説明

管材の引張試験用供試材及び引張試験方法

【課題】管材の引張試験に好適に用いられる引張試験用供試材を提供する。
【解決手段】引張試験に供される管材1の引張試験用供試材であって、管材1の周囲に軸線方向に延びるスリット2が複数並んで形成されることによって、各スリット2の間に試験片部3が形成されてなる。これにより、引張試験時に引張試験用供試材を管状のまま縮径させることなく引っ張ることができるため、各試験片部3の縮径に伴う曲げモーメントの発生や、長手方向の反りの発生などを防ぎつつ、単軸引張による正確な測定を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張試験に供される管材の引張試験用供試材、並びにこの引張試験用供試材を用いた管材の引張試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、引張試験に供される管材の引張試験用供試材としては、「JIS Z 2201」に規定される引張試験片がある(非特許文献1を参照。)。このうち、小径・薄肉の分野では、例えばJIS11号試験片のように管材のまま引張試験に供されるものと、JIS11号試験片のように管材から弧状の試験片を切り出して引張試験に供されるものとがある。
【0003】
しかしながら、このような従来の引張試験片を用いた管材の引張試験では、その管材の引張特性を評価する上で、必ずしも正確に測定できるものとは言えなかった。特に、管材の塑性ひずみ比を求める場合には、引張試験の前後で測定された引張試験片の幅と標点距離から「JIS Z 2254」に規定される方法を用いて、その値を求めることになる(非特許文献2を参照。)。
【0004】
また、その試験片の形状も「JIS Z 2201」に規定される引張試験片の中の5号試験片又は13号試験片と規定されており、何れも平坦な薄板形状である(非特許文献1を参照。)さらに、その試験片の平坦度も厳密に規定しており、幅方向に反っている形状では試験として無効となる。このため、管材については、従来の試験方法では塑性ひずみ比を測定することができなかった。
【0005】
具体的に、管材のまま引張試験に供される試験片の場合は、例えば図7に示すように、管材100の両端に一対の芯金101a,101bを挿入した状態で取り付けた試験片を引張試験機に取り付けて引張試験を行う。この場合、図7(a)に示すように、管材100の長さが短いと、芯金101a,101bのつかみ部100a,100bでの拘束が大きくなるために、管材100の引張り伴う縮径が阻害され、単軸引張による測定が困難となる。したがって、単軸引張による測定を行うためには、図7(b)に示すように、管材100を十分に長くする必要がある。また、管材100を十分に長くした場合でも、図7(c)に示すように、引張試験の前後で縮径に伴う曲げモーメントMが円周方向に作用するため、正確な測定が困難となる。
【0006】
一方、管材から弧状の試験片を切り出して引張試験に供される試験片の場合は、例えば図8に示すように、弧状の試験片200のつかみ部200a,200bについては、チャッキングを容易にするため、平坦にすることがある。この場合、図8(a)に示すように、引張試験後に試験片200の横断面において、円弧が平坦になろうとする変形が生じるために、試験片200の幅方向の変化を正確に測定することが困難となる。また、図8(b)に示すように、試験片200の長手方向(軸線方向)においても、反りが生じるために、試験片200の長手方向の変化を正確に測定することが困難となる。
【0007】
一方、図8(c)に示すように、つまみ部200a,200bの形状を弧状のままとした場合には、その径や板厚等に合わせたチャッキングのための治具が必要となる。また、管材の径や板厚にはばらつきがあるため、同一のチャッキング治具でチャックすると、管材によっては円弧が平坦になろうとする変形が生じたり、逆により小さな曲げ半径の円弧になろうとする変形が生じたりする場合もあるために、試験片200の幅方向の変化を正確に測定することが困難となる。さらに、試験片200の長手方向(軸線方向)においても、反りが生じるために、試験片200の長手方向の変化を正確に測定することが困難となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「JIS Z 2201 金属材料引張試験片」 JISハンドブック(1)鉄鋼I(P.281〜288) 日本規格協会 2009年度
【非特許文献2】「JIS Z 2254 薄板金属材料の塑性ひずみ比試験方法」 JISハンドブック(1)鉄鋼I(P.469〜474) 日本規格協会 2009年度
