説明

筋肉へのクロストリディウムトキシンの効果を判定するための方法

【課題】筋肉又は筋肉群へのボツリヌストキシンなどのクロストリディウムトキシンの(筋肉麻痺効果などの)薬力学的な効果を判定する非侵襲的な方法を提供する。
【解決手段】実施形態は、(a)筋内注入により顔面筋肉にボツリヌストキシンを投与するステップと、(b)クロストリディウムトキシンが投与された筋肉の近傍の皮膚面の特徴の刻印を形成するステップと、(c)その刻印を調査するステップと、(d)クロストリディウムトキシンによる筋肉の麻痺の開始、ピークの麻痺、及び麻痺期間を判定するステップによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉へのクロストリディウムトキシンの効果を判定するための方法に関する。特に、本発明は、顔の筋肉におけるクロストリディウムトキシンの効果を判定するための皮膚形態学的方法の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
顔の動きは皮膚の下にある筋肉の収縮に帰するのであり、異なる筋肉は顔の異なる部分を動かし得る。例えば、眉の持ち上げは、前頭筋の収縮による。筋電図による方法が、種々の顔筋肉の活動を研究するために利用されてきた。例えば、非特許文献1;非特許文献2,及び非特許文献3などを参照されたい。
【0003】
特に、表面筋電図(sEMG)を含む筋電図は、前頭筋の活動と結果として生じる眉の転置とを調査するのに利用されてきた。例えば、非特許文献4,及び非特許文献5などを参照されたい。
【0004】
更に、皮膚表面領域のシリコンラバーネガティブレプリカを作成することによって皮膚形態を研究することが知られている。モールドは皮膚面の3次元細部を捕捉し、示される皮膚の線の密度、深さ及び長さの分析のコンピュータ化された画像分析は、それらに基づき実施され得る。
【0005】
非特許文献6がある。この方法は、前腕上の微小溝が子供の約33Φmから年配者の約100Φmまで深さにおいて如何に増加し得るかを研究するのに用いられてきた。非特許文献7がある。同じシリコンラバー刻印方法が、眼窩周りのしわ(からすのあしあと)を減らすような、光損傷された皮膚を治療する局所用クリームの効果を調査するのに用いられた。非特許文献8,及び非特許文献9がある。
【0006】
ボツリヌストキシン
無気性の、グラム陽性のバクテリア・クロストリディウム・ボツリヌスは、ボツリヌス中毒として知られる人間や動物における神経系麻痺の疾患を生じる薬効性ポリペプチド神経系トキシン、ボツリヌストキシンを生成する。クロストリディウム・ボツリヌスのスポワは土中に存在し、家庭用に基盤を有する缶詰工場の不適切に殺菌され密閉された食品内で成長し得、それらがボツリヌスの多くの症例の原因となる。ボツリヌスの効果は、通常、クロストリディウム・ボツリヌスの培養若しくはスポワに感染した食料品を食べた後18〜36時間後に発症する。ボツリヌストキシンは、腸の中身を介して減弱せずに通過でき周辺の運動系ニューロンを攻撃し得るようである。ボツリヌストキシン中毒の徴候は、歩行困難、飲み下し困難、発語困難から始まり、呼吸筋麻痺及び死に進み得る。
【0007】
ボツリヌストキシンタイプAは、人間に知られた最も致死的な自然生物病原体である。ボツリヌストキシン(精製された神経トキシン錯体)タイプAの約50ピコグラムは、マウスで50%致死量である。ボツリヌストキシンの1ユニット(U)は、それぞれ18−20グラムの雌のスイスウェブスターマウスに腹膜注入して50%致死量となるように定義される。7つの免疫学的に区別されるボツリヌス神経トキシンにおいて、これらはそれぞれ、タイプ特有の抗体で中和することにより個々が区別されるボツリヌス神経トキシンの抗原型のA、B、C、D、E、F、Gである。ボツリヌストキシンの異なる抗原型は、影響する動物種内で、更に喚起する麻痺の重篤度及び期間内で、変動する。ボツリヌストキシンは、高結合性をもってコリン作用性の運動神経に結合し、神経内に転位し、アセチルコリンのリリースをブロックする。
【0008】
ボツリヌストキシンは、活動過多の骨格筋により特徴づけられる神経筋の障害の処置のための臨床セッティングで利用される。ボツリヌストキシンタイプAは、眼瞼痙攣、斜視、片顔面痙攣、及び頸失調の処置のため、食品医薬品局により認可されている。ボツリヌストキシンタイプBも、頸失調の処置のため、食品医薬品局により認可されている。末梢筋内のボツリヌストキシンタイプAの臨床効果は、注入1週間以内に通常見られる。ボツリヌストキシンタイプAの単体筋内注入からの徴候軽減の通常期間は、平均して約3ヶ月である。
【0009】
全てのボツリヌストキシン抗原型は、神経系筋肉注入にて神経伝達物質アセチルコリンのリリースを抑制するが、それらは、異なる位置で異なる神経分泌プロテインに作用し及び/又はこれらのプロテインに付着することによって、そのことを行う。例えば、ボツリヌストキシンタイプAとEの両方は、25キロダルトンのシナプトソーム関連のプロテインに付着するが、このプロテインの内部では、それらは別のアミノ酸シーケンスをターゲットとする。ボツリヌストキシンタイプB、D、F及びGは、小胞に関連するプロテイン(VAMP、シナプトブレビンとも呼ばれる。)を基にして動作し、個々の抗原型は別の位置でプロテインに付着する。最終的に、ボツリヌストキシンタイプCはシンタキシン及びSNAP−25に付着することが示されている。作用のメカニズムにおけるこれらの差異は、種々のボツリヌストキシン抗原型の相対的な潜在力及び/又は期間に影響する。
【0010】
公知のボツリヌストキシン抗原型の7つ全てに対して、ボツリヌストキシンプロテイン分子の分子量は、約150kDである。興味深いことに、ボツリヌストキシンは、関連する非トキシンプロテインを伴う150kDボツリヌストキシンプロテイン分子を含む錯体としてクロストリディウムバクテリアによってリリースされる。従って、ボツリヌストキシンタイプA錯体は、クロストリディウムバクテリアによって900kD、500kD及び300kDの形態として生成され得る。ボツリヌス独スペーサ要素タイプB及びCは、500kD錯体としてのみ生成される。ボツリヌストキシンタイプDは、300kD及び500kD錯体として生成される。最後に、ボツリヌストキシンタイプE及びFは、概ね300kDの錯体としてのみ生成される。錯体(即ち、約150kDより大きい分子量)は、非トキシン血球凝集素プロテイン、非トキシン及び非毒素非血球凝集素プロテインを含むと考えられる。(ボツリヌストキシン分子と共に、適切な神経系トキシン錯体を含む)これらの2つの非トキシンプロテインは、ボツリヌストキシン分子に対し変性しない安定を与え、更にトキシンが摂取されたときに消化酸に抗する保護を与えるように、作用し得る。更に、(約150kD分子量より大きい)より大きいボツリヌストキシン錯体が、ボツリヌストキシン錯体の筋内注入の位置からボツリヌストキシンが拡散する速度がより遅くなるということも可能である。
