管路補修用作業装置
【課題】ライナー素材を本管から取付管に容易にかつ損傷なく引き入れることを可能にすることにある。
【解決手段】
本管P0内を軸方向に移動自在な本体2と、本体2の移動方向の一端部に配置され、補修ライナーLの素材である変形自在な筒状のライナー素材L0を本管P0から取付管P1内に案内するガイド手段3とを備え、ガイド手段3は、ライナー素材L0を本管P0から取付管P1へ方向転換すべく案内するガイドローラ31と、先端部でガイドローラ31の軸方向の各端部を支持する一対のアーム32と、本体2の一端部に設置され、各アーム32の基端部を保持すると共に、各アーム32を介して、ガイドローラ31の各端部を本管P0の周方向に移動させるべく回転駆動する回転駆動部33とを有している。
【解決手段】
本管P0内を軸方向に移動自在な本体2と、本体2の移動方向の一端部に配置され、補修ライナーLの素材である変形自在な筒状のライナー素材L0を本管P0から取付管P1内に案内するガイド手段3とを備え、ガイド手段3は、ライナー素材L0を本管P0から取付管P1へ方向転換すべく案内するガイドローラ31と、先端部でガイドローラ31の軸方向の各端部を支持する一対のアーム32と、本体2の一端部に設置され、各アーム32の基端部を保持すると共に、各アーム32を介して、ガイドローラ31の各端部を本管P0の周方向に移動させるべく回転駆動する回転駆動部33とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水管等の種々の管路を内側から補修する際に用いる管路補修用作業装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の管路のうち例えば下水管は、地中に埋設される本管と、この本管に連通すべく取り付けられ、地上側の桝に通じる取付管とを備えている。この下水管においては、家庭等から出される排水が桝及び取付管を介して本管に流れることになる。このため、例えば取付管が老朽化等により損傷した場合には、その損傷部から汚水が漏れるおそれがあるので、当該取付管を早急に補修する必要がある。
【0003】
上記取付管の補修方法としては、当該取付管の内面を樹脂製の補修ライナーで覆う方法が知られている。この補修方法においては、補修ライナーの素材である変形自在な筒状のライナー素材を本管から取付管に引き入れ、ライナー素材における一端部に設けられた鍔部を本管の内面に開口した取付管の開口部の周囲に当てることによって、ライナー素材の位置決めを行い、更にライナー素材を内方から加圧すると共に加熱することによって、当該ライナー素材を取付管の内面に密着させた状態で熱硬化させることになる。
【0004】
ところが、上記取付管の補修方法においては、ライナー素材を本管から取付管に引き入れる際に、当該ライナー素材が本管における取付管の開口部に当たると共に擦れながら移動することになる。このため、開口部における引っかかりにより、ライナー素材の引き込みが困難になる場合があると共に、無理に引き込んだ場合にはライナー素材が破損するおそれがあるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ライナー素材を本管から取付管に容易にかつ何らの破損を生じさせることなく引き入れることのできる管路補修用作業装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、本管に連通された取付管の内面に補修ライナーを施工する際に用いられる管路補修用作業装置であって、上記本管内を軸方向に移動自在な本体と、この本体の移動方向の一端部に配置され、上記補修ライナーの素材である変形自在な筒状のライナー素材を上記本管から上記取付管内に案内するガイド手段とを備えてなり、上記ガイド手段は、上記ライナー素材を上記本管から取付管へ方向転換すべく案内するガイドローラと、先端部で上記ガイドローラの軸方向の各端部を支持する一対のアームと、上記本体の一端部に設置され、上記各アームの基端部を保持すると共に、当該各アームを介して、上記ガイドローラを当該ガイドローラの各端部を上記本管の周方向に移動させるべく回転駆動する回転駆動部とを有していることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記各アームは、上記回転駆動部に着脱自在に保持されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、上記本体の一端側の上記本管内を照らす照明手段と、上記本体の一端側の上記本管内を撮影するカメラとを備えていることを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、上記本体は、当該本体の移動方向に延在する筒状殻と、この筒状殻の外周面に嵌合された筒状弾性膜と、上記筒状殻と上記筒状弾性膜との間に流体を供給する流体供給部材とを有していることを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、上記本体は、上記筒状殻と上記筒状弾性膜との間から上記流体を排出する流体排出部材を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成された請求項1〜5に記載の発明によれば、本体が本管内を移動自在に構成され、ガイド手段が本体の移動方向の一端部に配置されているので、本管内における取付管の開口部に対応する位置であって、ライナー素材を本管から取付管に引き入れるのに最適な位置に、ガイド手段の位置を調整することができる。そして、ガイド手段にはライナー素材を本管から取付管へ方向変換すべく案内するガイドローラが設けられているので、ライナー素材を上記開口部に当接させることなく、取付管内に引き入れることができる。しかも、ライナー素材の移動によってガイドローラが自由に回転することになるので、ライナー素材の方向変換による抵抗をほとんど生じさせることなく、当該ライナー素材を取付管内に円滑に引き入れることができる。
【0012】
更に、ガイドローラの各端部を本管の周方向に移動させるべく当該ガイドローラを回転駆動する回転駆動部を備えているので、本管内における取付管の開口部が当該本管の周方向の異なる位置にある場合でも、ライナー素材を取付管に引き込むのに最適な方向にガイドローラの回転軸の傾きを調整することができる。
【0013】
