説明

算術演算におけるスティッキイ・ビット値の判別装置

【目的】 浮動小数点演算の進行と同時に演算結果のスティッキイ・ビット値を判別して浮動小数点演算の高速化を図る。
【構成】 オペランドを保持するレジスタ10,20と、オペランドの後続ゼロの数を検出する後続ゼロ検出論理回路12,22と、それらの数を加算又は減算する加減算回路30と、その計算結果と定数値とを比較してスティッキイ・ビット値を出力する比較回路40とから成り、浮動小数点演算の結果としてスティッキイ・ビット位置に指定するべき正しい値を判別することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はデータ処理システムにおいて浮動小数点算術演算を実行する装置に関する。この発明は、特にオペランド浮動小数点の計算結果の値に現われた“スティッキイ・ビット”値の早期判別を行うようオペランドを処理することによって浮動小数点算術演算の完了を簡素化する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】データ処理システムの演算に浮動小数点算術演算を使用することは、コンピュータ技術の開始以来、実際上、普通なことであった。浮動小数点算術演算ハードウェアの開発は、通常、ハードウェア構造の簡素化、又は算術演算処理の高速化の目的から多くの形式がとられてきた。4つの算術計算である加算,減算,掛算、及び割算は通常加算及び減算を含む処理の特殊サブセットを使用して達成してきた。例えば、掛算演算は、多くの場合、反復加算処理によって行われ、割算は反復減算処理によって達成することができる。
【0003】これらの処理演算の高速化に対しては、特に最終的には、全べての算術演算の処理速度の最高速度を限定することになる加算回路のハードウェア回路設計に対する拡張及び簡潔化に焦点が当てられ、そこに努力が払われてきた。例えば、割算の場合、割算計算のために要求される加算又は減算の反復数を減少するため、部分商の計算又は倍数商ビットの同時予測によって演算速度を高めるよう努力が払われてきた。
【0004】浮動小数点算術演算システムの実施を管理する規則の一様な体系を与えるため、米国標準規格が開発された。この標準規格はANSI/IEEE基準第754−1985号として認識され、ここで参考文献に編入される。それは浮動小数点算術演算システム及びアルゴリズムの設計において、この基準に合致した結果を達成すること、及びかかるシステム及びアルゴリズムの使用者は他の異なるコンピュータ・システムを使用して問題を解決する場合、その問題に対する計算及び解答において相互に適合性を達成することを可能にすることがその主要目的である。
【0005】この基準は基本及び拡張浮動小数点数のホーマット,算術演算,整数と浮動小数点ホーマット間の変換、異なる浮動小数点ホーマット間の変換,基本形式の浮動小数点数と10進数ストリング間の変換、及びある浮動小数点の例外の取扱い等を明確にしている。
【0006】典型的な浮動小数点算術演算は単一精度か又は倍精度ホーマットのいずれかで遂行することができる。これら各ホーマットは、それぞれのフィールドが浮動小数点数の予め定められた部分を占有するようにしたサイン又は符号フィールド、対数フィールド、及び小数部フィールドを使用する。32ビットの単一精度数の場合、サイン・フィールドは最高位ビット位置を占める単一ビットであり、対数フィールドは最高位の次のビット位置を占める8ビット数であり、小数部フィールドは最下位位置を占める23ビットである。
【0007】倍精度浮動小数点数の場合、サイン・フィールドは最高位ビット位置を占める単一ビットであり、対数フィールドは最高位ビットの次のビット位置を占める11ビット・フィールドであり、小数部フィールドは最下位ビット位置を占める52ビット・フィールドである。
【0008】各浮動小数点の計算結果又は答が引出された後、その答は正規化され、丸め又は端数切捨てされなければならない。答が正規化されたときに小数部フィールドの先行ゼロの数を計数する。その数は対数から減算され、“1”が小数部フィールドの最高位ビット位置にくるまで小数部を左に移動する。
【0009】ANSI/IEEE基準第754−1985号に適合して浮動小数点算術演算を実行するハードウェア及びロジックの設計の際、浮動小数点ハードウェアの演算にある追加の表示ビットを加えることが必要であり、望ましい。これら表示ビットは浮動小数点数の小数部フィールドに挿入され、浮動小数点演算においてある状態が存在したときに浮動小数点制御ロジックがそれを表示するために使用される。
