説明

筬保持部材

【課題】 調整の手間を低減できる筬保持部材を提供する。
【解決手段】
筬保持部材10は、板状のベース11と、ベース11の下端から下方向に伸び出すガイド部12L,12Rと、からなる。ガイド部12L,12Rは、前後方向に並ぶように配置されており、その間隔は、下側から上側に向かって漸次細くなるように形成されている。ガイド部12L,12Rにおける互いに対向する面には、ローラ13L,13Rが配置されている。
この筬保持部材10では、筬40の反りになどよってガイドピン41が上方向に移動すると、ガイドピン41にローラ13L,13Rが上方向から当接する。そして反りの度合が大きくなりガイドピン41の上方向に向かう力が強くなると、ガイドピン41とローラ13L,13Rとの当接する領域が上方向に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚板上に配置される筬の左右両端部から突出した突出部材に対して上方向から当接することで、突出部材の上方向への移動を抑制するグランドピアノの筬保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
グランドピアノでは一般に、図11に示すように、鍵盤や打鍵機構を載置する筬101が、棚板102上にて左右方向へ移動可能に設けられている。この筬101の左右方向への移動は、図示しないソフトペダルを操作することによって実現するように構成されており、筬101が移動すると、打鍵機構のハンマーが上方の弦を打弦する位置が若干ずれることで、ピアノの音色を変化させる効果が得られるようになっている。
【0003】
棚板102の左右の端部には拍子木103が設けられており、拍子木103には筬101の左右両端部から突出した突出部材104を保持する筬保持部材105が取り付けられている。
【0004】
グランドピアノの拍子木103に取り付けられる筬保持部材105の一例を図12に示す。筬保持部材105は、図12における前後両側に突出する上下の腕部を有する井桁状の本体106と、筬保持部材105に上下方向に移動可能に取り付けられた押さえピース107と、筬保持部材105に上下方向に延びるように形成されたねじ孔108にねじ込まれた調整ねじ109と、を備えている。
【0005】
なお、この図12は、図11における左側の拍子木103および筬保持部材105を示しているが、これらは右側にも左右対称に同様に設けられている。
【0006】
筬保持部材105を拍子木103に取り付けた状態の断面図を図13に示す。筬101の突出部材104は、押さえピース107の下端部に当接しているか、または少しの間隔をもって配置されている。
【0007】
ところで、上述した筬101は、湿度などの環境変化や経年変化などに起因して反りが発生すると、図14に示すように、左右の突出部材104が上方に移動する。これにより突出部材104が押さえピース107と強く接触してしまうと、突出部材104と押さえピース107との間の摩擦力が大きくなってソフトペダルの操作に伴う筬101の左右方向の移動がスムーズに行われず、音色の調整ができなくなるという問題があった。
【0008】
その問題を解決するために、押さえピース107を予め突出部材104から十分離れた高さに設定しておくと、筬101が反ってもその移動が妨げられることはなくなる。しかし、筬101に反りが生じると、筬101が棚板102から浮き上がってがたつきが生じやすくなるため、そのような場合には押さえピース107を突出部材104に当接させて、筬101の反りや筬101のがたつきを抑制することが必要となる。よって、筬101の反りによるがたつきを抑制するためには、予め押さえピース107を高い位置に設定するなどして突出部材104と押さえピース107との間に大きな間隔を設けることは望ましくない。
【0009】
よって、従来の筬保持部材では、筬101に反りが発生した場合には、調整ねじ109を回転させて押さえピース107の高さを調整することで、押さえピース107と突出部材104との間の圧力を調整し、ソフトペダルの操作に伴う筬101の移動具合を調整するとともに、筬101の棚板102からの浮き上がりによるがたつきを抑制する必要があった。
【0010】
ところで従来の拍子木103は、図13に示すように、鍵盤110と隣接して配置されているため、そのままでは拍子木103と鍵盤110との間にドライバーが入るスペースがない。よって、調整ねじ109を回転させて押さえピース107の高さを調整する際には、拍子木103を棚板102に取り付けるための蝶ねじを外して一旦拍子木103をばらしたり、鍵盤110を外してドライバーを斜めに差し込んだりする必要があった。
【0011】
そのような問題を解決するために、拍子木を2つのブロックで構成し、調整ねじの頭部を露出できる拍子木が提案されている(特許文献1参照)。この拍子木によると、拍子木や鍵盤を取り外すことなく調整ねじの調整が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実公平2−41675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記拍子木では、調整ねじを調整する際には拍子木を2つのブロック分解する必要があるため、その手間が掛かるという問題がある。
【0014】
また、調整ねじにより押さえピースを介してガイドピンを直接的に押圧しているため、調整ねじの回転量に対して押さえピースのガイドピンに対する押さえ力が比較的大きく変化する。このため、押さえピースとガイドピンとの間の圧力調整が難しいという問題があった。
【0015】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、調整の手間を低減できる筬保持部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、左右方向へ移動可能に棚板上に配置される筬の左右両端部から突出した突出部材に対して上方向から当接することで、上記突出部材の上方向への移動を抑制するグランドピアノの筬保持部材であって、上記突出部材に上方向から当接可能であって、上記突出部材が加える上方向の力の強さに応じて上方向に移動する当接部を有することを特徴とする。
【0017】
このように構成された筬保持部材であれば、筬が反ることにより筬の左右両端部の突出部材が上方に移動したときに、その力に応じて当接部が上方向に移動するため、当接部の高さをユーザが自ら調整しなくとも、突出部材と当接部との間の圧力上昇に伴って摩擦力が高くなりすぎることが抑制できる。
【0018】
また、筬に反りが生じて上方向への力が加えられると、その力に応じて当接部は上方向へ移動するが、筬に反りが生じておらず、突出部材が上方向に移動していないときには、上方向への力が生じないため、当接部は上方向へ移動しない。つまり、当接部と突出部材との間隔が開きすぎることが抑制できる。
【0019】
よって、上記筬保持部材であれば、調整ねじなどの調整を行わなくとも、突出部材と当接部との間の摩擦力が高くなりすぎることに伴って左右の移動が妨げられることと、棚板から浮き上がってがたつきが発生することを抑制できるため、調整の手間を低減することができる。
【0020】
なお、ここでいう当接部とは、筬保持部材において突出部材に上方向から当接する部分であり、当接部が上方向に移動するときには、筬保持部材上にてその位置が変化する場合と変化しない場合とが考えられる。変化する場合とは、例えば、当接部が筬保持部材上を滑るように上方向に移動していく場合であり、変化しない場合とは、例えば、突出部材と筬保持部材の少なくとも一部の領域とが、所定の位置(当接部)で接触したままいずれも上方向に移動する場合である。
【0021】
また、ここでいう突出部材は、筬の左右両端部から突出するように配置されており、当接部と当接可能であれば、その具体的な形状は特に限定されない。例えば円柱状、角柱状、板状、などの形状とすることが考えられる。
【0022】
ところで、上述した当接部は、請求項2に記載の筬保持部材のように、弾性変形により上方向に移動可能に構成してもよい。
【0023】
このように構成された筬保持部材であれば、弾性変形を利用することにより、突出部材が上方向に移動した際の当接部の上方向への移動を実現できる。また弾性力による反力が当接部を介して突出部材に加えられるため、突出部材は下方向への力を受けることとなり、筬の棚板からの浮き上がりによるがたつきを好適に抑制することができるようになる。
【0024】
なお、筬保持部材における弾性変形を行う箇所は特に限定されない。例えば当接部となる部分を有する部材それ自体が弾性変形する構成であってもよいし、その部材とは別に当接部の移動に伴って変形する弾性部材を備える構成であってもよい。
【0025】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の筬保持部材であって、下側から上側に向かって漸次細くなる間隔をもって並べて配置され、弾性変形により上記間隔が拡がるように構成された一対のガイド部を備えている。この筬保持部材において、上記当接部とは、上記突出部材が上記一対のガイド部の間を上方向に移動した状態において、上記一対のガイド部と当接する部分である。
