説明

筒状金型清掃器具

【課題】
錠剤成形装置について、円形断面を持つ筒状金型内壁の付着物を除去する清掃器具であって、清掃効果が高く、作業性がよく、狭い機械内部においても安全に且つ確実に清掃でき、大幅な設備改造などを必要としない省スペース型の清掃器具を提供する。

【解決手段】
駆動力を供給する動力部(3)と、被清掃物をブラッシングするブラシヘッド部(1)と、前記駆動力を前記ブラシヘッド部に伝達する駆動伝達部(2)からなることを特徴とする金型清掃器具であって、前記ブラシヘッド部が着脱自在で、前記駆動伝達部が屈撓自在であることを特徴とする筒状金型清掃器具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や健康食品などの製造工程で使用する錠剤成形機において、杵臼構造金型などの内壁清掃に用いる筒状金型清掃器具に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や健康食品などで用いられる経口剤形の一つである錠剤は、粉末状態にした剤を、錠剤成形機を用いて打圧成形して製造する。この錠剤成形機に組み込まれる金型は、杵臼構造タイプが主流で、製造工程では製品の品種切替ごとに当該金型の内壁に付着(残留)した粉末原料を除去することが必要である。従来は、作業者が金型の内壁にワイヤブラシを差し込み、上下方向に擦ることで付着物を掻き落とし、その後ウエス等で金型内壁を拭いて仕上げていた。
【0003】
しかし作業者によるブラッシング清掃は、上下方向の単純往復動作であるため、付着物を完全に掻き落とすことが難しく、金型の内壁の上下方向に筋状に付着物が残留することがあった。また錠剤成形機には1台あたり約100個の成形金型が組み込まれており、すべての金型をブラッシングし、残留物チェックまで行なう作業は、装置稼働時間のロスや作業工数過多などの問題を引き起こしていた。更に機械内部はたいへん狭いため、清掃の作業性が非常に悪く、作業者の負担が大きかった。そこで、これらの問題を解決すべく清掃器具を求め、装置メーカーや技術文献等を調査したが、適当な清掃装置を見つけるに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするもので、以下の課題解決を目指した。第1の課題は清掃効果の高い清掃器具の開発で、金型内壁の残留付着物を極少化できること。第2に、作業者の作業性を向上させ、狭い装置(錠剤成形機)内部においても安全、且つ確実に清掃できること。第3に、清掃時間を短縮し、生産性向上につながること。第4に、大幅な設備改造などを必要としない省スペース型で、シンプルな機構で安価に製作できることを求めた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するため研究開発を重ね、以下に示すような筒状金型清掃器具を完成するに至った。
【0006】
第1の発明は、駆動力を供給する動力部と、被清掃物をブラッシングするブラシヘッド部と、前記動力部が供給する駆動力を前記ブラシヘッド部に伝達する駆動伝達部からなる筒状金型清掃器具である。
【0007】
第2の発明は、前記駆動伝達部が、屈撓自在であることを特徴とする筒状金型清掃器具である。
【0008】
第3の発明は、前記ブラシヘッド部が、着脱自在であることを特徴とする筒状金型清掃器具である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の清掃器具は次のような効果を奏する。
【0010】
前記第1の課題に対し、金型内面のブラッシングをモーターを用いた回転駆動式にし、ブラシの植設を螺旋状にしたことから、残留付着物を飛躍的に低減できた。第2の課題に対し、駆動伝達部に屈撓自在な部品(フレキシブルシャフト)を用いたことから、狭い機械内部の隅々までブラシヘッドをハンドリングすることができ、作業者の負担が減り、作業者の作業性と安全性が向上した。またブラシヘッド部を清掃器具から着脱自在にしたことから、金型の寸法に応じた最適なブラシに交換でき、清掃器具の汎用性を図れた。そしてこれらの効果により清掃時間を大幅に短縮化でき、第3の課題も達成出来た。
【0011】
第4の課題については、本発明装置はシンプルな構造で、市販されている駆動モーター、駆動伝達部品、ブラシなどで製作できるため低コストで製作でき、また既存設備の拡張工事や大幅な改造工事は不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明装置を開示するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0013】
本発明の金型清掃器具は、図1に示すように(1)ブラシヘッド部、(2)駆動伝達部、(3)動力部から構成される。
【0014】
ブラシヘッド部(1)は、図2に示すようにブラシ軸(12)にブラシ毛(11)が植設されており、ブラシ軸の一端にはブラシ連結軸(22)(図3参照)と螺合するためのネジ山が加工されている。
【0015】
該ブラシ毛は植物繊維、動物繊維、合成樹脂繊維等を用いることができ、本願発明では金型への攻撃性を考慮してナイロン製を用いた。そしてブラシ寸法は、金型への挿入し易さ、清掃効果などを考慮し、金型内径寸法とほぼ同一か少し大きめのブラシ径とし、またブラッシングが金型表面全域に満遍なく行き届くよう、ブラシ毛(11)は螺旋状に植設した。
【0016】
駆動伝達部(2)は、動力部(3)の回転駆動をブラシヘッド部(1)に伝達するための機構であり、フレキシブルシャフトと呼ばれている市販品を用いた。屈撓自在な回転軸で小動力、高回転を任意の方向に向きを変えて自由に伝達できるシャフトである。この駆動伝達部は、回転駆動を伝達するインナー部(図4)と、回転するインナー部を保護するアウター部(図5)から構成される。
【0017】
インナー部は駆動軸(23)、駆動ワイヤー(21)、ブラシ連結軸(22)からなり、駆動ワイヤーの両端に駆動軸とブラシ連結軸が溶接接合されている。ブラシ連結軸には前記ブラシ軸(12)と螺合するためのネジ孔が加工されている。
一方アウター部は、駆動ワイヤーカバー(24)と保持部品(25)からなり、両者は嵌合されている。図3のようにインナー部をアウター部に挿通し組み立てる。
【0018】
動力部は、図6に示すようにモーター(31)、モーター連結軸(33)、操作部(34)、シャーシ(4)から構成される。シャーシにモーターを固定し、モーター軸(32)にモーター連結軸を嵌め込み、該モーター連結軸に前記駆動伝達部の駆動軸(23)嵌合する。
操作部(34)ではモーターの電源ON/OFFや回転スピード調整が可能である。
【0019】
(実施例)
本発明の筒状金型清掃器具を用いた清掃方法を説明する。
【0020】
まず本願発明の筒状金型清掃器具を清掃しようとする装置周辺にセットし、動力部の操作部(34)にある電源スイッチをONにする。するとモーターが駆動し、ブラシヘッド(1)が回転を始める。作業者は図7に示すように、ブラシヘッド部に近い駆動ワイヤーカバー(24)を把持し、筒状金型の上部からブラシ毛(11)を挿入して、筒状金型の内壁を上下方向に抜き差しする。この往復運動を一定時間(約3秒)行なうことにより、貫通構造である金型内壁の付着物を剥落できる。この作業を全ての筒状金型に対して行なう。
【0021】
(比較例)
従来方法である人手によるマニュアル清掃と比較するために、図1に示すブラシヘッド(1)を把持し、筒状金型の上部からブラシヘッドを挿入し、筒状金型の内壁を上下方向に一定時間(15秒)抜き差しして、付着物を剥落させた。
【0022】
本発明の清掃器具を用いて金型内壁を清掃した場合と従来方法で清掃した場合における清掃効果の比較評価を行なった。清掃器具を用いた清掃では、ブラシ回転数を変えた場合の評価も行なった。(試料n=3)結果を表1に示す。
【0023】
清掃効果の比較方法は、ガーゼを巻き付けた金型径とほぼ同径の挿入棒を金型内部に差し込み、金型内壁を擦りながら1往復した後、当該ガーゼを所定量の水に4時間浸漬させ、付着物(錠剤成形前の粉末剤)が溶け出した液の白濁度を目視で観察した。
【0024】
結果を表1に示す。本発明の清掃器具を用いた場合、従来の清掃方法よりも飛躍的に清掃効果が向上しており、またブラシヘッドの回転数を550rpm以上に設定すると更に清掃効果が向上することが確認した。
【0025】
【表1】

【符号の説明】
【0026】
1 ブラシヘッド部
11 ブラシ毛
12 ブラシ軸
2 駆動伝達部
21 駆動ワイヤー
22 ブラシ連結軸
23 駆動軸
24 駆動ワイヤーカバー
25 保持部品
3 動力部
31 モーター
32 モーター軸
33 モーター連結軸
34 操作部品
4 シャーシ
5 上側筒状金型
6 作業者
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】装置外観図
【図2】ブラシヘッド構造図
【図3】駆動伝達部品構造図
【図4】駆動伝達部インナー部構造図
【図5】駆動伝達部アウター部構造図
【図6】動力部構造図
【図7】装置使用説明図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を供給する動力部と、被清掃物をブラッシングするブラシヘッド部と、前記動力部が供給する駆動力を前記ブラシヘッド部に伝達する駆動伝達部からなる筒状金型清掃器具。
【請求項2】
請求項1記載の駆動伝達部が、屈撓自在であることを特徴とする筒状金型清掃器具。
【請求項3】
請求項1記載のブラシヘッド部が、着脱自在であることを特徴とする請求項1又は2記載の筒状金型清掃器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−207801(P2009−207801A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56146(P2008−56146)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(306018343)クラシエ製薬株式会社 (32)
【Fターム(参考)】