従って、ライナー素材を本管から取付管に容易に引き入れることができると共に、この引き入れの際にライナー素材に損傷が生じるのを防止することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、各アームが回転駆動部に着脱自在に保持されているので、本管の内径に適した回転軸の長さを有するガイドローラにアームごと簡単に変更することができる。従って、本管の内径が異なる場合でも、ライナー素材を取付管内に円滑に引き入れることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、本体の一端側の本管内を照らす照明手段と、本体の一端側の本管内を撮影するカメラとを備えているので、本体の一端側のガイドローラの位置と、本体の一端側の本管内における取付管の開口部の位置とをカメラから出力される映像で確認することができる。従って、ライナー素材を本管から取付管に引き入れるのに最適な位置に、ガイドローラの位置を容易に調整することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、本体の移動方向に延在する筒状殻と、この筒状殻の外周面に嵌合された筒状弾性膜と、筒状殻と筒状弾性膜との間に流体を供給する流体供給部材とを有しているので、ライナー素材として例えば端部に鍔部を備えたものを用いた場合に、この鍔部が本管内における取付管の開口部の周囲に当接した状態において、流体を筒状殻と筒状弾性膜との間に供給して当該筒状弾性膜を膨出させることにより、上記鍔部を本管の内面に押圧して密着させることができる。
【0017】
従って、ライナー素材を取付管の内面に例えば密着させた状態で熱硬化させた場合には、鍔部も本管の内面に密着した状態にすることができる。
【0018】
また、鍔部に例えば熱硬化性の樹脂を含浸させておき、流体として高温の流体を筒状殻と筒状弾性膜との間に供給した場合には、鍔部も本管の内面に密着させた状態に熱硬化させることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、筒状殻と筒状弾性膜との間から流体を排出する流体排出部材を有しているので、筒状殻と筒状弾性膜との間の流体を、流体供給部材及び流体排出部材を介して循環させることができる。従って、例えば高温の流体を連続して筒状殻と筒状弾性膜との間に流通させることができるので、例えば熱硬化に時間を要する場合でも、上記鍔部を確実に硬化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態としての一実施の形態について図1〜図13を参照しながら説明する。
【0021】
この実施の形態で示す管路補修用作業装置1は、図1〜図7に示すように、下水管の補修に用いた例で示すものであって、地中Aに埋設された円筒状の本管P0に連通した状態に取り付けられた枝管としての円筒状の取付管P1の内面に補修ライナーL(図11参照)を施工する際に用いられるようになっており、本体2と、ガイド手段3と、照明手段4と、カメラ5を備えている。取付管P1は、この例では、本管P0から階段状に屈曲して地上A1に開口する桝P2に接続されている。桝P2は、家庭等から出された排水が流入するようになっている。
【0022】
本体2は、図3に示すように、鋼やアルミニウム等の金属で円筒状に形成された筒状殻21と、この筒状殻21の軸方向の一端部及び他端部に配置され、本管P0内における軸方向の移動を円滑にする4つの車輪22と、ゴム等の弾性体で筒状に形成され、筒状殻21の外周面に嵌合された筒状弾性膜23と、筒状殻21と筒状弾性膜23との間に温水や冷水などの水(流体)を供給する流体供給部材24と、筒状殻21と筒状弾性膜23との間から水を排出する流体排出部材25とを備えている。筒状弾性膜23の軸方向の各端部は、当該端部の周方向の全体を筒状殻21の外周面に押し付ける環状の締付バンド23aによって、当該筒状殻21に固定されるようになっている。
【0023】
そして、本体2は、図1に示すように、本管P0の下方に位置する内面上を車輪22を介して、当該本管P0の軸方向に移動自在になっている。この状態において、筒状殻21は、本体2の移動方向(即ち、本管P0の軸方向)に延在した状態になっている。
【0024】
また、流体供給部材24は、図3に示すように、管状に形成されたものであって、本体2が本管P0内に移動自在に設置された状態において、筒状殻21の内面の上部に位置すべく設けられており、当該筒状殻21及び流体供給部材24のそれぞれに形成された複数の貫通孔21a、24aを介して、水を筒状殻21と筒状弾性膜23との間に供給するようになってる。一方、流体排出部材25は、管状に形成されたものであって、筒状殻21の内面の下部に位置すべく設けられており、当該筒状殻21及び流体排出部材25のそれぞれに形成された貫通孔21b、25aを介して、水を筒状殻21と筒状弾性膜23との間から排出するようになってる。
【0025】
流体供給部材24は、図1及び図2に示すように、ワンタッチ継ぎ手を介して第1耐熱ホースD1の一端部に接続されるようになっており、第1耐熱ホースD1の他端部は、ワンタッチ継ぎ手を介して地上A1に設置された制御器Cに接続されるようになっている。一方、流体排出部材25は、ワンタッチ継ぎ手を介して第2耐熱ホースD2の一端部に接続されるようになっており、第2耐熱ホースD2の他端部は、ワンタッチ継ぎ手を介して制御器Cに接続されるようになっている。また、第1耐熱ホースD1及び第2耐熱ホースD2は、地上A1に開口すると共に、本管P0に接続されたマンホールMを介して、地上A1と本管P0との間に延在されるようになっている。
【0026】
制御器Cは、地上A1に設置されたボイラBから供給される水の温度及び流量を制御し、最適な温度及び流量の水を第1耐熱ホースD1に供給すると共に、第2耐熱ホースD2を介して戻ってきた水の圧力を調整することによって、筒状殻21と筒状弾性膜23との間に供給される水の圧力を制御するようになっている。この筒状殻21と筒状弾性膜23との間の水の圧力は、図2に示すように、流体排出部材25と第2耐熱ホースD2とを接続する中継ブロック25aに設けられた圧力センサ25bによって検出するようになっている。
【0027】
ガイド手段3は、図1〜図4に示すように、本体2の移動方向の一端部側に配置されたものであり、補修ライナーLの素材である変形自在な筒状のライナー素材L0を本管P0から取付管P1内に引き入れるべく案内するようになっており、ライナー素材L0を本管P0から取付管P1へ方向転換すべく案内する回転自在なガイドローラ31と、先端部でガイドローラ31の軸方向の各端部を支持する一対のアーム32と、上記本体2の一端部に設置され、上記各アーム32の基端部を保持すると共に、当該各アーム32を介して、ガイドローラ31を当該ガイドローラ31の各端部を本管P0の周方向に移動させるべく回転駆動する回転駆動部33とを備えた構成になっている。ライナー素材L0の一端部には、本管P0における取付管P1の開口部P1aの周囲の当該本管P0の内面に当接する鍔部L0aが設けられている。
【0028】
各アーム32には、ガイドローラ31より先端側に、フック部32aが一体的に設けられている。フック部32aは、円形状の孔を有しており、この孔に、例えば本体2を牽引するための紐等のロープを挿通して固定するようになっている。
