説明

管継手

【課題】クリップ部材の着脱が容易で、着脱に大きな力が不要であり、かつ、流体が流れている状態でクリップ部材によって第1継手と第2継手とをより安定した接続状態に保持することができるとともに、その状態を容易に視認でき、使用者に安心感を伝えやすい管継手の接続構造を提供する。
【解決手段】第1継手1の第1フランジ部11と第2継手2の第2フランジ部21とを密着させた第1嵌合状態で第1フランジ部11と第2フランジ部21を、嵌合溝3aからクリップ部材3内に嵌合させたのち、第1フランジ部11と第2フランジ部21との間に隙間Sが形成されるように第1継手1と第2継手2とを引き抜き方向に相対移動させて、嵌合溝3aの側壁面に設けられた係合凹部34に第1フランジ部11及び第2フランジ部21を係合させてクリップ部材3の離脱を防止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、給水給湯用の管同士を容易に着脱可能にする管継手の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、給水給湯用の管同士を容易に着脱可能にする管継手の接続構造として、ファスナー継手と称される図9及び図10に示すような管継手の接続構造が用いられている(特許文献1〜4参照)。
この管継手の接続構造は、図9及び図10に示すように、第1継手100と、第2継手200と、クリップ部材(ファスナークリップ)300とによって概ね構成されている。
【0003】
すなわち、第1継手100は、挿し口110と、第1フランジ部120とを備え、挿し口110と反対側で一方の接続管400と接続されるようになっている。
挿し口110は、シール材としてのOリング111が外嵌されている。
【0004】
第2継手200は、受口210と、第2フランジ部220とを備え、受口210と反対側で他方の接続管400と接続されるようになっている。
受口210は、第1フランジ部120と第2フランジ部220とがほぼ密着するまで挿し口110が嵌合されることによって、Oリング111が受口210の内周面と、挿し口110の外周面との間で圧縮されて第1継手100と第2継手200とが水密に接続された状態となる。
【0005】
クリップ部材300は、第1フランジ部120の厚みと第2フランジ部220の厚みとの合計厚みより幅の広いバネ板材を折曲することによって形成され、側面視ほぼくの字形をしていて、くの字の内角側を対面させて設けられた一対の挟持部310と、この挟持部310の一側端同士を接続するように設けられたほぼコの字形をした連結部320と、各挟持部310の他端から外側に延出するように設けられたガイド部330とを備えている。
2つの挟持部310は、くの字の折曲部間の距離が第1フランジ部120及び第2フランジ部220の外径より狭くなっている。
【0006】
また、クリップ部材300は、4つの係合孔340を備えている。
係合孔340は、その幅が第1フランジ部120の厚みと第2フランジ部220の厚みとの合計厚みとほぼ同じか少し幅が広く設けられている。
【0007】
そして、この接続構造は、以下のようにして第1継手100と第2継手200とが接続保持される。
(1)第1継手100の挿し口110を第2継手200の受口210に嵌合し、図9に示すように、第1フランジ部120と第2フランジ部220とをほぼ密着状態とする。
この状態で、第1継手100と第2継手200とは、水密状態で接続される。
(2)図10に矢印で示すように、挿し口110及び受口210の管軸と直交する方向からガイド部330を先頭にして第1継手100及び第2継手200に跨るようにクリップ部材300をスライド嵌合させる。
この状態で、第1継手100と第2継手200とが、挿し口110が受口210に水密嵌合され抜け止めされた状態で接続保持される。
すなわち、クリップ部材300を矢印方向にスライドさせていくと、ガイド部330が、まず、第1継手100及び第2継手200のフランジ部近傍周壁に当接し、ガイド部330のテーパによって挟着部310のガイド部330側がクリップ部材300の弾性力に抗して押し広げられて、第1継手100及び第2継手の第1フランジ部120及び第2フランジ部220とその近傍部が挟持部310内に嵌り込む。
