説明

管路の部分補修構造及び部分補修工法

【課題】管路に対し部分的な補修をした後、地震や地盤沈下が生じて、管路の継ぎ目に管どうしの更なるずれやひび割れの成長が生じた結果、管路と補修材との間に相対的な移動が生じた場合であっても、この移動に追従することができる管路の部分補修構造と補修工法を提供する。
【解決手段】管路の部分補修構造は、管路Aを部分的に補修する補修構造であって、管路の補修すべき部位に非透水性と伸縮性を有し且つ補修すべき管路の内周面の径と対応する外径を有する筒状弾性材1が配置され、筒状弾性材1の内周面側に硬化性樹脂が含浸され未硬化状態では可撓性を有し且つ補修すべき管路Aの内周面の径と対応する外径を有する補修材2が筒状弾性材1の長手方向の端部を覆うように配置された状態で硬化していることで、筒状弾性材1が硬化した補修材2によって管路Aの内周面に圧接されると共に支持されて管路Aが部分的に補修されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路を構成する管どうしの継ぎ目のずれ、或いは管に形成されたひび割れを部分的に補修するための管路の部分補修構造と、補修工法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水道用の管路に代表される地中に敷設された管路の場合、地震や地盤沈下等に起因して、埋設された管どうしの間に抜けだしを含むずれが生じたり、管にひび割れが生じることがある。管路にずれやひび割れが生じたとき、これらの部分を介して管路内へ地下水や土砂が浸透したり、樹木の根が入り込むなどの虞が生じる。そして、地下水が浸入した管路では、下流側に設けた下水処理設備に過大な負担をかけることになるという問題が生じる。
【0003】
このため、定期的に管路の内周面を観察し、この観察結果に基づいて対象となる管路を補修すべきか否かの検討が行われる。例えば、管路を構成する管の内周面が略全長にわたって剥離したりひび割れが形成されていたりしているような場合、補修は隣接するマンホール間の長さを補修単位とし、この補修単位の全長にわたって行われる。しかし、補修すべき部位が、幾つかの継ぎ目やひび割れ部位に限定されるような場合には、対象となる部位のみを補修する部分補修が行われる。
【0004】
管路を部分的に補修する場合、先ず、硬化性樹脂を含浸させた可撓性を有し且つ補修すべき部位を確実に被覆し得る長さを持ったスリーブを、管路に於ける補修すべき部分の内周面に加圧密着させる。次に、スリーブを補修すべき部分の内周面に加圧密着させた状態で、スリーブを内面側から加熱して硬化させ、或いはスリーブに内面側から光を照射して硬化させる。このようにして硬化させたスリーブによって、管路に於ける補修すべき部位を部分的に補修している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の如くして部分補修を行うことで、管路に於ける管どうしの継ぎ目に生じたずれやひび割れを部分的に補修することが可能であり、これらの部位からの地下水の浸入を防ぐことができる。しかし、管路に部分補修がなされた後、地震或いは地盤沈下が生じて、既に部分補修がなされた管どうしの継ぎ目に更なるずれが生じたり、ひび割れが更に大きな割れ目に成長することがある。この場合、硬化したスリーブはこのようなずれやひび割れの成長に伴う管との間の相対的な移動に追従することができず、管路の内周面との密着状態が破壊されて両者の間に隙間が形成される虞がある。
【0006】
上記の如く、従来の部分補修構造では、現在生じている管どうしのずれやひび割れを補修することは充分にできるものの、今後生じる虞のある地震や地盤沈下に伴う管どうしのずれやひび割れの成長に対応し得ない虞がある。
【0007】
本発明の目的は、管路に対し部分的な補修をした後、地震や地盤沈下が生じて、管路の継ぎ目に管どうしの更なるずれやひび割れの成長が生じた結果、管路と補修材との間に相対的な移動が生じた場合であっても、この移動に追従することができる管路の部分補修構造と補修工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る管路の部分補修構造は、管路を部分的に補修する補修構造であって、管路の補修すべき部位に非透水性と伸縮性を有し且つ補修すべき管路の内周面の径と対応する外径を有する筒状弾性材が配置され、前記筒状弾性材の内周面側に硬化性樹脂が含浸され未硬化状態では可撓性を有し且つ補修すべき管路の内周面の径と対応する外径を有する補修材が前記筒状弾性材の長手方向の端部を覆うように配置された状態で硬化していることで、前記筒状弾性材が硬化した前記補修材によって管路の内周面に圧接されると共に支持されて管路が部分的に補修されているものである。
【0009】
上記管路の部分補修構造に於いて、前記筒状弾性材には、伸縮性を確保するために予め収縮部が形成されていることが好ましい。
【0010】
また、上記何れかの管路の部分補修構造に於いて、前記補修材に於ける筒状弾性材の配置位置には、該筒状弾性材の厚さよりも浅い溝が形成されていることが好ましい。
【0011】
また、上記何れかの管路の部分補修構造に於いて、前記補修材は、管路に於ける補修すべき部位に対向して1個、又は、管路に於ける補修すべき部位の長さ方向の寸法に対応させて複数個配置されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る管路の部分補修工法は、管路を部分的に補修する補修工法であって、硬化性樹脂が含浸され未硬化状態では可撓性を有し且つ補修すべき管路の内周面の径と対応する外径を有する補修材と、非透水性と伸縮性を有し且つ補修すべき管路の内周面の径と対応する外径を有する筒状弾性材と、を有し、管路の補修すべき部位に対応させて該管路の内周面側に前記筒状弾性材を配置し、前記筒状弾性材の内周面側に該筒状弾性材の長手方向の端部を覆うようにして補修材を配置し、前記補修材を膨張させて前記筒状弾性材を管路の内周面に押圧させて硬化させることによって管路を部分的に補修することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、管路の補修すべき部位に非透水性と伸縮性を有する筒状弾性材が配置され、この筒状弾性材の内周面側に補修材が筒状弾性材の両端部を覆うように配置された状態で硬化しているので、地震時や地盤沈下に伴って継ぎ目を構成する管どうしにずれが生じたり、ひび割れが成長した場合のように管路と補修材の間に相対的な移動が生じても、筒状弾性材が管路の内周面に対する密着性を保持して追従することが可能であり、補修材と管路の内周面との間に隙間が形成されることがない。従って、管路の内部に地下水が浸入することがなく、高い止水性能を発揮することができる。
【0014】
特に、管路を構成する管どうしのずれが生じたり、ひび割れが成長した場合に生じる管路と補修材との相対的な移動に対し、筒状弾性材が管路の内周面に対する密着状態を保持して弾性変形することで追従することができる。このため、管路の耐震性を向上させることができ、且つ止水性能を保持することができる。
【0015】
筒状弾性材に収縮部を形成することによって、この筒状弾性材の追従性を確保することができる。
【0016】
補修材に筒状弾性材の厚さよりも浅い溝を形成することによって、この溝に筒状弾性材を収容することが可能となり、補修材を管の内周面に押圧するのに伴って、筒状弾性材を確実に管の内周面に接触させて部分的な補修を行うことができる。
【0017】
補修材が管路の補修すべき部位に対向して1、または複数個所配置することによって、管路における部分補修すべき部位の長さに関わらず合理的な部分補修を実現することができる。
【0018】
また、本発明に係る管路の部分補修工法では、管路の補修すべき部位に対応させて内周面側に筒状弾性材を配置し、この筒状弾性材の内周面側に該筒状弾性材の長手方向の端部を覆うようにして補修材を配置し、該補修材を膨張させて筒状弾性材を管路の内周面に押圧させて硬化させることによって管路を部分的に補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】管路を部分的に補修した構造を説明する図である。
【図2】管路を部分的に補修した構造を説明する図である。
【図3】筒状弾性材の構成を説明する断面図である。
【図4】補修材の例を説明する断面図である。
【図5】管路を部分的に補修する工法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る管路の部分補修構造について説明する。本発明に係る管路の部分補修構造は、管路の継ぎ目を構成する管どうしの間に抜けを含むずれが生じたり、管の一部にひび割れが生じたりして補修することが必要であるものの、管路は未だ充分な耐久性を有するような場合に、前記継ぎ目やひび割れを部分的に補修するためのものである。
【0021】
本発明が対象とする管路は、下水道用の管路や電線や通信線用の管路、或いは農業用水や工業用水を含む圧力を持った水が流通する管路等の管路を含むものである。従って、本発明では、管路を構成する管の構造は特に限定するものではなく、管どうしの継ぎ目部分の構造も特に限定するものではない。
【0022】
本発明に於いて、管路の補修すべき部位に配置される筒状弾性材は、非透水性と伸縮性を有する材料を用いて形成されている。非透水性と伸縮性を有する材料としては特に限定するものではなく、前記性質を長期間にわたって発揮し得るものであれば良い。
【0023】
筒状弾性材は地下水圧に対し充分に対抗し得る強度を有することが必要である。しかし、筒状弾性材の厚さは限定するものではなく、対象となる管路の内径に応じて、地下水圧に対抗し得る強度を発揮厚さを適宜設定することが好ましい。筒状弾性材が地下水圧に対抗し得る強度を有することによって、管どうしのずれに伴って継ぎ目に形成された隙間やひび割れから地下水が侵入しても破断するようなことがない。
【0024】
このような非透水性と伸縮性を有し、且つ地下水圧に対抗し得る強度を有する材料としては、下水道用の管路に於けるパッキン材として用いられるスチレンブタジェンゴム(SBR)がある。そして、このSBRであれば、筒状弾性材として好ましく用いることが可能である。また、筒状弾性材としては、厚さが約1.5mm〜約5mm程度のSBRを好ましく利用することが可能である。
【0025】
本発明の筒状弾性材は管路の内周面の径と対応する外径を有する。ここで、管路の内周面と対応する外径とは、管路の内周面の径と筒状弾性材の外径が等しいという意味ではなく、後述する補修材によって管路に押圧されたとき、この押圧に応じて管路の内周面との間で圧縮変形し、この圧縮変形による管路の内周面に対する圧接状態を保持し得るような外径である。従って、筒状弾性材の外径寸法は管路の内周面の径と同等若しくは大きい値を有する。
【0026】
また、筒状弾性材の長手方向の寸法(管路の延長方向の長さ)は特に限定するものではなく、補修すべき部位を充分に覆って補修し得る寸法であれば良い。
【0027】
筒状弾性材の伸縮性能は特に限定するものではない。しかし、地震時に於ける永久歪の許容量は約1.5%であるといわれている。そして、管路が下水道用である場合、該管路を構成するヒューム管の標準的な長さが2.43mであるため、筒状弾性材は約40mmの伸縮性能を有することが好ましい。筒状弾性材に前記の如き伸縮性能を発揮させることで、部分補修を実施した管路が地震時に更なる管どうしのずれや、ひび割れの成長して管との間に相対的な移動が生じたとしても、この移動に追従することが可能となり、高い耐震性能を発揮することが可能となる。
【0028】
特に、筒状弾性材の伸縮性を確保するために、筒状弾性材の長手方向の所定位置に、全周にわたって収縮部を設けておくことが好ましい。この収縮部の構成は特に限定するものではなく、継ぎ目に於ける管どうしが移動したような場合、或いはひび割れが成長して管路の全周にわたる割れ目が生じて割れ目の両側の管どうしが移動したような場合、前記管どうしの移動に追従し得るものであれば良い。
【0029】
また、筒状弾性材は、内周面側に配置されて硬化した補修材によって管路の内周面側に押圧された状態で支持される。このため、筒状弾性材は補修材に対し、接着等の手段で強固に一体化していることが好ましい。従って、筒状弾性材の補修材に接触する面は、適度な凹凸を持った面として構成されていることが好ましく、特に、溝や突起が形成された面であることが好ましい。
【0030】
本発明に於いて、補修材は、硬化性樹脂が含浸され未硬化状態では可撓性を有し、且つ硬化したとき補修すべき管路の内周面の径と対応する外径を有する。即ち、補修材は、硬化したときに管路の内周面の径と対応する外径を有する円筒状に形成される。このため、補修材が未硬化状態のときに円筒状であるか否かは限定するものではなく、予め対象となる管路の内周面の径に対応させた外径となるような寸法をもったスリーブ状に形成しておくことが可能であり、また未硬化状態の長尺状のシートをスパイラル状に巻き付けておき、硬化したときに重ね合わせ部が一体化した円筒状に構成することも可能である。部分補修を行う際の作業性や、対象となる管路の径に対する自由度の高さ等を考慮すると、未硬化状態で可撓性を持った長尺状のシートを利用することが好ましい。
