説明

筋肉量低下抑制剤

【課題】 食事制限による筋肉量の低下を抑制する筋肉量低下抑制剤を提供する。
【解決手段】 イソマルツロースを有効成分とする筋肉量低下抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉量低下抑制剤に関し、特に、食事制限による筋肉量低下を抑制する筋肉量低下抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食習慣の欧米化や、生活習慣及び肉体活動の変化による運動不足により、肥満やメタボリックシンドロームに該当する人の割合が増えている。肥満やメタボリックシンドロームの状態にあると、過剰に蓄積された内臓脂肪により、糖尿病、高血圧症、高脂血症等の生活習慣病にかかる危険性が高くなると考えられている。生活習慣病はお互いに密接な関係をもっているため、個々の生活習慣病が軽症でも、そのまま放置し続けると合併して動脈硬化を促進し、さらに心筋梗塞や脳梗塞等の命に関わる病気の要因となり得る。したがって、肥満対策やメタボリックシンドローム対策は生活習慣病予防及び医療費削減の観点から極めて重要である。
【0003】
肥満やメタボリックシンドロームの体質改善策としては、食事の摂取量を減らす、食事の栄養バランスを適正化する等の食事療法や、積極的に日常生活での運動の機会を増やすといった運動療法等が知られている。このような体質改善策は、肥満やメタボリックシンドロームに限らず、食生活の乱れや運動不足を痛感している人にとっても有効である。
【0004】
しかしながら、主に、食事制限によって体重を低下させた場合、脂肪と同時に筋肉も分解され、筋肉量が減少してしまう例が多い。筋肉量が低下すると、基礎代謝量が減少して脂肪が燃焼しにくい体質となり、ダイエット効果が下がる、体重が元に戻る、ダイエット前よりも体重が増加する等の悪影響がでる恐れがある。
【0005】
これまでに、ダイエット用の組成物として、体脂肪減少作用及び筋肉増強作用を有する豚肉分解物(特許文献1)、体脂肪の低下作用と筋肉の増大作用を併せ持つそば粉(特許文献2)等が知られている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−069949
【特許文献2】特開2004−166666
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景から、食事制限による筋肉量の低下を防止することができる物質が求められている。したがって、本発明の目的は、食事制限による筋肉量低下を抑制する筋肉量低下抑制剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、イソマルツロースを有効成分とする筋肉量低下抑制剤を提供する。また本発明の筋肉量低下抑制剤は、食事制限による筋肉量低下の抑制用であることを特徴とする。
【0009】
本発明の筋肉量低下抑制剤によれば、食事制限による筋肉量の低下を抑制することができる。特に、メタボリックシンドローム患者、肥満者等の食事制限による体質改善が必要な対象に有効である。
【0010】
さらに、本発明は、イソマルツロースを有効成分とする筋肉量低下抑制剤を対象に適用する工程を備える、食事制限による筋肉量低下を抑制する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明において「イソマルツロース(isomaltulose)」とは、パラチノース(palatinose)とも呼ばれ、グルコース(ブドウ糖)がフルクトース(果糖)にα−1,6−グルコシル結合することによって構成された二糖である。なお、パラチノース及びpalatinoseは三井製糖株式会社の登録商標である。
【0013】
パラチノースは水和物であってもよく、一水和物の場合は、融点は123〜124℃であり、比旋光度は[α]20=+97.0〜99.0°(C=0.04)、フェ−リング溶液還元力はグルコースの52%、水100gに対する溶解度は20℃で38.4gである。また、水溶液の甘味の質は良好であり、甘味度はスクロース(ショ糖)の約40%である。
【0014】
パラチノースは、天然において蜂蜜中に見出される。また、細菌や酵母に由来するα−グルコシルトランスフェラーゼ(イソマルチュロースシンターゼ)がスクロースに作用した場合に生じる転移生成物中にも存在する。
【0015】
工業的には、パラチノースは、プロタミノバクター・ルブラム(Protaminobacter rubrum)やセラチア・プリムチカ(Serratia plymuthica)等の細菌に由来するα−グルコシルトランスフェラーゼをスクロースに作用させることにより製造される。
【0016】