【0029】
回転駆動部33は、図3に示すように、筒状殻21の一端部内に設置されたモータ33aと、このモータ31aの出力軸に同軸状に連結され、筒状殻21の一端側に突出した円筒状の中間部材33bと、この中間部材33bの外周面に設けられた一対のアーム取付部33cとを備えた構成になっている。各アーム取付部33cには、各アーム32の基端部が着脱自在に連結されて保持されるようになっている。そして、各アーム32は、各アーム取付部33cから筒状殻21の一端側に更に延在するようになっている。
【0030】
また、図7は、図2等で示したガイドローラ31より軸長の長いガイドローラ31、及び当該ガイドローラ31を支持し、各アーム取付部33cに連結可能に構成されたアーム32を示している。
【0031】
上記照明手段4は、図5及び図6に示すように、中間部材33bの先端側(ガイドローラ31側)の内周に沿って設けられた複数の発光ダイオードによって構成されており、本体2の一端側の本管P0内を照らすようになっている。この場合、照明手段4は、ガイドローラ31に対して本体2側に位置する本管P0の内面からガイドローラ31側の当該本管P0の内面を照射可能になっている。即ち、照明手段4は、本管P0に形成された取付管P1の開口部P1aと、ガイドローラ31との位置関係がカメラ5で確認することが可能なように本管P0内を照らし出すようになっている。
【0032】
また、上記カメラ5は、中間部材33b内における照明手段4の内側に設けられており、本体2の一端側の本管P0内を撮影するようになっている。即ち、カメラ5は、本管P0に形成された取付管P1の開口部P1aと、ガイドローラ31との位置関係が確認可能な画角を有している。
【0033】
そして、中間部材33bの先端部は、照明手段4及びカメラ5を覆う透明ガラス(透明カバー)33dによって閉塞されており、当該中間部材33bの基端部は、電気コードを気密に挿通すべく構成された盲部材33eによって閉塞されている。
【0034】
また、圧力センサ25b、照明手段4、カメラ5等に接続された電気コードや電源ケーブル等のケーブルEは、図1に示すように、本体2の他端部から外方に延在し、マンホールMを介して制御器Cに接続されている。また、このケーブルEは、地上A1に配置されたケーブルドラムFによって巻き取りが可能になっている。
【0035】
次に、上記管路補修用作業装置1を用いて取付管P1に補修ライナーLを施工する管路の補修方法について、図8〜図13を参照して説明する。但し、これらの図においては、桝P2の図示を省略している。
【0036】
まず、図8に示すように、照明手段4及びカメラ5を用いて、本管P0内を撮影した映像をCRT等のモニタで確認しならが、本管P0における取付管P1の開口部P1aの位置に対するガイドローラ31の位置を決める。この際、ガイドローラ31の位置は、アーム32のフック部32aに連結したロープを、例えば本体2の先端側に設けられたマンホール側から引いて、管路補修用作業装置1を移動することによって行う。
【0037】
これにより、ライナー素材L0を本管P0から取付管P1に引き入れるのに最適な位置に、ガイドローラ31の位置を調整することができる。
【0038】
そこで、図8及び図9に示すように、先端に内視カメラGを取り付けた引込用ロープHを地上A1側から取付管P1内に挿入し、内視カメラGを一対のアーム32の間を通すと共に、本管P0内を本体2の先端側に送る。そして、引込用ロープHから内視カメラGを取り外した後、図10に示すように、熱硬化性樹脂としての例えばエポキシ樹脂を鍔部L0aにも含浸させたライナー素材L0の他端部を引込用ロープHの先端部にくくり付けて、当該引込用ロープHを地上A1側に引く。
【0039】
そうすると、ライナー素材L0がガイドローラ31を介して本管P0から取付管P1に向きを変えながら、スムーズに移動することになる。そして、鍔部L0aが開口部P1aの周囲に当接することによって、ライナー素材L0の取付管P1における位置が決まる。なお、鍔部L0aは、筒状のライナー素材L0と同様の変形自在な素材で形成いることから、一対のアーム32の間より大きな外径を有する場合でも、当該アーム32間をスムーズに通過することが可能である。
【0040】
次に、図11に示すように、筒状殻21の軸方向の中央部が開口部P1aの真下となるように、管路補修用作業装置1を移動してから、筒状殻21と筒状弾性膜23との間に、所定の圧力及び温度の温水を循環させることによって、筒状弾性膜23を膨張させ、当該筒状弾性膜23によって鍔部L0aを本管P0の内面に押し付ける。
【0041】
また、ライナー素材L0内に、当該ライナー素材L0の他端開口部から熱硬化治具Jを挿入する。熱硬化治具Jは、図12に示すように、他端から供給された水を一端から排出する屈曲自在なホースJ1と、このホースJ1を囲むように配置され、一端部でホースJ1の一端から流出した水を受けると共に、この水をホースJ1の周囲を通して他端側から排出する膨出筒J2とを備えている。
【0042】
次に、ライナー素材L0に挿入された熱硬化治具JのホースJ1に、所定の圧力及び温度の温水をボイラBから制御器Cを介して供給することにより、ホースJ1の一端(この例では下端)から噴出する所定の圧力の温水で膨出筒J2を膨張させることによって、当該膨出筒J2を介してライナー素材L0を取付管P1の内面に押し付けて密着させる。
【0043】
この場合、開口部P1aが筒状弾性膜23で閉塞されているので、図12に示すように、膨出筒J2が本管P0内に膨出するのを防止することができる。なお、膨出筒J2が本管P0内に膨出した場合には、当該膨出筒J2が破損するおそれがある。
【0044】
そして、筒状殻21と筒状弾性膜23との間及び膨出筒J2内に温水を循環させることにより、ライナー素材L0及び鍔部L0aを熱硬化させた後、筒状殻21と筒状弾性膜23との間及び膨出筒J2内に冷水を循環させて、ライナー素材L0及び鍔部L0aを冷却する。その後、筒状殻21と筒状弾性膜23との間及び膨出筒J2内等から水を抜いてから、熱硬化治具Jを取付管P1から抜く。これにより、取付管P1及び本管P0の開口部P1aの周囲が補修ライナーL及び鍔部L0aによって補修された状態になる。
【0045】
また、管路補修用作業装置1は、他の取付管P1を補修するために更に利用するか、マンホールMを介して地上A1に引き上げることになる。
【0046】
なお、筒状弾性膜23で鍔部L0aを本管P0の内面に押し付ける前で、かつ熱硬化治具JのホースJ1内に温水を供給する前に、当該ホースJ1に圧縮空気を供給して、膨出筒J2を膨出させることにより、取付管P1とライナー素材L0とのセンタ合わせを行うことが好ましい。この場合には、開口部P1aと鍔部L0aとのセンタが合った状態で、ライナー素材L0及び鍔部L0aを硬化させることができるので、図13に示すような開口部P1aと鍔部L0aとのセンタとがずれたまま硬化することによる弊害を防止することができる。
【0047】
上記のように構成された管路補修用作業装置1によれば、本体2が本管P0内を移動自在に構成され、ガイド手段3が本体2の移動方向の一端部に配置されているので、本管P0内における取付管P1の開口部P1aに対応する位置であって、ライナー素材L0を本管P0から取付管P1に引き入れるのに最適な位置に、ガイド手段3の位置を調整することができる。しかも、ガイド手段3にはライナー素材L0を本管P0から取付管P1へ方向変換すべく案内するガイドローラ31が設けられているので、ライナー素材L0を開口部P1aに当接させることなく、取付管P1内に引き入れることができる。更に、ライナー素材L0の移動に伴ってガイドローラ31が自由に回転することになるので、ライナー素材L0の移動抵抗をほとんど生じさせることなく、当該ライナー素材L0を取付管P1内に円滑に引き入れることができる。
【0048】
また、回転駆動部33を備えているので、図4に示すように、本管P0内における取付管P1の開口部P1aが当該本管P0の真上に位置していない場合でも、ライナー素材L0を取付管P1に引き込むのに最適な方向にガイドローラ31の回転軸の傾きを調整することができる。
【0049】
従って、ライナー素材L0を本管P0から取付管P1に容易に引き入れることができると共に、この引き入れの際にライナー素材L0が開口部P1aに擦れて損傷するのを確実に防止することができる。
【0050】
また、各アーム32が回転駆動部33に着脱自在に連結されるように構成されているので、本管P0の内径に適した軸長のガイドローラ31にアーム32ごと簡単に変更することができる。従って、本管P0の内径が異なる場合でも、ライナー素材L0を取付管P1内に円滑に引き入れることができる。
【0051】
更に、本体2の一端側の本管P0内を照らす照明手段4と、本体2の一端側の本管P0内を撮影するカメラ5とを備えているので、本体2の一端側のガイドローラ31の位置と、本体2の一端側の本管P0内の開口部P1aの位置とをカメラ5から出力される映像で確認することができる。従って、ライナー素材L0を本管P0から取付管P1に引き入れるのに最適な位置に、ガイドローラ31の位置を容易に調整することができる。
【0052】
また、本体2の移動方向に延在する筒状殻21と、この筒状殻21の外周面に嵌合された筒状弾性膜23と、筒状殻21と筒状弾性膜23との間に水を供給する流体供給部材24と、筒状殻21と筒状弾性膜23との間から水を排出する流体排出部材25を有しているので、ライナー素材L0の鍔部L0aを本管P0の内面に押圧して密着させることができる。
【0053】
従って、ライナー素材L0の鍔部L0aを本管P0の内面に密着した状態に硬化させることができる。
【0054】
なお、上記実施の形態においては、ロープで引っ張ることにより、本体2を移動すべく構成した構成したが、当該本体2は、車輪22を回転駆動することにより、本管P0内を軸方向に自走できるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の一実施の形態として示した管路補修用作業装置及びこの管路補修用作業装置を用いた補修工事の状況を示す断面図である。
【図2】同管路補修用作業装置の平面図である。
【図3】同管路補修用作業装置の側断面図である。
【図4】同管路補修用作業装置の先端からの矢視図である。
【図5】同管路補修用作業装置における照明手段及びカメラを有する中間部材の断面図である。
【図6】同管路補修用作業装置における照明手段及びカメラを有する中間部材の正面図である。
【図7】同管路補修用作業装置における交換可能な他のガイドローラ及びアームを示す平面図である。
【図8】同管路補修用作業装置の作用を示す図であって、地上側から引込用ロープを取付管内に挿入する途中を示す説明図である。
【図9】同管路補修用作業装置の作用を示す図であって、地上側から取付管内に挿入した引込用ロープの先端部をアームの間に挿入した後の状態を示す説明図である。
【図10】同管路補修用作業装置の作用を示す図であって、引込用ロープでライナー素材を本管から取付管に引き込む途中の状態を示す説明図である。
【図11】同管路補修用作業装置の作用を示す図であって、ライナー素材の鍔部を筒状弾性膜で本管の内面に押圧し、かつライナー素材を取付管の内面に密着させた状態を示す説明図である。
【図12】同管路補修用作業装置の作用を示す図であって、ライナー素材の鍔部を筒状弾性膜で本管の内面に押圧しない場合に、熱硬化治具の膨出筒が本管内に膨出する状態を示す説明図である。
【図13】同管路補修用作業装置の作用を示す図であって、開口部と鍔部とのセンタ合わせをしない場合の弊害を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 管路補修用作業装置
2 本体
3 ガイド手段
4 照明手段
5 カメラ
21 筒状殻
23 筒状弾性膜
24 流体供給部材
25 流体排出部材
31 ガイドローラ
32 アーム
33 回転駆動部
L 補修ライナー
L0 ライナー素材
P0 本管
P1 取付管
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水管等の種々の管路を内側から補修する際に用いる管路補修用作業装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の管路のうち例えば下水管は、地中に埋設される本管と、この本管に連通すべく取り付けられ、地上側の桝に通じる取付管とを備えている。この下水管においては、家庭等から出される排水が桝及び取付管を介して本管に流れることになる。このため、例えば取付管が老朽化等により損傷した場合には、その損傷部から汚水が漏れるおそれがあるので、当該取付管を早急に補修する必要がある。
【0003】
上記取付管の補修方法としては、当該取付管の内面を樹脂製の補修ライナーで覆う方法が知られている。この補修方法においては、補修ライナーの素材である変形自在な筒状のライナー素材を本管から取付管に引き入れ、ライナー素材における一端部に設けられた鍔部を本管の内面に開口した取付管の開口部の周囲に当てることによって、ライナー素材の位置決めを行い、更にライナー素材を内方から加圧すると共に加熱することによって、当該ライナー素材を取付管の内面に密着させた状態で熱硬化させることになる。
【0004】
ところが、上記取付管の補修方法においては、ライナー素材を本管から取付管に引き入れる際に、当該ライナー素材が本管における取付管の開口部に当たると共に擦れながら移動することになる。このため、開口部における引っかかりにより、ライナー素材の引き込みが困難になる場合があると共に、無理に引き込んだ場合にはライナー素材が破損するおそれがあるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ライナー素材を本管から取付管に容易にかつ何らの破損を生じさせることなく引き入れることのできる管路補修用作業装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、本管に連通された取付管の内面に補修ライナーを施工する際に用いられる管路補修用作業装置であって、上記本管内を軸方向に移動自在な本体と、この本体の移動方向の一端部に配置され、上記補修ライナーの素材である変形自在な筒状のライナー素材を上記本管から上記取付管内に案内するガイド手段とを備えてなり、上記ガイド手段は、上記ライナー素材を上記本管から取付管へ方向転換すべく案内するガイドローラと、先端部で上記ガイドローラの軸方向の各端部を支持する一対のアームと、上記本体の一端部に設置され、上記各アームの基端部を保持すると共に、当該各アームを介して、上記ガイドローラを当該ガイドローラの各端部を上記本管の周方向に移動させるべく回転駆動する回転駆動部とを有していることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記各アームは、上記回転駆動部に着脱自在に保持されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、上記本体の一端側の上記本管内を照らす照明手段と、上記本体の一端側の上記本管内を撮影するカメラとを備えていることを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、上記本体は、当該本体の移動方向に延在する筒状殻と、この筒状殻の外周面に嵌合された筒状弾性膜と、上記筒状殻と上記筒状弾性膜との間に流体を供給する流体供給部材とを有していることを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、上記本体は、上記筒状殻と上記筒状弾性膜との間から上記流体を排出する流体排出部材を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成された請求項1〜5に記載の発明によれば、本体が本管内を移動自在に構成され、ガイド手段が本体の移動方向の一端部に配置されているので、本管内における取付管の開口部に対応する位置であって、ライナー素材を本管から取付管に引き入れるのに最適な位置に、ガイド手段の位置を調整することができる。そして、ガイド手段にはライナー素材を本管から取付管へ方向変換すべく案内するガイドローラが設けられているので、ライナー素材を上記開口部に当接させることなく、取付管内に引き入れることができる。しかも、ライナー素材の移動によってガイドローラが自由に回転することになるので、ライナー素材の方向変換による抵抗をほとんど生じさせることなく、当該ライナー素材を取付管内に円滑に引き入れることができる。
【0012】
更に、ガイドローラの各端部を本管の周方向に移動させるべく当該ガイドローラを回転駆動する回転駆動部を備えているので、本管内における取付管の開口部が当該本管の周方向の異なる位置にある場合でも、ライナー素材を取付管に引き込むのに最適な方向にガイドローラの回転軸の傾きを調整することができる。
【0013】
従って、ライナー素材を本管から取付管に容易に引き入れることができると共に、この引き入れの際にライナー素材に損傷が生じるのを防止することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、各アームが回転駆動部に着脱自在に保持されているので、本管の内径に適した回転軸の長さを有するガイドローラにアームごと簡単に変更することができる。従って、本管の内径が異なる場合でも、ライナー素材を取付管内に円滑に引き入れることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、本体の一端側の本管内を照らす照明手段と、本体の一端側の本管内を撮影するカメラとを備えているので、本体の一端側のガイドローラの位置と、本体の一端側の本管内における取付管の開口部の位置とをカメラから出力される映像で確認することができる。従って、ライナー素材を本管から取付管に引き入れるのに最適な位置に、ガイドローラの位置を容易に調整することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、本体の移動方向に延在する筒状殻と、この筒状殻の外周面に嵌合された筒状弾性膜と、筒状殻と筒状弾性膜との間に流体を供給する流体供給部材とを有しているので、ライナー素材として例えば端部に鍔部を備えたものを用いた場合に、この鍔部が本管内における取付管の開口部の周囲に当接した状態において、流体を筒状殻と筒状弾性膜との間に供給して当該筒状弾性膜を膨出させることにより、上記鍔部を本管の内面に押圧して密着させることができる。
【0017】
従って、ライナー素材を取付管の内面に例えば密着させた状態で熱硬化させた場合には、鍔部も本管の内面に密着した状態にすることができる。
【0018】
また、鍔部に例えば熱硬化性の樹脂を含浸させておき、流体として高温の流体を筒状殻と筒状弾性膜との間に供給した場合には、鍔部も本管の内面に密着させた状態に熱硬化させることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、筒状殻と筒状弾性膜との間から流体を排出する流体排出部材を有しているので、筒状殻と筒状弾性膜との間の流体を、流体供給部材及び流体排出部材を介して循環させることができる。従って、例えば高温の流体を連続して筒状殻と筒状弾性膜との間に流通させることができるので、例えば熱硬化に時間を要する場合でも、上記鍔部を確実に硬化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態としての一実施の形態について図1〜図13を参照しながら説明する。
【0021】
この実施の形態で示す管路補修用作業装置1は、図1〜図7に示すように、下水管の補修に用いた例で示すものであって、地中Aに埋設された円筒状の本管P0に連通した状態に取り付けられた枝管としての円筒状の取付管P1の内面に補修ライナーL(図11参照)を施工する際に用いられるようになっており、本体2と、ガイド手段3と、照明手段4と、カメラ5を備えている。取付管P1は、この例では、本管P0から階段状に屈曲して地上A1に開口する桝P2に接続されている。桝P2は、家庭等から出された排水が流入するようになっている。
【0022】
本体2は、図3に示すように、鋼やアルミニウム等の金属で円筒状に形成された筒状殻21と、この筒状殻21の軸方向の一端部及び他端部に配置され、本管P0内における軸方向の移動を円滑にする4つの車輪22と、ゴム等の弾性体で筒状に形成され、筒状殻21の外周面に嵌合された筒状弾性膜23と、筒状殻21と筒状弾性膜23との間に温水や冷水などの水(流体)を供給する流体供給部材24と、筒状殻21と筒状弾性膜23との間から水を排出する流体排出部材25とを備えている。筒状弾性膜23の軸方向の各端部は、当該端部の周方向の全体を筒状殻21の外周面に押し付ける環状の締付バンド23aによって、当該筒状殻21に固定されるようになっている。
【0023】
そして、本体2は、図1に示すように、本管P0の下方に位置する内面上を車輪22を介して、当該本管P0の軸方向に移動自在になっている。この状態において、筒状殻21は、本体2の移動方向(即ち、本管P0の軸方向)に延在した状態になっている。
【0024】
また、流体供給部材24は、図3に示すように、管状に形成されたものであって、本体2が本管P0内に移動自在に設置された状態において、筒状殻21の内面の上部に位置すべく設けられており、当該筒状殻21及び流体供給部材24のそれぞれに形成された複数の貫通孔21a、24aを介して、水を筒状殻21と筒状弾性膜23との間に供給するようになってる。一方、流体排出部材25は、管状に形成されたものであって、筒状殻21の内面の下部に位置すべく設けられており、当該筒状殻21及び流体排出部材25のそれぞれに形成された貫通孔21b、25aを介して、水を筒状殻21と筒状弾性膜23との間から排出するようになってる。
【0025】
流体供給部材24は、図1及び図2に示すように、ワンタッチ継ぎ手を介して第1耐熱ホースD1の一端部に接続されるようになっており、第1耐熱ホースD1の他端部は、ワンタッチ継ぎ手を介して地上A1に設置された制御器Cに接続されるようになっている。一方、流体排出部材25は、ワンタッチ継ぎ手を介して第2耐熱ホースD2の一端部に接続されるようになっており、第2耐熱ホースD2の他端部は、ワンタッチ継ぎ手を介して制御器Cに接続されるようになっている。また、第1耐熱ホースD1及び第2耐熱ホースD2は、地上A1に開口すると共に、本管P0に接続されたマンホールMを介して、地上A1と本管P0との間に延在されるようになっている。
【0026】
制御器Cは、地上A1に設置されたボイラBから供給される水の温度及び流量を制御し、最適な温度及び流量の水を第1耐熱ホースD1に供給すると共に、第2耐熱ホースD2を介して戻ってきた水の圧力を調整することによって、筒状殻21と筒状弾性膜23との間に供給される水の圧力を制御するようになっている。この筒状殻21と筒状弾性膜23との間の水の圧力は、図2に示すように、流体排出部材25と第2耐熱ホースD2とを接続する中継ブロック25aに設けられた圧力センサ25bによって検出するようになっている。
【0027】
ガイド手段3は、図1〜図4に示すように、本体2の移動方向の一端部側に配置されたものであり、補修ライナーLの素材である変形自在な筒状のライナー素材L0を本管P0から取付管P1内に引き入れるべく案内するようになっており、ライナー素材L0を本管P0から取付管P1へ方向転換すべく案内する回転自在なガイドローラ31と、先端部でガイドローラ31の軸方向の各端部を支持する一対のアーム32と、上記本体2の一端部に設置され、上記各アーム32の基端部を保持すると共に、当該各アーム32を介して、ガイドローラ31を当該ガイドローラ31の各端部を本管P0の周方向に移動させるべく回転駆動する回転駆動部33とを備えた構成になっている。ライナー素材L0の一端部には、本管P0における取付管P1の開口部P1aの周囲の当該本管P0の内面に当接する鍔部L0aが設けられている。
【0028】
各アーム32には、ガイドローラ31より先端側に、フック部32aが一体的に設けられている。フック部32aは、円形状の孔を有しており、この孔に、例えば本体2を牽引するための紐等のロープを挿通して固定するようになっている。
【0029】
回転駆動部33は、図3に示すように、筒状殻21の一端部内に設置されたモータ33aと、このモータ31aの出力軸に同軸状に連結され、筒状殻21の一端側に突出した円筒状の中間部材33bと、この中間部材33bの外周面に設けられた一対のアーム取付部33cとを備えた構成になっている。各アーム取付部33cには、各アーム32の基端部が着脱自在に連結されて保持されるようになっている。そして、各アーム32は、各アーム取付部33cから筒状殻21の一端側に更に延在するようになっている。
【0030】
また、図7は、図2等で示したガイドローラ31より軸長の長いガイドローラ31、及び当該ガイドローラ31を支持し、各アーム取付部33cに連結可能に構成されたアーム32を示している。
【0031】
上記照明手段4は、図5及び図6に示すように、中間部材33bの先端側(ガイドローラ31側)の内周に沿って設けられた複数の発光ダイオードによって構成されており、本体2の一端側の本管P0内を照らすようになっている。この場合、照明手段4は、ガイドローラ31に対して本体2側に位置する本管P0の内面からガイドローラ31側の当該本管P0の内面を照射可能になっている。即ち、照明手段4は、本管P0に形成された取付管P1の開口部P1aと、ガイドローラ31との位置関係がカメラ5で確認することが可能なように本管P0内を照らし出すようになっている。
【0032】
また、上記カメラ5は、中間部材33b内における照明手段4の内側に設けられており、本体2の一端側の本管P0内を撮影するようになっている。即ち、カメラ5は、本管P0に形成された取付管P1の開口部P1aと、ガイドローラ31との位置関係が確認可能な画角を有している。
【0033】
そして、中間部材33bの先端部は、照明手段4及びカメラ5を覆う透明ガラス(透明カバー)33dによって閉塞されており、当該中間部材33bの基端部は、電気コードを気密に挿通すべく構成された盲部材33eによって閉塞されている。
【0034】
また、圧力センサ25b、照明手段4、カメラ5等に接続された電気コードや電源ケーブル等のケーブルEは、図1に示すように、本体2の他端部から外方に延在し、マンホールMを介して制御器Cに接続されている。また、このケーブルEは、地上A1に配置されたケーブルドラムFによって巻き取りが可能になっている。
【0035】
次に、上記管路補修用作業装置1を用いて取付管P1に補修ライナーLを施工する管路の補修方法について、図8〜図13を参照して説明する。但し、これらの図においては、桝P2の図示を省略している。
【0036】
まず、図8に示すように、照明手段4及びカメラ5を用いて、本管P0内を撮影した映像をCRT等のモニタで確認しならが、本管P0における取付管P1の開口部P1aの位置に対するガイドローラ31の位置を決める。この際、ガイドローラ31の位置は、アーム32のフック部32aに連結したロープを、例えば本体2の先端側に設けられたマンホール側から引いて、管路補修用作業装置1を移動することによって行う。
