説明

管搬送用走行車両

【課題】 コストの高騰の原因となるレールを敷設することなく、配管路内で安定した走行を行うことができ、しかも、運転者の安全を確保することのできる管搬送用走行車両を提供することを課題とする。
【解決手段】 前輪及び後輪のそれぞれが左右一対ずつ設けられるとともに、前記前輪の前方に既設の配管路内に挿入する新管を支持する台車を連結する連結機構が設けられた車両本体と、運転者が乗車する乗車部とを備え、配管路内に挿入する際に、台車に支持された新管を先頭にして走行可能に構成された管搬送用走行車両であって、前記車両本体は、前記前輪又は後輪の何れか一方が操舵可能に構成されるとともに、前輪及び後輪の少なくとも何れか一方が電動モータで駆動するように構成され、前記乗車部は、車両本体の後方に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の配管路に新管を挿入するための管搬送用走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上下水管路や農業用水配管路等の既設の配管路が老朽化した場合、既設の配管路内に新管を順々に挿入して新たな配管路を形成するパイプイントンネル工法により、配管路を更新するようにしている。
【0003】
前記パイプイントンネル工法における新管の挿入は、新管を支持する台車に対し、駆動を受けて走行可能な車両(管搬送用走行車両)を連結した上で、台車に支持された新管を先頭にして管搬送用走行車両を配管路の内部に向けて走行させることにより行われる。
【0004】
そして、前記管搬送用走行車両として、配管路内に設置したレール上を走行するように構成された軌条式の配管用走行車両や、車輪を操舵可能に構成して無軌道で走行可能に構成された無軌条式の管搬送用走行車両が提供されている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。
【0005】
前記軌条式の配管用走行車両は、レール上で転動する前輪及び後輪のそれぞれがレールの配置に対応して左右一対ずつ設けられるとともに、既設の配管路内に挿入する新管を支持する台車を連結するための連結機構が前記前輪の前方に設けられた車両本体を備え、前輪及び後輪の少なくとも何れか一方を駆動することで、レールに沿って走行できるようになっている。これにより、軌条式配管用走行車両は、運転者による操作を行うことなく安定走行が可能で、円滑に新管を配管路内に挿入することができる。
【0006】
他方、無軌条式の管搬送用走行車両は、前輪及び後輪のそれぞれが左右一対ずつ設けられるとともに、既設の配管路内に挿入する新管を支持する台車を連結するための連結機構が前記前輪の前方に設けられた車両本体と、運転者が乗車する乗車部とを備えている。かかる無軌条式搬送用走行車両は、前記乗車部が前輪と後輪との間に設けられ、前輪が駆動される一方、前輪及び後輪の少なくとも何れか一方が乗車部から操舵可能に構成されている。これにより、運転者が管搬送用走行車両の進行方向を修正することで、台車(新管)の姿勢を修正しつつ該新管を配管路に挿入できるようになっている。
【特許文献1】実公平3−31658号公報
【特許文献2】特開2000−232702号公報
【特許文献3】特開平10−218591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、軌条式の管搬送用走行車両は、配管路の更新にレールを必要とするため、該レールの敷設作業や撤去作業が繁雑であり、結果的に配管路の更新にかかるコストが高騰するといった問題がある。
【0008】
他方、従来における無軌条式の管搬送用走行車両は、レールを敷設する必要がないため、配管路の更新にかかるコストの高騰を抑えることができるが、操作性(操舵性)や運転者に対する安全確保において問題がある。
【0009】
すなわち、前記管搬送用走行車両は、前輪と後輪との間に乗車部が設けられているため、ホイルベース(前輪と後輪との間隔)が広くなる結果、前輪又は後輪の何れか一方を操舵した際の最小回転半径が大きくなり、操作性が悪いといった問題がある。
【0010】
また、後輪を操舵するような構成においては、上述の如くホイルベースが広くなると、先頭で走行する長尺な新管の姿勢を修正すべく管搬送用走行車両の進行方向を変更する際、配管用走行車両の進行方向の修正が僅かであっても、操舵される後輪の配管路の周方向への走行量が多くなって周壁に対して迫り上がった状態になる。そのため、管搬送用走行車両が配管路内で捻れた状態(配管路の中心周りでローリングした状態)で走行することになり、安定した走行ができない場合がある。特に、既設の配管路が小径である場合には、内周壁の曲率半径が小さいため、ローリングに留まらず横転する可能性もある。
【0011】
さらに、上述の如く、乗車部が前輪と後輪との間に設けられると、配管路内で何らかの事故が発生した場合(例えば、転倒した場合)に、運転者が配管路の進入口側にある後輪(後輪の設置された領域)を乗り越えなければならず、円滑に脱出或いは救出することできないといった問題がある。特に、配管路が小径である場合には、配管路の内壁面との間に運転者の通過を許容する領域を確保できない場合も多く、運転者の安全確保といった観点において非常に問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、コストの高騰の原因となるレールを敷設することなく安定走行が可能で、しかも、運転者の安全を確保することのできる管搬送用走行車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る管搬送用走行車両は、前輪及び後輪のそれぞれが左右両側に設けられるとともに、既設の配管路内に挿入する新管を支持する台車を連結するための連結機構が前記前輪の前方に設けられた車両本体と、運転者が乗車する乗車部とを備えた管搬送用走行車両であって、車両本体は、前記前輪及び後輪の少なくとも何れか一方が操舵可能に構成されるとともに、前輪及び後輪の少なくとも何れか一方が駆動するように構成され、前記乗車部は、車両本体の後方に設けられていることを特徴とする。
【0014】
上記構成の管搬送用走行車両によれば、乗車部が車両本体の後方に設けられているので、前輪と後輪との間隔(ホイルベース)を狭めることができる。これにより、前輪又は後輪の何れか一方を操舵した際の最小回転半径が小さくなり、操作性(操舵性)を向上させることができるので、安定走行が可能となる。また、上述の如く、ホイルベースを狭めることができるので、先頭で走行する新管の姿勢を修正すべく管搬送用走行車両の進行方向を変更する際、前輪又は後輪の何れか一方を操舵しても、その車輪の配管路の周方向への走行量が少なくなり、配管路内でその中心周りでローリング或いは横転することを防止することができる。また、乗車部を後輪よりも後方に設けることで、乗車部よりも後方に車輪等の構成が存在せず、後方への運転者の移動経路を確保することができ、非常時に円滑に脱出或いは救出をすることができる。
【0015】
本発明の一態様として、前記後輪が操舵可能に構成されていることが好ましい。このようにすれば、操舵する後輪が乗車部に近い位置にあるため、後輪の操舵状態が確認し易く、操作性を向上させることができる。また、台車との連結位置から操舵される後輪までの距離を確保することができ、該管搬送用走行車両の走行方向の変換を新管(台車)に対して横方向の押し作用として確実に伝わり、新管の進行方向の修正を的確且つ迅速に行うことができる。すなわち、後輪を操舵可能にすると、トレーラーをバック走行させるのと同様に、台車と管搬送用走行車両とを連結位置を起点に折れ曲がり状態にしやすく(それぞれの進行方向が角度を有した状態にし易く)、操舵性を向上させることができる。そして、上述の如く、ホイルベースが狭いため、後輪を操舵しても、該後輪の配管路の周方向への走行量が少なくなり、配管路内でのローリング乃至横転を防止することができる。
【0016】
本発明の他態様として、前記乗車部は、最後尾に設けられるとともに、少なくとも後方に傾倒可能な背凭れを備えていることが好ましい。このようにすれば、背凭れを後方に傾倒させることで、運転者の移動を阻害するものが運転者よりも後方に存在しなくなるので、非常時において極めて速やかに脱出することができる。
【0017】
そして、本発明の別の態様として、前記車両本体は、左右両側に少なくとも一対のガイドローラを備え、各ガイドローラは、走行時に配管路の内周壁面上を転動して車両本体を案内可能に設けられていることが好ましい。このようにすれば、車両本体部の左右両側においてガイドローラに支持される結果、配管路内での横転をより確実に防止することができる。また、車両本体部を支持する構成がガイドローラであるため、走行が害されることもない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の管搬送用走行車両によれば、コストの高騰の原因となるレールを敷設することなく、配管路内で安定した走行を行うことができ、運転者の安全を確保することができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る管搬送用走行車両について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態に係る管搬送用走行車両は、図1乃至3に示す如く、前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtのそれぞれが左右両側に一つずつ設けられるとともに、既設の配管路A内に挿入する新管Bを支持する台車5を連結するための連結機構10が前記前輪Ft,Ftの前方に設けられた車両本体1と、該車両本体1の後方に設けられて運転者が乗車する乗車部2とを備えている。
【0021】
前記車両本体1は、前記前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtの少なくとも何れか一方(本実施形態においては後輪Rt,Rtのみ)が操舵可能に構成されるとともに、前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtの少なくとも何れか一方(本実施形態においては前輪Ft,Ftのみ)を駆動するように構成されている。なお、本実施形態において、前記前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtには、チューブレスタイヤが採用されている。
【0022】
車両本体1についてより具体的に説明すると、車両本体1は、シャーシフレーム11と、充電可能なバッテリーを備えた電力供給部12と、制御基板や駆動基板等を備えたコントロール部13と、前記前輪Ft,Ftを駆動するための駆動部14と、後輪Rt,Rtを操舵するための操舵部15とを備えている。また、本実施形態に係る車両本体1は、左右両側に配管路Aの内周面上で転動する一対のガイドローラ16,16を備えている。
【0023】
前記シャーシフレーム11は、前記電力供給部12やコントロール部13を設置するためのフレーム本体110と、フレーム本体110に駆動部14及び操舵部15を固定するためのベースプレート111と、前記連結機構10を取り付けるため連結機構取付部112とを備えている。
【0024】
前記フレーム本体110は、間隔をおいて略平行に配設された一対の縦フレーム部110a,110aと、該一対の縦フレーム部110a,110aよりも狭い間隔で略平行に配設される一対の縦サブフレーム部110b,110bと、該一対の縦フレーム部110a,110a同士を連結する複数の横フレーム部110c…と、一対の縦サブフレーム部110b,110b同士を連結する複数の横サブフレーム部110d…とで構成されている。各フレーム部110a,110b,110c,110dは、何れも形鋼等の鋼材で構成されており、本実施形態においては角管が採用されている。
【0025】
該シャーシフレーム11は、前記縦フレーム部110a,110aが横フレーム部110c…に比して長尺に設定されており、縦サブフレーム部110b,110bが横サブフレーム部110d…に比して長尺に設定されている。
【0026】
前記一対の縦サブフレーム部110b,110bのそれぞれは、一端側が一対の縦フレームの他端側に重なるように、一対の縦フレーム部110a,110a間に配置されている。本実施形態においては、一対の縦フレーム部110a,110aの互いの対向する面に対し、各縦サブフレームが側面を密接させるようにして接続され、該縦サブフレーム部110b,110bが縦フレーム部110a,110aを延長した態様となっている。そして、一つの横フレーム部110c…が縦フレーム部110a,110aの一端部同士を連結した上で、他の横フレーム部110c…が縦フレーム部110a,110aの長手方向に間隔をおいて配設され、横サブフレーム部110d…が縦サブフレーム部110b,110bの長手方向に間隔をおいて配設されている。これにより、フレーム本体110は、平面視ラダー状を呈している。
【0027】
該フレーム本体110は、縦フレーム部110a,110aの一端側(配管路A内へ進入する際の進行方向の先頭となる側)の略半分に領域に電力供給部12(後述するバッテリー収容ケース120)を設置し、縦サブフレーム部110b,110bの他端側(進行方向における後方側)の略半分の領域にコントロール部13(後述するコントロールボックス130)を設置できるように構成されている。
【0028】
前記ベースプレート111は、平面視略長方形状の板材(鋼板)で構成されており、縦フレーム部110a,110a及び横フレーム部110c…によって画定される開口を閉じるように、縦フレーム部110a,110aの略全長に亘ってフレーム本体110の下面に固定されている。そして、該ベースプレート111は、縦フレーム部110a,110aの一端側の所定位置に駆動部14を取り付けるための駆動部取付位置Xが設定され、縦フレーム部110a,110aの他端側の所定位置に操舵部15(後述する支持座150)を取り付けるための操舵部取付位置Yに設定されている。前記駆動部取付位置Xには、駆動部14の後述するウォーム減速機140bを固定するための台座113が取り付けられている。
【0029】
他方、操舵部取付位置Yには、支持座150を取り付けるための支持座嵌入用穴117が穿設されている。なお、駆動部取付位置X(台座113)及び操舵部取付位置Y(支持座嵌入用穴117)のそれぞれは、中心がシャーシフレーム11の中心線(長手方向に延びる中心線)上に位置するように設けられている。本実施形態に係るベースプレート111は、フレーム本体110の長手方向の一端から前方に向けて延出するように設けられており、該延出した部分に回転灯119aや前照灯119bが設置されている。
【0030】
前記連結機構取付部112は、フレーム本体110の長手方向の一端部における略中央部に垂設されている。該連結機構取付部112は、縦フレーム部110a,110aの一端同士を連結する横フレーム部110c…に沿うように、該横フレーム部110c…に垂設されたフレームプレート114aと、横フレーム部110c…と直交するように、フレームプレート114aの後方側から横フレーム部110c…に垂設されるとともにフレームプレート114aに接続された補強用プレート114bとを備えている。そして、前記フレームプレート114aには、連結機構10の連結ベース100を固定するネジを挿通するための貫通穴(採番しない)が下端側の所定位置に穿設されている。
【0031】
本実施形態に係る連結機構10は、ネジを介してフレームプレート114aに固定される板材からなる連結ベース100と、上下方向に間隔をおいて互いに対向するように、連結ベース100上に延設された一対の連結アーム部101,101と、一対の連結アーム部101,101に挿通される連結ピン102とで構成されている。該連結機構10は、一対の連結アーム部101,101に台車5の後述する連結部512(後述する連結台車51の連結部512)介装した状態で、連結ピン102を連結アーム部101,101及び連結部512に挿通することで、台車5を連結ピン102周りで回転可能にピン結合して連結するようになっている。
【0032】
本実施形態においては、補強用プレート114bの下端に該管搬送用走行車両を強制的に停止させるためのセンサSを取り付けるためのセンサブラケット116が延設されている。また、上述の如く、車両本体1が一対のガイドローラ16,16を備えるため、シャーシフレーム11は、一対のガイドローラ16,16を支持するためのローラ支持ブラケット118,118がフレーム本体110の左右両側に延設されている。ローラ支持ブラケット118,118は、フレーム本体110から側方に向けて延出するように、一対の縦フレーム部110a,110aのそれぞれに固定されている。
【0033】
前記電力供給部12は、充電可能な電力供給源としてのバッテリー(図示しない)と、該バッテリーを収容する箱状のバッテリー収容ケース120とを備えている。本実施形態において、前記バッテリーには、一般的に流通している自動車用のバッテリーが採用されており、駆動部14の電動モータMに直接的又は間接的に電気的に接続されている。すなわち、バッテリーは、コントロール部13の制御に従って、電動モータMに電力供給できるように電気的に接続され、バッテリー収容ケース120内に収容されている。なお、本実施形態において、長時間の走行(作業)を行うための電気容量を確保すべく、バッテリーを複数搭載するようにしている。
【0034】
前記バッテリー収容ケース120は、平面視長方形状をなし、短手方向がシャーシフレーム11の短手方向の寸法以上の寸法に設定され、長手方向がフレーム本体110の長手方向の寸法の略半分程度の寸法に設定されている。該バッテリー収容ケース120は、長手方向の中心線がシャーシフレーム11の長手方向に延びる中心線と一致するように、シャーシフレーム11(フレーム本体110)上に固定されており、上部に設けられた蓋120aを開くことで収容したバッテリーにアクセスできるようになっている。
【0035】
前記コントロール部13は、制御基板や駆動基板等の基板類(図示しない)と、該基板類を収容する箱状のコントロールボックス130とを備える。
【0036】
前記基板類は、乗車部2に設けられた操作手段(後述するアクセルペダル(スイッチ)AP、アクセルレバーAL、操作盤OP上のボタンスイッチ、レバースイッチ(図示しない)等)や、駆動部14の電動モータM等に電気的に接続されている。本実施形態に係るコントロール部13(基板類)は、駆動部14(後述する電動モータM)の制御方式としてチョッパー制御方式が採用され、レバースイッチの操作によって駆動部14の電動モータM(前輪Ft,Ftの駆動)を変速(本実施形態においては、5速変速)するようになっている。
【0037】
前記コントロールボックス130は、平面視長方形状をなし、短手方向がシャーシフレーム11の短手方向の寸法であって、間隔をおいて配置された一対の縦サブフレームの外面間の寸法と略同寸法に設定され、長手方向がフレーム本体110の長手方向の寸法の略半分程度の寸法に設定されている。これにより、コントロールボックス130は、バッテリー収容ケース120よりも短手方向の寸法が狭く設定されている。かかるコントロールボックス130は、長手方向の中心線がシャーシフレーム11の長手方向に延びる中心線と一致するように、シャーシフレーム11(フレーム本体110)上に固定されており、上部に設けられた蓋130aを開くことで収容した基板類にアクセスできるようになっている。
【0038】
また、該コントロールボックス130は、走行時の進行方向に対して後方側になる壁面(該コントロールボックス130の長手方向の一端側の壁面)には、内部の基板類に接続されたスイッチ類や警告灯等のランプ類が設置されている。すなわち、乗車部2の運転者と対面する壁面にスイッチ類やランプ類を設置し、コントロールボックス130の壁面を乗車部2における操作盤OPに兼用している。
【0039】
前記駆動部14は、電動モータMと、該電動モータMが駆動的に連結されるとともに、出力軸に前記前輪Ft,Ftが取り付けられた減速手段140と、走行時に制動力を作用させるブレーキ手段141とを備えている。前記電動モータMは、直流モータ(直流直巻電動機)が採用されている。前記減速手段140は、電動モータMの出力軸に駆動的に連結された第一減速機140aと、該第一減速機140aの出力軸に連結された第二減速機140bとで構成されている。
【0040】
前記第一減速機140aには、複数の平歯車を組み合わせた一般的な減速機が採用され、第二減速機140bには、ウォーム減速機が採用されている。
【0041】
第二減速機140b(ウォーム減速機)は、ケーシング(採番しない)と、ケーシング内に回転自在に内装されたウォームホイール(図示しない)と、前記ケーシングに回転自在に内装されるとともに、ウォームホイールに噛合したウォームシャフト(図示しない)とを備えている。
【0042】
前記ケーシングは、ウォームシャフトの軸線がシャーシフレーム11の長手方向の中心線と略平行になるように、シャーシフレーム11の台座113に固定されている。ウォームホイールには、軸線を回転中心と一致させるように前輪用車軸142が回転不能に貫通状態で取り付けられている。該前輪用車軸142は、ウォームホイールの両側に延出し、両端部に前輪Ft,Ft(タイヤのホイール)を取り付けるためのフランジ(図示しない)が設けられている。これにより、左右一対の前輪Ft,Ftは、電動モータMの駆動を受けてが前輪用車軸142の軸線周りで回転駆動するようになっている。
【0043】
前記ウォームシャフトは、ウォームホイールと噛合するウォーム部と、該ウォーム部の両端から同心で延出する軸部とで構成されている。該ウォームシャフトは、ウォーム部がケーシング内でウォームホイールと噛合し、両軸部がケーシングから外部に延出している。そして、一方の軸部は、第一減速機140aの出力軸に連結され、他方の軸部は、ブレーキ手段141の後述する油圧ブレーキ144のブレーキディスク145が取り付けられている。
【0044】
前記ブレーキ手段141には、電動モータMに付属された電磁ブレーキ143と、前記ウォームシャフト(他方の軸部)に対して物理的な制動をかける油圧ブレーキ144とが採用されている。前記電磁ブレーキ143は、電動モータMの出力軸を励磁することで制動する一般的な構成のものが採用されている。他方、油圧ブレーキ144は、ウォームシャフトの軸部に取り付けられた前記ブレーキディスク145と、油圧の作動によって該ブレーキディスク145を挟持する一対のキャリパー146,146とを備えており、乗車部2に設けられたフットペダルFPを操作することで、一対のキャリパー146,146が相対的に接近してブレーキディスク145を挟持し、ウォーム減速機140bを介して前輪Ft,Ftを制動するようになっている。
【0045】
前記操舵部15は、ベースプレート111の操舵部取付位置Yに固定される支持座150と、該支持座150に対して上下方向に延びる軸線(以下、垂直軸線という)周りで回転可能に取り付けられるとともに、後輪Rt,Rtを取り付けるための後輪用車軸151が垂直軸線と直交して設けられた軸支部152と、該軸支部152を垂直軸線周りで回転させ、後輪Rt,Rtを操舵するための操舵機構17とを備えている。
【0046】
前記支持座150は、ベースプレート111に穿設された支持座嵌入用穴117に嵌入される円筒部150aと、該円筒部150aの全周に延設されたフランジ部150bとを有し、フランジ部150bがベースプレート111に固定されることで、円筒部150aの穴の軸線が垂直方向に位置するようになっている。
【0047】
前記軸支部152は、前記支持座150(円筒部150a)に挿入されるピン部152aと、該ピン部152aと同軸で且つ該ピン部152aよりも大径に形成された大径部152bと、該大径部152bと直交するように該大径部152bの両側に延出し、後輪Rt,Rtが取り付けられる一対の後輪用車軸151とを備えている。
【0048】
前記ピン部152aは、支持座150(円筒部150a)に対して下方から挿入されており、上端に抜止プレート(採番しない)が取り付けられている。これにより、ピン部152aは、支持座150からの抜け止めがなされた上で、垂直軸線周りで回転可能になっている。
【0049】
前記大径部152bには、前記垂直軸線に沿って前方に向けて延出するブラケット153が設けられている。該ブラケット153の両側には、該ブラケット153と略直交する方向に軸線が延びるように一対のダンパーDが設けられている。各ダンパーDは、基端部がシャーシフレーム11に固定され、一端部がブラケット153に固定されている。これにより、ダンパーDの付勢力で後輪用車軸151の軸線がシャーシフレーム11の長手方向(正規の進行方向)と直交する方向に向くように軸支部152の姿勢を修正するようになっている。
【0050】
さらに、該大径部152bは、上端部(ピン部152aの下方)に後述する一対の操舵用ロッド173,173を接続するための一対のロッド用ブラケット154が左右両側(後輪Rt,Rtと対向するように)に延設されている。そして、一対の後輪用車軸151のそれぞれは、大径部152bに対して回転不能に固定されており、各先端部にベアリング(図示しない)を介して後輪Rt,Rt(タイヤのホイール)が取り付けられている。これにより、一対の後輪Rt,Rtが後輪用車軸151の軸線周りで回転自在となっている。
【0051】
前記操舵機構17は、図4に示す如く、ウォーム式減速機(以下、操舵用ウォーム減速機という)170と、該操舵用ウォーム減速機170のウォームホイール170aを貫通した主軸171と、該主軸171の両端部に固定された一対のアーム部材172,172と、各アーム部材172,172と前記ロッド用ブラケット154,154を連結する一対の操舵用ロッド173,173とを備えている。
【0052】
前記操舵用ウォーム減速機170は、駆動部14のウォーム減速機と同様、ケーシング170bと、ケーシング170b内に回転自在に内装されたウォームホイール170aと、前記ケーシング170bに回転自在に内装されるとともに、ウォームホイール170aに噛合したウォームシャフト170cとを備えている。
【0053】
前記ケーシング170bは、ウォームシャフト170cの軸線がシャーシフレーム11の長手方向の中心線と略平行になるように、コントロール部13の後方側下方に配置されており、前記フレーム本体110に対して固定されている。ウォームホイール170aには、軸線を回転中心と一致させるように貫通した主軸171が回転不能に取り付けられている。前記ウォームシャフト170cは、ウォームホイール170aと噛合するウォーム部174と、該ウォーム部174の一端から同心で延出する軸部175とで構成されている。そして、該軸部175はケーシング170bから後方に向けて外部に延出し、その端部にハンドルHが取り付けられている。
【0054】
そして、ウォームホイール170aに挿通された主軸171は、該ウォームホイール170aを基準に左右略均等に延出し、各端部に前記一対のアーム部材172,172が取り付けられている。前記一対のアーム部材172,172は、主軸171の軸線周りで互いに180°位相をずらすようにして主軸171に取り付けられている。そして、前記一対の操舵用ロッド173,173のうち、一方の操舵用ロッド173は、一端部が一方のアーム部材172の先端部に枢着されるとともに他端部が一方のロッド用ブラケット154に枢着されている。他方の操舵用ロッド173は、一端部が他方のアーム部材172の先端部に枢着されるとともに他端部が他方のロッド用ブラケット154に枢着されている。
【0055】
これにより、この操舵機構17は、ハンドルHを介して操舵用ウォーム減速機170を作動させ、一対のアーム部材172,172を主軸171の軸線周りで回転させることにより、一対の操舵用ロッド173,173が軸支部152に対して垂直軸線周りに同方向の回転力を与え、一対の後輪Rt,Rtを垂直軸線周りで回転(右回り、左回り)させて操舵できるようになっている。
【0056】
図1乃至3に戻り、上記構成の操舵機構17は、ハンドルHと操舵用ウォーム減速機170の一部を除いてカバー180によって被われている。かかるカバー180は、操舵機構17を介在させるように、シャーシフレーム11の縦サブフレーム部110b,110bの外側面から垂下し、シャーシフレーム11の他端よりも後方側に延出した一対のカバー壁181,181と、該一対のカバー壁181,181の後方側の端部同士を接続する後方カバー壁182とを備えており、一対のカバー壁181,181の上端間から操舵用ウォーム減速機170の一部(ウォームシャフト170cの内装されたケーシング170bの上部)が上方に突出している。なお、本実施形態に係る管搬送用走行車両は、前記操舵用ウォーム減速機170のケーシング170b上に、駆動部14を変速する(チョッパー制御する)ための変速スイッチユニットSUが配設されており、該変速スイッチユニットSUのアクセルレバーALを操作することで、一速〜五速の間で変速できるようになっている。
【0057】
前記一対のガイドローラ16,16のそれぞれは、前記ローラ支持ブラケット118,118に固定されて外方に向けて延出するローラ支持用アーム部材160,160に軸支されている。そして、本実施形態において、一対のガイドローラ16,16は、配管路Aの内周面に対する接地が前輪Ft,Ft又は後輪Rt,Rtの車軸と略同レベルの位置になるように配置されている。すなわち、本実施形態において左右両側から延出する一対のローラ支持用アーム部材160,160が斜め下方に向けて(垂直方向に延びる中心線に対して90°以下で傾斜するように)延設され、該ローラ支持用アーム部材160,160の先端にガイドローラ16,16が軸支されている。
【0058】
本実施形態に係る乗車部2は、該管搬送用走行車の最後尾に設けられており、運転者が着座するシート部20と、シート部20に着座した運転者の足を配置するステップ部21と、シート部20に着座した運転者が操作を行う操作部22とで構成されている。
【0059】
前記シート部20は、運転者の臀部を載置するシート本体200と、運転者の背中を凭れさせる背凭れ201とを備える。
【0060】
前記シート本体200は、前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtの車軸142,151よりも低い位置になるように配置されており、前記カバー180の後方カバー壁182よりも後方に延びるように設けられている。本実施形態に係るシート本体200は、後方カバー壁182から一対のカバー壁181,181の両側にまで延びるように設けられている。すなわち、本実施形態に係るシート本体200は、カバー180(一対のカバー壁181,181、後方カバー壁182)を囲むように設けられている。該シート本体200は、プレート状に形成され、左右両側に起立した補強リブ202が設けられている。また、シート本体200の後端部には後方側に突出して牽引フック203が設けられている。
【0061】
前記背凭れ201は、少なくとも後方側に傾倒可能(リクライニング可能)に設けられている。すなわち、該背凭れ201は、下端部がシート本体200の後端部に枢着され、枢着軸周りで回転できるようになっている。本実施形態に係るシート部20は、背凭れ201の傾倒角度を調整可能に構成されている。
【0062】
具体的には、該シート部20は、シート本体200の補強リブ202と背凭れ201の側部とを連結するリンク体204が設けられている。該リンク体204は、一端部が背凭れ201に枢着され、他端部にシート本体200の補強リブ202に設けられたスライド穴LHに嵌入されるスライドピンPが設けられている。また、該リンク体204は、一端部が背凭れ201側に枢着される第一リンク体204aと、一端部に前記スライドピンPが設けられた第二リンク体204bとで構成されている。
【0063】
第一リンク体204a及び第二リンク体204bは、他端部側同士が重なる長さに設定されており、互いに重なる領域に長手方向に間隔をおいてこれらを結合するピンP1を嵌入する複数の穴PH…が穿設されている。第一リンク体204a及び第二リンク体204bの他端側の重なり量を調整した上で、重なり合った両者の穴PH…にピンP1を挿通することで、リンク体204の長さを調節し、背凭れ201の傾倒角度を調整できるようになっている。また、非常時において、第一リンク体204aと第二リンク体204bとを連結するピンP1を引き抜くことで、これらの連結が解除され、背凭れ201が後方に傾倒するようになっている。なお、背凭れ201の背面には、配管路Aの進入路側を照らす後照灯BLが配置されている。
【0064】
前記ステップ部21は、カバー180の両側に設けられており、シャーシフレーム11から後方側の下方に向けて傾斜するように設けられ、下端がカバー壁181,181の両側に延びたシート部20(シート本体200)に接続されている。これにより、本実施形態に係るシート部20は、シート本体200に着座した運転者が、カバー180(カバー壁181,181)を両足で挟んだ状態で、前方側の両ステップ部21に足を配置できるようになっている。そして、一方のステップ部21(図においては進行方向右側のステップ部21)には、アクセルペダル(スイッチ)APが設けられ、他方のステップ部21(図においては進行方向左側のステップ部21)には、ブレーキ手段141(油圧ブレーキ144)を作動させるフットペダルFPが設けられている。
【0065】
前記操作部22は、前記ハンドルHや、アクセルレバーAL、操作盤OP等で構成されており、上述の如く、シート部20(シート本体200)に着座した運転者に対向するように配置され、それぞれを運転者が操作できるようになっている。
【0066】
本実施形態に係る管搬送用走行車両は、以上からなり、次に、配管路A内に挿入する新管Bを支持する台車5の一例について説明する。
【0067】
本実施形態に採用される台車5は、図1に示す如く、挿入時に先頭となる新管Bの一端に取り付けられる先頭台車50と、挿入時に後端となる新管Bの他端に取り付けられ、管搬送用走行車両に連結される連結台車51とで構成されている。
【0068】
本実施形態に係る先頭台車50は、図5の(a)及び(b)に示す如く、新管Bに対して周方向に間隔をおいて取り付けられる一対のセパレート台車50a,50aで構成されている。各セパレート台車50a,50aは、新管Bの端部を挟み込むクランプ部500と、該クランプ部500に連結されたキャスター部501とで構成されている。前記クランプ部500は、いわゆる万力の如く構成されており、新管Bの一端部を挟み込むことで固定できるように構成されている。キャスター部501は、フリーローラからなるキャスター502と、該キャスター502を軸支して前記クランプ部500に連結されたフレーム503とで構成されている。
【0069】
上記構成の先頭台車50(一対のセパレート台車50a,50a)は、キャスター部501が外側に位置するようにして、クランプ部500を新管Bの端部に固定することで、二つのキャスター部501を介して新管Bの一端部を支持できるようになっている。
【0070】
前記連結台車51は、図6の(a)乃至(c)に示す如く、一対の台車部510,510と、該一対の台車部510,510を連結した連結フレーム511と、連結フレーム511から延出し、前記連結機構10に連結可能に構成された連結部512とを備えている。一対の台車部510,510は、前記セパレート台車50a,50aと同様に構成されており、新管Bの端部を挟み込むクランプ部500’と、該クランプ部500’に連結されたキャスター部501’とを備えている。そして、一対の台車部510,510は、新管Bの周方向に間隔をおいてクランプ部500’が新管Bの端部を固定できるように配置された上で、連結フレーム511によって連結されている。前記連結部512は、両キャスター部501’、501’の中間位置に位置するように、連結フレーム511から延出するように設けられている。そして、本実施形態において、前記連結機構10がピン結合によって連結するように構成されているため、前記連結部512には、前記連結ピン102を挿入するための連結穴(採番しない)が上下方向に貫通して穿設されている。
【0071】
本実施形態に係る管搬送用走行車両、及びこれに連結する一例としての台車5は以上の構成からなり、次に、該管搬送用車両及び台車5によって新管Bを既設の配管路A(内径が概ね1mの小径な配管路A)内に挿入する際の作動について説明する。なお、既設の配管路A内に順々に挿入される新管Bを配管路A内でそれぞれを接続するのに、配管路A内に作業者が待機しているのが通常であるので、この状態を前提に説明することとする。
【0072】
まず、図1に示す如く、新管Bに対して先頭台車50と連結台車51とを取り付け、連結台車51の連結部512を管搬送用走行車両の連結機構10に連結する。そして、乗車部2に乗車した運転者がアクセルペダルAPを踏み操作すると、駆動部14の電動モータMを介して前輪Ft,Ftが駆動し、新管Bを先頭にして管搬送用走行車両が走行し始める。この際、ハンドルHの操作を行って後輪Rt,Rtを操舵し、管搬送用走行車両の進行方向を修正することで、新管B(台車5)の進行方向(姿勢)を修正しつつ該新管Bを配管路Aに挿入することになるが、上述の如く、本実施形態に係る管搬送用走行車両は、ホイルベースを狭めて最小回転半径が小さくされているので、小回りがきき、新管B(台車5)の進行方向の修正を狭いスペース内で修正することができる。
【0073】
そして、新管B及び管搬送用走行車両が配管路A内に入ると、運転者がアクセルレバーALを操作することで、管搬送用走行車両は、新管B(台車5)を押して配管路Aの奥部に向けて変速(加速)しつつ走行する。本実施形態に係る管搬送用走行車両は、乗車部2が最後尾に設けられることで、車両本体1の高さが低く、さらに、運転者が着座するシート本体200を低い位置にあるので、小径な配管路Aで円滑に走行することが可能である。
【0074】
そして、このように新管Bを配管路A内に挿入するに際し、例えば、新管Bに取り付けた台車5(先頭台車50、及び連結台車51)の配置が適正でない等といった理由で、新管Bが配管路A内で蛇行したり配管路Aの内周面を迫り上がったり(ローリングしたり)するような場合、乗車部2の運転者がハンドルHを操作し、後輪Rt,Rtを操舵することで新管Bの進行方向(姿勢)を修正する。この際、操舵される後輪Rt,Rtが配管路Aの内周方向に走行することになるが、本実施形態に係る管搬送用走行車両は、上述の如く前輪Ft,Ftと後輪Rt,Rtとの間隔(ホイールベース)が短い(管搬送用走行車両自体の最小回転半径が小さい)ので、小回りがきき、配管路A内で大きくローリングするような状態にはならない。
【0075】
特に、本実施形態においては、後輪Rt,Rtを操舵するようにしているため、管搬送用走行車両の走行方向の変換を新管B(台車5)に対して横方向の押し作用として確実に伝わり、新管Bの進行方向の修正を的確且つ迅速に行うことができる。すなわち、後輪Rt,Rtを操舵するようにすると、前輪Ft,Ftを操舵する場合に比して連結ピン102からの操舵輪までの距離が長くなり、前輪Ft,Ftを操舵する場合よりも新管Bの進行方向の修正(ローリングの修正)が迅速に行われる。仮に、運転操作の誤操作等で後輪Rt,Rtが配管路Aの周方向への走行量が大きくなっても、該管搬送用走行車両は、左右両片両側にガイドローラ16,16が設けられているので、該ガイドローラ16,16によって支えられる結果、配管路A内で横転することも防止される。
【0076】
そして、配管路A内で待機或いは作業を行っている作業者の作業位置から配管路Aの進入口側で所定距離離れた位置(新管Bの全長よりも離れた位置)には、管搬送用走行車両の前記センサSの検知対象となる被検知体(例えば、センサSが磁気センサである場合には、磁性体)が予め配置されており、管搬送用走行車両に設けたセンサSが被検知物を検知したときに、その検知結果を基に電動モータMへの電気供給が停止されるとともにブレーキ手段141によって制動がかけられる。
【0077】
これにより、最後尾に乗車部2を設けることで進行方向前方を視認することが困難であっても、挿入する新管B、及び管搬送用走行車両を適正な位置で停止させることができ、挿入中の新管Bが配管路A内の作業者や道具等と接触するといった事故が未然に防止される。そして、管搬送用走行車両と台車5との連結を解除した上で、該管搬送用走行車両をバック走行させることで、新管Bの挿入が完了する。なお、該管搬送用走行車両の後部に牽引フック203が設けられているので、該牽引フック203に外部に繋がるロール等を接続しておき、該ロープを引くことで管搬送用車両を外部に引き戻すようにしても勿論よい。
【0078】
他方、新管Bを搬送している途中で停止する場合には、フットペダルFPを踏み操作することで任意位置に停止する。そして、配管路A内で何らかの事故等が発生した場合には、上述の如く、任意位置で停止した上で、乗車部2の背凭れ201を後方に傾倒させる。すなわち、リンク体204の結合ピンを引き抜いて第一リンク体204aと第二リンク体204bとの連結を解除し、背凭れ201を後方に傾倒させる。そうすると、乗車部2が管搬送用走行車両の最後尾にあることから、背凭れ201を後方に傾倒することで、配管路Aの進入口側への避難経路が確保される。これにより、運転者は当該管搬送用走行車両自体を乗り越えることなく、円滑に進入口側に避難することができる。
【0079】
以上のように、本実施形態に係る管搬送用車両は、前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtのそれぞれが左右両側に設けられるとともに、既設の配管路A内に挿入する新管Bを支持する台車5を連結するための連結機構10が前記前輪Ft,Ftの前方に設けられた車両本体1と、運転者が乗車する乗車部2とを備え、前記車両本体1は、前記後輪Rt,Rtが操舵可能に構成されるとともに、前輪Ft,Ftが駆動するように構成されているので、コストの高騰の原因となるレールを敷設することなく、配管路A内で安定した走行を行うことができる。
【0080】
また、乗車部2が車両本体1の後方に設けられているので、運転者の安全を確保することができる。すなわち、前輪Ft,Ftと後輪Rt,Rtとの間隔(ホイルベース)を狭めることで、配管路A内でその中心周りでローリング或いは横転することを防止することができる。また、乗車部2を後輪Rt,Rtよりも後方に設けることで、その後方に後輪Rt,Rtに接続される車軸等が存在せず、非常時において運転者が速やかに配管路Aの進入口側に脱出することができる。
【0081】
さらに、本実施形態に係る管搬送用走行車両は、一対の後輪Rt,Rtが操舵可能に構成されているので、操舵する後輪Rt,Rtが乗車部2に近い位置にあるため、後輪Rt,Rtの操舵状態が確認し易く、操作性を向上することができる。また、挿入中の新管Bの姿勢を修正すべく操舵した時、後輪Rt,Rt側が配管路Aの周方向の移動が少なくても前輪Ft,Ft側(連結機構10側)を大きく左右に振ることができ、台車5上の新管Bの進行方向を迅速に修正することができる。
【0082】
さらに、前記乗車部2は、最後尾に設けられるとともに、少なくとも後方に傾倒可能な背凭れ201を備えているので、背凭れ201を後方に傾倒させることで、運転者の移動を阻害するものが運転者よりも後方に存在しなくなり、非常時において運転者を極めて速やかに脱出させる或いは救出することができる。このように運転者を円滑且つ速やかに脱出させる或いは救出することができるので、牽引フック203に掛けたロープを介して管搬送用走行車両を引き出せば当該車両を迅速に撤去することができ、配管路内の作業者に対する脱出経路も速やかに確保することができる。
【0083】
また、本実施形態に係る管搬送用走行車両は、車両本体1が左右両側に少なくとも一対のガイドローラ16,16を備え、各ガイドローラ16,16は、走行時に配管路Aの内周壁面上を転動して車両本体1を案内可能に設けられているので、当該車両の走行を阻害することなく、配管路A内での横転をより確実に防止することができる。
【0084】
尚、本発明の管搬送用車両は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0085】
上記実施形態において、前輪Ft,Ftを駆動する一方で後輪Rt,Rtを操舵可能に構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、後輪Rt,Rtを駆動するとともに操舵可能にした構成(RR)や、前輪Ft,Ftを駆動するとともに該前輪Ft,Ftを操舵可能にした構成(FF)、前輪Ft,Ftを操舵可能に構成するとともに後輪Rt,Rtを駆動するようにした構成(FR)、前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtを操舵可能に構成するとともに前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtを駆動するようにした構成(4WS,4WD)等であってもよい。すなわち、車両本体1は、前記前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtの少なくとも何れか一方が操舵可能に構成されるとともに、前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtの少なくとも何れか一方が駆動される構成であればよい。
【0086】
このようにしても、乗車部2が車両本体1の後方に設けられることで、前輪Ft,Ftと後輪Rt,Rtとの軸間距離を狭めて最小回転半径を小さくすることができ、小回りのきく操作性に優れたものにすることができる。但し、前輪Ft,Ftのみを操舵するようにすると、後輪Rt,Rtのみを操舵する場合や、前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtを操舵するようにした場合に比して、車両本体1全体の進行による押し作用を新管B(台車5)に対して横方向或いは斜め方向から作用させにくいため、上記実施形態の如く後輪Rt,Rtのみを操舵可能に構成したり、前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtの前後両輪を操舵可能に構成したりすることが好ましく、構成を簡素化することを考慮すれば、上記実施形態の如く後輪Rt,Rtを操舵可能に構成することがより好ましい。
【0087】
上記実施形態において、車輪(前輪Ft,Ft)を電動モータMで駆動するようにしたが、これに限定されるものではなく、車輪を駆動する駆動系は、人体に対して有毒な排気ガスを発生することのないものであれば、種々のものを採用することができる。
【0088】
上記実施形態において、前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtのそれぞれを左右に一つずつ設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、車輪を左右両方に二つずつ設けた、いわゆる、ダブルタイヤであっても勿論よい。また、前輪Ft,Ft及び後輪Rt,Rtは、チューブレスタイヤに限定されるものではなく、チューブタイヤ等であっても勿論よい。
【0089】
上記実施形態において、垂直軸線(一軸)周りで一対の後輪Rt,Rtを回転させるように操舵部15を構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、リンク機構を介して操舵される一対の車輪(前輪Ft,Ft又は後輪Rt,Rt)をそれぞれに対して設定された垂直方向に延びる軸線周りで回転に構成するようにしてもよい。また、上記実施形態において、運転者がハンドルHを操作することで、進行方向を修正するようにしたが、例えば、ジャイロ機構を用いて車両本体1の姿勢や進行方向を検知し、その検知結果に基づいて車両本体1の状態が所定の状態に戻るように操舵機構17を自動的に操舵するようにしてもよい。
【0090】
上記実施形態において、乗車部2のシート部20に後方に傾倒可能な背凭れ201を設けたが、例えば、運転者が略仰向けの状態で乗車できるようにシート部20を構成してもよい。このようにすれば、背凭れ201のように起立した部材がないため、非常時に背凭れ201を傾倒させるような動作を行うことなく進入口側に脱出することができる。
【0091】
上記実施形態において、シート本体200と背凭れ201とを連結するリンク体204を、分離可能な第一リンク体204aと第二リンク体204bとで構成し、非常時にこれらを分離することで背凭れ201を傾倒できるようにしたが、例えば、図7に示す如く、補強リブ202に設けられるスライド穴LHの長手に延びる下端部に対し、長手方向に間隔をおいてスライドピンPを係合させるための複数の凹部250…を形成するようにしてもよい。この場合、スライドピンPと凹部250…とを係合させれば、その凹部250の配置に対応した傾斜角度で背凭れ201を維持させることができる一方で、スライドピンPと凹部250との係合状態を解除すれば、背凭れ201を後方側に傾倒させることができる。従って、この場合におけるリンク体204は単一のものであってもよい。
【0092】
上記実施形態において、管搬送用走行車両に連結する台車5として、先頭台車50と連結台車51とで構成し、先頭台車を分割した一対のセパレート台車50a,50aで構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、連結台車51と同様に、一対のセパレート台車50a,50a同士を連結したものであってもよい。また、管搬送用走行車両に連結する台車5は、それぞれ独立した先頭台車50と連結台車51とで構成されたものに限定されるものではなく、例えば、新管Bの先頭側に配置されるキャスターと後端側に配置されるキャスターとをフレームを介して連結し、該フレーム上に新管を配置できるように構成されたものであってもよい。但し、配管路内で台車から新管を降ろすことを考慮すれば、上記実施形態と同様にすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施形態に係る管搬送用走行車両の全体側面図であって、新管を既設の配管路に挿入する(配管路内で走行する)状態を示す。
【図2】同実施形態に係る管搬送用走行車両の一部断面を含む全体側面図であって、新管を既設の配管路に挿入する(配管路内で走行する)状態を示す。
【図3】本発明の一実施形態に係る管搬送用走行車両の一部断面を含む全体平面図であって、新管を既設の配管路に挿入する(配管路内で走行する)状態を示す。
【図4】同実施形態に係る管搬送用車両の操舵機構を説明するための概略斜視図を示す。
【図5】同実施形態に係る管搬送用走行車両に連結する台車を説明するための説明図であって、(a)は、先頭台車を構成するセパレート台車の側面図を示し、(b)は、先頭台車を構成するセパレート台車の正面図を示す。
【図6】同実施形態に係る管搬送用走行車両に連結する台車を説明するための説明図であって、(a)は、連結台車の側面図を示し、(b)は、連結台車の正面図を示し、(c)は、連結台車の平面図を示す。
【図7】他実施形態に係る管搬送用走行車両のシート部の部分拡大図を示す。
【符号の説明】
【0094】
1…車両本体、2…乗車部、5…台車、10…連結機構、11…シャーシフレーム、12…電力供給部、13…コントロール部、14…駆動部、15…操舵部、16…ガイドローラ、17…操舵機構、20…シート部、21…ステップ部、22…操作部、50…先頭台車、50a…セパレート台車、51…連結台車、100…連結ベース、101…連結アーム部、102…連結ピン、110…フレーム本体、110a…縦フレーム部、110b…縦サブフレーム部、110c…横フレーム部、110d…横サブフレーム部、111…ベースプレート、112…連結機構取付部、113…台座、114a…フレームプレート、114b…補強用プレート、116…センサブラケット、117…支持座嵌入用穴、118…ローラ支持ブラケット、119a…回転灯、119b…前照灯、120…バッテリー収容ケース、120a…蓋、130…コントロールボックス、130a…蓋、140…減速手段、140a…第一減速機、140b…第二減速機、141…ブレーキ手段、142…前輪用車軸、143…電磁ブレーキ、144…油圧ブレーキ、145…ブレーキディスク、146…キャリパー、150…支持座、150a…円筒部、150b…フランジ部、151…後輪用車軸、152…軸支部、152a…ピン部、152b…大径部、153…ブラケット、154…ロッド用ブラケット、160…ローラ支持用アーム部材、170…操舵用ウォーム減速機、170a…ウォームホイール、170b…ケーシング、170c…ウォームシャフト、171…主軸、172…アーム部材、173…操舵用ロッド、174…ウォーム部、175…軸部、180…カバー、181…カバー壁、182…後方カバー壁、200…シート本体、201…背凭れ、202…補強リブ、203…牽引フック、204…リンク体、204a…第一リンク体、204b…第二リンク体、250…凹部、500,500’…クランプ部、501,501’…キャスター部、502,502’…キャスター、503,503’…フレーム、510…台車部、511…連結フレーム、512…連結部、Ft…前輪、Rt…後輪、A…配管路、B…新管、AL…アクセルレバー、AP…アクセルペダル、FP…フットペダル、OP…操作盤、BL…後照灯、D…ダンパー、H…ハンドル、LH…スライド穴、M…電動モータ、P…スライドピン、P1…ピン、PH…穴、S…センサ、SU…変速スイッチユニット、X…駆動部取付位置、Y…操舵部取付位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪及び後輪のそれぞれが左右両側に設けられるとともに、既設の配管路内に挿入する新管を支持する台車を連結するための連結機構が前記前輪の前方に設けられた車両本体と、運転者が乗車する乗車部とを備えた管搬送用走行車両であって、車両本体は、前記前輪及び後輪の少なくとも何れか一方が操舵可能に構成されるとともに、前輪及び後輪の少なくとも何れか一方が駆動するように構成され、前記乗車部は、車両本体の後方に設けられていることを特徴とする管搬送用走行車両。
【請求項2】
前記後輪が操舵可能に構成されている請求項1記載の管搬送用走行車両。
【請求項3】
前記乗車部は、最後尾に設けられるとともに、少なくとも後方に傾倒可能な背凭れを備えている請求項1又は2記載の管搬送用走行車両。
【請求項4】
前記車両本体は、左右両側に少なくとも一対のガイドローラを備え、各ガイドローラは、走行時に配管路の内周壁面上を転動して車両本体を案内可能に設けられている請求項1乃至3の何れか1項に記載の管搬送用走行車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−18861(P2008−18861A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192914(P2006−192914)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(391051049)株式会社エステック (28)
【出願人】(599019258)株式会社 ちよだ製作所 (3)