【0011】
インヴィトロの研究は、脳幹組織の一次細胞培養からのアセチルコリンとノルエピネフリンの両方のカルシウムイオン誘導リリースを、ボツリヌストキシンが抑制することを示している。更に、ボツリヌストキシンが脊髄神経の一次培養の中のグリシン及びグルタミン酸塩の両方の誘発リリースを抑制し、脳シナプトソーム組織標本ボツリヌストキシンが神経伝達物質のアセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、CGRP及びグルタミン酸塩の各々のリリースを抑制することが、報告されている。
【0012】
ボツリヌストキシンタイプAは、発酵槽内にクロストリディウム・ボツリヌスの培養を生成し成長させ、公知の手順に従って発酵混合物を取り込み精製することによって、得られる。全てのボツリヌストキシン抗原型は、神経刺激となるためにプロテアーゼが付着しなければならない若しくはプロテアーゼによりニックが入らなければならない不活性のシングルチェーンプロテインとして、最初に合成される。ボツリヌストキシン抗原型A及びGを形成するバクテリア種は内生のプロテアーゼを有し、抗原型A及びGは、従って、優勢な活動形態で、バクテリア培養から回復し得る。対照的に、ボツリヌストキシン抗原型C、D及びEは、非蛋白質分解の種により合成され、従って、培養から回復するとき通常は非活性化している。抗原型B及びFは、蛋白質分解の及び非蛋白質分解の両方の種により生成され、従って、活性化の形態でも非活性化の形態でも回復しうる。しかしながら、例えば、ボツリヌストキシンタイプB抗原型を生成する蛋白質分解の種であっても、生成されるトキシンの一部に付着するに過ぎない。非ニックの分子に対するニックの正確な割合は、インキュベーションの長さと培養の温度に依存する。
【0013】
ボツリヌストキシンタイプAは以下のような臨床セッティングで利用されてきたと報告されている。
(1)頸失調症を処置するための筋内注入毎の(複合筋肉の)BOTOX(登録商標)の約75−250ユニット、
(2)グラベラライン(眉溝)を処置するための筋内注入毎のBOTOX(登録商標)の5−10ユニット(鼻根筋の中への筋内注入される5ユニットと、個々の皺眉筋への筋内注入される10ユニット)、
(3)恥骨直腸筋の筋内注入により便秘を処置するためのBOTOX(登録商標)の約30−80ユニット、
(4)上まぶたの側部瞼板端眼輪筋と下まぶたの側部瞼板端眼輪筋を注入することにより眼瞼痙攣を処置するための筋内注入されたBOTOX(登録商標)の筋肉毎の約1−5ユニット。
(5)斜視を処置するため、BOTOX(登録商標)の約1−5ユニットの間で外眼筋は筋内注入され、注入量は注入される筋肉の寸法と所定の筋肉麻痺の範囲を基にして変動する。
(6)上肢の痙攣を処置するための、5つの異なる上肢屈筋の中へのBOTOX(登録商標)の筋内注入による、以下のストローク。
(a)深指屈筋:7.5U〜30U
(b)サブリナス屈筋:7.5U〜30U
(c)尺側手根屈筋:10U〜40U
(d)橈側手根屈筋:15U〜60U
(e)上腕二頭筋:50〜200U
5つの上述の筋肉は、個々の処置期間での筋内注入により患者が上肢屈筋のBOTOX(登録商標)の90U〜360Uまでを受けるように、同じ処置期間で注入される。
【0014】
顔筋肉の中へボツリヌストキシンを注入すると、注入された筋肉を弱めることにより、麻痺した筋肉を覆う皮膚内の運動過剰のしわを減らすことになる、ということも公知である。例えば、非特許文献10を参照されたい。
【0015】
次のようなものを処置するためにボツリヌストキシンを利用することが知られている。くも膜下痛(例えば、特許文献1参照);重合神経節(例えば、特許文献2参照);耳の不調(例えば、特許文献3参照);膵臓の不調(例えば、特許文献4及び特許文献5参照);偏頭痛(例えば、特許文献6参照);平滑筋の不調(例えば、特許文献7参照);前立腺過形成を含む前立腺の不調(例えば、特許文献8、及び、非特許文献11参照);過発達発汗腺を含む自律神経の不調(例えば、特許文献9参照);創傷の治癒(例えば、特許文献10参照);抜け毛の減少(例えば、特許文献11参照);皮膚障害(例えば、特許文献12参照)、及び神経性炎症の不調(例えば、特許文献13参照)。
【0016】
更に、種々の状態を処置するため目標とされるボツリヌストキシン(即ち、非天然の束縛の半分を伴うもの)が利用され得ることが開示されている(例えば、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20参照)。
【0017】
ボツリヌストキシンは、胸筋痙攣を制御するために胸筋内に注入された。非特許文献12を参照されたい。
【0018】
液体安定処方と純粋ボツリヌストキシン処方の両方が、ボツリヌストキシンの局所利用(特許文献21参照)と共に、開示されている(特許文献22及び特許文献23参照)。
【0019】
通常、ボツリヌストキシンのようなクロストリディウムトキシンは、筋内若しくは皮下注入により、骨格筋のようなターゲットの筋肉中に局所的且つ直接に投与される。ボツリヌス中毒や破傷風が生じ得るので、クロストリディウムトキシンを循環系に入れることは望ましくない。更に、体循環の中にクロストリディウムトキシンを入れると、通常、トキシンに対する抗体が生成される。抗体が存在すると、筋肉麻痺のような所望の臨床上の反応の滅失又は減少に繋がる。従って、静脈から若しくは経口から投与される薬に関して実践されるクロストリディウムトキシンのバイオアベイラビリティの判定のための方法論は、局所(即ち、静脈から若しくは皮下から)投与されるクロストリディウムトキシンに関して、適切でもなく適用できるものでもない。
【0020】
不運なことに、生理的流体(即ち、血液、尿)を調査する方法論は、クロストリディウムトキシンが局所的な(即ち、非全身的な)投与及び効果しかないため、ターゲットの筋肉又は筋肉グループへのクロストリディウムトキシンのバイオアベイラビリティを判定するのに殆ど若しくは全く価値がない。従って、経口から又は静脈から投与される薬に関して、古典的な吸収、分配、生体内変化、及び排出などの研究を実施する現在有用な分析技術は、利用できない。