そして、クリップ部材300の弾性復元力によって2つの挟持部310間で第1フランジ部120及び第2フランジ部220の近傍部が弾性挟持されるとともに、係合孔340に第1フランジ部120及び第2フランジ部220の周縁部が係合される。
(3)クリッブ部材300のガイド部330に、図示していないが、はずれ止め部材(例えば、特許文献4の図1、図4参照)を装着し、クリップ部材300の離脱をさらに防止する。
【0008】
この管継手の接続構造は、上記のクリップ部材300を着脱することによって、容易に第1継手100と第2継手200とを水密接続状態及び分離状態にすることができる。したがって、第1継手100及び第2継手200のいずれかに接続管を工場で接続しておくことによって、施工現場での工数削減や施工品質を安定させるメリットがあり、架橋ポリエチレン管メーカーやポリブテン管メーカー各社にて、この形態の接続構造を用いたシステムや継手が既に発売されている(例えば、東陶機器社製AHS継手、オンダ製作所製クイックジョイントなど参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7-260071号公報
【特許文献2】特開平9-159079号公報
【特許文献3】特開2007-138980号公報
【特許文献4】特開2009-281493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の管継手の接続構造によれば、クリップ部材300が十分な弾性挟持力を備えたものとするとともに、はずれ止め部材を装着することによってクリップ部材300が容易に離脱しないようにしているため、配管のメンテナンス時、増設や、交換作業時にクリップ部材が離脱して第1継手100と第2継手200との接続がはずれて漏水事故が起きるということは極めて少ないが、まったく皆無とは言い切れない。したがって、この接続構造が人によっては感覚的に不安定感を与えることは否めない。
また、弾性挟持力を高めるとよりクリップ部材300の離脱は防止することができるが、クリップ部材300の着脱に力が要り、特に、作業スペースが狭い場合、着脱作業が非常にむつかしい。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて、クリップ部材の着脱が容易で、着脱に大きな力が不要であり、かつ、流体が流れている状態でクリップ部材によって第1継手と第2継手とをより安定した接続状態に保持することができるとともに、その状態を容易に視認でき、使用者に安心感を伝えやすい管継手の接続構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明にかかる管継手の接続構造(以下、「本発明の接続構造」と記す)は、挿し口及びこの挿し口の後端に隣接し外側に張り出すように設けられた第1フランジ部を有する第1継手と、受口及びこの受口先端に外側に張り出すように設けられた第2フランジ部を有する第2継手とが、前記挿し口と前記受口とを水密嵌合位置まで嵌合させた状態で、クリップ部材を、管軸に直交する方向からスライド嵌合させ、クリップ部材内に第1フランジ部及び第2フランジ部を臨ませるとともに、クリップ部材の係止部で第1フランジ部及び第2フランジ部を係止することによって接続保持される管継手の接続構造であって、前記クリップ部材は、第1フランジ部と第2フランジ部とが近接した着脱嵌合位置まで前記挿し口を前記受口に嵌合させた状態で、第1フランジ部及び第2フランジ部を嵌合可能な嵌合溝を有し、前記着脱嵌合位置の第1フランジ部と第2フランジ部とが、この嵌合溝の開口端から前記スライド嵌合によって嵌合溝底側の係止位置まで嵌合されたとき、前記水密嵌合状態を保ちつつ、クリップ部材内で第1フランジ部と第2フランジ部が離れる方向に第1継手及び第2継手が相対移動することによって、第1フランジ部及び第2フランジ部の少なくとも一部がそれぞれ嵌り込み、第1フランジ部及び第2フランジ部の周縁を係止して第1継手及び第2継手の前記嵌合溝からの抜けを防止する係合凹部を前記嵌合溝の壁面に備えていることを特徴としている。