【0026】
このように構成された筬保持部材では、一対のガイド部の間を突出部材が上方向に移動すると、ガイド部同士の間隔が狭くなるため、突出部材がガイド部と接触することとなる。そして突出部材の上方向に向かう力が強くなると、一対のガイド部をその間隔が広くなるように押し広げつつ上方向に移動する。
【0027】
よって上記構成の筬保持部材では、突出部材が上方向に移動したときに、突出部材と当接するガイド部上の領域(当接部)が上方向に移動するので、突出部材と当接部との間の圧力上昇に伴って摩擦力が高くなりすぎることを抑制でき、従来のように当接部の高さを調整する操作を行なわなくとも、筬の左右方向の移動が妨げられる虞を低減できる。
【0028】
また、突出部材が上方向に移動すると、ガイド部の弾性力により、突出部材は下方向への力が加えられる。そのため、筬の棚板からの浮き上がりによるがたつきをより好適に抑制することができる。
【0029】
ところで、上記構成の筬保持部材において、突出部材が上方向に移動すると当接部が上方向に移動するため突出部材と当接部との間の圧力は高くなりにくいが、突出部材が上方向に加える力が非常に強くなると、当接部との間の圧力上昇に伴って突出部材と当接部との間の摩擦力も増大し、筬が左右方向に移動するために必要な力も大きくなる。
【0030】
この摩擦力を小さくするためには、例えば、当接部となりうる対象や突出部材に摩擦力の小さい材質を用いることや、当接部となりうる対象および突出部材の表面形状を摩擦力の発生しにくい形状とすることが考えられる。
【0031】
また、上述した方法以外には、請求項4に記載の筬保持部材のように、上記一対のガイド部にローラを備えることとしてもよい。この場合、上記当接部は、上記ローラの円周面における一対のガイド部と当接する部分となる。
【0032】
このように構成された筬保持部材であれば、上述した突出部材と当接部とが接触している状態において、それらの間に働く摩擦力を低減できる。よって、突出部材と当接部との間の圧力は高くなっても、筬を左右に移動させるために大きな力を必要とせずスムーズに移動させることができる。
【0033】
請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の筬保持部材であって、弾性部材を介して上方向に移動可能に取り付けられる接触部材を備えている。この筬保持部材において、上記当接部は、上記接触部材における下端面である。
【0034】
このように構成された筬保持部材では、突出部材が上方向に移動すると、接触部材が押し上げられて上方向に移動する。同時に、弾性部材の弾性力により接触部材に下方向への力が加えられ、そのため突出部材は接触部材から下方向の力が加えられる。
【0035】
よって上記構成の筬保持部材では、突出部材が上方向に移動したときに、接触部材が上方向に移動するので、突出部材と接触部材の下端面との間の圧力が高くなりすぎることを抑制でき、従来のように当接部の高さを調整する操作を行なわなくとも、筬の左右方向の移動が妨げられる虞を低減できる。また、弾性部材の弾性力により下方向への力を受けるため、筬の棚板からの浮き上がりによるがたつきをより好適に抑制することができるようになる。
【0036】
また、請求項5に記載の筬保持部材においても、請求項6に記載の筬保持部材のように、上記接触部材における上記下端面にローラを備えることとしてもよい。この場合、上記当接部は、上記ローラの円周面となる。
【0037】
このように構成された筬保持部材であれば、請求項4に記載の筬保持部材と同様に、筬を左右に移動させるために大きな力を必要とせずスムーズに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】筬保持部材の構成を示す斜視図
【図2】グランドピアノの内部構成を示す斜視図
【図3】筬保持部材を拍子木に取り付けた状態を示す斜視図
【図4】筬保持部材の動作を示す側面図
【図5】筬保持部材の構成を示す斜視図
【図6】グランドピアノの内部構成を示す斜視図
【図7】筬保持部材を拍子木に取り付けた状態を示す斜視図
【図8】筬保持部材にストッパを取り付けた状態を示す斜視図
【図9】筬保持部材の動作を示す斜視図
【図10】筬保持部材の変形例を示す斜視図
【図11】従来のグランドピアノの内部構成を示す斜視図
【図12】従来の筬保持部材の構成を示す斜視図
【図13】従来の筬保持部材を配置した状態を示す断面図
【図14】筬の変形を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[実施例1]
(1)筬保持部材の構成
本実施例の筬保持部材10は、図1に示すように、ベース11と、一対のガイド部12L,12Rと、ローラ13L,13Rと、からなる。
【0040】
ベース11は、前後上下方向(図1における前後および上下方向)に拡がる板状の部材である。このベース11は、前後両端部から中央に向かってねじ溝14が形成されており、後述する拍子木30に対してねじ溝14を介してねじを通すことで拍子木30に固定される。
【0041】
ガイド部12L,12Rは、ベース11の下端から下方向に伸び出す柱状の部材であって、前後方向に並ぶように配置されており、その間隔は、下側から上側に向かって漸次細くなるように形成されている。なお、ベース11には、ガイド部12L,12Rの間の間隔から繋がるようにベース11の中央まで到達する溝が形成されている。
【0042】
ローラ13L,13Rは、ガイド部12L,12Rにおける互いに対向する面であって、後述するガイドピン41が当接しうる領域に配置されている。このローラ13L,13Rは、ガイド部12L,12Rが伸びる方向に沿った回転軸を有しており、その回転軸を中心に回転可能に取り付けられている。
【0043】
なお、筬保持部材10のベース11とガイド部12L,12Rは、剛性および弾性に富んだ材質(一例として、ばね鋼材など)によって構成されている。
(2)筬保持部材の設置態様
上述した構成の筬保持部材10は、図2に示すように、グランドピアノに水平に取り付けられる棚板20上に配置される拍子木30に取り付けて用いられる。また、棚板20には、筬40が図示しないソフトペダルの操作に応じて左右方向に移動可能に取り付けられており、拍子木30は筬40の左右両側に配置されている。
【0044】
筬40は、格子状をなしており、この筬40の上側には、図示しない鍵盤や打鍵機構が載置されている。筬40の前方の左右両端には、それぞれ左右方向に突出するガイドピン41が配置されている。また筬40の後方は、鍵盤くわえ42によって係止されている。
【0045】
筬保持部材10が拍子木30に取り付けられた状態を図3に示す。この図3は、図2における左側の拍子木30および筬保持部材10を右方向から見た図を示しているが、これらは右側にも左右対称に同様に設けられている。
【0046】
拍子木30の側面(図3における手前側の面)には、凹部31が形成されている。筬保持部材10は、ねじ溝14を介してねじ32を拍子木30に取り付けることで凹部31内に固定されている。
【0047】
そして、拍子木30および筬40が棚板20に設置された状態では、ガイド部12L,12Rの間の領域15にガイドピン41が挿入される。本実施例においては、筬40に反りがない状態では、ローラ13L,13Rとガイドピン41との間には少しの間隔が取られるように配置されているが、ローラ13L,13Rとガイドピン41とが接触するように配置される構成であってもよい。
(3)作用・効果
本発明の筬保持部材10の作用および効果を、図4(a)、(b)を用いて説明する。この筬保持部材10は、棚板20に配置された拍子木30に取り付けられた状態を示している。
【0048】
上記構成の筬保持部材10では、筬40の反りになどよってガイドピン41が上方向に移動すると、図4(a)に示すように、ガイドピン41にローラ13L,13Rの円周面が斜め上方向から当接する。そして反りの度合が大きくなりガイドピン41の上方向に向かう力が強くなると、弾性変形するガイド部12L,12Rを、それらの間隔を広げる方向(図4(b)におけるA方向)に押し広げながら上方向に移動するため、ガイドピン41とローラ13L,13Rとの当接する領域が上方向に移動し、図4(b)に示すような状態となる。
【0049】
そのため、ガイドピン41がローラ13L,13Rと強く接触して圧力が高くなりすぎることを抑制でき、それにより摩擦力が大きくなることを抑制できるため、筬40の左右方向への移動が妨げられることがなくなる。よって、筬40の反り具合の変化に合わせて、ガイドピン41を押さえる部材(例えば図12における押さえピース107)の高さを調整する必要がなくなる。
【0050】
また、上記ガイド部12L,12Rの間隔が広がると、ベース11およびガイド部12L,12Rの弾性によってその間隔を細くする方向(図4(b)におけるB方向)に反力が発生する。ガイド部12L,12Rの間隔は下方向が広くなるように形成されているため、ガイドピン41は下方向へ押されることとなる。
【0051】
これにより、筬40の棚板20からの浮き上がりによるがたつきを好適に抑制することができるようになる。
【0052】
また、上記筬保持部材10において、ガイドピン41はローラ13L,13Rと当接しているため、筬40の反りが大きくなり、ガイドピン41が押し上げる力が大きくなっても、ローラ13L,13Rが回転することにより、ガイドピン41とローラ13L,13Rとの間に働く摩擦力を抑制できる。よって、筬40の反りが大きくなったとしても、筬40を左右に移動させるために大きな力が必要とならない。
(4)変形例
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0053】
例えば、ローラ13L,13Rを配置せず、ガイドピン41とガイド部12L,12Rとが直接当接するように構成してもよい。その際には、ガイドピン41とガイド部12L,12Rとの間の摩擦力が小さくなるように構成するとよい。例えば、ガイド部12L,12Rの対向する面を曲面状に形成して、ガイドピン41との接触面を小さくすることで摩擦力を小さくすることが考えられる。
[実施例2]
(1)筬保持部材の構成
図5(a)は本実施例の筬保持部材50の分解図であり、図5(b)は筬保持部材50の組み付け図である。筬保持部材50は、ベース51と、コイルバネ52と、接触部材53と、からなる。
【0054】
ベース51は、図5における前後上下方向(図5(a),(b)における前後および上下方向)に拡がる板状の部材であって、前後両端部から中央に向かってねじ溝54が形成されており、後述する拍子木70に対してねじ溝54を介してねじ72を通すことで拍子木70に固定される。
【0055】
また、ベース51の下端部中央には上方向に向かう略矩形の溝部55が形成されている。また、ベース51における溝部55の上端を形成する側面と、ベース51の上端の側面と、を上下方向に貫通するように貫通孔56が形成されている。
【0056】
接触部材53は、押さえピース57と、支持棒58と、からなる。
【0057】
押さえピース57は、前後の両側面において上下方向に形成された縦溝59が形成されてなる箱形の部材であって、ベース51における溝部55を形成する周縁部のうち、前後の周縁部周辺と所定の間隔をもって嵌合する。
【0058】
支持棒58は、押さえピース57から伸び出す円柱状の部材である。この支持棒58は貫通孔56に挿入可能に形成されており、上記縦溝59がベース51と嵌合した状態で貫通孔56に挿入されている(図5(b)参照)。このとき、接触部材53は、ベース51に対して上下方向に移動可能となっている。
【0059】
コイルバネ52は、その円筒形の内部を支持棒58が貫通した状態で、溝部55の上端を形成する側面と押さえピース57との間に配置される。
(2)筬保持部材の設置態様
上述した構成の筬保持部材50は、図6に示すように、グランドピアノに水平に取り付けられる棚板20上に配置される拍子木70に取り付けられて用いられる。棚板20および筬40の構成は、実施例1と同様である。
【0060】
筬保持部材50が拍子木70に取り付けられた状態を図7に示す。拍子木70の側面(図7における手前側の面)には、凹部71が形成されており、筬保持部材50はこの凹部71の内側に配置される。筬保持部材50におけるベース51は、ねじ72によって凹部71内に固定される。
【0061】
そして、拍子木70および筬40が棚板20に設置された状態では、押さえピース57の下方向の領域60にガイドピン41が挿入されており、ガイドピン41と押さえピース57の下端面とが当接する。
【0062】
なお、本実施例では押さえピース57の下方向への移動を制限する部材はないため、押さえピース57はガイドピン41と常時接触する構成となっているが、図8に示すように、支持棒58の貫通孔56から突出した部分や溝部55にストッパ61,62を取り付け、所定の高さより下側に押さえピース57が移動しないように構成してもよい。
(3)作用・効果
本発明の筬保持部材50の作用および効果を、図9を用いて説明する。この図9における筬保持部材50は、棚板20に配置された拍子木70に取り付けられた状態を示している。
【0063】
このように構成された筬保持部材50では、筬40の反りになどよってガイドピン41が上方向に移動すると、ガイドピン41に押さえピース57の下端面が上方向から当接する。そして反りの度合によってガイドピン41の上方向に向かう力が強くなると、図9に示すように、コイルバネ52が弾性変形して縮み、押さえピース57が上方向に移動する。
【0064】
そのため、ガイドピン41が押さえピース57と強く接触して圧力が高くなりすぎることを抑制できるため、実施例1の筬保持部材10と同様に、筬40の反り具合の変化に合わせてガイドピン41を押さえる部材の高さを調整する必要がなくなる。
【0065】
また、押さえピース57を押し上げると、コイルバネ52の弾性力によって押さえピース57を押し下げる方向に反力が発生するため、ガイドピン41はその弾性力により下方向への力が加えられる。
【0066】
これにより、実施例1の筬保持部材10と同様に、筬40の棚板20からの浮き上がりによるがたつきを適切に抑制することができるようになる。
(4)変形例
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0067】
例えば、上記実施例においては、ガイドピン41は押さえピース57と直接当接する構成を例示したが、図10に示すように、押さえピース57の下端面に、図10における前後方向を回転軸とするローラ63を備える構成としてもよい。このように構成された筬保持部材50であれば、ガイドピン41が押さえピース57を押し上げる力が大きくなっても、ガイドピン41が左右方向に移動するとローラ63が回転するため、ガイドピン41と押さえピース57との間に働く摩擦力を抑制できる。よって、筬40の反りが大きくなったとしても、筬40を左右に移動させるために大きな力が必要とならない。
【0068】
また、コイルバネ52とは異なる弾性部材を用いて筬保持部材50を構成してもよいし、弾性部材を用いず、例えば押さえピース57に錘を取り付け、その錘の重力により下方向への力を発生するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…筬保持部材、11…ベース、12L,12R…ガイド部、13L,13R…ローラ、14…ねじ溝、15…領域、20…棚板、30…拍子木、31…凹部、32…ねじ、40…筬、41…ガイドピン、50…筬保持部材、51…ベース、52…コイルバネ、53…接触部材、54…ねじ溝、55…溝部、56…貫通孔、57…押さえピース、58…支持棒、59…縦溝、60…領域、61,62…ストッパ、63…ローラ、70…拍子木、71…凹部、101…筬、102…棚板、103…拍子木、104…突出部材、105…筬保持部材、106…本体、107…押さえピース、108…孔、109…調整ねじ、110…鍵盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向へ移動可能に棚板上に配置される筬の左右両端部から突出した突出部材に対して上方向から当接することで、前記突出部材の上方向への移動を抑制するグランドピアノの筬保持部材であって、
前記突出部材に上方向から当接可能であって、前記突出部材が加える上方向の力の強さに応じて上方向に移動する当接部を有する
ことを特徴とする筬保持部材。
【請求項2】
前記当接部は、弾性変形により上方向に移動可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の筬保持部材。
【請求項3】
下側から上側に向かって漸次細くなる間隔をもって並べて配置され、弾性変形により前記間隔が拡がるように構成された一対のガイド部を備え、
前記当接部とは、前記突出部材が前記一対のガイド部の間を上方向に移動した状態において、前記一対のガイド部と当接する部分である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の筬保持部材。
【請求項4】
前記一対のガイド部にローラを備え、
前記当接部は、前記ローラの円周面における前記一対のガイド部と当接する部分である
ことを特徴とする請求項3に記載の筬保持部材。
【請求項5】
弾性部材を介して上方向に移動可能に取り付けられる接触部材を備え、
前記当接部とは、前記接触部材における下端面である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の筬保持部材。
【請求項6】
前記接触部材における前記下端面にローラを備え、
前記当接部は、前記ローラの円周面である
ことを特徴とする請求項5に記載の筬保持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−164634(P2010−164634A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4739(P2009−4739)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)