説明

筐体用気圧調整器およびこれを有する筐体

【課題】容易に筐体内外の気圧を等しくすることができ、かつ筐体外部の空気と共に雨水等が筐体内部に吸い込まれるのを防止することが可能な筐体用気圧調整器の提供。
【解決手段】筐体内の気圧を調整する筐体用気圧調整器2であって、筐体用気圧調整器2は筐体の底面に設けた貫通孔に嵌合され、筐体の内外を連通する空気孔22と、空気孔22を介して筐体の外部から内部へ水が浸入するのを防止する水浸入防止手段23と、筐体に自調整器2を固定するための固定手段21とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体用気圧調整器およびこれを有する筐体に関し、特に精密機器等を格納する密閉筐体に用いる筐体用気圧調整器およびこれを有する筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
防災や列車無線システム等に関連する機器は精密機器に属するが、このような精密機器を屋外に設置する場合は密閉筐体に格納するのが一般的である。また、雨等から精密機器を守るために密閉筐体の密閉度は高いことが望ましい。
【0003】
関連する密閉筐体では密閉度を向上させるため、一例として扉の開閉部等に密閉用パッキングを設けている。
【0004】
一方、関連する他の密閉筐体および筐体用気圧調整器の一例として、筐体の側面と日除け部材の側面同士をスペーサで結合し、そのスペーサに筐体の内部と外部とを連通させる空気孔を設け、これにより筐体の内部と外部とに圧力差が生じるのを防止する防雨筐体が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、他の一例として、防水ケースの内外に連通する通気路中に圧力調節弁を有する押さえ板を取り付け、その圧力調節弁を介して防水ケースの内外の圧力を調節する防水装置が開示されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、他の一例として、密閉筐体の内外を連通する小孔のまわりに膨張部を設け、ほこり等が小孔から密閉筐体の内部に侵入するのを防止する密閉筐体が開示されている(特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】実開平04―010375号公報(第5頁第6行〜第20行、第6頁第5行〜第11行、第2図および第3図)
【特許文献2】特開昭56−011007号公報(第3頁左下欄第9行〜右下欄第4行)
【特許文献3】特開2006−147767号公報(段落0019〜0022および図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
関連する筐体が直射日光を受け、筐体内の温度が上がると内部の空気が膨張する。そして、関連する筐体の密閉用パッキングに少しでも傷があると、その傷の部分より筐体の内部から外部へ空気が放出される。その後、にわか雨等が発生し、急激に筐体が冷やされると、筐体内部の空気が収縮し、パッキングの傷の部分より筐体外部の空気と共に雨水等が筐体内部に吸い込まれる。
【0009】
このように、筐体の密閉度が低下すると筐体外部の空気と共に雨水等が筐体内部に吸い込まれるという問題がある。
【0010】
一方、特許文献1にはスペーサの空気孔から雨水が浸入するのを防止する対策は記載されていない。
【0011】
また、特許文献2には押さえ板の圧力調節弁は水滴が防水ケース内部に浸入できない構造になっている旨の記述がなされているが、押さえ板の構造が複雑という欠点がある。
【0012】
また、特許文献3に記載されている膨張部は小孔周辺に溜まったほこり等を膨張部の傾斜面を利用して小孔から離散させることを目的としているが、この小孔に浸入しようとする雨水をこの傾斜面で阻止することはできない。なぜならば、この小孔は傾斜面の最上部に設けられており、最下部に設けられていないためである。
【0013】
そこで本発明の目的は、容易に筐体内外の気圧を等しくすることができ、かつ筐体外部の空気と共に雨水等が筐体内部に吸い込まれるのを防止することが可能な筐体用気圧調整器およびこれを有する筐体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために本発明による筐体用気圧調整器は、筐体内の気圧を調整する筐体用気圧調整器であって、前記筐体の底面に設けた貫通孔に嵌合され、前記筐体の内外を連通する空気孔と、前記空気孔を介して前記筐体の外部から内部へ水が浸入するのを防止する水浸入防止手段と、前記筐体に自調整器を固定するための固定手段とを含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明による筐体は前記筐体用気圧調整器を有している。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容易に筐体内外の気圧を等しくすることができ、かつ筐体外部の空気と共に雨水等が筐体内部に吸い込まれるのを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は本発明に係る筐体用気圧調整器およびこれを有する筐体の第1の実施形態の斜視図である。
【0018】
図1を参照すると、本発明に係る筐体1は、筐体本体11と、蓋部12と、蝶番13および14と、筐体用気圧調整器2とを含んで構成される。