【0010】例えば、浮動小数点数の対数が非ゼロ値を有するときに、“暗黙”ビットIが算術制御ロジックによって“1”にセットされる。暗黙ビットIは浮動小数点数が算術レジスタにロードされたときに作成され、その数の小数部フィールドの第1ビット位置を占める。その上、ある算術演算中、丸め方の表示として“保護”又はガード(guard)ビットGが浮動小数点制御ロジックによってセットされる。
【0011】このGビットは丸め前の計算結果又は答えの最下位ビット(LSB)ではなく、最下位から1ビット次のビット位置を占める。最後に、“スティッキイ”(sticky) ビットSは、“保護”ビット(G)より低い精度のビットのいずれかが“1”であるときに、浮動小数点数がある精度を失ったことを表示する表示として、すべての浮動小数点算術演算においてセットされる表示ビットである。
【0012】小数部フィールドの特別ビットは計算結果を正規化した後、丸め(又は端数切捨)演算のために排他的に使用される。“保護”(G)ビットは、恰も小数部の一部であるかの如くに取扱われ、残りの小数部と共に移動し、すべての算術に含まれる。スティッキイ・ビット(S)は小数部と共に移動はしないが、算術には含まれる。それは小数部の右端が移動切捨される“1”のための“キャッチャ”として動作し、“1”が小数部の右端から移動切捨されたときに、正規化及び丸め演算が終了するまでスティッキイ・ビット(S)がその“1”を保持する。
【0013】IEEE基準に基づく丸め(又は端数切捨)演算においては下記のように使用される4つの丸めモードがある。
1)最も近くに丸めモード2)正無限大に丸めモード3)負無限大に丸めモード4)ゼロに丸めモード
【0014】“最も近くに丸め”モードは限り無く精密な計算結果に最も近い値が送出されるべきことを意味する。2つの最も近い表示可能な値が等しく近くにある場合、その最下位ビットにゼロを持つものが送出される。“正無限大に丸め”モードは無限に精密な計算結果より小さくなり、無限に精密な計算結果に最も接近した値が送出されるべきことを意味する。“負無限大に丸め”モードは無限に精密な計算結果より大きくなく、無限に精密な計算結果に最も接近した値が送出されるべきことを意味する。“ゼロに丸め”モードは送出される計算結果が無限に精密な計算結果よりその大きさは大きくなり、無限に精密な計算結果に最も接近されるべきことを意味する。
【0015】しかしながら、加算又は減算を実行する加算機構を使用する算術回路はどれも必然的に最下位ビット位置からより高位のビット位置に伝播する桁上げビットの発生を含み、事実、算術演算中、すべてのビット位置を通して伝播することができる。これは計算終了に必要な処理時間を延長する結果となり、この問題を取扱う種々多くの設計努力が払われてきた。
【0016】例えば、1988年6月28日発行の米国特許第4,754,422号は算術演算の各反復又は周期を通して複数の商ビットを作成する作業において3つの桁上げ保管加算機構を使用した割算装置を開示している。又、1971年11月16日に発行した米国特許第3,621,218号は算術演算の各反復を通して複数の商ビットを作成する単一桁上げ保管加算機構と、演算に使用される一列の部分商を保持する複数のレジスタとを使用する高速割算機構を開示している。
【0017】更に、1987年1月27日に発行された米国特許第4,639,887号は浮動小数点の加算及び減算に対する待ち時間を減少する装置を開示している。その発明は浮動小数点数の小数部に対する算術演算の計算のために重複ハードウェアを使用し、そして対数の差による計算結果の値を選択するようにした。
【0018】データ処理システムにおける如何なる浮動小数点の演算においても、1以上の浮動小数点演算の効率を高めることが望まれる。この効率の増強はシステムの演算全体のそれに比例した時間節約に変えられる。ある効率は特定の状況下において高めることが可能であり、そのあるものは上記の従来技術の開示に例示されている。これら効率の利用は、データ処理演算の進行中、上記の特定の状況が相当頻繁に出現するかもしれない場合には特に重要な価値がある。
【0019】例えば、浮動小数点算術計算は、答が出たときには正規化が頻繁に要求され、答が不正確な場合には頻繁に丸め演算が要求される。しかし、これら演算のどちらか又は両方共、計算結果にある状態が存在するときにはスキップされるかもしれない。従って、スキップしない場合には、これら演算の実行のために使用される時間をスキップした結果、その時間だけ節約されることになる。
