説明

管継手

【課題】 管の抜け止め性能の向上を図るとともに、管を接続する作業を簡素化し、作業性の向上を図ることのできる管継手を提供する。
【解決手段】 継手本体1の端部に設けた内筒11の外周面に管2の内周面に密着するシール部材12を設ける。継手本体1の外周面に中間筒5を、内筒11に管2を套嵌可能なように接続する。中間筒5に継手本体1方向に移動可能に可動筒4を螺合する。可動筒4の内周面に継手本体1方向に開拡するガイド部43を設ける。可動筒4に中間筒5に当接するまで移動可能に保持片3を内装する。保持片3は内周面に食込み突起32が突設してあり、管2に套嵌した状態で保持片3の外周面が可動筒4の内周面と当接することにより径方向への変位が可能である。保持片3の縮径による食込み突起32の管2への食込みによって管2が管継手から抜けて外れないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築設備における給水、給湯の配管などに用いられる管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,継手本体の端部にナットを螺合するとともに,この継手本体とナットとの接続部分にC形の締付けリングを収納し、その締付けリングに管を貫通させた状態でナットを締付けることにより、締付けリングを強制的に縮径変位させて、管の表面に密着させ、この密着力により管を抜け止め状態とし、保持するようにした管継手が知られている。
【0003】
このような従来の管継手は、管を抜け止めする手段としてC形の締付けリングを用いているが、このC形の締付けリングは締付けた時に曲率が一定とならないため、管に対する締付け力が周方向に均一とならず、抜け止め機能の信頼性に欠ける問題があった。また、管は、締付けリングとの面接触による摩擦抵抗によって保持されているだけであるから、この点においても抜け止め機能の信頼性が懸念された。
【0004】
さらに、このような従来の管継手で管を接合する際には、工具を用いてナットを締め込むという作業が必要なため、その作業空間を確保する必要があり、作業性が悪いという問題点があった。
【特許文献1】特開平6−346994号公報(特許請求の範囲,図1等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、管の抜け止め性能の向上を図るとともに、管を接続する作業を簡素化し、作業性の向上を図ることのできる管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の構成は、端部に管2が套嵌される内筒11を備えていて該内筒11の外周面に管2の内周面に密着するシール部材12を備えた継手本体1と、前記内筒11に管2を套嵌可能なように継手本体1の外周面に接続された中間筒5と、中間筒5に継手本体1方向に移動可能に螺合されていて内周面に継手本体1方向に開拡する傾斜角を有すると共に管2の挿入口44を有する可動筒4と、中間筒5に当接するまで移動可能に可動筒4に内装されており、管2に套嵌した状態でその外周面が可動筒4の内周面と当接することによる径方向への変位が可能であって、内周面に食込み突起32が突設してある保持片3とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明は、管の抜け止め性能のさらなる向上を図るために、上記構成において、保持片3の内周面に複数の食込み突起32を設けることができる。
【0008】
また、本発明は、管の抜け止め性能のさらなる向上を図るために、上記構成において、保持片3の内周面に等間隔に食込み突起32を設けて径方向への変位が均等となるようにすることができる。
【0009】
また、本発明は、管2が正規に挿入されていることが確認できるようにすると共に管2の挿入不良を確実に回避するため、上記構成において、前記可動筒4と前記中間筒5とを透明若しくは半透明な材料で形成することができる。
【0010】
さらに、本発明は、管継手の形態を、ソケット、エルボ、ティ、径違いソケット、片側ネジ付き、その他任意の形態とすることができる
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記の通り、可動筒4の挿入口44より管2を挿入して継手本体1の内筒11に管2を套嵌すると、可動筒4に内装された中間筒5と保持片3とが管2に套嵌する。可動筒4を手指等で回動して可動筒4を継手本体1方向に移動させると、可動筒4の内周面に設けられた傾斜角が継手本体1方向に開拡するものであるため、保持片3が可動筒4の内周面の傾斜角によって押圧されて継手本体1方向に移動し、保持片3が中間筒5に当接する。さらに可動筒4を手指等で回動して可動筒4を継手本体1方向にさらに移動させると、保持片3が可動筒4の内周面の傾斜角によってさらに押圧されて径方向へ変位するが、その際、保持片3の食込み突起32が管2の外周に食込み、管2が継手本体1に係止される。このとき、管2は継手本体1の内筒11によって支持されているので、管2が合成樹脂管のように変形し易い材質のものであっても、食込み突起32の食込み作用は確実に機能し、充分な管の抜け止め性能を確保することができる。また、上記の通り、管2を可動筒4の挿入口44より挿入して可動筒4を手指で回動するという操作だけで管2接続することができるので作業性に優れている。
【0012】
そして、保持片3の内周面に設ける食込み突起32を複数とすれば、管2に対する保持力が周方向にほぼ均一となり、さらに抜け止め機能の信頼性を高めることができるし、保持片3の外周面から等間隔に食込み突起32を形成すれば、保持片3の縮径が均等となり、保持片3の径方向への変位量が各部均等となり、さらに抜け止め機能の信頼性を高めることができる。
