説明

管路のエア抜き用気液分離部材

【課題】
水道管等の管路に設置されるエア抜き装置に係り、管路に設けられたエア集積部に装着することにより、水等の液体透過を阻止するとともにエア等の気体のみを抜き出す管路のエア抜き用気液分離部材を提供する。
【解決手段】
気液分離膜を、撥水性を有するフッ素系樹脂膜等にクレーズを生成してなる気体透過膜にて構成することにより、気液分離膜の膜面に発生する水滴の着漂が防止される。水滴の着漂は、気液分離膜の気体透過性を著しく低下させるのみならず、厳冬期においては凍結の要因となり、エアを抜く機能が損なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管等の管路に設置されるエア抜き装置に係り、さらに詳しくは管路に設けられたエア集積部に装着することにより、水等の液体透過を阻止するとともにエア等の気体のみを抜き出す管路のエア抜き用気液分離部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道管等の管路に発生する泡溜まり等の気体の集積は、配水の流量を低下させる要因となることから、管路にフロート弁機構を利用した空気抜き装置を配置して適宜空気を抜きとる方法が、実公平4−5819号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平4−5819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した空気抜き装置にあっては、機構が複雑なことから清掃等のメンテナンスに適応したものとなっておらず、また製造コストの高さが製造上解決しなければならない問題点となっている。
【0005】
本発明は、前記問題点を解決すべく新規な管路のエア抜き装置を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、撥水性を有する気液分離膜と、通気性とともに管路内に発生する加圧もしくは負圧に変形することのない硬度を有する多孔質体とを重ね合わせてなる気体透過材であり、該撥水性を有する気液分離膜が、撥水性を有するフッ素系樹脂膜等にクレーズを生成してなる気体透過膜にて構成されることを特徴とする管路のエア抜き用気液分離部材である。
【0007】
気体透過膜として、樹脂膜にクレーズを生成してなる通気性樹脂膜を採用することにより気体と液体との分離が確実になされ、樹脂膜の素材として撥水性を有するフッ素系樹脂を選定することにより、膜面に発生する水滴の着漂が回避される。
【0008】
気体透過膜の膜面に発生する水滴の着漂は、透過膜の気体透過性を著しく低下させるのみならず、厳冬期においては凍結の要因となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、撥水性を有する気液分離膜を、撥水性を有するフッ素系樹脂の一つであるポリテトラフルオロエチレン樹脂膜にクレーズを生成してなる気体透過膜にて構成し、通気性とともに管路内に発生する加圧もしくは負圧に変形することのない硬度を有する多孔質体をポリプロピレンからなる通気性不織布で構成したことを特徴とする請求項1に記載の管路のエア抜き用気液分離部材である。
【0010】
気液分離膜の素材としてポリテトラフルオロエチレンを選定するとともに、通気性を有する多孔質体としてポリプロピレンからなる通気性不織布を採用することにより、200℃をもってなされる双方素材間の溶着もしくは粘着が、用途に適した溶着度でなされる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、撥水性を有する気液分離膜を、少なくとも一つの面に撥水処理を施した樹脂膜にクレーズを生成してなる気体透過膜にて構成したことを特徴とする請求項1に記載の管路のエア抜き用気液分離部材である。撥水性をもたない樹脂膜であっても、予め少なくとも一つの面に撥水処理を施すことにより使用に対応する程度の撥水性樹脂膜を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の管路のエア抜き用気液分離部材は、気体と液体とを分ける気液分離膜を、撥水性を有するフッ素系樹脂膜等にクレーズを生成してなる気体透過膜にて構成することにより、空気等の気体透過を許容する一方、水等の液体透過を阻止し得えたものである。気体透過膜が撥水性を有していることにより、寒冷地における水道管などの凍結時にも、凍結の素因となり得る結露など、水滴の付着が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のエア抜き用気液分離部材であり、気液分離膜と多孔質体との重ね合わせを説明する概略図である。