本発明における筋肉量低下抑制剤は、パラチノースを有効成分とする筋肉量低下抑制剤であり、食事制限による筋肉量低下を防止するために用いるものである。対象としては、特に限定されないが、食事制限を行っている対象、中でも、メタボリックシンドローム患者、肥満者、及び、それらの疑いがある対象が挙げられる。メタボリックシンドローム患者とは、例えば、第102回日本内科学会総会(2005年4月開催)で発表された「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」に該当する対象である。肥満者とは、例えば、BMIが25.0以上の対象である。上記基準は日本独自の基準であるが、本発明の筋肉量低下抑制剤は、日本人に限らず適用可能である。
【0017】
「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」とは、第102回日本内科学会総会(2005年4月開催)で発表された日本独自の基準であり、これによると、「内臓脂肪の蓄積」に加えて、他の3項目のうち2項目に該当する場合に「メタボリックシンドローム」と診断される。「内臓脂肪の蓄積」は腹部断面での内臓脂肪面積100cm以上とする。ただし内臓脂肪面積を直接測定することは健康診断や日常臨床の場では容易ではないため、腹囲の測定により代用し、男性85cm以上、女性90cm以上を内臓脂肪型肥満と診断する。他の3項目は以下の通りである。
高血糖:空腹時血糖110mg/dL以上
高血圧:収縮時血圧130mmHg以上か拡張期血圧85mmHg以上のいずれか、又はいずれも満たすもの
血清脂質異常:血清中性脂肪150mg/dL以上か、血清HDLコレステロール値40mg/dL未満のいずれか、又はいずれも満たすもの
【0018】
「筋肉量」とは、骨格筋、平滑筋、体水分量を含む値、すなわち体重から脂肪(体脂肪量)と骨塩量を除く組織量のことを指す。また、体重に占める筋肉量の割合(%)として示すことがある。筋肉量の測定には、公知の方法、例えば、生体電気インピーダンス法(BIA)、二重エネルギーX線吸収法(DEXA)、MRI法での画像診断、これらの測定方法の組み合わせ等を用いることができる。「筋肉量低下抑制」、「筋肉量の低下を抑制する」とは、筋肉量が低下する条件(すなわち本発明においては、食事制限により筋肉量が低下する条件)において、筋肉量を維持すること、又は、対照にて観察された筋肉の減少量よりも少ない減少量を示すことを指す。
【0019】
「食事制限」とは、食事療法(食餌療法)の一種であり、食事の量や種類や頻度、1日の摂取エネルギー量を制限することを指す。また、本発明においては「食事制限」とは、肥満やメタボリックシンドロームに対する食事制限に限らず、それ以外の人が健康や美容等を目的として行うダイエットも含む。肥満やメタボリックシンドロームの要因としては、カロリー摂取過多、炭水化物や脂肪等の摂取過多が挙げられ、それに対してビタミンやミネラルの栄養素は不足し、全体の栄養バランスが悪い状態となる。このような傾向は、肥満やメタボリックシンドロームに限らず、高カロリー食品等が一般化した先進諸国の人々にも見られている。食事制限では、標準となる1日の摂取エネルギー量を目安として1日の摂取エネルギー量を制限し、3大栄養素の炭水化物・タンパク質・脂肪、さらにビタミン・ミネラルを加えた5大栄養素をバランスよく摂取することが好ましい。食事療法に加え、運動療法を組み合わせることが好ましい。また、専門の医師や栄養士の指導の下、食事や生活習慣の改善を行うことが好ましい。
【0020】
標準となる1日の摂取エネルギー量や栄養バランスとしては、「第六次改定 日本人の栄養所要量」(厚生労働省、平成11年発表)の「食事摂取基準」を参照することができる。また、成人の場合の1日の摂取エネルギーの目安は、下記の算出方法により計算することができる。
1日の摂取エネルギー=標準体重(kg)×生活活動強度(kcal)
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
生活活動強度の区分(目安)
・軽い(事務的・管理的な仕事、幼児のいない専業主婦):25〜30kcal
・中程度(製造・加工業、販売業、サービス業等の仕事、幼児のいる主婦):30〜35kcal
・やや重い(農業、漁業、建設作業):35〜40kcal
・重い(農繁期の農作業、林業、プロスポーツ選手):40kcal〜
【0021】
減量(体重減少)を意図する食事制限では、標準となる1日の摂取エネルギー量よりも少ないエネルギー量を摂取するよう、食事の量や種類を制限する。これにより、摂取エネルギー量よりも消費エネルギー量が上回り、過剰に蓄積した脂肪が分解されることを期待するものである。しかしながら、主に食事制限で減量を図ると、不足したエネルギーを補うために、脂肪と同時に筋肉も分解されたり、筋肉が主に分解され、筋肉量が減少してしまう例が多い。筋肉量が低下すると、基礎代謝量が減少して脂肪が燃焼しにくい体質となり、ダイエット効果が下がる、体重が元に戻る、ダイエット前よりも体重が増加する等の悪影響がでる恐れがある。したがって、摂取エネルギー量の制限に加え、筋肉の原料となるタンパク質、アミノ酸等の栄養素を十分摂取したり、適度な運動を取り入れることが好ましい。本発明の筋肉量低下抑制剤は、食事制限による筋肉量の低下を抑制することができるが、摂取エネルギー量の制限に加え、栄養バランスの適正化、運動療法を組み合わせることにより、より一層の効果を期待できる。
【0022】
本発明の筋肉量低下抑制剤は、パラチノースを有効成分として含んでいればよく、パラチノースのみからなるものであっても、パラチノースと他の構成成分との混合物であってもよい。他の構成成分としては薬学的に許容可能な公知の賦形剤やキャリアが挙げられ、これら以外にもスクロース、グルコース、フルクトース、異性化糖、デキストリン、分枝デキストリン、デンプン等を含んでいてもよい。上記混合物中のパラチノースの重量比率は、好ましくは10〜99.99%であり、より好ましくは20〜99.99%である。
【0023】
また、上記の筋肉量低下抑制剤として、パラチノースを非還元糖である他の炭水化物と組み合わせた混合物を用いてもよい。これにより、着色の原因を減少させ、食品が着色しにくくなる。また、パラチノースを溶解性のよい他の炭水化物と組み合わせてもよい。これにより、晶出がしにくくなる。
【0024】
パラチノースをスクロース、グルコース、異性化糖等の甘味料と組み合わせて使用してもよい。これにより、スクロース、グルコース、異性化糖等の有する甘味が低減され、さっぱりとした低甘味の食品を製造することができる。
【0025】
本発明の筋肉量低下抑制剤として、例えば、結晶パラチノース、粉末パラチノース、パラチノースシロップ及び/又はトレハルロースシロップを用いることができる。結晶パラチノース(商品名:結晶パラチノースIC、三井製糖株式会社製)及び粉末パラチノース(商品名:粉末パラチノースICP、三井製糖株式会社製)は、パラチノース(含結晶水)を99.0%以上含む。パラチノースシロップ(商品名:パラチノースシロップ−ISN及びパラチノースシロップ−TN、三井製糖株式会社製)は、パラチノースを11〜17%及びトレハルロースを53〜59%含む。トレハルロースシロップ(商品名:ミルディア−75及びミルディア−85、三井製糖株式会社製)は、パラチノースを8〜13%及びトレハルロースを83〜89%含む。
【0026】
上記の筋肉量低下抑制剤の形状は、パラチノースを有効成分として含んでいれば特に限定されないが、フォンダン、顆粒、タブレット、シロップ剤、ドリンク剤、清涼飲料水、ゼリー飲料、粉末飲料等が挙げられる。また、本発明の筋肉量低下抑制剤は、食品、医薬部外品及び医薬品に使用可能な素材を配合して、特定保健用食品、機能性食品、健康食品、医薬部外品、医薬品等に加工して使用することができる。
【0027】
上記の筋肉量低下抑制剤の摂取方法としては経口摂取が挙げられる。また、通常又は食事制限下にて摂取する炭水化物の全量又は一部の代わりにパラチノースを摂取することが好ましく、通常又は食事制限下にて摂取する炭水化物の一部の代わりにパラチノースを摂取してもよい。炭水化物としては、スクロース、グルコース、フルクトース、異性化糖、デキストリン、分枝デキストリン、デンプン等が挙げられる。炭水化物と同時に摂取する場合は、重量比として、パラチノース:炭水化物=10:90〜99:1が好ましく、30:70〜99:1がより好ましく、50:50〜90:10がさらに好ましい。
【0028】
上記の筋肉量低下抑制剤に含まれるパラチノース含有量は、1回当たり5g以上が好ましく、7g以上がより好ましく、10g以上がさらに好ましい。1日当たりのパラチノース含有量は、5g以上が好ましく、10g以上がより好ましく、20g以上がさらに好ましい。また、1回当たりのパラチノース含有量は、60g以下が好ましく、40g以下がより好ましく、20g以下がさらに好ましい。1日当たりのパラチノース含有量は、60g以下が好ましく、50g以下がより好ましく、40g以下がさらに好ましい。
【0029】
本発明の筋肉量低下抑制剤の摂取期間は、1ヶ月以上が好ましく、2ヶ月以上がより好ましく、3ヶ月以上がさらに好ましい。また、1週間当たりの摂取頻度としては、3日以上又は4日以上が好ましく、5日以上がより好ましく、6日以上がさらに好ましく、7日が最も好ましい。
【0030】
パラチノースは、小腸内のイソマルターゼにより分解されて、グルコースとフルクトースを生成する。これら単糖類は、スクロースが酵素により分解されたときと同様に小腸から吸収されて代謝される。よって、パラチノースは、スクロースと同様4kcal/gのカロリーを有し、エネルギー源となる上、細胞が正常に機能するための不可欠なグリコーゲン、糖鎖等の材料となる。したがって、スクロース、グルコース、フルクトース、異性化糖、デキストリン、分枝デキストリン、デンプン等の炭水化物の代わりにパラチノースを炭水化物源として摂取することができる。また、パラチノースは緩下作用又は腹部膨満感のような胃腸障害を示すことが無い。さらに、パラチノースはその加水分解速度がスクロースの1/5と遅いために、摂取後の血糖値およびインスリン濃度を一定レベルに長時間維持できる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