【0020】浮動小数点掛算演算における正規化及び丸め(又は端数切捨)工程はある演算条件下においては約25%の時間を削減することができ、浮動小数点加算及び減算演算に対する正規化及び丸め工程では、ある条件に従い約25%の時間を節約することができる。それらの条件が時間短縮可能であるということを提案したときに、それら上記の工程を除去することにより、コンピュータ処理時間の全体的節約が達成される。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】“保護”ビット(G),“スティッキイ”・ビット(S)、及び最下位ビット(LSB)の状態と、計算結果のサインと、丸めモードとは全べて正しい丸めが行われた小数部の計算結果を送出するため、最下位ビットが増分されるべきか否かを判別し、丸め演算をスキップしうるか否かの決定に使用される。従って、“スティッキイ”・ビット(S)の状態は通常最終結果を送出する前に知られなければならないということになる。
【0022】従って、本発明の主要目的は、浮動小数点演算処理が進行中、同時に計算結果のスティッキイ・ビット値を判別する装置を提供することである。
【0023】本発明の他の目的は、演算に使用されるオペランドを処理することによって、浮動小数点算術演算におけるスティッキイ・ビット値を提供することである。
【0024】本発明の他の目的は、全体的な浮動小数点算術演算の速度を速くすることである。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の問題を解決するため、下記の如く構成した。すなわち、本発明は、浮動小数点処理計算とは別に、本発明に従い浮動小数点処理と同時に進行することができるようスティッキイ・ビット(S)の判別を行うようにした、オペランドを処理する方法及び装置を提供することを特徴とする。本発明は、浮動小数点演算が進行中に各オペランドの後続ゼロの数を検出する回路を使用する。
【0026】各オペランドに対する後続ゼロ検出論理回路は加算機構に接続されて総和値を算出し、比較器がその総和値と所定の値とを比較して算術浮動小数点演算のために必要なスティッキイ・ビットの最終値を判別する。この発明はわずかな変更を行うことによって浮動小数点掛算、割算、及び平方根計算に対して使用することができる。それら各演算は以下の実施例において詳細に説明する。
【0027】
【実施例】以下、添付図面に基づき本発明の一実施例を詳細に説明する。本実施例は、掛算及び割算の両算術演算のために適切なスティッキイ・ビット(S)値の判別に対して特に有益である。本発明は、又平方根算術演算のような特殊割算演算に対しても使用することができる。以下、本発明は、最初、掛算演算について説明し、次に割算演算について説明して、最後に平方根演算について説明する。すべての演算について、暗黙ビット(I)は“1”であるものとみなされる。
【0028】掛算演算図1は本発明の実施例による装置を掛算演算に対して実施した場合の例を示す。図1に示す装置は実際の掛算演算を実行する回路と同時にそれとは独立して動作する。そして、その装置は掛算回路から算出された計算結果の値と、それと同時に使用可能となるスティッキイ・ビット値を作成する。
【0029】スティッキイ・ビット値は乗数及び被乗数の両小数部オペランドにある後続ゼロ・ビットの値を判別することによって算出される。小数部の後続ゼロ・ビットの数はオペランドの精度の指示量であり、入力オペランドの精度は、ビット位置の数が無制限であった場合に表示されるであろうような出力小数部の精度の予測のために使用される。予測結果の小数部精度はスティッキイ・ビットの状態の判別に使用される。
【0030】積の計算結果の精度を予め判別するため、最初2つの2進値の掛算のための基本前提部を考察することが有益である。LA が2進“1”の値のみを取囲む2進オペランドAの長さを表わすとすれば、先行及び後続ゼロすべては2進小数点の位置と共に無視することができる。故に、LB 及びLC も同様にオペランドB及びCの長さを表わすものとする。
【0031】次の方程式に対する積Cを検査する場合、A×B=C次式の関係を確証することができる。
A +LB −1C A +LB
【0032】次の例は上記方程式を例証するものである。


【0033】図1に例示した装置は、如何なるものでも被乗数小数部と乗数小数部の積に対するスティッキイ・ビット値を判別するに必要な比較及び計算を実行する。この例は倍精度算術演算を例示するものであるが、スティッキイ・ビットのビット位置のある記憶場所は公知であり、すべての異なる算術演算に対して設定することができるから、同様な類似する例を単一精度算術演算、及び単一及び倍拡張精度算術演算に対して適用することもできる。