【非特許文献3】「JIS Z 2241 金属材料引張試験方法」 JISハンドブック(1)鉄鋼I(P.289〜293) 日本規格協会 2009年度
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、管材の引張試験に好適に用いられる引張試験用供試材、並びに、この引張試験用供試材を用いて管材の引張特性を正確に測定することを可能とした管材の引張試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1) 引張試験に供される管材の引張試験用供試材であって、
前記管材の周囲に軸線方向に延びるスリットが複数並んで形成されることによって、各スリットの間に試験片部が形成されてなることを特徴とする管材の引張試験用供試材。
(2) 前記管材の両端に一対の芯金が挿入された状態で取り付けられていることを特徴とする(1)に記載の管材の引張試験用供試材。
(3) 前記一対の芯金は、前記管材の内側で軸線方向において互いに噛合される噛合部を有することを特徴とする(2)に記載の管材の引張試験用供試材。
(4) 前記スリットの長さをP、前記試験片部の幅をbとしたときに、
P/b≧5
の関係を満足することを特徴とする(2)又は(3)に記載の管材の引張試験用供試材。
(5) 前記試験片部は、前記管材の両端に至るスリットを形成することによって互いに分割されると共に、全体が管状を為した状態で前記一対の芯金に固定されていることを特徴とする(2)又は(3)に記載の管材の引張試験用供試材。
(6) (1)〜(5)の何れか一項に記載の引張試験用供試材を用いて引張試験を行うことを特徴とする管材の引張試験方法。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、上記引張試験用供試材を用いて引張試験を行った場合に、この引張試験用供試材を管状のまま縮径させることなく引っ張ることができるため、各試験片部の縮径に伴う曲げモーメントの発生や、長手方向の反りの発生などを防ぎつつ、単軸引張による正確な測定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した管材の引張試験用供試材の一例を示し、(a)はその試験前の外観を示す透視斜視図、(b)はその試験前の変位測定部を拡大して示す側面図である。
【図2】図1中に示す引張試験用供試材において、(a)はその試験後の外観を示す透視斜視図、(b)はその試験後の変位測定部を拡大して示す側面図である。
【図3】本発明を適用した管材の引張試験用供試材の他例を示す透視斜視図である。
【図4】本発明を適用した管材の引張試験用供試材の他例を示す透視斜視図である。
【図5】本発明を適用した管材の引張試験用供試材の他例を示す透視斜視図である。
【図6】本発明を適用した管材の引張試験用供試材の他例を示す透視斜視図である。
【図7】管材のまま引張試験を行った場合であり、(a)は管材の長さが短い場合の引張試験後の状態を示す透視斜視図、(b)は管材の長さが長い場合の引張試験後の状態を示す透視斜視図、(c)は(b)の管材の長さが長い場合の引張試験前後の管材の状態を説明するための断面図である。
【図8】管材から弧状の試験片を切り出して引張試験を行った場合であり、(a)は試験片の引張試験前後での断面の変形状態を示す側面図及び断面図、(b)は引張試験後に試験片の長手方向に反りが発生した状態を示す側面図、(c)はつまみ部の形状を弧状としたまま引張試験を行った場合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した管材の引張試験用供試材及び引張試験方法について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明を適用した管材の引張試験用供試材は、例えば図1(a)に示すように、管材1の周囲に軸線方向に延びるスリット2が複数並んで形成されることによって、各スリット2の間に試験片部3が形成されてなることを特徴とするものである。
【0014】
具体的に、管材1は、円形の中空断面を有する直線状の中空柱状部材であり、引張試験に供するのに十分な長さを有している。スリット2は、この管材1の中央部において一定の長さPを有して周方向に並んで設けられている。一方、各スリット2の間に形成される試験片部3は、管材1の中央部において周方向に並んで設けられている。すなわち、管材1の中央部には、スリット2と試験片部3とが交互に並んで設けられている。
【0015】
各試験片部3は、図1(b)に拡大して示すように、互いに平行となるスリット2の間で軸線方向に一定の幅bを有して形成されている。これら試験片部3は、引張試験時に軸線方向(長手方向)に引張荷重が加わることによって、長手方向に伸び、且つ、幅方向に縮む部分であり、その引張試験の前後で幅bと標点距離Lとの変位を測定する変位測定部となる。
【0016】
ここで、スリット2の長さP及び試験片部3の幅bについては、P/b≧5の関係を満足することが好ましい。一方、P/b<5となる場合には、引張試験中に各試験片部3の幅方向の縮みが抑制されてしまうために、単軸引張による正確な測定を行うことが困難となる。
【0017】
なお、上記スリット2の形成方法については、例えばレーザー加工や、ウォータージェット加工、グラインダー加工、長手方向の両端に孔部を形成した後、その孔部の間を糸ノコで切断する方法など、上記スリット2を形成できる加工方法であれば、特に限定されるものではない。
【0018】
管材1の両端には、図1(a)に示すように、一対の芯金4a,4bが挿入された状態で取り付けられている。これら一対の芯金4a,4bは、引張試験機にチャッキングされる部分として管材1の両端に設けられたつかみ部1a,1bの変形を防ぐためのものであり、管材1の内径に対応した外径を有してつかみ部1a,1bの内側に挿入されるのに十分な長さを有して円柱状に形成されている。また、一対の芯金4a,4bは、管材1の両端から抜けないように管材1の内側に嵌め込まれている。また、一対の芯金4a,4bは、管材1に溶接等を用いて固定することもできる。
【0019】
本発明を適用した管材の引張試験方法は、上記引張試験用供試材を用いて引張試験を行うことを特徴とする。なお、引張試験については、例えば「JIS Z 2241」等に規定される引張試験方法に準拠して行うことができる(非特許文献3を参照。)。
【0020】
上記引張試験用供試材は、引張試験を行うと、図2(a)に示すように、全体として長手方向(軸線方向)のみに伸びた形状となり、管材1のつかみ部1,1はもちろん、スリット2及び試験片部3が形成された中央部も縮径されずに、引張試験前と同じ径が維持される。但し、図2(b)に示すように、管材2の中央部を拡大して見ると、スリット2の幅が広がり、その分、試験片部3の幅bが狭くなる。なお、図2(b)では、実際は図中の囲み部分よりもスリット2が長くなるものの、便宜上、スリット2の長さを図中の囲み部分に納まるように短縮して示している。
【0021】
ここで、管材の引張特性として、例えば管材の塑性ひずみ比を求める場合について説明する。この管材の塑性ひずみ比を求める際は、先ず、図1(b)に示すように、引張試験前に、上記引張試験用供試材における各試験片部3の幅bと標点距離Lを測定する。なお、標点距離Lは、試験後でも一様な変形となる範囲に設定しておくことが望ましいため、スリット2の長さPより短く設定する。そして、上記引張試験用供試材を引張試験機に取り付けて引張試験を行った後に、図2(b)に示すように、この引張試験用供試材における各試験片部3の幅bと標点距離Lを測定する。
【0022】
上記幅b,bの測定方法については、例えば、試験片部3にノギス等を直接当てて測定する方法や、試験片部3にテープを貼り付けて目印を付けた後、そのテープを剥がして目印の距離を測定する方法、CCDカメラ等で撮影しながら画像処理によりリアルタイムで測定する方法などを用いることができる。
【0023】
一方、上記標点距離L,Lの測定方法については、例えば、予め試験片部3にマーキングした標点を試験前後にノギス等で測定する方法や、通常の引張試験で用いられる押し付け方式の伸び計で測定する方法、予めマーキングした標点をCCDカメラ等で撮影しながら画像処理によりリアルタイムで測定する方法などを用いることができる。
【0024】
そして、測定した各試験片部3の幅b,bと標点距離L,Lから「JIS Z 2254」に規定される方法を用いて、塑性ひずみ比(r:ランクフォード値)を求めることができる(非特許文献2を参照。)。
【0025】
すなわち、r値は、上記測定した引張試験前の試験片部3の幅b、引張試験後の試験片部3の幅b、引張試験前の試験片部3の標点距離L、引張試験後の試験片部3の標点距離Lから、下記式(1)を用いて計算により求めることができる。
【0026】
【数1】

【0027】
また、r値を測定する際の所定の標点距離Lでの試験停止方法としては、上述した伸び計やCCDカメラ等による画像処理を用いた場合、その測定値を見ながら所定の伸び(標点距離)に到達した時点で停止する方法を用いることができる。また、上述したノギス等を用いた場合は、事前に数回の引張試験を実施しておき、引張試験機のクロスヘッドのストロークと伸び(標点距離)との相関を求めておき、その相関関係を参考にして、クロスヘッドが所定のストロークに到達した時点で停止する方法を用いることができる。
【0028】
また、本引張試験では、複数の試験片部3の中から、任意の数の試験片部3について測定を行えばよく、その測定数については特に限定されるものではない。なお、上述した伸び計やCCDカメラ等による画像処理を用いた場合は、同時に複数の試験片部3を測定することは困難であるが、試験前後に測定する方法であれば容易である。
【0029】
なお、本引張試験では、上記r値以外にも、通常の引張特性(伸び、引張強さ、降伏応力、n値等)を測定することも当然可能である。
【0030】
以上のように、本発明を適用した引張試験用供試材を用いて引張試験を行った場合には、図2に示すように、この引張試験用供試材を管状のまま縮径させることなく引っ張ることができるため、各試験片部3の縮径に伴う曲げモーメントの発生や、長手方向の反りの発生などを防ぎつつ、単軸引張による正確な測定を行うことが可能となる。したがって、本発明によれば、上記塑性ひずみ比(r値)など管材の引張特性を正確に求めることが可能である。
【0031】
なお、本発明は、上記図1に示す引張試験用供試材に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。なお、以下の説明では、上記図1に示す引張試験用供試材と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0032】
具体的に、本発明を適用した引張試験用供試材は、例えば図3に示す構成とすることができる。この引張試験用供試材は、上記一対の芯金4a,4bが中空円柱状に形成された構成を有している。このように一対の芯金4a,4bの形状については、上記つかみ部1a,1bの変形を防ぐためのものであれば、特に限定されるものではない。
【0033】
本発明を適用した引張試験用供試材は、例えば図4に示す構成とすることができる。この引張試験用供試材は、上記一対の芯金4a,4bのうち、一方の芯金4aが管材1の中央部まで延長された構成である。すなわち、一方の芯金4aは、上記スリット2及び試験片部3が形成された部分まで延長して設けられている。これにより、本発明では、引張試験時に上記スリット2及び試験片部3が形成された部分が縮径されるのを防ぎつつ、同一径のまま安定した状態で引張試験を行うことが可能である。
【0034】
また、本発明を適用した引張試験用供試材は、例えば図5に示す構成とすることができる。この引張試験用供試材は、上記一対の芯金4a,4bが、管材1の内側で軸線方向において互いに噛合される噛合部5a,5bを有する構成である。具体的に、一対の芯金4a,4bは、中空円柱状に形成されると共に、管材1の中央部まで延長された先端に、噛合部5a,5bとして、軸線方向に切り欠かれた複数の凹部6aと、その間に形成された凸部6bとが、一方の芯金4aと他方の芯金4bとの間で互いに噛合された構成を有している。この場合も、引張試験時に上記スリット2及び試験片部3が形成された部分が縮径されるのを防ぎつつ、同一径のまま安定した状態で引張試験を行うことが可能である。
【0035】
また、本発明を適用した引張試験用供試材は、例えば図6に示す構成とすることができる。この引張試験用供試材は、管材1の両端に至るスリット2Aを形成することによって、複数の試験片部3Aが互いに分割されると共に、これら試験片部3Aが全体として管状を為した状態で一対の芯金4a,4bに固定された構成を有している。
【0036】
この場合も、この引張試験用供試材を管状のまま縮径させることなく引っ張ることができるため、各試験片部3Aの縮径に伴う曲げモーメントの発生や、長手方向の反りの発生などを防ぎつつ、単軸引張による正確な測定を行うことが可能である。
【0037】
なお、上記管材1の材質については、引張試験に供するものであればよく、例えば、鋼管やアルミ管、銅管などの金属製の管材以外にも、樹脂材料等からなる管材などに本発明を適用することが可能である。また、本発明は、外径120mm以下の管材に対して好適に用いられるが、引張試験用供試材を管状のまま引っ張ることができるため、短い管材に対しても正確な測定が可能である。
【0038】
また、上記実施形態では、管材1の中央部にスリット2を設けた構成となっているが、スリット2は、この管材1の長手方向における正確な中間位置に設ける必要はなく、上記つかみ部1a,1b以外の部分に設けることも可能である。
【0039】
また、上記スリット2の数については、少なくとも2つ以上であればよく、管材1の径や板厚等を考慮して適宜決定すればよい。また、本発明では、周方向に並ぶスリット2の間隔や幅を等間隔に形成したり、このスリット2の間隔や幅を異ならせて形成したりすることも可能である。この場合、周方向に並ぶ試験片部3の間隔や幅も同じとしたり異ならせたりすることが可能である。さらに、上記スリット2及び試験片部3を軸線方向に複数並べて配置することも可能である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0041】
(実施例1)
実施例1では、実際に図1に示す引張試験用供試材を作製し、この引張試験用供試材に対して引張試験を行い、r値を求めた。具体的には、上記管材1として、全長600mm、外径60.5mm、板厚2mmの鋼管(STKM11A)を用いた。また、芯金4a,4bの管材1に挿入された部分の長さ(つかみ部1a,1bの長さ)150mmである。そして、この管材1の中央部に周方向において等間隔に並ぶ8本のスリット2をレーザー加工により形成した。このスリット2は、長さ(P)が140mm、幅が約1mmである。試験片部3は、幅(b)が約23mmであり、P/b≒6.1≧5となっている。また、標点距離(L)は、100mmである。なお、試験片部3の幅(b)は、試験前後に全試験片部3(8本)にテープを貼り付けて目印を付けた後、そのテープを剥がして目印の距離を測定した。一方、標点距離(L)は、押し付け方式の伸び計を用いて試験中にリアルタイムで測定した。また、停止させる標点距離(L)は、116mmとした。(管軸方向真ひずみ:Ln(L/L)=0.15)
【0042】
そして、この引張試験用供試材に対して引張試験を用いて引張試験を行ったところ、管材1の外径は試験前と変わらず60.5mmであった。また、各試験片部3の幅(b)を測定し、r値を求めたところ、それぞれ0.71/0.69/0.74/0.74/0.69/0.73/0.73/0.72となり、平均するとr値は0.72となった。
【0043】
(実施例2)
実施例2では、上記図5に示す引張試験用供試材を作製して引張試験を行った以外は、実施例1と同様である。その結果、各試験片部3の幅(b)を測定し、r値を求めたところ、それぞれ0.72/0.73/0.72/0.71/0.71/0.70/0.73/0.72となり、平均するとr値は0.72となった。平均値としては変わらないものの、各試験片7の変形のばらつきが少なく、より均一な変形を生じさせることができた。
【符号の説明】
【0044】
1…管材 1a,1b…つかみ部 2,2A…スリット 3,3A…試験片部 4a,4b…芯金 5a,5b…噛合部 6a…凹部 6b…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張試験に供される管材の引張試験用供試材であって、
前記管材の周囲に軸線方向に延びるスリットが複数並んで形成されることによって、各スリットの間に試験片部が形成されてなることを特徴とする管材の引張試験用供試材。
【請求項2】
前記管材の両端に一対の芯金が挿入された状態で取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の管材の引張試験用供試材。
【請求項3】
前記一対の芯金は、前記管材の内側で軸線方向において互いに噛合される噛合部を有することを特徴とする請求項2に記載の管材の引張試験用供試材。
【請求項4】
前記スリットの長さをP、前記試験片部の幅をbとしたときに、
P/b≧5
の関係を満足することを特徴とする請求項2又は3に記載の管材の引張試験用供試材。
【請求項5】
前記試験片部は、前記管材の両端に至るスリットを形成することによって互いに分割されると共に、全体が管状を為した状態で前記一対の芯金に固定されていることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の管材の引張試験用供試材。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の引張試験用供試材用いて引張試験を行うことを特徴とする管材の引張試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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