説明

管継手

【課題】不測の外力が生じ、挿口部が受口部に対して管軸方向に脱離する相対移動が起こっても管体の接合部から流体の漏出を防止する管継手を提供する。
【解決手段】挿口部23と、内周面には、傾斜面3bと、傾斜面3bに連続して形成される平行面3dと、を有している受口部3と、傾斜面3bと挿口部23の外周面23aとの間に位置する押込み部1aと平行面3dと挿口部23の外周面23aとの間を密封するための先頭シール部1bとを有するパッキン1と、パッキン1を押圧する押輪13と、取付部材を備えた管継手において、パッキン1の押込み部1aの外周面1dとパッキン1の押込み部1aの内周面1eの少なくとも一方に、押込み部1の外周面1dに対向する受口部3の傾斜面3b、若しくは押込み部1の内周面1eに対向する挿口部23の外周面23aに向かって膨出する膨出部が周方向に沿って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の管体を構成する挿口部と、挿口部に遊挿され、内周面には、端面側から内方に向かって縮径する傾斜面と、傾斜面に連続して更に内方に向かって形成される管軸に対して略平行の平行面と、を有している他方の管体を構成する受口部と、リング状に形成される弾性材から成り、受口部の内周面と挿口部の外周面の間に配置され、傾斜面と挿口部の外周面との間に位置する押込み部と、押込み部に連続して形成され、平行面と挿口部の外周面との間を密封するための先頭シール部と、を有するパッキンと、挿口部の外周面に沿って外嵌されるとともに、パッキンの押込み部の端面を管軸方向に押圧する押圧面を有する押輪と、受口部と押輪とパッキンとの管軸方向の相対移動が規制されるように、受口部と押輪とを連係して取付けられた取付部材と、を備えた管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
押輪により2つの管体を締結した配管の接合部から配管に流れる流体の漏出を防止する手段として、従来図8に示されるようなパッキン101が使用されていた(例えば、特許文献1参照)。以下、図8に例示されるパッキン101について説明する。すなわち、図8(a)において、一方の管体102の受口部103の内方は、他方の管体122の挿口部123が遊挿されている。
【0003】
管体102の受口部103の端部の内方には、受口部103の開口端から内方に向かって縮径する内周面である傾斜面103bが周方向に沿って形成されている。またこの傾斜面103bに連続して更に内方に向かうともに、管軸に対して略平行である平行面103dが周方向に沿って形成されており、この平行面103d内方側の端部には、管軸方向を向く奥端面103fが周方向に沿って形成されている。
【0004】
パッキン101はリング状に形成され、ゴム等の弾性材から成り、このパッキン101は傾斜面103bと略平行な外周面を有している押込み部101aが周方向に沿って形成されている。またこの押込み部101aの紙面右側には、押込み部101aと連続するとともに、周方向に沿って膨出される先頭シール部101bが形成されている。そして、この押込み部101aの紙面左側の端部に押輪113側の端部に形成された押圧面113cが押圧する被押圧面101cが形成されている。
【0005】
そこで、これら管体102、122を接続されるに際し、先ず、押輪113とパッキン101を順に挿口部123に外嵌した状態で、挿口部123を受口部103内に挿入し、次いで、受口部103に形成されたフランジ部103gと押輪113のフランジ部113bに形成された夫々の取付孔103h、113dにT頭ボルト111を挿通し、ナット112を螺挿して均等に閉め込んでいくと、図8(b)に示されるように、パッキン101の被押圧面101cは押輪113の押圧面113cにより図示白抜矢印方向に押圧される。そして、パッキン101の先頭シール部101bが受口部103の平行面103dと挿口部123の外周面とが当接することで弾性変形し、先頭シール部101bの先端部が奥端面103fと当接するまで押し込まれる。その結果、受口部103の平行面103dと挿口部123の外周面との間が密封され、両管体102、122を流れる流体の漏出防止が成される。
【0006】
【特許文献1】特開平2003−161393号公報(第6頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の流体漏出防止用のパッキン101を備えた管継手では、例えば地震等による不測の外力が生じ、挿口部123が受口部103から完全に抜き出るとはいわないまでも、挿口部123が受口部103に対して管軸方向に脱離する相対移動が起こった際には、パッキン101の先頭シール部101bが、挿口部123の外周面と受口部103の内周面と離間し、受口部103の傾斜面103bと挿口部123の外周面との間の密封性が維持されない状態になり、両管体102、122を流れる流体が、押込み部101aの外周面と受口部103の傾斜面103bとの間、若しくは押込み部101aの内周面と挿口部123の外周面との間を通過して、両管体102、122の外部に漏出するといった問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、不測の外力が生じ、挿口部が受口部に対して管軸方向に脱離する相対移動が起こっても管体の接合部から流体の漏出を防止する管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の管継手は、
一方の管体を構成する挿口部と、
該挿口部に遊挿され、内周面には、端面側から内方に向かって縮径する傾斜面と、該傾斜面に連続して更に内方に向かって形成され、管軸に対して略平行の平行面と、を有している他方の管体を構成する受口部と、
リング状に形成される弾性材から成り、前記受口部の内周面と前記挿口部の外周面の間に配置され、前記傾斜面と前記挿口部の外周面との間に位置する押込み部と、該押込み部に連続して形成され、前記平行面と前記挿口部の外周面との間を密封するための先頭シール部と、を有するパッキンと、
前記挿口部の外周面に沿って外嵌されるとともに、前記パッキンの押込み部の端面を管軸方向に押圧する押圧面を有する押輪と、
前記受口部と前記押輪と前記パッキンとの管軸方向の相対移動が規制されるように、前記受口部と前記押輪とを連係して取付けられた取付部材と、を備えた管継手において、
前記パッキンの前記押込み部の外周面と前記パッキンの前記押込み部の内周面の少なくとも一方に、前記押込み部の外周面に対向する前記受口部の傾斜面、若しくは前記押込み部の内周面に対向する前記挿口部の外周面に向かって膨出する膨出部が、周方向に沿って形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、先頭シール部に加えて、膨出部が形成されているため、例えば地震等による不測の外力が生じて、挿口部が受口部に対して管軸方向に所定長さ脱離する相対移動が起こっても、押込み部の外周面と受口部の傾斜面との間、若しくは押込み部の内周面と挿口部の外周面の間を密封している膨出部が依然として、押込み部の外周面と受口部の傾斜面との間、若しくは押込み部の内周面と挿口部の外周面との間の密封を維持することができる。
【0010】
本発明の請求項2に記載の管継手は、請求項1に記載の管継手であって、
前記膨出部は、前記押込み部の外周面に形成された第1膨出部と、前記押込み部の内周面に形成された第2膨出部と、から成ることを特徴としている。
この特徴によれば、例えば地震等による不測の外力が生じて、挿口部が受口部に対して管軸方向に所定長さ脱離する相対移動が起こっても、管内の流体の漏出路となる受口部の内周面とパッキンの押込み部の外周面との間に第1膨出部が形成され、挿口部の外周面とパッキンの押込み部の内周面との間に第2膨出部が形成されているため、これら漏出路を確実に密封できる。
【0011】
本発明の請求項3に記載の管継手は、請求項2に記載の管継手であって、
前記第2膨出部は、前記第1膨出部から、前記押込み部の外周面の基準面に対し略直角に延びる方向に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、受口部の傾斜面から第1膨出部が受ける力の方向のほぼ延長上に第2膨出部が形成されているため、この力を有効に第2膨出部から挿口部の外周面に作用させ、結果的に押込み部の外周面と受口部の傾斜面との間と、押込み部の内周面と挿口部の外周面との間と、の密封を維持することができる。
【0012】
本発明の請求項4に記載の管継手は、請求項1ないし3のいずれかに記載の管継手であって、
前記押込み部の外周面と前記押込み部の内周面の少なくとも一方に、前記膨出部が複数条形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、不測の外力が生じても、膨出部が管軸方向に複数条形成されていることで管体の密封性が向上できる。
【0013】
本発明の請求項5に記載の管継手は、請求項1ないし4のいずれかに記載の管継手であって、
前記膨出部は、前記押込み部の端面近傍に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、不測の外力が生じても、管軸方向における先頭シール部から押込み部の端面近傍までの距離分だけ受口部に対して挿口部が脱離する相対移動を許容して、管体の密封性が維持される。更に、膨出部が押込み部の端面近傍に形成されているため、受口部と挿口部の間に受口部に向かってパッキンが装着される際に、最後に膨出部が押込み部の外周面と受口部の傾斜面との間、若しくは押込み部の内周面と挿口部の外周面との間に配置されることになるので、押込み部の外周面と受口部の傾斜面との間、若しくは押込み部の内周面と挿口部の外周面との間を膨出部が密栓する状態を形成してパッキンが装着されることになり、管体の密封性を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0015】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例における管継手の全体像を示す分解斜視図である。図2は、管継手のパッキンにおける一部断面図である。図3(a)は、パッキン取付け前の管継手を示す一部断面図、(b)は、パッキン取付け後の管継手を示す一部断面図である。図4は、挿口部が受口部に対して管軸方向に脱離する相対移動が起こった時の管継手を示す一部断面図である。図5は、変形例1における管継手のパッキンを示す一部断面図である。図6は、変形例2における管継手のパッキンを示す一部断面図である。図7は、変形例3における管継手のパッキンを示す一部断面図である。
【0016】
図1、3に示されるように、一方の管体の端部に他方の管体を挿入して、水密、若しくは気密にシールする管継手の構造は、従来の構成と略同一構成となっている。具体的には、パッキン1と押輪13と、が挿口部23の外周面23aに外嵌された状態で他方の管体22の対向端部である挿口部23が遊挿される。すなわち、挿口部23の外周面23aと受口部3の内周面との間に所定の間隙を形成して挿入される。そして、パッキン1が、受口部3の内周面と、挿口部23の外周面23aと、の間に押輪13により押込まれ、両管体2、22を気密もしくは水密にシールする。
【0017】
また受口部3のフランジ部3gに所定間隔おきに周方向に複数の取付孔3hが形成されており、ナット12側の端部に周方向に沿って形成された押輪13のフランジ部13bには、この受口部3のフランジ部3gの取付孔3hと同軸となるよう、押輪13のフランジ部13bに複数形成された取付孔13dが所定間隔おきに周方向に設けられている。
【0018】
そして、受口部3のフランジ部3gの取付孔3hと押輪13のフランジ部13bの取付孔13dを取付部材としてのT頭ボルト11とナット12が取付孔3h、13dの個数に対応して取付けられることで、パッキン1と受口部3と押輪13の相対移動が規制される。尚、図1ではT頭ボルト11とナット12は1組のみ示し、その他は省略している。
【0019】
具体的な管継手の構成は、図3(a)に示されるように、管体2の受口部3の端部の内方には、受口部3の端面3aから内方に向かって縮径する内周面である傾斜面3bが周方向に沿って形成されている。また傾斜面3bに連続して更に受口部3の内方に向かうとともに、管軸に対して略平行である平行面3dが周方向に沿って形成されている。更に、平行面3dより更に内方側の端部には、受口部3の外方を向く奥端面3fが周方向に沿って形成される。そして、後述のように、受口部3の内周面、すなわち傾斜面3b及び平行面3dと、挿口部23の外周面23aとの間にパッキン1が嵌入される。
【0020】
本実施例における管継手のパッキン1は、リング状に形成されるゴム等の弾性材から形成されており、このパッキン1には、傾斜面3bと略平行に形成された外周面1dを有している押込み部1aが周方向に沿って形成されている。またこの押込み部1aの図3(a)紙面右方には、押込み部1aと連続するとともに、周方向に沿って自然状態において膨出する先頭シール部1bが形成されている。更に、この押込み部1aにおける図3(a)紙面左側の端部には、押輪13が押圧する端面である被押圧面1cが形成されている。
【0021】
また図2に示されるように、押込み部1aの外周面1dには、押込み部1aの外周面1dに対向する受口部3の傾斜面3bに向かって膨出する膨出部としての第1膨出部9が周方向に沿って形成されている。
【0022】
ここで、この第1膨出部9を除外したとして形成される外周面1dと略同一の仮想の平面としての基準面Aを想定すると、第1膨出部9から、この基準面Aに対して略直角に延びる仮想の直交線Bと、押込み部1aの内周面1eと、が交差する位置に、押込み部1aの内周面1eに対向する挿口部23の外周面23aに向かって膨出する第2膨出部10が周方向に沿って形成されている。
【0023】
押輪13は、図3(a)に示されるように、紙面右側に形成される環状押圧部13aと、前記したフランジ部13bと、から形成されており、この環状押圧部13aには、パッキン1の被押圧面1cと対向する押圧面13cが形成されている。
【0024】
次に管体2、22の接続について説明すると、先ず、押輪13とパッキン1を順に挿口部23にあらかじめ外嵌した状態で、挿口部23を受口部3内に挿入する。
【0025】
次いで、受口部3と押輪13の夫々のフランジ部3g、13bに周方向に複数のT頭ボルト11を挿通し、ナット12を螺挿して同方向に均等に閉め込んでいくと、図3(b)に示されるように、パッキン1の被押圧面1cは、押輪13の押圧面13cにより図示白抜矢印方向に向かって押圧されて、パッキン1は、受口部3の内方に向かって押込まれる。そして、パッキン1の先頭シール部1bが受口部3の傾斜面3bと挿口部23の外周面23aに当接することで弾性変形し、更に、パッキン1の先頭シール部1bが受口部3の平行面3dと挿口部23の外周面23aと当接することで先頭シール部1bが平行面3dと挿口部23の外周面23aとの間に嵌入され、最終的に先頭シール部1bの先端部が奥端面3fと当接するまで押し込まれる。この結果、先頭シール部1bにより平行面3dと挿口部23の外周面23aとの間が密封される。
【0026】
一方、第1膨出部9は、被押圧面1cは押輪13の押圧面13cにより管軸方向に押圧され、受口部3の傾斜面3bと当接することで弾性変形し、傾斜面3bと挿口部23の外周面23aとの間に押し込まれる。また、第2膨出部10は、被押圧面1cは押輪13の押圧面13cにより管軸方向に押圧され、挿口部23の外周面23aと当接することで弾性変形し、受口部3の傾斜面3bと挿口部23の外周面23aとの間に押し込まれる。この時、押輪13の押圧により受口部3の傾斜面3bから第1膨出部9に挿口部23の外周面23aに向かって図3(b)の黒塗矢印の方向の力が伝達され、この力を第2膨出部10により挿口部23の外周面に作用されるため、第1膨出部9により、押込み部1aの外周面1dと受口部3の傾斜面3bとの間が密封され、第2膨出部10により、押込み部1aの内周面1eと挿口部23の外周面23aの間が密封される。
【0027】
地震等による不測の外力が生じた場合は、図4に示されるように、挿口部23が管軸方向にすなわち図示白抜矢印の方向に脱離する相対移動が起こり、弾性変形していたパッキン1の先頭シール部1bが元の自然状態に復元するため、受口部3の平行面3dと挿口部23の外周面23aとの間の密封性が維持されない状態になる。
【0028】
しかし上記に示したように、先頭シール部1bに加えて、パッキン1の外周面1dとパッキン1の内周面1eに夫々第1膨出部9と第2膨出部10が形成されているため、挿口部23が受口部3に対して管軸方向に所定長さ脱離する相対移動が起こっても、依然として、押輪13の押圧により受口部3の傾斜面3bから第1膨出部9に挿口部23の外周面23aに向かって図示黒塗矢印方向の力が伝達され、この力を第2膨出部10により挿口部23の外周面23aに作用させる。よって流体の漏出路としてなり得る受口部3の内周面と押込み部1aの外周面1dとの間と、挿口部23の外周面23aと押込み部1aの内周面1eとの間と、を確実に密封することができるため、両管体2、22の気密性、若しくは水密性が保持され、流体の漏出防止が成される。
【0029】
特に、第2膨出部10は、第1膨出部9から、押込み部1aの外周面1dの基準面Aに略直角に延びる方向(直交線B上付近)に形成されていることで、受口部3の傾斜面3bから第1膨出部9が受ける力を有効に第2膨出部10から挿口部23の外周面23aに作用させ、結果的に押込み部1aの内周面1eと挿口部23の外周面23aとの間の密封を維持することができる。また、第1膨出部9は、断面視円弧形状を形成するように曲面を描いて膨出しているため、受口部3の傾斜面3bから第1膨出部9が受ける力は、挿口部23の外周面23aに向かって放射状に分散されているが、傾斜面3bに対して略直角の向き(直交線Bの向き)が集中的に受口部3の傾斜面3bから第1膨出部9が力を受けることになる。
