説明

管体の敷設方法

【課題】運搬台車を用いることなく管体を複数本ずつ接合位置に順次搬送して接合し、敷設する。
【解決手段】管体1の受け口の管底部側および差し口の管底部側にそれぞれ複数個の走行車輪4を着脱自在に固定するとともに、前後の管体1を縦方向軸心回りに折曲自在に連結し、連結された管体1を2本ずつ順に既設管S内の接合位置まで搬送する。そして、前方の管体1、後方の管体1の順に、先に既設管Kに固定した接合対象の管体1の受け口に差し口を挿入して接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管体の敷設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、老朽化した下水路、農業用水路、電力水路などの既設管を更生するため、例えば、ガラス繊維強化プラスチックと樹脂モルタルとの積層構成からなるプラスチック複合管などの管体を順次接合した後、既設管と管体との間隙に裏込め材を充填して既設管を更生することが提案され、実施されている。
【0003】
具体的には、図17に示すように、管体1は、直管状の管本体2の一端に短筒状の受け口3が固定されるとともに、管本体2の他方の端部にテーパー面の差し口2aが形成されて構成されている。そして、発進立坑Mに順次管体1を吊り下ろし、運搬台車100のジャッキ101によって支持材102を上昇させて管体1を担ぎ上げた後、管運搬用バッテリーカー(図示せず)を利用して既設管S内に搬入し、その差し口2aを先に搬送されて既設管Sに固定された対向する管体1の受け口3に順次接合することにより、施工区間にわたって多数本の管体1を敷設し、その後、既設管Sと管体1との間隙にモルタルなどの裏込め材を充填し、既設管Sに固定して既設管Sを更生するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−22618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような管体を敷設することで下水路などの既設管を更生する場合、先に固定された管体に対して、新たな管体を運搬台車により支持して接合することから、管体の接合が完了しないと、バッテリーカーおよび運搬台車を発進立坑まで戻すことができないものである。この結果、バッテリーカーおよび運搬台車を発進立坑に回収するまでは新たな管体を搬入することができないことから、施工距離が長い場合には、発進立坑と接合位置との間をバッテリーカーおよび運搬台車が往復するのに要する時間が大きくなり、単位時間当たりの施工本数が減少し、工期の長期化を招くという欠点があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、管体の敷設作業について工数の削減と工期の短縮を図ることのできる管体の敷設方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、管体を既設管内に搬送して敷設する管体の敷設方法であって、一端に受け口を有するとともに、他端に差し口を有する管体の受け口および差し口の各管底部側にそれぞれ走行車輪を着脱自在に固定し、走行車輪を固定した管体を少なくとも2つ既設管内に搬送方向に並べ、搬送方向前方の管体の後部と、搬送方向後方の管体の前部とを、縦方向軸心回りに折れ曲がる連結部材で連結し、連結した管体を、先に既設管内に固定した接合対象の管体の近くまで搬送して、連結部材を管体から取り外し、その後、前方の管体を、接合対象の管体に接合し、次いで、後方の管体を、前方の管体に接合することを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、管体の受け口および差し口の各管底部側にそれぞれ走行車輪を着脱自在に固定し、走行車輪を固定した管体を少なくとも2つ既設管内に搬送方向に並べ、搬送方向前方の管体の後部と、搬送方向後方の管体の前部とを、縦方向軸心回りに折曲自在な連結部材で連結する。次いで、連結した管体を、先に既設管内に固定した接合対象の管体の近くまで搬送し、連結部材を管体から取り外し、その後、前方の管体を接合対象の管体に接合し、次いで、後方の管体を前方の管体に接合する。
【0009】
