説明

管抜装置

【課題】より音や振動が少なく、スラブに損傷を与えにくい管抜装置を提供する。
【解決手段】
本発明の第一の観点に係る管抜装置は、筒状のベース部と、このベース部に固定される筒状のジャッキ部と、このジャッキ部を貫通し、ジャッキ部を挟んで一対のアタッチメントが付された棒状部材と、を有する。また、限定されるわけではないが、この観点において、棒状部材には所定の距離をおいて複数の貫通孔が形成されていること、又は、一対のアタッチメントのうち、ベース側に配置される前記アタッチメントは、テーパーが付されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管抜装置に関する。より具体的には、建物内の床スラブ等に埋設された配管を引き抜くのに好適な装置である。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物内には、水道やガス等生活に必要な物質を供給するため、生活排水等を建物外部に排出するための配管が張り巡らされており、その一部は床や壁等のコンクリート等強固な材質(スラブ)に埋められている。
【0003】
配管はスラブに埋められることで非常に安定な配置となるが、配管が老朽化した場合、この配管は交換しなければならない状況となる。
【0004】
一般に、スラブに埋め込まれた配管を交換しようとする場合、この配管周囲のスラブを切削機等を用いて手で引き抜ける状態まで十分に切削した後、手で引き抜く作業が行なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記切削機等を用いる場合、非常に大きな音や振動が発生してしまうといった課題がある。特にマンションのような集合住宅でこのような作業を行うと、他の区分所有者に事前の通知を行なったとしても、想定外の大きな音や振動であるとして苦情が来てしまう場合が多い。また、この作業では切削機等で周囲を切削することとなるため、当該床や壁の強度を低下させてしまうといったおそれも否定できない。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を鑑み、より音や振動が少なく、スラブに損傷を与えにくい管抜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第一の観点に係る管抜装置は、筒状のベース部と、このベース部に固定される筒状のジャッキ部と、このジャッキ部を貫通し、ジャッキ部を挟んで一対のアタッチメントが付された棒状部材と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明により、より音や振動が少なく、スラブに損傷を与えにくい管抜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る管抜装置の斜視概略図である。
【図2】実施形態に係る管抜装置の断面概略図である。
【図3】枝管が接続された配管に設置する場合の上面図及び側面の概略図である。
【図4】実施形態に係る管抜装置を引抜対象の配管に設置した場合の図である。
【図5】実施形態に係る管抜装置のボトムアタッチメント近傍と配管との位置関係を示す概略図である。
【図6】実施形態に係る管抜装置のボトムアタッチメントの他の例を示す図である。
【図7】実施形態に係る管抜装置のボトムアタッチメントの他の例を示す図である。
【図8】アジャストピンの貫通孔への差し込みに関する説明図である。
【図9】配管の引抜作業の事前準備に関する説明図である。
【図10】実施形態に係る管抜装置により配管を引き上げた状態を示す図である。
【図11】配管を十分に引き上げ、人力で引き抜く場合のイメージ図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態の例示にのみ狭く限定されるものではない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る管抜装置(以下「本装置」という。)1の概略を示す図であり、図2は、本装置1の断面図である。
【0012】
本図で示すように、本装置1は、筒状のベース部2と、ベース部2に固定される筒状のジャッキ部3と、ジャッキ部3を貫通し、ジャッキ部3を挟んで一対のアタッチメント4が付された棒状部材5と、を有する。
【0013】
本実施形態において、ベース部2は、上記の通り筒状であり、くり抜かれた空間21が形成されている。またベース部2は後述の管抜方法から明らかなように、引抜対象となる配管の引き抜いた部分を収めることができるものである。
【0014】
ベース部2のくり抜かれた空間21の、棒状部材5の延伸方向に垂直な面における断面形状は限定されず、例えば円形状、四角形状、六角形状等様々な形状を採用することができるが、円形状であることが作製上簡便であるとともに高強度化の観点から好ましい。
【0015】
ベース部2のくり抜かれた空間21の大きさは、引抜対象となる配管を収納できる程度に太ければ十分であり、一般の配管の径の大きさが100mm程度であるため、空間21の断面形状が円形状である場合は径が120mm以上あることが好ましく、より好ましくは150mm以上である。
【0016】
またベース部2の長さ、より好ましくはくり抜かれた空間21の長さは、引き抜いた部分の配管を十分な長さ収納することができる程度あることが好ましく、例えば400mm以上あることが好ましく、600mm以上あることが好ましい。この程度の長さがあれば、スラブ面から数百mm程度離れた位置で切断した程度の長さの配管を一度で引き抜くことができ、またこの長さ以上であっても、後述の引き抜く作業を複数回繰り返すことが可能となり様々な長さの配管に十分に対応することができるようになる。
【0017】
なお本実施形態に係るベース部2のジャッキ部3に接していない側には、ボトムプレート22が付されており、引抜対象となる配管が埋め込まれたスラブの面に安定的に配置できるようになっている。
【0018】
また、本実施形態に係るベース部2の側壁部分23、及び、ボトムプレート22の一部には、一部くり抜かれた部分24が存在する。これは、スラブに埋め込まれた配管にはスラブ近傍の位置に枝分かれした枝管が接続されている場合が多く、くり抜かれた部分が無いと、この枝管がスラブ面に対し凸部となり、本装置1を安定的に設置することが困難となってしまうため、くり抜かれた部分24を形成することで、枝管が存在していたとしても本装置を安定的にスラブに対して設置することが可能となり、確実に配管を引き抜くことができるようになる。本装置1を配管上に配置した場合における上面図(A)及び(枝管の延伸方向から見た場合の)側面図(B)を図3に示しておく。なおくり抜かれた部分の高さとしては、限定されるわけではないが、例えば200mm以上あることが好ましい。
【0019】
また本実施形態においてジャッキ部3は、上記の通りベース部2に固定されており、筒状である。そしてジャッキ部3のくり抜かれた空間31は、ベース部2のくり抜かれた空間21と連結している。
【0020】
また本実施形態に係るジャッキ部3とベース部2の間には、ジャッキ部3を安定的に配置するためのアッパープレート25が配置されている。アッパープレート25にはジャッキ部3のくり抜かれた空間31以上の径の空隙が形成されており、ジャッキ部3の空間31とベース部2の空間21の接続を阻害しないようになっている。また、アッパープレート25には、ジャッキ部3の下部周囲を覆う壁部が形成されていることも好ましい。このようにしておくことで、ジャッキ部3を完全にアッパープレート25に溶接して固定する必要がなくなり、必要なときに設置するだけですみ、未使用時に分離させておくことができ、よりコンパクトに保存することができる。
【0021】
本実施形態においてジャッキ部3は、限定されるわけではないが、二つの筒部を有して構成され、内側の筒部(内筒部32)が、外側の筒部(外筒33)内を摺動できるように構成されていることが好ましい。
【0022】
本実施形態において、外筒33は、ベース部2(より具体的にはアッパープレート25)に対し固定されており、内筒32を支持するものである。また内筒32は、外筒33内に配置され、上記の通り、外筒33内を摺動することができる。また内筒32のベース部2に固定されている側とは反対の側には、ジャッキヘッド34が配置されている。ジャッキヘッド34はアタッチメント又は後述の棒状部材5の貫通孔51に挿入されるアジャストピン52に当たって棒状部材5を引き上げる際に役立つものであり、棒状部材5が貫通する程度の孔が形成されている。
【0023】
内筒32の摺動は、限定されるわけではないが、外筒33と内筒32の間に空間35を設け、この空間35に油等の流体を充填し、この流体の圧力を高める又は低くすることで上下に摺動可能とすることが好ましい。この場合、外筒33には流体を導入し、圧力を加えるための接続口36を設け、この接続口36に圧力ポンプ(図示省略)を接続することで摺動を実現することができる。
【0024】
また本実施形態において棒状部材5は、ベース部2及びジャッキ部3を貫通することのできる部材であり、その長さはベース部2及びジャッキ部3よりも十分に大きいことが必要である。具体的には、スラブに本装置1を設置したとき、スラブに埋め込まれた配管の本装置1より遠い側の配管口より突き出している程度長いことが好ましい。詳細については後述するが、例えば図4で示すように一対のアタッチメント4により配管、スラブ、ジャッキ部3を挟むことができる程度に長いことが好ましい。
【0025】
また本実施形態において、棒状部材5の両端部近傍に、ジャッキ部2及びベース部3を挟むよう一対のアタッチメント4を備えている。より具体的には、ジャッキ部3側にトップアタッチメント41を、ベース部2側にボトムアタッチメント42を有している。
【0026】
トップアタッチメント41は、棒状部材5がジャッキ部2及びベース部3から抜け落ちてしまわないように設けられるものであり、ボトムアタッチメント42は、本装置1より遠い側の配管口に当たり、配管を本装置側に引き上げるために用いられるものである。
【0027】
本実施形態において、トップアタッチメント41は、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、ワッシャー411と、このワッシャーを抑えるナット412と、を有していることが簡便である。この場合、棒状部材5の一端から所定の距離だけネジ溝を形成し、ワッシャー411を嵌め入れるとともにナット412で押さえ込むことで実現できる。
【0028】
また また本実施形態において、ボトムアタッチメント42は、上記の通り、配管の配管口に当て、ジャッキ部3を摺動させる、具体的にはジャッキ部3の内筒32を上に引き上げることで配管を引っ張り上げることのできるものである。この限りにおいて限定されるわけではないが、ボトムアタッチメント42は、テーパー部4211及び支え部4212を有する台座部421と、この台座部421を締めるナット422と、を有していることが好ましい。この拡大図を図5に示しておく。このようにボトムアタッチメント42にテーパー部4211と支え部4212を設けることで、確実に配管を押さえ込むことができるようになる。なお、この構成も、上記トップアタッチメント41と同様に、棒状部材5の一端からネジ溝を掘り、台座部421を嵌め込んだあと、ナットで固定することで実現することができる。また、本実施形態において、ボトムアタッチメント42は、配管口に対して確実に当てる必要があるため、配管の径の大きさに合わせて複数のサイズのものがあることが好ましい。
【0029】
また本実施形態において、台座部421の外径は、引抜対象となる配管とほぼ同等の径であることが好ましい。配管よりも径が必要以上に大きくなってしまうと、この台座部421がスラブに引っかかり、引き抜くことが難しくなってしまう一方、配管の内径よりも小さい場合、配管に引っかからず抜けてしまうといったおそれがある。従って、本装置1を使用して配管を抜こうとする場合、台座部の外径は配管の内径よりも大きく、配管の外形+5mm以下であることが好ましい。
【0030】
また、台座部の外径が配管の外形よりも大きい場合、台座部421特に支え部4212の周囲には、ぎざぎざの凹凸等が付されていてもよい。凹凸等を設けると、この凹凸が配管周囲のスラブを引っかくこととなるため、径が広がり、この後の新設の配管の配置が容易になるといった利点がある。なお、もちろん、台座部421の支え部4212は配管よりも小さく配置する一方、配管よりも広い径を有して更に周囲に凹凸が形成された別のリム4213を配置することも可能である。この態様を例えば図6に示しておく。
【0031】
また、ボトムアタッチメントは、例えば図7で示すように、配管下部の内部に引っ掛けることができるつめ部423を有して構成されていてもよい。つめ部423は、棒状部材に固定される軸4231を介して回転可能に設置されている。このようにすると、棒状部材を一方向(上方向)から挿入する場合は非常に容易である一方、棒状部材を一方向(上方向)に引き抜こうとすると、つめ部423が配管内部に引っかかり、容易に引き抜くことができなくなり、トップアタッチメント41と協働して配管を挟み込むことができるようになる。この場合、配管からボトムアタッチメントを出す必要がなくなり、より作業長さを短くすることができるといった利点がある。
【0032】
また本実施形態において、棒状部材5は、上記の説明から既に明らかではあるが、配管を貫通し、アタッチメントにより引き上げるために用いられるものである。
【0033】
また本実施形態にかかる棒状部材5には、延伸方向に対し略垂直な方向に複数の貫通孔51が一定の距離をおいて形成されており、この貫通孔51にはアジャストピン52が挿入可能となっている。
【0034】
そして本装置1では、ボトムアタッチメント42を配管の一方の配管口に当てる一方、貫通孔51にアジャストピン52を挿入し、内筒32を摺動させて引き上げることでアジャストピン52をジャッキヘッド25にあて、更に引き上げることで、配管をベース部3側に引き上げることができるようになる。なお、一定の距離引き上げると、ジャッキ部3の内筒32が上がりきってしまう。しかしながら、一定の距離引き上げた後、ジャッキ部3の内筒32を下げると、アジャストピン52が挿入された貫通孔51の下の貫通孔が露出するようになっているため、アジャストピン52を抜いて下の貫通孔に挿しなおすことで再び一定距離引き上げることができるようになる。この概念図を例えば図9に示しておく(この作業については後述する)。
【0035】
次に、本装置1を用いた管抜方法について詳細に説明する。
【0036】
まず、施工者は、図8で示すように、引抜対象となるスラブに埋め込まれた配管を切断する。具体的には、スラブ表面から10〜20cm程度の部分を残して配管を切断する。
【0037】
次に、施工者は、ベース部2及びジャッキ部3をスラブ表面にセットし、ボトムアタッチメントを外した棒状部材5をベース部2及びジャッキ部3上部からくり抜かれた空間31、21を貫通させ、配管の下の配管口から端部を突出させる。そして、棒状部材5の突出した端部近傍にボトムアタッチメント42を固定する。この結果、上記図4で示すような状態となる。
【0038】
次に、施工者は、棒状部材5を上部に適当に引っ張り、棒状部材5の上部に形成された貫通孔を確認し、最もジャッキヘッド34に近い露出した貫通孔51にアジャストピン52を挿入する。この状態におけるボトムアタッチメント42の状態は上記図5に相当し、トップアタッチメント41及びアジャストピン52近傍の状態は上記図9(1)に相当する。
【0039】
そして、施工者は、上記図9で示すように、ジャッキ部3の接続口36に圧力ポンプ(図示省略)を接続し、圧力を挙げることで内筒32を引き上げる。この結果、上記図9(2)で示す状態となる。
【0040】
そして、施工者は、内筒32が最大の引き上げ量となったら圧力ポンプの圧力を下げ、内筒を初期状態に戻す。この結果上記図9(3)の状態となる。
【0041】
そして、施工者は、再び最もジャッキヘッド34に近い露出した貫通孔51にアジャストピン52を挿入しなおし、再び内筒32を引き上げる。この結果、上記図9(4)となる。そして、これら作業を繰り返すことで、配管を十分に引き上げ、配管を引き抜くことができる。また、全て本装置で引き抜かなくても、十分な一定量引き上げ、後は人力で簡単に配管を抜くこともできる(図11参照)。
【0042】
以上、本装置によると、配管に棒状部材5を貫通させてアタッチメント及びアジャストピンで挟み込み、ジャッキ部3により配管を引き抜くとともに、ベース部2を設けることで引き抜いた部分を収納することが可能となり、切削機を用いることなく容易に引き抜くことが可能となり、より音や振動が少なく、スラブに損傷を与えにくいものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、管抜装置及び管抜方法として産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0044】
1…管抜装置、2…ベース部、3…ジャッキ部、4…アタッチメント、5…棒状部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のベース部と、
前記ベース部に固定される筒状のジャッキ部と、
前記ジャッキ部を貫通し、前記ジャッキ部を挟んで一対のアタッチメントが付された棒状部材と、を有する管抜装置。
【請求項2】
前記棒状部材には所定の距離をおいて複数の貫通孔が形成されている請求項1記載の管抜装置。
【請求項3】
前記一対のアタッチメントのうち、前記ベース側に配置される前記アタッチメントは、テーパーが付されている請求項1記載の管抜装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−2150(P2013−2150A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134694(P2011−134694)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(509053363)株式会社タイコー (4)
【Fターム(参考)】