【0019】
蓋部12は蝶番13および14を介して筐体本体11に開閉自在に取り付けられる。また、蓋部12を閉じると筐体1は密閉状態となる。
【0020】
筐体本体11の底面には貫通孔15が設けられ、この貫通孔15に筐体用気圧調整器2が嵌合される。
【0021】
図2は本発明に係る筐体用気圧調整器の第1の実施形態の構成図である。図2を参照すると、図の中央31に筐体用気圧調整器2の側面図が表示され、図の上方32に筐体用気圧調整器2の平面図が表示され、図の下方33に筐体用気圧調整器2の底面図が表示されている。
【0022】
筐体用気圧調整器2は円柱形状をなし、その側面の中間に円柱の径よりも大きな径を有する固定部21が設けられる。この固定部21は筐体用気圧調整器2を筐体本体11の底面に固定するためのストッパーとなる。
【0023】
図3は本発明に係る筐体用気圧調整器の第1の実施形態のA−A’断面図である。なお、図3において図2と同様の部分には同一番号を付し、その説明を省略する。以下、筐体用気圧調整器2の説明において図2および図3を参照する。
【0024】
筐体用気圧調整器2には円柱の中心部を上下方向に貫通する空気孔22が形成されている。
【0025】
ここで、筐体用気圧調整器2の固定部21よりも上方の部分を円柱2a,下方の部分を円柱2bと表示する。
【0026】
固定部21よりも下方の円柱2bには、水浸入防止部23が形成されている。この水浸入防止部23は円柱2bを逆漏斗状の皿部に形成したものである。
【0027】
次に、第1の実施形態の動作について説明する。密閉状態の筐体1に直射日光が照射されると、筐体1の内部温度が上昇する。筐体1の内部温度が上昇すると、筐体1の内部の空気は膨張するが、その空気は筐体用気圧調整器2の空気孔22を介して筐体1の外部へ放出される。これにより、筐体1内外の気圧を等しく保持することができる。
【0028】
一方、この内部温度が上昇した筐体1が雨等により急激に冷却された場合、筐体1内の空気が収縮し、筐体用気圧調整器2の空気孔22を介して外部の空気が筐体1の内部へ吸引される。このとき、外部の空気とともに外部の雨水等が筐体用気圧調整器2の空気孔22を介して筐体1の内部へ吸引される。
【0029】
これに対し、本発明では雨水等が空気孔22に浸入する手前に水浸入防止部23が設けられているため、真下から空気孔22方向へ上昇してくる雨水等を除き、雨水等が空気孔22に浸入するのを水浸入防止部23の壁部24により防止することが可能となる。
【0030】
以上説明したように本発明の第1の実施形態によれば、筐体本体11の底面に貫通孔15を1個設けるだけで筐体用気圧調整器2を筐体1に取り付けることが可能となる。また、筐体用気圧調整器2により容易に筐体1内外の気圧を等しくすることが可能となる。
【0031】
また、水浸入防止部23を設けることにより、外部の空気とともに雨水等が筐体1の内部へ吸引されるのを防止することが可能となる。また、水の浸入を防止する水浸入防止部23は逆漏斗状の皿部という構成であり、前述の特許文献2記載の押さえ板に比べ、構成が簡単なため筐体用気圧調整器2の価格を安価にすることが可能となる。
【0032】
また、雨水等の浸入を防止するために筐体1を完全密閉する必要がなくなるため、筐体1の価格を安価にすることが可能となる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図4は本発明に係る筐体用気圧調整器の第2の実施形態の構成図、図5は同第2の実施形態のA−A’断面図である。なお、筐体1の構成は図1と同様であるため、図示およびその説明を省略する。また、図5において図4と同様の部分には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0034】
第1の実施形態では雨水等が筐体1の内部へ吸引されるのを防止するために水浸入防止部23を設ける構成について説明した。しかし、この水浸入防止部23を設けても、真下から空気孔22方向へ上昇してくる雨水等の浸入を防ぐことは困難である。
【0035】
そこで、第2の実施形態では筐体1の内部へ雨水等が吸引されたとしても、その雨水等により内部に格納された精密機器が障害を受けることがなく、かつ吸引された雨水等を外部へ放出することが可能な構成を示す。
【0036】
図4および図5を参照すると、筐体用気圧調整器2の固定部21よりも上方の円柱2aに、筐体1の外部から水浸入防止部23および空気孔22を介して筐体1の内部へ浸入した水を貯える貯水部25が設けられる。この貯水部25は図4および図5に示すように漏斗状の皿部で構成される。
【0037】
次に、第2の実施形態の動作について説明する。密閉状態の筐体1に直射日光が照射されると、筐体1の内部温度が上昇する。筐体1の内部温度が上昇すると、筐体1の内部の空気は膨張するが、その空気は筐体用気圧調整器2の貯水部25、空気孔22および水浸入防止部23を介して筐体1の外部へ放出される。これにより、筐体1内外の気圧が等しく保持される。
【0038】
一方、この内部温度が上昇した筐体1が雨等により急激に冷却された場合、筐体1内の空気が収縮し、筐体用気圧調整器2の水浸入防止部23および空気孔22を介して外部の空気が筐体1の内部へ吸引される。このとき、外部の空気とともに外部の雨水等の一部が筐体用気圧調整器2の水浸入防止部23および空気孔22を介して貯水部25へ吸引される。このように、筐体1の内部へ吸引された雨水等は貯水部25に貯まるため、雨水等により筐体1内部の精密機器が障害を受けるのを防止することが可能となる。
【0039】
一方、密閉状態の筐体1に再び直射日光が照射されると、筐体1の内部温度が上昇する。筐体1の内部温度が上昇すると、筐体1の内部の空気は膨張するため、貯水部25へ貯まった雨水等は空気とともに空気孔22および水浸入防止部23を介して外部へ放出される。
【0040】
以上説明したように本発明の第2の実施形態によれば、雨水等が筐体1の内部へ吸引されたとしても、筐体1の内部の精密機器を保護することが可能となり、また、筐体1の内部へ吸引された雨水等を自動的に筐体1の外部へ放出することが可能となる。
【0041】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図6は本発明に係る筐体用気圧調整器の第3の実施形態の構成図、図7は同第3の実施形態のA−A’断面図である。なお、筐体1の構成は図1と同様であるため、図示およびその説明を省略する。また、図7において図6と同様の部分には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0042】
一例として、横殴りの雨を筐体1が受けた場合、水浸入防止部23の真下のみならず、他の方向からの雨水の圧力が空気孔22へ集中することが考えられる。第3の実施形態ではこの横殴りの雨等の防止策を示す。
【0043】
図6および図7を参照すると、水浸入防止部23には、筐体1の外部から内部方向の水の圧力を減衰させる水勢力減衰部26が設けられる。この水勢力減衰部26は水浸入防止部23の空気孔22の周囲に設けた突起である。
【0044】
次に、第3の実施形態の動作について説明する。仮に、水勢力減衰部26が設けられないとすると、横殴りの雨等は空気孔22へ集中する。しかし、第3の実施形態では水勢力減衰部26が設けられており、横殴りの雨等の一部は水勢力減衰部26に衝突するため空気孔22へ到達しない。これにより、空気孔22へ到達する横殴りの雨等の量を低減することが可能となる。
【0045】
以上説明したように本発明の第3の実施形態によれば、横殴りの雨等が筐体1の内部へ浸入するのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る筐体用気圧調整器およびこれを有する筐体の第1の実施形態の斜視図である。
【図2】本発明に係る筐体用気圧調整器の第1の実施形態の構成図である。
【図3】本発明に係る筐体用気圧調整器の第1の実施形態のA−A’断面図である。
【図4】本発明に係る筐体用気圧調整器の第2の実施形態の構成図である。
【図5】同第2の実施形態のA−A’断面図である。
【図6】本発明に係る筐体用気圧調整器の第3の実施形態の構成図である。
【図7】同第3の実施形態のA−A’断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 筐体
2 筐体用気圧調整器
2a,2b 円柱
11 筐体本体
12 蓋部
13,14 蝶番
15 貫通孔
21 固定部
22 空気孔
23 水浸入防止部
24 壁部
25 貯水部
26 水勢力減衰部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内の気圧を調整する筐体用気圧調整器であって、
前記筐体の底面に設けた貫通孔に嵌合され、
前記筐体の内外を連通する空気孔と、
前記空気孔を介して前記筐体の外部から内部へ水が浸入するのを防止する水浸入防止手段と、
前記筐体に自調整器を固定するための固定手段とを含むことを特徴とする筐体用気圧調整器。
【請求項2】
前記空気孔を介して前記筐体の外部から内部へ水が浸入した場合に、その水を貯える貯水手段を含むことを特徴とする請求項1記載の筐体用気圧調整器。
【請求項3】
前記水浸入防止手段は逆漏斗状の皿部で構成されることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の筐体用気圧調整器。
【請求項4】
前記貯水手段は漏斗状の皿部で構成されることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の筐体用気圧調整器。
【請求項5】
前記水浸入防止手段は、前記筐体の外部から内部方向の水の圧力を減衰させる水勢力減衰手段を含むことを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の筐体用気圧調整器。
【請求項6】
前記水勢力減衰手段は前記水浸入防止手段の前記空気孔の周囲に設けた突起であることを特徴とする請求項6記載の筐体用気圧調整器。
【請求項7】
請求項1から7いずれかに記載の筐体用気圧調整器を有することを特徴とする筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−21312(P2009−21312A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181580(P2007−181580)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(390000974)NECモバイリング株式会社 (138)
【Fターム(参考)】