【0030】
更に尚、図2にでも示されるように、本実施例のパッキンは、基準面Aに対して第1膨出部9における最大膨出点である第1頂部Paを通過する仮想の直交線Bを想定して、この直交線B上に、押込み部1aの内周面1eに対して第2膨出部10における最大膨出点である第2頂部Pbが通過するように第2膨出部10が形成されており、このようにすることで、第1膨出部9が受口部3の傾斜面3bからの力を効果的に受け、この力を第2膨出部10から挿口部23の外周面23aに効果的に作用させ、結果的に押込み部1aの内周面1eと挿口部23の外周面23aとの間の密封性が向上できる。尚、第1頂部Pa、第2頂部Pbは周方向に沿って連続的に形成されている。
【0031】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0032】
例えば、上記実施例では、パッキン1の押込み部1aの外周面1dとパッキン1の押込み部1aの内周面1eに夫々、膨出部としての第1膨出部9と第2膨出部10が周方向に沿って形成されているが、変形例1として、図5に示されるようにパッキン1の押込み部1aの外周面1dに、第1膨出部9aが形成されているのみでもよい。また特に図示はしないが、パッキン1の内周面1eに、第2膨出部が形成されているのみでもよい。
【0033】
このようにすることで、例えば地震等による不測の外力が生じて、挿口部23が受口部3に対して管軸方向に所定長さ脱離する相対移動が起こっても、先頭シール部1bに加えて、押込み部1aの外周面1dと受口部3の傾斜面3bとの間、若しくは押込み部1aの内周面1eと挿口部23の外周面23aの間を密封している膨出部である第1膨出部9a若しくは、第2膨出部が依然として、押込み部1aの外周面1dと受口部3の傾斜面3bとの間、若しくは押込み部1aの内周面1eと挿口部23の外周面23aとの間の密封を維持することができる。
【0034】
変形例2として、図6に示されるように、パッキン1の押込み部1aの外周面1dと押込み部1aの内周面1eに、夫々第1膨出部9b、9c、第2膨出部10b、10cが2条形成されてもよく、また特に図示はしないが、パッキン1の押込み部1aの外周面1dと押込み部1aの内周面1eに、夫々第1膨出部、第2膨出部が3条以上形成されてもよい。さらに特に図示はしないが、パッキン1の押込み部1aの外周面1dに第1膨出部が複数条形成されているのみでもよく、同様にパッキン1の押込み部1aの内周面1eに第2膨出部が複数条形成されているのみでもよい。
【0035】
このようにすることで、不測の外力が生じても、膨出部としての第1膨出部若しくは、第2膨出部が管軸方向に複数条形成されていることで両管体2、22の密封性が向上できる。
【0036】
更に変形例3として、図7に示されるように、第1膨出部9dと第2膨出部10dは、押込み部1aの被押圧面1cの近傍に形成されている。尚、図示はされないが、被押圧面1cの近傍の押込み部1aの外周面1dに第1膨出部9dが形成されているのみでもよく、同様に被押圧面1cの近傍の押込み部1aの内周面1eに第2膨出部10dが形成されているのみでもよい。このようにすることで以下の効果を奏する。
【0037】
すなわち、不測の外力が生じても、管軸方向における先頭シール部1bから押込み部1aの被押圧面1cの近傍までの距離分だけ受口部3に対して挿口部23が脱離する相対移動を許容して、両管体2、22の密封性が維持される。更に、第1膨出部9d若しくは、第2膨出部10dが押込み部1aの被押圧面1c近傍に形成されているため、受口部3と挿口部23の間に受口部3に向かってパッキン1が装着される際に、最後に押込み部1aの外周面1dと受口部3の傾斜面3bとの間、若しくは押込み部1aの内周面1eと挿口部23の外周面23aとの間に、第1膨出部9d若しくは、第2膨出部10dが配置されることになるので、押込み部1aの外周面1dと受口部3の傾斜面3bとの間若しくは、押込み部1aの内周面1eと挿口部23の外周面23aとの間を夫々第1膨出部9d若しくは、第2膨出部10dが密栓する状態を形成してパッキン1が装着されることになり、両管体2、22の密封性を維持できる。
【0038】
尚、図7においては、第1膨出部9dは、被押圧面1cから所定距離離間した近傍に形成されており、第2膨出部10dが被押圧面1cに係るように形成されている。この構成は、上述したように、受口部3の内方に向かって縮径する傾斜面3bを有しているため、受口部3の傾斜面3bから第1膨出部9dが受ける力の方向のほぼ延長上の近傍に第2膨出部10dが形成されていると、この力を有効に第2膨出部10dから挿口部23の外周面23aに作用させることができ、効果的に押込み部1aの外周面1dと受口部3の傾斜面3bとの間と、押込み部1aの内周面1eと挿口部23の外周面23aとの間と、の密封を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例における管継手の全体像を示す分解斜視図である。
【図2】管継手のパッキンにおける一部断面図である。
【図3】(a)は、パッキン取付け前の管継手を示す一部断面図、(b)は、パッキン取付け後の管継手を示す一部断面図である。
【図4】挿口部が受口部に対して管軸方向に脱離する相対移動が起こった時の管継手を示す一部断面図である。
【図5】変形例1における管継手のパッキンを示す一部断面図である。
【図6】変形例2における管継手のパッキンを示す一部断面図である。
【図7】変形例3における管継手のパッキンを示す一部断面図である。
【図8】(a)は、パッキン取付け前の従来例の管継手を示す一部断面図である。(b)は、パッキン取付け後の従来例の管継手を示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 パッキン
1a 押込み部
1b 先頭シール部
1c 被押圧面(押込み部の端面)
1d 外周面(押込み部)
1e 内周面(押込み部)
2 管体
3 受口部
3a 端面
3b 傾斜面
3d 平行面
3f 奥端面
3g フランジ部
3h 取付孔
9 第1膨出部
9a 第1膨出部
9b 第1膨出部
9c 第1膨出部
9d 第1膨出部
10 第2膨出部
10b 第2膨出部
10c 第2膨出部
10d 第2膨出部
11 T頭ボルト(取付部材)
12 ナット(取付部材)
13 押輪
13a 環状押圧部
13b フランジ部
13c 押圧面
13d 取付孔
22 管体
23 挿口部
23a 外周面
A 基準面
B 直交線
Pa 第1頂部
Pb 第2頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管体を構成する挿口部と、
該挿口部に遊挿され、内周面には、端面側から内方に向かって縮径する傾斜面と、該傾斜面に連続して更に内方に向かって形成される管軸に対して略平行の平行面と、を有している他方の管体を構成する受口部と、
リング状に形成される弾性材から成り、前記受口部の内周面と前記挿口部の外周面の間に配置され、前記傾斜面と前記挿口部の外周面との間に位置する押込み部と、該押込み部に連続して形成され、前記平行面と前記挿口部の外周面との間を密封するための先頭シール部と、を有するパッキンと、
前記挿口部の外周面に沿って外嵌されるとともに、前記パッキンの押込み部の端面を管軸方向に押圧する押圧面を有する押輪と、
前記受口部と前記押輪と前記パッキンとの管軸方向の相対移動が規制されるように、前記受口部と前記押輪とを連係して取付けられた取付部材と、を備えた管継手において、
前記パッキンの前記押込み部の外周面と前記パッキンの前記押込み部の内周面の少なくとも一方に、前記押込み部の外周面に対向する前記受口部の傾斜面、若しくは前記押込み部の内周面に対向する前記挿口部の外周面に向かって膨出する膨出部が、周方向に沿って形成されていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記膨出部は、前記押込み部の外周面に形成された第1膨出部と、前記押込み部の内周面に形成された第2膨出部と、から成ることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記第2膨出部は、前記第1膨出部から、前記押込み部の外周面の基準面に対し略直角に延びる方向に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記押込み部の外周面と前記押込み部の内周面の少なくとも一方に、前記膨出部が複数条形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の管継手。
【請求項5】
前記膨出部は、前記押込み部の端面近傍に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の管継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate