説明

筒状体保持装置

【課題】 簡単な構造でコストの増大を抑制でき、チャック体と駆動軸との間にスリップの発生を無くし、筒状体を保持した状態のコアの偏心を抑え、コアを安定して確実に保持することができる筒状体保持装置を提供する。
【解決手段】 筒状体3内部の中空部2に挿嵌され、筒状体3に配置される中軸4を有する保持体5と、中軸4の外周部4aに設けられる円筒状ゴム体6とを備え、且つ、円筒状ゴム体6とを押圧する押圧部7と、押圧部7を変位させる駆動軸8とを有する押圧手段9を備え、圧搾空気により押圧手段9を動作させて円筒状ゴム体6を円周方向に膨出させることで筒状体3を内側より保持する筒状体保持装置1において、中軸4は、円筒状ゴム体6を中軸4に沿ってガイドするガイドキー12が設けられ、円筒状ゴム体6は、内周部6cにガイドキー12と対応するキー溝6dが設けられたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブの巻取り/繰り出し用の中空軸や搬送用の中空軸等を保持するための筒状体保持装置に関し、特に、筒状体の内部に保持体を挿入して該筒状体を保持するようにした筒状体保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状の中空部を有する筒状体(中空軸)を保持するために、筒状体の中空部を内側から把持するようにした筒状体保持装置が用いられている。
【0003】
例えば、従来技術の一例として、図4,5に示すように、チャック体(ジョー)106を筒状体3の中空部2に挿嵌して、チャック体106を、筒状体3の中空部2内で円周方向外側に向かい放射状に開放することで、筒状体3を内側から把持するようにした筒状体保持装置101が知られている。
【0004】
筒状体保持装置101は、具体的には、図6に示すように、チャック体106を動作する駆動軸108の先端部108aをテーパ形状として、このテーパ形状に沿う摺動面106aを有するチャック体106を、テーパ形状の先端部の外周に沿って複数個配置して、ピストン191により駆動軸108を前後方向(駆動軸の軸心に沿った方向)に動作させることで、チャック体106を円周方向外側に向かい放射状に拡開縮開するようにされている。
【0005】
また、その他の例として、前述したチャック体の換わりに、空気圧(圧搾空気)により内部空間が膨張して外周方向に向かい膨出するようにした膨張円筒を用いて、筒状体の内部を保持するようにした筒状体保持装置が提案されている(特許文献1を参照)。
【0006】
さらに、前述した圧搾空気の変わりに、ネジ送り方式によりゴム弾性体に軸心方向に沿って押圧して、前記ゴム弾性体の外周部を外側(半径方向)へ膨出させるようにした筒状体保持装置が提案されている(特許文献2を参照)。
【特許文献1】実願昭49−100355号のマイクロフィルム
【特許文献2】実願昭58−91076号のマイクロフィルム
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方式では、以下のような問題点が生じている。
例えば、従来例の方式では、図示しない駆動軸の外周面にチャック体106の内周面が密着し、その外周面と内周面との摩擦力にてチャック体106の駆動軸は固着する。(摩擦力)<(チャック体106と筒状体3との固着摩擦力)となる可能性があるため、高張力な巻取り/繰り出し用のチャックとして使用する場合、チャック体106と駆動軸との間にスリップが発生するという問題がある。
【0008】
また、チャック体106は半径方向に摺動ガイドするホルダ(図示省略)に摺動可能に嵌め込まれており、該ホルダはシリンダ本体に固定されているため、チャック体106と筒状体3との間の摩擦力が保持される範囲においてはトルク的なスリップは発生しない。しかしながら、チャック体106、ホルダ及びテーパ形状の駆動軸108は、それぞれ複雑な形状を有し且つ部品点数も多いため、消耗部品として交換する場合に加工コストが増大するという問題点がある。
【0009】
さらに、特許文献1に記載の方式によれば、構造上、膨張円筒による筒状体の支持が不安定なものとなるという問題があった。
【0010】
また、特許文献2に記載の方式によれば、手動作業によると安定した保持力を再現することが難しいという問題があった。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で構成部品を少なくすることでコストの増大を抑制でき、チャック体と駆動軸との間にスリップの発生を無くし、さらに筒状体を保持した状態のコアの偏心を極力抑えることができ、コアを安定して確実に保持することができる筒状体保持装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明に係る筒状体保持装置の構成は、次の通りである。
請求項1に記載した筒状体保持装置は、筒状体内部の中空部に挿嵌され、該筒状体の軸心方向に沿って配置される中軸を有する保持体と、前記中軸の外周部に該中軸の軸心方向に沿って配置される円筒状ゴム体とを備え、且つ、前記円筒状ゴム体と当接して押圧する押圧部と、前記中軸内部で該中軸の軸心方向に沿って変位可能で前記押圧部を前記中軸の軸心方向に沿って変位させる駆動軸とを有する押圧手段を備え、圧搾空気により前記押圧手段を動作させて前記円筒状ゴム体を円周方向に膨出させることで前記筒状体を中空部の内周面に沿って内側より保持する筒状体保持装置において、前記中軸は、前記円筒状ゴム体を該中軸の軸心方向に沿ってガイドする第1のガイド部が設けられ、前記円筒状ゴム体は、前記中軸の外周部と対向する内周部に、前記第1のガイド部と対応する第2のガイド部が設けられたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項2に記載した筒状体保持装置は、請求項1に記載した構成に加えて、前記押圧部の構成として、前記第1のガイド部と対応する第3のガイド部を設けたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載した筒状体保持装置は、請求項1または2に記載した構成に加えて、前記中軸の構成として、前記駆動軸の外周部と対向する内周部に、前記駆動軸を該中軸の軸心方向に沿ってガイドする第4のガイド部を設け、前記駆動軸の構成として、前記中軸の内周部と対応する外周部に、前記第4のガイド部と対応する第5のガイド部を設けたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に記載した筒状体保持装置は、請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載した構成に加えて、前記第1のガイド部を複数箇所に設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1〜4に記載した筒状体保持装置によれば、筒状体内部の中空部に挿嵌され、該筒状体の軸心方向に沿って配置される中軸の構成として、該中軸の外周部に該中軸の軸心方向に沿って配置される円筒状ゴム体を該中軸の軸心方向に沿ってガイドする第1のガイド部を設け、前記円筒状ゴム体の構成として、前記中軸の外周部と対向する内周部に、前記第1のガイド部と対応する第2のガイド部を設けことで、簡単な構造で構成部品を少なくすることでコストの増大を抑制でき、円筒状ゴム体(チャック体)と駆動軸との間にスリップの発生を無くし、さらに筒状体を保持した状態のコアの偏心を極力抑えることができ、コアを安定して確実に保持することができるという優れた効果を奏し得る。
【0017】
また、請求項1〜4に記載の発明で得られる上記共通の効果に加え、請求項2に記載の発明によれば次の効果を得ることができる。
【0018】
すなわち、請求項2に記載した発明によれば、前記押圧部の構成として、前記第1のガイド部と対応する第3のガイド部を設けることで、押圧状態の押圧部を第3のガイド部により、円周方向に変位することなくさらに確実に円筒状ゴム体を固定できる。
【0019】
請求項3に記載した発明によれば、前記中軸の構成として、前記駆動軸の外周部と対向する内周部に、前記駆動軸を該中軸の軸心方向に沿ってガイドする第4のガイド部を設け、前記駆動軸の構成として、前記中軸の内周部と対応する外周部に、前記第4のガイド部と対応する第5のガイド部を設けたことで、駆動軸を動作させる際にも、前記中軸と駆動軸とが円周方向(回転方向)に変位することなく、確実に軸心に沿った方向のみ動作させることができるので、円筒状ゴム体を安定した状態で押圧することができる。
【0020】
請求項4に記載した発明によれば、前記第1のガイド部を複数箇所に設けたことで、さらに確実に円周方向に変位することなく円筒状ゴム体を固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図3は発明を実施する形態の一例であって、図1は本発明の実施形態に係る筒状体保持装置の全体構成を示す外観図、図2は前記筒状体保持装置の構成を示す側面断面図、図3は前記筒状体保持装置により軸筒体を保持する状態を示す側面断面図である。
【0022】
本実施形態の筒状体保持装置1は、図1,図2に示すように、内部に中空部2を有する筒状体3を保持するものであって、その中空部2に挿嵌され、該筒状体の軸心方向に沿って配置される中軸4を有する保持体5と、中軸4の外周部に該中軸4の軸心方向に沿って配置される円筒状ゴム体6とを備え、且つ、円筒状ゴム体6と当接して押圧する押圧部7と、中軸4内部で該中軸4の軸心方向に沿って変位可能で押圧部7を中軸4の軸心方向に沿って変位させる駆動軸8とを有する押圧手段9を備えたものである。
【0023】
この筒状体保持装置1は、図3に示すように、圧搾空気により押圧手段9を動作させて円筒状ゴム体6を筒状体の中空部2で円周方向に膨出させることで、筒状体3をその内周面3aに沿って内側より保持するものである。
【0024】
保持体5は、図1に示すように、円柱状を呈し、一側面5a側に開口部5a1が形成され、該保持体5の内部には円筒状の中空部51が形成されている。この保持体5は、エアシリンダとしての機能を備えている。
【0025】
保持体5の一側面5aには、前述した開口部5a1を塞ぐように嵌合されるベース体11が設けられている。一方、保持体5の他側面5bには、略円柱状を呈する中軸4が該保持体5と軸心を同一にして一体的に突設されている。
【0026】
保持体5の外周部5cには、凹部5c1が形成され、該凹部5c1内に空気注入用プラグ52が外周部5cから突出しないように設けられている。本実施形態において、空気注入用プラグ52は、外周部5cの円周2等配の位置で2箇所に設けられている。
【0027】
保持体5の他側面5b側の内部には、空気注入用プラグ52に連通すると共に中空部51に連通する空気通路53が形成されている。
【0028】
中軸4は、図2に示すように、その外周部4aが円筒状ゴム体6及び押圧部7が係合可能に形成され、保持体5の他側面5bから立上がる基部付近には、円筒状ゴム体6の軸心方向の位置決めをするとともに、該円筒状ゴム体6の一端部6aの一部が嵌め込まれる軸心方向に沿って他側面5b方向に窪んだ位置決め部41が形成されている。
【0029】
外周部4aには、円筒状ゴム体6及び押圧部7の円周方向に沿った動きを規制するとともに該中軸4の軸心方向に沿ってガイドするためのガイドキー(第1のガイド部)12が設けられている。
【0030】
ガイドキー12は、通常状態(円筒状ゴム体6を押圧手段9により押圧しない状態)で中軸4上に配置される円筒状ゴム体6及び押圧部7に係合可能な長さで形成されている。本実施形態において、ガイドキー12は、外周部4aの円周3等配の位置で3箇所に設けられ、それぞれ固定ネジ12aにより中軸4に形成されたキー溝4bに螺着されている。
【0031】
また、中軸4には、その先端側から該中軸4の内部を通って保持体5の中空部51に貫通して、駆動軸8が軸心方向に沿って摺動可能なガイド孔42が形成されている。ガイド孔42の内壁部42aには、駆動軸8を該中軸4の軸心方向にガイドするためのガイドキー(第5のガイド部)13と対応するキー溝(第4のガイド部)42bが形成されている。
【0032】
円筒状ゴム体6は、ウレタンゴムにより形成され、その内径寸法を中軸4の外径寸法と略同一寸法とし、その内周部6cにはガイドキー12と対応するキー溝(第2のガイド部)6dが該円筒状ゴム体6の軸心方向に沿って形成されている。本実施形態において、キー溝6dは、3箇所のガイドキー12に対応して内周部6cの円周3等配の位置で3箇所に形成されている。
【0033】
ここで、押圧手段9について図面を参照して詳細に説明する。
押圧手段9は、詳しくは、図2に示すように、前述した押圧部7と駆動軸8に加え、該駆動軸8を駆動(軸心方向に沿って押し引き)するピストン91、該駆動軸8の引き側の位置を規制するストッパ92、及びピストン91の動きを補助する圧縮コイルばね93等により構成されている。
【0034】
押圧部7は、先端部7aが筒状体3の中空部2に装着し易いように先細り状に面取りされ、円筒状ゴム体6と当接する一端部7bには、中軸4が係合可能な開口部7b1が開口形成されるとともに、該円筒状ゴム体6の他端部6bの一部が嵌め込まれる軸心方向に沿って先端方向に窪んだ凹状の位置決め部71が形成されている。
【0035】
開口部7b1は、その内径寸法を中軸4の外径寸法と略同一寸法とし、開口部7b1から連続して窪んで形成される内周部7cには、ガイドキー12と対応するキー溝(第3のガイド部)7dが押圧部7の軸心方向に沿って形成されている。本実施形態において、キー溝7dは、3箇所のガイドキー12に対応して内周部7cの円周3等配の位置で3箇所に形成されている。尚、内周部7cは、その内部で中軸4の先端部がストローク可能な範囲で形成されている。
【0036】
押圧部7の先端部7aの中央部には、駆動軸8に連結するための取り付け穴7a1が形成され、固定ナット72により押圧部7が駆動軸8に一体的に連結されるようになっている。
【0037】
駆動軸8は、保持体5の中空部51から中軸4を貫通して、その軸心方向に沿って摺動自在に配置されるとともに、中空部51に配置されるピストン91と固定リング81,82により一体的に構成されている。
【0038】
中軸4のガイド孔42と対向する駆動軸8の外周部には、Oリング溝が形成されてOリング83が組込まれている。このOリング83によりガイド孔42と駆動軸8との境界部の密閉性を高めている。
【0039】
駆動軸8の一端部8bには、保持体5の一側面5a側に取り付けられストッパ92と摺動自在に係合される係合穴8b1が軸心方向に沿って該駆動軸8がストロークする範囲を許容するように形成されている。この係合穴8b1と連続して、軸心方向に沿って所定の深さで空気通路8b2が形成されている。さらに、この空気通路8b2と空気導入空間91b1とを連通する連通孔8b3が形成されている。
【0040】
ここで、「所定の深さ」とは、駆動軸8にピストン91が組込まれた状態で、少なくとも該駆動軸8の半径方向にピストン91の空気導入空間91b1が位置する深さとする。
【0041】
駆動軸8の先端部8aには、押圧部7の取り付け穴7a1に組込まれ、固定ナット72により締結されるネジ部8a1が形成されている。尚、その先端部に押圧部7を締結固定後、平面視で固定ナット72とネジ部8a1との境界部にタップ加工を施して、そこに止めねじ(セットボルト)73を螺着して固定ナット72の回り止め処理が施されている。
【0042】
ピストン91は、円柱状を呈し、中空部51の内壁部51aと対向する外周部91cには、Oリング溝が形成されてOリング91rが組込まれている。
【0043】
ピストン91の中空部51の底面51bと対向する一側面91bには、底面51bに形成された空気通路53の開口穴53aを含む範囲で凹状に窪んだ空気導入空間91b1が形成されている。一方、ピストン91の他側面91aには、圧縮コイルばね93を位置決めするばね座部91a1が凹状に形成されている。
【0044】
ピストン91の中央部には、軸心方向に沿って駆動軸8が摺動可能に貫装される取り付け穴91dが形成されている。この取り付け穴91dと対向する駆動軸8の外周部には、Oリング溝が形成されてOリング84が組込まれている。このOリング84により取り付け穴91dと駆動軸8との境界部の密閉性を高めている。
【0045】
ストッパ92は、保持体5の一側面5aに取り付けられるベース体11の中央部に設けられ、該ベース体11と嵌合する嵌合部92aと、駆動軸8の一端部8bに形成された係合穴8b1に係合される係合部92bとを有している。ストッパ92の中央部には、空気導入口92c1が形成されるとともに、軸心方向に沿って空気を導入するための空気通路92cが貫通形成されている。空気導入口92c1には、空気注入用プラグ92dが取り付けられている。
【0046】
ベース体11の取り付け穴11bと対向する嵌合部92aの外周部には、Oリング溝が形成されてOリング92r1が組込まれて取り付け穴11bと嵌合部92aとの境界部の密閉性を高めている。
【0047】
また、駆動軸8の係合穴8b1と対向する係合部92bの外周部には、Oリング溝が形成されてOリング92r2が組込まれて係合穴8b1と駆動軸8との境界部の密閉性を高めている。
【0048】
ベース体11は、取り付けボルト14により保持体5に取り付けられている。
ベース体11の保持体5内部の中空部51に配置される一側面11aには、ピストン91のばね座部91a1と対向する位置に、圧縮コイルばね93を位置決めするばね座部11a1が凹状に形成されている。
【0049】
次に、本実施形態に係る筒状体保持装置1の作用について説明する。
まず、筒状体保持装置1により筒状体3を保持する場合は、図2に示すように、筒状体3の中空部2に保持体5の中軸4を配置する。
そして、保持体5に設けられた空気注入用プラグ52より圧搾空気を注入する。
【0050】
注入された空気は、図2に示すように、空気通路53を通ってピストン91の空気導入空間91b1に入り、図3に示すように、圧縮コイルばね93のばね力を抗して、ピストン91をベース体11側へ押し進める方向に作用する。
【0051】
そして、ピストン91が移動することでピストン91の一側面91b全面に渡り空気の圧力がかかると、さらに大きな力がピストン91をベース体11側へ押し進める方向に作用する。
【0052】
押圧部7は、駆動軸8を介してピストン91と一体的に構成されているので、円筒状ゴム体6に向かって変位する。ピストン91がベース体11側へ移動するに連れて、押圧部7は、円筒状ゴム体6に当接し、さらに円筒状ゴム体6を押圧する状態となる。
【0053】
この時、駆動軸8は、ガイドキー13によって円周方向に回転変位することなく、中軸4の軸心方向に沿って確実に移動できる。また、押圧部は、ガイドキー12によって円周方向に回転変位することなく、中軸4の軸心方向に沿って確実に移動できる。こうして、押圧部7により円筒体ゴム体6を安定した動作で押圧することができる。
【0054】
一方、円筒状ゴム体6は、中軸4の位置決め部41と押圧部7の位置決め部71とにより挟み込まれた状態となり、押圧部7によって平行で且つ均一に押圧されて軸心方向に沿って圧縮される。
【0055】
この時、円筒状ゴム体6は、内径側が中軸4の外径に嵌合されているので内径側への変形は無く、且つ、円筒状ゴム体6の体積は変化しないので、軸心方向で圧縮された容量だけ外径方向に膨らむ。すなわち、前記円筒状ゴム体6は、図3に示すように、軸心方向の両端部から漸次膨らんで、圧力が最も掛かる軸心方向中央部が最も外側に膨出した略太鼓形状に変形する。
【0056】
尚、円筒状ゴム体6は、均一のゴム材により形成され、内径及び外径を同軸上に形成しているので、軸心方向に対して垂直な任意の同一平面上の内径と外径とは常に同心円であり、円周方向外側に向かい均一に膨張する。
【0057】
従って、筒状体3は、該円筒状ゴム体6の外周部と筒状体3の内周面3aとが均等に当接し圧着されることで、筒状体3の軸心が円筒状ゴム体6の軸心、すなわち中軸4の軸心と一致した状態となり、偏心することなく中軸4と一体的に構成された保持体5により確実に保持される。
【0058】
次に、筒状体保持装置1により筒状体3の保持状態を開放する場合は、空気注入用プラグ52にエア抜き用治具(図示省略)を装着して、保持体5内部の中空部51より空気を排気する。
【0059】
これにより、保持体5内部の圧力が低下するとともに、ピストン91の底面51bに掛かる圧力が低下する。圧縮コイルばね93のばね力と円筒状ゴム体6の弾性力とが空気圧に勝ると、円筒状ゴム体6の長さは軸心方向に沿って復元するとともに、外径は圧縮された状態から弾性力により復元する。すなわち、円筒状ゴム体6の外径が小さくなるので、筒状体3の内周壁から離れて該筒状体3の保持状態が開放される。
【0060】
以上のように構成したので、本実施形態の筒状体保持装置1によれば、ガイドキー12,13を設けたことで、ピストン91を動作させて押圧部7を変位させる際に、中軸4と駆動軸8及び押圧部7との回転方向への変位を防止できるので、円筒状ゴム体6の押圧による中軸4外周面と円筒状ゴム体6内周面との摩擦力だけでなく、ガイド部(ガイドキー12,13等)の剪断抵抗により高張力な巻取り/繰り出し用のチャックとして利用できる。
【0061】
従って、本実施形態によれば、簡単な構成で、円筒状ゴム体6と筒状体3の偏心を極力抑えることができ、しかも、円筒状ゴム体6と中軸4とが円筒方向でずれること無く筒状体3を確実に保持することができる。
【0062】
尚、本実施形態では、ガイドキー12,13およびキー溝6d、7d、42dよりガイド部を構成しているが、本願発明は、本実施形態の態様に限定されるものではなく、ガイドキー及びキー溝の構成は、摺動変位する構成部品が相対的に作用するように適宜に構成されるものであれば良い。
【0063】
さらに、本実施形態では、ガイドキー12を中軸4の外周部4aの3箇所に設け、ガイドキー13を駆動軸8の外周部8cの2箇所に設けているが、本発明は、ガイドキーの設置する個数を限定するものではなく適宜に設けたものであって良い。
【0064】
また、本実施形態によれば、中軸4の円筒状ゴム体6の一端部6aと当接する部分に凹状の位置決め部41を設け、押圧部7の円筒状ゴム体6の他端部6bと当接する部分に凹状の位置決め部71を設けたことで、円筒状ゴム体6を容易に且つ確実に位置決め保持することができ、円筒状ゴム体6を押圧部7により押圧する際に、該円筒状ゴム体6を均等に安定して押圧することができる。
【0065】
さらに、本実施形態によれば、ピストン91を動作させるための圧搾空気を導入するための空気導入部として、保持体5の外周部5cとベース体11に取り付けられたストッパ92との2箇所にそれぞれ空気注入用プラグ52,92dを設けたので、装置の設置状況や円筒体の取り付け状況に応じた対応が可能となる。
【0066】
また、本実施形態によれば、摺動する構成要素およびそれに対応する構成要素、すなわちピストン91、ストッパ92、駆動軸8、保持体5及び中軸4と対応する境界部に、Oリング83,84,91r、92r1,92r2を組み込むことで、保持体5内部の気密性を高めているので、圧搾空気が洩れることなく確実にピストン91を作動することができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、円筒状ゴム体6を中軸4の外周部の外径寸法と略同等の寸法で形成して嵌合により取り付けているので、該円筒状ゴム体6が損傷した場合であっても、容易に着脱交換することができるので、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0068】
尚、本実施形態では、円筒状ゴム体6の材質にウレタンゴムを使用しているが、本発明は、円筒状ゴム体を形成するゴム材の種類に限定されるものではなく、例えば、シリコンゴムや天然ゴム等を使用するものであってもよく、圧縮変形性、復元性のよいゴム材が望ましい。
【0069】
また、本実施形態の円筒状ゴム体6は、単一のゴム材で構成しているが、本発明は、柔軟な弾性体であって復元力を有するものであれば、円筒状ゴム体の構成や材質に限定されるものではなく、例えば、複数のゴム材を組み合わせたものや、また、中軸8の外周部との接触面に自己潤滑性を有する合成樹脂をコーティングして、伸縮時の変位を容易にするようにしたものであっても良い。
【0070】
さらに、本発明の筒状体保持装置は、上述した図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、ガイド部の構成や設置位置など種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態に係る筒状体保持装置の全体構成を示す外観図である。
【図2】前記筒状体保持装置の構成を示す側面断面図である。
【図3】前記筒状体保持装置により軸筒体を保持した状態を示す側面断面図である。
【図4】従来の筒状体保持装置の構成の一例を示す側面図である。
【図5】前記筒状体保持装置の構成を示す正面図である。
【図6】前記筒状体保持装置の構成を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 筒状体保持装置
2 中空部
3 筒状体
4 中軸
5 保持体
6 円筒状ゴム体
6d キー溝(第2のガイド部)
7 押圧部
7d キー溝(第3のガイド部)
8 駆動軸
8b2 空気通路
8b3 連通孔
9 押圧手段
11 ベース体
12 ガイドキー(第1のガイド部)
13 ガイドキー(第5のガイド部)
41,71 位置決め部
42b キー溝(第4のガイド部)
51 中空部
52、92d 空気注入用プラグ
53,92c 空気通路
53a 開口穴
72 固定ナット
81,82 固定リング
83,84,91r,92r1,92r2 Oリング
91 ピストン
91b1 空気導入空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体内部の中空部に挿嵌され、該筒状体の軸心方向に沿って配置される中軸を有する保持体と、前記中軸の外周部に該中軸の軸心方向に沿って配置される円筒状ゴム体とを備え、且つ、前記円筒状ゴム体と当接して押圧する押圧部と、前記中軸内部で該中軸の軸心方向に沿って変位可能で前記押圧部を前記中軸の軸心方向に沿って変位させる駆動軸とを有する押圧手段を備え、
圧搾空気により前記押圧手段を動作させて前記円筒状ゴム体を円周方向に膨出させることで前記筒状体を中空部の内周面に沿って内側より保持する筒状体保持装置において、
前記中軸は、前記円筒状ゴム体を該中軸の軸心方向に沿ってガイドする第1のガイド部が設けられ、
前記円筒状ゴム体は、前記中軸の外周部と対向する内周部に、前記第1のガイド部と対応する第2のガイド部が設けられたことを特徴とする筒状体保持装置。
【請求項2】
前記押圧部は、前記第1のガイド部と対応する第3のガイド部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の筒状体保持装置。
【請求項3】
前記中軸は、前記駆動軸の外周部と対向する内周部に、前記駆動軸を該中軸の軸心方向に沿ってガイドする第4のガイド部が設けられ、
前記駆動軸は、前記中軸の内周部と対応する外周部に、前記第4のガイド部と対応する第5のガイド部が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の筒状体保持装置。
【請求項4】
前記第1のガイド部は、複数箇所に設けたことを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の筒状体保持装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−347726(P2006−347726A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178020(P2005−178020)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(591272343)株式会社三橋製作所 (13)
【Fターム(参考)】