう。このような似たような代用物及び改変は本発明の範囲及び思想に属するものとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の骨格筋の運動誘導筋肉痙攣及び筋肉痛を予防するための方法であって、当該哺乳動物に有効な量のリボースを運動を開始する十分な前に投与し、運動中の哺乳動物の骨格筋の中にリボースを存在させるようにする、方法。
【請求項2】
リボースの量が1〜60gである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
リボースの量が2〜10gである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
リボースを運動開始の少なくとも10分前、しかしながら4時間前以内に投与する、請求項1、2又は3記載の方法。
【請求項5】
運動中に前記哺乳動物の骨格筋中にリボースが存在するよう運動を開始する十分な時間前に第一有効量のリボースを投与し、次いで運動の直後に第二有効量のリボースを投与することを含んで成る、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
リボースの量が1〜60gである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
2回目の投与のリボースの量から1〜10gである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
哺乳動物の運動誘導筋肉痛を予防するための方法であって、運動後の哺乳動物に有効量のリボースを投与することを含んで成る方法。
【請求項10】
前記リボースの量が1〜10gである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
運動誘導筋肉痙攣及び筋肉痛の発症を抑制するために運動前に哺乳動物に投与するためのダイエタリー組成物の製造におけるリボースの利用。
【請求項12】
前記組成物が飲料品又は飲料濃縮物である、請求項11記載の利用。
【請求項13】
前記組成物が固形糖剤である、請求項11記載の利用。
【請求項14】
前記組成物が食品である、請求項11記載の利用。
【請求項15】
前記組成物が単位投与形態をとっている、請求項11〜14のいずれか1項記載の利用。
【請求項16】
前記組成物がサッシェの中に入っており、そのサッシェは開封することでその内容物を食品又は飲料品に添加できるようになっている、請求項15記載の利用。

【公開番号】特開2011−93910(P2011−93910A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270608(P2010−270608)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【分割の表示】特願2001−524411(P2001−524411)の分割
【原出願日】平成12年9月22日(2000.9.22)
【出願人】(500579545)バイオエナジー インコーポレイティド (8)
【Fターム(参考)】