説明

管ライニング材及び管路補修工法

【目的】 平坦な側壁を有する管路に対しても所望のライニング厚を確保することができる管ライニング材及び管路補修工法を提供すること。
【構成】 その厚さが円周方向に対して部分的に厚くされた管ライニング材1を管路6内に挿入し、該管ライニング材1を流体圧で管路6の内周面に押圧したまま、管ライニング材1に含浸された硬化性樹脂を硬化させて管路6の内周面をライニングする。平坦な垂直壁6a,6aを有する管路6をライニングする場合、管ライニング材1の厚い部分(樹脂吸収材5,5が配された部分)が管路6の垂直壁6a,6aに押圧されるようにすれば、この厚い部分に含浸された硬化性樹脂が樹脂吸収材2,3,5から押し出されて垂れても、この部分の厚さは少なくとも他の部分の厚さと同等以上に維持されるため、平坦な垂直壁6a,6aを有する管路6に対しても所望のライニング厚を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に平坦な側壁を有する管路をライニングして補修する管路補修工法及び該工法に使用される管ライニング材に関する。
【0002】
【従来の技術】地中に埋没された下水道管等の管路が老朽化した場合、該管路を掘出すことなくその内周面にライニングを施して当該管路を補修する管路補修工法が既に提案され、実用に供されている(例えば、特開昭60−242038号公報参照)。即ち、この管路補修工法は、例えば熱硬化性樹脂を含浸した可撓性の管ライニング材を例えば水圧によって管路内に反転させながら挿入するとともに、これを管路内周面に押圧し、その後、管ライニング材内に充満する水を蒸気等によって加熱して温水とし、この温水で管ライニング材に含浸された熱硬化性樹脂を硬化させることによって、管路の内周面を硬化した管ライニング材でライニングする工法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記工法に用いられる管ライニング材は全周に亘って均一な厚さを有しているため、該管ライニング材を用いてボックスカルバート管、アーチカルバート管等の平坦な側壁を有する管路を補修する場合には、管路の側壁に押し当てられる管ライニング材部分に含浸された硬化性樹脂が樹脂吸収材から押し出されて下部に垂れ、その部分の管ライニング材の厚さが15%〜30%程度薄くなり、ライニングに必要な管ライニング材の設計厚を確保することができないという問題があった。尚、管路に欠損部分が存在する場合、その欠損部分に対応する管ライニング材部分だけを部分的に(即ち、管ライニング材の長さ方向に対して部分的に)厚くする方法は既に提案されている(特開平1−127319号公報参照)。
【0004】本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、特に平坦な側壁を有する管路に対しても所望のライニング厚を確保することができる管ライニング材及び管路補修工法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく本発明は、不織布から成る管状の樹脂吸収材の外周面を気密性の高いフィルムで被覆して成る管ライニング材において、前記樹脂吸収材の厚さを円周方向に対して部分的に厚くしたことを特徴とする。
【0006】又、本発明工法は、上記管ライニング材を管路内に挿入し、該管ライニング材を流体圧で管路内周面に押圧したまま、管ライニング材に含浸された硬化性樹脂を硬化させて管路内周面をライニングすることを特徴とする。
【0007】
【作用】本発明工法を用いてボックスカルバート管等の平坦な側壁を有する管路をライニングする場合、管ライニング材の厚い部分が管路の側壁に押圧されるようにすれば、この厚い部分に含浸された硬化性樹脂が樹脂吸収材から押し出されて垂れても、この部分の厚さは少なくとも他の部分の厚さと同等以上に維持されるため、斯かる平坦な側壁を有する管路に対しても所望のライニング厚を確保することができる。
【0008】
【実施例】以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0009】図1は本発明に係る管ライニング材1の部分斜視図であり、図中、2,3はポリエステル、ポリプロピレン、アクリル等の不織布から成る内外二重管状の樹脂吸収材であり、外側の樹脂吸収材3の外周面は機密性の高いプラスチックフィルム4で被覆されている。尚、プラスチックフィルム4の材質としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレン/ナイロン共重合体、塩化ビニール等が選定される。
【0010】而して、本発明に係る管ライニング材1の前記樹脂吸収材2,3の間には、当該管ライニング材1の長さ方向に長い不織布(樹脂吸収材2,3と同材質の不織布)から成る帯状の2枚の樹脂吸収材5,5が両側面部分に内部的に(図示例では、側面部分に)設けられている。従って、当該管ライニング材1においては、その厚さが円周方向に対して2箇所で部分的に厚く構成されている。
【0011】尚、図1には管ライニング材1の厚さを部分的に厚くするための樹脂吸収材5,5を管ライニング材1の両側面部に設けた例を示したが、図2に示すように樹脂吸収材5,5を中央部分の上下に配して管ライニング材1の中央部を部分的に厚く構成しても良い。
【0012】次に、蒸気管ライニング材1を用いた本発明に係る管路補修工法を図3乃至図6に基づいて説明する。尚、図3は管ライニング材1の反転挿入状態を示す断面図、図4は図3のA−A線拡大断面図、図5は管ライニング材1の反転挿入終了時の状態を示す断面図、図6R>6は図5のB−B線拡大断面図である。
【0013】本発明工法が適用される管路6は、図4に示すように、平坦な垂直壁6a,6aを有する略矩形状の開口断面を有するものである。
【0014】而して、図3に示すように上記管路6内には硬化性樹脂が含浸された管ライニング材1が例えば空気圧を利用した公知の反転法によって反転されながら図示矢印方向に挿入される。このとき、管ライニング材1の厚い部分(樹脂吸収材5,5が配される部分)が管路6の垂直壁6a,6aに押圧されるように調整される(図6参照)。
【0015】そして、管ライニング材1が図5に示すように管路6の全長に亘って反転挿入されると、管ライニング材1の内圧はそのまま保持され、図6に示すように、管ライニング材1においてはその内周面にプラスチックフィルム4が位置するとともに、樹脂吸収材5,5が配されている厚い部分が管路6の垂直壁6a,6a部分に押圧される。このとき、管ライニング1の垂直壁6a,6aに押し当てられる厚い部分に含浸された硬化性樹脂が圧力によって樹脂吸収材2,3,5から押し出されて下部へ垂れても、この部分の厚さは予め厚く設定されているため、少なくとも他の部分の厚さと同等以上に維持されることとなる。
【0016】その後、図5に示す状態を保ったまま、管ライニング材1の樹脂吸収材2,3,5に含浸された硬化性樹脂を加温等してこれを硬化させれば、管路6の内周面は硬化した管ライニング材1によってライニングされて補修されるが、前述のように管路6の垂直壁6a,6a部分に押し当てられる管ライニング材1部分(樹脂吸収材5,5が配される部分)の厚さは少なくとも他の部分と同等以上となるため、平坦な垂直壁6a,6aを有する管路6に対しても所望のライニング厚を確保することができる。
【0017】尚、以上の実施例では、管ライニング材1を管路6内に反転挿入したが、図7に示すように管ライニング材1を管路6内に引き込み、該管ライニング材1内に管状のオープンライナー7を流体圧によって反転挿入して管ライニング材1を押し拡げるようにしても良い。
【0018】
【発明の効果】以上の説明で明らかな如く、本発明によれば、樹脂吸収材の厚さが円周方向に対して部分的に厚くされた管ライニング材を管路内に挿入し、該管ライニング材を流体圧で管路内周面に押圧したまま、管ライニング材に含浸された硬化性樹脂を硬化させて管路内周面をライニングするようにしたため、平坦な側壁を有する管路に対しても所望のライニング厚を確保することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る管ライニング材の部分斜視図である。
【図2】本発明の別実施例に係る管ライニング材の部分斜視図である。
【図3】管ライニング材の管路内への反転挿入状態を示す断面図である。
【図4】図3のA−A線拡大断面図である。
【図5】管ライニング材の反転挿入終了時の状態を示す断面図である。
【図6】図5のB−B線拡大断面図である。
【図7】管ライニング材の管路内への挿入方法の別実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 管ライニング材
2,3 樹脂吸収材
4 プラスチックフィルム
5 樹脂吸収材
6 管路
6a 垂直壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 不織布から成る管状の樹脂吸収材の外周面を気密性の高いフィルムで被覆して成る管ライニング材において、前記樹脂吸収材の厚さを円周方向に対して部分的に厚くしたことを特徴とする管ライニング材。
【請求項2】 請求項1記載の管ライニング材を管路内に挿入し、該管ライニング材を流体圧で管路内周面に押圧したまま、管ライニング材に含浸された硬化性樹脂を硬化させて管路内周面をライニングすることを特徴とする管路補修工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平6−114936
【公開日】平成6年(1994)4月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−271786
【出願日】平成4年(1992)10月9日
【出願人】(592057385)株式会社湘南合成樹脂製作所 (61)
【出願人】(591240951)有限会社横島 (19)