【図2】本発明のエア抜き用気液分離部材であり、気液分離部材の構成を説明する概略図である。
【図3】本発明のエア抜き用気液分離部材と保護枠との構成を説明する概略図である。
【図4】本発明の一実施例を説明する概略図であり、管路に設けられたエア集積部に本発明のエア抜き用気液分離部材が二つ積層して装着されている。
【図5】本発明に用いられる気液分離膜が、通気性を発現することができる理由を説明するための説明図である。
【図6】本発明のエア抜き用気液分離部材であり、漏水を阻止する構造を示す概略説明図である。
【図7】クレーズ生成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の管路のエア抜き用気液分離部材を構成する気液分離膜2と多孔質体4との重ね合わせを説明する概略図であり、撥水性を有するフッ素系樹脂膜等にクレーズを生成してなる気液分離膜2(以下「クレーズ生成気液分離膜」と記載する)に、通気性とともに管路内に発生する加圧もしくは負圧に変形することのない硬度を有する多孔質体4(以下「通気性多孔質体」と記載する)が重ね合わされる。
【0016】
図2は、クレーズ生成気液分離膜2と通気性多孔質体4とを重ね合わせて一体化させることにより形成された管路のエア抜き用気液分離部材6を説明する概略図であり、クレーズ生成気液分離膜2に通気性多孔質体4が重ね合わされさらに、通気性多孔質体4の周縁部をクレーズ生成気液分離膜2の周面が立ち上がるように被覆した状態で溶着もしくは粘着される。
【0017】
図3は、本発明の管路のエア抜き用気液分離部材6と保護枠8との構成を説明する概略図であり、保護枠8内に管路のエア抜き用気液分離部材6が内包された状態で保護枠8の周面上端部を内側に湾曲させ、さらに気液分離部材6の上面周端部を前記湾曲部によって固着することにより端部からの漏水が防止され、カートリッジ形態の管路のエア抜き用気液分離部材となる。
【0018】
図4は、本発明の一実施例を説明する概略図であり、管路に設けられたエア集積部に本発明のエア抜き用気液分離部材が二つ積層して装着されている。
【0019】
図5は、本発明に用いられる気液分離膜が、通気性を発現することができる理由を説明するための説明図であり、クレーズは分子束(フィブリル)とミクロボイド(微細な連通孔)から構成されており、この部分で各種ガスの通気性が生じることになる。
【0020】
図6は、本発明のエア抜き用気液分離部材の実宵的な実施例であり、通気性を有する多孔質体4と撥水性を有する気液分離膜2とを図のような積層構造とすることにより漏水の防止が効果的におこなわれる。この場合水等の浸入を阻止する目的をもって周淵部が溶着及び粘着されるが、とくに漏水を阻止するほうほうが限定されることはない。
【0021】
[フッ素系樹脂]
本発明の管路のエア抜き用気液分離部材において撥水性を有する気液分離膜の素材として使用される代表的なフッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド(2フッ化)、ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化)等が挙げられる。
【0022】
これらのフッ素系樹脂は、耐熱性、耐圧性、耐候性、耐薬品性、電気絶縁性などに優れており、また、他の樹脂と比較して外的損傷にも耐え得ることから、本発明に用いる撥水性を有する気液分離膜の素材として適したものとなっている。
【0023】
フッ素系樹脂の中でも、耐熱性ポリマーとして周知のポリテトラフルオロエチレン(4フッ化)においては、350℃で10分間熱処理してもその組成が大きく劣化することなく、また、素材の優劣により差異は生じるが450℃で10分間の熱処理にも耐え得るものである。
【0024】
本発明の管路のエア抜き用気液分離部材において、撥水処理を施すことにより撥水性が発現される樹脂膜の素材として使用される樹脂としては、成形が可能な熱可塑性樹脂であれば特別に制限されるものではない。その様な熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ハロゲン含有熱可塑性樹脂、ニトリル樹脂等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、樹脂膜への成形性や経済性の観点から、ポリオレフィン、ポリエステル、スチレン系樹脂、ハロゲン含有熱可塑性樹脂を使用することが好ましく、中でもポリオレフィン、スチレン系樹脂、ハロゲン含有熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いても、複合して組成物として用いても、或いは、別の樹脂をブレンドしたりしても良く、更には二種以上の樹脂を多層化して用いても良い。また、クレーズの形成の容易さから、該熱可塑性樹脂のガラス転移温度が−45℃以上、好ましくは−30℃以上、特に好ましくは−15℃以上の樹脂を使用することが望ましい。組成物として使用するときや多層化して使用するときは、主な構成成分である熱可塑性樹脂のガラス転移温度が上記範囲内にあることが好ましい。これより低いガラス転移温度を示す熱可塑性樹脂の場合は、柔軟過ぎるためにクレーズの効率的な形成が難しい。
【0025】
[ポリオレフィン]
上記ポリオレフィンとしては、α−オレフィンの単独重合体又は他のα−オレフィン及び/又はα−オレフィンを主成分として、他のエチレン性不飽和単量体との共重合体である。ここで共重合体とはブロック、ランダム、グラフト等或いはこれらの複合物でも良い。該エチレン性不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、マレイン酸等の不飽和カルボン酸又は無水物等を挙げることができる。有用なポリオレフィンの具体例としては、低密度分岐ポリエチレン、高密度線状ポリエチレン、低密度線状ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等を挙げることができる。
【0026】
[ポリアミド]
ポリアミドとしては、芳香族又は/及び脂肪族アミド基を有する繰り返しユニットを必須成分として含む縮合生成物である。有用なポリアミドとしては、ナイロン−4、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−4,6、ナイロン−12、非晶性ナイロン等を挙げることができる。中でも、好ましいポリアミドは、ナイロン−6、ナイロン−6,6、非晶性ナイロンである。
【0027】
[ポリエステル]
ポリエステルとしては、例えば、その一つとして、通常の方法に従って、ジカルボン酸又はその低級アルキルエステル、酸ハライド若しくは酸無水物誘導体とグリコール又は二価フェノールとを縮合させて製造した熱可塑性ポリエステルを挙げることができる。これらポリエステルの中でも飽和ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートを使用することが好適である。
【0028】
[スチレン系樹脂]
スチレン系樹脂としては、ビニル芳香族化合物の重合体であり、該ビニル芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等を挙げることができ、スチレン系樹脂は、これらビニル芳香族化合物のホモポリマー及び共重合体である。これらの中でもポリスチレンが好ましく、更に、ゴムグラフトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体を用いることが好適である。
【0029】
[ポリカーボネート]
ポリカーボネートは、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族・芳香族ポリカーボネート等を挙げることができる。これらの中でも、2,2−ビス(4−オキシフェニル)アルカン系、ビス(4−オキシフェニル)エーテル系、ビス(4−オキシフェニル)スルフォン、スルフィド又はスルフォキサイド系のビスフェノール類からなる芳香族ポリカーボネートを用いることが好適である。
【0030】
[ハロゲン含有熱可塑性樹脂]
ハロゲン含有熱可塑性樹脂は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド等のホモ重合体及び共重合体を挙げることができる。この他にも、ビニリデンクロライドから導かれたホモ重合体及び共重合体を挙げることができる。これらの中でも好ましいハロゲン含有熱可塑性樹脂は、ポリ弗化ビニリデンのホモ重合体及びテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレンとの共重合体並びビニリデンクロライドを挙げることができる。
【0031】
[ニトリル樹脂]
ニトリル樹脂としては、α,β−オレフィン系不飽和モノニトリルを50重量%以上含むものである。これらの不飽和モノニトリルの中でも、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル及びそれらの混合物を使用することが好ましい。
【0032】
[クレーズの形状]
本発明の撥水性を有する気液分離膜には、縞状のクレーズ領域が設けられている。該縞状のクレーズは、基本的に、樹脂膜の分子配向の方向と略平行に、幅が一般に0.5〜100μm、好ましくは1〜50μmのものである。この縞状クレーズが、樹脂膜の厚み方向に貫通しているクレーズの数の割合が全クレーズの数に対して10%以上、好ましくは20%以上、特に好ましくは40%以上必要であり、貫通している割合が上記範囲未満であると十分な通気性が得られ難くなる。該クレーズを分子配向の方向と略平行の方向に形成するのは、分子鎖の配向の方法と直角の方向に引っ張ることによってクレーズが形成され、分子鎖の配向の方法と直角の方向にクレーズを形成することが難しいからである。ここで言うクレーズとは、樹脂膜の表面に現れる表面クレーズと内部に発生する内部クレーズを含むものであって、微細なひび状の模様を有する領域を言う。このクレーズは分子束(フィブリル)とミクロボイドから構成されており、この部分で各種ガスの通気性が生じることになる。
【0033】
[クレーズの量]
上記クレーズは高分子樹脂フィルムに形成されるクレーズは、一般に0.1〜1,000μm、好ましくは1〜800μmの間隔で形成され、縞状の領域として認識できる程度の量である。
【0034】
[気液分離膜の性能]
上記の様な気液分離膜は、用いる樹脂の種類により異なるが、例えばポリ弗化ビニリデンのホモ重合体を用いると、酸素及び窒素ガスのガス透過度で一般に0.3〜100,000×10cm/m・24hr・atmの範囲内のものに、透湿度で一般に10〜100,000×10g/m・24hrの範囲内のものに、透明性が一般に1〜99.5ヘイズ、好ましくは2〜90ヘイズ、特に好ましくは5〜80ヘイズの範囲内のものに、引張強度で一般に50〜500kg/cm、好ましくは60〜500kg/cm、特に好ましくは75〜500kg/cmの範囲内のものにすることができる。
【0035】
[気液分離膜の製造]
本発明に用いる気液分離膜を製造するには、上記樹脂膜を引っ張って緊張状態に保持し、この樹脂膜の表面に先端部が鋭角な支持体を該高分子樹脂フィルムの分子配向方向と略平行に当接して、該樹脂膜を局部的に折り曲げ、その折り曲げ角度が140度以下、好ましくは120度以下の変形域とし、該樹脂膜中にクレーズの帯を形成した後、該樹脂膜を順次相対的に徐々に移動させることにより、移動方向と略直角の方向に連続的な縞状のクレーズ領域を形成させるものである。上記気液分離膜を製造するのに用いられる樹脂膜は、前記複屈折率の範囲で表わされる配向度、並びに、ガラス転移温度が上記範囲の熱可塑性樹脂が使用される。また、樹脂膜を緊張状態に保持するよう1kg/cm以上の張力で引っ張って、その表面に先端部が鋭角な支持体を該樹脂膜分子配向方向と略平行に当接して、該樹脂膜を折り曲げ角度140度以下、好ましくは120度以下にて局部的に折り曲げる。そして、該樹脂膜中にクレーズの帯を形成した後、該樹脂膜を上記クレーズの縞の間隔で順次相対的に徐々に移動させることにより、縞状のクレーズ領域を形成させることができる。このときに、上記折り曲げ角度が大きいほど、又、引っ張り張力の大きいほど、全クレーズに対する樹脂膜の厚み方向に貫通しているクレーズの割合が多くなり、通気性の良好な気液分離膜が得られ易い。しかし、クレーズの幅が大きすぎると樹脂膜が破断し易くなる。
【0036】
[製造装置]
上記クレーズを形成させるための具体的な製造方法としては、例えば、図7に示す様な、先端部が鋭角な部分を有する支持体22と折り曲げ押圧部23と引張機(図示せず)からなる基本的な構成装置によって製造することができる。すなわち、緊張状態に保持された樹脂膜17の表面に、先端部22aが鋭角(50度以下がクレーズ生成の観点から好ましい)な支持体22を分子配向方向と略平行に当接して、該樹脂膜17を矢印αの方向に引っ張って局部的に折り曲げ、その折り曲げ角度θが140度以下、好ましくは120度以下、特に好ましくは110度以下となる様な屈曲変形域を形成して、該樹脂膜中にクレーズを形成した後、該樹脂膜17を矢印αの方向に相対的に徐々に移動させることにより巻き取って、移動方向と略直角の方向に連続的な縞状のクレーズ領域を形成させることができる。この折り曲げ角度θは基本的には制限はないが、クレーズの生成の容易さから、140度以下、好ましくは120度以下、特に好ましくは110度以下である。
【0037】
[通気性の機能]
本発明に用いる気液分離膜は、上記縞状のクレーズを有していることから、通気性、透湿性の機能を有している。その機構は、図5に示すように、縞状に形成されたクレーズ14が、樹脂膜の厚み方向を貫通することにより、酸素や窒素或いは水蒸気等の気体15がこのクレーズ帯域を拡散することにより通過して通気性が発現する。
【0038】
[通気性の調節]
上記本発明に用いる気液分離膜の通気性の程度は、樹脂膜中に形成されたクレーズの幅、クレーズ間の隔たり、クレーズの貫通された数の割合を変えることで調節することができる。具体的には、樹脂膜の分子配向の度合いやクレーズを形成させる時の温度、樹脂膜の緊張度(緊張状態における張力)、樹脂膜の折り曲げ角度等を調節することで、容易に通気性をコントロールすることができ、使用目的に応じた気液分離膜を提供することができる。例えば、クレーズを形成させる時の緊張度を増大させ、折り曲げ角度を小さくすると、生成するクレーズの間隔は小さくなり、クレーズの貫通された数の割合が増大し、その結果、通気性は増大する。この様なクレーズの幅、クレーズ間の隔たり、貫通されたクレーズの割合を変えることで調節された気液分離膜は、前記酸素及び窒素ガスのガス透過度、透湿度、透明性、引張強度等をコントロールすることができる。
【0039】
[通気性を有する多孔質体]
通気性とともに管路内に発生する加圧もしくは負圧に変形することのない硬度を有する多孔質体の有する機能の一つは、気液分離膜の形状を維持することにより気体透過機能の低下を防ぐことにあるが、使用用途に則して複数のエア抜き用気液分離部材を積層して配置することがあり、その際、積層された気液分離部材の間に緩衝気層域が該多孔質体により形成されることで保温層が形成されこれが、厳冬期における凍結の防止につながる。
【0040】
通気性を有する多孔質体としては、撥水性を有する気液分離膜を、撥水性を有するフッ素系樹脂の一つであるポリテトラフルオロエチレン樹脂膜にクレーズを生成してなる気体透過膜にて構成し、通気性とともに管路内に発生する加圧もしくは負圧に変形することのない硬度を有する多孔質体をポリプロピレンからなる通気性不織布で構成することにより、200℃をもってなされる双方素材間の溶着もしくは粘着が、用途に適した溶着度でなされるが、通気性を有する多孔質体において、その素材、構成、製造方法等を限定するものではない。
【実施例】
【0041】
本発明の管路のエア抜き用気液分離部材の一実施例を、図4に示して説明する。
【0042】
図4において、水道管等のエア集積部に設けられたエア抜き開放口に、本発明の管路のエア抜き用気液分離部材が二つ積層して装着されている。管路内に混入された気体の多くは、このエア集積部に留まるとともに徐々にエア抜き用気液分離部材を透過して大気中に放出される。
【0043】
また、本発明の管路のエア抜き用気液分離部材は、用いる気液分離膜が樹脂膜等にクレーズを生成してなる気体透過膜にて構成されており、管路内液体が気液分離膜を透過して外部に漏出されることはない。
【0044】
さらに、本発明の気液分離膜は、撥水性を有することから、気液分離膜の膜面に発生する水滴の着漂が防止される。水滴の着漂は、気液分離膜の気体透過性を著しく低下させるのみならず、厳冬期においては凍結の要因となり、エアを抜く機能が損なわれる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、気液分離膜をポリテトラフルオロエチレンにて構成することにより、高熱の蒸気をも徐々に大気中に放出する機能を有することから、高温の熱処理もしくは熱管理機器に耐用しうる。
【符号の説明】
【0046】
2 撥水性を有する気液分離膜
4 通気性を有する多孔質体
6 管路のエア抜き用気液分離部材
8 保護枠
10 カートリッジ
12 管体
14 クレーズ
15 気体
17 樹脂膜
22 支持体
22a 先端部
23 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性を有する気液分離膜と、通気性とともに管路内に発生する加圧もしくは負圧に変形することのない硬度を有する多孔質体とを重ね合わせてなる気体透過材であり、該撥水性を有する気液分離膜が、撥水性を有するフッ素系樹脂膜等にクレーズを生成してなる気体透過膜にて構成されることを特徴とする管路のエア抜き用気液分離部材。
【請求項2】
撥水性を有する気液分離膜を、撥水性を有するフッ素系樹脂の一つであるポリテトラフルオロエチレン樹脂膜にクレーズを生成してなる気体透過膜にて構成し、通気性とともに管路内に発生する加圧もしくは負圧に変形することのない硬度を有する多孔質体をポリプロピレンからなる通気性不織布で構成したことを特徴とする請求項1に記載の管路のエア抜き用気液分離部材。
【請求項3】
撥水性を有する気液分離膜を、少なくとも一つの面に撥水処理を施した樹脂膜にクレーズを生成してなる気体透過膜にて構成したことを特徴とする請求項1に記載の管路のエア抜き用気液分離部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−266051(P2010−266051A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120113(P2009−120113)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(397010446)有限会社中島工業 (28)
【Fターム(参考)】