【0013】
また、可動筒4と前記中間筒5とを透明若しくは半透明な材料で形成すれば、管2の挿入端部を目視することができるようにし、管2が正規に挿入されていることが確認できるようにすると共に管2の挿入不良を確実に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下,図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下の説明において、図の右側を後、図の左側を前ということとする。
【0015】
図1ないし図3に図示した実施形態において、継手本体1は、全体として円筒形をなし、前側に管2が套嵌される内筒11が一体に設けられており、継手本体1内を流れる流体はこの内筒11内を通過する。この内筒11の外周面に設けた2条のシール溝18には管2の内周面に密着するシール部材12が取付けられている。内筒11の後側には段差部19を介して中間筒固定用雄ネジ部17が形成され、中間筒固定用雄ネジ部17の後側には隣接して可動筒止め用溝16が形成され、可動筒止め用溝16の後端となる段差部により可動筒止め用ストッパが形成されている。そして、可動筒止め用溝16には、可動筒止め13が套嵌されている。可動筒止め13の可動筒止め用溝16への套嵌は、円盤状の可動筒止め13に外縁から中央に穿設した可動筒止め用溝16に嵌合する孔に達する切り込みを設け、この切り込みから可動筒止め13を強制的に拡径して可動筒止め用溝16に嵌め込んで行う。可動筒止め用溝16に嵌め込まれた可動筒止め13は縮径して可動筒止め用溝16に確りと嵌合する。
【0016】
中間筒5の後端部内周には、雌ネジ部51が形成され、この雌ネジ部51を継手本体1の中間筒固定用雄ネジ部17に螺合することにより、中間筒5と継手本体1が同心状に合体される。
【0017】
可動筒4は、前端に管2の挿入口44を備えており、内筒11に対して同心状に包囲する形態とされ、可動筒4と内筒11の間の円筒状空間が、管2の挿入空間21となっている。可動筒4の後端部内周目には、雌ネジ部42が設けられており、この雌ネジ部42が中間筒5の可動筒固定用雄ネジ部52に螺合することにより、可動筒4と中間筒5とが同心状に合体されると共に、可動筒4が継手本体1方向に移動可能となっている。可動筒4の内周目の雌ネジ部42の前方はガイド部43となっており、ガイド部43の前方は管2の外径と同じかそれよりも僅かに大きい寸法とされていて前側に向かって、即ち、継手本体1から管2を抜き取る方向に向かって縮径した形態をなす傾斜角をなす当たり面41となっている。
【0018】
可動筒4には保持片3が内装されている。保持片3は、合成樹脂製で、全体として円筒状をなしている。保持片3は、本体部33の全長の中央部分から後端部に複数の爪部34を片持ち状に延出した形態とされており、爪部34の外側は本体部33の外周に対して面状に連続している。爪部34は、本体部33に連なる後端側を支点として角度を傾けながら弾性により変形し、内径方向に変位することが可能となっている。そして、各爪部34は、正面視では、本体部33の曲率に対応した円状となっている。爪部34の後端部外周には凸部35が形成されており、この凸部35の外周後端部の外径は前記した可動筒4の当たり面41の後端の最大内径よりも小さい寸法とされ、当たり面41の前端の最小内径よりも大きな寸法とされる。また、各爪部34の前端部内周には、それぞれ前後2つの食込み突起32が針状に突設されている。それぞれの食込み突起32は、前後両面が管挿入方向に対して傾斜した直角三角形状を成している。また、保持片3の本体部33の内径および爪部34の内径は、管2の外径よりも僅かに大きい寸法に設定され、食込み突起32の先端の内径は、管2の外径よりも僅かに小さい寸法に設定されており、管2が挿入口44より挿入された際には、保持片3が押圧されて可動筒4内を中間筒5の方向に移動し、爪部34がおよび食込み突起32が弾性により管2に押圧されて変形することにより、保持片3は管2に套嵌する。
【0019】
尚、可動筒4と中間筒5は、半透明材料により形成されていて、管2の挿入空間21の前端部が目視できるようになっている。継手本体1の後方には治具嵌合部15と接続用雄ネジ14とが設けられており、治具嵌合部15に図示しない治具を嵌合し、各装置(図示せず)の雌ネジ部に接続用雄ネジ部14を螺合させることによりその装置に予め取付けられる。
【0020】
次に、上記実施形態の使用を説明する。
【0021】
可動筒4前端の挿入口44より管2を挿入空間21に挿入すると、挿入された管2の前端部は内筒11に套嵌し、継手本体1に対して同心状に位置決めされ、保持片3の本体部33を通過して爪部34の食込み突起32に当接し、保持片3を押圧しながら移動する。保持片3がが中間筒5の前端に突き当たるまで移動し、それ以上の移動ができなくなると、管2は当接した食込み突起32および爪部34を変形させつつ保持片3を貫通しながら移動する。
【0022】
そして、管2の前端部が継手本体1の段差部19に達したところで管2の挿入作業が終了する。このとき、半透明材料により形成された可動筒4を透過して管2の前端部が段差部19に突き当たっている状態を目視で確認することができる。
【0023】
続いて、可動筒4を手指等で回動して可動筒4を継手本体1の後方向に移動させると、可動筒4が移動する過程で、可動筒4の当たり面41が保持片3の凸部35に当たり、当たり面41の傾斜角によって保持片3の爪部34および爪部34前端部内周の食込み突起32が内径方向に変位しながら縮径し、食込み突起32が管2の外周に食い込み、管2は継手本体1に対して相対移動を規制され、管2は管継手に接続される。
【0024】
そして、保持片3の食込み突起32は、継手本体1の内筒11と対応するように位置しているから、食込み突起32の管2への食込み力は、内側から内筒11に受け止められ、したがって、管2が食込み突起32から逃げることなく、強力な抜け止め力を得ることができるだけでなく、信頼性の高い抜け止め機能を得ることができる。しかも、保持片3の爪部34は周方向に等間隔に設けられているので、管2に対する保持力が均一となり、これにより管2の抜け止め機能の信頼性をさらに強化することができる。また、管2の接続作業も継手本体1側に管2を挿入して可動筒4を手指等で回動するという操作だけで行うことができるので、作業性も優れている。
【0025】
さらに、内筒11の外周面には、管2の内周面に密着するシール部材12が取付けられているから、高いシール性を得ることができ、しかも、このシール部材12は2条設けられているから、シール機能の信頼性に優れている。
【0026】
管2の内圧に急激な上昇が生じた場合、管2は継手本体1から抜ける方向に移動しようとするが、シール部材12が管継手の前端側の内筒11の外周面に設けられているので、シール部材12によるシール機能が損なわれることはない。
【0027】
図4を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
【0028】
この実施形態は、中間筒5の継手本体1外周面への接続を、図1ないし図3の実施形態の中間筒5の雌ネジ部51と継手本体1の中間筒固定用雄ネジ部17との螺合によって行うのではなく、凹凸部による嵌合によって行うものである。すなわち、継手本体1の段差部19の後方に嵌合凹部を形成し、中間筒5の後端に嵌合凸部を形成し、中間筒5の後端の嵌合凸部を継手本体1の嵌合凹部に嵌合することにより、中間筒5の継手本体1外周面への接続を行っている。この実施形態にあっては、可動筒4は予め中間筒5に組み込まれており、可動筒4の回動操作の代わりに中間筒5自体をスライド前進させることにより、保持片3を変位させることとなる。その他の構造は、図1ないし図3の実施形態と同様であるから、同一箇所には同一符号を付し、構造、作用の説明は省略する。
【0029】
以上で、本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明は上述の実施形態に限られものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の1形態のハッチングを省略した半断面図。
【図2】保持片のハッチングを省略した半断面図。
【図3】可動筒の半断面図。
【図4】本発明の別の実施形態のハッチングを省略した半断面図。
【符号の説明】
【0031】
1 継手本体
2 管
3 保持片
4 可動筒
5 中間筒
11 内筒
12 シール部材
13 可動筒止め
14 接続用雄ネジ部
15 治具嵌合部
16 可動筒止め用溝
17 中間筒固定用雄ネジ部
18 シール溝
19 段差部
21 挿入空間
32 食込み突起
33 保持片の本体部
34 爪部
35 凸部
41 当たり面
42 雌ネジ部
43 ガイド部
44 挿入口
51 雌ネジ部
52 可動筒固定用雄ネジ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に管2が套嵌される内筒11を備えていて該内筒11の外周面に管2の内周面に密着するシール部材12を備えた継手本体1と、前記内筒11に管2を套嵌可能なように継手本体1の外周面に接続された中間筒5と、中間筒5に継手本体1方向に移動可能に螺合されていて内周面に継手本体1方向に開拡する傾斜角を有すると共に管2の挿入口44を有する可動筒4と、中間筒5に当接するまで移動可能に可動筒4に内装されており、可動筒4の内周面と当接することによる径方向への変位が可能であって、内周面に食込み突起32が突設してある保持片3とを備えたことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記保持片3には爪部が複数延設されており、それぞれの爪部の内周面に一つもしくは複数の食込み突起32を設けた請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記保持片3には爪部が等間隔に複数延設されており、それぞれの爪部の内周面に一つもしくは複数の食込み突起32を設けた請求項1または請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記可動筒4と前記中間筒5とを透明若しくは半透明な材料で形成した請求項1から請求項3のいずれかに記載の管継手。
【請求項5】
その形態が、ソケット、エルボ、ティ、径違いソケット、片側ネジ付きの何れかである請求項1から請求項4のいずれかに記載の管継手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−138416(P2006−138416A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329395(P2004−329395)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(302000793)株式会社ベネックス (8)
【Fターム(参考)】