説明

管状空洞を有する固定角遠心ローター及び関連する方法

固定角遠心ローター(10,150)が提供される。ローター(10)は、円周側壁(19)および複数の管状空洞(26)を有するローター本体(12)を含む。各空洞(26)は、開口端部(21)および閉口端部(22)を有し、そこにサンプル容器を受け入れるよう構成される。圧力板(54,154)は、複数の管状空洞(26)に動作連結され、圧力板(54)は、複数の管状空洞(26)と共に、各隣接する一対の複数の管状空洞(26)の間に密閉された中空室(48)を形成する。各複数管状空洞(26)は、前記ローター本体(12)の内部(28)に面する側壁(34b)と、閉口端部(22)に底壁(34c)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連参照
本願は、2009年11月11日出願の米国特許出願第12/616,276号の優先日の権利を主張し、その開示全体は、参照としてここに明らかに組み込まれている。
【0002】
技術分野
本発明は、概して遠心ローターに関し、より具体的には、遠心分離器に用いられる固定角ローターに関する。
【背景技術】
【0003】
遠心ローターは、通常実験室の遠心分離機において遠心分離中にサンプルを保持するために使用される。遠心ローターの構造および大きさは多様であるが、共通する1つのローター構造は、ローター本体を有する固定角ローターであり、ローター本体は、ローター本体内で放射状に分布し、かつ回転軸まわりに対称に配置された複数のセル穴空洞を有する。サンプルは、空洞内に配置され、複数のサンプルを遠心分離にかけることができる。
【0004】
従来の固定角遠心ローターは、金属または様々な他の材料から作られている。しかし、既知の改善は、圧縮成形およびフィラメント・ワインディングプロセスにより遠心ローターを構成することであり、ローターが炭素繊維複合材などの適切な材料から製造される。例えば、固定角遠心ローターは、樹脂被覆炭素繊維積層材料の層を圧縮成形させて作ることができる。合成遠心ローターの例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、および特許文献13(本願の出願人による)に記載され、かつそれぞれの開示は、ここに参照としてその全体が明確に組み込まれている。
【0005】
遠心ローターは、通常遠心分離機の速度が毎分数百または数千回転を越える高回転で使用されているため、遠心ローターは、荷重を加えたローターの高速回転中にかかる応力およびひずみに耐えることができなくてはならない。遠心分離中に、空洞に装着されたサンプルを伴うローターは、空洞から半径方向外向きの、および空洞の縦軸に沿った方向の、サンプル容器に加えられた遠心力と一致する強い力がかかる。これらの力は、ローター本体に対する大きな応力およびひずみの原因となる。
【0006】
遠心ローターは、ローターの寿命期間中は急速な遠心分離に関した力に耐えることができなくてはならない。遠心ローターをこのような力および関連する応力に耐えるようにする既知の手法は、サンプルをそこに受け入れるよう構成されるローター内の穴または適当な大きさの凹部によって形成された空洞を有するローター本体を、堅い構造にすることを含む。しかし、このタイプのローターは、製造が比較的難しく、かつ費用がかかり、およびそれらの回転速度は、ローターの比較的重い質量により制限される場合がある。したがって遠心分離中にかかる動荷重の問題において向上した性能を提供し、従来のローターに関連するこれらおよび他の問題に対処する遠心ローターが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,738,656号明細書
【特許文献2】米国特許第4,781,669号明細書
【特許文献3】米国特許第4,790,808号明細書
【特許文献4】米国特許第5,505,684号明細書
【特許文献5】米国特許第5,601,522号明細書
【特許文献6】米国特許第5,643,168号明細書
【特許文献7】米国特許第5,759,592号明細書
【特許文献8】米国特許第5,776,400号明細書
【特許文献9】米国特許第5,833,908号明細書
【特許文献10】米国特許第5,876,322号明細書
【特許文献11】米国特許第6,056,910号明細書
【特許文献12】米国特許第6,296,798号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第12/391,838号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、遠心分離に使用する公知の遠心ローターにおける前述および他の欠点および不都合を克服する。本発明は、ある実施形態に関して説明されるが、本発明は、これらの実施形態に限定されないことを理解されるべきである。むしろ本発明は、本発明の精神と技術範囲に含まれうる全ての代替形、改良および等価のものを含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態において、固定角遠心ローターが提供される。ローターは、円周の側壁外殻および複数の管状セル穴空洞を有するローター本体を含む。各空洞は、開口端部および閉口端部を有し、かつそこにサンプル容器を受け入れるよう構成されている。圧力板は、複数の管状空洞に動作連結され、圧力板は複数の管状空洞と共に、それぞれ隣接する一対の複数の管状空洞の間に密閉された中空室を形成する。各複数の管状空洞は、ローター本体の内部に面する側壁および閉口端部に底壁を有する。
【0010】
一実施形態において、圧力板は、略円錐の直立壁部と、略円錐の直立壁部から外向きに延在する底壁部とを有する。圧力板の略円錐の直立壁部は、複数の管状空洞の各側壁に動作連結されることができ、かつ圧力板の底壁部は、複数の管状空洞の各底壁の大部分に動作連結されることができる。圧力板の底壁部は、複数の管状空洞の底壁の各1つに動作連結するようそれぞれ構成された円周方向に離間した複数の凹部を含むことができる。
【0011】
ローターは、ローター本体の円周側壁の周囲に延在する細長い補強材を含むことができる。細長い補強材は、圧力板の外表面の周囲に少なくとも部分的に追加的に延在することができる。一実施形態において、細長い補強材は、単一の炭素繊維束を含む。あるいは、他の実施形態において補強材は、複数の繊維束または一方向性テープ備えることができる。そのうえ、または代わりに、少なくとも1つのローター本体または圧力板は、炭素繊維から作られることができる。ローター本体および圧力板は、圧縮成形された単一構造とすることができる。
【0012】
さらに他の実施形態においては、遠心ローターを形成する方法が提供される。遠心ローターは、円周側壁および複数の管状空洞を含むローター本体を有し、各空洞は、開口端部および閉口端部を有する。各空洞は、その中にサンプル容器を受け入れるよう構成されている。方法は、各管状空洞の圧力板を閉口端部に動作連結するステップを含み、それによりそれぞれ隣接する一対の管状空洞の間に密閉された中空室を形成する。そのうえ、または代わりに、方法は、ローター本体および圧力板を単一構造とする圧縮成形ステップを含むことができる。
【0013】
方法は、ローター本体の外部の周囲および圧力板の外表面の周囲の少なくとも一部分に補強材を適用するステップを含むことができる。補強材を適用するステップは、ローター本体の外部の周囲に1つのカーボン繊維束などの高強度繊維を連続的に巻くステップを含むことができる。あるいは補強材は、他の実施形態において複数の繊維束または一方向性テープ備えることができる。炭素繊維束は、例えば樹脂によって被覆されることができ、および方法は、ローター本体と一体にするために炭素繊維束を硬化させるステップを含むことができる。そのうえまたは代わりに、方法は、ローター本体の外部の周囲に単一の炭素繊維束をらせん状に巻くステップを含むことができる。そのうえまたは代わりに、方法は、ローター本体の外部の周囲に炭素繊維束などの2つ以上の高強度繊維をらせん状に巻くステップを含むことができる。
【0014】
方法はまた、複数の穴を有する上板を得るステップと、穴を通り複数の管状空洞を挿入するステップと、単一構造を形成するために上部板および管状空洞を圧縮成形するステップとを含むことができる。方法は、管状空洞の各側壁の大部分を中空室で囲むステップを含むことができる。そのうえ、または代わりに、方法は、空洞の各底壁の大部分を圧力板に係合するステップを含むことができる。
【0015】
本発明の上記のおよび他の目的および利点は、添付の図面およびその説明から明らかになるだろう。
【0016】
この明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を示し、かつ上記の発明の概要および下記の詳細な説明と共に本発明を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の1つの実施形態による遠心ローターの斜視図である。
【図2】図1のライン2−2に沿った横断面図である。
【図2A】図1〜2のローター底部の部分切欠き図である。
【図3】図1〜2の遠心ローターの部分分解斜視図である。
【図3A】図1〜3のローターの第1部分を形成する例示的な方法の概略図である。
【図4A】図1〜3の遠心ローターのローター本体の概略図である。
【図4B】本発明の1つの実施形態による、補強材が巻かれた図4Aのローター本体の立面図である。
【図4C】本発明の1つの実施形態による、多数の補強材が巻かれた図4Aのローター本体の立面図である。
【図4D】本発明の他の実施形態による、多数の補強材が巻かれた図4Aのローター本体の立面図である。
【図5A】本発明の1つの実施形態による、補強材が巻かれたローター本体の平面図である。
【図5B】本発明の1つの実施形態による、補強材が巻かれたローター本体の平面図である。
【図5C】本発明の1つの実施形態による、補強材が巻かれたローター本体の平面図である。
【図5D】本発明の1つの実施形態による、補強材が巻かれたローター本体の平面図である。
【図5E】本発明の1つの実施形態による、補強材が巻かれたローター本体の平面図である。
【図6】本発明の他の実施形態による遠心ローターの部分分解斜視図である。
【図7】図6の遠心ローターの一部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図3は、本発明の1つの実施形態による例示的な遠心ローター10を示す。ローター10は、上面14を有し、かつローター本体12の回転軸16に対称なローター本体12を含み、サンプル(図示せず)は、回転軸周りに遠心力で回転される。細長い補強材18は、ローター本体12の側壁19(図3)周辺に延在する略滑らかな外表面20の周囲に連続的に延在する。ここで使用される外表面20を表す「略滑らかな」との語句は、表面20が段のある形状ではなく、かつ角または鋭い端がほとんどないことを示していることを意図している。この点において、上記のように定義された語句は、表面20の表面粗さを規定する意図はない。さらにローター本体12は、補強材18を適用する前に、略滑らかな外表面20に対して追加的な機械加工または仕上げが必要ないように形成されることができる。
【0019】
ローター10は、ローター本体12の上面14から内部28(図2Aおよび図3)に向かって延在する複数(例えば4または6個)の管状セル穴空洞26を含む。ここで使用されるように、ローター10の内部28を参照する場合の「内部」との語句は、ローター10全体の形を形成する外壁によって密閉されるローター10の部分に関する。各管状空洞は、上面14に開口端部21を、および対向する閉口端部22を有する。軸16周りにサンプル容器を遠心回転させるために、各空洞26は、適当な大きさであり、かつそこにサンプル容器(図示せず)の1つを受け入れるような形をしている。各空洞26は、適当に選択された厚さおよび断面の形状を有する側壁34によって形成される。各側壁34は、空洞26の第1面の容器受容部を形成する第1面34aと、ローター本体12の内部28に面する対向第2面34bとを有する。ここで使用されるように、任意の断面形状を有する空洞に関する「管状」との語句は、例示的かつ限定されずに、丸みを帯びた形(例えば卵形、円形または円錐)、四辺形、正多角形、または不規則の多角形、または任意の他の適切な形を含む。したがって、この語句は、図に示される例示的な管状空洞26の略円形断面の形状に限定することを意図していない。
【0020】
引き続き図1〜図3を参照し、さらに図3Aを参照すると、この実施形態のローター10を作るステップは、上面14を形成するローター本体12の部分に沿って管状空洞26を形成するステップを含む。より具体的には、図3Aを特に参照すると、上板40は、各空洞26に対応する複数の穴42有するものとすることができる。そして各管状空洞26は、穴42の1つを通り(矢印43の方向に)挿入され、かつ管状空洞26および上板40に圧力および熱が加えられ、それにより単一構造が形成される。管状空洞26および上板40は、適当に選択された材料から作られている。例示的、かつ限定されないが、管状空洞26および上板40は、ローター10の全体質量を最小限に抑えることが容易になる炭素繊維などの軽いが強い材料から作られることができる。示された実施形態において、さらに管状空洞26は、各第2面34bのそれぞれの部分がローター本体12の内部28の一対の隣接する中空室48(図2Aおよび図3)によって囲まれるように形成され、それは、ローター10の全体質量を最小限に抑えることが容易になる。しかし、管状空洞26が、内部28においてローター10に対して大した質量を加えない軽い材料によって部分的に、追加的に囲まれるような代替の実施形態も考えられる。
【0021】
さらに下記に詳細に説明されるように、中空室48は、さらにローター10の圧力板54をローター本体12に連結させることにより形成される。より具体的には、圧力板54およびローター本体12が互いに連結される場合、圧力板54の中央に位置する略円錐の直立壁部54aが管状空洞26の各第2面34bの半径方向内向きに面する側部に係合(例えば当接する)し、それにより図2Aおよび図3に明りょうに示されるように複数の密閉された中空室48を形成する。この点において、略円錐の直立壁部54aおよび圧力板54の底壁部54bの上方に面する部分に沿った中空室48が、ローター10の内部28をさらに形成する。
【0022】
さらに、示される実施形態においては、各一対の隣接する管状空洞26の第2面34bが、共通の密閉中空室48に面するように、全ての管状空洞26が形成される。図に示される実施形態とは別に、ローターは、2つ以上の中空室48にそれぞれ露出する空洞26を有することができるということが考えられる。図2〜図2Aの実施形態における各密閉された中空室48は、ローター本体12の円周の側壁19によってさらに形成される。したがって、この点において、圧力板54および空洞26の側壁34の間の作用連結は、側壁19によって境された複数の密閉された中空室48、2つの隣接する管状空洞26の第2面34bのそれぞれの側部、および圧力板54の中央壁部54を形成する。しかし、中空室48のこのような形成は、単に例示的であり、したがって限定を意図しない。また示された実施形態において、各第2面34bの大部分は、中空空間(つまり、密閉中空室48の隣接する一対に対応する)によって囲まれる。ここで使用されるように、中空室48によって囲まれる管状空洞26の第2面34bの一部を示すために使用される「大部分」との語句は、特定の第2面34bの少なくとも約40%、および好ましくは、約40%〜約60%が中空空間によって囲まれる実施形態を示すことを意図している。
【0023】
図2および図3を特に参照すると、ローター10は、上述したようにローター10の底部を形成し、かつ管状空洞26に動作連結された圧力板54を含む。特に、ローター10の高速回転中に管状空洞26を支持するように、圧力板54は、空洞26の閉口端部22に動作連結され、それにより構造の完全性を提供し、かつローター10の故障の可能性を最小限にする。使用中、ローター10が回転している場合、圧力板54は管状空洞26およびローター本体12にトルクを加える。より具体的には、圧力板54の底壁部54bは、複数の円周方向に離間した凹部または空洞56を含み、それぞれは、ローター10の高速回転中に管状空洞26の閉口端部22における底壁34cの各1つを受け入れ、かつ当接する関係に係合するよう構成されている。この目的を達成するために、圧力板54およびローター本体12の連結は、圧力板54が各底壁34cに対して圧力を加え、それにより所望の支持を提供するようになっている。凹部56は、各底壁34cのかなりの部分に接触するような適当な形とすることができる。これにより、高速回転に関連した応力が圧力板54に集中する可能性を最小限に抑えることが容易になる。この特定の実施形態において、例えば、各凹部56は、空洞26の底壁34の略平らな形に対応する略平らな面を有する。さらに、示された実施形態において、圧力板54がローター本体12に係合する場合、圧力板54の円錐形状の中央部分54aが管状空洞26と当接係合することにより、ローター10の高速回転中における管状空洞26の支持をさらに提供する。
【0024】
この実施形態において圧力板54およびローター本体12の連結は、例えば止めナット60などの留め具によって促進され、かつさらに圧力板54および管状空洞26を互いに圧縮成形し、それにより単一構造を生じることにより促進される。より具体的には、特に図2および図2Aを参照すると、止めナット60は、ローターハブ62の外ネジ部61に螺合係合し、後述するように、これは、ローター10の高速回転を可能にするために、遠心分離スピンドル(図示せず)によるローター10の係合を容易にする。ナット60の係合は、圧力板54の下側から行われ、それにより、このような係合は、図示されるようにローターハブ62および圧力板54の中央部54aを互いに固定する。次にローターハブ62は、ローター本体12内部28に位置し、かつローター本体12の中央内部部分12dに係合するローターインサート64に螺合して固定される。
【0025】
圧力板54およびローター本体12の示された連結は、限定することを意図するものではなく例示的であり、これらの構成要素の連結タイプの変化形である限りまた考慮されることが当業者は容易に理解できるだろう。このような連結は、例えば、ローター本体12の外表面20の周囲および圧力板54の露出した部分の上に、単一の炭素繊維束または炭素繊維ストランド(例えば樹脂被覆炭素繊維)などの連続的な高強度繊維ストランドを巻く(例えばらせん状に巻く)ことによって適用される補強材18によってさらに促進されることができる。特に繊維が樹脂被覆されている場合、圧縮成形後(すなわち熱および圧力が加えられる)、圧力板54およびローター本体12は単一構造となる。特定の実施形態において、ローター10を作るステップは、ストランドがローター本体12および/または圧力板54と一体になるように、補強材18の樹脂被覆炭素繊維束またはストランドを硬化させるステップを含むことができる。1つの態様において、圧力板54は、適当に選択された材料から作られている。例示的に、かつ限定的ではなく、ローター10の全質量をさらに最小にするために、圧力板54は、炭素繊維から作られることができる。
【0026】
再び図2および図3を参照すると、使用の際、ローター10は、ローターハブ62に取り付けられ、ローターハブ62は、ハブ62の底部のそれぞれのボス63に収容される2つ以上のピンをさらに下記に詳しく説明される他の構造を介して遠心分離スピンドル(図示せず)に連結される。上述のように、ローター10は、ローターハブ62に螺合可能に係合するローターインサート64を含む。インサート64は、ローター本体12の中央内部部分12dにおける協同する凹部に収容される複数のウェブ64aを含む。一旦、ローター10がローターハブ62に設置されると、ローター本体12、圧力板54,ハブ62およびインサート64を互いに対する所定の場所に保持することを促進するために、ハブ保持器66がハブ62の上部に固定される。ローター10のふた70は、ハブ62のネジ付き中央開口部62aを通り収容されるふたネジ74を介してローター本体12に連結される。さらに、この実施形態において、例えばOリング75(図2)などの封止部材が、さらにふた70およびローター本体12の連結を促進する。ふた70は、高速回転中に空洞26に保持されているサンプル容器へのアクセスをブロックする。一旦、ふた70が中央開口部62aとのふたネジ74の係合により所定の場所に固定されると、ふたネジ74の穴74aを通じて固定ネジ78が挿入される。固定ネジ78の回転により、固定ネジ78は、遠心分離スピンドル(図示せず)の協同するネジ付き部分とネジ込み係合することができ、それにより、ローター10を遠心分離スピンドルに固定することができる。その後、遠心分離スピンドルは、高速遠心回転にローター10を駆動するように作動されることができる。上述した1つまたは複数のローター固定部品を任意の適切な金属または非金属材料から作ることができることを当業者は理解するだろう。
【0027】
図4A〜図4Dを参照すると、補強材18を適用する例示的な装置および例示的な方法の詳細が提供される。ガイド80は、略螺旋の補強材経路82に沿ってローター本体12の外表面20にストランド18aを適用するために使用される。ローター本体12に対するガイド80の経路は、ストランド18aの経路82を形成する。ローター本体12の表面に対して実質的に垂直にある場合に、ガイド80がストランド18aを略螺旋の経路82に正確にガイドすることを確実にするために、ガイド80は、多自由度を有することができる。一実施形態において、補強材ガイド80は、五自由度、すなわち回転軸16に対するガイド80の垂直位置および水平位置、ガイド80のピッチおよびヨー、およびガイド80の半径方向位置、を有することができる。所望の経路82に沿ってストランド18aを適用するためにガイド80を操作しながら、軸16周りに本体12を回転させることにより、ストランド18aはローター本体12に巻きつけられることができる。軸16周りに回転する際、ローター本体12は、ほぼ固定の位置に保持されることができる、またはローター本体12に巻かれるストランド18aの所望の経路82を形成するために、ローター本体12は、ガイド80に対して動くことができる。あるいは、所望の経路82に沿ってストランド18aを適用するために、ローター本体12が軸16周りに回転し、かつガイド80に対して動く際、ガイド80は、ほぼ固定の位置に保持されることができる。
【0028】
図4Aを特に参照すると、ローター本体12の側面概略図が示されている。矢印Gは、遠心分離中の荷を積んだ空洞26の重力中心に加えられる外向きの力を示している。矢印G1およびG2は、力のローター本体12の外表面20に垂直な成分、および空洞26の中央縦軸Cに沿った成分をそれぞれ示している。図4Aの概略はまた、例示的な螺旋補強材経路82を示している。螺旋補強材経路82は、1つまたは複数の経路要素82aおよび82bを含むことができる。経路要素82aは、荷を積んだ空洞26の重力中心Gの放射投影によって形成され、ローター本体12の外表面20と交わる点100と交差する。別の経路要素82bは、空洞26の縦軸Cとローター本体12の下端部12bにおける外表面との交差によって形成される点102と交差する。ガイド80は、ストランド18aをローター本体12の滑らかな外表面20の周囲にきつく巻く。一実施形態において、特定の繊維経路およびローターの形に対して、ガイド80によってストランド18aに十分な張力が加えられることにより、ローター本体12により垂直抗力がストランド18aに加えられ、ローター本体12の滑らかな外表面20に対してストランド18aは実質的に滑らなくなる。
【0029】
点100および102は、実質的に滑らかなローター本体12の外表面20上に示されている。点100は、荷を積んだ空洞の重力中心位置のローター本体12の外表面20への放射投影に対応している。点102は、1つの空洞26の中央縦軸Cとローター本体12の下端部12bの外表面との交差点に対応している。一実施形態において、補強材経路82は、これら点100,102の一方または両方と重なり、一方または両方の点100,102を覆うようにストランド18aの少なくとも2つの部分が連結される。それぞれの連結は、例えばストランド18aおよび適用される樹脂の重複部分によって形成されることができる。この点において、連結の垂直の帯112および連結の水平の帯114(図1)は、ローター本体12の周囲の補強材18を形成する材料の層によって形成されることができる。1つまたは複数の垂直の帯112は、ローター本体12の表面20において軸Cの1つを放射投影した位置とすることができる。例示的な方法において、補強材経路82が例えば点100および102などの選択された点と交差するように、1つの水平の帯114を、荷を積んだ空洞26の重力中心に設置することができる。
【0030】
特に図4Cおよび図4Dを参照すると、図4A〜図4Bの実施形態の変化形が示されている。この実施形態において、補強材18を形成するように、それぞれのガイド80aおよび80bによって2つの個別のストランド18a,18bが同時にローター本体12の外表面20に適用される。ストランド18a,18bの開始点は、図4Cに示すように互いに反対に巻くように、ローター本体12の反対側に位置することができる、または開始点は、図4Dに示すように互いに隣接して位置することができる。各補強材ガイド80a,80bは、上述のように五自由度を有することができる。補強材経路82は、略螺旋であり、かつまた本体12の上端部12aおよび下端部12bの間を軸方向に動きながらローター本体12の外表面20の周囲に延在する。補強材経路82はまた、ローター本体12の下端部12bの底縁の周囲を少なくとも部分的に延在することができ、かつ例えば圧力板54を少なくとも部分的に覆うことができる。点102はまた図4Cに示され、点100および102は、図4Dに示されている。多数の補強材ストランド18a,18bが補強材18を構成するために使用され、ストランド18aとストランド18bとの交差点は、投影された重力中心100または縦軸交差点102に位置することができる。
【0031】
ここに示されかつ説明された実施形態において、ストランド18aは、さらに、ローター本体12の上端部12aの周囲の少なくとも部分的に略円周方向に経路に沿って延在するようにローター本体12に適用されることができ、それによりローター本体12の上端部12aに隣接したふち118(図2)を形成する。この目的を達成するために、および図4B〜図4Dに示されるように、ローター本体12の上端部12aの上に位置するふち118(図2)を形成するためにストランド18aが略円柱の固定具124の周囲に巻きつけられるように、固定具124をローター本体12の上端部12aに配置することができる。
【0032】
図5A〜図5Eは、補強材材料の層を形成するためにストランド18aを巻く工程を示している。特に、ストランド18aは、補強材経路82に沿ってローター本体12の周囲に繰り返し巻かれる(図4A)。ローター本体12の外表面20の周囲にストランド18aを繰り返し巻くことにより、ローター本体12を被覆する複数の材料層が生じ、それにより補強材18を形成する。特定の実施形態において、ストランド18aは、上述したように、例えば炭素繊維ストランドまたはフィラメントとすることができる。ストランドまたはフィラメントは、一体型の遠心ローター10を形成するために巻く工程の終わりには硬化される、炭素繊維および樹脂の複合材料とすることができる。あるいは、ガラス繊維、パラアラミド繊維(例えばケブラー(登録商標))などの合成繊維、超高鋼分子ポリエチレンなどの熱可塑性フィラメント、金属ワイヤー、またはローター本体12を補強するために適切な他の材料などの様々な他の高張力、高弾性材料を炭素繊維の代わりに使用することができる。任意のこのような材料は、単一の連続的なフィラメントとして、または複数のフィラメントとして使用することができ、かつ多くのこのような材料に、樹脂被覆炭素繊維を硬化すると似た方法によって硬化することが可能な樹脂コーティングを適用することができる。上記の説明によって理解されるように、補強材は、様々な代替の実施形態において単一の繊維束、多数の繊維束または一方向性テープを備えることができる。
【0033】
図6および図7を参照すると、ローター150の代替の実施形態は、前の図の圧力板54からわずかに変更された圧力板154を含む。簡単にわかるように、図6および図7の似た符号は、前の図における類似の機構を参照する。圧力板154は、前の図の凹部または空洞56の機能および構造と類似の、複数の円周方向に離間した凹部または空洞156を有する。各空洞156は、1つの管状空洞26(図2)の閉口端部22の肩部161にぴったりと、かつ摩擦によって係合するよう構成されたへりまたはふち160を有する。ふち160および対応する管状空洞26の肩部161の間の堅い係合は、ローター150の遠心回転中の圧力板154から管状空洞26へのトルクの移動を促進する。この目的を達成するために、各ふち160は、管状空洞26の対応する閉口端部22の外縁の周囲に実質的に延在し、かつ圧力板154周辺の縁の近くにさらに延在する。さらに、各ふち160は、空洞156の対応する凹部の底面から上方へ(軸16方向)延在する。
【0034】
代替のローター150の他の態様において、圧力板154はまた全体重量が最小になるように、それにしたがいローター150の全体重量が最小になるように設計される。より具体的には、圧力板154は、隣接する凹部または空洞156の間に位置する、複数の円周方向に離間した重量を最小限にする凹部の扇形部分164を含む。これらの扇形部分164は、例えば前の図の扇形部分を含まない圧力板54に比べて圧力板の質量が少なくなるように、厚さが薄くなっている。例示的な圧力板154は、4つの管状空洞26および4つの扇形部分164を有しているが、代わりに任意の他の数の管状空洞26および/または扇形部分164を有してもよい。
【0035】
様々な実施形態を説明することによって本発明の原理に従った様々な態様が示され、かつ実施形態は非常に詳細に説明されているが、これは、本発明の技術範囲をこのような詳細に制限すること、または何らかの限定をすることを意図していない。ここに示され、説明された様々な機構は、単独で、または任意に組み合わせて使用することができる。追加的な利点および改良は、当業者に容易に明らかになるだろう。したがってより広い態様の本発明は、示され、説明された特定の詳細、代表的な装置および方法および実例に限定されない。したがって、発明の概念の技術範囲から逸脱することなく、このような詳細から発展させることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 ローター
12 ローター本体
14 上面
16 軸
18 補強材
19 側壁
20 外表面
21 開口端部
22 閉口端部
26 管状空洞
28 内部
34 側壁
48 中空室
54 圧力板
54a 直立壁部
54b 底壁部
56 凹部
60 止めナット
62 ローターハブ
64 ローターインサート
66 ハブ保持器
70 ふた
80 ガイド
82 補強材経路
118 ふち
160 ふち
161 肩部
164 扇形部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定角遠心ローター(10,150)であって、
円周側壁(19)および複数の管状空洞(26)を有するローター本体(12)であって、各空洞(26)は、開口端部(21)および閉口端部(22)を有し、かつそこにサンプル容器を受け入れるよう構成された、ローター本体を備え、
圧力板(54,154)は、前記複数の管状空洞(26)に動作連結され、前記圧力板(54,154)は前記複数の管状空洞(26)と共に、それぞれ隣接する一対の前記複数の管状空洞(26)の間に密閉された中空室(48)を形成し、かつ
前記圧力板(54,154)は、複数の円周方向に離間した凹部(56,156)を有し、各凹部は、前記複数の管状空洞(26)の1つにそれぞれ動作連結するよう構成されている
ことを特徴とする固定角遠心ローター。
【請求項2】
各前記複数の管状空洞(26)は、前記ローター本体(12)の内部(28)に面する側壁(34b)と、前記閉口端部(22)に底壁(34c)と、を有する、請求項1に記載のローター(10,150)。
【請求項3】
前記圧力板(54,154)は、略円錐の直立壁部(54a)と、前記略円錐の直立壁部(54a)から外向きに延在する底壁部(54b)とを備え、前記円周方向に離間した凹部(56,156)が前記底壁部(54b)に位置する、請求項2に記載のローター(10,150)。
【請求項4】
前記圧力板(54,154)の前記略円錐の直立壁部(54a)は、前記複数の管状空洞(26)の各前記側壁(34b)に動作連結され、かつ前記圧力板(54,154)の前記底壁部(54b)は、前記複数の管状空洞(26)の各前記底壁(34c)の大部分に動作連結されている、請求項3に記載のローター(10,150)。
【請求項5】
前記ローター本体(12)の前記円周側壁(19)の周囲に延在する細長い補強材(18)をさらに備える、請求項1に記載のローター(10,150)。
【請求項6】
前記細長い補強材(18)が前記圧力板(54,154)の外表面の周囲に少なくとも部分的に延在する、請求項5に記載のローター(10,150)。
【請求項7】
前記細長い補強材(18)が少なくとも単一の炭素繊維束を備える、請求項6に記載のローター(10,150)。
【請求項8】
前記ローター本体(12)または前記圧力板(54,154)の少なくとも一方が炭素繊維から作られている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のローター(10,150)。
【請求項9】
前記ローター本体(12)および前記圧力板(54,154)が圧縮成形された単一構造を形成する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のローター(10,150)。
【請求項10】
前記圧力板(154)が、隣接する一対の前記凹部(156)の間に位置し、かつ前記圧力板(154)の重量を最小にするよう構成された、複数の円周方向に離間した扇形部分(164)を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のローター(10,150)。
【請求項11】
前記圧力板(154)が、各1つの前記管状空洞(26)の前記閉口端部に摩擦によって係合するよう構成された複数のふち(160)を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のローター(10,150)。
【請求項12】
各前記ふち(160)が前記圧力板(154)の周辺の縁近くに延在する、請求項11に記載のローター(10,150)。
【請求項13】
円周側壁(19)および複数の管状空洞(26)を含むローター本体(12)を有する遠心ローター(10,150)を形成する方法であって、各空洞(26)は、開口端部(21)および閉口端部(22)を有し、かつそこにサンプル容器を受け入れるよう構成され、
該方法は、
複数の円周方向に離間した凹部(56,156)を有する圧力板(54,154)を各前記空洞(26)の前記閉口端部(22)に動作連結するステップであって、それにより各隣接する一対の管状空洞(26)の間に密閉された中空室(48)を形成するステップによって特徴付けられ、
前記圧力板(54,154)の各前記複数の円周方向に離間した凹部(56,156)は、各1つの前記管状空洞(26)に動作連結する、方法。
【請求項14】
単一構造を形成するために前記圧力板(54,154)および前記ローター本体(12)を圧縮成形するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ローター本体(12)外周に、および前記圧力板(54,154)の外表面の周囲に少なくとも部分的に、補強材(18)を適用するステップをさらに備える、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記補強材(18)を適用するステップが、単一の炭素繊維束、複数の炭素繊維束、または一方向性テープの1つを前記ローター本体(12)外周に巻くステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記補強材(18)が樹脂によって被覆され、前記方法が前記ローター本体(12)と一体にするために前記補強材(18)を硬化させるステップをさらに備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
複数の穴(42)を有する上板(40)を得るステップと、
前記穴(42)を通り前記複数の管状空洞(26)を挿入するステップと、
単一構造を形成するために、前記上板(40)および管状空洞(26)を圧縮成形するステップと、
をさらに備える、請求項13〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
各管状空洞(26)が前記ローター本体(12)の内部に面する側壁(34b)を有し、前記方法が、
各前記空洞(26)の前記側壁(34b)の大部分を前記密閉された中空室(48)で囲むステップをさらに備える、請求項13〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
各管状空洞(26)が前記閉口端部(22)に底壁(34c)を有し、かつ
前記圧力板(54,154)を各前記空洞(26)の前記閉口端部(22)に動作連結するステップが、前記空洞の各前記底壁(34c)の大部分を前記圧力板(54,154)の前記円周方向に離間した凹部(56,156)に係合するステップを含む、請求項13〜19のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図3A】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−510711(P2013−510711A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538932(P2012−538932)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/056171
【国際公開番号】WO2011/060030
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(510016645)ファイバーライト・セントリフュージ・エルエルシー (4)
【Fターム(参考)】