この結果、管体の搬送に際して運搬台車を用いることがないため、管体搬送用のバッテリーカーは少なくとも2本の管体を接合位置まで搬送した後、直ちに発進立坑に回収して次の管体の搬送作業に取りかかることができ、待ち時間を削減することができる。したがって、施工区間が長距離の場合に作業効率を大幅に改善して工期を短縮することができる。また、管体を少なくとも2本ずつ接合位置まで搬送するため、輸送効率を改善することができる他、管体の受け口および差し口の各管底部側にそれぞれ走行車輪を取り付けるだけでよいことから、運搬台車を用いて管体を担ぎ上げる作業に比較して管体の搬送に必要な作業を簡素化して時間短縮を図ることができる。さらに、既設管が緩やかに湾曲している場合であっても、前後の管体は、湾曲に追従するように、縦方向軸心回りに折れ曲がることにより、円滑に搬送することができる。
【0010】
本発明において、前方の管体を接合対象の管体に接合する際に、前方の管体の前部の走行車輪を離脱させ、前方の管体の前部を、接合対象の管体の後部に配置した芯出し治具で支持しながら、前方の管体の前部を接合対象の管体の後部に接合して、次いで、前方の管体の後部の走行車輪を離脱させた後、芯出し治具を前方の管体の後部に配置し、後方の管体の前部の走行車輪を離脱させ、後方の管体の前部を、前方の管体の後部に配置した芯出し治具で支持しながら、後方の管体の前部を前方の管体の後部に接合することが好ましい。これにより、先に既設管に固定した接合対象の管体の後部に配置した芯出し治具を利用して管体の前部を支持し、高さを調整しつつ接合対象の管体の後部に接合することができる。
【0011】
本発明において、管体の前部と後部の少なくとも一方に、左右方向を向き端部に車輪を有するガイド部材を着脱自在に固定することが好ましい。これにより、既設管が緩やかに湾曲していることにより、管体の軸心が既設管の軸心から逸脱して一方に偏位したとしても、ガイド部材の車輪が既設管の内壁面に当接し、それ以上の偏位を防止して管体が既設管に接触して損傷することを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、運搬台車を用いることなく管体を複数本ずつ接合位置に搬送して接合し、管体を敷設することから、工数を削減することができるとともに、工期の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の管体の敷設方法の一実施形態を説明する地中管路の横断面図である。
【図2】図1の管体の敷設方法における後方の管体を一部省略して示す側面図である。
【図3】図2の管体の正面図である。
【図4】管体の受け口に取り付けられる走行車輪の側面図である。
【図5】対向する管体の受け口および差し口にそれぞれ取り付けられる走行車輪を連結して示す斜視図である。
【図6】ガイド部材の側面図である。
【図7】芯出し治具を管体とともに示す側面図である。
【図8】図7の芯出し治具を一部省略して示す正面図である。
【図9】図1の管体の敷設方法を説明する工程図である。
【図10】管体の支持固定要領を説明する地中管路の正面図である。
【図11】図1の管体の敷設方法を説明する工程図である。
【図12】図1の管体の敷設方法を説明する工程図である。
【図13】管体を接合する接合治具および接合治具を用いた管体の接合要領を示す説明図である。
【図14】図1の管体の敷設方法を説明する工程図である。
【図15】図1の管体の敷設方法によって敷設された管体を説明する地中管路の断面図である。
【図16】本発明の管体の敷設方法の他の実施形態を説明する地中管路の断面図である。
【図17】従来の管体の敷設方法を説明する発進立坑の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1乃至図3には、本発明の管体の敷設方法の一実施形態が示されている。
【0016】
この実施形態は、2本の管体1を連結して搬送し、接合位置において順に接合するものであり、搬送方向に向かって先頭の管体1を前方の管体、発進立坑M側の管体1を後方の管体と設定する。
【0017】
ここで、管体1は、前述したように、プラスチック複合管であって、一定の内外径を有する直管状の管本体2の一方の端部に、該管本体2よりも大径の短筒状の受け口3が固定されるとともに、管本体2の他方の端部に先端に向かって先細のテーパー面状の差し口2aが形成されて構成され、前後に対向する管体1,1において、一方の管体1の受け口3に他方の管体1の差し口2aを挿入することにより接合される。
【0018】
なお、管体1の受け口3の内周面、あるいは、差し口2aの外周面には図示しない止水ゴムが設けられており、一対の管体1,1が受け口3に差し口2aを挿入して接合されると、受け口3と差し口2aとが止水ゴムを介して密封される。
【0019】
そして、管体1の前後各端部の管底部側、具体的には、受け口3の管底部側および差し口2aの管底部側には、それぞれ2個の走行車輪4が周方向に間隔をおくとともに、ほぼ左右対称位置に着脱自在に固定されている。
【0020】
この走行車輪4は、二股状のフォーク部材41に車輪42を車軸43回りに回転自在に支持して構成され、走行車輪4のフォーク部材41は、管体1の受け口3の管底部側および差し口2aの管底部側に取り付けられる支持部材5に固定されている。
【0021】
例えば、後方の管体1の受け口3に設けられる走行車輪4の支持部材5は、図4に示すように、断面L字状の取付材51と、取付材51の垂直部51aに、管体1の受け口3の厚み以上の間隔をおいて一体に固定された上下の平板状挾持部52,52とからなり、上方の挾持部52に固定ボルト53がねじ結合されている他、取付材51の水平部51bがフォーク部材41に支持されている。これにより、支持部材5の上下の挾持部52,52との間を管体1の受け口3に差し込んだ後、受け口3の内周面側にゴム板などの緩衝材54を介装して固定ボルト53をねじ込むことにより、管体1の受け口3に支持部材5を固定することができる。この走行車輪4を設けた支持部材5は、後方の管体1の受け口3に周方向に間隔をおいて、かつ、略左右対称に取り付けられる。
【0022】
なお、後方の管体1の受け口3に設けられる走行車輪4には、車輪42の操舵角を調整する操作部材6が設けられている。この操作部材6は、ボルトからなる操作軸61と、操作軸61にねじ結合されたナット62と、操作軸61に連結されたレバー63とからなり、操作軸61が支持部材5の水平部51bを通してその下端がフォーク部材41に一体に固定されている。これにより、ナット62を緩めた状態で、レバー63を介して操作軸61を回転させると、操作軸61に固定されたフォーク部材41を操作軸61の軸心回りに回転させて車輪42の走行方向を調整することができる。一方、ナット62をねじ込むことにより、車輪42の走行方向を調整したフォーク部材41および該フォーク部材41との間で支持部材5の水平部51bを相互に挟み込んで固定することができる。
【0023】
また、前方の管体1の受け口3および後方の管体1の差し口2aに設けられる走行車輪4の支持部材5は、図5に示すように、管体1の受け口3および差し口2aの外周面および内周面の曲率半径にそれぞれ略対応する曲率半径に形成された上下の円弧状挾持部52,52を、管体1の受け口3および差し口2aの厚み以上の間隔をおいて連結部55で一体に固定して形成され、走行車輪4のフォーク部材41が連結部55に周方向に間隔をおくとともに、ほぼ左右対称位置に一体に固定されている。したがって、前方の管体1の受け口3および後方の管体1の差し口2aに対応する上下の挾持部52,52との間をそれぞれ差し込んだ後、受け口3および差し口2aの内周面側に緩衝材54を介装して固定ボルト53をねじ込むことにより、前方の管体1の受け口3および後方の管体1の差し口2aにそれぞれ支持部材5を固定することができる。
【0024】
ここで、支持部材5の上方の挾持部52には、連結部材7が連結部55側方向に延設されており、前後の連結部材7,7を連結ピン71を介して縦方向軸心回りに折曲自在に連結することができる。すなわち、前方の管体1の受け口3に対応する支持部材5を固定するとともに、後方の管体1の差し口2aに対応する支持部材5を固定し、それらの連結部材7,7を連結ピン71によって連結することにより、前方の支持部材5に対して後方の支持部材5を一体に連結するとともに、連結ピン71回りに回動させることができる。これにより、連結ピン71によって連結された連結部材7を有する支持部材5を対応する管体1の受け口3および差し口2aにそれぞれ固定するとき、既設管Sが緩やかに湾曲している場合であっても、連結された2本の管体1,1は、既設管Sの湾曲に追従するように連結ピン71回りに回動して折れ曲がり、円滑に搬送することができる。
【0025】
さらに、前方の管体1の差し口2aに設けられる走行車輪4の支持部材5は、詳細には図示しないが、図5に示した走行車輪4の支持部材5と同様に、上下の平板状挾持部52,52を、管体1の差し口2aの厚み以上の間隔をおいて連結部55で一体に連結して形成され、連結部55に走行車輪4のフォーク部材41が一体に固定されている。この走行車輪4を設けた支持部材5も、前述した後方の管体1の受け口3に取り付けられる支持部材5と同様に、前方の管体1の差し口2aに周方向に間隔をおいて、かつ、略左右対称に取り付けられる。
【0026】
ところで、管体1の受け口3の左右各端部および差し口2aの左右各端部には、それぞれガイド部材8が着脱自在に固定されている。
【0027】
このガイド部材8は、図6に示すように、車輪81を回転自在に支持したフォーク部材82と、一対の平板状挾持部83,83を管体1の受け口3および差し口2aの厚み以上の間隔をおいて連結部84で一体に連結して形成された挾持部材85と、内部に収容されたスプリング(図示せず)によって押圧付勢された摺動ロッド86を摺動自在に嵌挿してなるスプリング筒87とから構成され、スプリング筒87の摺動ロッド86の先端がフォーク部材82に一体に固定されるとともに、スプリング筒87の基端部が挾持部材85の一方の挾持部83に一体に固定されている。そして、ガイド部材8における挾持部材85の一方の挾持部83には、固定ボルト88がねじ込まれており、挾持部材85の一対の挾持部83,83との間を管体1の受け口3および差し口2aにそれぞれ差し込んだ後、受け口3および差し口2aの内周面側にそれぞれ緩衝材89を介装して固定ボルト88をねじ込むことにより、管体1の受け口3および差し口2aにそれぞれガイド部材8を固定することができる。
【0028】
さらに、管体1の差し口2aを先に既設管Sに支持固定された管体1の受け口3に挿入して接合するため、芯出し治具9が用意されている。
【0029】
この芯出し治具9は、図7および図8に示すように、フレーム91と、フレーム91の前後において左右にそれぞれ一体に固定され、下端に車輪92を回転自在に支持して斜め下方に延設されたステー93と、フレーム91の前後においてそれぞれ上下方向に摺動自在に嵌挿され、上端に円弧状の支持プレート941を固定した支持筒94と、フレーム91の前後一端側に一方の底角部が水平軸回りに回動自在に連結され、頂角部に支持キャスター95が回転自在に支持された三角形状の起伏アーム96と、フレーム91および起伏アーム96の底辺間に配設されたジャッキ97とから構成され、ジャッキ97を伸縮させることにより、起伏アーム96をフレーム91との軸支部回りに回動させて支持キャスター95を起伏させることができる。
【0030】
なお、フレーム91に摺動自在に嵌挿された支持筒94は、フレーム91および支持筒94の上下方向に延びる案内溝(図示せず)にわたって挿通された固定ピン942の両端部をボルトナットを利用して締め付けることにより、フレーム91に対して案内溝の範囲内の任意の高さ位置に固定することができる。つまり、芯出し治具9を管体1の受け口3側に移動させ、フレーム91に対して支持筒94を引上げて支持プレート941を管本体2の管頂部側内周面に突き当てて、固定ピン942の両端部を締め付けることにより、芯出し治具9を管体1の所定位置に固定することができる。
【0031】
次に、走行車輪4を介して搬送可能な管体1によって下水道などの既設管Sに管体1を敷設して更生する施工要領について説明する。
【0032】
この敷設方法は、まず、既設管Sの施工区間の内周面を高圧水によって洗浄した後に実行される。
【0033】
なお、敷設方法の説明を容易にするため、施工区間の始端位置(搬入目的地)に管体1が既設管Sに支持固定されている他、芯出し治具9が施工区間の始端位置に固定された管体1内に搬入されているものとする(図9参照)。
【0034】
また、既設管Sに対する管体1の支持固定は、管体1の受け口3側端部に対応して既設管Sの管底部に支持材10を設置して支持するとともに、受け口3側端部に管頂部を含む略上半部外周面にそれぞれ浮上防止材11を配置し、管体1を既設管Sの軸線に軸心が略一致する位置に固定することにより行う。すなわち、浮上防止材11は、図10に示すように、管体1の受け口3の外径に対応する内径に湾曲形成された円弧状の板材111に周方向に間隔をおいて固定された複数本のボルト(雄ねじ)112にそれぞれナット113をねじ込んで構成されている。したがって、管体1の受け口3側端部の管頂部を含む略上半部に浮上防止材11を配置し、各ボルト112に対してナット113のねじ込み量を調整することにより、各ナット113の先端を既設管Sの管頂部を含む略上半部内周面に周方向に間隔をおいて当接させることができる。これにより、管体1を既設管Sに対して支持材10および浮上防止材11を介して支持するとともに、固定することができる。
【0035】
なお、始端位置に固定された管体1については、その差し口2aについても支持材10によって支持されるとともに、浮上防止材11によって固定されている。
【0036】
管体1の敷設に際しては、発進立坑Mに順次管体1を差し口2aが搬送方向を向くように吊り下げ、対応する支持部材5を介して走行車輪4を取り付ける。
【0037】
具体的には、先に吊り下げた管体1は、搬送方向における前方の管体となることから、その差し口2aの管底部側に、それぞれ走行車輪4が設けられた2個の支持部材5を周方向に間隔をおいて、かつ、ほぼ左右対称となるように取り付ける。また、管体1の受け口3の管底部側に、一対の走行車輪4が周方向に間隔をおいて設けられ、受け口3の曲率半径に対応する支持部材5を取り付ける。さらに、管体1の差し口2aおよび受け口3の左右各端部にガイド部材8をそれぞれ取り付ける(図1参照)。
【0038】
なお、両ガイド部材8の左右方向寸法は、既設管Sの内径よりも小さく設定され、管体1が既設管S内の左右方向中央にある場合は、ガイド部材8は、既設管Sに接触せず、一定の間隙がある。
【0039】
管体1の差し口2aおよび受け口3にそれぞれ走行車輪4を設けた支持部材5とともにガイド部材8を取り付けたならば、管体1を発進立坑Mに吊り下ろし、バッテリーカーEを用いて、あるいは、作業者によって次の管体1の走行車輪4の取付作業に影響のない位置に先行して移動させる。
【0040】
次いで、新たな管体1を発進立坑Mに吊り下げる。次の管体1は、後方の管体となることから、その差し口2aの管底部側に、一対の走行車輪4が周方向に間隔をおいて設けられ、差し口2aの曲率半径に対応する支持部材5を取り付ける。また、管体1の受け口3の管底部側に、走行車輪4が操作部材6を介して固定された支持部材5を周方向に間隔をおいて、かつ、ほぼ左右対称となるように取り付ける。この後、操作部材6を操作して車輪42の走行方向を、既設管Sに対する車輪42の接地点の延長線が既設管Sの軸心と平行になるように調整する。さらに、管体1の差し口2aおよび受け口3の左右各端部にガイド部材8をそれぞれ取り付ける(図1乃至図3参照)。
【0041】
次の管体1についても支持部材5を介して走行車輪4およびガイド部材8を取り付けたならば、管体1を発進立坑Mに吊り下ろした後、先に下ろした前方の管体1の受け口3に支持部材5を介して設けられた連結部材7と、後に下ろした後方の管体1の差し口2aに支持部材5を介して設けられた連結部材7とを連結ピン71を挿通して連結する。すなわち、対向する管体1の受け口3および差し口2aにそれぞれ2個の走行車輪4を設けた支持部材5が取り付けられ、それらの支持部材5に固定された連結部材7をピン連結することにより、前後の管体1は連結される。
【0042】
前後の管体1が連結されたならば、後方の管体1の受け口3にバッテリーカーEとの接続金具(図示せず)を取り付けた後、バッテリーカーEを走行させ、前後2本の管体1を一体に既設管Sの施工区間の始端接合位置まで搬送する(図9参照)。
【0043】
この際、既設管Sが緩やかに湾曲していたとしても、前後の管体1は、連結ピン71回りに回動して折れ曲がり、円滑に搬送することができる。また、既設管Sの湾曲によって管体1の軸心が既設管1の軸心から逸脱して一方に偏位したとしても、ガイド部材8の車輪81が既設管Sの内壁面に当接し、スプリング筒87の図示しないスプリングによって緩衝するとともに、その弾性力で押し出すことから、元の走行位置に戻るとともに、管体1が既設管Sに接触して損傷することを確実に防止できる(図1参照)。さらに、走行車輪4による走行に際して、既設管Sの損傷部分を回避する必要がある場合は、操作部材6を操作して車輪42の走行方向を変えることができる。
【0044】
バッテリーカーEによって前後2本の管体1が施工区間の始端接合位置まで搬送されたならば、バッテリーカーEと後方の管体1との接続を解除し、バッテリーカーEを直ちに発進立坑Mに回収し、次の管体1の搬送に備える。
【0045】
一方、接合位置に搬送された前後の管体1は、連結ピン71を抜いて連結を解除するとともに、固定ボルト88を緩めてガイド部材8を取り外した後、先に既設管Sに固定された管体1に接近するように前方の管体1を移動させる(図11参照)。そして、前方の管体1の差し口2a側端部内周面を、先に既設管Sに固定された管体1の受け口3側端部に固定された芯出し治具9の、その受け口3から外方に突出された支持キャスター95と対向させる。この状態で、芯出し治具9のジャッキ97を伸長させ、起伏アーム96を介して支持キャスター95を上昇させることにより、前方の管体1の差し口2a側端部を持ち上げ、先に既設管Sに固定された管体1の軸心と軸心が一致するように高さを調整する。合わせて、前方の管体1の差し口2a側の取り付けられた支持部材5の固定ボルト53を緩め、走行車輪4が設けられた支持部材5を取り外す。
【0046】
次いで、前方の管体1の差し口1bを先に既設管Sに固定された管体1の受け口3に接合治具12を用いて挿入、接合する(図12参照)。
【0047】
ここで、接合治具12は、図13に示すように、一対の接合板121,121を一対のレバーホイスト122を介して連結して構成され、各接合板121は、管体1の管本体2の端面に係合できるように、長さを調整できるようになっている。そして、接合治具12は、一方の接合板121を接合する管体1における管本体2の受け口3側端面に係合させるとともに、他方の接合板121を固定された管体1における管本体2の差し口2a側端面に係合させた後、レバーホイスト122のワイヤロープ123の先端に設けたシャックル124を各接合板121にそれぞれ係止し、レバーホイスト122を操作して接合する管体1側のワイヤロープ123を引き取ることにより、固定された管体1に対して接合する管体1を強制的に引き寄せ、固定された管体1の受け口3に接合する管体1の差し口2aを挿入して接合するものである。
【0048】
この際、接合する管体1である前方の管体1は、その差し口2aの管頂部側内周面が芯出し治具9の支持キャスター95、その受け口3側に設けられた移動車輪4に支持されて接合対象の管体1に向けて移動する。
【0049】
前方の管体1が先に既設管Sに固定された管体1に接合されたならば、前方の管体1の受け口3の管底部側に支持材10を設置するとともに、その管頂部を含む略上半部外周面に浮上防止材11を配置し、既設管Sに支持固定する。この後、前方の管体1の受け口3に取り付けられた支持部材5の固定ボルト53を緩め、走行車輪4が設けられた支持部材5を取り外す。次いで、芯出し治具9のジャッキ97を縮小させるとともに、支持筒94を引き下げ、新たに固定された前方の管体1の受け口3側端部まで移動させた後、支持キャスター95を受け口3から外方に突出させた状態で、支持筒94を引き上げ、その管本体2の管頂部側内周面に突き当てて固定する。
【0050】
前方の管体1が固定されたならば、前方の管体1に接近するように後方の管体1を移動させる。そして、後方の管体1の差し口2aの内周面側を、先に固定された前方の管体1の受け口3から外方に突出された芯出し治具9の支持キャスター95と対向させた後、芯出し治具9のジャッキ97を伸長させ、支持キャスター95を介して後方の管体1の差し口2a側端部を持ち上げ、先に固定された前方の管体1の軸心と軸心が一致するように高さを調整するとともに、その差し口2a側に取り付けられた支持部材5の固定ボルト53を緩め、走行車輪4が設けられた支持部材5を取り外す。次いで、接合治具12を後方の管体1における管本体2の受け口3側端面と、先に固定された前方の管体1における管本体2の差し口2a側端面との間に配設し、後方の管体1を強制的に引き寄せ、その差し口2aを固定された前方の管体1の受け口3に挿入して接合する(図14参照)。
【0051】
後方の管体1が先に既設管Sに固定された前方の管体1に接合されたならば、後方の管体1の受け口3の管底部側に支持材10を設置するとともに、その管頂部を含む略上半部外周面に浮上防止材11を配置し、既設管Sに支持固定する。この後、後方の管体1の受け口3に取り付けられた支持部材5の固定ボルト53を緩め、走行車輪4が設けられた支持部材5を取り外した後、芯出し治具9を新たに支持固定された後方の管体1の受け口3側端部まで移動させ、支持キャスター95を受け口3から外方に突出させた状態で固定する。
【0052】
一方、前後2本の管体1を接合位置において順次接合しているとき、発進立坑Mに戻ったバッテリーカーEによる次の前後2本の管体1を搬送する準備が開始されている。すなわち、発進立坑Mに吊り下げて支持した管体1を前方の管体とし、その差し口2aの管底部側にそれぞれ走行車輪4が固定された2個の支持部材5を周方向に間隔をおいて、かつ、ほぼ左右対称となるように取り付けるとともに、受け口3の管底部側に一対の走行車輪4が周方向に間隔をおいて固定され、受け口3に対応する支持部材5を取り付ける。さらに、管体1の差し口2aおよび受け口3の左右各端部にガイド部材8をそれぞれ取り付ける。
【0053】
管体1の差し口2aおよび受け口3にそれぞれ支持部材5を介して走行車輪4およびガイド部材8を取り付けたならば、管体1を発進立坑Mに吊り降ろし、次の管体1の走行車輪4の取付作業に影響のない位置に先行して移動させる。
【0054】
次いで、新たな管体1を後方の管体として発進立坑Mに吊り下げて支持し、その差し口2aに一対の走行車輪4が周方向に間隔をおいて固定され、差し口3に対応する支持部材5を取り付けるとともに、その受け口3に走行車輪4が操作部材6を介して固定された支持部材5を周方向に間隔をおいて、かつ、ほぼ左右対称となるように取り付けた後、車輪42の走行方向を調整する。さらに、管体1の差し口2aおよび受け口3の左右各端部にガイド部材8をそれぞれ取り付ける。
【0055】
次の管体1についても支持部材5を介して走行車輪4およびガイド部材8を取り付けたならば、管体1を発進立坑Mに吊り下ろした後、先に降ろした前方の管体1と後に降ろした後方の管体1とを、それらの差し口2aおよび受け口3に取り付けた支持部材5から延設された連結部材7に連結ピン71を挿通して連結する。
【0056】
前後一対の管体1が連結されたならば、バッテリーカーEを介して前後2本の管体1を次の接合位置に向けて搬送する。すなわち、先に搬送した前後2本の管体1の接合作業が継続し、あるいは、完了したかに関係なく2本の管体1を順次搬送することができることから、従来の運搬台車を利用した製管方法と比較して運搬台車の待ち時間がなくなり、作業効率を大幅に改善することができる。特に、山間地など、立坑を施工区間の両側に開削できず、開削した立坑を発進立坑として片側からのみ管体1を搬送して施工する必要がある場合において、施工区間が長距離化した場合であっても大きく工期を短縮することができる。
【0057】
バッテリーカーEによって前後2本の管体1が次の接合位置まで搬送されたならば、バッテリーカーEと後方の管体1との接続を解除し、バッテリーカーEを直ちに発進立坑Mに戻し、次の管体1の搬送に備える。この際、先に管体1を搬送する際に使用した走行車輪4を設けた支持部材5は、バッテリーカーEを利用して発進立坑Mまで運び出すことができ、再び新たな管体1の搬送に使用される。
【0058】
接合位置に搬送された前後の管体1は、連結ピン71を抜いて連結を解除するとともに、ガイド部材8を取り外した後、前述したように、芯出し治具9および接合治具12を用いて前方の管体1、後方の管体1の順に先に既設管Sに固定した管体1に接合するとともに、支持材10および浮上防止材11により既設管Sに支持固定する。
【0059】
以下同様に、前後2本の管体1に走行車輪4を取り付けてバッテリーカーEで接合位置まで搬送させた後、前方の管体1、後方の管体1の順に先に既設管Sに固定した管体1に接合するとともに、既設管Sに支持固定するものである。
【0060】
このようにして、多数本の管体1を施工区間にわたって接合するとともに、支持固定したならば(図15参照)、詳細には図示しないが、施工区間の始端の管体1の差し口2a側端部外周面および設定距離隔てた管体1の受け口3側端部外周面に間仕切り壁を設置し、既設管Sの内周面および複数本の管体1の外周面間の間隙を間仕切りした後、管体1に形成されたグラウトホールに管体1の内部を通して注入パイプを接続し、裏込め材、例えば、エアモルタルを既設管Sの内周面および各管体1の外周面間の間隙に充填する。以下、一定区間毎に発進立坑Mまで順に裏込め材を充填する。これにより、各管体1を既設管Sに対して固定することができ、既設管Sを更生することができる。
【0061】
裏込め材の充填に際しては、各管体1の受け口3側端部に設けられた浮上防止材12によって各管体1が互いに接合されて既設管Sに固定されていることにより、各管体1は、浮き上がることなく支持される。
【0062】
ところで、前述した実施形態においては、ガイド部材8として、挾持部材85を利用して各管体1の受け口3の左右各端部および差し口2aの左右各端部にそれぞれ取り付ける場合を説明したが、リング状の固定バンドに略180°隔てて車輪81を設けたスプリング筒87を固定してガイド部材とし、管体1の前後各端部、または、その近傍に巻き回し、車輪81が管体1の左右外方向に突出するように固定して使用してもよい。この場合、リング状の固定バンドとしては、略半周部分を可撓性を有する材料、例えば、ゴムなどを用いて形成することが、管体1に対する装着、離脱に際して好ましい。
【0063】
また、ガイド部材8は、既設管Sが湾曲している場合に用いればよく、予め既設管Sが直線状に連続していることが把握されているときには、必ずしも取り付ける必要はない。
【0064】
さらに、前述した実施形態においては、連結された管体1を2本ずつ既設管Sの接合位置に搬送し、前方の管体1、後方の管体1の順に接合する場合を例示したが、図16に示すように、隣接する前方の管体1と中間の管体1および中間の管体1と後方の管体1を連結し、連結された管体1を3本ずつ既設管Sの接合位置に搬送し、前方の管体1、中間の管体1、後方の管体1の順に接合することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1 管体
2 管本体
2a 差し口
3 受け口
4 走行車輪
5 支持部材
6 操作部材
7 連結部材
8 ガイド部材
9 芯出し治具
10 支持材
11 浮上防止材
12 接合治具
S 既設管
E バッテリーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体を既設管内に搬送して敷設する管体の敷設方法であって、一端に受け口を有するとともに、他端に差し口を有する管体の受け口および差し口の各管底部側にそれぞれ走行車輪を着脱自在に固定し、走行車輪を固定した管体を少なくとも2つ既設管内に搬送方向に並べ、搬送方向前方の管体の後部と、搬送方向後方の管体の前部とを、縦方向軸心回りに折れ曲がる連結部材で連結し、連結した管体を、先に既設管内に固定した接合対象の管体の近くまで搬送して、連結部材を管体から取り外し、その後、前方の管体を、接合対象の管体に接合し、次いで、後方の管体を、前方の管体に接合することを特徴とする管体の敷設方法。
【請求項2】
請求項1記載の管体の敷設方法において、前方の管体を接合対象の管体に接合する際に、前方の管体の前部の走行車輪を離脱させ、前方の管体の前部を、接合対象の管体の後部に配置した芯出し治具で支持しながら、前方の管体の前部を接合対象の管体の後部に接合して、次いで、前方の管体の後部の走行車輪を離脱させた後、芯出し治具を前方の管体の後部に配置し、後方の管体の前部の走行車輪を離脱させ、後方の管体の前部を、前方の管体の後部に配置した芯出し治具で支持しながら、後方の管体の前部を前方の管体の後部に接合することを特徴とする管体の敷設方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の管体の敷設方法において、管体の前部と後部の少なくとも一方に、左右方向を向き端部に車輪を有するガイド部材を着脱自在に固定することを特徴とする管体の敷設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−12742(P2011−12742A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157013(P2009−157013)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】