説明

算盤学習システム、算盤学習プログラム、算盤学習方法、運珠センシング装置、及び算盤表示装置

【課題】運珠の誤りを計算後に把握可能としながらも、運珠の柔軟性を許容した算盤の学習システムを構築する。
【解決手段】模範運珠情報と学習者運珠情報とが一致しない場合には、違算であるとして違算情報を記憶する違算情報記憶手段1Fと、前記運珠情報照合手段1Eにて照合した練習問題に関する学習者の学習者解答情報と、前記模範運珠情報記憶手段1Bに記憶した正答情報に基づいて正誤判断をおこなう正誤判断手段1Gと、前記正誤判断手段1Gにて、学習者解答情報と正答情報とが一致した場合には、正答結果情報を出力する正答結果情報出力手段1Hと、前記正誤判断手段1Gにて、正答情報と学習者解答情報が一致しない場合には、前記違算情報記憶手段1Fに記憶した違算情報を出力する違算情報出力手段1Iとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、算盤の学習者が自習する際や指導者が算盤の運珠を指導する際に好適に利用可能なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、算盤の学習者は、例えば算盤塾などで算盤の基礎となる運珠を学習する。その後、学習者は当該運珠を用いて学習者のレベルにあった練習問題を解いていくことで算盤を習得していく。
(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平6−210434
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、学習者が練習問題の途中で運珠を間違ったとしても、学習者自身では運珠の誤りに気づき難いという欠点がある。よって、計算結果が誤っていた場合に、どの時点で誤りがあったのかを判断できない。
【0004】
一方、通常、指導者は、複数の学習者を同時に指導している。従って、個々の学習者の運珠を全て把握することは困難である。また、個々の運珠を順次監督しながら指導する方法では指導効率が著しく低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本願は、算盤を学習する際に利用する算盤学習システムにおいて、前記算盤の練習問題を記憶する練習問題記憶手段と、前記練習問題記憶手段に記憶した練習問題の模範運珠に基づく模範運珠情報と、当該練習問題の正答情報とを関連づけて記憶する模範運珠情報記憶手段と、前記模範運珠情報記憶手段に模範運珠情報が記憶された練習問題を学習している学習者の運珠に基づく学習者運珠情報と、当該練習問題の学習者の解答となる学習者解答情報とを受け付ける学習者運珠情報受付手段と、前記学習者運珠情報受付手段にて受け付けた学習者運珠情報と、前記模範運珠情報記憶手段から読み出した模範運珠情報とを照合する運珠情報照合手段と、前記運珠情報照合手段にて照合した結果、模範運珠情報と学習者運珠情報とが一致しない場合には、違算であるとして違算情報を記憶する違算情報記憶手段と、前記運珠情報照合手段にて照合した練習問題に関する学習者の学習者解答情報と、前記模範運珠情報記憶手段に記憶した正答情報に基づいて正誤判断をおこなう正誤判断手段と、前記正誤判断手段にて、学習者解答情報と正答情報とが一致した場合には、正答結果情報を出力する正答結果情報出力手段と、前記正誤判断手段にて、正答情報と学習者解答情報が一致しない場合には、前記違算情報記憶手段に記憶した違算情報を出力する違算情報出力手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
これにより、計算の終了後に間違った運珠を事後的に把握することができるため、効果的な自習を可能とすると共に、指導者が指導指針を検討する際の好材料とすることもできる。更には、学習者の解答と正答が一致した場合には、学習者の運珠が模範運珠と異なっていたとしても正答とすることができるため、学習者が覚えている運珠に柔軟に対応することができる。
【0007】
よって、運珠の誤りを的確に把握可能としつつも、指導者の別などによる運珠の差異を許容することにより、学習効果の飛躍的な向上と運珠の柔軟性を同時に実現することが可能となる。
【0008】
更に、算盤の珠の動きをセンシングするセンサを用いて運珠情報を読み取る運珠情報読取手段と、当該センサにて検知した珠の動きを運珠情報として出力する運珠情報出力手段とを備える運珠センシング装置を具備し、前記運珠センシング装置からの運珠情報を学習者運珠情報として受け付けることにより、既存の算盤を利用して当該算盤学習システムを構築することができる。専用の算盤などを不要とすることにより安価且つ手軽に当該算盤学習システムを利用可能となる。
【0009】
また、タッチパネル式の画面に、指で各々の珠を個別に接触可能な間隔に配置した略実物大の算盤の珠の画像を表示する算盤表示手段と、前記算盤表示手段の画面に接触した情報を検知して珠の動きを運珠情報として出力する運珠情報出力手段とを備える算盤表示装置を具備し、前記算盤表示装置からの運珠情報を学習者運珠情報として受け付けることにより、既存のゲーム端末などを算盤の代用として利用することができる。
【0010】
加えて、前記学習者運珠情報受付手段が、ご破算の一つ前の珠の位置情報に基づく解答情報を受け付けることで、学習者が解答情報を入力などする手間を省くことができ、効率よく学習を進めることができる。
【発明の効果】
【0011】
計算の終了後に間違った運珠を事後的に把握することができるため、効果的な自習を可能とすると共に、指導者が指導指針を検討する際の好材料とすることもできる。更には、学習者の解答と正答が一致した場合には、学習者の運珠が模範運珠と異なっていたとしても正答とすることができるため、学習者が覚えている運珠に柔軟に対応することができる。
【0012】
よって、運珠の誤りを的確に把握可能としつつも、指導者の別などによる運珠の差異を許容することにより、学習効果の飛躍的な向上と運珠の柔軟性を同時に実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の算盤学習システムSの一の実施形態について図面を参照して説明する。
1、機器構成
【0014】
図1は、この実施の形態における算盤学習システムSの全体システムを示した構成図である。図1において、P1は、算盤学習装置P1である。この算盤学習装置P1は、例えばインターネットに接続しているいわゆるパーソナルコンピュータである。そして、この算盤学習装置P1は、キーボード、マウス、ディスプレイ、CPU,内部メモリ、HD等の外部記憶装置、通信インターフェイス等を備えている。
【0015】
P2は、運珠情報を読み取る運珠読取装置となる運珠センシング装置P2である。この運珠センシング装置P2は、算盤P3の下面を支持する基盤21と、当該基盤21の上に設置した複数のセンサ22と、当該センサ22にて検知した珠33の動きを運珠情報として出力する通信インターフェイスとを備えている。
【0016】
前記センサ22は、基盤21の上に設置した算盤P3の珠33の動きをセンシングする機能を有している。図2乃至図4に示すように、複数のセンサ22は、個々の算盤P3の珠33の動きを個別に判断可能としている。詳述すると、第1珠331には、第1センサ221、第2珠332には、第2センサ222と、各珠33に対応したセンサ22を基盤21上に設置している。例えば、第1珠331に対応する第1センサ221は、第1珠331を入れた状態でセンシング可能(センサ221がON)となり、第1珠331を戻した状態ではセンシング不可能(センサ221がOFF)になるように設置位置及びセンシング距離を設定している。
【0017】
前記基盤21には算盤P3の位置決め手段となる枠体(図示しない)を付与している。当該枠体を目印として基盤21上に算盤P3を設置すると、個々のセンサ22と対応する珠33が対に位置する。
【0018】
通信インターフェイスは、前記センサ22にて検知した珠33の動きを運珠情報として出力する運珠情報出力手段2Bとしての機能を有している。本実施形態においては、前記算盤学習装置P1と有線にて接続して、データの送受を可能としている。尚、無線にてやり取りする構成にしてもよい。
【0019】
P3は、市販されている通常の算盤P3である。この算盤P3は、方形の枠体31と、当該枠体31に支持された軸棒32と、当該軸棒32に貫通した複数の珠33と、当該複数の珠33を区画する区画枠34とを備えている。
2,概略機能構成
【0020】
そして、本実施形態における算盤学習装置P1は、その記憶装置等に記憶させたプログラム等によってCPUや周辺機器を作動させ、図3に示すように、算盤P3を学習する際に利用する算盤学習システムSにおいて、前記算盤P3の練習問題を記憶する練習問題記憶手段1Aと、前記練習問題記憶手段1Aに記憶した練習問題の模範運珠に基づく模範運珠情報と、当該練習問題の正答情報とを関連づけて記憶する模範運珠情報記憶手段1Bと、前記模範運珠情報記憶手段1Bに模範運珠情報が記憶された練習問題を学習している学習者の運珠に基づく学習者運珠情報と、当該練習問題の学習者の解答となる学習者解答情報とを受け付ける学習者運珠情報受付手段1Cと、前記学習者運珠情報受付手段1Cにて受け付けた学習者運珠情報などを記憶する学習者運珠情報記憶手段1Dと、前記学習者運珠情報受付手段1Cにて受け付けた学習者運珠情報と、前記模範運珠情報記憶手段1Bから読み出した模範運珠情報とを照合する運珠情報照合手段1Eと、前記運珠情報照合手段1Eにて照合した結果、模範運珠情報と学習者運珠情報とが一致しない場合には、違算であるとして違算情報を記憶する違算情報記憶手段1Fと、前記運珠情報照合手段1Eにて照合した練習問題に関する学習者の学習者解答情報と、前記模範運珠情報記憶手段1Bに記憶した正答情報に基づいて正誤判断をおこなう正誤判断手段1Gと、前記正誤判断手段1Gにて、学習者解答情報と正答情報とが一致した場合には、正答結果情報を出力する正答結果情報出力手段1Hと、前記正誤判断手段1Gにて、正答情報と学習者解答情報が一致しない場合には、前記違算情報記憶手段1Fに記憶した違算情報を出力する違算情報出力手段1Iとしての機能を発揮する。その他、学習者識別情報や指導者識別情報や練習問題選択情報などの各種情報の情報受付手段1J、練習問題の選択指示などの指示情報を出力する指示手段1K、指示情報や表示画面情報などの情報記憶手段1L、指示情報などの各種情報を出力する情報出力手段1Mなどの機能も有している。
【0021】
なお、前記算盤学習装置P1を動かすプログラムは、例えばCD−ROMのようなコンピュータ読みとり可能な記録媒体に記録しておき、算盤学習装置P1となるコンピュータにインストールするようにしている。また、前記プログラムを有するホストコンピュータ等からダウンロードすることによりインストールしてもよい。更には、プログラムをダウンロードせずに、ASPサービスを利用することも考えられる。
【0022】
各手段を説明すると、練習問題記憶手段1Aは、学習者のレベルに応じた各種計算問題を内部メモリなどに記憶するものである。詳述すると、練習問題識別子と関連づけて、練習問題番号、難易度(級や段)、検定種別、計算問題(演算情報、数字情報)などを記憶している。
【0023】
模範運珠情報記憶手段1Bは、前記模範運珠情報や当該模範運珠情報を作成した指導者の指導者識別情報などを記憶している。本実施形態においては、後述する学習者運珠情報受付手段1Cを用いて受け付けた模範運珠情報を記憶している。
【0024】
指導者識別情報としては、指導者識別子と関連づけて、指導者名、指導者の所属(クラスや地域など)などを記憶している。
【0025】
模範運珠情報は、模範運珠情報識別子、練習問題識別子、指導者識別子、指導者名、指導地域、模範運珠情報の作成年月日、正答情報などと関連付けて記憶している。尚、本実施形態においては、一の練習問題に対しては一の模範運珠情報を記憶している。ただし、指導者や地域により模範運珠は異なることがある。よって、当該模範運珠情報を指導者や地域に合わせて書き換えることも可能である。更には、一の練習問題に対して複数の模範運珠情報を記憶することもできる。
【0026】
模範運珠情報とは、練習問題の開始から終了までの一連の運珠の経過を時系列に沿って格納している情報である。つまり、第1運珠から順に、練習問題を解く上で必要な運珠の経過が時系列で分かる順序で並べた情報である。
【0027】
本実施形態においては、珠33の動きとなる運珠を、前記センサ22のON/OFF状態の切替情報に基づいて判断する。各珠33に対応したセンサ22のON/OFF状態が切り替わると、当該切替情報を運珠情報として扱う。また、各センサ22のON/OFF状態から全珠33の位置情報を取得する。位置情報となる全珠33のON/OFF情報は、数字情報と対応づけており数字置換情報としてデータベース化している。これにより、例えば、1の位の第5珠335のセンサ225のみがONの状態である位置情報である場合は、「5」の数字情報として判断可能としている。
【0028】
具体的には、図3に示すように、例えば、第1運珠として、1の位の第1珠331のみがONに切り替わった切替情報を前記運珠センシング装置P2から受信した場合には、1の位の第1珠331がONに切り替わった切替情報を運珠情報として記憶する。これにより、どのように珠33が動いたか、つまり、運珠が分かる。更には、当該運珠においての合計を全珠33の位置情報(全珠33のON/OFF情報)から判断して記憶する。つまり、前記数字置換情報を参照して、1の位の第1珠331のみがONである位置情報である場合には、合計1として数字情報を記憶する。このように、本実施形態においては、各運珠及びその運珠の結果となる合計情報も運珠情報としている。各運珠は、各センサ22の切替情報にて記憶している。また、運珠を行った時点での合計情報は、全珠33の位置情報や数字情報にて記憶している。
【0029】
正答情報とは、練習問題の計算を終了した際に出てくる正しい答えの情報である。一の練習問題に対して一の正答(全珠33の位置情報と数字情報)が割り当てられている。具体的には、10の位の第1珠331と第2珠332と1の位の第1珠331と第5珠335のみがONとなっている場合には、全センサ22のON/OFF情報から判断される全珠33の位置情報と、前記数字置換情報にて当該位置情報と対応づけている「26」の数字情報を正答情報として扱う。
【0030】
学習者運珠情報受付手段1Cは、学習者を識別する学習者識別情報と、前記模範運珠情報記憶手段1Bに模範運珠情報が記憶された練習問題を学習している学習者の運珠情報である学習者運珠情報と、当該練習問題の学習者の解答となる学習者解答情報とを受け付ける。本実施形態においては、前記学習者識別情報はキーボードなどを用いて受け付ける。また、学習者運珠情報や学習者解答情報は、前記運珠センシング装置P2から送信されてくる各珠33に対応したセンサ22のON/OFF情報を受信することにより受け付ける。詳述すると、当該学習者運珠情報受付手段1Cは、練習問題の選択情報を受け付けた後に算盤P3がご破算の状態であるとの情報を受け付けることを契機として、学習者運珠情報の受付を開始する。受付開始後に、初めて運珠センシング装置P2から送信されてきた運珠情報を第1運珠情報とする。その後、順次時系列に沿って第2運珠情報、第3運珠情報として受け付ける。尚、図2に示す通り、どの珠33も入れられていない状態(全センサ22がOFFの状態)をご破算の状態であると判断する。
【0031】
学習者運珠情報とは、練習問題の開始から終了までの一連の運珠の経過を時系列に沿って格納している情報である。つまり、第1運珠から順に、練習問題を解く上で必要な運珠の経過が時系列で分かる順序で並べた情報である。
【0032】
本実施形態においては、前記模範運珠情報と同様に、当該学習者運珠情報受付手段1C にて受け付ける学習者運珠情報として珠33の動きとなる運珠を、前記センサ22のON/OFF状態の切替情報に基づいて判断する。各珠33に対応したセンサ22のON/OFF状態が切り替わると、当該切替情報を運珠情報として扱う。また、各センサ22のON/OFF状態から全珠33の位置情報を取得する。位置情報となる全珠33のON/OFF情報は、数字情報と対応づけており数字置換情報としてデータベース化している。これにより、例えば、1の位の第5珠335のセンサ225のみがONの状態である位置情報である場合は、「5」の数字情報として判断可能としている。
【0033】
具体的には、例えば、第1運珠として、1の位の第5珠335のみがONに切り替わった切替情報を前記運珠センシング装置P2から受信した場合には、1の位の第5珠335がONに切り替わった切替情報を運珠情報として受け付けて記憶する。これにより、どのように珠33が動いたか、つまり、運珠が分かる。更には、当該運珠においての合計を全珠33の位置情報(全珠33のON/OFF情報)から判断して受け付ける。つまり、前記数字置換情報を参照して、1の位の第5珠335のみがONである位置情報である場合には、合計を5として数字情報も学習者運珠情報として受け付ける。このように、本実施形態においては、各運珠及びその運珠の結果となる合計情報も、前記学習者運珠情報受付手段1C にて受け付けた学習者運珠情報としている。各運珠は、各センサ22の切替情報にて受け付けて後述する学習者運珠情報記憶手段1Dに記憶している。また、運珠を行った時点での合計情報は、全珠33の位置情報や数字情報にて受け付けて学習者運珠情報記憶手段1Dに記憶している。
【0034】
学習者解答情報は、運珠情報の受付後に再び算盤P3がご破算の状態であるとの情報を受け付けることを契機として、当該ご破算の一つ前の珠33の位置情報をから読み取った数字を学習者解答情報として受け付ける。尚、位置情報と数字情報との置き換えは、前記模範運珠情報と同様に行う。
【0035】
学習者運珠情報記憶手段1Dは、学習者運珠情報受付手段1Cにて受け付けた学習者識別情報、学習者運珠情報、学習者解答情報などを記憶する。尚、前記学習者運珠情報と、当該学習者運珠情報の練習問題の学習者解答情報とは関連づけて記憶している。
【0036】
学習者識別情報としては、学習者識別子と関連づけて、学習者名、学習者の所属(クラスや指導者や地域など)、学習者の熟練度(級や段)、練習開始日、練習履歴、進級履歴などを記憶している。
【0037】
学習者運珠情報は、学習者が練習を行う毎に付与される学習者運珠識別子、前記練習問題識別子、学習者識別子、練習日時、運珠が誤っていたことを示す違算情報などと関連付けて記憶している。
【0038】
学習者解答情報としては、学習者運珠識別子と関連づけて、練習問題識別子、計算結果である学習者の解答情報、解答の正誤情報などを記憶している。
【0039】
運珠情報照合手段1Eは、CPUなどを用いて前記学習者運珠情報受付手段1Cにて受け付けた学習者運珠情報と、前記模範運珠情報記憶手段1Bから読み出した模範運珠情報とを照合する機能を有する。
【0040】
具体的には、前記学習者運珠情報受付手段1Cから第1運珠情報を受け付けることを契機として、練習問題識別子に基づいて前記模範運珠情報記憶手段1Bから模範運珠情報を読み出す。そして、当該学習者運珠情報の第1運珠情報と、前記模範運珠情報記憶手段1Bから読み出した模範運珠情報の第1運珠情報とを照合する。本実施形態においては、学習者の第1運珠の合計と模範運珠情報の第1運珠の合計が、一致するか否かを判断する。
【0041】
学習者運珠情報と模範運珠情報とが一致しない場合には、後述する違算情報記憶手段1Fに対して違算信号を学習者運珠情報と共に出力する。
【0042】
学習者運珠情報と模範運珠情報とが一致した場合には、学習者運珠情報記憶手段1Dに対して正答信号を学習者運珠情報と共に出力する。
【0043】
その後、第1運珠と同様に、当該学習者運珠情報の第2運珠情報と、前記模範運珠情報記憶手段1Bから読み出した模範運珠情報の第2運珠情報とを照合する。このように、時系列に沿って順次運珠情報の照合を行う。
【0044】
違算情報記憶手段1Fは、前記運珠情報照合手段1Eにて照合した結果、模範運珠情報と学習者運珠情報とが一致しない場合には、違算として違算情報を記憶する。本実施形態においては、前記運珠情報照合手段1Eから違算信号を受信すると、前記学習者運珠情報記憶手段1Dに記憶する学習者運珠情報の該当する運珠にエラーフラグを立てて学習者運珠情報に違算情報を付加する形式にて記憶する。更に、本実施形態においては、違算した運珠情報のみのデータベースも構築する。具体的には、学習者識別子と関連付けて、学習者運珠情報識別子、違算があった運珠の学習者運珠情報、練習日時、練習問題識別子などを記憶する。
【0045】
正誤判断手段1Gは、前記運珠情報照合手段1Eにて照合した練習問題に関する学習者の学習者解答情報と、前記模範運珠情報記憶手段1Bに記憶した正答情報とを比較して正誤判断をおこなう。本実施形態においては、前記運珠情報照合手段1Eにて照合を開始後に、ご破算情報を受け付けることを契機として正誤判断を行う。詳述すると、模範運珠情報識別子に基づいて前記模範運珠情報記憶手段1Bから、運珠情報照合手段1Eにて照合していた模範運珠情報と関連づけられた正答情報を読み出す。そして、学習者運珠情報受付手段1Cにて受け付けた解答情報と比較する。本実施形態においては、前記ご破算情報を受け付ける一つ前の珠33の位置情報に基づいて学習者の解答情報を導き出す。前記学習者の解答情報と正答情報とが一致する場合には、前記学習者運珠情報と共に記憶していた違算情報を消去し、正答信号を後述する正答結果情報出力手段1Hに出力する。一方、前記学習者の解答情報と正答情報とが一致しない場合には、誤答信号を違算情報出力手段1Iに出力する。
【0046】
正答結果情報出力手段1Hは、前記正誤判断手段1Gから正答信号を受信すると、図12に示すように、情報記憶手段に記憶されている正答結果情報を読み出して算盤学習装置P1の画面に表示する。
【0047】
違算情報出力手段1Iは、前記正誤判断手段1Gから誤答信号を受信すると、図13,図14に示すように、情報記憶手段に記憶されている誤答結果情報と共に、前記違算情報記憶手段1Fに記憶した違算情報と学習者運珠情報と、模範運珠情報記憶手段1Bに記憶した前記模範運珠情報と模範解答情報とを読み出して前記算盤学習装置P1の画面に表示する。当該違算情報出力手段1Iは、前記学習者の解答情報と正答情報とが一致しない場合にのみ、違算情報を出力する。
【0048】
次に、運珠センシング装置P2は、その記憶装置等に記憶させたプログラム等によってセンサ22などの周辺機器を作動させ、図5に示すように算盤P3の珠33の動きをセンシングするセンサ22を用いて運珠情報を読み取る運珠情報読取手段2Aと、当該センサ22にて検知した珠33の動きを運珠情報として出力する運珠情報出力手段2Bとして機能する。尚、当該運珠センシング装置P2は、学習者運珠情報のみならず、模範運珠情報を入力する際に使用することも可能である。
【0049】
各手段を説明すると、運珠情報読取手段2Aは、個々の珠33ごとに設定した各センサ22のON/OFF情報を読み取ることにより、算盤P3の珠33の動きや位置から運珠を読み取る機能を有するものである。本実施形態においては、1秒間に20回の頻度で算盤P3の全珠33の動きをセンシングする機能を有している。複数のセンサ22は、個々の算盤P3の珠33の動きを個別に判断可能としている。
【0050】
運珠情報出力手段2Bは、前記算盤学習装置P1の学習者運珠受付手段と有線にてつながっており、データの送受信を可能としている。そして、前記運珠情報読取手段2Aにて読み取った運珠情報を前記算盤学習装置P1へと送信する。
【0051】
次に、算盤P3は、図5に示すように運珠情報入力手段3Aとしての機能を発揮する。具体的には、学習者や指導者が、実物の算盤P3の珠33を指で弾いて上下に動かすことにより、運珠を入力する。
3,動作説明
【0052】
次に、本システムの動作の一例を図6から図8を参照して説明する。
まず、指導者が模範運珠を入力する際の工程を図6を参照して説明する。
【0053】
模範者は、事前に前記運珠センシング装置P2の上の定位置に算盤P3を設置している。算盤学習装置P1は、模範者が算盤学習装置P1のキーボードなどの情報受付手段を使用してログインしてきた信号を受け付けると(ステップS1:Yes)、模範者の識別情報を問う画面を情報出力手段に表示し、模範者の識別情報を受け付ける(ステップS2)。識別情報が正しい場合には、模範者が模範運珠を入力したい練習問題を選択させる画面を表示し、練習問題の選択情報を受け付ける(ステップS3)。次に、選択された練習問題を表示する(ステップS4)。算盤P3がご破算の状態であれば(ステップS5:Yes)、模範運珠情報の受付を開始する(ステップS6)。ご破算の状態でなければ(ステップS5:No)、ご破算の状態とするように促す指示画面を表示する(ステップS7)。尚、ご破算の状態であるか否かは、運珠センシング装置P2からの信号にて算盤P3の珠33の状態が全てOFFになっているかを確認する。
【0054】
その後、順次、運珠センシング装置P2から送信されてくる模範者運珠情報を受け付ける。本実施形態においては、珠33の動きとなる運珠を、前記センサ22のON/OFF状態の切替情報に基づいて判断する。各珠33に対応したセンサ22のON/OFF状態が切り替わると、当該切替情報を運珠情報として扱う。また、各センサ22のON/OFF状態から全珠33の位置情報を取得する。位置情報となる全珠33のON/OFF情報は、数字情報と対応づけており数字置換情報としてデータベース化している。これにより、例えば、1の位の第5珠335のセンサ225のみがONの状態である位置情報である場合は、「5」の数字情報として判断可能としている。
受け付けた運珠は、図15に示すとおり、模範者運珠記憶手段に時系列に沿って第1運珠から順に前後の順番を認識可能な状態で記憶する(ステップS8)。本実施形態においては、各運珠及びその運珠の結果となる合計情報も運珠情報としている。各運珠は、各センサ22の切替情報にて記憶している。また、運珠を行った時点での合計情報は、全珠33の位置情報や数字情報にて記憶している。
【0055】
そして、運珠情報を受け付けた後に、ご破算の運珠情報(算盤P3の珠33の状態が全てOFFの状態)を受け付けた段階で(ステップS9:Yes)模範者運珠情報の受付を終了する。ご破算の一つ前の珠33の位置情報が計算結果である正答情報であるため、当該位置情報及び数字情報を正答情報として記憶する(ステップS10)。具体的には、ご破算の一つ前の運珠において、10の位の第1珠331と第2珠332と1の位の第1珠331と第5珠335のみがONとなっている場合には、全センサ22のON/OFF情報から判断される全珠33の位置情報と、前記数字置換情報にて当該位置情報と対応づけている「26」の数字情報を正答情報として扱う。
【0056】
続けて一定時間内に模範運珠情報の入力を終了する旨の情報を受け付けない場合には(ステップS11:No)、次の問題を表示する。一方、入力を終了する旨の情報を受け付けた場合には(ステップS11:Yes)、模範運珠情報の入力を終了する。
【0057】
次に、算盤P3の学習者が本システムを利用して学習する際の工程について図7を参照して説明する。
【0058】
学習者は、事前に前記運珠センシング装置P2の上の定位置に算盤P3を設置している。算盤学習装置P1は、学習者が算盤学習装置P1のキーボードなどの情報受付手段1Jを使用してログインしてきた信号を受け付けると(ステップS101)、図9に示すように、学習者の識別情報(学習者識別子など)を問う画面を情報出力手段1Mに表示し、学習者の識別情報を受け付ける(ステップS102)。識別情報が正しい場合には、図10に示すように、学習者が学習したい練習問題を選択させる画面を表示し、練習問題の選択情報を受け付ける(ステップS103)。尚、本実施形態においては、学習者識別子に基づいて前記学習者運珠情報記憶手段1Dから学習者の熟練度(○○級など)の情報を読み出す。そして、当該学習の熟練度に合わせた練習問題の選択情報を表示する。
【0059】
次に、選択された練習問題を表示する(ステップS104)。算盤P3がご破算の状態であれば(ステップS105:Yes)、学習者運珠情報の受付を開始する(ステップS106)。ご破算の状態でなければ(ステップS105:No)、ご破算の状態とするように促す指示画面を表示する(ステップS107)。尚、ご破算の状態であるか否かは、運珠センシング装置P2からの信号にて算盤P3の珠33の状態が全てOFFになっているかを確認する。
【0060】
詳述すると、算盤学習装置P1は、前記運珠センシング装置P2から送信されてくる各珠33に対応したセンサ22のON/OFF情報を受信することにより学習者運珠情報を受け付ける。当該学習者運珠情報受付手段1Cは、練習問題の選択情報を受け付けた後に算盤P3がご破算の状態であるとの情報を受け付けることを契機として、学習者運珠情報の受付を開始する。受付開始後に、初めて運珠センシング装置P2から送信されてきた運珠情報を第1運珠情報とする。その後、順次時系列に沿って第2運珠情報、第3運珠情報として受け付ける。
【0061】
学習者運珠情報は、前記模範運珠情報と同様に、珠33の動きとなる運珠を、前記センサ22のON/OFF状態の切替情報に基づいて判断して受け付ける。各珠33に対応したセンサ22のON/OFF状態が切り替わると、当該切替情報を運珠情報としてて受け付ける。また、各センサ22のON/OFF状態から全珠33の位置情報を取得する。位置情報となる全珠33のON/OFF情報は、数字情報と対応づけており数字置換情報としてデータベース化している。これにより、例えば、1の位の第5珠335のセンサ225のみがONの状態である位置情報である場合は、「5」の数字情報として判断可能としている。本実施形態においては、各運珠及びその運珠の結果となる合計情報も運珠情報として受け付ける。各運珠は、各センサ22の切替情報として受け付けて記憶している。また、運珠を行った時点での合計情報は、全珠33の位置情報や数字情報として受け付けて記憶している。
【0062】
算盤学習装置P1は、学習者運珠情報受付手段1Cにて学習者運珠情報を受け付けると(ステップS106)、逐次、前記模範運珠情報との照合を行う(ステップS108)。具体的には、図8に示すように、算盤学習装置P1は、運珠情報照合手段1Eを用いて照合する。前記学習者運珠情報受付手段1Cから第1運珠情報を受け付けることを契機として(ステップS201:Yes)、練習問題識別子に基づいて前記模範運珠情報記憶手段1Bから模範運珠情報を読み出す(ステップS202)。そして、当該学習者運珠情報の第1運珠情報と、前記模範運珠情報記憶手段1Bから読み出した模範運珠情報の第1運珠情報とを照合する。本実施形態においては、学習者の第1運珠の合計と模範運珠情報の第1運珠の合計が、一致するか否かを判断する(ステップS203)。
【0063】
学習者運珠情報と模範運珠情報とが一致しない場合には(ステップS205:Yes)、前記違算情報記憶手段1Fに対して違算信号(不一致信号)を学習者運珠情報と共に出力する(ステップS204)。
【0064】
不一致信号である違算信号を受信した場合には(ステップS109:Yes)、前記学習者運珠情報受付手段1Cにて受け付けた学習者運珠情報にエラーフラグを立てて(ステップS110)違算情報を付加する形式にて違算情報及び学習者運珠情報を前記学習者運珠情報記憶手段1Dに記憶する(ステップS111)。一方、一致信号を受信した場合には(ステップS109:No)、前記学習者運珠情報記憶手段1Dに前記学習者運珠情報受付手段1Cにて受け付けた学習者運珠情報を記憶する(ステップS111)。
【0065】
その後、第1運珠と同様に、学習者運珠情報を受け付け、当該学習者運珠情報の第2運珠情報と、前記模範運珠情報記憶手段1Bから読み出した模範運珠情報の第2運珠情報とを照合する。このように、ご破算情報を受け付けるまで時系列に沿って順次学習者運珠情報を受け付けて照合を行う。
【0066】
そして、運珠情報を受け付けた後に、ご破算の運珠情報(算盤P3の珠33の状態が全てOFFの状態)を受け付けた段階で(ステップS112:Yes)学習者運珠情報の受付を終了し、前記正誤判断手段1Gにて正誤判断を行う。ここで、ご破算の一つ前の珠33の位置情報が計算結果である解答情報であるため、当該位置情報及び数字情報を学習者の解答情報として記憶する。
【0067】
正誤判断手段1Gは、前記運珠情報照合手段1Eにて照合した練習問題に関する学習者の学習者解答情報と、前記模範運珠情報記憶手段1Bに記憶した正答情報とを比較して正誤判断をおこなう。詳述すると、模範運珠情報識別子に基づいて前記模範運珠情報記憶手段1Bから、運珠情報照合手段1Eにて照合していた模範運珠情報と関連づけられた正答情報を読み出す。そして、学習者運珠情報受付手段1Cにて受け付けた解答情報と比較する。本実施形態においては、前記ご破算情報を受け付ける一つ前の珠33の位置情報に基づいて学習者の解答情報を導き出す。前記学習者の解答情報と正答情報とが一致する場合には(ステップS113:Yes)、前記学習者運珠情報と共に記憶していた違算情報を消去し(ステップS114)、正答信号を後述する正答結果情報出力手段1Hに出力する。正答結果情報出力手段1Hは、正答信号を受信すると、図12に示すように「ご名算」と記した正答情報を算盤学習装置P1の画面に表示する(ステップS115)。
【0068】
一方、前記学習者の解答情報と正答情報とが一致しない場合には(ステップS113:No)、誤答信号を違算情報記憶手段1F及び違算情報出力手段1Iに出力する。
【0069】
違算情報記憶手段1Fは、誤答した練習問題の違算情報を記憶する(ステップS116)。具体的には、学習者識別子と関連付けて、学習者運珠情報識別子、違算があった運珠の学習者運珠情報、練習日時、練習問題識別子などを記憶する。
【0070】
違算情報出力手段1Iは、前記正誤判断手段1Gから誤答信号を受信すると、図13、図14に示すように、情報記憶手段に記憶されている誤答結果情報と共に、前記違算情報記憶手段1Fに記憶した違算情報と、模範運珠情報記憶手段1Bに記憶した前記模範運珠情報と模範解答情報とを読み出して前記算盤学習装置P1の画面に表示する。当該違算情報出力手段1Iは、前記学習者の解答情報と正答情報とが一致しない場合にのみ、違算情報を画面に表示する(ステップS117)。
【0071】
算盤学習装置P1は、練習問題の終了情報を受け付けるまで、前記ステップS104からステップS118までの工程を繰り返す。そして、練習問題の終了情報を受け付けた段階で処理を終了する(ステップS118:Yes)。
【0072】
次に、図15乃至図19を参照して、練習問題として、「5+6+7+8」を行う場合の模範運珠情報、学習者運珠情報について説明する。
【0073】
図15は、模範運珠情報を示している。指導者が前記練習問題の模範運珠情報を入力する際には、まず、「5」を入れるために、1の位の第5珠335を下げる。これにより、1の位の第5珠335のセンサ225がONになる。算盤学習装置P1は、運珠センシング装置P2から模範運珠情報(1の位の第5珠335のセンサ225のみがON)を受信すると、第1運珠の切替情報として、珠33の位や珠33の種別と共にセンサ22のON/OFF情報(1の位の第5珠335のセンサ225がONとなった情報)を記憶する。更に、第1運珠の位置情報としては、1の位の第5珠335のセンサ225のみがONであるとして記憶する(図示しない)。そして、上述の通り、位置情報を数字情報に置き換えて、合計を「5」として記憶する。
【0074】
次に、指導者は、「6」を足すために、1の位の第1珠331、1の位の第5珠335、10の位の第1珠331を順次上げる運珠を行う。これらの各運珠情報を受け付けるごとに、前記第1運珠と同様に、第2運珠、第3運珠、第4運珠として運珠情報を記憶する。
【0075】
このように、ご破算状態となる運珠情報を受け付けるまで図15に示すように運珠情報を記憶する。
【0076】
図16は、学習者運珠情報と模範運珠情報とが一致し、学習者の解答情報と正答情報も一致した場合、つまり、正しい運珠にて正しい答えを出した場合を示している。この場合には、前記模範運珠情報と同様に学習者運珠情報が記憶され、違算情報となるエラーフラグはたたない。
【0077】
図17は、学習者が第2運珠にて違算し、学習者運珠情報と模範運珠情報とが不一致となったが、学習者の解答情報と正答情報が一致した場合、つまり、間違った運珠にて正しい答えを出した場合を示している。この場合には、違算情報となるエラーフラグを第2運珠に立てるが、正誤判断手段1Gにて正答と判断した後に、違算情報となるエラーフラグを消去する。
【0078】
図18は、学習者が第7運珠、第8運珠にて違算し、学習者運珠情報の手順が模範運珠情報の手順よりも多くなり、学習者運珠情報と模範運珠情報とが不一致となったが、学習者の解答情報と正答情報が一致した場合、つまり、運珠の数は多いが正しい答えを出した場合を示している。この場合には、違算情報となるエラーフラグを第7運珠、第8運珠に立てるが、正誤判断手段1Gにて正答と判断した後に、違算情報となるエラーフラグを消去する。
【0079】
図19は、学習者が第5運珠から違算し、学習者運珠情報と模範運珠情報とが不一致となり、学習者の解答情報と正答情報も不一致であった場合、つまり、間違った運珠にて間違った答えを出した場合を示している。この場合には、違算情報となるエラーフラグを第5運珠から第8運珠に立てる。そして、正誤判断手段1Gにて誤答と判断した後に、違算情報を記憶すると共に、違算情報を画面に表示する。
【0080】
以上のような算盤学習システムSを構築することにより、計算の終了後に間違った運珠を事後的に把握することができるため、効果的な自習を可能とすると共に、指導者が指導指針を検討する際の好材料とすることもできる。更には、学習者の解答と正答が一致した場合には、学習者の運珠が模範運珠と異なっていたとしても正答とすることができるため、学習者が覚えている運珠に柔軟に対応することができる。
【0081】
よって、運珠の誤りを的確に把握可能としつつも、指導者の別などによる運珠の差異を許容することにより、学習効果の飛躍的な向上と運珠の柔軟性を同時に実現することが可能となる。
【0082】
更に、算盤P3の珠33の動きをセンシングするセンサ22を用いて運珠情報を読み取る運珠情報読取手段2Aと、当該センサ22にて検知した珠33の動きを運珠情報として出力する運珠情報出力手段2Bとを備える運珠センシング装置P2を具備し、前記運珠センシング装置P2からの運珠情報を学習者運珠情報として受け付けているため、既存の算盤P3を利用して当該算盤学習システムSを構築することができる。専用の算盤P3などを不要とすることにより安価且つ手軽に当該算盤学習システムSを利用可能となる。
【0083】
加えて、前記学習者運珠情報受付手段1Cが、ご破算の一つ前の珠33の位置情報に基づく解答情報を受け付けていることで、学習者が解答情報を入力などする手間を省くことができ、効率よく学習を進めることができる。
【0084】
なお、本発明における構成は、以上説明したものに限定されないのは勿論である。その他の構成も本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0085】
例えば、前記実施形態においては、運珠情報の読み取りに運珠センシング装置P2を用いると共に、運珠の入力装置として算盤P3を用いているが、当該運珠センシング装置P2と算盤P3の代わりに、例えば、ゲーム機などに利用されているタッチパネル式の端末装置を用いてもよい。具体的には、タッチパネル式の画面に、指で各々の珠を個別に接触可能な間隔に配置した略実物大の算盤の珠の画像を表示する算盤表示手段と、前記算盤表示手段の画面に接触した情報を検知して珠の動きを運珠情報として出力する運珠情報出力手段とを備える算盤表示装置を具備し、前記算盤表示装置からの運珠情報を学習者運珠情報として受け付ける。また、当該算盤表示装置に、前記実施形態における算盤学習装置P1が有するプログラムをインストールすることにより、当該算盤表示装置のみにて算盤学習システムSを構築することも可能である。
【0086】
詳述すると、算盤表示装置は、前記算盤表示手段に表示する算盤の表示情報を記憶する表示情報記憶手段及び前記算盤表示手段の画面に接触した情報を運珠情報として読み取る運珠情報読取手段も備えている。
【0087】
表示情報記憶手段には、前記算盤表示手段に表示された算盤の各珠を識別するために、各珠の識別情報と、各珠に対応した座標情報を記憶している。また、当該各珠の識別情報と座標情報に従って前記算盤表示手段に算盤の各珠を表示する表示パターンも記憶している。当該表示パターンは、運珠情報の入力者が、その指で各々の珠を個別に接触可能な間隔及び大きさに表示するものである。
【0088】
運珠情報読取手段は、運珠情報の入力者が各珠を移動したこと(運珠)を示す情報、つまり、感熱式のタッチパネルに接触した接触情報を検知することにより、前記実施形態におけるセンサ22のON/OFF状態の切替情報と同様に、各珠のON/OFF状態の切替情報を運珠情報として読み取る。尚、物理的な算盤P3と同様に珠が動くと仮定して接触情報(座標情報及び方向情報)と運珠情報を対応づけた運珠対応情報を記憶しておく。つまり、例えば、ご破算の状態から第2珠の座標上を第1珠の方向に接触したとの接触情報を検知した場合には、第1珠と第2珠をいれた(ONの状態となった)として取り扱うように運珠対応情報を記憶している。尚、前記方向情報は、接触を開始した座標情報と接触を終了した座標情報とに基づいて方向情報を認識する。つまり、接触を開始した座標情報から接触を終了した座標情報の方向へ珠を動かしたとして認識する。また、タッチパネルは、感熱式に限らず感圧式のものでもよい。
【0089】
当該算盤表示装置は、前記実施形態と同様に練習問題の学習を開始すると、前記算盤表示手段を用いて画面に略実物大の算盤の珠の画像と共に、練習問題を表示する。学習者がタッチパネルに表示した珠に接触した接触情報を検知すると、運珠情報出力手段は、当該接触箇所の座標情報及び力を入れられた方向を示す方向情報から学習者運珠情報を判断する。これにより、どの珠がどの方向へ動かされたかを認識する。そして、前記運珠対応情報を参照することにより、前記実施形態と同様に、各珠のON/OFF情報を運珠情報として前記運珠情報出力手段を用いて算盤学習装置に出力する。更に、当該運珠情報に基づく各珠の座標情報を表示情報記憶手段に出力して書き換える。そして、当該座標情報に応じた前記表示パターンを読み出し、前記算盤表示手段であるタッチパネルに表示している算盤の珠の位置を運珠情報に対応して変更する。
【0090】
その他、運珠情報照合手段1Eなどの構成については、図1乃至図19に示す前記実施形態と同様である。
【0091】
以上のような算盤表示装置を用いることにより、既存のゲーム端末などを算盤P3の代用として利用することができる。
【0092】
更に、本実施形態においては、運珠情報の合計(全珠33のセンサ22のON/OFF情報)に基づいて学習者運珠情報と模範運珠情報の照合を行っていたが、上記切替情報を用いて照合を行ってもよい。
【0093】
また、本実施形態においては、学習者運珠情報を受け付ける度に運珠情報照合手段1Eによる運珠情報の照合を行っていたが、ご破算後や正誤判断の後にまとめて行う構成とすることも考えられる。
【0094】
加えて、上記実施形態においては、事前に練習問題を算盤学習装置P1に記憶していたが、模範運珠情報の受付を行う際に練習問題の情報を受け付けてもよい。つまり、前記練習問題記憶手段に記憶する練習情報を予め記憶しておき選択させるのではなく、練習問題の情報も模範運珠情報を受け付ける際に受け付けて、両者の情報を対応付けて記憶することも考えられる。
【0095】
更に、前記実施形態においては、練習問題の識別情報となる練習問題番号や検定種別などの他、練習問題の計算問題も練習問題として扱っていたが、前記練習問題記憶手段には、練習問題の識別情報(例えば、○○級や○○年度の△△協会の第××回など)のみを記憶しておくことも考えられる。その際には、学習者などは、紙ベースの練習問題に記載されている計算問題に基づいて運珠を行う。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施形態に係る算盤学習システムSを示す概略図。
【図2】同実施形態に係る運珠センシング装置P2と算盤P3を示す概略断面図。
【図3】同実施形態に係る運珠センシング装置P2と算盤P3を示す概略断面図。
【図4】同実施形態に係る運珠センシング装置P2と算盤P3を示す概略断面図。
【図5】同実施形態に係る算盤学習システムSを示す概念説明図。
【図6】同実施形態に係る算盤学習装置P1のフローチャート。
【図7】同実施形態に係る算盤学習装置P1のフローチャート。
【図8】同実施形態に係る算盤学習装置P1のフローチャート。
【図9】同実施形態に係る算盤学習装置P1の表示画面図。
【図10】同実施形態に係る算盤学習装置P1の表示画面図。
【図11】同実施形態に係る算盤学習装置P1の表示画面図。
【図12】同実施形態に係る算盤学習装置P1の表示画面図。
【図13】同実施形態に係る算盤学習装置P1の表示画面図。
【図14】同実施形態に係る算盤学習装置P1の表示画面図。
【図15】同実施形態に係る模範運珠情報の一例を示す図。
【図16】同実施形態に係る学習者運珠情報の一例を示す図。
【図17】同実施形態に係る学習者運珠情報の一例を示す図。
【図18】同実施形態に係る学習者運珠情報の一例を示す図。
【図19】同実施形態に係る学習者運珠情報の一例を示す図。
【符号の説明】
【0097】
S・・・算盤学習システム
P1・・・算盤学習装置
P2・・・運珠センシング装置
P3・・・算盤
1A・・・練習問題記憶手段
1B・・・模範運珠情報記憶手段
1C・・・学習者運珠情報受付手段
1E・・・運珠情報照合手段
1F・・・違算情報記憶手段
1G・・・正誤判断手段
1H・・・正答結果情報出力手段
1I・・・違算情報出力手段
2A・・・運珠情報読取手段
2B・・・運珠情報出力手段
22・・・センサ
33・・・珠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
算盤を学習する際に利用する算盤学習システムにおいて、
前記算盤の練習問題を記憶する練習問題記憶手段と、
前記練習問題記憶手段に記憶した練習問題の模範運珠に基づく模範運珠情報と、当該練習問題の正答情報とを関連づけて記憶する模範運珠情報記憶手段と、
前記模範運珠情報記憶手段に模範運珠情報が記憶された練習問題を学習している学習者の運珠に基づく学習者運珠情報と、当該練習問題の学習者の解答となる学習者解答情報とを受け付ける学習者運珠情報受付手段と、
前記学習者運珠情報受付手段にて受け付けた学習者運珠情報と、前記模範運珠情報記憶手段から読み出した模範運珠情報とを照合する運珠情報照合手段と、
前記運珠情報照合手段にて照合した結果、模範運珠情報と学習者運珠情報とが一致しない場合には、違算であるとして違算情報を記憶する違算情報記憶手段と、
前記運珠情報照合手段にて照合した練習問題に関する学習者の学習者解答情報と、前記模範運珠情報記憶手段に記憶した正答情報に基づいて正誤判断をおこなう正誤判断手段と、
前記正誤判断手段にて、学習者解答情報と正答情報とが一致した場合には、正答結果情報を出力する正答結果情報出力手段と、
前記正誤判断手段にて、正答情報と学習者解答情報が一致しない場合には、前記違算情報記憶手段に記憶した違算情報を出力する違算情報出力手段とを具備することを特徴とする算盤学習システム。
【請求項2】
算盤の珠の動きをセンシングするセンサを用いて運珠情報を読み取る運珠情報読取手段と、当該センサにて検知した珠の動きを運珠情報として出力する運珠情報出力手段とを備える運珠センシング装置を具備し、
前記運珠センシング装置からの運珠情報を学習者運珠情報として受け付けることを特徴とする請求項1記載の算盤学習システム。
【請求項3】
タッチパネル式の画面に、指で各々の珠を個別に接触可能な間隔に配置した略実物大の算盤の珠の画像を表示する算盤表示手段と、前記算盤表示手段の画面に接触した情報を検知して珠の動きを運珠情報として出力する運珠情報出力手段とを備える算盤表示装置を具備し、
前記算盤表示装置からの運珠情報を学習者運珠情報として受け付けることを特徴とする請求項1記載の算盤学習システム。
【請求項4】
前記学習者運珠情報受付手段が、ご破算の一つ前の珠の位置情報に基づく解答情報を受け付けることを特徴とする請求項1乃至3記載の算盤学習システム。
【請求項5】
算盤を学習する際に利用する算盤学習システムに用いるコンピュータを、
前記算盤の練習問題を記憶する練習問題記憶手段と、
前記練習問題記憶手段に記憶した練習問題の模範運珠に基づく模範運珠情報と、当該練習問題の正答情報とを関連づけて記憶する模範運珠情報記憶手段と、
前記模範運珠情報記憶手段に模範運珠情報が記憶された練習問題を学習している学習者の運珠に基づく学習者運珠情報と、当該練習問題の学習者の解答となる学習者解答情報とを受け付ける学習者運珠情報受付手段と、
前記学習者運珠情報受付手段にて受け付けた学習者運珠情報と、前記模範運珠情報記憶手段から読み出した模範運珠情報とを照合する運珠情報照合手段と、
前記運珠情報照合手段にて照合した結果、模範運珠情報と学習者運珠情報とが一致しない場合には、違算であるとして違算情報を記憶する違算情報記憶手段と、
前記運珠情報照合手段にて照合した練習問題に関する学習者の学習者解答情報と、前記模範運珠情報記憶手段に記憶した正答情報に基づいて正誤判断をおこなう正誤判断手段と、
前記正誤判断手段にて、学習者解答情報と正答情報とが一致した場合には、正答結果情報を出力する正答結果情報出力手段と、
前記正誤判断手段にて、正答情報と学習者解答情報が一致しない場合には、前記違算情報記憶手段に記憶した違算情報を出力する違算情報出力手段として機能させるための算盤学習プログラム。
【請求項6】
算盤を学習する際に利用する算盤学習方法において、
前記算盤の練習問題を記憶する練習問題記憶工程と、
前記練習問題記憶工程にて記憶した練習問題の模範運珠に基づく模範運珠情報と、当該練習問題の正答情報とを関連づけて記憶する模範運珠情報記憶工程と、
前記模範運珠情報記憶工程にて模範運珠情報が記憶された練習問題を学習している学習者の運珠に基づく学習者運珠情報と、当該練習問題の学習者の解答となる学習者解答情報とを受け付ける学習者運珠情報受付工程と、
前記学習者運珠情報受付工程にて受け付けた学習者運珠情報と、前記模範運珠情報記憶工程から読み出した模範運珠情報とを照合する運珠情報照合工程と、
前記運珠情報照合工程にて照合した結果、模範運珠情報と学習者運珠情報とが一致しない場合には、違算であるとして違算情報を記憶する違算情報記憶工程と、
前記運珠情報照合工程にて照合した練習問題に関する学習者の学習者解答情報と、前記模範運珠情報記憶工程に記憶した正答情報に基づいて正誤判断をおこなう正誤判断工程と、
前記正誤判断工程にて、学習者解答情報と正答情報とが一致した場合には、正答結果情報を出力する正答結果情報出力工程と、
前記正誤判断工程にて、正答情報と学習者解答情報が一致しない場合には、前記違算情報記憶工程に記憶した違算情報を出力する違算情報出力工程とを具備する算盤学習方法。
【請求項7】
請求項2記載の算盤学習システムにて用いる運珠センシング装置であって、算盤の珠の動きをセンシングするセンサを用いて運珠情報を読み取る運珠情報読取手段と、当該センサにて検知した珠の動きを運珠情報として出力する運珠情報出力手段とを備えることを特徴とする運珠センシング装置。
【請求項8】
請求項3記載の算盤学習システムにて用いる算盤表示装置であって、タッチパネル式の画面に、指で各々の珠を個別に接触可能な間隔に配置した略実物大の算盤の珠の画像を表示する算盤表示手段と、前記算盤表示手段の画面に接触した情報を検知して珠の動きを運珠情報として出力する運珠情報出力手段とを備えることを特徴とする算盤表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−294257(P2009−294257A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145065(P2008−145065)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(503442606)
【Fターム(参考)】