【0021】
ボツリヌストキシンは、顔のしわを取るという美容目的のため環状眼筋、皺眉筋、及び前頭筋のような顔筋肉の中に注入される。更に、かような注入の効力を評価するために、筋電図の及び/又は写真の技術を利用することが知られている。非特許文献13を参照されたい。筋電図は、頸失調症の処置のために胸鎖乳様突起性筋内にボツリヌストキシンを注入する効果を評価するためにも、利用された。非特許文献14を参照されたい。表面筋電図では、表面電極は注入点から所定の距離に、通常、注入点から1乃至3cmに配置される。表面電極は、注入された筋肉の最大の随意収縮の間に合成筋肉活動電位(CMAP)の大きさと領域を計測するのに利用され得る。筋肉麻痺効果が始まるとCMAPが減少し、麻痺効果が徐々に無くなるにつれて増加する、と想定される。
【0022】
不運なことに、筋肉や筋肉群へのボツリヌストキシンなどのクロストリディウムトキシンの効果を判定するためには筋電図方法は不十分なものである。なぜならば、電気生理学の周知の気まぐれのために患者間で、これは同じ患者であっても位置や日が異なれば同様であるが、特定筋肉からの電気活性度が変動するからである。例えば、同じ患者から同時に取ったとき反復の表面筋電図記録は、有意の(即ち、約7%〜約20%の)変動を示し得る。更に、最大の随意収縮の範囲は、表面筋電図が取られるのであるが、患者間で変動し得る。
【0023】
デジタル画像分析などの写真方法は、運動過剰の顔の線を処置するボツリヌストキシンの効果を判定するのに利用されてきた。非特許文献15を参照されたい。筋電図方法と同様に、写真方法も有意の患者内の及び患者間での変動を示す。従って、筋肉又は筋肉群へのボツリヌストキシンなどのクロストリディウムトキシンの効果を判定する写真方法は、細密さと正確さを欠き、取得される画像の質及び価値は、採光状況、使用フィルムのタイプ、フィルム速度及び利用されるフィルム現像プロセスなどごとに、相違するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第6113915号
【特許文献2】米国特許第6139845号
【特許文献3】米国特許第6265379号
【特許文献4】米国特許第6143306号
【特許文献5】第6261572号
【特許文献6】米国特許第5714468号
【特許文献7】米国特許第5437291号
【特許文献8】WO99/03483号
【特許文献9】米国特許第5766606号
【特許文献10】WO00/24419号
【特許文献11】WO00/62746号
【特許文献12】米国特許第5670484号
【特許文献13】米国特許第6063768号
【特許文献14】米国特許第5989545号
【特許文献15】WO96/33273号
【特許文献16】WO99/17806号
【特許文献17】WO98/07864号
【特許文献18】WO00/57897号
【特許文献19】WO01/21213号
【特許文献20】WO00/10598号
【特許文献21】独国特許第19852981号
【特許文献22】WO00/15245号
【特許文献23】WO74703号
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】フリッドルンドその他によるGuidelines for Human Electromyographic Research, Psychophysiology 1986;23(5):567−590
【非特許文献2】ヴィッテムその他によるElectromyographic Investigation of Procerus and Frontalis Muscles, Electromyogr.clin.Neurophysiol.1976,16:227−236
【非特許文献3】タッシナリその他によるPsychometric Study of Surface Electrode Placements for Facial Electromyographic Recording:I.The Brow and Cheek Muscle Regions,Psychophysiology 1989;26(1):1−16
【非特許文献4】クセルエーその他によるAmplitude and bandwidth of the frontalis surface EMG:Effect of electrode parameters,Psychophysiology 1984;21(1):699−707
【非特許文献5】ペンノックジェイディその他によるRelationship between muscle actity of the frontalis and the associated brow displacement,Plast Reconstr Surg Nov 1999;104(6):1789−1797
【非特許文献6】LevequeJ−L., Marcel Dekker, Inc.により編集されたCutaneous Investigation in Health and Disease(1989)の、グローブその他によるObjective method for assessing skin surface topography noninvasively, chapter one, pages 1−32
【非特許文献7】Corcuff P.その他によるSkin relief and aging, J Soc Cosmet Chem 1983; 34: 177−190
【非特許文献8】レイデンジェイジェイその他によるTreatment of photodamaged facial skin with topical tretinoin, J Am AcadDermatol 1989; 21 (3) (part 2): 638−644
【非特許文献9】グローブジーエルその他によるGrove G. L., et al., Skin replica analysisof photodamaged skin after therapy with tretinoin emollient cream, J Am Acad Dermatol 1991; 25 (2) (part 1): 231−237
【非特許文献10】カラザーズその他によるThe treatment of glabellar furrows with botulinum A exotoxin, J Dermatol Surg Oncol 1990 Jan; 16(1) : 83.
【非特許文献11】ドグベイラ・アールその他によるBotulinum toxin type A causes diffuse and highly selective atrophy of rat prostate, Neurourol Urodyn 1998; 17 (4): 363
【非特許文献12】シニア・エムによるBotox and the management of pectoral spasm after subpectoral implant insertion, Plastic and Recon Surg, July 2000,224−225.
【非特許文献13】ゲリッシその他によるLocal injection into mimetic muscles of botulinum toxin A for the treatment of facial lines, Ann Plast Surg 1997; 39 (5): 447−53.
【非特許文献14】ドレスラディその他によるElectromyographic quantification of the paralysing effect of botulinum toxin in thestemocleidomastoid muscle, Eur Neurol 2000; 43: 13−16.
【非特許文献15】ヘックマンエムその他によるQuantification of the efficacy of botulinum toxin type A by digital image analysis, J Am Acad Dermatol 2001; 45: 508−514.
【非特許文献16】Harrison’s Principle’s of Internal Medicine(1997),edited by Anthony Fauci et al.,14thedition,published by Mcgraw Hill
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
このように、筋肉へのボツリヌストキシンの効果を評価する筋電図及び写真方法の両方は、大きな欠点及び欠如があり、これらの方法のいずれも、分析し易い3次元永続記録を即座に提示することができない。
【0027】
従って必要とされるのは、筋肉又は筋肉群へのボツリヌストキシンなどのクロストリディウムトキシンの(筋肉麻痺効果などの)薬力学的な効果を判定する非侵襲的な方法であり、その方法はコンピュータによる分析になじみやすい正確且つ精密な3次元記録を提示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
概要
私の発明はこの必要を満たすものであり、筋肉又は筋肉群へのボツリヌストキシンなどのクロストリディウムトキシンの(筋肉麻痺効果などの)薬力学的な効果を判定する非侵襲的な方法を提示するものである。更に、私の方法は、コンピュータ処理による分析に対応可能な精密且つ正確な3次元記録を提供する。本明細書で開示する方法は、筋肉にクロストリディウムトキシンを投与するステップと、クロストリディウムトキシンが投与された筋肉の近傍の皮膚面の特徴の刻印を形成するステップと、その刻印を調査するステップと、クロストリディウムトキシンによる筋肉の麻痺の開始、ピークの麻痺、及び麻痺期間を判定するステップを含む。
【0029】
投与するステップは、クロストリディウムトキシンの筋内注入若しくは皮下注入により実施される。一方で、クロストリディウムトキシンを含む適切な制御されたリリースインプラントが皮下若しくは筋肉内に挿入されてもよい。筋肉は(前頭筋などの)顔面筋肉であることが好ましい。なぜならば、皮膚下にある筋肉中へのクロストリディウムトキシンの注入に対して、顔面皮膚はより判定しやすい反応を示し得るからである。換言すれば、前頭などの顔の皮膚は、筋内トキシン注入に対して定量化可能な反応をし得る識別が容易なしわ、すじ及び線を含むという形態を有する。従って、筋肉へのクロストリディウムトキシンの麻痺効果と、顔形態の変化との間に、思いがけない関係が存在する。
【0030】
クロストリディウムトキシンは(ボツリヌストキシンタイプA、B、C、D、E、F又はGなどの)ボツリヌストキシンであるのが好ましい。なぜならば、複数のボツリヌストキシンが商業上入手可能であり、臨床上種々の筋肉を麻痺させるのに利用されてきた。本発明の実施形態は、ボツリヌストキシンタイプAの1ユニットから1000ユニット(即ち、BOTOXタイプAボツリヌストキシンの約1−300ユニットの間、又は、DYSPORTタイプボツリヌストキシンの約1−1000ユニットの間)、(即ち、MYOBLOCタイプBボツリヌストキシンなどの)ボツリヌストキシンタイプBの10ユニットから10000ユニット、及び公知の種々の効能に基づく他のボツリヌストキシンの量の利用を含む。
【0031】
刻印を形成するステップが、ポリマー部材を皮膚表面に塗布してモールドを得るステップを含み、該モールドは、皮膚表面と接触する表面に、皮膚表面形態学のネガティブレプリカを有してもよい。調査するステップが、モールドのネガティブレプリカ表面を入射光で照射するステップを含んでもよい。
【0032】
更に、判定するステップが、クロストリディウムトキシンが投与されて周囲の領域内に注入される筋肉の中のクロストリディウムトキシンの拡散の範囲を判定するステップを更に含んでもよい。そして、判定するステップが、照射するステップに続くものとして、照射されたネガティブレプリカ表面の光画像を形成するステップを含んでもよい。更に、判定するステップが、形成するステップに続くものとして、ネガティブレプリカ表面上に存在する皮膚ラインのパラメータを計算するステップを含んでもよい。
【0033】
本発明の詳細な実施形態は、
(a)筋内注入により顔面筋肉にボツリヌストキシンを投与するステップと、
(b)クロストリディウムトキシンが投与された筋肉の近傍の皮膚面の特徴の刻印を形成するステップと、
(c)その刻印を調査するステップと、
(d)クロストリディウムトキシンによる筋肉の麻痺の開始、ピークの麻痺、及び麻痺期間を判定するステップによる、
顔面筋肉への(ボツリヌストキシンタイプAなどの)ボツリヌストキシンの麻痺効果を判定するための方法である。この方法は更に、顔面筋肉の電気活性度の筋電図記録を作成するステップと、皮膚面の写真を撮るステップを含んでもよい。
【0034】
本発明の詳細な実施形態は、
(a)筋内注入により顔面筋肉にボツリヌストキシンを投与するステップと、
(b)顔面筋肉の電気活性度の筋電図記録を作成するステップと、
(c)クロストリディウムトキシンが投与された筋肉の近傍の皮膚面の写真を撮るステップと、
(d)上記皮膚面の特徴の刻印を形成するステップと、
(e)上記刻印を調査するステップと、
(f)クロストリディウムトキシンによる顔面筋肉の麻痺の開始、ピークの麻痺、及び麻痺期間を判定するステップを含む、
顔面筋肉へのボツリヌストキシンの薬力学効果を判定するための方法である。
【0035】
投与の経路と投与されるクロストリディウムトキシンの量は、注入される特定の筋肉と、大きさ、体重、年齢、疾病の重篤度及び治療に対する反応を含む種々の患者に関する変数とによって、大きく変動し得る。投与と投薬の適切な経路を判定する方法は、一般に、治療に当たる外科医によりケースバイケースで判定される。そのような判定は、公知の通常技術の一つに対する日常的作業である(例えば、非特許文献16を参照されたい。)。(即ち、静脈投与に対向するものとして、皮下若しくは筋内注入の利用によって、)体循環内にトキシンが入り込むことを実質的に回避するように、処置が実施される。
【0036】
投与に適切な特定の投薬量は、上述の要素に従って公知の通常技術のひとつによって即座に決定される。投薬量は、処置する若しくは麻痺させる筋肉の大きさや、トキシンの商業的製品にも依存し得る。一般に、注入される(ボツリヌストキシンなどの)クロストリディウムトキシンの量は、処置される筋肉組織の質量と活性度レベルに比例することが知られている。
【0037】
長い持続期間の治療効果を有するクロストリディウムトキシンであればどれを使っても、本発明の範囲に含まれる。例えば、クロストリディウムボツリヌス、クロストリディウムビューティリカム、及びクロストリディウムベラッチなどの毒素を生成するクロストリディウムバクテリアのどの種ででも作成される神経毒が、本発明の方法で利用されてもよく若しくは利用のために調整されてもよい。更に、上述のようにタイプAが最も好ましい抗原型であるが、ボツリヌス抗原型A、B、C、D、E、F及びGの全てが本発明の実施において利用され得る。
【0038】
“局所投与”は、筋肉中へのクロストリディウム菌の直接の注入、皮下若しくは筋内注入を意味する。経口や静脈内の投与の経路のような、体循環の投与の経路は、本発明の範囲から除外される。
【0039】
本発明のボツリヌストキシンで利用される(ボツリヌストキシンなどの)クロストリディウムトキシンは、変更されたクロストリディウムトキシンでもよい。即ち、トキシンにおいて、純正のクロストリディウムトキシンと比較して、そのアミノ酸の少なくとも一つが除去されたり、変更されたり、置換されたりしていてもよい。従って、利用されるクロストリディウムトキシンは、組換え型の一方向に長いクロストリディウム(即ち、ボツリヌス)トキシン、若しくはその誘導体や破片であってもよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明を利用することにより、筋肉又は筋肉群へのボツリヌストキシンなどのクロストリディウムトキシンの(筋肉麻痺効果などの)薬力学的な効果を判定する非侵襲的な方法であって、コンピュータによる分析になじみやすい正確且つ精密な3次元記録を提示する方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の方法にて利用するためのデジタル画像システムの概略図である。
【図2】本発明の方法にて利用するため形成される皮膚面レプリカ(シリコンラバーモールドの皮膚印象面)の断面の仮定的なクローズアップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
説明
私の発明は、皮膚面の形態学的方法を筋肉へのクロストリディウムトキシンの効果を判定するのに利用しうるという発見に基づくものである。開示される方法の利用を介して判定される効果は、筋肉へのクロストリディウムトキシンの効果の開始、ピークの効果、及び麻痺効果の持続期間を含む、麻痺効果(即ち、収縮できないこと)であればよい。患者の筋肉又は筋肉群へのクロストリディウムトキシンの投与の前及び後に、皮膚面領域のシリコンラバーネガティブレプリカを作成することにより、私の皮膚面形態学方法は進行し得る。皮膚面レプリカの画像プロファイル分析が、更に実施される。
【0043】
以前には、皮膚面形態学方法は、加齢による皮膚内の微小しわの発達と、光損傷した皮膚を処置するため局所的に塗布されるクリームの効力を、評価するのに利用された。驚いたことに、皮膚形態学が筋肉へのボツリヌストキシンの効果を評価するのに利用できることが今や見出されている。
【0044】
本発明は、前頭筋などの筋肉への、ボツリヌストキシンなどのクロストリディウムトキシンの筋内注入の筋肉弱化効果のパラメータを評価するために、皮膚形態学を利用する。従って、私の発明の実施において、クロストリディウムトキシンの注入に続いて、注入されたトキシンが前頭筋などの筋肉の最大の随意収縮を用量に依存して抑制するということを判定するために、皮膚形態学が利用される。従って本発明の方法は、クロストリディウムトキシンの投与の効果を判定するために顔面形態学を利用する方法を提示する。
【0045】
一つの実施形態では、私の発明は、ボツリヌストキシンのようなクロストリディウムトキシンの公知のしわ取り効果を利用するのであり、量的顔面形態学分析から判定する際に、額の前頭筋などの筋肉の中へのトキシンの以下の筋内注入または皮下注入の薬力学及び/又は神経生理学特性(プロファイル)の量を計る。私の発明で計量を行うものは、筋麻痺効果の開始、ピークの麻痺効果および麻痺効果の期間を含む。私の発明の目的は、トキシンの筋内注入に関して、クロストリディウムトキシンがしわ取り効果があるのかどうか、若しくはどの程度あるのかどうかを判定することではない。
【0046】
別の実施形態では、私の発明は、(1)皮膚面形態学プロファイル;(2)写真による眉位置評価および/または;(3)潜在する筋肉活性度の調査(sEMG)の利用を介して筋肉活性度へのクロストリディウムトキシンの効果を量的に評価するための方法である。
【0047】
私の発明の実施例では、皮膚面形態学方法は、即ち最大限の筋肉の随意収縮に続いて、前頭筋などの筋肉へのボツリヌストキシンなどのクロストリディウムトキシンの筋肉を弱化する効果を評価する目的のための、皮膚面レプリカを形成するのに利用される。
【0048】
さらに、筋肉に投与されたクロストリディウムトキシンの筋肉を弱化する効果は、眉の移動の量を計ることによって、筋肉が前頭筋である私の発明に従って判定される。前頭筋へのクロストリディウムトキシンの効果を客観的に記述し評価するため、眉の動きを幾何学的に顔面計測すればよいことを、私は発見した。このことは標準化された一連の写真から得られる眉位置を計測することにより得られる。デジタル画像は、内側眼角と眉の下方縁との間の距離を計測するソフトウエアにより分析される。段階分けされ、維持される前頭筋活性度は、眉の段階分けされ維持される高さと相関関係にある。
【0049】
更に、私の発明は、表面筋電図で計測される前頭筋活性度と、それに係る眉の移動との間の関係を利用することを含む。最大限静的反応分析評価による計測が分析され得る。従って患者は、眉を上げ、筋電図信号を検分するため最大限レベルで5秒間随意収縮を維持することを要求される。この方法論に関する私の発明は、クロストリディウムトキシンの効果を判定する目的のために前頭筋活性度の別の計測として眉の移動を分析する公知の表面筋電図方法を利用することである。電気生理学的計測は、筋肉活性度と、ボツリヌストキシンなどのクロストリディウムトキシンの薬力学特性をより直接に評価するのに利用され得る。前頭筋の表面筋電図(sEMG)活性度の分析は実施可能である。
【0050】
このように、私の発明は、(ボツリヌストキシンなどの)クロストリディウムトキシンの(前頭筋などの)筋肉に対する筋肉弱化効果を計測する手段として形態学的、筋電図的及び/又は写真的方法を利用することを含み、従って、クロストリディウムトキシンの薬力学特性のより良い理解を提供する。
【0051】
本発明に係る利用のためのボツリヌストキシンは、純粋ボツリヌストキシン(即ち、150kDタイプAトキシン)でよく、真空圧で容器内に凍結乾燥形態若しくは真空乾燥形態で格納されてもよく、液体形態で格納されてもよい。凍結乾燥に先立って、ボツリヌストキシンは、薬事的に条件適合する賦形剤、安定剤及び/又はアルブミンのようなキャリアと混合してもよい。凍結乾燥若しくは真空乾燥材料は、塩類若しくは水で再構成できる。
【0052】
以下の実験の各々にて、投与されるボツリヌストキシンの特定量は、世話をする外科医の裁量の範囲内で重要視されるべき且つ配慮されるべき種々のファクタに依存し、例の各々では、注入されるボツリヌストキシンの些細な量は体系的に何ら意義ある副作用を伴わないようである。
【0053】

以下の例は、本発明の特定の実施形態を示し、私の発明の例を限定することを意図するものでない。
【0054】
例1
前頭筋へのボツリヌストキシンの効果を判定するための顔面形態学的方法
36歳の女性患者が、前頭筋の最大限随意収縮の間における、左右相称の、対象形の、かつ適度に厳密な額の線を提示する。
【0055】
全てのメーキャップと化粧品が患者の額から除去され、続いてアルコール溶液で奇麗にされる。シリコンレプリカが、以下のように、前頭筋の最大限随意収縮の間に患者の右前頭筋から形成される。前頭筋は、患者に見上げさせ眉を上げさせることにより、確認される。直径2.4cmの粘着性リングが右前頭筋上の注入位置を超えて配置される。新たに用意されたシリコンレプリカ混合物(ラバーシリコン2グラム、アミルアセテート触媒2滴)が、前頭筋の最大限随意収縮の間に額の右側の接着性リングの範囲内に添付される。患者は、シリコンポリマーが固まる時間である4分間最大限随意収縮を維持するように指示される。約5分後、固まったシリコンレプリカが除去される。得られた皮膚面レプリカは、ベースラインのネガティブの刻印(モールド)と、シリコンポリマーが固まる皮膚面の記録とを提供する。
【0056】
(BOTOXなどの)ボツリヌストキシンタイプAの20Uを含む注射器は、前頭筋繊維を超えて額皮膚面に垂直に向けられ、針先端の傾斜面を上方に保持し、前頭筋を静止させ、ボツリヌストキシンの10Uが左右の前頭筋の各々の中に相互に注入される。その位置は眉の上部のアークの上方2.5cmの位置であり、瞳の中心の鉛直線とラインを為す。ボツリヌストキシンの注入に続いて62週間以上患者は追跡調査され、各々の訪問時には更なる右前頭筋シリコンレプリカが形成される。
【0057】
ベースラインのシリコンレプリカは、患者から得られた後続の一連のレプリカと比較される。図1に示されるように、シリコンレプリカ10は、支持体18で保持されるデジタル画像カメラ16の下のテーブル24上の水平面22に配置される。レプリカ10は、水平から角度14(35°が好ましい角度である)を与えられた(そして主要な皮膚ラインに垂直である)光源12からの光により照射され、図2に示すようにレプリカ表面に存在する皮膚内の線、しわ及びすじのネガティブの刻印のため、影を形成する。図2では、光26は、角度14にてネガティブの皮膚面レプリカ28上に入射する。デジタルカメラ16は、例えばQuantiridesソフトウエア(バージョン2.0、Monaderm,Monaco)を搭載したコンピュータ20と手段26によって接続する。Quantiridesソフトウエアは、シリコンレプリカにより示されるような、画像化された皮膚表面形態刻印を生成し分析できる。以下のパラメータはソフトウエアにより計算できる。即ち、平均深さ(μm)、平均長さ(mm)、全体長さ(mm)、しわ数、しわの面領域(深さ×長さ;mm)及びフォームファクター(長さ/深さ)である。これらは以下に示す表1を得て利用できる。表1は、本方法を利用して得られるデータのサンプルを提供する。3日目に得られるデータは、本方法はボツリヌストキシンの投与の後に約3日後に発生する筋肉麻痺効果の始まりを判定せしめることを示す。更に、表1に示されるところであるが、28日目に得られるデータは、本方法はボツリヌストキシンの投与の後に約28日後に発生するピークの筋肉麻痺を判定せしめることを示す。最後に、表1に示されるところであるが、104日目に得られるデータは、本方法はボツリヌストキシンの投与の後に約104日後に生じる筋肉麻痺効果の持続期間を判定せしめることを示す。従って、この例は、この例で示される顔面形態学方法が、前頭筋などの筋肉へのボツリヌストキシンの麻痺効果の開始、ピーク、及び持続期間を判定するのに利用できることを立証するものである。
【0058】
【表1】

【0059】
例2
前頭筋へのボツリヌストキシンの効果を判定するための表面筋電図方法
例1の患者は、2対の表面筋電図電極を左右の前頭筋上に配置し、顔面筋電図プロセッサのモニタは、信号の大きさを患者に見えるようにして最大限の随意収縮の維持を手助けすべく、患者の視野の範囲内に配置される。
【0060】
第1の電極は、瞳孔を通る鉛直線上の眉上部2cmに設置される。第2の電極は、第1の電極に対して45°横方向に配置される。電極間の距離は1cmである。第2の電極は45°で配置され記録の正確さを増すため前頭筋繊維と平行となる。45°の角度は、分度器で計測される。記録電極は、電極間の間隔取りを容易にするために、刈り込みされている。接地電極は、個々の耳の前面の、外耳内に直接配置される。電極の配置は以下の
図(表2)に示される。
【表2】

【0061】
前頭筋活性度の表面筋電図の定量化は、Neuroeducator III Surface EMG Processorを用いて記録される。筋電図プロセッサは、独立の分離されたチャネルを有し、それぞれはノイズに対する信号の割合を高め且つ電気ノイズと50ヘルツの人工インタフェースを最小限にするための差分増幅器を伴う。筋肉(電気)活性度は、筋肉信号の損失無く広域帯のモニタリングを補償する10−1000ヘルツの通過帯域によって、連続アナログ積分器を利用して記録され、毎秒100回プロセッサに読み取られる。記録された表面筋電図信号は全波整流され、調整された表面筋電図記録は、画面状に表示されグラフ形態及び数値形態の両方で格納される。
【0062】
同じ表面筋電図プロセッサと、使い捨て自動接着性の予めゲル化されたAg−AgCl表面電極(直径1cmの記録領域)とが、全ての計測のために利用される。能動及び参照電極は、最大限の随意収縮の間の振幅筋肉活性度を記録するのに利用される同一の使い捨て接着性電極である。個々の患者に対し個々の訪問時に電極の新しいセットが利用され得る。患者の皮膚への確固たる接着を維持し更に50ヘルツノイズを最小化するのに必要であれば、追加のセットが利用される。
【0063】
記録の方法により、表面筋電図プロセッサによる共通モード拒波、即ち記録された筋肉活性度へのクロストークの影響を最小化する技術が、可能になる。電極の貼付に先立ち、50ヘルツの皮膚インピーダンスを最小化するために皮膚はアルコールによって清浄にされる。
【0064】
バイポーラ表面記録方法を利用して前頭筋の最大限の随意収縮の間に表面筋電図が実施される。室温は約20℃に維持されればよい。
【0065】
患者は表面筋電図モニタに向かって直立しリラックスした姿勢で座る。この姿勢により、患者はモニタに表示される自らの最大限の振幅信号を観察し、所望の期間最大限の随意収縮を維持するにつき助力とすることができる。患者は、最大限のターゲット信号に達してそのレベルで10秒間その信号を維持するために、眉を上げることを求められる。表面電極から得られる表面筋電図信号は、コンピュータにより処理される。応答の強度は、前頭筋の最大限の推移収縮の間に選択される。
【0066】
ベースラインの表面筋電図の調査を、前頭筋へのボツリヌストキシンの注入に続く一連の表面筋電図調査結果と比較することによって、表面筋電図方法は実施される。前頭筋に対する最大限の随意収縮の振幅(μV)は、表面筋電図の記録によって得られる。Neuroeducator III Surface EMG Processorは、右と左の前頭筋上に配置された電極から記録される調整された表面筋電図振幅値(μV)を与える。表面筋電図の記録は、トキシンがその麻痺効果を開始すると減少し、トキシンの効果が漸減すると増加する。
【0067】
この写真分析からのデータにより判定され得るパラメータは、筋肉弱化の開始、筋肉弱化の程度、及び筋肉弱化からの回復である。
【0068】
例3
前頭筋へのボツリヌストキシンの効果を判定するための写真方法
例1の患者の写真が取られ、表面筋電図手続きがなされる。それぞれの訪問において、患者の顔上半分のデジタル35mm前面図写真が取られる。
【0069】
患者は、全ての写真に対して同じように姿勢をとる。専用のあご/頭を指示するアセンブリを含む定位装置が、カメラに対する顔の一貫した姿勢取りを保証するのに利用される。更に、スクリーニングの訪問(0日目)で得られた画像は、後に続く訪問の全てにおいて頭の同一の配置を保証するための参照用として、利用される。続いて患者を配置しカメラのセットアップを確認し、患者は、固定された指示体を眺めて(前頭筋の最大限の随意収縮によって)眉を最大限上げるように求められる。顔上部の完全正面図(0°)の3回の露光は、35mm及びデジタルのカメラが撮る。
【0070】