【0031】
補修材は、織布或いは不織布からなる繊維基材に硬化性樹脂を含浸させて構成される。繊維基材の素材は特に限定するものではなく、ガラス繊維、ポリエステル繊維を含む有機系繊維等の繊維を選択的に採用することが可能である。特に、繊維基材としてガラス繊維からなる織布を採用した場合、高い強度と硬化収縮を防止することが可能であり好ましい。また、有機系繊維を採用した場合、強度はガラス繊維を採用した場合よりも低下するものの、コストが低くなるという利点もある。
【0032】
補修材を構成する繊維基材に含浸される硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂或いはエポキシ樹脂等の樹脂に熱硬化剤或いは光硬化剤を含有させた熱硬化性樹脂、或いは光硬化性樹脂があり、これらの硬化性樹脂を選択して単独で、或いは両方の硬化性樹脂を積層して含浸することで補修材を構成することが可能である。特に、熱硬化性樹脂を含浸した補修材、或いは光硬化性樹脂を含浸した補修材では、保管時、運搬時、施工時に夫々特有の特徴があるため、これらの特徴を考慮して適したものを採用することが好ましい。
【0033】
本発明に於いて、補修材の厚さは限定するものではなく、対象となる管路の径、地盤の地下水位や補修部分の長さ等の条件に応じて適宜設定することが好ましい。特に、硬化性樹脂として光硬化性樹脂を選択すると共に該光硬化性樹脂を繊維基材に単独で含浸させて補修材を構成する場合、この補修材を硬化させる際に照射された光が透過し得るような厚さであることが好ましい。
【0034】
上記の如く構成された補修材では、管路を部分的に補修する際に、筒状弾性材の内周面側であって該筒状弾性材の長手方向の端部を覆うように配置され、この状態で管路の内周面側に押圧される。このため、補修材は筒状弾性材を管路の内周面に押圧して圧縮させつつ、自体も該筒状弾性材に沿って変形し、端部が筒状弾性材の端部を越えて管路の内周面に接触することとなる。そして、この状態で補修材が硬化したとき、筒状弾性材は硬化した補修材によって、長手方向の両端部を含んで包み込まれて圧縮状態を保持することとなり、この結果、筒状弾性材は管路の内周面に対する圧接状態を保持することになる。
【0035】
特に、筒状弾性材の長手方向の両端部が夫々補修材に覆われていることから、地震時或いは地盤沈下によって補修材の管路の内周面に対する接触状態が破壊されたとしても、筒状弾性材の長手方向の両端部を管路の内周面に押圧して支持する構造に変化はない。このため、筒状弾性材は少なくとも長手方向の両端部で管路の内周面に対して圧接していることとなり、初期の止水性能を保持することが可能となる。
【0036】
本発明に於いて、補修材が筒状弾性材の長手方向の端部を覆うとは、1つの補修材によって筒状弾性材の両端部を覆うということを限定するものではなく、該筒状弾性材の長手方向の両端部を夫々独立した二つの補修材で覆うことを含むものである。
【0037】
上記の如く、筒状弾性材の長手方向の端部を二つの補修材で覆う場合、これらの補修材どうしの間隔は限定するものではなく、二つの補修材が略接触した状態(筒状弾性材が露出していない状態)であっても良く、二つの補修材の間に間隔を設けた状態(補修材の間から筒状弾性材が露出している状態)であっても良い。更に、筒状弾性材の長手方向の両端部を覆う二つの補修材の間に更に1又は複数の独立した補修材を配置しても良い。何れにしても筒状弾性材が地下水圧に対して充分な強度を有することが必要であることは当然である。
【実施例1】
【0038】
次に、管路の部分補修構造の第1実施例について図1により説明する。図に於いて、管路Aを構成する管10にひび割れBが形成されている。管10の内周面であってひび割れBに対応する位置に筒状弾性材1が配置されており、この筒状弾性材1の内周面側に硬化した補修材2が配置され、この硬化した補修材2によって筒状弾性材1は管10の内周面側に押圧されて圧縮した状態を保持して支持されている。
【0039】
本実施例に於いて、補修材2は筒状弾性材1の長さ(長手方向の寸法)よりも永い寸法を有しており、筒状弾性材1の長手方向の両端部を一つの補修材によって覆っている。
【0040】
このため、筒状弾性材1が圧接した状態を保持しているとき、管路Aを構成する管10にひび割れBの成長に伴うずれが生じた場合、この管10のずれによって、該管10の内周面とこの内周面に接触している補修材2の間にずれが生じることがある。この場合、筒状弾性材1の管10の内周面に対する圧接状態は保持されるため、管10に生じたずれに対応して筒状弾性材1が伸長し、これにより、筒状弾性材1、補修材2によるひび割れBに対する部分補修はその補修状態を保持することが可能である。
【実施例2】
【0041】
次に、管路の部分補修構造の第2実施例について図2により説明する。図に於いて、管路Aを構成する管10どうしの継ぎ目Cに、抜け等によるずれによって生じた間隙11が形成されている。このため、間隙11に対応する管路Cの内周面に、継ぎ目Cを管路Aの長手方向に充分に被覆し得る長さを持った筒状弾性材1が配置されており、この筒状弾性材1の内周面側であって長手方向の両端部に夫々硬化した二つの補修材2が配置され、この硬化した補修材2によって筒状弾性材1は管10の内周面側に押圧されて圧縮した状態を保持している。
【0042】
筒状弾性材1の長手方向の両端部覆うために夫々配置された補修材2は、互いに独立した補修材2として構成されており、これらの補修材2の間には隙間3が形成されている。隙間3の寸法は一義的に設定されるべきものではなく、筒状弾性材1の長さや管路Aの姿勢等の条件に応じて適宜設定される。従って、筒状弾性材1の両端部を覆うように、二つの独立した補修材2を配置したとき、これら二つの補修材2が長手方向の端部で互いに接触していても良く、互いに離隔して隙間3が形成され、この隙間3に筒状弾性材1が露出していても良い。
【0043】
上記の如く、管路Aに於ける継ぎ目Cに生じた間隙11を管路Aの内周面側に筒状弾性材1を配置すると共に、筒状弾性材1の内周面側に配置した二つの補修材2によって該筒状弾性材1の長手方向の端部を覆うことで、筒状弾性材1を管路Aの内周面側に圧接して支持することが可能である。
【0044】
このため、筒状弾性材1が圧接した状態を保持しているとき、管路Aの継ぎ目Cに於ける管10どうしに更なるずれが生じて間隙11が成長した場合、長手方向に接続された管10の内周面と、これらの内周面に接触している補修材2の間にずれが生じることがある。この場合であっても、筒状弾性材1の接続された管10の内周面に対する圧接状態は保持されるため、管10に生じた更なるずれに対応して筒状弾性材1が伸長し、これにより、筒状弾性材1、補修材2による継ぎ目Cに於ける間隙11に対する部分補修はその補修状態を保持することが可能である。
【0045】
上記各実施例に於いて、筒状弾性材1は硬化した補修材2によって、該補修材2と管路Aを構成する管10の内周面との間に挟まれて圧縮した状態を保持している。そして、ひび割れBの更なる成長、継ぎ目Cに於ける間隙11の成長に伴い管10にずれが生じたとき、このずれに応じて筒状弾性材1が伸長することで追従し、部分補修状態を保持する。このため、筒状弾性材1は充分な伸縮性を確保し得るように構成されている。
【0046】
筒状弾性材1の伸縮性は、材料自体が有する伸縮性能と、特殊な断面形状とすることによる伸縮性能とがある。特に、本実施例では、筒状弾性材1の厚さを1.5mm〜5mmの範囲で適宜設定することによって、材料自体の有する伸縮性能を充分に発揮させることが可能である。
【0047】
また、筒状弾性材1を特殊な断面形状として伸縮性能を発揮させる場合、例えば、図3(a)に示すように、筒状弾性材1の長手方向(管路Aの延長方向)の略中央に大波状の屈曲部1aを形成し、この屈曲部1aによって充分な伸縮性能を発揮させることが可能である。
【0048】
また、同図(b)に示すように、筒状弾性材1の長手方向の略中央に小波状の屈曲部1bを形成し、この屈曲部1bによって充分な伸縮性能を発揮させることが可能である。
【0049】
更に、同図(c)に示すように、筒状弾性材1の長手方向の略中央にめがね状のブリッジ1cを形成し、このブリッジ1cによって充分な伸縮性能を発揮させることも可能である。
【0050】
