管接続構造
【課題】継手本体に結合部材が組み付けられた後に結合部材の工具掛け部が結合部材の締結部から分離されるように構成された管接続構造において、切断トルクのバラツキによるシール不良や部材の損傷等の不具合を抑える。
【解決手段】管接続構造(1)は、継手本体(2)と、継手本体(2)と螺合する締結部(133)と締結工具で把持される工具掛け部(134)とを有する結合部材(3)とを有し、継手本体(2)に結合部材(3)が組み付けられた後に工具掛け部(134)が締結部(133)から分離されるように構成されている。そして、継手本体(2)と結合部材(3)とは、工具掛け部(134)が締結部(133)から分離される前に、結合部材(3)の継手本体(2)への螺合が制限されるように互いが接触する螺合当接部(140)を構成している。
【解決手段】管接続構造(1)は、継手本体(2)と、継手本体(2)と螺合する締結部(133)と締結工具で把持される工具掛け部(134)とを有する結合部材(3)とを有し、継手本体(2)に結合部材(3)が組み付けられた後に工具掛け部(134)が締結部(133)から分離されるように構成されている。そして、継手本体(2)と結合部材(3)とは、工具掛け部(134)が締結部(133)から分離される前に、結合部材(3)の継手本体(2)への螺合が制限されるように互いが接触する螺合当接部(140)を構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管接続構造、特に、継手本体に結合部材が組み付けられた後に結合部材の工具掛け部が結合部材の締結部から分離されるように構成された管接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍装置の配管系統において、継手本体と、継手本体と螺合する締結部と締結工具で把持される工具掛け部とを有する結合部材とを有し、継手本体に結合部材が組み付けられた後に工具掛け部が締結部から分離されるように構成された管継手が使用されている。
【0003】
このような継手本体に結合部材が組み付けられた後に結合部材の工具掛け部が結合部材の締結部から分離されるように構成された管継手としては、特許文献1(特開2008−106935号公報)、及び、特許文献2(特開2008−157466号公報)に記載されているものがある。
【0004】
ここで、継手本体に結合部材が組み付けられた後に工具掛け部が締結部から分離されるように構成された管継手では、締め付けトルクが所定の切断トルクに達すると強度を弱くした部分が破壊して工具掛け部が締結部から切断して分離されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、工具掛け部を締結部から切断するための切断トルクは、使用材料の強度や所定の切断トルクに達すると切断される部分の寸法公差等によって、ある程度のバラツキが発生する。
【0006】
また、管継手として食い込み式管接続構造を採用する場合には、フェルール等の配管に食い込む部材の進入度合いによって、流体の漏れに対するシール性が決定されるため、継手本体に結合部材を螺合する際の回転角度と切断トルクとを適切に関係付ける必要がある。しかし、食い込み式管接続構造では、回転角度に対する締め付けトルクの変化が緩やかであるため、使用材料の強度や部材の寸法公差等によって、大きな切断トルクのバラツキが発生するおそれがある。このため、所定の切断トルクに達して工具掛け部が切断された後においても、フェルール等の配管に食い込む部材の食い込み具合が十分ではなく、所望のシール性が得られない状況が発生するおそれがある。また、逆に、フェルール等の配管に食い込む部材が損傷するほどに食い込んでから工具掛け部が切断されるような状況が発生するおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、継手本体に結合部材が組み付けられた後に結合部材の工具掛け部が結合部材の締結部から分離されるように構成された管接続構造において、切断トルクのバラツキによるシール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の観点にかかる管接続構造は、継手本体と、継手本体と螺合する締結部と締結工具で把持される工具掛け部とを有する結合部材とを有し、継手本体に結合部材が組み付けられた後に工具掛け部が締結部から分離されるように構成されている。そして、継手本体と結合部材とは、工具掛け部が締結部から分離される前に、結合部材の継手本体への螺合が制限されるように互いが接触する螺合当接部を構成している。
【0009】
この管接続構造では、結合部材の継手本体への螺合が所定量だけ進んだ段階で、螺合当接部によって、結合部材の継手本体への螺合が制限される。そして、さらに結合部材の継手本体への螺合を進めようとすると、切断トルク以上の締め付けトルクが工具掛け部に作用して、工具掛け部が締結部から切断して分離されるようになっている。
【0010】
これにより、この管接続構造では、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材の継手本体への螺合の所定量を決定しておくことができるため、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。
【0011】
第2の観点にかかる管接続構造は、第1の観点にかかる管接続構造において、継手本体は、締結部に螺合する継手本体側螺子部を有している。締結部は、継手本体側螺子部に螺合する締結部側螺子部を有している。螺合当接部は、結合部材を継手本体に組み付ける方向である締結方向に対して、継手本体の継手本体側螺子部の後端からなる又は継手本体側螺子部の後側に形成された継手本体側当接部と、締結部の締結部側螺子部の後端からなる又は後側に形成された締結部側当接部とから構成されている。
【0012】
この管接続構造では、継手本体の螺子部及び締結部の螺子部の締結方向後端及び/又は後側に形成された当接部同士の接触によって、結合部材の継手本体への螺合を制限することができる。
【0013】
第3の観点にかかる管接続構造は、第2の観点にかかる管接続構造において、締結部側当接部は、径方向に向かって突出する突起からなる。
【0014】
この管接続構造では、螺合当接部の大きさを小さくすることができる。
【0015】
第4の観点にかかる管接続構造は、第3の観点にかかる管接続構造において、突起の外径は、継手本体の外径及び工具掛け部の外径よりも小さい。
【0016】
この管接続構造では、結合部材を継手本体に組み付ける作業の邪魔になりにくくすることができる。
【0017】
第5の観点にかかる管接続構造は、第3又は第4の観点にかかる管接続構造において、突起の締結方向から見た断面形状は、円形状である。
【0018】
この管接続構造では、締結部が継手本体に螺合して工具掛け部が分離された後の状態において、突起を締結工具で把持しにくくなる。
【0019】
これにより、この管接続構造では、締結部が継手本体に螺合して工具掛け部が分離された後の状態において、突起を締結工具で把持して締結部を緩めることを防ぐことができる。
【0020】
第6の観点にかかる管接続構造は、第3〜第5の観点のいずれかにかかる管接続構造において、突起の肉厚は、0.5〜1.0mmである。
【0021】
この管接続構造では、突起の肉厚を0.5mm以上にすることによって、切断トルクでも損傷しないようにすることができる。また、突起の肉厚を1.0mm以下にすることによって、突起を締結工具で把持しにくくすることができる。
【0022】
第7の観点にかかる管接続構造は、第1の観点にかかる管接続構造において、継手本体は、締結部に螺合する継手本体側螺子部を有している。締結部は、継手本体側螺子部に螺合する締結部側螺子部を有している。螺合当接部は、結合部材を継手本体に組み付ける方向である締結方向に対して、継手本体の継手本体側螺子部の前端からなる又は前側に形成された継手本体側当接部と、締結部の締結部側螺子部の前端からなる又は継手本体側螺子部の前側に形成された締結部側当接部とから構成されている。
【0023】
この管接続構造では、継手本体の螺子部及び締結部の螺子部の締結方向前端及び/又は前側に形成された当接部同士の接触によって、結合部材の継手本体への螺合を制限することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下のような効果が得られる。
【0025】
第1の観点にかかる管接続構造では、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材の継手本体への螺合の所定量を決定しておくことができるため、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。
【0026】
第2の観点にかかる管接続構造では、継手本体の螺子部及び締結部の螺子部の締結方向後端及び/又は後側に形成された当接部同士の接触によって、結合部材の継手本体への螺合を制限することができる。
【0027】
第3の観点にかかる管接続構造では、螺合当接部の大きさを小さくすることができる。
【0028】
第4の観点にかかる管接続構造では、結合部材を継手本体に組み付ける作業の邪魔になりにくくすることができる。
【0029】
第5の観点にかかる管接続構造では、締結部が継手本体に螺合して工具掛け部が分離された後の状態において、突起を締結工具で把持して締結部を緩めることを防ぐことができる。
【0030】
第6の観点にかかる管接続構造では、突起の肉厚を0.5mm以上にすることによって、切断トルクでも損傷しないようにすることができ、また、突起の肉厚を1.0mm以下にすることによって、突起を締結工具で把持しにくくすることができる。
【0031】
第7の観点にかかる管接続構造では、継手本体の螺子部及び締結部の螺子部の締結方向前端及び/又は前側に形成された当接部同士の接触によって、結合部材の継手本体への螺合を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態にかかる食い込み式管接続構造の配管接続開始時の状態を示す断面図である。
【図2】フロントフェルールとバックフェルールとが仮組みされた状態を示す断面図である。
【図3】図2のA部を拡大して示す断面図である。
【図4】バックフェルールと結合部材とが仮組みされた状態を示す断面図である。
【図5】図4のB部を拡大して示す断面図である。
【図6】継手本体を示す断面図である。
【図7】図6のC部を拡大して示す断面図である。
【図8】結合部材を示す断面図である。
【図9】結合部材を示す後面図である。
【図10】フロントフェルールを示す断面図である。
【図11】バックフェルールを示す断面図である。
【図12】螺合当接部付近を示す断面図である。
【図13】食い込み式管接続構造の配管接続完了時の状態(切断直前の状態)を示す断面図である。
【図14】食い込み式管接続構造の配管接続完了時の状態(切断後の状態)を示す断面図である。
【図15】図14のI−I断面図である。
【図16】螺合当接部を設けない構造における結合部材の回転角度と締め付けトルクとの関係を示す図(軟質材に合わせて切断トルクを設定した場合)である。
【図17】螺合当接部を設けない構造における結合部材の回転角度と締め付けトルクとの関係を示す図(硬質材に合わせて切断トルクを設定した場合)である。
【図18】螺合当接部を設けた構造における結合部材の回転角度と締め付けトルクとの関係を示す図(硬質材に合わせて切断トルクを設定した場合)である。
【図19】食い込み式管接続構造の専用治具の要部を示す斜視図である。
【図20】変形例1の食い込み式管接続構造の螺合当接部を示す図であって、図15に対応する図である。
【図21】変形例2の食い込み式管接続構造の配管接続完了時の状態(切断直前の状態)を示す断面図である。
【図22】変形例3の食い込み式管接続構造の配管接続完了時の状態(切断直前の状態)を示す断面図である。
【図23】変形例4の食い込み式管接続構造の配管接続完了時の状態(切断直前の状態)を示す断面図である。
【図24】変形例5の食い込み式管接続構造の配管接続開始時の状態を示す断面図である。
【図25】変形例6の食い込み式管接続構造の配管接続開始時の状態を示す断面図である。
【図26】変形例7の食い込み式管接続構造の配管接続開始時の状態を示す断面図である。
【図27】変形例8の食い込み式管接続構造の配管接続開始時の状態を示す断面図である。
【図28】変形例9の食い込み式管接続構造の螺合当接部を示す図であって、図12に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明にかかる管接続構造の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0034】
<構成>
本実施形態の食い込み式管接続構造1は、ヒートポンプ式空気調和装置や温水装置等の冷凍装置の配管系統において、配管同士を接続するための管継手における管継手部に適用されたり、配管が接続される弁類等の機器における管継手部に適用されるものである。ここで、図1は、本発明の一実施形態にかかる食い込み式管接続構造1の配管接続開始時の状態を示す断面図である。図2は、フロントフェルール4とバックフェルール5とが仮組みされた状態を示す断面図である。図3は、図2のA部を拡大して示す断面図である。図4は、バックフェルール5と結合部材3とが仮組みされた状態を示す断面図である。図5は、図4のB部を拡大して示す断面図である。図6は、継手本体2を示す断面図である。図7は、図6のC部を拡大して示す断面図である。図8は、結合部材3を示す断面図である。図9は、結合部材3を示す後面図である。図10は、フロントフェルール4を示す断面図である。図11は、バックフェルール5を示す断面図である。図12は、螺合当接部140付近を示す断面図である。図13は、食い込み式管接続構造1の配管接続完了時の状態(切断直前の状態)を示す断面図である。図14は、食い込み式管接続構造1の配管接続完了時の状態(切断後の状態)を示す断面図である。図15は、図14のI−I断面図である。図16は、螺合当接部140を設けない構造における結合部材3の回転角度と締め付けトルクとの関係を示す図(軟質材に合わせて切断トルクを設定した場合)である。図17は、螺合当接部140を設けない構造における結合部材の回転角度と締め付けトルクとの関係を示す図(硬質材に合わせて切断トルクを設定した場合)である。図18は、螺合当接部140を設けた構造における結合部材の回転角度と締め付けトルクとの関係を示す図(硬質材に合わせて切断トルクを設定した場合)である。図19は、食い込み式管接続構造1の専用治具107の要部を示す斜視図である。尚、以下の説明で使用する「前」、「後」は、結合部材を継手本体に組み付ける方向である締結方向を基準とする向きを意味し、図1においては、紙面左方を向く側を「前」とし、紙面右方を向く側を「後」とする。また、「軸方向」とは、各部材の軸心に沿う方向を意味し、「径方向」とは、軸方向に交差する方向を意味する。また、図13や図14等は、フェルール4、5が配管P2に食い込んだ状態を示すイメージ図であり、実際にフェルール4、5が配管P2に食い込んだ状態は、図13や図14等とは若干異なる場合もあり得る。
【0035】
食い込み式管接続構造1は、主として、継手本体2と、結合部材3と、フロントフェルール4及びバックフェルール5とを有している。継手本体2は、被接続側機器から導出される配管P1に取り付けられる部材である。結合部材3は、継手本体2に接続する配管P2に外装され、継手本体2に螺合されて組み付けられる部材である。フロントフェルール4及びバックフェルール5は、継手本体2及び結合部材3とは別体に形成されるとともに、継手本体2と結合部材3との間に挟着される部材である。尚、配管P1、P2は、銅等の金属製の部材である。
【0036】
継手本体2は、黄銅等の金属製の部材であり、基部21を有している。基部21の前側には、ソケット部22が形成され、基部21の後側には、筒部123と軸部23とが形成されている。筒部123の内周部分には、結合部材3を螺合するための雌ねじからなる螺子部123a(継手本体側螺子部)が形成されている。筒部123の螺子部123aの後側の端面123b(継手本体側当接部)は、結合部材3を継手本体2に組み付ける際に、後述の結合部材3の突起138(締結部側当接部)に接触して螺合当接部140を構成するようになっている。軸部23は、筒部123の内周側の空間内に突出するように形成されている。軸部23の外周面には、配管接続時に軸部23の強度を調節するための環状空間125が形成されている。また、環状空間125の外周部には、内部凍結防止用の通気孔125aが形成されている。基部21及び筒部123の外周部分は、汎用の締結工具で把持できるように略六角ナット形状の外形に形成されている。ソケット部22から基部21にかけての軸心部分には、配管P1を差し込むための差込口24が形成されている。軸部23から基部21にかけての軸心部分には、配管P2を差し込むための差込口25が形成されている。差込口24と差込口25との軸方向間には、差込口24及び差込口25よりも小径の連通孔を形成するとともに配管P1、P2の軸方向移動を規制する段差部26が形成されている。段差部26は、差込口24、25に差し込まれた配管P1、P2の先端を段差部26に当接させることによって、配管P1、P2の先端位置を一定に保持するものである。軸部23の先端部分、すなわち、差込口25の後端部分には、カム面27が形成されている。カム面27は、前側部分が差込口25に連なっており、後側に向かうにつれて径が大きくなる傾斜面をなしている。カム面27は、結合部材3が継手本体2に組み付けられる際にフロントフェルール4を径方向内周側に押圧する力を発生するものである。カム面27は、後側部分の軸心に対する傾斜角度α1に比べて、前側部分の軸心に対する傾斜角度α2が大きくなるように形成されている(図7参照)。
【0037】
結合部材3は、黄銅等の金属製の部材であり、軸心部分に配管P2を差し込むための差込口32が形成されるとともに、結合部材3を前後に二分するように径方向の切れ目を有する円盤状スリット132が形成されている。円盤状スリット132の前側には、継手本体2と螺合する締結部133が形成され、円盤状スリット132の後側には、汎用の締結工具で把持される工具掛け部134が形成されている。締結部133の外周部分には、継手本体2の螺子部123aに螺合する雄ねじからなる螺子部133aが形成されている。工具掛け部134の外周部分は、汎用の締結工具で把持できるように略六角ナット形状の外形に形成されている。そして、円盤状スリット132と差込口32との径方向間には、締結部133と工具掛け部134とを連結する薄肉の環状部分からなる切断部136が形成されている。切断部136は、工具掛け部134の締め付けトルクが配管接続完了時の値まで大きくなると切断される強度になるように設計されている。ここでは、切断部136は、前側に向かって肉厚が小さくなるように形成されており、締結部133の近傍で切断されるようになっている。また、締結部133の前側部分は、基部31を構成している。基部31の前側部分には、押圧面34が形成されている。押圧面34は、軸心側が後方に後退する傾斜面をなしている。押圧面34は、結合部材3が継手本体2に組み付けられる際に、結合部材3を締め付ける締付トルクを、軸方向前側、かつ、径方向内周側に押圧する力に代えて、バックフェルール5を押圧するものである。基部31の前側部分には、バックフェルール5と結合部材3とを仮組み可能にするための仮組み係合部35がさらに形成されている。仮組み係合部35は、押圧面34の前側に位置しており、螺子部33aの後側に位置している。仮組み係合部35は、主として、仮組み突出部36と仮組み拡径部37とを有している。仮組み突出部36は、押圧面34よりも前側の位置において、径方向内周側に向かって突出する環状の部分である。仮組み突出部36の内周面は、前側に向かうにつれて径が大きくなる傾斜面36aを有している。傾斜面36aは、バックフェルール5の後方部53に形成された仮組み突出部57を圧入しやすくするためのものである。仮組み拡径部37は、仮組み突出部36の後側の位置、すなわち、押圧面34と仮組み突出部36との軸方向間の位置において、仮組み突出部36よりも大きな内径を有する部分である。仮組み拡径部37は、仮組み突出部36を介して挿入される仮組み突出部57を保持するためものである。ここで、仮組み突出部36の内径をDcn1とし、仮組み拡径部37の内径をDcn2とする(図5参照)。また、締結部133の後側部分には、専用治具107が係合することが可能な断面が円形で所定深さの複数(ここでは、6個)の係合孔135が形成されている。また、工具掛け部134には、係合孔135を工具掛け部134側から加工可能にするための加工用孔137が係合孔135に対向するように形成されている。さらに、締結部133の螺子部133aの後側には、径方向に突出する突起138(締結部側当接部)が形成されている。この突起138は、結合部材3の継手本体2への螺合が進み、工具掛け部134が締結部133から切断して分離される直前に、継手本体2の筒部123の後側の端面123b(継手本体側当接部)に接触するように形成されている。このため、継手本体2の筒部123の後側の端面123bが突起138に接触した後は、切断トルク以上の締め付けトルクが工具掛け部134に作用して、工具掛け部134が締結部133から切断して分離されるようになっている。ここで、突起138の軸方向に沿う断面形状は、軸心に平行な外面を有する矩形形状である。また、突起138の外径dは、継手本体2の筒部123の外径dc1及び工具掛け部134の外径dc2よりも小さくなっている(図12参照)。また、突起138の締結方向から見た断面形状は、円形状になっている(図15参照)。さらに、突起138の肉厚tは、0.5〜1.0mmになっている(図12参照)。
【0038】
フロントフェルール4は、黄銅等の金属製の部材であり、結合部材3が継手本体2に組み付けられる前の状態において、バックフェルール5とは別体に形成されている。フロントフェルール4の軸心部分には、配管P2が差し込まれる配管貫通孔41が形成されている。フロントフェルール4は、前側部分が前方部42を構成し、後側部分が後方部43を構成している。前方部42の外周面には、前方に向かうにつれて径が小さくなるテーパ面42aが形成されている。テーパ面42aは、軸心に対する傾斜角度β1がカム面27の後側部分の傾斜角度α1よりも小さくなるように形成されている(図7参照)。前方部42の内周面には、径方向外周側に向かって切り込まれたノッチ42bが形成されている。ノッチ42bは、軸方向に沿う断面形状が略直角三角形状である。前方部42の前端部分、すなわち、ノッチ42bよりも前側の部分の変形を容易にするためのものである。後方部43の外周面は、軸心に対して略平行な面が形成されている。後方部43の内周面には、前方に向かうにつれて径が小さくなるテーパ面43aが形成されている。テーパ面43aは、結合部材3が継手本体2に組み付けられる際にバックフェルール5を径方向内周側に押圧する力を発生するものである。ここで、テーパ面43aの軸心に対する傾斜角度をβ2とする(図3参照)。後方部43には、フロントフェルール4とバックフェルール5とを仮組み可能にするための仮組み係合部44が形成されている。仮組み係合部44は、主として、仮組み突出部45と仮組み拡径部46とを有している。仮組み突出部45は、テーパ面43aよりも後側の位置において、径方向内周側に向かって突出する環状の部分である。仮組み突出部45の内周面は、後側に向かうにつれて径が大きくなる傾斜面45aを有している。傾斜面45aは、バックフェルール5の前方部52に形成された仮組み突出部55を圧入しやすくするためのものである。仮組み拡径部46は、仮組み突出部45の前側の位置、すなわち、テーパ面43aと仮組み突出部45との軸方向間の位置において、仮組み突出部45よりも大きな内径を有する部分である。仮組み拡径部46は、仮組み突出部45を介して挿入される仮組み突出部55を保持するためものである。ここで、仮組み突出部45の内径をDfm1とし、仮組み拡径部46の内径をDfm2とする(図3参照)。
【0039】
バックフェルール5は、黄銅等の金属製の部材であり、結合部材3が継手本体2に組み付けられる前の状態において、フロントフェルール4とは別体に形成されている。バックフェルール5の軸心部分には、配管P2が差し込まれる配管貫通孔51が形成されている。バックフェルール5は、前側部分が前方部52を構成し、後側部分が後方部53を構成している。前方部52の外周面には、前方に向かうにつれて径が小さくなるテーパ面52aが形成されている。テーパ面52aは、軸心に対する傾斜角度γ1がフロントフェルール4のテーパ面43aの傾斜角度β2よりも小さくなるように形成されている(図3参照)。前方部52には、フロントフェルール4とバックフェルール5とを仮組み可能にするための仮組み係合部54が形成されている。仮組み係合部54は、フロントフェルール4の仮組み係合部44に係合可能である。仮組み係合部54は、主として、仮組み突出部55を有している。仮組み突出部55は、テーパ面52aよりも後側の位置において、径方向外周側に向かって突出する環状の部分である。仮組み突出部55の外周面は、傾斜面55aと、傾斜面55aの後側に連なる傾斜面55bとを有している。傾斜面55aは、後側に向かうにつれて径が大きくなっている。傾斜面55bは、後側に向かうにつれて径が小さくなっている。すなわち、仮組み突出部55の外周面は、軸方向に沿う断面形状が略三角形状をなしている。傾斜面55aは、フロントフェルール4の後方部43に形成された仮組み突出部45に圧入しやすくするためのものである。ここで、仮組み突出部55の外径、すなわち、仮組み係合部54の最大外径Dmは、フロントフェルール4の仮組み突出部45の内径Dfm1よりも大きく、かつ、仮組み拡径部46の内径Dfm2よりも小さくなっている(図3参照)。また、後方部53には、バックフェルール5と結合部材3とを仮組み可能にするための仮組み係合部56がさらに形成されている。仮組み係合部56は、結合部材3の仮組み係合部35に係合可能である。仮組み係合部56は、主として、仮組み突出部57を有している。仮組み突出部57は、径方向外周側に向かって突出する環状の部分である。仮組み突出部57の軸方向に沿う断面形状は、円弧形状である。すなわち、仮組み突出部57の外周面は、その軸方向中央付近の部分が最も径方向外周側に向かって突出しており、この部分よりも前側及び後側に向かうにつれて径が小さくなるような円弧面をなしている。仮組み突出部57は、結合部材3が継手本体2に組み付けられる際に、結合部材3の押圧面34に接触するようになっている。ここで、仮組み突出部57の外径、すなわち、仮組み係合部56の最大外径Dnは、結合部材3の仮組み突出部36の内径Dcn1よりも大きく、かつ、仮組み拡径部37の内径Dcn2よりも小さくなっている(図5参照)。
【0040】
以上のように構成されたフロントフェルール4とバックフェルール5とは、結合部材3が継手本体2に組み付けられる前の状態において、互いが仮組み可能に構成されている(図2参照)。ここでは、フロントフェルール4とバックフェルール5とは、バックフェルール5の前方部52に形成された仮組み係合部54とフロントフェルール4の後方部43に形成された仮組み係合部44とを係合させることによって、互いの軸方向移動及び径方向移動が制限された状態になるように仮組みされるようになっている。より具体的には、バックフェルール5の前方部52が、フロントフェルール4の軸心とバックフェルール5の軸心とを芯合わせした状態で、フロントフェルール4の後方部43に押し付けられることによって仮組みされるようになっている。すなわち、仮組み突出部55の傾斜面55aが、仮組み突出部45の傾斜面45aに押し付けられることによって、仮組み突出部45がわずかに拡径するように変形し、また、仮組み突出部55がわずかに縮径するように変形する。そして、このような仮組み突出部45、55の変形によって、仮組み突出部55が仮組み突出部45を介して圧入されて仮組み拡径部46内に挿入される。そして、仮組み突出部55が仮組み拡径部46内に挿入された後は、仮組み突出部45、55が変形後のバックリングにより、変形前の状態あるいは変形前に近い状態に戻り、仮組み突出部55が仮組み拡径部46内に挿入された状態で保持されるようになっている。これにより、結合部材3が継手本体2に組み付けられる際に、フロントフェルール4とバックフェルール5との間で軸心ずれが発生することが抑えられるようになっている。また、以上のように構成されたバックフェルール5と結合部材3とは、結合部材3が継手本体2に組み付けられる前の状態において、互いが仮組み可能に構成されている(図4参照)。ここでは、バックフェルール5と結合部材3とは、バックフェルール5の後方部53に形成された仮組み係合部56と結合部材3の基部31に形成された仮組み係合部35とを係合させることによって、互いの軸方向移動及び径方向移動が制限された状態になるように仮組みされるようになっている。より具体的には、バックフェルール5の後方部53が、バックフェルール5の軸心と結合部材3の軸心とを芯合わせした状態で、結合部材3の基部31に押し付けられることによって仮組みされるようになっている。すなわち、仮組み突出部57が、仮組み突出部36の傾斜面36aに押し付けられることによって、仮組み突出部36がわずかに拡径するように変形し、また、仮組み突出部57がわずかに縮径するように変形する。そして、このような仮組み突出部36、57の変形によって、仮組み突出部57が仮組み突出部36を介して圧入されて仮組み拡径部37内に挿入される。そして、仮組み突出部57が仮組み拡径部37内に挿入された後は、仮組み突出部36、57が変形後のバックリングにより、変形前の状態あるいは変形前に近い状態に戻り、仮組み突出部57が仮組み拡径部37内に挿入された状態で保持されるようになっている。これにより、フロントフェルール4とバックフェルール5と結合部材3とが、互いに仮組みされた状態で、継手本体2に結合させることができるようになっている。ここで、バックフェルール5の仮組み突出部54の外径Dmとフロントフェルール4の仮組み突出部45の内径Dfm1との差をフェルール間圧入代Sffとする(図3参照)。バックフェルール5の仮組み突出部57の外径Dnと結合部材3の仮組み突出部36の内径Dcn1との差をフェルール−結合部材間圧入代Sfcとする(図5参照)。フロントフェルール4の仮組み突出部45の強度をフロントフェルール側仮組み突出部強度Ffとする。結合部材3の仮組み突出部36の強度を結合部材側仮組み突出部強度Fcとする。この場合において、フロントフェルール4とバックフェルール5と結合部材3とは、突出部の圧入代の観点で言えば、Sff<Sfcの関係を満たすように構成されている。これにより、フロントフェルール4と結合部材3との間にバックフェルール5を挟持した状態で、フロントフェルール4と結合部材3とを互いに押圧すると、まず、圧入代が小さいフロントフェルール4とバックフェルール5との仮組みがなされる。そして、その後、圧入代が大きいバックフェルール5と結合部材3との仮組みがなされることになる。また、フロントフェルール4とバックフェルール5と結合部材3とは、突出部の強度の観点で言えば、Ff<Fcの関係を満たすように構成されている。これにより、フロントフェルール4と結合部材3との間にバックフェルール5を挟持した状態で、フロントフェルール4と結合部材3とを互いに押圧すると、まず、突出部強度が小さいフロントフェルール4とバックフェルール5との仮組みがなされる。そして、その後、突出部強度が大きいバックフェルール5と結合部材3との仮組みがなされることになる。このように、突出部の圧入代や強度を上記のように適切に設定することによって、フロントフェルール4、バックフェルール5及び結合部材3をスムーズに仮組みすることができるようになっている。
【0041】
<方法>
次に、以上のように構成された本実施形態の食い込み式管接続構造1による配管接続方法について説明する。
【0042】
継手本体2は、配管P2を接続するに先だって、被接続側機器から導出される配管P1に取り付けられている。次に、食い込み式管接続構造1による配管P2の接続は、まず、結合部材3の差込口32に接続すべき配管P2を差し込み、結合部材3を配管P2に外装する。次に、予め互いに仮組みされた状態のフロントフェルール4、バックフェルール5及び結合部材3の配管貫通孔31、41、51に配管P2を差し込み、フロントフェルール4、バックフェルール5及び結合部材3を配管P2に外装する。ここで、フロントフェルール4とバックフェルール5と結合部材3との仮組みは、フロントフェルール4、バックフェルール5及び結合部材3に配管P2を差し込む前に予め行うものに限定されるものではない。例えば、互いに仮組みされていないフロントフェルール4、バックフェルール5及び結合部材3に配管P2を差し込む際に、フロントフェルール4と結合部材3との軸方向間にバックフェルール5を挟み付けることによって、両フェルール4、5及び結合部材3を仮組みするようにしてもよい。そして、配管P2の前端部分を継手本体2の差込口25に差し込み、配管P2が段差部26に当接した状態にして、フロントフェルール4及びバックフェルール5が仮組みされた状態で結合部材3を継手本体2に螺合する。
【0043】
この状態から結合部材3の工具掛け部134を手回しで継手本体2に締結すると、結合部材3の押圧面34によって、バックフェルール5の後方部53が前側に押圧される。また、バックフェルール5の前方部52によって、バックフェルール5と仮組みされた状態でフロントフェルール4の後方部43が前側に押圧される。これにより、フロントフェルール4の前方部42のテーパ面42aが継手本体2のカム面27の後側部分に接触する。このとき、フロントフェルール4の前方部42のノッチ42bよりも前側の部分が径方向内周側に折れ曲がり、カム面27の前側部分(傾斜角度α2の部分)に仮止めされる。また、バックフェルール5の前方部52のテーパ面52aがフロントフェルール4の後方部43のテーパ面43aに接触する。
【0044】
この状態から汎用の締結工具を使用して結合部材3の工具掛け部134を継手本体2に締め付ける。すると、まず、テーパ面42aがカム面27に押圧されるとともに、傾斜面からなるカム面27がフロントフェルール4の前方部42を径方向内周側に押圧する力を発生する。そして、この押圧力によって、前方部42の前側部分の配管P2への食い込みが行われる。このとき、テーパ面42aの傾斜角度β1がカム面27の後側部分の傾斜角度α1よりも小さくなっているため、フロントフェルール4の前方部42を径方向内周側に押圧する力を強めることができる。これにより、継手本体2のカム面27とフロントフェルール4のテーパ面42aとの間のシール部61と、フロントフェルール4の前端と配管P2との間のシール部62とが形成されることになる。
【0045】
また、フロントフェルール4の配管P2への食い込みが進行すると、次に、フロントフェルール4のテーパ面43aとバックフェルール5のテーパ面52aとの間のシール部63と、バックフェルール5の前端と配管P2との間のシール部64とが形成される。具体的には、テーパ面52aがテーパ面43aに押圧されるとともに、傾斜面からなるテーパ面43aがバックフェルール5の前方部52を径方向内周側に押圧する力を発生する。そして、この押圧力によって、前方部52の前側部分の配管P2への食い込みが行われる。このとき、テーパ面52aの傾斜角度γ1がテーパ面43aの傾斜角度β2よりも小さくなっているため、バックフェルール5の前方部52を径方向内周側に押圧する力を強めることができる。また、このとき、バックフェルール5の後方部53は、結合部材3の押圧面34によって、前方に押し付けられるだけでなく、径方向内周側に向かって押し付けられる。このため、結合部材3に仮組みされたバックフェルール5において、仮組み突出部57の変形が発生して、その変形が周方向に不揃いであるため、流体の漏れが発生するおそれがある。しかし、ここでは、仮組み突出部57の軸方向に沿う断面形状を円弧形状にしているため、仮組み突出部57が変形しにくく、周方向で不揃いに変形するのを防止している。そして、前方部52の前側部分の配管P2への食い込みが完了して、結合部材3の継手本体2への螺合が所定量だけ進むと(図13及び図18参照)、螺合当接部140によって、結合部材3の継手本体2への螺合が制限される。すなわち、継手本体2の筒部123の螺子部123aの後側の端面123b(継手本体側当接部)が、結合部材3の締結部133の突起138(締結部側当接部)に接触する。そして、さらに結合部材3の継手本体2への螺合を進めようとすると、切断トルク以上の締め付けトルクが工具掛け部134に作用するため、切断部136が切断されて、工具掛け部134が締結部133から分離される(図14及び図18参照)。
【0046】
ここで、螺合当接部140を有しない食い込み式管接続構造では、図16及び図17に示すように、使用材料(硬質材又は軟質材)の強度や切断部136の寸法公差等によって、結合部材3の切断トルクのバラツキが生じる。例えば、結合部材3の切断トルクを軟質材に合わせて設定すると、図16に示すように、硬質材を使用し、かつ、切断トルクの下限値近くで切断部136が切断された場合には、フェルール4、5等の配管P2に食い込む部材の食い込み具合が十分ではなく、所望のシール性が得られない状況が発生してしまう。また、逆に、結合部材3の切断トルクを硬質材に合わせて設定すると、図17に示すように、軟質材を使用し、かつ、切断トルクの上限値近くで切断部136が切断された場合には、フェルール4、5等の配管P2に食い込む部材が損傷するほどに食い込んでから工具掛け部134が切断されるような状況が発生してしまう。このように、螺合当接部140を有しない食い込み式管接続構造では、結合部材3の切断トルクのバラツキによるシール不良や部材の損傷等の不具合が発生するおそれがある。これに対して、食い込み式管接続構造1では、螺合当接部140を有しているため、結合部材3の切断トルクのバラツキによるシール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。具体的には、螺合当接部140を構成する端面123b(継手本体側当接部)及び突起138(締結部側当接部)の接触位置を、工具掛け部134が締結部133から切断される直前の結合部材3の回転角度に設定する。そして、このとき、結合部材3の切断トルクを硬質材に合わせて設定しておけば、図18に示すように、軟質材を使用する場合であっても、結合部材3の回転角度が過剰にならずに、締め付けトルクを切断トルクまで急増させることができる。これにより、シール不良及び部材の損傷を防ぐことができるようになっている。
【0047】
このようにして、本実施形態の食い込み式管接続構造1による配管接続が行われる。このとき、食い込み式管接続構造1では、フロントフェルール4とバックフェルール5と結合部材3とが互いが仮組みされているため、この仮組み状態が維持されたままで、フロントフェルール4及びバックフェルール5が継手本体2と結合部材3との間に挟着されることになる。このため、フロントフェルール4とバックフェルール5との間の軸心ずれが抑えられて、フロントフェルール4、5の前端の配管P2への食い込みが確実に行われるようになっている。これにより、フロントフェルール4、5の前端の配管P2への食い込みによって形成されるシール部62、64を通じての流体の漏れが発生しにくくなっている。また、食い込み式管接続構造1では、螺合当接部140を有しているため、結合部材3の切断トルクのバラツキによるシール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができるようになっている。
【0048】
次に、上記のような状態で締結された締結部133は、工具掛け部134が切断されるため、誰でも簡単に締結部133を緩めることができないが、図19に示すような専用治具107を用いることによって、締結部133を緩めることができるようになっている。
【0049】
専用治具107は、主として、六角盤を2つに分割した形状の2つの基部171a、171bを有している。基部171a、171bは、両者が結合されることによって、六角ナットを形成するナット部172a、172bを有している。基部171bの基部171aに対向する面には、基部171aの係合孔(図示せず)に係合する2個の円柱形状の係合突出部175bが形成されている。また、基部171a、171bの中央には、半円形状の孔173a、173bが形成されている。孔173a、173bの内径は、配管P2の外径よりもやや大径に形成されている。基部171a、171bの側面には、締結部133の係合孔135に係合可能な3個の円柱形状の係合突出部174a、174bがそれぞれ形成されている。
【0050】
そして、専用治具107の基部171a、171bを係合孔及び係合突出部175bによって結合させるとともに、係合突出部174a、174bを締結部133の係合孔135に係合させる。そして、専用治具107のナット部172a、172bを汎用の締結工具で専用治具107を回転させることによって、締結部133と継手本体1との螺合を緩めて、配管P2を取り外すことができる。この配管接続解除の方法によれば、配管P2を切断することなく、配管P2を取り外すことができる。
【0051】
<特徴>
次に、以上のように構成された本実施形態の食い込み式管接続構造1の特徴について説明する。
【0052】
(A)
食い込み式管接続構造1では、上記のように、結合部材3の継手本体2への螺合が所定量だけ進んだ段階で、螺合当接部140(ここでは、継手本体2の端面123b、及び、結合部材3の突起138)によって、結合部材3の継手本体2への螺合が制限される。そして、さらに結合部材3の継手本体2への螺合を進めようとすると、切断トルク以上の締め付けトルクが工具掛け部134に作用して、工具掛け部134が締結部133から分離されるようになっている。
【0053】
これにより、食い込み式管接続構造1では、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができるようになり、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる(図16〜図18参照)。
【0054】
(B)
食い込み式管接続構造1では、継手本体2の螺子部123a及び締結部133の螺子部133aの締結方向後端及び/又は後側に形成された当接部123b、138同士の接触によって、結合部材3の継手本体2への螺合を制限することができる。
【0055】
(C)
食い込み式管接続構造1では、突起138(締結部側当接部)が径方向に向かって突出している。
【0056】
これにより、食い込み式管接続構造1では、螺合当接部140の大きさを小さくすることができる。
【0057】
(D)
食い込み式管接続構造1では、突起138(締結部側当接部)の外径dが、継手本体2の外径dc1及び工具掛け部134の外径dc2よりも小さくなっている。
【0058】
これにより、食い込み式管接続構造1では、結合部材3を継手本体2に組み付ける作業の邪魔になりにくくすることができる。
【0059】
(E)
食い込み式管接続構造1では、突起138(締結部側当接部)の締結方向から見た断面形状が、円形状になっている。
【0060】
これにより、食い込み式管接続構造1では、締結部133が継手本体2に螺合して工具掛け部134が分離された後の状態において、突起138を締結工具で把持しにくくなる。
【0061】
これにより、食い込み式管接続構造1では、締結部133が継手本体2に螺合して工具掛け部134が分離された後の状態において、突起138を締結工具で把持して締結部133を緩めることを防ぐことができる。
【0062】
(F)
食い込み式管接続構造1では、突起138(締結部側当接部)の肉厚tが、0.5〜1.0mmになっている。
【0063】
これにより、食い込み式管接続構造1では、突起138の肉厚tを0.5mm以上にすることによって、切断トルクでも損傷しないようにすることができる。また、突起138の肉厚tを1.0mm以下にすることによって、突起138を締結工具で把持しにくくすることができる。
【0064】
<変形例1>
上記実施形態の食い込み式管接続構造1では、螺合当接部140を構成する突起138(締結部側当接部)の締結方向から見た断面形状が、円形状であるが、これに限定されるものではない。例えば、図20に示すように、突起138が周方向の一部に形成される等のように、突起138を周方向に断続的な部分突起にしてもよい。
【0065】
本変形例においても、上記実施形態と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。
【0066】
<変形例2>
上記実施形態及びその変形例1の食い込み式管接続構造1では、継手本体2の螺子部123aの後側の端面123b(継手本体側当接部)が、締結部133の螺子部133aの後側の突起138(締結部側当接部)に接触することによって、螺合当接部140を構成している。しかし、螺合当接部140の構成は、これに限定されるものではない。
【0067】
例えば、図21に示すように、継手本体2の螺子部123aの後端123c(継手本体側当接部)が、突起138(締結部側当接部)に接触することによって、螺合当接部140を構成してもよい。ここでは、上記実施形態に比べて突起138の径方向の突出高さを小さくすることによって、螺子部123aの後端123cが突起138に接触するようにしている。
【0068】
本変形例においても、上記実施形態及びその変形例1と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。尚、ここでは、上記実施形態の構成を前提として、螺合当接部140を上記のように変更した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記変形例1において、螺合当接部140を上記のように変更してもよい。
【0069】
<変形例3>
上記実施形態及びその変形例1の食い込み式管接続構造1では、継手本体2の螺子部123aの後側の端面123b(継手本体側当接部)が、締結部133の螺子部133aの後側の突起138(締結部側当接部)に接触することによって、螺合当接部140を構成している。しかし、螺合当接部140の構成は、これに限定されるものではない。
【0070】
例えば、図22に示すように、継手本体2の螺子部123aの前側の面123d(継手本体側当接部)が、締結部133の螺子部133aの前側の面133b(締結部側当接部)に接触することによって、螺合当接部140を構成してもよい。ここでは、上記実施形態に比べて締結部133の前端を前方に突出させることによって、継手本体2の環状空間125付近の面123dに接触するようにしている。
【0071】
本変形例においても、上記実施形態及びその変形例1と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。尚、ここでは、上記実施形態の構成を前提として、螺合当接部140を上記のように変更した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記変形例1において、螺合当接部140を上記のように変更してもよい。
【0072】
<変形例4>
上記実施形態及びその変形例1の食い込み式管接続構造1では、継手本体2の螺子部123aの後側の端面123b(継手本体側当接部)が、締結部133の螺子部133aの後側の突起138(締結部側当接部)に接触することによって、螺合当接部140を構成している。しかし、螺合当接部140の構成は、これに限定されるものではない。
【0073】
例えば、図23に示すように、継手本体2の螺子部123aの前端123e(継手本体側当接部)が、締結部133の螺子部133aの前端133c(締結部側当接部)に接触することによって、螺合当接部140を構成してもよい。ここでは、螺子部123a、133aの軸方向長さを調節することによって、螺子部123a、133aの前端123e、133c同士が接触するようにしている。
【0074】
本変形例においても、上記実施形態及びその変形例1と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。尚、ここでは、上記実施形態の構成を前提として、螺合当接部140を上記のように変更した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記変形例1において、螺合当接部140を上記のように変更してもよい。
【0075】
<変形例5>
上記実施形態及びその変形例1〜4の食い込み式管接続構造1では、フロントフェルール4及びバックフェルール5を有するダブルフェルール構造の食い込み式管接続構造において、螺合当接部140を設けたが、これに限定されるものではない。例えば、図24に示すように、継手本体2の軸部23の後端と結合部材3の基部31の前端との間に挟着される1つのフェルール104を有するシングルフェルール構造の食い込み式管接続構造において、螺合当接部140を設けるようにしてもよい。尚、シングルフェルール構造の具体的な構成はこれに限定されるものではなく、種々のシングルフェルール構造において、螺合当接部140を設けるようにしてもよい。
【0076】
本変形例においても、上記実施形態及びその変形例1〜4と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。尚、ここでは、上記実施形態の構成を前提として、ダブルフェルール構造をシングルフェルール構造に変更した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記変形例1〜4において、ダブルフェルール構造をシングルフェルール構造に変更してもよい。
【0077】
<変形例6>
上記変形例5の食い込み式管接続構造1において、流体の漏れに対する信頼性をさらに向上させるために、図25に示すように、継手本体2と配管P2との間をシールするOリング式のシール部65を設けるようにしてもよい。ここでは、継手本体2の軸部23の内面に環状の溝部28を形成し、この溝部28にOリング66を嵌め込むようにしている。
【0078】
<変形例7>
上記実施形態及びその変形例1〜4の食い込み式管接続構造1では、フロントフェルール4及びバックフェルール5を有するダブルフェルール構造の食い込み式管接続構造において、螺合当接部140を設けたが、これに限定されるものではない。例えば、図26に示すように、継手本体2の軸部23の後端と結合部材3の基部31の前端とを密着及び食い込みさせるフェルール不使用の食い込み式管接続構造において、螺合当接部140を設けるようにしてもよい。尚、フェルール不使用構造の具体的な構成はこれに限定されるものではなく、種々のフェルール不使用構造において、螺合当接部140を設けるようにしてもよい。
【0079】
本変形例においても、上記実施形態及びその変形例1〜4と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。尚、ここでは、上記実施形態の構成を前提として、ダブルフェルール構造をフェルール不使用構造に変更した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記変形例1〜4において、ダブルフェルール構造をフェルール不使用構造に変更してもよい。
【0080】
<変形例8>
上記変形例7の食い込み式管接続構造1において、流体の漏れに対する信頼性をさらに向上させるために、図27に示すように、継手本体2と配管P2との間をシールするOリング式のシール部65を設けるようにしてもよい。ここでは、継手本体2の軸部23の内面に環状の溝部28を形成し、この溝部28にOリング66を嵌め込むようにしている。
【0081】
<変形例9>
上記実施形態及びその変形例1、2、5〜8の食い込み式管接続構造1では、螺合当接部140を構成する突起138(締結部側当接部)の軸方向に沿う断面形状が、軸心に平行な外面を有する矩形形状であるが、これに限定されるものではない。例えば、突起138の軸方向に沿う断面形状を三角形状や円弧形状にしてもよい。
【0082】
具体的には、図28に示すように、突起138の軸方向に沿う断面形状が軸心に対して傾斜した外面を有する三角形状にしてもよい。また、この場合には、締結工具(専用治具107を除く)による把持を防止するという観点で、外面の傾斜を後側に向かうにつれて径が小さくなるような三角形状にすることが好ましい。
【0083】
本変形例においても、上記実施形態及びその変形例1、2、5〜8と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。また、突起138を三角形状にすることによって、仮に肉厚tを1.0mmよりも大きくしても、締結工具(専用治具107を除く)によって把持しにくくすることができる。しかも、突起138を外面の傾斜を後側に向かうにつれて径が小さくなるような三角形状にすれば、締結工具(専用治具107を除く)による把持を効果的に防ぐことができる。尚、ここでは、上記実施形態の構成を前提として、突起138の軸方向に沿う断面形状を三角形状や円弧形状に変更した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記変形例1、2、5〜8において、突起138の軸方向に沿う断面形状を三角形状や円弧形状に変更してもよい。
【0084】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、上記実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0085】
上記実施形態及びその変形例において、配管P1は、継手本体2にロウ付け等で取り付けられているが、これに限定されるものではない。例えば、継手本体2の配管P1側にも、配管P2側と同様の食い込み式管接続構造1を設けた両ユニオン構造にしてもよい。
【0086】
また、上記実施形態及びその変形例において、切断部136が、結合部材3を前後に二分するように径方向の切れ目を有する円盤状スリット132によって形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、切断部136が、結合部材3を内外に二分するように軸方向の切れ目を有する円筒状スリットによって形成されていてもよい。
【0087】
また、上記実施形態及び変形例1〜4、9では、フロントフェルール4とバックフェルール5と結合部材3とが互いに仮組み可能なダブルフェルール構造を採用しているが、これに限定されるものではない。これらの部材が仮組み可能でないダブルフェルール構造等のような種々のダブルフェルール構造において、螺合当接部140を設けるようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態及びその変形例においては、配管として、銅等の金属材料を使用し、継手本体、結合部材及びフェルールとして、黄銅等の金属材料を使用しているが、これに限定されるものではない。例えば、配管や継手本体、結合部材及びフェルールとして、アルミニウム、ステンレス、樹脂、鉄等を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、継手本体に結合部材が組み付けられた後に結合部材の工具掛け部が結合部材の締結部から分離されるように構成された管接続構造に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 食い込み式管接続構造(管接続構造)
2 継手本体
3 結合部材
123a 螺子部(継手本体側螺子部)
123b 螺子部の後側の端面(継手本体側当接部)
123c 螺子部の後端(継手本体側当接部)
123d 螺子部の前側の面(継手本体側当接部)
123e 螺子部の前端(継手本体側当接部)
133 締結部
133a 螺子部(締結部側螺子部)
133b 螺子部の前側の面(締結部側当接部)
133c 螺子部の前端(締結部側当接部)
134 工具掛け部
138 突起(締結部側当接部)
140 螺合当接部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特開2008−106935号公報
【特許文献2】特開2008−157466号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、管接続構造、特に、継手本体に結合部材が組み付けられた後に結合部材の工具掛け部が結合部材の締結部から分離されるように構成された管接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍装置の配管系統において、継手本体と、継手本体と螺合する締結部と締結工具で把持される工具掛け部とを有する結合部材とを有し、継手本体に結合部材が組み付けられた後に工具掛け部が締結部から分離されるように構成された管継手が使用されている。
【0003】
このような継手本体に結合部材が組み付けられた後に結合部材の工具掛け部が結合部材の締結部から分離されるように構成された管継手としては、特許文献1(特開2008−106935号公報)、及び、特許文献2(特開2008−157466号公報)に記載されているものがある。
【0004】
ここで、継手本体に結合部材が組み付けられた後に工具掛け部が締結部から分離されるように構成された管継手では、締め付けトルクが所定の切断トルクに達すると強度を弱くした部分が破壊して工具掛け部が締結部から切断して分離されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、工具掛け部を締結部から切断するための切断トルクは、使用材料の強度や所定の切断トルクに達すると切断される部分の寸法公差等によって、ある程度のバラツキが発生する。
【0006】
また、管継手として食い込み式管接続構造を採用する場合には、フェルール等の配管に食い込む部材の進入度合いによって、流体の漏れに対するシール性が決定されるため、継手本体に結合部材を螺合する際の回転角度と切断トルクとを適切に関係付ける必要がある。しかし、食い込み式管接続構造では、回転角度に対する締め付けトルクの変化が緩やかであるため、使用材料の強度や部材の寸法公差等によって、大きな切断トルクのバラツキが発生するおそれがある。このため、所定の切断トルクに達して工具掛け部が切断された後においても、フェルール等の配管に食い込む部材の食い込み具合が十分ではなく、所望のシール性が得られない状況が発生するおそれがある。また、逆に、フェルール等の配管に食い込む部材が損傷するほどに食い込んでから工具掛け部が切断されるような状況が発生するおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、継手本体に結合部材が組み付けられた後に結合部材の工具掛け部が結合部材の締結部から分離されるように構成された管接続構造において、切断トルクのバラツキによるシール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の観点にかかる管接続構造は、継手本体と、継手本体と螺合する締結部と締結工具で把持される工具掛け部とを有する結合部材とを有し、継手本体に結合部材が組み付けられた後に工具掛け部が締結部から分離されるように構成されている。そして、継手本体と結合部材とは、工具掛け部が締結部から分離される前に、結合部材の継手本体への螺合が制限されるように互いが接触する螺合当接部を構成している。
【0009】
この管接続構造では、結合部材の継手本体への螺合が所定量だけ進んだ段階で、螺合当接部によって、結合部材の継手本体への螺合が制限される。そして、さらに結合部材の継手本体への螺合を進めようとすると、切断トルク以上の締め付けトルクが工具掛け部に作用して、工具掛け部が締結部から切断して分離されるようになっている。
【0010】
これにより、この管接続構造では、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材の継手本体への螺合の所定量を決定しておくことができるため、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。
【0011】
第2の観点にかかる管接続構造は、第1の観点にかかる管接続構造において、継手本体は、締結部に螺合する継手本体側螺子部を有している。締結部は、継手本体側螺子部に螺合する締結部側螺子部を有している。螺合当接部は、結合部材を継手本体に組み付ける方向である締結方向に対して、継手本体の継手本体側螺子部の後端からなる又は継手本体側螺子部の後側に形成された継手本体側当接部と、締結部の締結部側螺子部の後端からなる又は後側に形成された締結部側当接部とから構成されている。
【0012】
この管接続構造では、継手本体の螺子部及び締結部の螺子部の締結方向後端及び/又は後側に形成された当接部同士の接触によって、結合部材の継手本体への螺合を制限することができる。
【0013】
第3の観点にかかる管接続構造は、第2の観点にかかる管接続構造において、締結部側当接部は、径方向に向かって突出する突起からなる。
【0014】
この管接続構造では、螺合当接部の大きさを小さくすることができる。
【0015】
第4の観点にかかる管接続構造は、第3の観点にかかる管接続構造において、突起の外径は、継手本体の外径及び工具掛け部の外径よりも小さい。
【0016】
この管接続構造では、結合部材を継手本体に組み付ける作業の邪魔になりにくくすることができる。
【0017】
第5の観点にかかる管接続構造は、第3又は第4の観点にかかる管接続構造において、突起の締結方向から見た断面形状は、円形状である。
【0018】
この管接続構造では、締結部が継手本体に螺合して工具掛け部が分離された後の状態において、突起を締結工具で把持しにくくなる。
【0019】
これにより、この管接続構造では、締結部が継手本体に螺合して工具掛け部が分離された後の状態において、突起を締結工具で把持して締結部を緩めることを防ぐことができる。
【0020】
第6の観点にかかる管接続構造は、第3〜第5の観点のいずれかにかかる管接続構造において、突起の肉厚は、0.5〜1.0mmである。
【0021】
この管接続構造では、突起の肉厚を0.5mm以上にすることによって、切断トルクでも損傷しないようにすることができる。また、突起の肉厚を1.0mm以下にすることによって、突起を締結工具で把持しにくくすることができる。
【0022】
第7の観点にかかる管接続構造は、第1の観点にかかる管接続構造において、継手本体は、締結部に螺合する継手本体側螺子部を有している。締結部は、継手本体側螺子部に螺合する締結部側螺子部を有している。螺合当接部は、結合部材を継手本体に組み付ける方向である締結方向に対して、継手本体の継手本体側螺子部の前端からなる又は前側に形成された継手本体側当接部と、締結部の締結部側螺子部の前端からなる又は継手本体側螺子部の前側に形成された締結部側当接部とから構成されている。
【0023】
この管接続構造では、継手本体の螺子部及び締結部の螺子部の締結方向前端及び/又は前側に形成された当接部同士の接触によって、結合部材の継手本体への螺合を制限することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下のような効果が得られる。
【0025】
第1の観点にかかる管接続構造では、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材の継手本体への螺合の所定量を決定しておくことができるため、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。
【0026】
第2の観点にかかる管接続構造では、継手本体の螺子部及び締結部の螺子部の締結方向後端及び/又は後側に形成された当接部同士の接触によって、結合部材の継手本体への螺合を制限することができる。
【0027】
第3の観点にかかる管接続構造では、螺合当接部の大きさを小さくすることができる。
【0028】
第4の観点にかかる管接続構造では、結合部材を継手本体に組み付ける作業の邪魔になりにくくすることができる。
【0029】
第5の観点にかかる管接続構造では、締結部が継手本体に螺合して工具掛け部が分離された後の状態において、突起を締結工具で把持して締結部を緩めることを防ぐことができる。
【0030】
第6の観点にかかる管接続構造では、突起の肉厚を0.5mm以上にすることによって、切断トルクでも損傷しないようにすることができ、また、突起の肉厚を1.0mm以下にすることによって、突起を締結工具で把持しにくくすることができる。
【0031】
第7の観点にかかる管接続構造では、継手本体の螺子部及び締結部の螺子部の締結方向前端及び/又は前側に形成された当接部同士の接触によって、結合部材の継手本体への螺合を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態にかかる食い込み式管接続構造の配管接続開始時の状態を示す断面図である。
【図2】フロントフェルールとバックフェルールとが仮組みされた状態を示す断面図である。
【図3】図2のA部を拡大して示す断面図である。
【図4】バックフェルールと結合部材とが仮組みされた状態を示す断面図である。
【図5】図4のB部を拡大して示す断面図である。
【図6】継手本体を示す断面図である。
【図7】図6のC部を拡大して示す断面図である。
【図8】結合部材を示す断面図である。
【図9】結合部材を示す後面図である。
【図10】フロントフェルールを示す断面図である。
【図11】バックフェルールを示す断面図である。
【図12】螺合当接部付近を示す断面図である。
【図13】食い込み式管接続構造の配管接続完了時の状態(切断直前の状態)を示す断面図である。
【図14】食い込み式管接続構造の配管接続完了時の状態(切断後の状態)を示す断面図である。
【図15】図14のI−I断面図である。
【図16】螺合当接部を設けない構造における結合部材の回転角度と締め付けトルクとの関係を示す図(軟質材に合わせて切断トルクを設定した場合)である。
【図17】螺合当接部を設けない構造における結合部材の回転角度と締め付けトルクとの関係を示す図(硬質材に合わせて切断トルクを設定した場合)である。
【図18】螺合当接部を設けた構造における結合部材の回転角度と締め付けトルクとの関係を示す図(硬質材に合わせて切断トルクを設定した場合)である。
【図19】食い込み式管接続構造の専用治具の要部を示す斜視図である。
【図20】変形例1の食い込み式管接続構造の螺合当接部を示す図であって、図15に対応する図である。
【図21】変形例2の食い込み式管接続構造の配管接続完了時の状態(切断直前の状態)を示す断面図である。
【図22】変形例3の食い込み式管接続構造の配管接続完了時の状態(切断直前の状態)を示す断面図である。
【図23】変形例4の食い込み式管接続構造の配管接続完了時の状態(切断直前の状態)を示す断面図である。
【図24】変形例5の食い込み式管接続構造の配管接続開始時の状態を示す断面図である。
【図25】変形例6の食い込み式管接続構造の配管接続開始時の状態を示す断面図である。
【図26】変形例7の食い込み式管接続構造の配管接続開始時の状態を示す断面図である。
【図27】変形例8の食い込み式管接続構造の配管接続開始時の状態を示す断面図である。
【図28】変形例9の食い込み式管接続構造の螺合当接部を示す図であって、図12に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明にかかる管接続構造の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0034】
<構成>
本実施形態の食い込み式管接続構造1は、ヒートポンプ式空気調和装置や温水装置等の冷凍装置の配管系統において、配管同士を接続するための管継手における管継手部に適用されたり、配管が接続される弁類等の機器における管継手部に適用されるものである。ここで、図1は、本発明の一実施形態にかかる食い込み式管接続構造1の配管接続開始時の状態を示す断面図である。図2は、フロントフェルール4とバックフェルール5とが仮組みされた状態を示す断面図である。図3は、図2のA部を拡大して示す断面図である。図4は、バックフェルール5と結合部材3とが仮組みされた状態を示す断面図である。図5は、図4のB部を拡大して示す断面図である。図6は、継手本体2を示す断面図である。図7は、図6のC部を拡大して示す断面図である。図8は、結合部材3を示す断面図である。図9は、結合部材3を示す後面図である。図10は、フロントフェルール4を示す断面図である。図11は、バックフェルール5を示す断面図である。図12は、螺合当接部140付近を示す断面図である。図13は、食い込み式管接続構造1の配管接続完了時の状態(切断直前の状態)を示す断面図である。図14は、食い込み式管接続構造1の配管接続完了時の状態(切断後の状態)を示す断面図である。図15は、図14のI−I断面図である。図16は、螺合当接部140を設けない構造における結合部材3の回転角度と締め付けトルクとの関係を示す図(軟質材に合わせて切断トルクを設定した場合)である。図17は、螺合当接部140を設けない構造における結合部材の回転角度と締め付けトルクとの関係を示す図(硬質材に合わせて切断トルクを設定した場合)である。図18は、螺合当接部140を設けた構造における結合部材の回転角度と締め付けトルクとの関係を示す図(硬質材に合わせて切断トルクを設定した場合)である。図19は、食い込み式管接続構造1の専用治具107の要部を示す斜視図である。尚、以下の説明で使用する「前」、「後」は、結合部材を継手本体に組み付ける方向である締結方向を基準とする向きを意味し、図1においては、紙面左方を向く側を「前」とし、紙面右方を向く側を「後」とする。また、「軸方向」とは、各部材の軸心に沿う方向を意味し、「径方向」とは、軸方向に交差する方向を意味する。また、図13や図14等は、フェルール4、5が配管P2に食い込んだ状態を示すイメージ図であり、実際にフェルール4、5が配管P2に食い込んだ状態は、図13や図14等とは若干異なる場合もあり得る。
【0035】
食い込み式管接続構造1は、主として、継手本体2と、結合部材3と、フロントフェルール4及びバックフェルール5とを有している。継手本体2は、被接続側機器から導出される配管P1に取り付けられる部材である。結合部材3は、継手本体2に接続する配管P2に外装され、継手本体2に螺合されて組み付けられる部材である。フロントフェルール4及びバックフェルール5は、継手本体2及び結合部材3とは別体に形成されるとともに、継手本体2と結合部材3との間に挟着される部材である。尚、配管P1、P2は、銅等の金属製の部材である。
【0036】
継手本体2は、黄銅等の金属製の部材であり、基部21を有している。基部21の前側には、ソケット部22が形成され、基部21の後側には、筒部123と軸部23とが形成されている。筒部123の内周部分には、結合部材3を螺合するための雌ねじからなる螺子部123a(継手本体側螺子部)が形成されている。筒部123の螺子部123aの後側の端面123b(継手本体側当接部)は、結合部材3を継手本体2に組み付ける際に、後述の結合部材3の突起138(締結部側当接部)に接触して螺合当接部140を構成するようになっている。軸部23は、筒部123の内周側の空間内に突出するように形成されている。軸部23の外周面には、配管接続時に軸部23の強度を調節するための環状空間125が形成されている。また、環状空間125の外周部には、内部凍結防止用の通気孔125aが形成されている。基部21及び筒部123の外周部分は、汎用の締結工具で把持できるように略六角ナット形状の外形に形成されている。ソケット部22から基部21にかけての軸心部分には、配管P1を差し込むための差込口24が形成されている。軸部23から基部21にかけての軸心部分には、配管P2を差し込むための差込口25が形成されている。差込口24と差込口25との軸方向間には、差込口24及び差込口25よりも小径の連通孔を形成するとともに配管P1、P2の軸方向移動を規制する段差部26が形成されている。段差部26は、差込口24、25に差し込まれた配管P1、P2の先端を段差部26に当接させることによって、配管P1、P2の先端位置を一定に保持するものである。軸部23の先端部分、すなわち、差込口25の後端部分には、カム面27が形成されている。カム面27は、前側部分が差込口25に連なっており、後側に向かうにつれて径が大きくなる傾斜面をなしている。カム面27は、結合部材3が継手本体2に組み付けられる際にフロントフェルール4を径方向内周側に押圧する力を発生するものである。カム面27は、後側部分の軸心に対する傾斜角度α1に比べて、前側部分の軸心に対する傾斜角度α2が大きくなるように形成されている(図7参照)。
【0037】
結合部材3は、黄銅等の金属製の部材であり、軸心部分に配管P2を差し込むための差込口32が形成されるとともに、結合部材3を前後に二分するように径方向の切れ目を有する円盤状スリット132が形成されている。円盤状スリット132の前側には、継手本体2と螺合する締結部133が形成され、円盤状スリット132の後側には、汎用の締結工具で把持される工具掛け部134が形成されている。締結部133の外周部分には、継手本体2の螺子部123aに螺合する雄ねじからなる螺子部133aが形成されている。工具掛け部134の外周部分は、汎用の締結工具で把持できるように略六角ナット形状の外形に形成されている。そして、円盤状スリット132と差込口32との径方向間には、締結部133と工具掛け部134とを連結する薄肉の環状部分からなる切断部136が形成されている。切断部136は、工具掛け部134の締め付けトルクが配管接続完了時の値まで大きくなると切断される強度になるように設計されている。ここでは、切断部136は、前側に向かって肉厚が小さくなるように形成されており、締結部133の近傍で切断されるようになっている。また、締結部133の前側部分は、基部31を構成している。基部31の前側部分には、押圧面34が形成されている。押圧面34は、軸心側が後方に後退する傾斜面をなしている。押圧面34は、結合部材3が継手本体2に組み付けられる際に、結合部材3を締め付ける締付トルクを、軸方向前側、かつ、径方向内周側に押圧する力に代えて、バックフェルール5を押圧するものである。基部31の前側部分には、バックフェルール5と結合部材3とを仮組み可能にするための仮組み係合部35がさらに形成されている。仮組み係合部35は、押圧面34の前側に位置しており、螺子部33aの後側に位置している。仮組み係合部35は、主として、仮組み突出部36と仮組み拡径部37とを有している。仮組み突出部36は、押圧面34よりも前側の位置において、径方向内周側に向かって突出する環状の部分である。仮組み突出部36の内周面は、前側に向かうにつれて径が大きくなる傾斜面36aを有している。傾斜面36aは、バックフェルール5の後方部53に形成された仮組み突出部57を圧入しやすくするためのものである。仮組み拡径部37は、仮組み突出部36の後側の位置、すなわち、押圧面34と仮組み突出部36との軸方向間の位置において、仮組み突出部36よりも大きな内径を有する部分である。仮組み拡径部37は、仮組み突出部36を介して挿入される仮組み突出部57を保持するためものである。ここで、仮組み突出部36の内径をDcn1とし、仮組み拡径部37の内径をDcn2とする(図5参照)。また、締結部133の後側部分には、専用治具107が係合することが可能な断面が円形で所定深さの複数(ここでは、6個)の係合孔135が形成されている。また、工具掛け部134には、係合孔135を工具掛け部134側から加工可能にするための加工用孔137が係合孔135に対向するように形成されている。さらに、締結部133の螺子部133aの後側には、径方向に突出する突起138(締結部側当接部)が形成されている。この突起138は、結合部材3の継手本体2への螺合が進み、工具掛け部134が締結部133から切断して分離される直前に、継手本体2の筒部123の後側の端面123b(継手本体側当接部)に接触するように形成されている。このため、継手本体2の筒部123の後側の端面123bが突起138に接触した後は、切断トルク以上の締め付けトルクが工具掛け部134に作用して、工具掛け部134が締結部133から切断して分離されるようになっている。ここで、突起138の軸方向に沿う断面形状は、軸心に平行な外面を有する矩形形状である。また、突起138の外径dは、継手本体2の筒部123の外径dc1及び工具掛け部134の外径dc2よりも小さくなっている(図12参照)。また、突起138の締結方向から見た断面形状は、円形状になっている(図15参照)。さらに、突起138の肉厚tは、0.5〜1.0mmになっている(図12参照)。
【0038】
フロントフェルール4は、黄銅等の金属製の部材であり、結合部材3が継手本体2に組み付けられる前の状態において、バックフェルール5とは別体に形成されている。フロントフェルール4の軸心部分には、配管P2が差し込まれる配管貫通孔41が形成されている。フロントフェルール4は、前側部分が前方部42を構成し、後側部分が後方部43を構成している。前方部42の外周面には、前方に向かうにつれて径が小さくなるテーパ面42aが形成されている。テーパ面42aは、軸心に対する傾斜角度β1がカム面27の後側部分の傾斜角度α1よりも小さくなるように形成されている(図7参照)。前方部42の内周面には、径方向外周側に向かって切り込まれたノッチ42bが形成されている。ノッチ42bは、軸方向に沿う断面形状が略直角三角形状である。前方部42の前端部分、すなわち、ノッチ42bよりも前側の部分の変形を容易にするためのものである。後方部43の外周面は、軸心に対して略平行な面が形成されている。後方部43の内周面には、前方に向かうにつれて径が小さくなるテーパ面43aが形成されている。テーパ面43aは、結合部材3が継手本体2に組み付けられる際にバックフェルール5を径方向内周側に押圧する力を発生するものである。ここで、テーパ面43aの軸心に対する傾斜角度をβ2とする(図3参照)。後方部43には、フロントフェルール4とバックフェルール5とを仮組み可能にするための仮組み係合部44が形成されている。仮組み係合部44は、主として、仮組み突出部45と仮組み拡径部46とを有している。仮組み突出部45は、テーパ面43aよりも後側の位置において、径方向内周側に向かって突出する環状の部分である。仮組み突出部45の内周面は、後側に向かうにつれて径が大きくなる傾斜面45aを有している。傾斜面45aは、バックフェルール5の前方部52に形成された仮組み突出部55を圧入しやすくするためのものである。仮組み拡径部46は、仮組み突出部45の前側の位置、すなわち、テーパ面43aと仮組み突出部45との軸方向間の位置において、仮組み突出部45よりも大きな内径を有する部分である。仮組み拡径部46は、仮組み突出部45を介して挿入される仮組み突出部55を保持するためものである。ここで、仮組み突出部45の内径をDfm1とし、仮組み拡径部46の内径をDfm2とする(図3参照)。
【0039】
バックフェルール5は、黄銅等の金属製の部材であり、結合部材3が継手本体2に組み付けられる前の状態において、フロントフェルール4とは別体に形成されている。バックフェルール5の軸心部分には、配管P2が差し込まれる配管貫通孔51が形成されている。バックフェルール5は、前側部分が前方部52を構成し、後側部分が後方部53を構成している。前方部52の外周面には、前方に向かうにつれて径が小さくなるテーパ面52aが形成されている。テーパ面52aは、軸心に対する傾斜角度γ1がフロントフェルール4のテーパ面43aの傾斜角度β2よりも小さくなるように形成されている(図3参照)。前方部52には、フロントフェルール4とバックフェルール5とを仮組み可能にするための仮組み係合部54が形成されている。仮組み係合部54は、フロントフェルール4の仮組み係合部44に係合可能である。仮組み係合部54は、主として、仮組み突出部55を有している。仮組み突出部55は、テーパ面52aよりも後側の位置において、径方向外周側に向かって突出する環状の部分である。仮組み突出部55の外周面は、傾斜面55aと、傾斜面55aの後側に連なる傾斜面55bとを有している。傾斜面55aは、後側に向かうにつれて径が大きくなっている。傾斜面55bは、後側に向かうにつれて径が小さくなっている。すなわち、仮組み突出部55の外周面は、軸方向に沿う断面形状が略三角形状をなしている。傾斜面55aは、フロントフェルール4の後方部43に形成された仮組み突出部45に圧入しやすくするためのものである。ここで、仮組み突出部55の外径、すなわち、仮組み係合部54の最大外径Dmは、フロントフェルール4の仮組み突出部45の内径Dfm1よりも大きく、かつ、仮組み拡径部46の内径Dfm2よりも小さくなっている(図3参照)。また、後方部53には、バックフェルール5と結合部材3とを仮組み可能にするための仮組み係合部56がさらに形成されている。仮組み係合部56は、結合部材3の仮組み係合部35に係合可能である。仮組み係合部56は、主として、仮組み突出部57を有している。仮組み突出部57は、径方向外周側に向かって突出する環状の部分である。仮組み突出部57の軸方向に沿う断面形状は、円弧形状である。すなわち、仮組み突出部57の外周面は、その軸方向中央付近の部分が最も径方向外周側に向かって突出しており、この部分よりも前側及び後側に向かうにつれて径が小さくなるような円弧面をなしている。仮組み突出部57は、結合部材3が継手本体2に組み付けられる際に、結合部材3の押圧面34に接触するようになっている。ここで、仮組み突出部57の外径、すなわち、仮組み係合部56の最大外径Dnは、結合部材3の仮組み突出部36の内径Dcn1よりも大きく、かつ、仮組み拡径部37の内径Dcn2よりも小さくなっている(図5参照)。
【0040】
以上のように構成されたフロントフェルール4とバックフェルール5とは、結合部材3が継手本体2に組み付けられる前の状態において、互いが仮組み可能に構成されている(図2参照)。ここでは、フロントフェルール4とバックフェルール5とは、バックフェルール5の前方部52に形成された仮組み係合部54とフロントフェルール4の後方部43に形成された仮組み係合部44とを係合させることによって、互いの軸方向移動及び径方向移動が制限された状態になるように仮組みされるようになっている。より具体的には、バックフェルール5の前方部52が、フロントフェルール4の軸心とバックフェルール5の軸心とを芯合わせした状態で、フロントフェルール4の後方部43に押し付けられることによって仮組みされるようになっている。すなわち、仮組み突出部55の傾斜面55aが、仮組み突出部45の傾斜面45aに押し付けられることによって、仮組み突出部45がわずかに拡径するように変形し、また、仮組み突出部55がわずかに縮径するように変形する。そして、このような仮組み突出部45、55の変形によって、仮組み突出部55が仮組み突出部45を介して圧入されて仮組み拡径部46内に挿入される。そして、仮組み突出部55が仮組み拡径部46内に挿入された後は、仮組み突出部45、55が変形後のバックリングにより、変形前の状態あるいは変形前に近い状態に戻り、仮組み突出部55が仮組み拡径部46内に挿入された状態で保持されるようになっている。これにより、結合部材3が継手本体2に組み付けられる際に、フロントフェルール4とバックフェルール5との間で軸心ずれが発生することが抑えられるようになっている。また、以上のように構成されたバックフェルール5と結合部材3とは、結合部材3が継手本体2に組み付けられる前の状態において、互いが仮組み可能に構成されている(図4参照)。ここでは、バックフェルール5と結合部材3とは、バックフェルール5の後方部53に形成された仮組み係合部56と結合部材3の基部31に形成された仮組み係合部35とを係合させることによって、互いの軸方向移動及び径方向移動が制限された状態になるように仮組みされるようになっている。より具体的には、バックフェルール5の後方部53が、バックフェルール5の軸心と結合部材3の軸心とを芯合わせした状態で、結合部材3の基部31に押し付けられることによって仮組みされるようになっている。すなわち、仮組み突出部57が、仮組み突出部36の傾斜面36aに押し付けられることによって、仮組み突出部36がわずかに拡径するように変形し、また、仮組み突出部57がわずかに縮径するように変形する。そして、このような仮組み突出部36、57の変形によって、仮組み突出部57が仮組み突出部36を介して圧入されて仮組み拡径部37内に挿入される。そして、仮組み突出部57が仮組み拡径部37内に挿入された後は、仮組み突出部36、57が変形後のバックリングにより、変形前の状態あるいは変形前に近い状態に戻り、仮組み突出部57が仮組み拡径部37内に挿入された状態で保持されるようになっている。これにより、フロントフェルール4とバックフェルール5と結合部材3とが、互いに仮組みされた状態で、継手本体2に結合させることができるようになっている。ここで、バックフェルール5の仮組み突出部54の外径Dmとフロントフェルール4の仮組み突出部45の内径Dfm1との差をフェルール間圧入代Sffとする(図3参照)。バックフェルール5の仮組み突出部57の外径Dnと結合部材3の仮組み突出部36の内径Dcn1との差をフェルール−結合部材間圧入代Sfcとする(図5参照)。フロントフェルール4の仮組み突出部45の強度をフロントフェルール側仮組み突出部強度Ffとする。結合部材3の仮組み突出部36の強度を結合部材側仮組み突出部強度Fcとする。この場合において、フロントフェルール4とバックフェルール5と結合部材3とは、突出部の圧入代の観点で言えば、Sff<Sfcの関係を満たすように構成されている。これにより、フロントフェルール4と結合部材3との間にバックフェルール5を挟持した状態で、フロントフェルール4と結合部材3とを互いに押圧すると、まず、圧入代が小さいフロントフェルール4とバックフェルール5との仮組みがなされる。そして、その後、圧入代が大きいバックフェルール5と結合部材3との仮組みがなされることになる。また、フロントフェルール4とバックフェルール5と結合部材3とは、突出部の強度の観点で言えば、Ff<Fcの関係を満たすように構成されている。これにより、フロントフェルール4と結合部材3との間にバックフェルール5を挟持した状態で、フロントフェルール4と結合部材3とを互いに押圧すると、まず、突出部強度が小さいフロントフェルール4とバックフェルール5との仮組みがなされる。そして、その後、突出部強度が大きいバックフェルール5と結合部材3との仮組みがなされることになる。このように、突出部の圧入代や強度を上記のように適切に設定することによって、フロントフェルール4、バックフェルール5及び結合部材3をスムーズに仮組みすることができるようになっている。
【0041】
<方法>
次に、以上のように構成された本実施形態の食い込み式管接続構造1による配管接続方法について説明する。
【0042】
継手本体2は、配管P2を接続するに先だって、被接続側機器から導出される配管P1に取り付けられている。次に、食い込み式管接続構造1による配管P2の接続は、まず、結合部材3の差込口32に接続すべき配管P2を差し込み、結合部材3を配管P2に外装する。次に、予め互いに仮組みされた状態のフロントフェルール4、バックフェルール5及び結合部材3の配管貫通孔31、41、51に配管P2を差し込み、フロントフェルール4、バックフェルール5及び結合部材3を配管P2に外装する。ここで、フロントフェルール4とバックフェルール5と結合部材3との仮組みは、フロントフェルール4、バックフェルール5及び結合部材3に配管P2を差し込む前に予め行うものに限定されるものではない。例えば、互いに仮組みされていないフロントフェルール4、バックフェルール5及び結合部材3に配管P2を差し込む際に、フロントフェルール4と結合部材3との軸方向間にバックフェルール5を挟み付けることによって、両フェルール4、5及び結合部材3を仮組みするようにしてもよい。そして、配管P2の前端部分を継手本体2の差込口25に差し込み、配管P2が段差部26に当接した状態にして、フロントフェルール4及びバックフェルール5が仮組みされた状態で結合部材3を継手本体2に螺合する。
【0043】
この状態から結合部材3の工具掛け部134を手回しで継手本体2に締結すると、結合部材3の押圧面34によって、バックフェルール5の後方部53が前側に押圧される。また、バックフェルール5の前方部52によって、バックフェルール5と仮組みされた状態でフロントフェルール4の後方部43が前側に押圧される。これにより、フロントフェルール4の前方部42のテーパ面42aが継手本体2のカム面27の後側部分に接触する。このとき、フロントフェルール4の前方部42のノッチ42bよりも前側の部分が径方向内周側に折れ曲がり、カム面27の前側部分(傾斜角度α2の部分)に仮止めされる。また、バックフェルール5の前方部52のテーパ面52aがフロントフェルール4の後方部43のテーパ面43aに接触する。
【0044】
この状態から汎用の締結工具を使用して結合部材3の工具掛け部134を継手本体2に締め付ける。すると、まず、テーパ面42aがカム面27に押圧されるとともに、傾斜面からなるカム面27がフロントフェルール4の前方部42を径方向内周側に押圧する力を発生する。そして、この押圧力によって、前方部42の前側部分の配管P2への食い込みが行われる。このとき、テーパ面42aの傾斜角度β1がカム面27の後側部分の傾斜角度α1よりも小さくなっているため、フロントフェルール4の前方部42を径方向内周側に押圧する力を強めることができる。これにより、継手本体2のカム面27とフロントフェルール4のテーパ面42aとの間のシール部61と、フロントフェルール4の前端と配管P2との間のシール部62とが形成されることになる。
【0045】
また、フロントフェルール4の配管P2への食い込みが進行すると、次に、フロントフェルール4のテーパ面43aとバックフェルール5のテーパ面52aとの間のシール部63と、バックフェルール5の前端と配管P2との間のシール部64とが形成される。具体的には、テーパ面52aがテーパ面43aに押圧されるとともに、傾斜面からなるテーパ面43aがバックフェルール5の前方部52を径方向内周側に押圧する力を発生する。そして、この押圧力によって、前方部52の前側部分の配管P2への食い込みが行われる。このとき、テーパ面52aの傾斜角度γ1がテーパ面43aの傾斜角度β2よりも小さくなっているため、バックフェルール5の前方部52を径方向内周側に押圧する力を強めることができる。また、このとき、バックフェルール5の後方部53は、結合部材3の押圧面34によって、前方に押し付けられるだけでなく、径方向内周側に向かって押し付けられる。このため、結合部材3に仮組みされたバックフェルール5において、仮組み突出部57の変形が発生して、その変形が周方向に不揃いであるため、流体の漏れが発生するおそれがある。しかし、ここでは、仮組み突出部57の軸方向に沿う断面形状を円弧形状にしているため、仮組み突出部57が変形しにくく、周方向で不揃いに変形するのを防止している。そして、前方部52の前側部分の配管P2への食い込みが完了して、結合部材3の継手本体2への螺合が所定量だけ進むと(図13及び図18参照)、螺合当接部140によって、結合部材3の継手本体2への螺合が制限される。すなわち、継手本体2の筒部123の螺子部123aの後側の端面123b(継手本体側当接部)が、結合部材3の締結部133の突起138(締結部側当接部)に接触する。そして、さらに結合部材3の継手本体2への螺合を進めようとすると、切断トルク以上の締め付けトルクが工具掛け部134に作用するため、切断部136が切断されて、工具掛け部134が締結部133から分離される(図14及び図18参照)。
【0046】
ここで、螺合当接部140を有しない食い込み式管接続構造では、図16及び図17に示すように、使用材料(硬質材又は軟質材)の強度や切断部136の寸法公差等によって、結合部材3の切断トルクのバラツキが生じる。例えば、結合部材3の切断トルクを軟質材に合わせて設定すると、図16に示すように、硬質材を使用し、かつ、切断トルクの下限値近くで切断部136が切断された場合には、フェルール4、5等の配管P2に食い込む部材の食い込み具合が十分ではなく、所望のシール性が得られない状況が発生してしまう。また、逆に、結合部材3の切断トルクを硬質材に合わせて設定すると、図17に示すように、軟質材を使用し、かつ、切断トルクの上限値近くで切断部136が切断された場合には、フェルール4、5等の配管P2に食い込む部材が損傷するほどに食い込んでから工具掛け部134が切断されるような状況が発生してしまう。このように、螺合当接部140を有しない食い込み式管接続構造では、結合部材3の切断トルクのバラツキによるシール不良や部材の損傷等の不具合が発生するおそれがある。これに対して、食い込み式管接続構造1では、螺合当接部140を有しているため、結合部材3の切断トルクのバラツキによるシール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。具体的には、螺合当接部140を構成する端面123b(継手本体側当接部)及び突起138(締結部側当接部)の接触位置を、工具掛け部134が締結部133から切断される直前の結合部材3の回転角度に設定する。そして、このとき、結合部材3の切断トルクを硬質材に合わせて設定しておけば、図18に示すように、軟質材を使用する場合であっても、結合部材3の回転角度が過剰にならずに、締め付けトルクを切断トルクまで急増させることができる。これにより、シール不良及び部材の損傷を防ぐことができるようになっている。
【0047】
このようにして、本実施形態の食い込み式管接続構造1による配管接続が行われる。このとき、食い込み式管接続構造1では、フロントフェルール4とバックフェルール5と結合部材3とが互いが仮組みされているため、この仮組み状態が維持されたままで、フロントフェルール4及びバックフェルール5が継手本体2と結合部材3との間に挟着されることになる。このため、フロントフェルール4とバックフェルール5との間の軸心ずれが抑えられて、フロントフェルール4、5の前端の配管P2への食い込みが確実に行われるようになっている。これにより、フロントフェルール4、5の前端の配管P2への食い込みによって形成されるシール部62、64を通じての流体の漏れが発生しにくくなっている。また、食い込み式管接続構造1では、螺合当接部140を有しているため、結合部材3の切断トルクのバラツキによるシール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができるようになっている。
【0048】
次に、上記のような状態で締結された締結部133は、工具掛け部134が切断されるため、誰でも簡単に締結部133を緩めることができないが、図19に示すような専用治具107を用いることによって、締結部133を緩めることができるようになっている。
【0049】
専用治具107は、主として、六角盤を2つに分割した形状の2つの基部171a、171bを有している。基部171a、171bは、両者が結合されることによって、六角ナットを形成するナット部172a、172bを有している。基部171bの基部171aに対向する面には、基部171aの係合孔(図示せず)に係合する2個の円柱形状の係合突出部175bが形成されている。また、基部171a、171bの中央には、半円形状の孔173a、173bが形成されている。孔173a、173bの内径は、配管P2の外径よりもやや大径に形成されている。基部171a、171bの側面には、締結部133の係合孔135に係合可能な3個の円柱形状の係合突出部174a、174bがそれぞれ形成されている。
【0050】
そして、専用治具107の基部171a、171bを係合孔及び係合突出部175bによって結合させるとともに、係合突出部174a、174bを締結部133の係合孔135に係合させる。そして、専用治具107のナット部172a、172bを汎用の締結工具で専用治具107を回転させることによって、締結部133と継手本体1との螺合を緩めて、配管P2を取り外すことができる。この配管接続解除の方法によれば、配管P2を切断することなく、配管P2を取り外すことができる。
【0051】
<特徴>
次に、以上のように構成された本実施形態の食い込み式管接続構造1の特徴について説明する。
【0052】
(A)
食い込み式管接続構造1では、上記のように、結合部材3の継手本体2への螺合が所定量だけ進んだ段階で、螺合当接部140(ここでは、継手本体2の端面123b、及び、結合部材3の突起138)によって、結合部材3の継手本体2への螺合が制限される。そして、さらに結合部材3の継手本体2への螺合を進めようとすると、切断トルク以上の締め付けトルクが工具掛け部134に作用して、工具掛け部134が締結部133から分離されるようになっている。
【0053】
これにより、食い込み式管接続構造1では、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができるようになり、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる(図16〜図18参照)。
【0054】
(B)
食い込み式管接続構造1では、継手本体2の螺子部123a及び締結部133の螺子部133aの締結方向後端及び/又は後側に形成された当接部123b、138同士の接触によって、結合部材3の継手本体2への螺合を制限することができる。
【0055】
(C)
食い込み式管接続構造1では、突起138(締結部側当接部)が径方向に向かって突出している。
【0056】
これにより、食い込み式管接続構造1では、螺合当接部140の大きさを小さくすることができる。
【0057】
(D)
食い込み式管接続構造1では、突起138(締結部側当接部)の外径dが、継手本体2の外径dc1及び工具掛け部134の外径dc2よりも小さくなっている。
【0058】
これにより、食い込み式管接続構造1では、結合部材3を継手本体2に組み付ける作業の邪魔になりにくくすることができる。
【0059】
(E)
食い込み式管接続構造1では、突起138(締結部側当接部)の締結方向から見た断面形状が、円形状になっている。
【0060】
これにより、食い込み式管接続構造1では、締結部133が継手本体2に螺合して工具掛け部134が分離された後の状態において、突起138を締結工具で把持しにくくなる。
【0061】
これにより、食い込み式管接続構造1では、締結部133が継手本体2に螺合して工具掛け部134が分離された後の状態において、突起138を締結工具で把持して締結部133を緩めることを防ぐことができる。
【0062】
(F)
食い込み式管接続構造1では、突起138(締結部側当接部)の肉厚tが、0.5〜1.0mmになっている。
【0063】
これにより、食い込み式管接続構造1では、突起138の肉厚tを0.5mm以上にすることによって、切断トルクでも損傷しないようにすることができる。また、突起138の肉厚tを1.0mm以下にすることによって、突起138を締結工具で把持しにくくすることができる。
【0064】
<変形例1>
上記実施形態の食い込み式管接続構造1では、螺合当接部140を構成する突起138(締結部側当接部)の締結方向から見た断面形状が、円形状であるが、これに限定されるものではない。例えば、図20に示すように、突起138が周方向の一部に形成される等のように、突起138を周方向に断続的な部分突起にしてもよい。
【0065】
本変形例においても、上記実施形態と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。
【0066】
<変形例2>
上記実施形態及びその変形例1の食い込み式管接続構造1では、継手本体2の螺子部123aの後側の端面123b(継手本体側当接部)が、締結部133の螺子部133aの後側の突起138(締結部側当接部)に接触することによって、螺合当接部140を構成している。しかし、螺合当接部140の構成は、これに限定されるものではない。
【0067】
例えば、図21に示すように、継手本体2の螺子部123aの後端123c(継手本体側当接部)が、突起138(締結部側当接部)に接触することによって、螺合当接部140を構成してもよい。ここでは、上記実施形態に比べて突起138の径方向の突出高さを小さくすることによって、螺子部123aの後端123cが突起138に接触するようにしている。
【0068】
本変形例においても、上記実施形態及びその変形例1と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。尚、ここでは、上記実施形態の構成を前提として、螺合当接部140を上記のように変更した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記変形例1において、螺合当接部140を上記のように変更してもよい。
【0069】
<変形例3>
上記実施形態及びその変形例1の食い込み式管接続構造1では、継手本体2の螺子部123aの後側の端面123b(継手本体側当接部)が、締結部133の螺子部133aの後側の突起138(締結部側当接部)に接触することによって、螺合当接部140を構成している。しかし、螺合当接部140の構成は、これに限定されるものではない。
【0070】
例えば、図22に示すように、継手本体2の螺子部123aの前側の面123d(継手本体側当接部)が、締結部133の螺子部133aの前側の面133b(締結部側当接部)に接触することによって、螺合当接部140を構成してもよい。ここでは、上記実施形態に比べて締結部133の前端を前方に突出させることによって、継手本体2の環状空間125付近の面123dに接触するようにしている。
【0071】
本変形例においても、上記実施形態及びその変形例1と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。尚、ここでは、上記実施形態の構成を前提として、螺合当接部140を上記のように変更した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記変形例1において、螺合当接部140を上記のように変更してもよい。
【0072】
<変形例4>
上記実施形態及びその変形例1の食い込み式管接続構造1では、継手本体2の螺子部123aの後側の端面123b(継手本体側当接部)が、締結部133の螺子部133aの後側の突起138(締結部側当接部)に接触することによって、螺合当接部140を構成している。しかし、螺合当接部140の構成は、これに限定されるものではない。
【0073】
例えば、図23に示すように、継手本体2の螺子部123aの前端123e(継手本体側当接部)が、締結部133の螺子部133aの前端133c(締結部側当接部)に接触することによって、螺合当接部140を構成してもよい。ここでは、螺子部123a、133aの軸方向長さを調節することによって、螺子部123a、133aの前端123e、133c同士が接触するようにしている。
【0074】
本変形例においても、上記実施形態及びその変形例1と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。尚、ここでは、上記実施形態の構成を前提として、螺合当接部140を上記のように変更した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記変形例1において、螺合当接部140を上記のように変更してもよい。
【0075】
<変形例5>
上記実施形態及びその変形例1〜4の食い込み式管接続構造1では、フロントフェルール4及びバックフェルール5を有するダブルフェルール構造の食い込み式管接続構造において、螺合当接部140を設けたが、これに限定されるものではない。例えば、図24に示すように、継手本体2の軸部23の後端と結合部材3の基部31の前端との間に挟着される1つのフェルール104を有するシングルフェルール構造の食い込み式管接続構造において、螺合当接部140を設けるようにしてもよい。尚、シングルフェルール構造の具体的な構成はこれに限定されるものではなく、種々のシングルフェルール構造において、螺合当接部140を設けるようにしてもよい。
【0076】
本変形例においても、上記実施形態及びその変形例1〜4と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。尚、ここでは、上記実施形態の構成を前提として、ダブルフェルール構造をシングルフェルール構造に変更した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記変形例1〜4において、ダブルフェルール構造をシングルフェルール構造に変更してもよい。
【0077】
<変形例6>
上記変形例5の食い込み式管接続構造1において、流体の漏れに対する信頼性をさらに向上させるために、図25に示すように、継手本体2と配管P2との間をシールするOリング式のシール部65を設けるようにしてもよい。ここでは、継手本体2の軸部23の内面に環状の溝部28を形成し、この溝部28にOリング66を嵌め込むようにしている。
【0078】
<変形例7>
上記実施形態及びその変形例1〜4の食い込み式管接続構造1では、フロントフェルール4及びバックフェルール5を有するダブルフェルール構造の食い込み式管接続構造において、螺合当接部140を設けたが、これに限定されるものではない。例えば、図26に示すように、継手本体2の軸部23の後端と結合部材3の基部31の前端とを密着及び食い込みさせるフェルール不使用の食い込み式管接続構造において、螺合当接部140を設けるようにしてもよい。尚、フェルール不使用構造の具体的な構成はこれに限定されるものではなく、種々のフェルール不使用構造において、螺合当接部140を設けるようにしてもよい。
【0079】
本変形例においても、上記実施形態及びその変形例1〜4と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。尚、ここでは、上記実施形態の構成を前提として、ダブルフェルール構造をフェルール不使用構造に変更した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記変形例1〜4において、ダブルフェルール構造をフェルール不使用構造に変更してもよい。
【0080】
<変形例8>
上記変形例7の食い込み式管接続構造1において、流体の漏れに対する信頼性をさらに向上させるために、図27に示すように、継手本体2と配管P2との間をシールするOリング式のシール部65を設けるようにしてもよい。ここでは、継手本体2の軸部23の内面に環状の溝部28を形成し、この溝部28にOリング66を嵌め込むようにしている。
【0081】
<変形例9>
上記実施形態及びその変形例1、2、5〜8の食い込み式管接続構造1では、螺合当接部140を構成する突起138(締結部側当接部)の軸方向に沿う断面形状が、軸心に平行な外面を有する矩形形状であるが、これに限定されるものではない。例えば、突起138の軸方向に沿う断面形状を三角形状や円弧形状にしてもよい。
【0082】
具体的には、図28に示すように、突起138の軸方向に沿う断面形状が軸心に対して傾斜した外面を有する三角形状にしてもよい。また、この場合には、締結工具(専用治具107を除く)による把持を防止するという観点で、外面の傾斜を後側に向かうにつれて径が小さくなるような三角形状にすることが好ましい。
【0083】
本変形例においても、上記実施形態及びその変形例1、2、5〜8と同様に、使用材料の強度や部材の寸法公差等による切断トルクのバラツキを考慮して、結合部材3の継手本体2への螺合の所定量を決定しておくことができる。これにより、シール不良や部材の損傷等の不具合を抑えることができる。また、突起138を三角形状にすることによって、仮に肉厚tを1.0mmよりも大きくしても、締結工具(専用治具107を除く)によって把持しにくくすることができる。しかも、突起138を外面の傾斜を後側に向かうにつれて径が小さくなるような三角形状にすれば、締結工具(専用治具107を除く)による把持を効果的に防ぐことができる。尚、ここでは、上記実施形態の構成を前提として、突起138の軸方向に沿う断面形状を三角形状や円弧形状に変更した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上記変形例1、2、5〜8において、突起138の軸方向に沿う断面形状を三角形状や円弧形状に変更してもよい。
【0084】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、上記実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0085】
上記実施形態及びその変形例において、配管P1は、継手本体2にロウ付け等で取り付けられているが、これに限定されるものではない。例えば、継手本体2の配管P1側にも、配管P2側と同様の食い込み式管接続構造1を設けた両ユニオン構造にしてもよい。
【0086】
また、上記実施形態及びその変形例において、切断部136が、結合部材3を前後に二分するように径方向の切れ目を有する円盤状スリット132によって形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、切断部136が、結合部材3を内外に二分するように軸方向の切れ目を有する円筒状スリットによって形成されていてもよい。
【0087】
また、上記実施形態及び変形例1〜4、9では、フロントフェルール4とバックフェルール5と結合部材3とが互いに仮組み可能なダブルフェルール構造を採用しているが、これに限定されるものではない。これらの部材が仮組み可能でないダブルフェルール構造等のような種々のダブルフェルール構造において、螺合当接部140を設けるようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態及びその変形例においては、配管として、銅等の金属材料を使用し、継手本体、結合部材及びフェルールとして、黄銅等の金属材料を使用しているが、これに限定されるものではない。例えば、配管や継手本体、結合部材及びフェルールとして、アルミニウム、ステンレス、樹脂、鉄等を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、継手本体に結合部材が組み付けられた後に結合部材の工具掛け部が結合部材の締結部から分離されるように構成された管接続構造に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 食い込み式管接続構造(管接続構造)
2 継手本体
3 結合部材
123a 螺子部(継手本体側螺子部)
123b 螺子部の後側の端面(継手本体側当接部)
123c 螺子部の後端(継手本体側当接部)
123d 螺子部の前側の面(継手本体側当接部)
123e 螺子部の前端(継手本体側当接部)
133 締結部
133a 螺子部(締結部側螺子部)
133b 螺子部の前側の面(締結部側当接部)
133c 螺子部の前端(締結部側当接部)
134 工具掛け部
138 突起(締結部側当接部)
140 螺合当接部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特開2008−106935号公報
【特許文献2】特開2008−157466号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体(2)と、前記継手本体と螺合する締結部(133)と締結工具で把持される工具掛け部(134)とを有する結合部材(3)とを備え、前記継手本体に前記結合部材が組み付けられた後に前記工具掛け部が前記締結部から分離されるように構成された管接続構造において、
前記継手本体と前記結合部材とは、前記工具掛け部が前記締結部から分離される前に、前記結合部材の前記継手本体への螺合が制限されるように互いが接触する螺合当接部(140)を構成している、
管接続構造(1)。
【請求項2】
前記継手本体(2)は、前記締結部(133)に螺合する継手本体側螺子部(123a)を有しており、
前記締結部は、前記継手本体側螺子部に螺合する締結部側螺子部(133a)を有しており、
前記螺合当接部(140)は、前記結合部材(3)を前記継手本体に組み付ける方向である締結方向に対して、前記継手本体の前記継手本体側螺子部の後端からなる又は前記継手本体側螺子部の後側に形成された継手本体側当接部(123b、123c)と、前記締結部の前記締結部側螺子部の後端からなる又は後側に形成された締結部側当接部(138)とから構成されている、
請求項1に記載の管接続構造(1)。
【請求項3】
前記締結部側当接部は、径方向に向かって突出する突起(138)からなる、
請求項2に記載の管接続構造(1)。
【請求項4】
前記突起(138)の外径は、前記継手本体(2)の外径及び前記工具掛け部(134)の外径よりも小さい、
請求項3に記載の管接続構造(1)。
【請求項5】
前記突起(138)の前記締結方向から見た断面形状は、円形状である、
請求項3又は4に記載の管接続構造(1)。
【請求項6】
前記突起(138)の肉厚は、0.5〜1.0mmである、
請求項3〜5のいずれか1項に記載の管接続構造(1)。
【請求項7】
前記継手本体(2)は、前記締結部(133)に螺合する継手本体側螺子部(123a)を有しており、
前記締結部は、前記継手本体側螺子部に螺合する締結部側螺子部(133a)を有しており、
前記螺合当接部(140)は、前記結合部材(3)を前記継手本体に組み付ける方向である締結方向に対して、前記継手本体の前記継手本体側螺子部の前端からなる又は前側に形成された継手本体側当接部(123d、123e)と、前記締結部の前記締結部側螺子部の前端からなる又は前記継手本体側螺子部の前側に形成された締結部側当接部(133b、133c)とから構成されている、
請求項1に記載の管接続構造(1)。
【請求項1】
継手本体(2)と、前記継手本体と螺合する締結部(133)と締結工具で把持される工具掛け部(134)とを有する結合部材(3)とを備え、前記継手本体に前記結合部材が組み付けられた後に前記工具掛け部が前記締結部から分離されるように構成された管接続構造において、
前記継手本体と前記結合部材とは、前記工具掛け部が前記締結部から分離される前に、前記結合部材の前記継手本体への螺合が制限されるように互いが接触する螺合当接部(140)を構成している、
管接続構造(1)。
【請求項2】
前記継手本体(2)は、前記締結部(133)に螺合する継手本体側螺子部(123a)を有しており、
前記締結部は、前記継手本体側螺子部に螺合する締結部側螺子部(133a)を有しており、
前記螺合当接部(140)は、前記結合部材(3)を前記継手本体に組み付ける方向である締結方向に対して、前記継手本体の前記継手本体側螺子部の後端からなる又は前記継手本体側螺子部の後側に形成された継手本体側当接部(123b、123c)と、前記締結部の前記締結部側螺子部の後端からなる又は後側に形成された締結部側当接部(138)とから構成されている、
請求項1に記載の管接続構造(1)。
【請求項3】
前記締結部側当接部は、径方向に向かって突出する突起(138)からなる、
請求項2に記載の管接続構造(1)。
【請求項4】
前記突起(138)の外径は、前記継手本体(2)の外径及び前記工具掛け部(134)の外径よりも小さい、
請求項3に記載の管接続構造(1)。
【請求項5】
前記突起(138)の前記締結方向から見た断面形状は、円形状である、
請求項3又は4に記載の管接続構造(1)。
【請求項6】
前記突起(138)の肉厚は、0.5〜1.0mmである、
請求項3〜5のいずれか1項に記載の管接続構造(1)。
【請求項7】
前記継手本体(2)は、前記締結部(133)に螺合する継手本体側螺子部(123a)を有しており、
前記締結部は、前記継手本体側螺子部に螺合する締結部側螺子部(133a)を有しており、
前記螺合当接部(140)は、前記結合部材(3)を前記継手本体に組み付ける方向である締結方向に対して、前記継手本体の前記継手本体側螺子部の前端からなる又は前側に形成された継手本体側当接部(123d、123e)と、前記締結部の前記締結部側螺子部の前端からなる又は前記継手本体側螺子部の前側に形成された締結部側当接部(133b、133c)とから構成されている、
請求項1に記載の管接続構造(1)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2013−76457(P2013−76457A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218373(P2011−218373)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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