全ての写真に対して、光、構成、露出の比は、一定に保たれる。標準化された倍率と口径も利用され得る。倍率に対して、(35mm相当で)1:5の標準化された再生比率がデジタルと35mmの顔面写真の両方に利用される。35mmの顔面写真の全てに対してカメラの口径はf/16であり、デジタルの顔面写真の全てに対してカメラの口径はf/32に設定される。
【0071】
35mm写真画像は、デジタル写真と同じようにデジタル的にスキャンされ分析される。全ての写真画像は、Mirror DPS(Canfield Scientific,Inc.,Fairfield,NJ)とImage Pro Plus(Media Cybernetics,Silver Spring,MD)との両方を利用して、較正され分析される。ソフトウエアは目の内側眼角を介する水平ラインを引き、このラインと3つの特定のポイントでの眉の下方端との間のミリメートル単位での距離を計算する。患者からの画像は、MirrorDPSを利用してベースラインと同じ倍率に再寸法取りされ調整される。即ち、一人の患者の全ての画像は、同一の寸法とされる。画像は、続いてImage Pro Plusにエクスポートされ、真っ直ぐの青ラインが目の内側眼角と交差するように回転される。
【0072】
最大限随意収縮での間の眉の移動(mm)の縮小は、麻痺効果の開始、ピーク及び持続期間を示すのに利用される。ベースラインの2次元デジタル(2D)の35mm画像の調査を、前頭筋へのボツリヌストキシンの注入に続く一連の2Dの35mm画像調査結果と比較することによって、写真方法は実施される。
【0073】
ベースラインの2次元デジタル(2D)の35mm画像の調査を、前頭筋へのクロストリディウムトキシンの注入に続く一連の2Dの35mm写真画像調査の結果と比較することによって、反応は判定される。
【0074】
最大限の眉の持ち上げの間に計測される上方への移動の減少は、以下の計測を利用して得られる。この写真分析からのデータにより判定されるパラメータは、筋肉弱化の開始、筋肉弱化の段階、及び筋肉弱化からの回復である。
【0075】
所与の好適な方法に従って本発明を詳細に記述したが、本発明の範囲内であれば他の実施形態、バージョン、及び修正は可能である。例えば、様々な皮膚筋肉に注入されてもよく、更にそれらを覆う若しくは近接する皮膚表面領域が、既に開示した方法により調査されてもよい。
【0076】
従って、添付の請求項の精神及び範囲は、上記に示された私の発明の実施形態の説明に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0077】
10・・・シリコンレプリカ、12・・・光源、14・・・角度、16・・・デジタル画像カメラ、18・・・支持体、20・・・コンピュータ、22・・・水平面、24・・・テーブル、28・・・ネガティブの皮膚面レプリカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリマー部材を皮膚表面に塗布し、よって皮膚表面と接触する表面に皮膚表面形態学のネガティブレプリカを有するベースラインのモールドを得ることによって、
クロストリディウムトキシンがこれから投与される筋肉の近傍の皮膚面の、ベースラインの刻印を形成するステップと、
(b)上記刻印を調査するステップであって、ベースラインのモールドのネガティブレプリカ表面のベースラインの刻印を入射光で照射するステップ、並びに、ベースラインの刻印からベースラインの平均深さ、平均長さ、全体長さ、しわの数、面領域、及びフォームファクター皮膚表面特性のデータを取得するステップを含む、ステップと、

(c)筋肉にクロストリディウムトキシンを投与するステップと、
(d)ポリマー部材を皮膚表面に塗布し、よって皮膚表面と接触する表面に皮膚表面形態学のネガティブレプリカを有するモールドを得ることによって、
クロストリディウムトキシンが投与された筋肉の近傍の皮膚面の刻印を形成するステップと、
(e)上記刻印を調査するステップであって、モールドのネガティブレプリカ表面の刻印を入射光で照射するステップ、並びに、刻印から平均深さ、平均長さ、全体長さ、しわの数、面領域、及びフォームファクター皮膚表面特性のデータを取得するステップを含む、ステップと、
(f)上記(e)における上記刻印を調査することを、所定期間、複数回繰り返すステップと、
(g)上記(e)ステップ及び上記(f)ステップにおいて取得されたデータと、上記(b)ステップにおいて取得されたデータに基づいて、クロストリディウムトキシンによる筋肉の麻痺の開始、ピークの麻痺、及び麻痺期間を判定するステップと
を含む、
筋肉へのクロストリディウムトキシンの効果を判定するためにネガティブレプリカを有するモールドを分析する方法。
【請求項2】
投与するステップが、クロストリディウムトキシンの筋内注入により実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クロストリディウムトキシンの筋内注入が顔面筋肉に対するものであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
クロストリディウムトキシンがボツリヌストキシンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ボツリヌストキシンがボツリヌストキシンタイプAであることを特徴とする請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−106026(P2010−106026A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258854(P2009−258854)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【分割の表示】特願2003−576007(P2003−576007)の分割
【原出願日】平成15年3月7日(2003.3.7)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】