上記の如く構成された筒状弾性材1の補修材2と対向する面(内周側の面、図に於ける下側の面)には適度な凹凸或いは溝、突起が形成されていることが好ましい。このような凹凸や溝等を形成することによって、内周面側に配置した補修材2を膨張させたとき、可撓性を有する補修材2が凹凸や溝等に入り込んで係合し、補修材2の硬化に伴って強固な一体化をはかることが可能となる。
【0051】
また、筒状弾性材1の内周面側に配置した補修材2によって、該筒状弾性材1を管路Aの内周面に押圧して圧縮する際に、筒状弾性材1と補修材2の位置がずれると、補修材2による筒状弾性材1の押圧、支持が安定して行えない虞がある。このため、図4に示すように、補修材2の略中央に筒状弾性材1の厚さよりも小さい寸法を持った溝2aを形成しておくことが好ましい。このような溝2aを形成することによって、管路Aを部分的に補修する際に、補修材2によって筒状弾性材1を管路Aの内周面に押圧するとき、両者の位置がずれることが無く、安定した支持を実現することが可能となる。
【実施例3】
【0052】
次に、本実施例に係る管路の部分補修工法について図5により説明する。本実施例に於いて、管路Aを構成する管10にひび割れBが生じているものとする。即ち、予め管路A内に探査ロボットを導入して内部探査を実施し、この探査結果から管路Aに於けるひび割れBを認識すると共に、マンホールDから該ひび割れBまでの距離を認識しておく。
【0053】
先ず、図5(a)に示すように、予めマンホールDに可撓性を持った例えばゴムによって形成され、両端が封鎖された円筒状の膨張部材(風船)15を設置する。この膨張部材15には前後にローラー16が設けられており、該ローラー16を取り付けたフレームにロープ17を接続して牽引することで、管路A内の所望の位置に移動させることが可能なように構成されている。
【0054】
また膨張部材15には地上に設置したエアコンプレッサーから延長されたホース18が接続されており、該ホース18を介して圧縮空気を供給することで、膨張部材15を膨張させることが可能である。また、膨張部材15の内部には、同図(c)に示すように、光照射装置20が配置されており、この光照射装置20に電源ケーブル19が接続されている。
【0055】
尚、本実施例では、補修材2として光硬化性樹脂を含浸したものを用いているため、膨張部材15の内部に光照射装置20が配置されているが、補修材2が熱硬化性樹脂を含浸したものである場合、膨張部材15の内部を約60℃〜約80℃に昇温させる必要があり、この場合、膨張部材15の内部にヒーターを配置するか、地上にボイラを設置して発生した蒸気を膨張部材15の内部に導入し得るように構成されている。
【0056】
上記の如く構成された膨張部材15の外周面に補修材2を取り付ける。本実施例では、補修材2は長尺状の繊維基材に光硬化性樹脂を含浸させたシート状に構成されている。このため、シート状の補修材2を膨張部材15の外周面に対し、外径が管路Aの内周面の径と対応する寸法となるようにスパイラル状に巻き付ける。このとき、膨張部材15に巻きつけられることで重ね合わさった補修材2の重なり部分を縫製して一体化しても良く、そのままの状態で放置しておいても良い。
【0057】
膨張部材15に補修材2を巻きつけるに際し、例えば、膨張部材15に圧縮空気を供給して管路Aの内径と略等しいか或いは僅かに大きい程度まで膨張させ、この状態で膨張部材15の外周面に捕集材2を巻きつけることが可能である。
【0058】
尚、補修材2が管路Aの内周面の径に応じた外径を有するスリーブ状に形成されている場合には、補修材2の内周側に膨張部材15を挿通させることで、補修材2を膨張部材15に取り付けることが可能である。
【0059】
膨張部材15の外周面に補修材2を巻きつけた後、巻きつけられた補修材2に筒状弾性材1を取り付ける。この場合、筒状弾性材1の内周側に補修材2を巻きつけた膨張部材15を挿通することで、筒状弾性材1を補修材2に取り付けることが可能である。
【0060】
次に、同図(b)に示すように、上記の如くして膨張部材15に補修材2、筒状弾性材1を取り付けた後、ロープ17によって膨張部材15を牽引して補修すべき目的のひび割れBまで移動させ、筒状弾性材1がひび割れBに対向した位置で停止させる。
【0061】
次いで、同図(c)に示すように、ホース18を介して弾性部材15に圧縮空気を供給し、該膨張部材17を膨張させる。この膨張部材15の膨張に伴って、筒状弾性材1、補修材2は管路Aの内周面に押圧され、筒状弾性材1は管路Aの内周面と補修材1に挟まれて圧縮される。補修材2は筒状弾性材1に沿って変形し、該筒状弾性材1の長手方向の端部を覆って管路Aの内周面に接触する。
【0062】
ホース18から供給される圧縮空気の圧力を予め設定された値に保持することによって、補修材2による筒状弾性材1の管路Aの内周面への圧接力、圧縮率等の条件を保持しておき、この状態で、膨張部材15の内部に配置した光照射装置20を作動させて補修材2に光を照射する。光照射装置20からの光の照射に伴って、補修材2に含浸された光硬化性樹脂が硬化し、該補修材2による筒状弾性材1の管路Aの内周面に対する圧接状態を保持して支持することが可能となる。
【0063】
補修材2に対する光の照射が終了し、該補修材2が十分に硬化した後、同図(d)に示すように、ホース18を介して膨張部材15の内部にある圧縮空気を外部に排除する。この排除に伴って膨張部材15が収縮し、初期の状態に戻る。その後、ロープ17によって膨張部材15を牽引して隣設するマンホールに移動させる。
【0064】
上記の如き一連の作業を行うことで、管路Aに生じたひび割れBや、継ぎ目Cに於ける嵌10どうしの間に生じた間隙11を部分的に補修することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る管路の部分補修構造、及び部分補修工法は、下水道用の管路に限定されることなく、地中に敷設された管路一般に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
A 管路
B ひび割れ
C 継ぎ目
D マンホール
1 筒状弾性材
1a、1b 屈曲部
1c ブリッジ
2 補修材
2a 溝
3 隙間
10 管
11 間隙
15 膨張部材
16 ローラー
17 ロープ
18 ホース
19 電源ケーブル
20 光照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路を部分的に補修する補修構造であって、
管路の補修すべき部位に非透水性と伸縮性を有し且つ補修すべき管路の内周面の径と対応する外径を有する筒状弾性材が配置され、
前記筒状弾性材の内周面側に硬化性樹脂が含浸され未硬化状態では可撓性を有し且つ補修すべき管路の内周面の径と対応する外径を有する補修材が前記筒状弾性材の長手方向の端部を覆うように配置された状態で硬化していることで、
前記筒状弾性材が硬化した前記補修材によって管路の内周面に圧接されると共に支持されて管路が部分的に補修されていることを特徴とする管路の部分補修構造。
【請求項2】
前記筒状弾性材には、伸縮性を確保するために予め収縮部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載した管路の部分補修構造。
【請求項3】
前記補修材に於ける筒状弾性材の配置位置には、該筒状弾性材の厚さよりも浅い溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載した管路の部分補修構造。
【請求項4】
前記補修材は、管路に於ける補修すべき部位に対向して1個、又は、管路に於ける補修すべき部位の長さ方向の寸法に対応させて複数個配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載した管路の部分補修構造。
【請求項5】
管路を部分的に補修する補修工法であって、
硬化性樹脂が含浸され未硬化状態では可撓性を有し且つ補修すべき管路の内周面の径と対応する外径を有する補修材と、
非透水性と伸縮性を有し且つ補修すべき管路の内周面の径と対応する外径を有する筒状弾性材と、を有し、
管路の補修すべき部位に対応させて該管路の内周面側に前記筒状弾性材を配置し、
前記筒状弾性材の内周面側に該筒状弾性材の長手方向の端部を覆うようにして補修材を配置し、
前記補修材を膨張させて前記筒状弾性材を管路の内周面に押圧させて硬化させることによって管路を部分的に補修することを特徴とする管路の部分補修工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate