説明

管状保護カバー

【課題】ヘッダーを円筒形の保温材によって覆った状態においても、容易に隙間なく継手部分を覆うことができるようになる管状保護カバー1aを提供することを目的としている。
【解決手段】接続管が接続される継手を包含する内径の筒状をした継手カバー部11を一端に有する接続管の管状保護カバー1aであって、前記継手カバー部11が、その先端部壁面に沿って略鞍形状に形成された切り取りスリット11aを備えていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手に接続される接続管の管状保護カバー、特にヘッダーに設けられた継手に接続される接続管の端部及び継手部分を覆うように用いられる管状保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
マンション等の集合住宅で普及しているヘッダー工法は、主給水管や主給湯管をまずヘッダーに接続し、このヘッダーで複数に分岐し、ヘッダーの分岐部に設けられた継手に各水廻り設備の水栓との接続管を1対1でつなげる工法であって、主給水管や主給湯管から継手を介して順次枝状に分岐させた接続管を、各水廻り設備の水栓につなげるようにした先分岐工法による配管に比べて、接続箇所が少なくて施工不良による漏水を格段に抑えることができ、また水廻り設備の同時使用時において流量変化が少なく、安定した給水、給湯も可能である。
また、各継手に接続される接続管は、架橋ポリエチレン管などの合成樹脂管が主に用いられ、給湯用だけでなく、給水管として用いられる場合においても、管の傷つき防止、保温、ウォーターハンマーなどの騒音の防止等を目的として床下などの土間上に敷設した鞘管内に挿通されるのが一般的になっている。
【0003】
ところで、ヘッダーに接続された継手は、継手に接続される接続管より太くなっているため、鞘管のみで接続管だけでなく継手部分まで被覆しようとすれば、鞘管を大きな径にしなければならない。しかし、鞘管全体の径を大きなものにすると、配管スペースが狭くなるという問題がある。
そこで、図6及び図7に示すように、一端に継手100の外周を覆う包被部210を有し、他端に鞘管300内に挿入される挿入部220を備える端末用の管状保護カバー(端末接続具)200が継手部分を被覆するために使用されている(特許文献1参照)。
【0004】
すなわち、この管状保護カバー200は、図7に示すように、接続管400が挿入された鞘管300の端部に挿入部220を挿入した状態で、接続管400の端部を包被部210先端から外部に露出させた状態で接続管400の端部を継手100に接続し、その後、シーリングキャップ310を取り外した状態で、包被部210によって継手100が覆われるまで、管状保護カバー200を継手100方向にスライドさせたのち、シーリングキャップ310を鞘管300に外嵌させて接続管400の鞘管300から出た部分を覆うとともに、継手100部分も覆った状態に保持できるようになっている。また、継手200部分を確実に覆うことから、万一継手200部分から漏れ出た流体を鞘管300内に確実に導くことができ、漏れ出た流体が周囲に放出され、周囲の壁面等を汚すことがない。
【0005】
しかしながら、図7及び図8に示すように、ヘッダー500には継手100の部分を残し、円筒状をした保温材600で覆われていることが多いが、かかる場合、図8及び図9に示すように、管状保護カバー200が、保温材600の壁面に当たるため、継手100の一部が露出状態で残ってしまい、見栄えが悪い。
また、このような露出部があると、保温性に問題があるとともに、この隙間部分からウォーターハンマーにより発生する衝撃音や配管内を流れる水の音が騒音として漏れ出やすい。さらに、例えば、給湯配管である場合、継手100に接触して火傷を負うおそれがあり、給水配管である場合、継手100部分が外気にあたり結露しやすいといった問題もある。
【0006】
他方、ヘッダーとこのヘッダーの管軸方向に間隔をあけて直線状に並ぶように設けられた分岐継手とを、一括して保温できるようにした保温材が提案されている(特許文献2,3参照)。
【0007】
この保温材は、ヘッダーと分岐継手部分の外形形状と略同じ内面形状をした凹部を有し、一直線に並んだ継手の管軸同士を結ぶ直線に沿って継手用凹部と反対側の壁面の一部が連結された状態で二つ割りに分割されている。
そして、上記の連結部を中心に一方の分割部を回動させて、凹部を二つ割り状態に開放し、一方の分割部の分割凹部に、まず、ヘッダーと分岐継手の半分を嵌め込んだのち、他方の分割部を、連結部を中心に凹部が閉じる方向に回動させ、ヘッダーと分岐継手の残りの半分を他方の分割部の分割凹部に嵌め込むようになっている。
【0008】
したがって、この保温材と、上記管状保護カバー200を併用すれば、上記問題が解決できるのである。
しかしながら、この保温材の場合、継手が同じピッチで並んでいるとともに、同じ形状をした継手しか使用不可能であるため、継手のピッチや、継手の径や形状が異なるごとにそれぞれにあった保温材を用意しなければならず、コストがかかるという問題がある。
【0009】
【特許文献1】実公平6−32553号公報
【特許文献2】特開2005−180519号公報
【特許文献3】特開2007−321808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて、ヘッダーを円筒形の保温材によって覆った状態においても、容易に隙間なく継手部分を覆うことができるようになる管状保護カバーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明にかかる管状保護カバーは、接続管が接続される継手を包含する内径の筒状をした継手カバー部を少なくとも一端に有する接続管の管状保護カバーであって、前記継手カバー部が、その先端部壁面に沿って略鞍形状に形成された切り取りスリットあるいは薄肉部を備えていることを特徴としている。
【0012】
本発明の管状保護カバーは、他端がどのようになっていても構わないが、例えば、接続管を覆う鞘管との連結構造を備えていることが好ましい。
また、継手カバー部以外の部分の少なくとも一部が、管軸方向に伸縮可能な蛇腹構造に形成されていてもよい。
【0013】
本発明の管状保護カバーの材質としては、特に限定されないが、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が挙げられ、それらの発泡体でも構わない。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明にかかる管状保護カバーは、接続管が接続される継手を包含する内径の筒状をした継手カバー部を少なくとも一端に有する接続管の管状保護カバーであって、前記継手カバー部が、その先端部壁面に沿って略鞍形状に形成された切り取りスリットあるいは薄肉部を備えているので、切り取りスリットに沿って継手カバー部の先端部を切り取るか、薄肉部に沿って継手カバー部の先端部を内側に折り曲げることによって、継手カバー部の保温材に接する端面が略鞍状になる。
したがって、この略鞍状の端面形状となった継手カバー部の先端切り取り部あるいは折り曲げ部の端面の継手カバー部先端からもっと管軸方向に凹設された部分がヘッダーの管軸に平行な露出用孔の中心軸に沿う線分に一致するように保温材に受けさせれば、切り取り部あるいは折り曲げ部の端面が露出用孔の周囲の保温材壁面に略全周にわたって受けられる。
すなわち、継手カバー部によって、ほぼ隙間なく継手部分を覆うことができ、保温性が高くなるとともに、ウォーターハンマーにより発生する衝撃音や配管内を流れる水の音が騒音として漏れ出にくくなる。また、例えば、給湯配管である場合においても継手に接触して火傷を負うことがなくなり、給水配管においても場合、継手部分が外気にあたりにくく、結露しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる管状保護カバーの第1の実施の形態をあらわしている。
【0016】
図1に示すように、この管状保護カバー1aは、一端に継手カバー部11、他端に鞘管2への挿入部12を備えている。図1中、21はシーリングキャップである
継手カバー部11は、後述するヘッダー5に設けられた袋ナット固定式の継手3を包含する大きさの筒状をしていて、先端部壁面に鞍状をした破線状に形成された切り取りスリット11aを備えている。
【0017】
挿入部12は、内部に接続管4が挿入された状態で鞘管2に挿入可能で、シーリングキャップ21を鞘管2に外嵌させることによって、所望の挿入位置に固定できるようになっている。
【0018】
この管状保護カバー1aは、上記のようになっており、図2に示すように、ヘッダー5に継手3の露出用孔61部分を除き、円筒状をした保温材6によって覆った場合、まず、切り取りスリット11aに沿って先端部を切り取った状態にし、鞍状の端面形状をした切り取り部13の端面を、切り取り部13の管軸方向に最も凹んだ部分がヘッダー5の管軸に平行な露出用孔61の中心軸に沿う線分に一致するように保温材6に受けさせれば、図3及び図4に示すように、切り取り部13の端面が露出用孔61の周囲の保温材壁面に略全周にわたって受けられる。
したがって、継手3がほぼ完全に継手カバー部11によって覆われた状態となり、ウォーターハンマーにより発生する衝撃音や配管内を流れる水の音が騒音として漏れ出にくくなる。また、例えば、給湯配管である場合においても継手3に接触して火傷を負うことがなくなり、給水配管においても場合、継手3部分が外気にあたりにくく、結露しにくくなる。
【0019】
図5は、本発明にかかる管状保護カバーの第2の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、この管状保護カバー1bは、一端に継手カバー部14を有し、他端に鞘管2との嵌合部15を備えているとともに、中間部16が管軸方向に伸縮自在な蛇腹構造となっている。
【0020】
継手カバー部14は、先端部壁面に鞍状に形成された薄肉部14aを備えている。
嵌合部15は、鞘管2の端部に外嵌されて鞘管2に弾性係止されるようになっている。
【0021】
この管状保護カバー1bは、上記のように、継手カバー部14が先端部壁面に鞍状に形成された薄肉部14aを備えているので、薄肉部14aに沿って継手カバー部14の先端部壁面を内側に容易に折り曲げることができる。そして、この折り曲げよって、継手カバー部14は、先端面が切り取りスリット11aに沿って切り取った同じ状態になり、上記管状保護カバー1aと同様に継手3をほぼ完全に継手カバー部11によって覆った状態にすることができる。しかも、内側に折り曲げ部が存在するので、この折り曲げ部が継手3の側壁面に圧接し、継手カバー部14が継手3を覆った状態にしっかりと固定できる。
また、中間部16が管軸方向に伸縮自在な蛇腹構造となっているので、上記の管状保護カバー1aのようにシーリングキャップ21の着脱をする必要がなく、鞘管2端部からの出代の調整が容易である。
【0022】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、継手として袋ナットネジ止式の継手が用いられていたが、接続管の挿入によりジャンパーピンが外れて、ジャンパーピンによって拡径状態に保たれていた弾性締め付け部材が縮径して接続管が抜け止めされた状態となる所謂ワンタッチ継手(例えば、積水化学工業社製商品名エスロカチット)を用いるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、切り取りスリット部分で切り取るようにしていたが、切り取りスリット部に沿って内側に折り曲げるようにしても構わない。
【0023】
また、上記の実施の形態では、切り取りスリットに沿って切り取るあるいは薄肉部に沿って折り曲げるようにしていたが、例えば、継手と保温材の孔との隙間に継手カバー部を嵌め込むような構造とする場合は、切り取りスリットに沿って切り取るあるいは薄肉部に沿って折り曲げる必要はない。
さらに、上記の実施の形態では、ヘッダー側の継手と接続管との接続部を覆うように設けられるようになっていたが、各水廻り設備の水栓や給湯栓側の接続部にも本発明の管状保護カバーを用いることができる。
【0024】
また、上記の実施の形態では、継手カバー部が一端に設けられていたが、両端に設けられていても構わない。
また、継手カバー部が保温材を内蔵していてもよい。このように保温材を内蔵した構造とすれば、一層保温性、遮音性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にかかる管状保護カバーの第1の実施の形態であって、その側面図である。
【図2】図1の管状保護カバーの継手カバー部によって継手部分を覆う直前の状態を示す一部切欠断面図である。
【図3】図1の管状保護カバーの継手カバー部によって継手部分を覆った状態を示す図である。
【図4】図3のX−X線断面図である。
【図5】本発明にかかる管状保護カバーの第2の実施の形態であって、その側面図である。
【図6】従来の管状保護カバーの斜視図である。
【図7】図6の管状保護カバーの継手カバー部によって継手部分を覆う直前の状態を示す一部切欠断面図である。
【図8】図7の管状保護カバーの継手カバー部によって継手部分を覆った状態を示す図である。
【図9】図8のY−Y線断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1a,1b 管状保護カバー
11,14 継手カバー部
11a 切り取りスリット
14a 薄肉部
16 中間部(蛇腹構造部)
2 鞘管
3 継手
4 接続管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続管が接続される継手を包含する内径の筒状をした継手カバー部を少なくとも一端に有する接続管の管状保護カバーであって、前記継手カバー部が、その先端部壁面に沿って略鞍形状に形成された切り取りスリットあるいは薄肉部を備えていることを特徴とする管状保護カバー。
【請求項2】
他端に接続管を覆う鞘管との連結構造を備えている請求項1に記載の管状保護カバー。
【請求項3】
継手カバー部以外の部分の少なくとも一部が、管軸方向に伸縮可能な蛇腹構造に形成されている請求項1または請求項2に記載の管状保護カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−204035(P2009−204035A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45393(P2008−45393)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】