説明

管腔トラバース用具

【課題】多数の普通の内視鏡は、消化管での管腔内操作中、進入のスピード、牽引、管腔の裂傷など、固有の問題を有している。従って、管状臓器のトラバース用の方法および用具を改良することが求められている。
【解決手段】消化管などの管腔をトラバースするために各種の例示的方法および用具が提供される。本用具は、遠位配置管状要素および近位配置制御要素を有する細長い本体を含むことができる。管状要素は、管状要素の移動が、本用具が管腔内で駆動されることができるように、選択的に、かつ独立して放射状に拡張および収縮し、縦方向に移動するように構成される。さらに、管状要素は、滑りを軽減する牽引面を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の背景〕
様々な医療用具が、手術、診断および/または送達目的で、管状の身体器官の管腔を通される。例えば、内視鏡は、胃腸(GI)管などの体内腔のある部位の視覚的検査および/または治療の促進に使用される器具である。内視鏡の使用を伴う処置中、当該器具は、管腔内を慎重に操縦され、所望部位に進入し、身体器官の管腔内壁の穿孔を回避しなければならない。
【0002】
しかし、多数の従来の内視鏡は、胃腸管での管腔内操作中、固有の進入問題を有している。内視鏡は、進入が制限される。それは、管腔の長さが増加するにつれ、GI管の屈曲部周囲で柔軟な内視鏡を押すことが次第に困難になるからである。バルーンを用いた腸クローラーなどの他の用具は、腸内壁でのスピードおよび牽引に問題があるために、その使用の成功に限界がある。即ち、胃腸管の裂傷および管腔径の変動を回避するニーズを考慮すると、腸壁を使用して、当該用具を押し/引っ張ることは困難であると分かる。
【0003】
従って、管状の身体器官のトラバース用の方法および用具を改良することが求められている。
【0004】
〔発明の概要〕
本明細書で述べられるのは、身体管腔などの管腔をトラバース(横行)するための方法および用具である。従来の用具と異なり、本明細書で述べる実施態様は、本用具を管腔内で駆動するために、独立して拡張可能および移動可能な管状要素を使用する。少なくとも1件の実施態様では、管状要素は、滑りを軽減するように構成される。例えば、当該管状要素は、管腔壁の把握を容易にする牽引面を含むことができる。
【0005】
ある実施態様では、本用具は、縦軸に沿って近位端から遠位端まで延びている細長い本体を含む。遠位端は、第一および第二管状要素を含むことができ、各管状要素は独立して放射状に拡張するように構成されている。管状要素は、放射状拡張に加えて、互いに対して移動することができる。当該管状要素を連続的に拡張(および収縮)させ、当該管状要素を互いに対して移動させることによって、本用具は、管腔内を駆動されることができる。
【0006】
ある態様では、管状要素が放射状に拡張し、管腔壁に接触すると、当該エレメントは、管腔に裂傷を与えることなく管腔内面を把握する能力を有する。例えば、管状要素は、滑りを軽減する助けになる牽引面を含むことができる。ある実施態様では、管状要素は、ざらざらした、または多孔質のコーティングを含み、これが牽引面を提供する。
【0007】
別法として、または、追加的に、管状要素の少なくとも1個は、牽引面を提供するメッシュ材から形成される。メッシュの管状要素の縦の収縮(例、長さの短縮)は、当該管状要素を放射状に拡張させ、管状要素の縦の拡張は、当該管状要素を放射状に収縮させる。
【0008】
本用具の遠位部分は、第一管状要素とかみ合わされた第一近位および第一遠位本体部材、ならびに、第二管状要素とかみ合わされた第二近位および第二遠位本体部材を含むことができる。第一管状要素を放射状に拡張させるために、第一近位本体部材および第一遠位本体部材を結合し、第一管状要素の長さを短縮することができる。同様に、第二管状要素を拡張させるために、第二近位本体部材と第二遠位本体部材を結合し、第二管状要素の長さを短縮することができる。プロセスを逆にするには、近位および遠位本体部材が離され、管状要素を延長する。
【0009】
別の態様では、本用具は、管状要素の拡張および収縮を制御するように構成された第一および第二制御要素を含む。例えば、近位に位置する制御要素は、外科医による、遠位に位置する管状要素の拡張および収縮の遠隔操作を可能にする。さらに、当該制御要素は、互いに対して管状要素を動かすように構成することができる。例えば、制御要素の一方を、他方の制御要素に対して移動させると、管状要素の一方を他方の管状要素に対して移動させることができる。
【0010】
別の実施態様では、管腔トラバース用具が開示されている。本用具は、細長い本体部材上に可動的に配置され、選択的に、および、独立して縦の移動が可能な少なくとも2個の管状要素を含む。各管状要素は、選択的に制御可能な長さを有することができる。例えば、各管状要素は、延長された長さと収縮された直径の第一構造と、縮小した長さと拡張した直径の第二構造を有することができる。ある実施態様では、管状要素は、メッシュ材から形成される。
【0011】
なおも別の実施態様では、管腔をトラバースする方法が開示されている。本方法は、近位端から遠位端まで延びている細長い本体を有し、近位および遠位メッシュ管状要素を含む管腔トラバース用具を提供する段階を含むことができる。ある態様では、本用具は、身体の管腔内部に挿入され、近位管状要素が拡張し、それによって、拡張した第一管状要素の外面が身体管腔の内面に接して位置する。管状要素の拡張に伴って、遠位管状要素が、近位管状要素に対して遠位に移動される。その後、拡張した遠位管状要素外面が、管腔内面に接して位置するように、当該遠位管状要素が拡張される。遠位管状要素の拡張とともに、近位管状要素が収縮され、遠位管状要素の方向に遠位に移動される。
【0012】
ある態様では、管腔トラバース用具は、近位および遠位管状要素を独立してコントロールするための第一および第二近位位置制御要素を含む。例えば、第一ハンドルが作動され、近位管状要素を拡張させることができ、第二ハンドルが作動され、遠位管状要素を拡張させることができる。さらに、近位管状要素および/または遠位管状要素を遠位に移動させる段階は、第一ハンドルおよび/または第二ハンドルを遠位に動かすことによって実施されることができる。
【0013】
添付の図面、以下の図面の詳細な説明および好ましい実施態様から、本発明のさらなる特徴、性質および各種長所が、さらに明らかになる。
【0014】
添付の図面とともに、以下の詳細な説明から、本発明はさらに十分に理解されることができる。
【0015】
〔発明の詳細な説明〕
ここで、本明細書に開示する本用具および方法の構造、機能、製造および使用の原理の十分な理解を提供するために、特定の典型的実施態様が説明される。これらの実施態様の1件以上の例が、添付の図面に示されている。本明細書に具体的に説明され、添付の図面に示された用具および方法は、無制約の典型的実施態様であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ規定されることが、当業者は理解するであろう。ある典型的実施態様と関連して示され、説明される特徴は、他の実施態様の特徴と組み合わされることができる。このような変更および変形物は、本発明の範囲内に含まれることを意図されている。
【0016】
本発明は、一般に、GI(胃腸)管などの管状の身体器官の管腔をトラバースする方法および用具を提供する。ある典型的実施態様では、本方法および用具は、管状要素を利用し、管腔内で当該用具を移動させる。当該管状要素は、管腔壁を掴み、管腔壁を押し/反対方向に引き、本用具を駆動する、および/または、管腔壁に対して所定の位置に本用具を保持することができる。当業者は、本明細書に開示の方法および用具が様々な構造を有することができ、それらを様々な治療での使用に適合させることができる、と認めるであろう。例えば、本方法および用具は、管状の身体器官の管腔内壁の検査などの診断目的で、インプラント、ツール、空気、水、光、エネルギー、医薬品、放射線不透過性物質などを送達する送達手段として、および/または、遠隔部位での内視鏡手術を実施するために使用されることができる。本発明は、主として、GI管に関して本明細書で説明されているが、本発明の用具が、身体の他の管腔への進入に使用されることができる、と当業者は認めるであろう。
【0017】
図1は、近位端14から遠位端16まで縦軸Lに沿って延びている細長い本体12を含む用具10のある典型的実施態様を示す。ある態様では、用具10の遠位端14は、管腔内の当該用具の挿入および移動を促進する円錐形を有することができる遠位の先端17を含む。さらに、または別法として、遠位の先端17は、治療区域までの送達のために、医療用具および/またはインプラントとかみ合うように構成することができる。遠位の先端17は、例えば胃腸用インプラントおよび手術用具の送達を含めて、用具10の使用目的に応じて、様々な形およびサイズを有することができることを当業者は理解するであろう。
【0018】
用具10は、少なくとも2個の、選択的に、また、独立して拡張可能および収縮可能な管状要素18a、18bを含むことができ、これら管状要素は、時には、本明細書で「バルーン」と称される。ある態様では、管状要素18a、18bは、本体12の遠位端14に配置され、近位に配置された制御要素20a、20bで作動されることができる。当該制御要素の操作は、下記のとおり、軸Lに沿った管状要素18a、18bの相対的移動を引き起こすことができる。さらに、制御要素20a、20bは、管状要素18a、18bの選択的拡張および収縮を容易にする。管状要素18a、18bの協調した遠位移動、ならびに放射状拡張および放射状収縮は、体内管腔の遠隔部分まで前記用具10が有効かつ好都合に進むことを可能にする。
【0019】
管状要素18a、18bは、様々な材料から形成されることができ、当該材料は、管状である場合、管状部材の長さが減少すると、放射状に拡張でき、管状部材の長さが増加すると、放射状に収縮できる。典型的な材料は、メッシュ織(woven mesh)の形態にある生体適合性ポリマー、金属、合金を含むことができる。典型的材料は、ナイロン繊維、ニッケル-チタン形状記憶合金(「ニチノール(Nitinol)」)ワイヤー、ステンレススチールワイヤー(例、300シリーズまたは400シリーズ)およびそれらの組み合わせから形成されるメッシュ織布(woven mesh fabric)を含む。
【0020】
ある態様では、管状要素18a、18bが形成される材料は、当該管状要素が管腔内壁を掴む助けになる。例えば、当該材料は、当該管状要素が管腔壁に対してその位置を保持できるように、拡張状態の当該管状要素に牽引力を提供できる。ある実施態様では、バルーンは、摩擦強化処理または表面特徴点22を含み、バルーンが管腔壁を掴む助けになることができる。管腔壁が解剖学的表面である場合、牽引面22は、好ましくは、管腔壁に裂傷を与えることなく、当該牽引面が当該壁を掴むように構成される。例えば、牽引面22は、バルーン18a、18b表面上に配置される多孔質または粗コーティングまたはオーバーレイヤーであることができる。様々な材料が把握表面(gripping surface)を提供できることを、当業者は認めるであろう。
【0021】
別法として、牽引面22は、管状部材自体の外面によって提供されることができる。例えば、バルーン18aおよび/または18bは、図2に示されるように、メッシュ織物(woven mesh material)から形成されることができる。バルーン18a、18bの表面は、管腔壁に押し付けられると、滑らかな表面を有する従来の用具よりも良好な保持を提供できる。網織構造は、当該バルーンが管腔を裂傷を与えることなく、適切に管腔を掴むことができるように、粗および/または多孔質表面を有し、これが牽引面22を提供する。さらに、メッシュ材は、当該メッシュが拡張されると拡張し、かつ/または当該メッシュが収縮されると収縮する細孔または開口23を提供できる。管状要素が管腔内壁に押し付けられる拡張状態では、開口23は、把握を容易にすることができる。逆に、当該バルーンが収縮されると、収縮(または閉鎖)開口23は、より簡単に管腔を通過できる。
【0022】
「メッシュ」という用語は、編み上げられた、織られた、および、クモの巣様の材料を含む多孔質表面を有する様々な材料を示すために使用されることを、当業者は認めるであろう。さらに、「メッシュ」は、多数の開口を有するシートから形成される材料を含むことができる。ある態様では、メッシュバルーンは、柔軟な、または、拡張可能なワイヤーから織られている。そのようなメッシュは、所望のメッシュ密度および当該メッシュが形成される材料に応じて、様々なパターンに織られることができる。例えば、当該メッシュは、本用具の縦軸Lに対して、ある角度で位置するメッシュワイヤーで、アンダー/オーバーパターンに織ることができる。当該ワイヤーは、異なる材料からできている個別のストランドで形成することができ、および/または、異なる組成のワイヤーが使用されることができる、と当業者は認めるであろう。
【0023】
管状要素の構造に関係なく、当該管状要素は、好ましくは、所望の用途に従ったサイズおよび形にされる。例えば、管状要素は、その放射状収縮状態では、本体12とともに、管腔進入に使用される身体内の開口部に入って通り抜けるサイズにされる必要がある。好ましくは、身体内の開口部は、自然の開口部である。本用具は、身体開口部に入って通り抜けるサイズにされている上に、放射状の収縮状態のバルーンを含めて、本用具がトラバースを予定されている管腔最狭部に入って通り抜ける適合するサイズでもなければならない。さらに、管状要素は、本用具が通過する管腔壁の最広部に接触できるように放射状拡張状態の寸法を有する必要がある。
【0024】
ある実施態様の管状要素18a、18bは、一般に、近位端30a、31aから遠位端30b、31bまで延びた細長い、または、管状の形を有する。管状要素18a、18bの放射状拡張は、近位端30a、31aと遠位端30b、31bをともに移動させることによって達成される。両端が接合されると、バルーンの長さは減少し、バルーン18a、18bの中間部33a、33bは、放射状に拡張する。逆に、近位端30a、31aと遠位端30b、31bを離すと、バルーンの長さを増加させ、それによって、当該バルーンの直径を収縮させる。
【0025】
ある実施態様では、管状要素18a、18bの拡張および収縮は、本体部材26a、26b、28a、28bの相対的移動によって達成されることができる。図3は、本体部材26a、26b、28a、28bにかみ合わされたバルーン18a、18bを伴う用具10の遠位部分のある実施態様を示す。特に、バルーン18aは、端部30a、30bで、それぞれ、第一近位および第一遠位本体部材26a、26bにかみ合わされ、バルーン18bは、端部31a、31bで、それぞれ、第二近位および第二遠位本体部材28a、28bにかみ合わされる。近位制御要素20a、20bの作動は、互いに対して近位および遠位本体部材を移動させ、当該バルーンの長さを減少させることができ(即ち、近位本体部材26a、28aおよび遠位本体部材26b、28bを接合させることによる)、それによって、バルーンを放射状に拡張させる。逆に、バルーンの長さを増加させる当該制御要素の作動(即ち、近位本体部材26a、28aおよび遠位本体部材26b、28bを離すことによる)は、バルーン18a、18bの直径を収縮させる。制御要素20a、20bの作動は、バルーン18a、18bの収縮および拡張をコントロールする上に、本体部材26a、26b、28a、28bが、縦軸Lに沿って、独立して、互いに対してバルーン18a、18bを移動させることを可能にする。例えば、第一本体部材26a、26bおよび第二本体部材28a、28bは、互いに対して縦方向に移動されることができる。
【0026】
管状要素18a、18bは、様々な固定技術によって、本体部材26a、26b、28a、28bとかみ合わされることができる。例えば、図3に示されるように、管状要素18a、18bは、本体部材の外面32と保持バンド34の間に固定されることができる。管状要素18a、18bが、様々な他の代替または追加固定法によって本体部材26a、26b、28a、28bに固定されることができる、と当業者は認めるであろう。例えば、前記バルーンは、本体12に接着、溶接、付着および/または摩擦嵌めによってかみ合わされることができる。
【0027】
ある実施態様では、制御要素20a、20bから本体部材26a、26b、28a、28bまで延びる作動ロッド40は、本体部材26a、26b、28a、28bを移動させ、バルーン18a、18bの選択的拡張、収縮および縦の移動をコントロールするために使用されることができる。図3に示されるある実施態様では、複数のロッドが使用される。例えば、ロッド40bは、第二遠位本体部材28bまで延びることができ、一方、ロッド40aは、第二近位本体部材28aまで延びることができる。ロッド40a、40bは、当該ロッド40a、40bの移動が本体部材の対応する移動をもたらすように、第二本体部材28a、28bとかみ合わされることができる。さらに、ロッド40a、40bは、バルーン18aに対してバルーン18bを移動させるために、ともに移動されることができる。同様に、バルーン18aに関して、本体部材26a、26bは、2個の追加ロッド(図示されず)とかみ合うことができ、バルーン18aのコントロールを可能にする。当該ロッドは、バルーン18aの放射状拡張、ならびに、18bに対するバルーン18aの相対的移動をコントロールできる。例えば、当該ロッドは、バルーン18aをバルーン18bに対して近位および遠位に移動させることができる。
【0028】
管状要素18a、18bおよび本体部材26a、26b、28a、28bの拡張および収縮がロッドに対して記述されているが、バルーンが、様々な代替法でコントロール可能であることを、当業者は認めるであろう。例えば、様々な他の機械的作動要素が使用され、各管状要素の長さ、よって、各管状要素の拡張/収縮、および独立した縦方向の移動を選択的にコントロール可能である、と当業者は認めるであろう。
【0029】
ある実施態様における管状要素18a、18bと制御要素20a、20bの間の用具10の本体12は、上記のように、ロッドによって画定されることができる。別の実施態様では、本体12は、内部の管腔(図示されず)を画定する保護外殻を含み、ロッド40a、40bが、当該保護外殻に配置されることができる。外殻は、当該外殻中に各種部品を含有するように構成されることもでき、および/または、ツールおよび/または治療薬の送達用に構成されることができる。ある典型例では、本体12は、用具10の近位部分14から遠位部分16までの、インプラント、ツールおよび/または治療媒介物の送達用通路を含むことができる。
【0030】
細長い本体12(例、ロッド40および/または外殻)は、柔軟性および/または変形性を提供する材料を含めた様々な材料から形成されることができる。特定の典型的実施態様では、細長い本体12は、金属、合金、生体適合性ポリマーまたはそれらの組み合わせから形成される。例えば、当該ロッドは、ポリマーオーバーチューブ(例、ポリエチレン、ポリプロピレンおよび/またはナイロン)に覆われた編組ステンレススチールから形成されることができる。当該ロッドは、ニチノール(Nitinol)またはバネ鋼などの固体の柔軟性材料製であることもできる。当業者は、本体12形成に使用される材料が、用具の使用目的および解剖学的特徴点周辺で操作するための用具への需要に基づいて選択されることができる、と認めるであろう。
【0031】
細長い本体12の近位部分は、管状要素の拡張/収縮および/または相対的移動を制御する機構まで延びることができる。図4は、用具10の近位端の、ある実施態様の部分断面図を示し、ユーザーが近位および遠位管状要素18a、18b(図4に図示されず)の移動をコントロールできる第一および第二制御要素20a、20bを含む。各制御要素20a、20bは、管状要素18a、18bの一方をコントロールできる。
【0032】
ある態様では、制御要素20a、20bは、それぞれが、互いに対して移動し、管状要素18a、18bの直径をコントロールする近位および遠位制御部材を含む。図4に示されるように、制御要素部材48a、48b、50a、50bは、ロッド40a、40b、40cとかみ合うことができる(明確にするために、3個のロッドのみが示されている)。作動ハンドル20bは、第二近位および遠位ハンドル部材50a、50bを互いに対して移動させ、ロッド40a、40bを互いに対して移動させる。ロッド40a、40bの移動は、上記のように、バルーン18bを拡張/収縮させる。同様に、作動ハンドル20aは、第二近位および遠位制御要素部材48a、48bを互いの方に移動させ(または互いから離し)、バルーン18aの直径を拡張させる(または収縮させる)。
【0033】
さらに、制御要素20a、20bの互いに対する移動は、管状要素18a、18bを互いに対して移動させることができる。例えば、制御要素20a、20bは、互いの方に移動し、および、互いから離れ、それによって、当該制御要素に伴うロッドを移動させることができる。当該ロッドは、バルーン18a、18bを制御要素20a、20bに連結するので、制御要素20a、20bの相対的移動は、管状要素18a、18bを互いに対して移動させる。例えば、制御要素20a、20bが互いに離れると、管状要素18a、18bを互いに対して離し、逆に、制御要素20a、20bが互いに近づくと、管状要素18a、18bを互いに近づける。
【0034】
図4に示されるように、制御要素20a、20bは、バルーンを拡張構造に偏らせるばね52、54を含むことができる。管状要素18a、18bが管腔内に配置され、制御要素20a、20bが作動されないと、ばね52、54は、管腔壁に対する拡張された管状要素の働きによって、管腔に対して所定の位置に用具10を保持する。ばねの力に対して制御要素20a、20bの一方または両方を強く握ると、管状要素18a、18bの一方または両方が管腔内を移動することができるように、管状要素を収縮させる。
【0035】
図5は、管状要素18a'、18b'に連結された制御要素20a'、20b'を含む用具10'の代替実施態様を示す。各制御要素20a'、20b'は、第一および第二レバーアーム70a、70b、71a、71bを含む。当該レバーアームをともにまたは別々に移動させると、ロッド40をコントロールし、よって、管状要素18a'、18b'をコントロールする。当業者は、管状要素18a、18bの使用目的および構造に応じて、用具10で様々な代替制御要素が使用されることができる、と認めるであろう。
【0036】
図6〜10は、身体管腔(図示されず)内を用具10の少なくとも一部(例、遠位部分)を移動させる方法の、ある実施態様を示す。手術のための患者の準備後、本用具が患者の肛門などの身体開口部から患者の体内に挿入される。次に、図6に示されるように、近位バルーン18aが放射状に拡張し、管腔内面に接触するように、当該バルーンの長さが減少される。その後、図7に示されるように、長く伸ばされ、直径が収縮された状態の遠位バルーン18bが管腔内を遠位に移動し、その間、拡張した近位バルーン18aは、管腔壁に対して所定の位置に本用具を固定する。上記のように、バルーン18aの表面22は、本用具の滑りを防止/軽減する助けになる。図8に示されるように、いったんバルーン18bが所望の位置に移動されると、バルーン18bの長さが減少し、当該バルーンを拡張させ、管腔壁に接触させ、その位置を保持する。その後、近位バルーン18aの長さは減少し、近位バルーンを収縮させ、次に、バルーン18aは、図9および図10に示されるように、バルーン18bの方に遠位に移動し、一方、拡張したバルーン18bは管腔内に用具10を保持する。この手順が繰り返され、本用具を管腔内の所望の位置に進める。
【0037】
当業者は、各種図が、2個の管状要素18a、18bを有する用具10を説明し、図解しているが、用具10は、本用具の管腔内移動を容易にするために、任意の個数の管状要素を含むことができる、と認めるようになる。
【0038】
特定の典型的実施態様では、用具10は、GI管の検査および/または治療に使用されることができる。用具10のサイズは、比較的小型であることが可能で、管状要素18a、18bは、直径を選択的に縮小されることが可能であるので、本用具は、標準的な内視鏡および他の管腔内用具よりも深く挿入されることができる。上部GI管に対しては、本用具は、患者の口から挿入されることができ、下部GI管に対しては、本用具は、患者の肛門から挿入されることができる。いずれにせよ、用具10は、好ましくは、本用具がGI管の管壁をかみ合わせ、GI管を移動することを可能にするサイズを有する。典型的には、GI管の最大直径は、下部GI管でほぼ30mm、上部GI管でほぼ16mmである。従って、特定の典型的実施態様では、管状要素18a、18bは、非拡張状態のほぼ16mmから拡張状態のほぼ33mmまでの範囲である直径を有することができる。当然、形とサイズは、使用目的に応じて、異なることができる。
【0039】
当業者は、上記の実施態様に基づいて、本発明のさらなる特徴および長所を認めるであろう。従って、本発明は、添付された請求の範囲に規定される場合を除いて、特に示された、および、説明された事項に制約されるものではない。本明細書で引用された全出版物および文献は、参照することによって、そのまま本明細書に明示的に組み入れられている。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) 体内管腔をトラバースする用具において、
縦軸に沿って近位端から遠位端まで延びている細長い本体、
を含み、
前記遠位端が、第一メッシュ管状要素、および第二メッシュ管状要素を含み、
各管状要素が、第一端部、および第二端部を有し、前記管状要素はそれぞれ、選択的に、かつ独立して放射状に拡張および収縮するように構成されており、
前記管状要素が、互いに対して移動するように構成されている、
用具。
(2) 実施態様1に記載の用具において、
前記用具は、管腔内面を掴むことによって前記管腔をトラバースするように構成されている、用具。
(3) 実施態様1に記載の用具において、
前記管状要素の縦方向の移動、拡張、および収縮をコントロールするのに有効な第一制御要素、および第二制御要素、
をさらに含む、用具。
(4) 実施態様3に記載の用具において、
前記第二制御要素に対する前記第一制御要素の移動が、前記第二管状要素に対する前記第一管状要素の移動をもたらす、用具。
(5) 実施態様3に記載の用具において、
前記第一制御要素に対する前記第二制御要素の移動が、前記第一管状要素に対する前記第二管状要素の移動をもたらす、用具。
(6) 実施態様1に記載の用具において、
前記本体が、前記第一管状要素とかみ合わされた第一近位本体部材、および第一遠位本体部材、ならびに前記第二管状要素とかみ合わされた第二近位本体部材、および第二遠位本体部材を含む、用具。
(7) 実施態様6に記載の用具において、
前記第一遠位本体部材方向への前記第一近位本体部材の移動が、前記第一管状要素の放射状拡張をもたらすと同時に、前記第一管状要素の長さを減少させる、用具。
(8) 実施態様6に記載の用具において、
前記第二遠位本体部材方向への前記第二近位本体部材の移動が、前記第一管状要素の放射状拡張をもたらすと同時に、前記第一管状要素の長さを減少させる、用具。
(9) 実施態様1に記載の用具において、
前記第一管状要素、および前記第二管状要素が、メッシュ織物(woven mesh material)で作られている、用具。
【0041】
(10) 身体管腔をトラバースする用具において、
細長い本体部材上に可動的に配置され、選択的に、かつ独立して縦方向の移動が可能な少なくとも2個の管状要素、
を含み、
各管状要素が、選択的にコントロール可能な長さを有し、
各管状要素が、延長された長さおよび収縮された直径を有する第一構造、ならびに縮小された長さおよび拡張された直径を有する第二構造を有する、
用具。
(11) 実施態様10に記載の用具において、
前記管状要素がメッシュ織物で形成されている、用具。
(12) 実施態様10に記載の用具において、
前記バルーンが牽引面を含む、用具。
(13) 実施態様10に記載の用具において、
前記本体の近位端に、前記第一管状要素および前記第二管状要素の縦方向の移動をコントロールするのに有効な、制御機構、
をさらに含む、用具。
(14) 実施態様13に記載の用具において、
前記本体の近位端に、前記第一構造および前記第二構造における前記第一管状要素の配置をコントロールするのに有効な、制御機構、
をさらに含む、用具。
(15) 実施態様13に記載の用具において、
前記本体の近位端に、前記第一構造および前記第二構造における前記第二管状要素の配置をコントロールするのに有効な、制御機構、
をさらに含む、用具。
(16) 実施態様14に記載の用具において、
前記制御機構が、前記第一構造および前記第二構造における前記第一管状要素の縦方向の移動および前記第一管状要素の配置をコントロールするのに有効な、第一制御要素である、用具。
(17) 実施態様15に記載の用具において、
前記制御装置が、前記第一構造および前記第二構造における前記第二管状要素の縦方向の移動および前記第二管状要素の配置をコントロールするのに有効な、第二制御要素である、用具。
【0042】
(18) 身体の内部管腔をトラバースする方法において、
a.近位端から遠位端まで延びている細長い本体を有し、かつ遠位メッシュ管状要素および近位メッシュ管状要素を含む、管腔トラバース用具を挿入する段階と、
b.拡張された前記近位管状要素の外面が前記管腔の内面に係合(engage)するように、前記近位管状要素を放射状に拡張させる段階と、
c.前記近位管状要素に対して遠位に前記遠位管状要素を移動させる段階と、
d.拡張された前記遠位管状要素の外面が前記管腔の前記内面に係合(engage)するように、前記遠位管状要素を放射状に拡張させる段階と、
e.前記近位管状要素を放射状に収縮させ、前記遠位管状要素に向かって遠位に前記近位管状要素を移動させる段階と、
f.前記用具が前記管腔内の所望の部位に到達するまでb〜eの段階を繰り返す段階と、
を含む、方法。
(19) 実施態様18に記載の方法において、
前記用具が、手術および/または診断処置での使用に有効な医療用具を含む、方法。
(20) 実施態様18に記載の方法において、
開口(opening)が身体の自然の開口部(orifice)である、方法。
(21) 実施態様19に記載の方法において、
前記医療用具が内視鏡である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本明細書で説明される管腔トラバース用具のある実施態様の斜視図である。
【図2】図2は、本明細書で説明される、メッシュ材で形成された管状要素を有する用具の部分斜視図である。
【図3】図3は、本明細書で説明される用具のある実施態様の遠位部分の断面図である。
【図4】図4は、本明細書で説明される用具のある実施態様の近位部分の断面図である。
【図5】図5は、本明細書で説明される用具の別の実施態様の斜視図である。
【図6】図6は、拡張状態にある近位管状要素を有する、本明細書で説明される用具のある実施態様の斜視図である。
【図7】図7は、遠位に移動された遠位管状要素を有する、図6の用具の斜視図である。
【図8】図8は、拡張状態にある近位および遠位管状要素を有する、図7の用具の斜視図である。
【図9】図9は、収縮状態にある近位管状要素を有する、図8の用具の斜視図である。
【図10】図10は、近位管状要素を遠位に移動された、図9の用具の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内管腔をトラバースする用具において、
縦軸に沿って近位端から遠位端まで延びている細長い本体、
を含み、
前記遠位端が、第一メッシュ管状要素、および第二メッシュ管状要素を含み、
各管状要素が、第一端部、および第二端部を有し、前記管状要素はそれぞれ、選択的に、かつ独立して放射状に拡張および収縮するように構成されており、
前記管状要素が、互いに対して移動するように構成されている、
用具。
【請求項2】
請求項1に記載の用具において、
前記用具は、管腔内面を掴むことによって前記管腔をトラバースするように構成されている、用具。
【請求項3】
請求項1に記載の用具において、
前記管状要素の縦方向の移動、拡張、および収縮をコントロールするのに有効な第一制御要素、および第二制御要素、
をさらに含む、用具。
【請求項4】
請求項3に記載の用具において、
前記第二制御要素に対する前記第一制御要素の移動が、前記第二管状要素に対する前記第一管状要素の移動をもたらす、用具。
【請求項5】
請求項3に記載の用具において、
前記第一制御要素に対する前記第二制御要素の移動が、前記第一管状要素に対する前記第二管状要素の移動をもたらす、用具。
【請求項6】
請求項1に記載の用具であって、
前記本体が、前記第一管状要素とかみ合わされた第一近位本体部材、および第一遠位本体部材、ならびに前記第二管状要素とかみ合わされた第二近位本体部材、および第二遠位本体部材を含む、用具。
【請求項7】
請求項6に記載の用具において、
前記第一遠位本体部材方向への前記第一近位本体部材の移動が、前記第一管状要素の放射状拡張をもたらすと同時に、前記第一管状要素の長さを減少させる、用具。
【請求項8】
請求項6に記載の用具において、
前記第二遠位本体部材方向への前記第二近位本体部材の移動が、前記第一管状要素の放射状拡張をもたらすと同時に、前記第一管状要素の長さを減少させる、用具。
【請求項9】
請求項1に記載の用具であって、
前記第一管状要素、および前記第二管状要素が、メッシュ織物で作られている、用具。
【請求項10】
身体管腔をトラバースする用具において、
細長い本体部材上に可動的に配置され、選択的に、かつ独立して縦方向の移動が可能な少なくとも2個の管状要素、
を含み、
各管状要素が、選択的にコントロール可能な長さを有し、
各管状要素が、延長された長さおよび収縮された直径を有する第一構造、ならびに縮小された長さおよび拡張された直径を有する第二構造を有する、
用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−144153(P2007−144153A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−299340(P2006−299340)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(595057890)エシコン・エンド−サージェリィ・インコーポレイテッド (743)
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Endo−Surgery,Inc.
【Fターム(参考)】