説明

筐体のスライド扉装置およびこれを用いた映像音響機器

【課題】 部品点数が少なくて組立が容易な構成とするとともに、動作品位がよい円滑な動きを実現できるスライド扉装置を提供する。
【解決手段】 筐体が備える第1ガイド部、第2ガイド部、および、第3ガイド部がそれぞれ、閉状態のスライド扉が開口に対して真っ直ぐに沈み込むように、スライド扉が備える第1ボス、第2ボス、および、第3ボスを導く鉛直移動部と、スライド扉がスライドして開状態となるように鉛直部から第1ボス、第2ボス、および、第3ボスを導く平行移動部を有する。また、スライド扉が開口に対して真っ直ぐに沈み込むガイド機構にしたがって閉状態からスライドして開状態になる場合に、スライド扉の板バネの自由端側同士の間隔が広がって、スライド扉に付勢力を作用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像音響機器の操作部分に使用される筐体のスライド扉装置に関し、特に、筐体と、筐体に設けられる開口を開閉するスライド扉と、を備えるスライド扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像音響機器の筐体に設けられる開閉扉は、操作ボタン、あるいは、端子等を格納するのに用いられる。これらの開閉扉には、開閉機構が、スライド機構であるスライド扉や、回動機構である回動扉(または、回転機構である回転扉)等がある。スライド扉装置では、筐体に設けられる開口を開閉するスライド扉が、閉状態では筐体の内部側から開口を塞ぎ、開状態では筐体の内部側に収容されるように動作するものがある。特に、ユーザーがスライド扉に触れて開閉動作させるスライド扉装置では、部品点数が少なくて組立が容易な構成とするとともに、動作品位がよい円滑な動きを実現できるようにするのが好ましい。
【0003】
従来には、例えば、開口した窓部を有する本体外壁の内側に、固定した案内枠と、前記外壁と前記案内枠との間に摺動可能とする蓋部材とを設け、前記蓋部材は前記案内枠との間に設けた押圧されたバネ部材によって外方に付勢され、前記蓋部材によって閉蓋状態にある前記窓部は、前記外壁面とほぼ同一面を保持するようにしたことを特徴とする開閉装置がある。(特許文献1)。
【0004】
また、従来には、筐体に穿設された窓と、この窓に嵌合可能な形状の突出表面部が形成された扉部材と、この扉部材を前記筐体の内面に沿ってスライド自在に収容する案内枠体と、前記扉部材を前記筐体の内面に向けて付勢するバネ手段と、を備えることを特徴とするスライド式扉構造がある(特許文献2)。
【0005】
あるいは、従来には、ケースに形成された開口部を介して、他の機器と接続できるようになされた情報処理装置において、前記ケースの内側より、前記開口部に押し付けられて、前記開口部を閉じる蓋と、前記開口部側からの押圧により前記蓋が沈み込むようにして、前記蓋を前記開口部に押圧する押圧機構と、前記押圧機構によって前記開口部に前記蓋が押し付けられた状態では、前記蓋のスライド操作を困難とし、前記蓋が沈み込んだ状態では、前記蓋をスライド操作可能とするロック機構と、前記蓋のスライド操作に対応して前記蓋をガイドするガイド機構と、を備えることを特徴とする情報処理装置がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−166676号公報 (第1図、第2図)
【特許文献2】実開昭63−93680号公報 (第1図〜第4図)
【特許文献3】特開2004−272707号公報 (第1図〜第6図)
【0007】
しかしながら、ユーザーがスライド扉を開閉動作させる際に、板バネ等による付勢力に抗してスライド扉を押し込み、次に筐体の内側へとスライドさせ開状態とする場合に、スライド扉を押し込む位置がスライド扉の重心位置と一致しないと、スライド扉は押す位置によっては傾斜しながら押し下げられてしまうという問題がある。スライド扉の押し込まれる変位長の最も少ない部分が筐体の開口部分の厚み以上に押し込まれなければ、筐体の開口部分に接触してスライド動作をさせることができない、という問題がある。必要以上にスライド扉が押し込まれる変位長が大きくなると、動作品位も悪くなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、映像音響機器に使用される筐体のスライド扉装置に関し、部品点数が少なくて組立が容易な構成とするとともに、動作品位がよい円滑な動きを実現できるスライド扉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の筐体のスライド扉装置は、筐体と、筐体に設けられる開口を開閉するスライド扉と、を備え、スライド扉が、平板状の扉部と、扉部の両脇側に設けられる係止部と、係止部の一方端側から突出する第1ボスと、係止部の他方端側から突出する第2ボスと、閉状態のスライド扉が開口に対して沈み込む方向に第1ボスあるいは第2ボスから離隔して設けられる第3ボスと、係止部に固定端側が取り付けられる板バネと、を備え、筐体が、開口と、スライド扉の係止部と係合する閉位置係止部と、スライド扉の第1ボスが摺動する第1ガイド部と、スライド扉の第2ボスが摺動する第2ガイド部と、スライド扉の第3ボスが摺動する第3ガイド部と、スライド扉の板バネの自由端側が当接して摺動する溝部と、を備え、第1ガイド部、第2ガイド部、および、第3ガイド部がそれぞれ、閉状態のスライド扉が開口に対して真っ直ぐに沈み込むように第1ボス、第2ボス、および、第3ボスを導く鉛直移動部と、スライド扉がスライドして開状態となるように鉛直部から第1ボス、第2ボス、および、第3ボスを導く平行移動部を有する。
【0010】
好ましくは、本発明の筐体のスライド扉装置は、筐体の第1ガイド部、第2ガイド部、および、第3ガイド部が、それぞれの鉛直移動部と平行移動部との間を面取りして設けられる斜行移動部をさらに有する。
【0011】
また、本発明の筐体のスライド扉装置は、筐体と、筐体に設けられる開口を開閉するスライド扉と、を備え、スライド扉が、平板状の扉部と、扉部の両脇側に設けられる係止部と、係止部に中央固定端側が取り付けられる板バネと、を備え、筐体が、開口と、スライド扉の係止部と係合する閉位置係止部と、スライド扉の板バネの自由端側が当接して摺動する溝部と、を備え、スライド扉が開口に対して真っ直ぐに沈み込むガイド機構にしたがって閉状態からスライドして開状態になる場合に、溝部に当接する板バネの自由端側同士の間隔が広がって、スライド扉に付勢力を作用させる。
【0012】
好ましくは、本発明の筐体のスライド扉装置は、スライド扉が、ガイド機構を構成する係止部から突出する前面側ボスと、閉状態のスライド扉が開口に対して沈み込む方向に前面側ボスから離隔して設けられる背面側ボスと、をさらに備え、筐体が、ガイド機構を構成するスライド扉の前面側ボスが摺動する前面側ガイド部と、スライド扉の背面側ボスが摺動する背面側ガイド部と、スライド扉の板バネの自由端側が当接して摺動する溝部と、を備え、前面側ガイド部および背面側ガイド部がそれぞれ、閉状態のスライド扉が開口に対して真っ直ぐに沈み込むように前面側ボスおよび背面側ボスを導く鉛直移動部と、スライド扉がスライドして開状態となるように鉛直部から前面側ボスまたは背面側ボスを導く平行移動部を有する。
【0013】
好ましくは、本発明の筐体のスライド扉装置は、筐体の前面側ガイド部、および、背面側ガイド部が、それぞれの鉛直移動部と平行移動部との間を面取りして設けられる斜行移動部をさらに有する。
【0014】
さらに、好ましくは、本発明の筐体のスライド扉装置は、開口を筐体の内部側から覆うカバー部材をさらに備え、カバー部材が、開口から露出する端子を固定する端子固定部と、筐体の溝部と、筐体の閉位置係止部と、を一体に形成されている。
【0015】
また、本発明の映像音響機器は、いずれか上記の筐体のスライド扉装置を含む。
【0016】
以下、本発明の作用について説明する。
【0017】
本発明の筐体のスライド扉装置は、筐体と、筐体に設けられる開口を開閉するスライド扉と、を備える。閉状態のスライド扉は、押圧された板バネによって付勢力を与えられて筐体の内部側から開口を塞ぎ、開状態のスライド扉は、筐体の内部側に収容されるようにスライド動作(摺動動作)する。本発明の筐体のスライド扉装置の開閉動作では、スライド扉が筐体の開口に対して真っ直ぐに沈み込む方向に変位する動作と、スライドして筐体の内部側に収容されるように変位する動作と、が含まれる。つまり、本発明の筐体のスライド扉装置では、スライド扉が筐体の開口に対して真っ直ぐに傾くことなく沈み込む方向に変位するガイド機構を有するので、動作品位がよい円滑な動きを実現できる。
【0018】
具体的には、スライド扉は、平板状の扉部と、扉部の両脇側に設けられる係止部と、係止部の一方端側から突出する第1ボス(または、前面側ボス)と、係止部の他方端側から突出する第2ボス(または、前面側ボス)と、閉状態のスライド扉が開口に対して沈み込む方向に第1ボスあるいは第2ボスから離隔して設けられる第3ボス(または、閉状態のスライド扉が開口に対して沈み込む方向に前面側ボスから離隔して設けられる背面側ボス)と、係止部に固定端側が取り付けられる板バネと、を備える。また、筐体は、開口と、スライド扉の係止部と係合する閉位置係止部と、スライド扉の第1ボスが摺動する第1ガイド部(または、前面側ガイド部)と、スライド扉の第2ボスが摺動する第2ガイド部(または、前面側ガイド部)と、スライド扉の第3ボスが摺動する第3ガイド部(または、背面側ガイド部)と、スライド扉の板バネの自由端側が当接して摺動する溝部と、を備える。
【0019】
ここで、筐体の第1ガイド部、第2ガイド部、および、第3ガイド部はそれぞれ、閉状態のスライド扉が開口に対して真っ直ぐに沈み込むように第1ボス、第2ボス、および、第3ボスを導く鉛直移動部を少なくとも有する。また、筐体の第1ガイド部、第2ガイド部、および、第3ガイド部はそれぞれ、スライド扉がスライドして開状態となるように鉛直部から第1ボス、第2ボス、および、第3ボスを導く平行移動部を少なくとも有する。板バネは、スライド扉の係止部に中央固定端側が取り付けられて、その自由端側が筐体の溝部と当接して摺動する。つまり、スライド扉が、開口に対して真っ直ぐに沈み込むガイド機構にしたがって閉状態からスライドして開状態になる場合には、溝部に当接する板バネの自由端側同士の間隔が広がって、スライド扉に付勢力を作用させる。したがって、それぞれの鉛直移動部と平行移動部との間を面取りして設けられる斜行移動部をさらに有していれば、開口に対して真っ直ぐに沈み込んでから摺動するスライド扉が円滑に動き、さらに動作品位がよいスライド扉装置が実現できる。
【0020】
また、本発明の筐体のスライド扉装置では、開口を筐体の内部側から覆うカバー部材を設けて、このカバー部材に、開口から露出する端子を固定する端子固定部と、筐体の溝部と、筐体の閉位置係止部と、を一体に形成してもよい。スライド扉装置の部品点数を少なくして組立が容易な構成とするとともに、スライド扉装置の開口の奥側に、スライド扉が開状態の場合に露出する端子を設けることができる。このスライド扉装置を含む筐体を用いる映像音響機器では、ユーザーがスライド扉を開閉動作させる際の動作品位が良くなるので、他の映像音響機器等を端子に接続する利用形態において、動作品位の良さを堪能することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の筐体のスライド扉装置およびこれを用いた映像音響機器は、部品点数が少なくて組立が容易な構成とするとともに、動作品位がよい円滑な動きを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるスライド扉装置1について説明する斜視図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態によるスライド扉装置1のスライド扉3を説明する斜視図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態によるスライド扉装置1の筐体2およびカバー部材4を説明する斜視図である。(実施例1)
【図4】本発明の好ましい実施形態によるスライド扉装置1の動作を説明する断面図である。(実施例1)
【図5】本発明の好ましい実施形態によるスライド扉装置1の動作を説明する断面図である。(実施例1)
【図6】本発明の好ましい実施形態によるスライド扉装置1の動作を説明する断面図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態による筐体のスライド扉装置およびこれを用いた映像音響機器について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の好ましい実施形態による筐体のスライド扉装置1について説明する図であり、スライド扉装置1を備える映像音響機器であるクレードル装置を斜め前方から見た一部拡大図である。例えば、スライド扉装置1は、筐体2を有するAVレシーバー、あるいは、デジタルオーディオプレーヤー(DAP)を接続するクレードル装置等の映像音響機器において、機能を選択するスイッチ類、あるいは、接続するための接続端子をスライド扉3の内側に格納するものである。具体的には、本実施例のスライド扉装置1は、図1(a)に示すように、筐体2の天板21に設けられるスライド扉3を閉鎖する「Close」の状態では、開口20の内部の接続端子5を前面に露出させずにデザイン性を高め、一方で、スライド扉3を開放する「Open」の状態では、開口20の内部の接続端子5を前面に露出するようにして、(図示しない)DAPを筐体2の内部側に設けられるカバー部材4の凹部に載置して、DAPの接続端子と接続端子5とを接続することができる。
【0025】
スライド扉装置1は、ユーザーが指先でスライド扉3をスライドさせて、「Close」の状態、および、「Open」の状態を切り換える。ユーザーが指先でスライド扉3を押すと、スライド扉3は、筐体2の天板21に設けられる略矩形状の開口20に対して、図示する垂直上下方向に真っ直ぐ沈み込んでから、天板21の背面側に隠れるように前方から後方へスライドして移動し、開口20から接続端子5を前面に露出させる。反対に、「Open」の状態からユーザーが指先でスライド扉3を手前側にスライドさせると、スライド扉3は後方から前方へ円滑に移動して、「Close」状態で開口20を閉鎖する。
【0026】
図2は、スライド扉装置1のスライド扉3を説明する斜視図であり、図3は、筐体2およびカバー部材4を説明する斜視図である。具体的には、図2(a)は、スライド扉3を斜め上から見た斜視図であり、図2(b)は、スライド扉3を背面から見た斜視図である。また、図3(a)は、筐体2を背面から見た斜視図であり、図3(b)は、カバー部材4を取り付けた状態の筐体2を背面から見た斜視図である。なお、動作の説明に不要なスライド扉装置1の筐体2、スライド扉3、ならびに、カバー部材4の詳細な構成については、図3のように一部を点線で記載し、あるいは、図示並びに説明を省略する。
【0027】
スライド扉3は、樹脂で形成される基体に、2つの板バネ6が取り付けられて構成されている。スライド扉3の基体は、平板状の扉部31と、扉部31の両脇側を含む周囲に設けられる係止部32と、を含み、扉部31の前方表側には、ユーザーの指先が当接するように球面状の突起を構成する指掛け30が設けられている。また、係止部32は、スライド扉装置1として動作する場合には、筐体2の天板21の背面側に隠れるように構成され、扉部31の両脇側には略「ハ」の字状(あるいは、ギリシャ文字の略「Λ」の字状)に形成される板バネ6の中央の固定端側61が取り付けられる。係止部32には、さらに、係止部32の前方側から横方向に突出する第1ボス33と、係止部32の後方側から突出する第2ボス34と、閉状態のスライド扉3が開口20に対して沈み込む方向である垂直上下方向に第2ボス34から離隔して設けられる第3ボス35とを、備える。第1ボス33および第2ボス34は、開口20に近い前面側ボスであり、一方、第3ボス35は、開口20から遠くなる背面側ボスである。図視するように、第1ボス33、第2ボス34および第3ボス35は、スライド扉3の係止部32の両側にそれぞれ設けられている。
【0028】
スライド扉装置1を構成する筐体2は、厚み約2.0mmの樹脂で形成されていて、天板21の中央付近に略矩形状の開口20を有している。天板21の背面側の開口20の周囲には、スライド扉3の係止部32と係合する閉位置係止部22が設けられる。また、筐体2は、開口20の左右両側にそれぞれ、スライド扉3の第1ボス33が摺動する第1ガイド部23と、スライド扉3の第2ボス34が摺動する第2ガイド24部と、スライド扉3の第3ボス35が摺動する第3ガイド部25と、カバー部材4を連結する連結部26と、を備える。筐体2の連結部26と、カバー部材4は、(図示しない)ネジにより連結される。
【0029】
また、カバー部材4は、樹脂で形成されていて、筐体2の天板21の背面側に取り付けられる。カバー部材4は、天板21の背面側を覆う基体41と、基体41の両脇側に設けられて筐体2の連結部26に連結する連結部42と、連結部42を構成する平面に設けられてスライド扉3の板バネ6の自由端側62および63が当接して摺動する溝部43と、基体41の開口20に対応する部分に形成されて(図示しない)DAP等が載置される凹部44と、凹部44に接続端子5を露出するように取り付ける取付孔45と、を備える。また、カバー部材4は、「Open」状態でスライド扉3が当接する閉位置係止部46を更に備える。なお、図2〜図6では、接続端子5を省略して図示している。
【0030】
図4から図6は、本実施例のスライド扉装置1の動作を説明する断面図である。すなわち、図4はスライド扉3を閉鎖する「Close」の状態を示し、図5はスライド扉3がスライドしている中間位置での状態を示し、図6はスライド扉3を開放する「Open」の状態を示す図であって、それぞれ、(a)についてはスライド扉装置1のA−A’側方断面図であり、(b)についてはスライド扉装置1のB−B’側方断面図である。なお、図5(c)は、図5(b)に図示するC部分の一部拡大図である。
【0031】
図4に示すように、本実施例のスライド扉装置1は、スライド扉3を閉鎖する「Close」の状態では、平板状の扉部31が、天板21の開口20を概ね塞いで、筐体2の内部側を外観視できないように覆う。スライド扉3の扉部31の周囲に設けられる係止部32は、天板21の開口20に背面側から係止される。スライド扉3には、板バネ6の中央の固定端側61が取り付けられるので、「ハ」の字状に開いた板バネ6の自由端側62および63が当接するカバー部材4の溝部43と、スライド扉3の係止部32との間に板バネ6の付勢力が働いて、スライド扉3は、「Close」の状態を保つことができる。なお、図4の「Close」の状態では、板バネ6の自由端側62と63との間の距離W0は、本実施例の場合は約33.0mmである。
【0032】
次に、本実施例のスライド扉装置1では、図5に示すように、スライド扉3が「Close」の状態から図示するZ方向に、天板21の開口20に対して真っ直ぐ沈み込むように移動し、その後に天板21の背面側に隠れるように前方から後方へ図示するY方向にスライドして移動する。ユーザーがスライド扉3の指掛け30を押してスライド扉3を開閉動作させる際に、板バネ6による付勢力に抗してスライド扉3は、ほとんど傾くことなく真っ直ぐ沈み込むように押し込まれる。図5の状態では、図4の場合よりも約2.5mmだけスライド扉3が沈み込んでいて、板バネ6の自由端側62と63との間の距離W1は、本実施例の場合は約34.5mmになり、図4の場合よりも広がって大きくなっている。
【0033】
筐体2が有する第1ガイド部23、第2ガイド部24、および、第3ガイド部25は、それぞれ、スライド扉3が有する第1ボス33、第2ボス34、および、第3ボス35が摺動するので、スライド扉3を両側から支えてスライド可能にする。例えば、図5(c)に拡大して図示するように、第1ガイド部23は、閉状態のスライド扉3が開口20に対して真っ直ぐに図示するZ方向に沈み込むように第1ボス33を導く鉛直移動部23a(約2.3mm)と、スライド扉3が図示するY方向にスライドして開状態となるように鉛直移動部23aから第1ボス33を導く平行移動部23c(約35.0mm)を有し、これらの鉛直移動部23aと平行移動部23cとの間を面取りして設けられて、図示するx方向に第1ボス33を導く斜行移動部23bをさらに有する。また、第2ガイド部24、および、第3ガイド部25は、第1ガイド部23と同一寸法の鉛直移動部、斜行移動部、および、平行移動部を有する。
【0034】
つまり、スライド扉3の第1ボス33、第2ボス34、および、第3ボス35が、筐体2が有する鉛直移動部を含む第1ガイド部23、第2ガイド部24、および、第3ガイド部25からなるガイド機構にしたがって、スライド扉3を開口20に対して真っ直ぐに(図示するZ方向に)沈み込むように移動させる。一方、スライド扉3の第1ボス33、第2ボス34、および、第3ボス35は、筐体2が有する鉛直移動部により、スライド扉3が後方(図示するY方向)にスライドしないようにロックする。スライド扉3は、第1ボス33、第2ボス34、および、第3ボス35の3点で支持されているので、スライド扉3を押し込むユーザーの指がスライド扉3の重心位置と一致しない指掛け30を押すような場合であっても、スライド扉3は傾斜することなく、開口20に対して真っ直ぐに沈み込んでから動作品位よく摺動する。
【0035】
さらに、本実施例のスライド扉装置1では、図6に示すように、スライド扉3が天板21の背面側に隠れる様に移動して開口20が開き、「Open」の状態になる。天板21の背面側の開口20の周囲には、カバー部材4によって閉位置係止部42が設けられているので、スライド扉3の係止部32が閉位置係止部22に係合する。図6の状態では、図4の場合よりも約2.5mmだけスライド扉3が沈み込んでいるので、板バネ6の自由端側62と63との間の距離W2は、本実施例の場合は約34.5mmになり、図4または図5の場合よりも広がって大きくなってスライド扉3に付勢力を作用させる。ただし、本実施例のスライド扉装置1では、筐体2が有する第1ガイド部23、第2ガイド部24、および、第3ガイド部25は、それぞれの鉛直移動部と平行移動部との間を面取りして設けられる斜行移動部をさらに有しているので、スライド扉3が開口20に対して真っ直ぐに沈み込んでから摺動するようになり、円滑に動く動作品位がよいスライド扉装置1が実現できる。また、図6の状態では、スライド扉3の指掛け30が筐体2の天板21に設けられる開口20の縁部に当接して、「Open」の状態でのスライド扉3の位置を規定する。
【0036】
また、本発明の筐体のスライド扉装置1では、開口20を筐体2の内部側から覆うカバー部材4を設けて、「Open」の状態で開口20から露出する端子固定部を構成する凹部44と、接続端子5を固定する取付孔45とを設けている。また、カバー部材4は、筐体2の連結部26に内部側からスライド扉3の板バネ6の自由端側62および63が当接する溝部42を一体に形成することができるので、スライド扉装置1の部品点数を少なくして組立が容易な構成とすることができる。
【0037】
また、本発明の筐体のスライド扉装置1では、図6に示す「Open」の状態から図4に示す「Close」の状態にする動作では、ユーザーがスライド扉3の指掛け30を前方に引くと、スライド扉3が図5に示す状態まで移動し、スライド扉3が板バネ6の付勢力によって上昇して開口20を閉鎖する。このように、スライド扉3には、常に板バネ6の付勢力が働いているので、ユーザーがスライド扉3を意図して動かさない限り、スライド扉3が移動することはない。このスライド扉装置1を含む筐体を用いる映像音響機器では、ユーザーがスライド扉3を開閉動作させる際の動作品位が良くなるので、他の映像音響機器等を接続端子5に接続する利用形態において、部品点数が少なくて組立が容易な構成とするとともに、動作品位がよい円滑な動きを実現できる。
【0038】
なお、本発明は上記実施例に限定されない。スライド扉装置1は、図示するようなクレードル装置、あるいは、AVレシーバー等の映像音響機器のスライド扉装置に限られない。上記のスライド扉装置1では、スライド扉3が備える第3ボス35を、第2ボス34に近接して、かつ、開口20に対して沈み込む方向に設けているが、第3ボス35は、第1ボス33に近接して、かつ、開口20に対して沈み込む方向に設けるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のスライド扉装置は、映像音響機器のみならず、電話機、あるいは、携帯電話機を充電する際に支持する筐体を備える充電器を含む電気電子装置にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 スライド扉装置
2 筐体
20 開口
21 天板
22 係止部
23 第1ガイド部
24 第2ガイド部
25 第3ガイド部
26 連結部
3 スライド扉
30 指掛け
31 扉部
32 係止部
33 第1ボス
34 第2ボス
35 第3ボス
4 カバー部材
41 基体
42 連結部
43 溝部
44 凹部
45 端子孔
46 閉位置係止部
5 接続端子
6 板バネ
61 固定端側
62 自由端側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、該筐体に設けられる開口を開閉するスライド扉と、を備え、
該スライド扉が、平板状の扉部と、該扉部の両脇側に設けられる係止部と、該係止部の一方端側から突出する第1ボスと、該係止部の他方端側から突出する第2ボスと、閉状態の該スライド扉が該開口に対して沈み込む方向に該第1ボスあるいは該第2ボスから離隔して設けられる第3ボスと、該係止部に固定端側が取り付けられる板バネと、を備え、
該筐体が、該開口と、該スライド扉の該係止部と係合する閉位置係止部と、該スライド扉の該第1ボスが摺動する第1ガイド部と、該スライド扉の該第2ボスが摺動する第2ガイド部と、該スライド扉の該第3ボスが摺動する第3ガイド部と、該スライド扉の該板バネの自由端側が当接して摺動する溝部と、を備え、
該第1ガイド部、該第2ガイド部、および、該第3ガイド部がそれぞれ、閉状態の該スライド扉が該開口に対して真っ直ぐに沈み込むように該第1ボス、該第2ボス、および、該第3ボスを導く鉛直移動部と、該スライド扉がスライドして開状態となるように該鉛直部から該第1ボス、該第2ボス、および、該第3ボスを導く平行移動部を有する、
筐体のスライド扉装置。
【請求項2】
前記筐体の前記第1ガイド部、前記第2ガイド部、および、前記第3ガイド部が、それぞれの前記鉛直移動部と前記平行移動部との間を面取りして設けられる斜行移動部をさらに有する、
請求項1に記載の筐体のスライド扉装置。
【請求項3】
筐体と、該筐体に設けられる開口を開閉するスライド扉と、を備え、
該スライド扉が、平板状の扉部と、該扉部の両脇側に設けられる係止部と、該係止部に中央固定端側が取り付けられる板バネと、を備え、
該筐体が、該開口と、該スライド扉の該係止部と係合する閉位置係止部と、該スライド扉の該板バネの自由端側が当接して摺動する溝部と、を備え、
該スライド扉が該開口に対して真っ直ぐに沈み込むガイド機構にしたがって閉状態からスライドして開状態になる場合に、該溝部に当接する該板バネの該自由端側同士の間隔が広がって、該スライド扉に付勢力を作用させる、
筐体のスライド扉装置。
【請求項4】
前記スライド扉が、前記ガイド機構を構成する前記係止部から突出する前面側ボスと、閉状態の該スライド扉が該開口に対して沈み込む方向に該前面側ボスから離隔して設けられる背面側ボスと、をさらに備え、
前記筐体が、該ガイド機構を構成する該スライド扉の該前面側ボスが摺動する前面側ガイド部と、該スライド扉の該背面側ボスが摺動する背面側ガイド部と、該スライド扉の該板バネの自由端側が当接して摺動する溝部と、を備え、
該前面側ガイド部および該背面側ガイド部がそれぞれ、閉状態の該スライド扉が該開口に対して真っ直ぐに沈み込むように該前面側ボスおよび該背面側ボスを導く鉛直移動部と、該スライド扉がスライドして開状態となるように該鉛直部から該前面側ボスまたは該背面側ボスを導く平行移動部を有する、
請求項3に記載の筐体のスライド扉装置。
【請求項5】
前記筐体の前記前面側ガイド部、および、前記背面側ガイド部が、それぞれの前記鉛直移動部と前記平行移動部との間を面取りして設けられる斜行移動部をさらに有する、
請求項4に記載の筐体のスライド扉装置。
【請求項6】
前記開口を前記筐体の内部側から覆うカバー部材をさらに備え、該カバー部材が、該開口から露出する端子を固定する端子固定部と、該筐体の前記溝部と、該筐体の前記閉位置係止部と、を一体に形成されている、
請求項1から5のいずれかに筐体のスライド扉装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれかに記載の筐体のスライド扉装置を含む、映像音響機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−14802(P2011−14802A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159263(P2009−159263)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】