【0037】
これにより、ライナー素材L0を本管P0から取付管P1に引き入れるのに最適な位置に、ガイドローラ31の位置を調整することができる。
【0038】
そこで、図8及び図9に示すように、先端に内視カメラGを取り付けた引込用ロープHを地上A1側から取付管P1内に挿入し、内視カメラGを一対のアーム32の間を通すと共に、本管P0内を本体2の先端側に送る。そして、引込用ロープHから内視カメラGを取り外した後、図10に示すように、熱硬化性樹脂としての例えばエポキシ樹脂を鍔部L0aにも含浸させたライナー素材L0の他端部を引込用ロープHの先端部にくくり付けて、当該引込用ロープHを地上A1側に引く。
【0039】
そうすると、ライナー素材L0がガイドローラ31を介して本管P0から取付管P1に向きを変えながら、スムーズに移動することになる。そして、鍔部L0aが開口部P1aの周囲に当接することによって、ライナー素材L0の取付管P1における位置が決まる。なお、鍔部L0aは、筒状のライナー素材L0と同様の変形自在な素材で形成いることから、一対のアーム32の間より大きな外径を有する場合でも、当該アーム32間をスムーズに通過することが可能である。
【0040】
次に、図11に示すように、筒状殻21の軸方向の中央部が開口部P1aの真下となるように、管路補修用作業装置1を移動してから、筒状殻21と筒状弾性膜23との間に、所定の圧力及び温度の温水を循環させることによって、筒状弾性膜23を膨張させ、当該筒状弾性膜23によって鍔部L0aを本管P0の内面に押し付ける。
【0041】
また、ライナー素材L0内に、当該ライナー素材L0の他端開口部から熱硬化治具Jを挿入する。熱硬化治具Jは、図12に示すように、他端から供給された水を一端から排出する屈曲自在なホースJ1と、このホースJ1を囲むように配置され、一端部でホースJ1の一端から流出した水を受けると共に、この水をホースJ1の周囲を通して他端側から排出する膨出筒J2とを備えている。
【0042】
次に、ライナー素材L0に挿入された熱硬化治具JのホースJ1に、所定の圧力及び温度の温水をボイラBから制御器Cを介して供給することにより、ホースJ1の一端(この例では下端)から噴出する所定の圧力の温水で膨出筒J2を膨張させることによって、当該膨出筒J2を介してライナー素材L0を取付管P1の内面に押し付けて密着させる。
【0043】
この場合、開口部P1aが筒状弾性膜23で閉塞されているので、図12に示すように、膨出筒J2が本管P0内に膨出するのを防止することができる。なお、膨出筒J2が本管P0内に膨出した場合には、当該膨出筒J2が破損するおそれがある。
【0044】
そして、筒状殻21と筒状弾性膜23との間及び膨出筒J2内に温水を循環させることにより、ライナー素材L0及び鍔部L0aを熱硬化させた後、筒状殻21と筒状弾性膜23との間及び膨出筒J2内に冷水を循環させて、ライナー素材L0及び鍔部L0aを冷却する。その後、筒状殻21と筒状弾性膜23との間及び膨出筒J2内等から水を抜いてから、熱硬化治具Jを取付管P1から抜く。これにより、取付管P1及び本管P0の開口部P1aの周囲が補修ライナーL及び鍔部L0aによって補修された状態になる。
【0045】
また、管路補修用作業装置1は、他の取付管P1を補修するために更に利用するか、マンホールMを介して地上A1に引き上げることになる。
【0046】
なお、筒状弾性膜23で鍔部L0aを本管P0の内面に押し付ける前で、かつ熱硬化治具JのホースJ1内に温水を供給する前に、当該ホースJ1に圧縮空気を供給して、膨出筒J2を膨出させることにより、取付管P1とライナー素材L0とのセンタ合わせを行うことが好ましい。この場合には、開口部P1aと鍔部L0aとのセンタが合った状態で、ライナー素材L0及び鍔部L0aを硬化させることができるので、図13に示すような開口部P1aと鍔部L0aとのセンタとがずれたまま硬化することによる弊害を防止することができる。
【0047】
上記のように構成された管路補修用作業装置1によれば、本体2が本管P0内を移動自在に構成され、ガイド手段3が本体2の移動方向の一端部に配置されているので、本管P0内における取付管P1の開口部P1aに対応する位置であって、ライナー素材L0を本管P0から取付管P1に引き入れるのに最適な位置に、ガイド手段3の位置を調整することができる。しかも、ガイド手段3にはライナー素材L0を本管P0から取付管P1へ方向変換すべく案内するガイドローラ31が設けられているので、ライナー素材L0を開口部P1aに当接させることなく、取付管P1内に引き入れることができる。更に、ライナー素材L0の移動に伴ってガイドローラ31が自由に回転することになるので、ライナー素材L0の移動抵抗をほとんど生じさせることなく、当該ライナー素材L0を取付管P1内に円滑に引き入れることができる。
【0048】
また、回転駆動部33を備えているので、図4に示すように、本管P0内における取付管P1の開口部P1aが当該本管P0の真上に位置していない場合でも、ライナー素材L0を取付管P1に引き込むのに最適な方向にガイドローラ31の回転軸の傾きを調整することができる。
【0049】
従って、ライナー素材L0を本管P0から取付管P1に容易に引き入れることができると共に、この引き入れの際にライナー素材L0が開口部P1aに擦れて損傷するのを確実に防止することができる。
【0050】
また、各アーム32が回転駆動部33に着脱自在に連結されるように構成されているので、本管P0の内径に適した軸長のガイドローラ31にアーム32ごと簡単に変更することができる。従って、本管P0の内径が異なる場合でも、ライナー素材L0を取付管P1内に円滑に引き入れることができる。
【0051】
更に、本体2の一端側の本管P0内を照らす照明手段4と、本体2の一端側の本管P0内を撮影するカメラ5とを備えているので、本体2の一端側のガイドローラ31の位置と、本体2の一端側の本管P0内の開口部P1aの位置とをカメラ5から出力される映像で確認することができる。従って、ライナー素材L0を本管P0から取付管P1に引き入れるのに最適な位置に、ガイドローラ31の位置を容易に調整することができる。
【0052】
また、本体2の移動方向に延在する筒状殻21と、この筒状殻21の外周面に嵌合された筒状弾性膜23と、筒状殻21と筒状弾性膜23との間に水を供給する流体供給部材24と、筒状殻21と筒状弾性膜23との間から水を排出する流体排出部材25を有しているので、ライナー素材L0の鍔部L0aを本管P0の内面に押圧して密着させることができる。
【0053】
従って、ライナー素材L0の鍔部L0aを本管P0の内面に密着した状態に硬化させることができる。
【0054】
なお、上記実施の形態においては、ロープで引っ張ることにより、本体2を移動すべく構成した構成したが、当該本体2は、車輪22を回転駆動することにより、本管P0内を軸方向に自走できるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の一実施の形態として示した管路補修用作業装置及びこの管路補修用作業装置を用いた補修工事の状況を示す断面図である。
【図2】同管路補修用作業装置の平面図である。
【図3】同管路補修用作業装置の側断面図である。
【図4】同管路補修用作業装置の先端からの矢視図である。
【図5】同管路補修用作業装置における照明手段及びカメラを有する中間部材の断面図である。
【図6】同管路補修用作業装置における照明手段及びカメラを有する中間部材の正面図である。
【図7】同管路補修用作業装置における交換可能な他のガイドローラ及びアームを示す平面図である。
【図8】同管路補修用作業装置の作用を示す図であって、地上側から引込用ロープを取付管内に挿入する途中を示す説明図である。
【図9】同管路補修用作業装置の作用を示す図であって、地上側から取付管内に挿入した引込用ロープの先端部をアームの間に挿入した後の状態を示す説明図である。
【図10】同管路補修用作業装置の作用を示す図であって、引込用ロープでライナー素材を本管から取付管に引き込む途中の状態を示す説明図である。
【図11】同管路補修用作業装置の作用を示す図であって、ライナー素材の鍔部を筒状弾性膜で本管の内面に押圧し、かつライナー素材を取付管の内面に密着させた状態を示す説明図である。
【図12】同管路補修用作業装置の作用を示す図であって、ライナー素材の鍔部を筒状弾性膜で本管の内面に押圧しない場合に、熱硬化治具の膨出筒が本管内に膨出する状態を示す説明図である。
【図13】同管路補修用作業装置の作用を示す図であって、開口部と鍔部とのセンタ合わせをしない場合の弊害を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 管路補修用作業装置
2 本体
3 ガイド手段
4 照明手段
5 カメラ
21 筒状殻
23 筒状弾性膜
24 流体供給部材
25 流体排出部材
31 ガイドローラ
32 アーム
33 回転駆動部
L 補修ライナー
L0 ライナー素材
P0 本管
P1 取付管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本管に連通された取付管の内面に補修ライナーを施工する際に用いられる管路補修用作業装置であって、
上記本管内を軸方向に移動自在な本体と、
この本体の移動方向の一端部に配置され、上記補修ライナーの素材である変形自在な筒状のライナー素材を上記本管から上記取付管内に案内するガイド手段とを備えてなり、
上記ガイド手段は、上記ライナー素材を上記本管から取付管へ方向転換すべく案内するガイドローラと、先端部で上記ガイドローラの軸方向の各端部を支持する一対のアームと、上記本体の一端部に設置され、上記各アームの基端部を保持すると共に、当該各アームを介して、上記ガイドローラを当該ガイドローラの各端部を上記本管の周方向に移動させるべく回転駆動する回転駆動部とを有していることを特徴とする管路補修用作業装置。
【請求項2】
上記各アームは、上記回転駆動部に着脱自在に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の管路補修用作業装置。
【請求項3】
上記本体の一端側の上記本管内を照らす照明手段と、上記本体の一端側の上記本管内を撮影するカメラとを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管路補修用作業装置。
【請求項4】
上記本体は、当該本体の移動方向に延在する筒状殻と、この筒状殻の外周面に嵌合された筒状弾性膜と、上記筒状殻と上記筒状弾性膜との間に流体を供給する流体供給部材とを有していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の管路補修用作業装置。
【請求項5】
上記本体は、上記筒状殻と上記筒状弾性膜との間から上記流体を排出する流体排出部材を有していることを特徴とする請求項4に記載の管路補修用作業装置。
【請求項1】
本管に連通された取付管の内面に補修ライナーを施工する際に用いられる管路補修用作業装置であって、
上記本管内を軸方向に移動自在な本体と、
この本体の移動方向の一端部に配置され、上記補修ライナーの素材である変形自在な筒状のライナー素材を上記本管から上記取付管内に案内するガイド手段とを備えてなり、
上記ガイド手段は、上記ライナー素材を上記本管から取付管へ方向転換すべく案内するガイドローラと、先端部で上記ガイドローラの軸方向の各端部を支持する一対のアームと、上記本体の一端部に設置され、上記各アームの基端部を保持すると共に、当該各アームを介して、上記ガイドローラを当該ガイドローラの各端部を上記本管の周方向に移動させるべく回転駆動する回転駆動部とを有していることを特徴とする管路補修用作業装置。
【請求項2】
上記各アームは、上記回転駆動部に着脱自在に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の管路補修用作業装置。
【請求項3】
上記本体の一端側の上記本管内を照らす照明手段と、上記本体の一端側の上記本管内を撮影するカメラとを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管路補修用作業装置。
【請求項4】
上記本体は、当該本体の移動方向に延在する筒状殻と、この筒状殻の外周面に嵌合された筒状弾性膜と、上記筒状殻と上記筒状弾性膜との間に流体を供給する流体供給部材とを有していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の管路補修用作業装置。
【請求項5】
上記本体は、上記筒状殻と上記筒状弾性膜との間から上記流体を排出する流体排出部材を有していることを特徴とする請求項4に記載の管路補修用作業装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−46021(P2006−46021A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232240(P2004−232240)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(591047866)株式会社カンツール (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(591047866)株式会社カンツール (4)
【Fターム(参考)】
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