メタボリックシンドロームの疑いがある男性、つまり腹囲が男性85cm以上の男性のうち、血糖降下薬を服薬している者又は血糖異常者を除外した15名を被検者とした。なお、試験責任医師の指導の下、ヘルシンキ宣言にのっとり、被験者本人の同意を得て、被験者の選定及び試験の実施を行った。年齢及び健診結果等を基準として、被験者をランダムに2群(試験群及び対照群)に分け、二重盲検プラセボ対照試験を実施した。試験群は8名、対照群は男性7名だった。健診の結果、被験者全員がメタボリックシンドローム又はその予備群、すなわち、高血圧、血清脂質異常、食後高脂血症、耐糖能異常、インスリン抵抗性、高インスリン血症、又は、これらの組み合わせのいずれかに該当した。
【0033】
試験食として食事1回あたり10g、一日あたり30gのパラチノース、対照食として食事1回あたり10g、一日あたり30gのスクロースを用いた。具体的には、試験食として1袋あたり5gの結晶パラチノースIC(三井製糖株式会社製)を2袋、又は、対照食として1袋あたり5gのスクロースを2袋用い、食事前又は食事中にコーヒー又は紅茶と共に摂取するよう指導した。試験食又は対照食を3ヶ月間の試験期間中、毎日摂取した。一日あたりの試験食又は対照食の平均摂取量は、試験群、対照群共に約20gであった。
【0034】
3ヶ月の試験期間中、特定保健指導による食事・生活習慣の改善を行った。具体的には、食事指導としては、炭水化物を減らすことで摂取カロリーを減らし、野菜を多く摂るよう、個人のレベルに応じて指導した。生活習慣の改善としては、運動の習慣化となるべく歩くよう、個人のレベルに応じて指導した。
【0035】
試験介入前(試験前)及び試験開始から3ヵ月後(試験後)に、以下、図1〜12に示す項目について健診を行った。体重、体脂肪率及び筋肉量はインナースキャン50(株式会社タニタ製)で測定した。健診結果を図1〜12に示す。
【0036】
なお、BMI(ボディマスインデックス)は肥満度を表す指数であり、以下の式で表される。
BMI=体重(kg)/身長(m)
【0037】
HbA1cは、ヘモグロビンA(HbA)にグルコース(血糖)が結合したものの占める割合(正常値:4.4〜5.8%)であり、現時点より過去1〜1.5ヶ月間の平均血糖値の指標である。
【0038】
図1〜4に、試験介入前及び試験開始3ヶ月後の体重、BMI、腹囲及び体脂肪率をそれぞれ示す。体重、BMI、腹囲及び体脂肪率は、いずれも試験群(パラチノース群)、対照群(スクロース群)共に、試験前に比べ試験後に有意に減少した。よって、試験群及び対照群のいずれにおいても、特定保健指導により、減量効果、及び、脂肪減少効果が得られたことが分かった。
【0039】
図5に示すように、筋肉量は、対照群では試験前に比べ試験後に有意に減少したが、試験群ではほとんど変化がなかった。このことから、食事制限下の筋肉量が低下する条件(対照群)において、対照食の代わりに試験食を摂取することによって、筋肉量を維持する、又は、対照にて観察された筋肉の減少量よりも少ない減少量を示すことがわかった。
【0040】
図6、7に示すように、収縮期血圧(図6)及び拡張期血圧(図7)は、試験群、対照群ともに、試験前に比べ試験後に減少したが、試験群は有意に減少した。また、図8、9に示すように、空腹時血糖(図8)とHbA1c(図9)は、試験群、対照群ともに、試験前後で大きな変化はなかった。
【0041】
図10〜12に、試験前後の血中中性脂肪濃度、血中LDLコレステロール濃度及び血中HDLコレステロール濃度をそれぞれ示す。中性脂肪(図10)は、試験群、対照群ともに、試験前に比べ試験後に有意に減少した。LDLコレステロール(図11)は、試験群、対照群ともに、試験前後で大きな変化はなかった。HDLコレステロール(図12)は、試験群、対照群ともに、試験前に比べ試験後に有意に増加した。
【0042】
以上の結果より、試験群、対照群ともに、特定保健指導の効果があり、健診した12項目のうち複数の項目で改善したことが分かった。その上、図5に示した結果から、パラチノースには、食事制限時における筋肉量の低下を防止する効果があることが分かった。
【0043】
(実施例2)
<パラチノースを含むスティックシュガー>
2−1:パラチノースからなるスティックシュガー
包装一本当たり結晶パラチノースが7g含まれるようにスティック包装に充填した。
2−2:パラチノース及び高甘味度甘味料からなるスティックシュガー
包装一本当たり結晶パラチノース7g及びアセスルファムカリウム0.02gが含まれるようにスティック包装に充填した。
2−3:パラチノース及びショ糖からなるスティックシュガー
結晶パラチノース及びショ糖を同重量混合し、包装一本当たり結晶パラチノース及びショ糖がそれぞれ3.5gずつ含まれるようにスティック包装に充填した。
【0044】
(実施例3)
<パラチノースを含むガムシロップ>
以下の表1に示す配合で、パラチノースを含むガムシロップを製造した。製造は、パラチノースとアラビアガムを合わせ、粉体混合し、そこへ異性化糖及び水を加え、煮沸混合することによって行った。以上の溶液をレフブリックスで30に調整した。
【0045】
【表1】

【0046】
(実施例4)
<パラチノースを含むタブレット>
以下の表2に示す配合で、パラチノースを含むタブレットを製造した。製造は、下記に示す配合の混合粉末に、300kg/cmの打錠圧をかけ、直径18mm、厚さ5mm、重量1.5gであるタブレットを成型することによって行った。
【0047】
【表2】

【0048】
(実施例5)
<パラチノースを含む粉末飲料>
以下の表3に示す配合で、パラチノースを含む粉末飲料を、常法に従い、万能混合攪拌機を使用して製造した。得られた粉末飲料60gを250〜1000mlの水に溶解することによって清涼飲料水を調製することができる。
【0049】
【表3】

【0050】
(実施例6)
<パラチノースを含む清涼飲料水>
6−1
以下の表4に示す配合でパラチノースを含む清涼飲料水を製造した。製造は、以下の原料を熱湯500mlに溶解した後、ペットボトル(500ml用)に充填することにより行った。
【0051】
【表4】

【0052】
6−2
以下の表5に示す配合でパラチノース及びショ糖を含む清涼飲料水を製造した。製造は、以下の原料を熱湯500mlに溶解した後、ペットボトル(500ml用)に充填することにより行った。
【0053】
【表5】

【0054】
6−3
以下の表6に示す配合でパラチノース及び異性化糖を含む清涼飲料水を製造した。製造は、以下の原料を熱湯500mlに溶解した後、ペットボトル(500ml用)に充填することにより行った。
【0055】
【表6】

【0056】
(実施例7)
<パラチノースを含むゼリー飲料>
下記表7に示す配合でパウチ入りゼリー飲料(通常の180gのパウチ入り飲料として)を調製した。
【0057】
【表7】

【0058】
(実施例8)
<パラチノースを含むドーナツ>
下記表8に示す配合でドーナツを製造した。卵を割りほぐして、該ほぐした卵に、結晶パラチノース、ミルディア−75を加えてよく混ぜた後、さらに溶かしバターを加えてよく混ぜた。これに、篩った小麦粉とベーキングパウダーを加えてさっくり混ぜて、生地とした。生地をまとめて、冷蔵庫で30分休ませた後、生地を伸ばしてドーナツ型で抜いた。170℃の油に入れ、膨れてきつね色になったら、ドーナツを油から取り出した。熱いうちに、揚げたドーナツに粉末パラチノースをまぶした。
【0059】
【表8】

【0060】
(実施例9)
<パラチノースを含む大福>
下記表9に示す配合で大福を製造した。
餅:白玉粉に水を加えて電子レンジ500Wで4分加熱した。加熱後に、全体をかき混ぜ、粉末パラチノースとミルディア−75を加えて練りこんだ。練りこみは、透明感が出て粘りが出るまで行われた。
餡:生餡に、結晶パラチノース、ミルディア−75及び水を加えて火にかけ、つやがでるまで約10分間練り上げた。
餡を餅で包んで大福を製造した。
【0061】
【表9】

【0062】
(実施例10)
<パラチノースを含むエナジーバー>
下記表10に示す配合でエナジーバーを製造した。室温で軟らかくしたバターに結晶パラチノースを加えてよく練った。全卵を加えてよく混ぜた後、ドライクランベリー、アーモンドダイスを加えてよく混ぜた。これに大豆粉を加えてさっくり混ぜて、生地とした。天板に該生地を約1.5cmの厚みで敷き詰め、170℃のオーブンで20分間焼した。焼きあがったものを食べ易い大きさにカットした。
【0063】
【表10】

【0064】
(実施例11)
<パラチノースを含む食パン>
下記表11に示す配合で食パンを製造した。
中種:中種の原材料を24℃で低速3分、中速1分ミキシングし、27℃で4時間予備発酵させた。
本種:ショートニング以外の本種の原材料を26℃で低速3分、中速10分、高速1分の順でミキシングし、次にショートニングを添加し、低速2分、中速2分、高速1分の順でミキシングした。生地をひとつにまとめフロアータイムとして20分間休ませた。分割重量220gとし、ベンチタイムとして20分間休ませた。該生地を馬蹄形に成形して形につめ、35℃75%でホイロタイムとして100分間最終醗酵させた。該最終発酵させた生地を、上火175℃、下火195℃のオーブンで40分間焼成した。なお、ミキシングの低速は約116回転/分、中速は約211回転/分、高速は約268回転/分である。使用ミキサーは「HPS−20M(関東混合機工業株式会社製)」である。
【0065】
【表11】

【0066】
(実施例12)
<パラチノースを含むアイスクリーム>
下記12に示す配合でアイスクリームを製造した。
砂糖、パラチノース、脱脂粉乳及び安定剤をあらかじめ良く混ぜた。これにミルディア−75及び水を加えて攪拌しながら沸騰させ、完全に溶かした。これに機能性クリームを入れてよく混ぜた。これを20℃程度に冷却し、ホモジナイズした後、アイスクリーマーにかけた。
【0067】
【表12】

【0068】
(実施例13)
<パラチノースを含む中華麺>
下記表13に示す配合で中華麺を製造した。
粗捏ね:材料を混ぜて50回程度捏ねた後、生地が乾かないようにして20分間休ませた。
本捏ね:さらに生地を軽めに捏ねて40分間休ませた。
生地を伸ばして包丁で細く切った。
【0069】
【表13】

【0070】
(実施例14)
<パラチノースを含むうどん>
下記表14に示す配合でうどんを製造した。
材料を混ぜてひとつにまとめ、できた生地をムラがなくなるまで5分間捏ねた後、ラップをして30分間休ませた。該生地を足踏み−たたむ、を45分間約30回繰り返した後、ひとつにまとめた。次に、該生地をラップに包んで1〜2時間休ませた後、伸ばして包丁で細く切った。
【0071】
【表14】

【0072】
(実施例15)
<パラチノースを含む粉末ポタージュスープ>
下記表15に示す配合で粉末ポタージュスープを製造した。
【0073】
【表15】

【0074】
(実施例16)
<パラチノースを含むスポンジケーキ>
以下の表16に示す配合により、パラチノース、ショ糖、及びデンプンを含むスポンジケーキを調製した。結晶パラチノース、ショ糖(グラニュ糖)、キサンタンガムを粉体混合したものをAとした。別に、小麦粉とベーキングパウダーを混合したものをBとした。Aに、牛乳及びリョートーエステルSPを入れて良く混合した。これに卵を入れ、均一になるまで良く混合し、卵液が25℃ぐらいになるまで湯煎で温めた。これを万能攪拌機で泡立て、これ以上泡立たないという状態になるまで泡立てた。これに、Bを練らないように混合し、スポンジケーキ型に入れ、160℃のオーブンで40分間焼いた。本実施例の配合では、パラチノース70g、ショ糖30g、及びデンプン約90gを含む。
【0075】
【表16】

【0076】
(実施例17)
<パラチノースを含むマドレーヌ>
以下の表17に示す配合により、パラチノース及びデンプンを含むマドレーヌを調製した。小麦粉とベーキングパウダーは合わせて篩っておいた。バターは湯煎にかけ、溶かしておいた。ボールに卵を入れ、グラニュ糖、食塩、レモンの皮、レモンエッセンスを加えて湯煎にかけた。これを温めながら、パラチノースを入れ、泡立て器でよく攪拌した。ここに篩っておいた小麦粉を一度に加え、良く混ぜ合わせ、溶かしバターを加えて混ぜた。アルミホイルのカップに分けて入れ、160℃のオーブンで色づくまで10分ほど焼いた。本実施例により得られるマドレーヌは、60gのパラチノース及び約37gのデンプンを含む。
【0077】
【表17】

【0078】
(実施例18)
<パラチノースを含むケーキミックス>
以下の表18に示す配合でケーキミックスを調製した。ショートニング以外の材料を予備混合し、そこに溶解したショートニングを混合し、篩別を行った。
【0079】
【表18】

【0080】
(実施例19)
<パラチノースを含む乾燥スープ>
下記表19に示す配合で乾燥スープを調製した。
【0081】
【表19】

【0082】
(実施例20)
<パラチノースを含むドレッシング>
下記表20に示す配合でドレッシングを調製した。
【0083】
【表20】

【0084】
実施例2〜20に示す組成物は、パラチノースを有効成分とする筋肉量低下抑制剤である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】試験介入前及び試験開始3ヶ月後の体重(kg)を示すグラフ。
【図2】試験介入前及び試験開始3ヶ月後のBMIを示すグラフ。
【図3】試験介入前及び試験開始3ヶ月後の腹囲(cm)を示すグラフ。
【図4】試験介入前及び試験開始3ヶ月後の体脂肪率(%)を示すグラフ。
【図5】試験介入前及び試験開始3ヶ月後の筋肉量(%)を示すグラフ。
【図6】試験介入前及び試験開始3ヶ月後の収縮期血圧(mmHg)を示すグラフ。
【図7】試験介入前及び試験開始3ヶ月後の拡張期血圧(mmHg)を示すグラフ。
【図8】試験介入前及び試験開始3ヶ月後の空腹時血糖(mg/dl)を示すグラフ。
【図9】試験介入前及び試験開始3ヶ月後のHbA1c(%)を示すグラフ。
【図10】試験介入前及び試験開始3ヶ月後の血中中性脂肪濃度(mg/dl)を示すグラフ。
【図11】試験介入前及び試験開始3ヶ月後の血中LDLコレステロール濃度(mg/dl)を示すグラフ。
【図12】試験介入前及び試験開始3ヶ月後の血中HDLコレステロール濃度(mg/dl)を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソマルツロースを有効成分とする筋肉量低下抑制剤。
【請求項2】
食事制限による筋肉量低下の抑制用である、請求項1記載の筋肉量低下抑制剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−95468(P2010−95468A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267521(P2008−267521)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(501190941)三井製糖株式会社 (52)
【Fターム(参考)】