【0013】
本発明において、上記着脱嵌合位置は、第1フランジ部及び第2フランジ部がクリップ部材の嵌合溝にスライド嵌合可能になっていれば、第1フランジ部と第2フランジ部との間に隙間が開いていても構わないが、嵌合溝の大きさをできるだけ小さくするためには、第1フランジ部と第2フランジ部とが密着する位置とすることが好ましい。
本発明の接続構造において、第1継手及び第2継手は、従来の接続構造と同様の形状をしたものが使用でき、材質は砲金や真鍮、ステンレス鋼などの金属でも、エンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂でも構わないし、金属部材と合成樹脂部材とを組み合わせて形成されていてもよい。
【0014】
また、第1継手及び第2継手の形状としては、特に限定されず、例えば、いずれかが、エルボ形状、チーズ形状、ヘッダー形状をしていても構わない。
また、挿し口や受口と第1フランジ部あるいは第2フランジ部を挟んで反対側には、接続管をワンタッチ接続できるワンタッチ接続部(例えば、積水化学工業株式会社のエスロカチットのような構造)や、スリーブをかしめることによって接続管を接続するかしめ接続部(例えば、積水化学工業株式会社のメタキュットのような構造)を備えていてもよい。
【0015】
本発明の接続構造は、特に限定されないが、挿し口と受口とが、内部を流れる流体圧によって、第1フランジ部と第2フランジ部との間隔が少なくとも係合凹部の深さの合計長さ離間可能な水密嵌合構造を備えていることが好ましい。
すなわち、流体圧がかかった状態では、第1フランジ部と第2フランジ部とが、それぞれ係合凹部に係合された状態に保持され、確実にクリップ部材の離脱を防止することができる。
【0016】
また、本発明の接続構造は、クリップ部材が、係合凹部に係合した第1フランジ部と第2フランジ部との隙間にその一部が挿入されて、第1フランジ部と第2フランジ部の間隔を係合維持状態に保持するスペーサの挿通孔を周壁に備えていることが好ましい。
すなわち、第1フランジ部と第2フランジ部とが係合凹部に係合した状態で挿通孔を介してスペーサを第1フランジ部と第2フランジ部との隙間に挿入した状態にすることで、流体圧がかかっていない状態においても、第1フランジ部と第2フランジ部とが係合凹部に係合した状態に確実に保持できる。
【0017】
また、スペーサは、特に限定されないが、挿し口より嵌合溝の開口側で、クリップ部材に設けられた一方の挿通孔から他方挿通孔に跨って装着されるようにすることが好ましい。
すなわち、スペーサによってもクリップ部材の離脱方向の動きを抑えることができ、より安全性が高まる。
【0018】
また、上記クリップ部材の材質は、特に限定されないが、効果的にスラスト力に対応可能な強度を有するもの形成されていれば、特に限定されないが、鉄鋳物、銅鋳物、ステンレス鋳物エンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂、これらの複合材料が挙げられる。
製造方法は、ロストワックス製法が好適である。
上記スペーサの材質は、ペース確保機能と、離脱防止が長期的に図られる限りにおいて得に制約はないが、金属やエンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂が挙げられる。
なお、スペーサの形状は、特に限定されないが、例えば、断面円形、楕円形、三角形、四角形、五角形などの棒状のものや、挿通孔の内周面にねじをきり、このねじに螺合するねじを設けたり、周面に抜け防止のカエシを設けたり、割りを設けたりして、一度スペーサをクリップ部材に装着すれば容易に外せないようにしてもよい。
また、スペーサは、防食をはかるため、鉄やステンレス鋼製の線材あるいは角材からなるスペーサ本体の表面に塗料を塗布したり、スペーサ本体表面を樹脂被覆材で覆うようにしても構わない。
さらに、上記塗料や樹脂被覆材は、クリップと異なる色に彩色し、視認性を向上させることが望ましい。また、より視認性を挙げるため、塗料や被覆材となる樹脂組成物中には蛍光剤を含ませるようにしても構わない。
【0019】
本発明の接合構造において、第1フランジ部と第2フランジ部とが係合凹部に係合された状態のとき、第1フランジ部と第2フランジ部との間に生じる隙間の間隔は、特に限定されないが、係合凹部への係合状態を安定的に確保するとともに、隙間をみて、係合状態を確認しやすくするために、1mm以上とすることが好ましい。
【0020】
また、本発明の接合構造において、挿し口にOリングが外嵌されていて、挿し口の第1フランジ部側の端からOリングまでの長さが10mm以下であることが好ましい。
すなわち、上記長さは特に限定されないが、10mmを超えると、システムのコストやおさまり施工性の点で問題が発生するおそれがある。
【発明の効果】
【0021】
本発明の接続構造は、以上のように、挿し口及びこの挿し口の後端に隣接し外側に張り出すように設けられた第1フランジ部を有する第1継手と、受口及びこの受口先端に外側に張り出すように設けられた第2フランジ部を有する第2継手とが、前記挿し口と前記受口とを水密嵌合位置まで嵌合させた状態で、クリップ部材を、管軸に直交する方向からスライド嵌合させ、クリップ部材内に第1フランジ部及び第2フランジ部を臨ませるとともに、クリップ部材の係止部で第1フランジ部及び第2フランジ部を係止することによって接続保持される管継手の接続構造であって、前記クリップ部材は、第1フランジ部と第2フランジ部とが近接した着脱嵌合位置まで前記挿し口を前記受口に嵌合させた状態で、第1フランジ部及び第2フランジ部を嵌合可能な嵌合溝を有し、前記着脱嵌合位置の第1フランジ部と第2フランジ部とが、この嵌合溝の開口端から前記スライド嵌合によって嵌合溝底側の係止位置まで嵌合されたとき、前記水密嵌合状態を保ちつつ、クリップ部材内で第1フランジ部と第2フランジ部が離れる方向に第1継手及び第2継手が相対移動することによって、第1フランジ部及び第2フランジ部の少なくとも一部がそれぞれ嵌り込み、第1フランジ部及び第2フランジ部の周縁を係止して第1継手及び第2継手の前記嵌合溝からの抜けを防止する係合凹部を前記嵌合溝の壁面に備えているので、クリップ部材の着脱が容易で、着脱に大きな力が不要であり、かつ、流体が流れている状態でクリップ部材によって第1継手と第2継手とをより安定した接続状態に保持することができるとともに、その状態を容易に視認でき、使用者に安心感を伝えやすい。
【0022】
すなわち、第1フランジ部と第2フランジ部とがほぼ接触するように、第1継手の挿し口を第2継手の受口に嵌合させて、第1継手と第2継手とを接続状態とすれば、第1フランジ部及び第2フランジ部とその近傍部が嵌合溝の開口端から底側に向かってスムーズにスライド嵌合する。
そして、第1フランジ部及び第2フランジ部が係合凹部に臨む係止位置までクリップ部材内に挿入されると、第1フランジ部と第2フランジ部とが係合凹部方向に移動可能となる。したがって、この状態で手や内部を流れる流体圧によって、第1継手及び第2継手に第1フランジ部と第2フランジ部とが離れるようにスラスト方向の力を加えると、第1フランジ部及び第2フランジ部がそれぞれ係合凹部内にスムーズに入り込係合凹部の周壁が第1フランジ部及び第2フランジ部の周壁に係止され、第1継手及び第2継手の嵌合溝の開口方向への抜けが防止される。
【0023】
また、実使用状態では、内部を流体の流体圧によって第1継手及び第2継手にスラスト抜け力が常に働いた状態となるため、第1フランジ部と第2フランジ部の係合凹部への係合が安定したものとなるとともに、流体圧が加わった状態でクリップ部材を取り外すことが困難となり、いたずら等によって第1継手と第2継手との接続が解除されるという心配が大きく低減される。
しかも、第1フランジ部と第2フランジ部との間に隙間があることを目視で確認することで第1継手と第2継手とが正常に接続されていることが容易にわかり、使用者に安心感を与える。
【0024】
一方、元バルブを閉じて流体の流れを止めれば、第1継手と第2継手とを第1フランジ部と第2フランジ部とがほぼ接触した状態に容易にすることができる。
そして、第1フランジ部と第2フランジ部とを嵌合溝の開口端を臨む位置にすれば、容易にクリップ部材を取り外して第1継手と第2継手との接続を容易に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の接続構造の第1の実施の形態の第1継手と第2継手の接続部をクリップ部材の嵌合口側からみた平面図である。
【図2】第1継手と第2継手とをクリップ部材の嵌合溝にスライド嵌合した状態を嵌合溝の開口端側からみた図である。
【図3】図2の一部切欠き断面図である。
【図4】第1継手の第1フランジ部と第2継手の第2フランジ部を係合凹部に係合させた状態をクリップ部材の嵌合溝の開口端側からみた図である。
【図5】図4の一部切欠き断面図である。
【図6】図4のX−X線断面図である。
【図7】図1の接続構造に用いるクリップ部材の平面図である。
【図8】図7のY−Y線断面図である。
【図9】従来の接続構造をあらわす斜視図である。
【図10】図9の接続構造の接続前の状態をあらわす斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明の接続構造の第1の実施の形態をあらわしている。
【0027】
図1に示すように、この接続構造Aは、第1継手1と、第2継手2と、クリップ部材3と、スペーサ4とから構成されている。
すなわち、第1継手1は、図3〜図5に示すように、挿し口11と、第1フランジ部12とを備えていて、第1フランジ部12を挟んで挿し口11と反対側に、例えば、架橋ポリエチレン管やポリブテン管などの接続管(図示せず)が接続される継手部13となっている。
【0028】
挿し口11は、図3及び図5に示すように、周面に二条のOリング係合溝11aが設けられ、このOリング係合溝11aにOリング14がそれぞれその周囲がOリング係合溝11a外に少し突出するように装着されている。
また、挿し口11は、第1フランジ部12側の端から近い側のOリング14までの距離が10mm以下となっている。
第1フランジ部12は、円盤状に外側に張り出すように設けられている。
【0029】
第2継手2は、図3及び図5に示すように、受口21と、第2フランジ部22とを備えていて、受口21に連続して接続管に接続される継手部23が設けられている。
受口21は、その内径が、挿し口11の外径とほぼ同じか少し大径で、第2フランジ部22が第1フランジ部12に密着する状態まで挿し口11を挿入可能で、挿し口11の第1フランジ部12側のOリング14部分が内部に入り込むまで、挿し口11が挿し込まれていれば、第1継手1と第2継手2とが水密状態で接続されるようになっている。
第2フランジ部22は、円盤状に外側に張り出すように設けられ第1フランジ部12と同外径をしている。
【0030】
クリップ部材3は、図7及び図8に示すように、側面視ほぼUの字形をしていて、Uの字の開口側に開口する嵌合溝3aを備えている。
嵌合溝3aは、第1溝部31と、第2溝部32と、第3溝部33とを備えている。
【0031】
第1溝部31は、その開口端が、クリップ部材3の厚み方向が短く、厚み方向の直交する方向が長い長方形をして、長手方向長さが第1フランジ部12及び第2フランジ部22の外径とほぼ同じか、少し長く、短手方向の長さが、第1フランジ部12の厚みと第2フランジ部22の厚みとの合計とほぼ同じか少し長くなった長方形をしている。
また、第1溝部31は、底が第1フランジ部12及び第2フランジ部22の外径とほぼ同じか少し大きな半径をした半円弧状をしている。すなわち、側面からみてほぼUの字形をしている。
さらに、第1溝部31は、その底側の両側壁面(クリップ部材3の幅方向の壁面)に係合凹部34を備えている。
係合凹部34は、その外径が、第1溝部31の底の円弧に沿う円弧状になっていて、その深さが、第1フランジ部12(第2フランジ部22)の厚みのほぼ半分の深さになっている。
【0032】
第2溝部32及び第3溝部33は、第1溝部31の短手方向に対称に第1溝部31に直交するように設けられていて、一端が、第1溝部31に開口し、他端がクリップ部材3の厚み方向の一側で開口している。
また、第2溝部32及び第3溝部33は、その底が接続管1及び接続管2の外径とほぼ同じ半径の半円弧状をしている。すなわち、側面からみてほぼUの字形をしている。
【0033】
また、クリップ部材3は、嵌合溝3aの開口側の第1溝部31の長手方向の両壁面に挿通孔35が穿設されている。
挿通孔35は、中心軸が、第1溝部31の短手方向の中心を通るように設けられるとともに、その孔径が第1フランジ部12と第2フランジ部22とが係合凹部34内に係合された状態で、第1フランジ部12と第2フランジ部22との間に形成される隙間とほぼ同じか少し小径の断面円形をしている。
【0034】
スペーサ4は、鉄またはステンレス鋼線材で形成されたスペーサ本体とこのスペーサ本体の表面を被覆する樹脂被覆材とからなり、上記挿通孔35の内径とほぼ同じ外径をしている。
上記被覆材は、クリップ部材3と異なる色に着色(蛍光色でもよい)された樹脂組成物で形成されている。
【0035】
そして、上記接続構造Aは、以下のような工程を経て得られる。
(1)図2及び図3に示すように、第1フランジ部12と第2フランジ部22とが密着する着脱嵌合位置まで挿し口11を受口21に嵌合させる。
(2)第1フランジ部12及び第2フランジ部22が第1溝部31の開口端に臨み、第1継手1の継手部13が第2溝部32(または第3溝部33)の開口端に臨み、第2継手2の受口22の周壁が第3溝部33(または第2溝部32)の開口端に臨むように、クリップ部材3を配置する。
(3)図2及び図3に示すように、クリップ部材3を、第1フランジ部12及び第2フランジ部22が第1溝部31内に、接続管1及び接続管2が第2溝部32及び第3溝部33に嵌り込み、第1フランジ部及び第2フランジ部22が第1溝部31の底にほぼ設置するようにスライド嵌合させる。
(4)図4及び図5に示すように、第1継手1と第2継手2とを第1フランジ部12と第2フランジ部22との間に隙間Sが生じるように移動させ、第1フランジ部12と第2フランジ部22とを係合凹部34に係合させる。
(5)図6に示すように、スペーサ4の両端がクリップ部材3から突出するように、スペーサ4を一方の挿通孔35から他方の挿通孔35に向かって挿通したのち、図1に示すように、スペーサ4のクリップ部材3から突出した部分を折り曲げて、スペーサ4が抜け落ちないようにする。
【0036】
上記接続構造Aは、上記のようになっており、クリップ部材3の着脱が容易で、着脱に大きな力が不要であり、かつ、流体が流れている状態でクリップ部材3によって第1継手1と第2継手2とをより安定した接続状態に保持することができるとともに、その状態を容易に視認でき、使用者に安心感を伝えやすい。
そして、スペーサ4を備えているので、スペーサ4によってもクリップ部材3の離脱方向の動きを抑えることができ、より安全性が高まる。
また、スペーサ4の表面が、クリップ部材3と異なる色の被覆材で構成されているので、スペーサ4が装着されているか否かを容易に判断することができる。
【0037】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、係合凹部に第1フランジ部及び第2フランジ部の厚み方向の半分程度が係合するだけであったが、第1フランジ部及び第2フランジ部が完全に嵌り込むようにしても構わない。
また、上記の実施の形態では、第1溝部が側面視Uの字形をしていたが、Uの字の内側壁に、第1フランジ部及び第2フランジ部の係止位置までの嵌合を余り阻害しない程度、すなわち、軽く乗り越えることができる程度の小突起あるいは突条を設けるようにしても構わない。すなわち、かかる小突起あるいは突条を設ければ、第1フランジ部と第2フランジ部とがこの小突起あるいは突条を乗り越える際のクリック感によって正常に嵌合溝に嵌合されたか否かを作業者が容易に認識することができるとともに、第1フランジ部及び第2フランジ部が係合凹部に係合されるまでの仮の抜け止めにもなり、作業性が向上する。
さらに、上記の実施の形態では、挿し口側にOリングが装着されていたが、受口の内周面側にOリングを装着するようにしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の接続構造は、給水・給湯用配管に好適に用いられる。特に、集合住宅のメーターボックス等の鉄扉内を開けてメンテナンス等をする際に、誤ってクリップ部材に触れることによるクリップ部材の外れの懸念を大いに払拭し、メーターボックス部など、開放容易な隠蔽部の配管接続部に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
A 接続構造
1 第1継手
11 挿し口
11a Oリング係合溝
12 第1フランジ部
13 継手部
14 Oリング
2 第2継手
21 受口
22 第2フランジ部
23 継手部
3 クリップ部材
3a 嵌合溝
31 第1溝部
32 第2溝部
33 第3溝部
34 係合凹部
35 挿通孔
4 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿し口及びこの挿し口の後端に隣接し外側に張り出すように設けられた第1フランジ部を有する第1継手と、
受口及びこの受口先端に外側に張り出すように設けられた第2フランジ部を有する第2継手とが、
前記挿し口と前記受口とを水密嵌合位置まで嵌合させた状態で、
クリップ部材を、管軸に直交する方向からスライド嵌合させ、クリップ部材内に第1フランジ部及び第2フランジ部を臨ませるとともに、クリップ部材の係止部で第1フランジ部及び第2フランジ部を係止することによって接続保持される管継手の接続構造であって、
前記クリップ部材は、第1フランジ部と第2フランジ部とが近接した着脱嵌合位置まで前記挿し口を前記受口に嵌合させた状態で、第1フランジ部及び第2フランジ部を嵌合可能な嵌合溝を有し、
前記着脱嵌合位置の第1フランジ部と第2フランジ部とが、この嵌合溝の開口端から前記スライド嵌合によって嵌合溝底側の係止位置まで嵌合されたとき、前記水密嵌合状態を保ちつつ、クリップ部材内で第1フランジ部と第2フランジ部が離れる方向に第1継手及び第2継手が相対移動することによって、第1フランジ部及び第2フランジ部の少なくとも一部がそれぞれ嵌り込み、第1フランジ部及び第2フランジ部の周縁を係止して第1継手及び第2継手の前記嵌合溝からの抜けを防止する係合凹部を前記嵌合溝の壁面に備えていることを特徴とする管継手の接続構造。
【請求項2】
挿し口と受口とが、内部を流れる流体圧によって、第1フランジ部と第2フランジ部との間隔が少なくとも係合凹部の深さの合計長さ離間可能な水密嵌合構造を備えている請求項1に記載の管継手の接続構造。
【請求項3】
クリップ部材が、係合凹部に係合した第1フランジ部と第2フランジ部との隙間にその一部が挿入されて、第1フランジ部と第2フランジ部の間隔を係合維持状態に保持するスペーサの挿通孔を周壁に備えている請求項1または請求項2に記載の管継手の接続構造。
【請求項4】
スペーサが、挿し口より嵌合口側で、クリップ部材に設けられた一方の挿通孔から他方挿通孔に跨って装着される請求項3に記載の管継手の接続構造。
【請求項5】
第1フランジ部及び第2フランジ部がそれぞれ係合凹部に嵌り込んだ状態で第1フランジ部と第2フランジ部との間隔が1mm以上である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の管継手の接続構造。
【請求項6】
挿し口にOリングが外嵌されていて、挿し口の第1フランジ部側の端からOリングまでの長さが10mm以下である求項1〜請求項5のいずれかに記載の管継手の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−255490(P2012−255490A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128964(P2011−128964)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】