【0034】図1において、被乗数小数部はレジスタ10に保持され、乗数小数部はレジスタ20に保持される。倍精度の設計と仮定すると、52ビットのレジスタ10は後続ゼロ検出論理回路12によって監視され、後続ゼロ検出論理回路12は検出した後続ゼロの数を表わす6ビット2進出力を発生する。
【0035】後続ゼロの数は1乃至52の如何なる数でも存在することができるから、6ビット出力2進表示は発生しうる如何なる後続ゼロの数の表示にも適応することができる。レジスタ20に保持されている乗数小数部も同様に後続ゼロ検出論理回路22によって監視される。後続ゼロ検出論理回路22は乗数小数部で検出された後続ゼロの数を表示する6ビット2進出力値を発生する。
【0036】後続ゼロ検出論理回路12及び22によって検出された2進出力値は出力31に2つの入力の総和を発生する加算回路30に接続される。2つの6ビット入力値の総和は7ビット出力値を発生するかもしれず、出力31は加算演算から生じた如何なる7ビット出力値をも表示することができる。出力31は比較回路40に接続され、比較回路40はその出力値と、比較回路40の第2の入力に接続された定数数値“51”とを比較する。
【0037】比較の有意度又は重みは計算結果の小数部レジスタの大きさと、“保護”ビット(G)及び“スティッキイ”・ビット(S)を保持するよう選ばれたそれぞれのビット位置とに関係する。2つの53ビット小数部(暗黙ビットを含む)の掛算は絶対精度が維持されるべき場合、106ビット小数部の答が得られる。
【0038】絶対精度を得るために要求される大きさのレジスタ及び記憶位置を設計することは実際的ではないので、53ビット・サイズの小数部レジスタに答又は計算結果を収容するため、及びそれと同時に掛算演算で算出された相対的精度(又は精度の不足)の記録を保持するため、ここに述べるような種々の特別目的のビットが考案された。従って、暗黙ビット(I)、保護ビット(G)、及びスティッキイ・ビット(S)に対応する3つの特別目的ビット位置が、それら計算結果と共に伝送され、全体的な掛算演算の一部として開発されるよう考案された。
【0039】以上、これら特別ビットの目的を説明したが、そこで暗黙ビット(I)は小数部の計算結果全体の第1ビット位置を占める。実際の計算結果の小数部はビット位置2−53(すなわち52ビット・フィールド)を占有する。保護ビット(G)はビット位置54を占有する。比較回路40は2つの入力の和の精度が保護ビット位置に対して測定された精度より低いか、又は等しいか否かを判別する。
【0040】2つの入力の和の精度が保護ビット位置に対して測定された精度より低いか又は等しい場合、スティッキイ・ビットは0でなければならず、その値は掛算演算が線41の信号を用いてスティッキイ・ビットに指定する値である。すなわち、掛算演算は線41の信号を用いてスティッキイ・ビット値を強制的に0にセットするよう処理する。2つの入力の和の精度が保護ビット位置に対して測定された精度より高い場合、スティッキイ・ビットの値は“1”でなければならず、比較器40の出力から出る線42の信号はスティッキイ・ビット値を1にセットするために使用される。
【0041】又、考慮しなければならない1つの不明確又は不定な場合がある。この場合は、2つの入力の和の精度がスティッキイ・ビット位置に対して測定された精度に等しい場合に発生する。これらの場合、精度長の公式は保護ビット位置に対して測定されたものと、スティッキイ・ビット位置に対して測定されたものどちらでも、計算結果の2つの可能性のある値を許容するので、スティッキイ・ビットの値は不定である。故に、この場合、スティッキイ・ビットは図1の回路によって予測されないかもしれず、スティッキイ・ビットの値は小数部の掛算処理によって判別されなければならない。
【0042】しかしながら、この場合、スティッキイ・ビット位置の右側にはビット存在の可能性がないので、遅延が加えられない。それ故、スティッキイ・ビット値は、可能な1ビット正規化移動の後は、単にスティッキイ・ビット位置のビットの値に等しい。そして、回路は線43の信号を用い、掛算演算それ自体によってスティッキイ・ビット位置の値を判別することを許す。
【0043】割算演算2つの2進数の割算を実行する1つの方法は除数の逆数に被除数を掛けるニュートン・ラフソン近似式を使用して商を算出することである。下記のニュートン・ラフソンの公式を反復することにより、現在の逆数Xi と除数Dとから次の逆数Xi +1を算出する。
i +1=Xi *(2−D*Xi
次の逆数Xi +1は前の逆数の2倍のように多数ビットによる精度を有する。
【0044】少くとも希望する最終商の精度と同じ大きさの精度を持つ最後の逆数を得るために十分な反復が行われた場合でも、まだ商が出たときにその公式が有限的に表示可能ではないかもしれない逆数を発生する場合があるため、その最下位ビット位置に1ビットの誤りがある可能性がある。
【0045】例えば、1100/0011=0100;
であるが、0011の逆数は0.01010101010101・・・,であり、それが1100によって掛算されると0011.11111111111・・・,が算出される。そして、その商に最下位ビット位置がある限り、その最下位ビット位置に1ビットの誤りの可能性がある。
【0046】掛算演算に従って説明した方式は割算演算についても使用することができる。掛算の積の長さを確認するためにオペランドの長さを使用した前述の例は商の長さを確認するために割算にも適用しうるよう言い換えることができる。すなわち、A*B=CはC/A=Bと同じである。
【0047】割算演算のために下記方程式を使用する。
C −LA B C −LA +1割算演算において、正確な計算結果又は答はビット長(LC −LA )の差異か又はビット長+1(LC −LA +1)の差異を含むであろう。他の如何なる長さの答も不正確なものである。
【0048】図2は、割算演算のためのスティッキイ・ビット(S)を予測するに必要な論理回路のブロック図である。被除数小数部はレジスタ100に保持され、除数小数部はレジスタ120に保持される。各レジスタ100及び120は後続ゼロ検出論理回路112,122に接続される。すなわち、レジスタ100は後続ゼロ検出論理回路112に、レジスタ120は後続ゼロ検出論理回路122に接続される。
【0049】各後続ゼロ検出論理回路112,122はそれぞれの小数部の後続ゼロの数を表わす2進出力値を出力する。後続ゼロ検出論理回路112,122の出力値は調節定数+54と共に2の補数加算機構である減算回路130の入力に対して接続され、後続ゼロ検出論理回路122の出力は補数にされる。減算回路130の出力は比較回路140の入力に対して接続される。
【0050】割算演算を終了した後、商小数部はレジスタ150に現われる。レジスタ150は後続ゼロ検出論理回路152に接続され、そこで保護ビット位置から測定した商小数部の後続ゼロの数を表わす2進出力値を発生する。後続ゼロ検出論理回路152の出力は比較回路140の入力に対して接続される。
【0051】比較回路140は出力を発生して計算結果レジスタのスティッキイ・ビット(S)位置に入力する。すなわち、比較器140が2つの入力値を等しいと判別すると、線141の出力“S”は0であり、比較器140が2つの入力値を等しくないと判別すると、線141の出力“S”は“1”である。
【0052】平方根演算平方根算術演算は割算演算の特殊ケースと考えることができる。そこで、被除数は知られており、等しい値を持つ除数と商とを識別するよう判別がなされなければならない。この場合の“被除数”を“被開数小数部”と称し、“除数”及び“商”は“根小数部”と称する。正規化された被開数小数部が与えられると、被開数の有意度は小数部フィールドの長さから後続ゼロの数を減じた値となる。
【0053】平方根演算は次の方程式の解を求めようとする試みを実行することである。
被開数(RAD)=根*根スティッキイ・ビット(S)値を判別する前述の方式は些細な変更のみによって平方根演算にも使用することができる。例えば、有意ビットの長さを判別する方程式は下式のように減縮される。
ROOT=(LRAD +1)/2 、又はLROOT=LRAD /2; 全部整数を発生するときは常に。
【0054】被開数の精度は常に最大小数部フィールド長より短いか等しいから、根の有意度は、根が無理数でなく、無限長(例えば、2の平方根)を持たない場合、決して小数部フィールド長の1/2を越えることはできない。故に、根有意度が無限でない場合には、全べて、スティッキイ・ビット(S)は0であり、有意なLROOTのビット数は前述のように判別される。そこで、問題は、根が無限の有意度を持つとき、従って“1”のスティッキイ・ビット(S)を持つときを判別する場合である。
【0055】図3は平方根演算のスティッキイ・ビット(S)の値を判別するためのブロック図を示す。被開数はレジスタ200に保持され、レジスタ200は後続ゼロ検出論理回路212に接続され、後続ゼロ検出論理回路212は“二分割”回路230に接続される。“二分割”回路230は後続ゼロ検出論理回路212の出力を比較回路240の入力に接続する前に、その出力の値を単に1位置だけ右に移動する回路であってよい。比較回路240に対するもう一方の入力は後続ゼロ検出論理回路252の出力から接続される。
【0056】後続ゼロ検出論理回路252の入力は計算結果根小数部レジスタ250の出力から接続される。“二分割”回路230の出力の後続ゼロの数が後続ゼロ検出論理回路252の出力の後続ゼロの数に等しいと比較回路240が判断すると、出力線241の信号はスティッキイ・ビット(S)位置を“0”に設定し、“二分割”回路230の出力の後続ゼロの数が後続ゼロ検出論理回路252の出力の後続ゼロの数に等しくないと比較回路240が判断すると、出力線241の信号はスティッキイ・ビット(S)位置を“1”に設定する。
【0057】以上、本発明の一実施例を説明したが、本発明はその理念及び本質から離れることなく、多くの他の形式で実施することができ、その各部を変化変更することができる。
【0058】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように、浮動小数点演算の進行と同時にオペランドを処理して演算結果のスティッキイ・ビット値を判別することによって、浮動小数点の演算を相当高速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による掛算演算に使用する装置を示すブロック図
【図2】本発明の一実施例による割算演算に使用する装置を示すブロック図
【図3】本発明の一実施例による平方根演算に使用する装置を示すブロック図
【符号の説明】
10 被乗数小数部レジスタ
12,22,112,122,152,212 後続ゼロ検出論理回路
20 乗数小数部レジスタ
30 加算回路
40,140,240 比較回路
100 被除数小数部レジスタ
120 除数小数部レジスタ
130 減算回路
150 商小数部レジスタ
200 被開数レジスタ
230 二分割回路
250 計算結果根小数部レジスタ
252 後続ゼロ検出論理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 a) 算術オペランドの各々を保持するレジスタ手段と、b) 各前記レジスタ手段に接続され、前記算術オペランドの後続ゼロの数を含む出力を供給する手段を含む後続ゼロ検出回路と、c) 各前記出力を入力して算術和するよう接続され、前記出力の和又は差を供給する加算又は減算回路と、d) 前記加算又は減算回路から出力された和又は差を受信するよう接続された比較回路とを含み、2進コンピュータ・プロセッサにおいて浮動小数点算術演算の計算結果としてのスティッキイ・ビット値を判別することを特徴とするスティッキイ・ビット値の判別装置。
【請求項2】 前記加算又は減算回路は更に2つの算術オペランドの後続ゼロ数の和を供給する手段を有する加算回路を含むことを特徴とする請求項1記載のスティッキイ・ビット値の判別装置。
【請求項3】 前記加算又は減算回路は更に定数値によって調整された2つの算術オペランドの後続ゼロの数の差を供給する手段を有する減算回路を含むことを特徴とする請求項1記載のスティッキイ・ビット値の判別装置。
【請求項4】 前記算術オペランドの各々を保持するレジスタ手段は単一オペランド・レジスタを含むことを特徴とする請求項1記載のスティッキイ・ビット値の判別装置。
【請求項5】 前記加算又は減算回路は更に前記後続ゼロ検出回路の出力を1ビット位置右移動する手段を有する二分割回路を含み、前記判別装置は更に前記オペランド・レジスタに記憶されたオペランド値の平方根値を記憶する手段を有する根小数部レジスタを含むことを特徴とする請求項4記載のスティッキイ・ビット値の判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平5−241787
【公開日】平成5年(1993)9月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−299146
【出願日】平成4年(1992)10月13日
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレイション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION