説明

筒内面塗装用スプレー装置

【課題】 スプレーヘッドの移動速度を遅くしなくても、筒体内面を均一に全面塗装することが出来るスプレー装置を提供する。
【解決手段】 筒状の被塗装物Wを回転させる一方、その被塗装物の内部に塗装用スプレー装置Aの噴霧ヘッドを挿入し、そのヘッドを被塗装物の軸芯に沿って移動させて、前記被塗装物の内面を塗装する塗装用スプレー装置であって、液体供給口、空気供給口、及び液量調節手段等を備えた本体A1に、液路の周囲に空気路を同心円状に区画形成した管体A2を接続し、その管体の先部に、管体の軸芯と直交する方向に縦平吹きを行なう、ノズルとキャップが一体化したヘッドA3を取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小口径の筒体(被塗装物)の内面を塗装するのに使用するスプレー装置に関し、詳しくは筒体の内部にスプレー装置を挿入し、筒体を回転させる一方スプレー装置を該筒体の軸芯に沿って移動させ、それにより該筒体の内面を塗装するスプレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
筒体(被塗装物)の内面を塗装する方法として、筒体を軸芯方向に積み重ね、これを回転台に取り付け、且つ筒体の内部にスプレー装置のヘッドを挿入し、回転台を回転させながらスプレー装置のヘッドを筒体の軸芯に沿って移動させることで、前記筒体の内面に塗布パターンを螺旋状に施し、これにより筒体の内面全体を塗布するようにした方法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、上記方法に使用するスプレー装置のヘッドは、本体に接続された液体と空気の通路を備えた管体の先端に取り付けられ、且つヘッドに取り付けられるノズルは前記管体の軸線方向、及び軸線と直交する外周面に設けられている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ところで、特許文献2に記載の内面塗装機に取り付けられているノズルは、スプレーパターンが丸吹きのノズルで、その丸吹きのパターンが軸線方向及び軸線と直交する外周方向に噴霧されるものである。
【0005】
従って、特許文献2記載の内面塗装機を用いて特許文献1に記載された塗装方法を実施した場合、筒内面に所定幅の塗布帯が螺旋状に形成される。この塗布帯の螺旋ピッチを小さくすれば、塗布帯同士が重なり、螺旋模様とならずに全面の塗布が行なわれる。
しかし、上記したスプレーパターンは丸吹きであるため塗布帯の幅は狭く、これを重ねて塗る為には回転する筒体に対して、スプレー装置のヘッドを軸線方向に移動する速度を遅くなければならない。当然のことながら、移動速度を早くした場合は、塗装面が螺旋模様になる。
しかしながら、ヘッドの移動速度を遅くすれば、それだけ作業時間が長くなり、作業効率において問題を有する。
【0006】
又、特許文献2に記載されたノズルは、ヘッドと別体に構成されており、その為にヘッドにノズルを組み付けるためには締付リング(ナット様のリング)が必要となり、その結果、組み付け完成時の大きさは大きくなり、10mm前後の小形サイズに仕上げることは出来なかった。
それにより、特許文献2に記載された内面塗装機で塗装し得る被塗装物の口径には限度があり、小形サイズのノズルを備えたスプレー装置の開発が望まれている。
【0007】
【特許文献1】特開平4−4077号公報
【特許文献2】実開平6−85059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、スプレーヘッドの移動速度を遅くしなくても、筒体内面を均一に全面塗装することが出来るスプレー装置を提供することにある。
又、本発明の他の目的は、ノズルとキャップがヘッドに一体化した小形のヘッドを備えたスプレー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為に本発明の内面塗装用スプレー装置は、筒状の被塗装物を回転させる一方、その被塗装物の内部に塗装用スプレー装置のノズルを挿入し、そのノズルを被塗装物の軸芯に沿って移動させて、前記被塗装物の内面を塗装する塗装用スプレー装置であって、
液体供給口、空気供給口、及び液量調節手段等を備えた本体に、液路の周囲に空気路を同心円状に区画形成した管体が接続され、その管体の先部に、管体の軸芯と直交する方向に縦平吹きを行なう、ノズルとキャップが一体化したヘッドを取り付けていることを特徴とする(請求項1)。
液体供給口、空気供給口、及び液量調節手段等を備えた本体は、この種スプレー装置の本体として周知の構造を備えた汎用品でよく、液量調節手段の液ノズルとニードル弁は本体に内蔵する形態、或いは本体に接続した管体の先部に弁座を配置し、ニードル弁を前記管体の液路内に挿通する形態等、何れでもよい。
【0010】
上記手段によれば、管体の先端に接続したヘッドの軸芯と直交する方向に縦平吹きのノズルが形成されているため、被塗装物の内面にはヘッドの移動方向に縦長の平吹きパターンで塗布される。即ち、塗布帯は噴射口から所定の角度で上下方向に広がり縦長となり、ヘッドの移動速度を早くしても塗布帯の重なりを確保でき、塗布効率を高めることが出来る。又、上下方向に広角スプレーされる為、筒体にフランジが形成されている場合でも、そのフランジの外面も確実に塗装することが出来る。
そして、ヘッドにノズルとキャップを一体化したことで、ヘッドを小形か出来る。
【0011】
又、前記ヘッドは、縦平吹きの噴射口を、管体の軸芯と直交する側面の片面に形成(請求項2)、或いは管体の軸芯と直交する側面前後両面に形成(請求項3)するなど、何れでもよい。
特に、噴射口を前後両面に設けた場合は、更に効率良く塗装することができる。
【0012】
更に、前記ヘッドにおける液ノズルは、ヘッドに前記管体の液路と連通する孔を開設すると共に、その孔の開口端寄りは前記空気路と連通する拡大孔とし、前記液孔にパイプを挿入して該パイプの外側周囲に霧化用空気の噴出口を形成した構成とする(請求項4)。
上記手段によれば、液ノズルの外側に隔壁を介在して霧化用空気の噴出口を同心円状に加工する作業を安定して行なうことが出来る。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る筒内面塗装用スプレー装置は請求項1記載の構成により、ヘッドの移動速度を早くしても塗布帯の重なりを確保でき、塗布効率を高めることが出来る。又、上下方向に広角スプレーされる為、筒体にフランジが形成されている場合でも、そのフランジの外側底面(下面)も確実に塗装することが出来る。
そして、ヘッドにノズルとキャップを一体化したことで、ヘッドを小型化でき、従来のスプレー装置では対応できなかった小口径筒体の内面塗装も可能となった。
【0014】
又、請求項3に記載の構成により、短時間で効率良く内面塗装を行なうことが出来る。
更に、請求項4記載の構成により、極小な噴出口構造を安定して正確に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る筒内面塗装用スプレー装置の実施の一例を図面に基づいて説明する。
図1は、スプレー装置Aの外観を示し、図中、A1は液体供給口、空気供給口、及び液量調節手段等を備えた本体で、この本体A1の先部に、中心に液路を、その周囲に空気路を同心円状に区画形成した管体A2が接続され、その管体A2の先部に、管体A2の軸芯と直交する方向に縦平吹きを行なう噴出口を形成したヘッドA3が着脱自在に接続されて構成されている。
【0016】
本体A1は、この種スプレー装置で一般的に使用されている汎用品で、図2に示すように、金属材の角形ブロックの中心にニードル弁通孔1を開穿すると共に該通孔1の前部には本体の前部に凹設した凹部2と連通するノズル装着孔3を開口し、前記ニードル弁通孔1の後部は本体1後部に形成したピストン室4に開口する。
又、本体A1の上面には圧縮空気導入孔5と液体導入孔6が並列して穿設され、圧縮空気導入孔5は前記凹部2に連通開口され、ノズル装着孔3に螺合接続した液ノズル7の周囲に形成した通路8に圧縮空気が供給されるようになっている。
【0017】
液体導入孔6は内部に形成した通路を介して前記ノズル装着孔3の後面に連絡開口され、それにより液体導入孔6より導入供給された液体(塗料)が通路を介してノズル装着孔3に入り、液ノズル7の内面とニードル弁9との間の間隙aを通って液ノズル7の先端に至るように構成されている。
【0018】
ピストン室4にはピストン10が前後摺動自在に嵌装され、そのピストン10の外周突縁と該ピストン室4の後端開口部に被冠螺合した液量調節器11との間に亘ってスプリング12を弾圧収納し、ピストン10が常時前方に付勢されるようにする。
【0019】
前記ピストン10は底面中央にニードル弁9が前後摺動自在に嵌挿通され、そのニードル弁9の後端と前記ピストン10の後端に取り付けた蓋10’との間に小スプリング13が弾圧収納され、これによりニードル弁9が前方に付勢されている。尚、ニードル弁9の突部は、該ニードル弁9の先端が液ノズル7を閉鎖した状態においてピストン10の底面と一定の間隔を保持するように設定する。それにより、ピストン10の後方への移動とニードル弁9が後方へ摺動する動作との間に時間的なズレが生じるようにしてある。
【0020】
又、前記ピストン室4に収容されたピストン10を後方へ押しやる圧縮空気を該ピストン室4に導入する為の通路が前記凹部2とピストン室4の底面とに亘って連通開口されている。
【0021】
上記の如く構成した本体A1の液ノズル7の外周にアダプター14が締付リング18で嵌合定着され、そのアダプター14先端にブッシュ15を介して管体A2が分離可能に連結されている。
アダプター14は、液ノズル7の周囲に形成した通路8に導入された圧縮空気を、ブッシュ15に接続固定された管体A2の空気路に案内する連絡路16が周方向に間隔をおいて開穿され、その連絡路16を通ってブッシュ15の螺合空間に導入された圧縮空気は該ブッシュ15に開穿した通路17を通って管体A2の空気路に導入される。
【0022】
上記管体A2は、液路を区画する内管19と、その内管19の外側に所定に間隔をおいて環状の空気路を区画する外管20よりなる二重管構造で構成され、内管19の後端は前記ブッシュ15を貫通して僅か後方に突出されると共に、その突出端部の外周にOリング21が取り付けられ、それによりアダプター14に液ノズル7の先端が嵌入する中心孔22に対して前記内管19が気密性を確保して接続されるように構成されている。
又、管体A2の先端には、中心に液用孔、その周囲に空気孔が開穿されたブッシュ23が螺合接続され、このブッシュ23にヘッドA3が着脱可能に接続されている。
尚、管体A2の口径は、例えば、内管19の内径:1.1mm,外径:1.5mm、外管20の内径:3.0mm,外径:6.0mmである。
【0023】
ヘッドA3は、図3に示すように略直方体形状をした金属製のブロック体の一半部に前記ブッシュ23が螺着嵌合される凹所24が凹設され、その凹所24の底部中心からブロック体の先端側に向けて通孔25を開設すると共に、その通孔25の先端と略T字状に交差する通孔26がブロック体の側面から開設されている。そして、ブロック体の側面に開口端を有する通孔26は、交差する通孔25の内径より僅か大径とし、通孔25と同径の内径を有するパイプ27が該通孔26に挿入されて液の噴出口が形成されている。
又、前記通孔26の開口端寄りは更に大径となる段付の孔26’に形成され、その大径の孔26’部分と前記凹所24の底部とに亘って通孔28が連通開設されている。これにより通孔26に挿入したパイプ27の外側に環状の空気噴出口が形成される。よって、前記パイプ27からなる液噴出口と、パイプ27の外側に段付の孔26’からなる霧化用の空気噴出口とで液体の霧化が行なわれる。
【0024】
前記通孔26の開口端は、ブロック体の側面を略台形状に切欠した底部に開口し、その通孔26を挟む略台形状に切欠した両側の斜面には、噴出口からの丸吹きのスプレーパターンを、左右両側から空気を噴射して縦平吹きのスプレーパターンにする平吹き用空気噴出口29,29’が開設されている。
【0025】
上記平吹き用空気噴出口29,29’は、前記凹所24の底面からブロック体の先端に向けて通路30,30’が穿設され、その通路30,30’に対して通孔26の開口面側から連絡路31,31’が連通開設され、この連絡路31,31’に対して前記斜面から平吹き用空気噴出口29,29’が連絡開設されている。尚、連絡路31,31’の開口端は、メクラ蓋32,32’で閉鎖する。又、本実施例におけるヘッドA3のサイズは、8mm×8mm×10mmである。
【0026】
図5は、前示実施例におけるニードル弁を延長して管体A2の内管19内に挿通し、ブッシュ23に取り付けた弁座33部分で、液量の調整が行なわれるようにしたものである。
この構成とした場合は、液体をヘッド部まで空気に触れずに案内できる。それにより、内管19内で液体が固まるのを防止できる利点を有する。尚、前示実施例で示したと同じ部材は、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0027】
又、前示実施例はヘッドA3の外周面の一面に噴霧機構を形成した1頭平吹きタイプであるが、前記噴霧機構をヘッドA3の対応する前後面に形成した2頭平吹きタイプとすることも可能である。尚、その場合は、液体の噴出口を形成するパイプ27は前後面に亘って貫通配置し、平吹き用空気噴出口も連絡路31,31’に連通させて前後に形成する。
【0028】
上記の構成としたスプレー装置は、図5に示すように、フランジ付の円筒体を軸方向に積み重ねた被塗装物Wの軸線にそってスプレー装置を挿入し、被塗装物Wを回転し、スプレー装置を軸腺方向に移動することで、該スプレー装置による縦平吹きのスプレーパターンで被塗装物Wの内面及びフランジの外面も効率よく塗装することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る筒内面塗装用スプレー装置の実施の一例を示す正面図。
【図2】同拡大断面図。
【図3】ヘッド部の拡大斜視図。
【図4】図3の(4)−(4)線に沿える拡大断面図。
【図5】液量調節部をヘッド部に備えた変形例を示す拡大断面図
【図6】本装置による塗装状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0030】
A…スプレー装置 A1…本体
A2…管体 A3…ヘッド
19…内管 20…外管
26…通孔 27…パイプ
29,29’…平吹き用空気噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の被塗装物を回転させる一方、その被塗装物の内部に塗装用スプレー装置の噴霧ヘッドを挿入し、そのヘッドを被塗装物の軸芯に沿って移動させて、前記被塗装物の内面を塗装する塗装用スプレー装置であって、
液体供給口、空気供給口、及び液量調節手段等を備えた本体に、液路の周囲に空気路を同心円状に区画形成した管体が接続され、その管体の先部に、管体の軸芯と直交する方向に縦平吹きを行なう、ノズルとキャップが一体化したヘッドが取り付けられていることを特徴とする筒内面塗装用スプレー装置。
【請求項2】
前記ヘッドは、縦平吹きの噴射口が、管体の軸芯と直交する片面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の筒内面塗装用スプレー装置。
【請求項3】
前記ヘッドは、縦平吹きの噴射口が、管体の軸芯と直交する前後両面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の筒内面塗装用スプレー装置。
【請求項4】
前記ヘッドにおける液ノズルは、ヘッドに前記管体の液路と連通する孔を開設すると共に、その孔の開口端寄りは前記空気路と連通する拡大孔とし、前記液孔にパイプを挿入して該パイプの外側周囲に霧化用空気の噴出口を形成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の筒内面塗装用スプレー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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