説明

箱形罠装置

【課題】捕獲する小動物の種類に合わせて落下式の扉をセットする高さを調節できるようにして、小さく俊敏な小動物に逃げられてしまうことを防止できる箱形罠装置を提供する。
【解決手段】トリガー3は捕獲獣を感知する餌箱4と、その感知作用により扉2の動作を制御する係合挿入部302aを備える進退部材30を有している。扉2には係合挿入部302aと協働して扉2の仕掛け高さを調節する複数の係合受部が設けられ、係合受部は係合挿入部302aが挿入される係合孔200を備えており、進退部材30は常時扉2の方向へ付勢されており、トリガー3が作動して扉2が最下部まで落下したときには係合挿入部302aは落下した扉2の上側に突出して扉2が上がるの防止するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱形罠装置に関するものである。更に詳しくは、落とし扉をセットする高さを、捕獲する小動物の種類に合わせて調節できるようにして、例えばより小さく俊敏な小動物に逃げられてしまうことを防止できる箱形罠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イノシシ等の大型獣ではなく、アライグマ、キツネ、イタチ或いはテン等の小動物用の捕獲装置としては、例えば箱体の開口部に落とし扉を設け、侵入した小動物を赤外線等を利用したセンサで検出したり、小動物が餌や餌容器(餌箱)を動かすときのその動きを機械的に検出したりして、落とし扉を閉じることにより、小動物を捕獲する構造のものが使用されている。このような小動物用捕獲装置としては、例えば特許文献1の動物捕獲器がある。
【0003】
特許文献1に開示された動物捕獲器は、筒体<1>の両端に出入口<2>を設け、筒体の内部を素通しにして捕獲対象動物の通り道とし、筒体内に侵入した動物をセンサ<5>で検知し、その検知信号で電磁ロック手段<4>による扉<3>の開位置でのロックを解除し、各出入口<2>の扉<3>を同時に閉じて侵入した動物を閉じ込めるようにして、人間に害を及ぼす鼠などを効果的に捕獲できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−169587
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の動物捕獲器には、次のような課題があった。
すなわち、動物捕獲器は、扉をセットする高さを捕獲する小動物の種類に合わせて、例えば比較的大きい小動物用としては開口部を拡げるために扉をより高い位置にセットし、比較的小さい小動物用としては開口部を狭めるために扉をより低い位置にセットする等、扉をセットする高さを調節できるようにはなっていない。したがって、扉が落ちるまでの時間が一様であり、比較的大きく動きが鈍い小動物は捕獲できても、より小さく俊敏な小動物には逃げられてしまうおそれがあった。
【0006】
また、ロックが外れて一旦落ち始めた扉は、自重で落ちているだけで、下降する方向へも上昇する方向へも自由に動くことができる。したがって、扉に何らかの外力が作用すれば落下が止まることもあるし、跳ね上がることもあり、例えば落下中の扉が小動物の尻尾に当たって止まり、続いて小動物があわてて暴れることで扉をそのまま跳ね上げて逃げてしまうおそれがあった。
【0007】
(本発明の目的)
本発明は、落とし扉をセットする高さを捕獲する小動物の種類に合わせて調節できるようにして、例えばより小さく俊敏な小動物に逃げられてしまうことを防止できる箱形罠装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の他の目的は、前記目的に加えて、ロックが外れて一旦落ち始めた扉に上昇する方向に外力が作用しても、ある高さ以上は上昇しないようにして開口部の大きさができるだけ小さくなるようにし、小動物の逃げ出しを最小限に抑えることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、
落下式扉を有する箱形罠装置であって、
捕獲室を有する罠本体と、 前記捕獲室に通じる入り口を閉塞する落下式の扉と、当該扉を作動させるトリガー手段と、
を備えており、
前記トリガー手段は、
前記捕獲室内に居る捕獲獣を感知する感知要素と、
前記感知要素の感知作用により前記扉の動作を制御する、少なくとも二つの係合挿入部を備える作動制御要素と、
を有しており、
前記扉は、板材で作られるか、少なくとも板材部分を有し、板面には、前記係合挿入部と協働して扉の仕掛け高さを調節する高さ調節手段が形成されており、
前記高さ調節手段は、板面の上下方向に形成されている複数の係合受部で構成され、各係合受部は、前記係合挿入部が挿入される少なくとも二つの係合孔を備えており、
前記作動制御要素は、常時扉の方向へ付勢されており、トリガー手段が作動して前記扉が最下部まで落下したときには、前記作動制御要素の係合挿入部は、落下した扉の上側に突出して扉が上がるの防止するように構成されている、
箱形罠装置である。
【0010】
(2)本発明は、
感知要素は、捕獲獣が触れることによって捕獲室内に居ることを感知する、
前記(1)の箱形罠装置である。
【0011】
(3)本発明は、
トリガー手段の各係合挿入部は共通の部材に設けられており、該部材は各係合挿入部の高さが変動する方向へ振動又は揺動ができるようにしてある、
前記(1)又は(2)の箱形罠装置である。
【0012】
(4)本発明は、
落下式の扉をセットする際にトリガー手段の各係合挿入部と各係合受部の係合孔との係合深さを調節する係合深さ調節手段を備えている、
前記(1)、(2)又は(3)の箱形罠装置である。
【0013】
(5)本発明は、
落下式の扉がある高さまで下降したときに、その高さ以上への上昇を止める上昇止め手段を備えており、該上昇止め手段が高さ方向に所要数設けられている、
前記(1)、(2)、(3)又は(4)の箱形罠装置である。
【0014】
(6)本発明は、
罠本体の餌又は餌容器が配される場所の近傍に、取付軸を中心として回動することにより開閉ができる蓋部材が設けられている、
前記(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)の箱形罠装置である。
【0015】
本明細書及び特許請求の範囲にいう「感知要素」としては、例えば各種センサ等の電気的要素の他、小動物が接触することで動いたり壊れるようになっている各種機械的要素があげられる。
【0016】
(作用)
本発明に係る箱形罠装置の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0017】
箱形罠装置(A1)を獣道等に仕掛ける。仕掛ける際には、まず落下式の扉(2)を上昇させ、トリガー手段(3)の各係合挿入部(302a,302b)を所要の組の係合受部(21,22,23,24)の各係合孔(200)に係合させてセットする。これにより、捕獲しようとする小動物に最も適した高さに落下式の扉(2)をセットすることができる。
感知要素(4)が罠本体(1)内に小動物が侵入したことを感知すると、トリガー手段(3)は各係合挿入部(302a,302b)と各係合孔(200)との係合を解除する。
【0018】
これにより落下式の扉(2)は落下する。このとき、落下式の扉(2)は係合孔(200)の方向へ付勢されている各係合挿入部(302a,302b)と接触しないで落下することもあるが、場合によっては付勢力で戻った各係合挿入部(302a,302b)と接触しながら落下することもある。
落下式の扉(2)が最下部まで落ちると、トリガー手段(3)の係合挿入部(302a,302b)が落下式の扉(2)の上側で扉(2)を超えて突出し、落下式の扉(2)が上昇しないように止めるストッパーとなる。このように、入り口(15)を封鎖した落下式の扉(2)は開かないので、罠本体(1)内に入った小動物は捕獲される。
【0019】
トリガー手段(3)の各係合挿入部(302a,302b)は共通の部材(32)に設けられており、該部材(32)は各係合挿入部(302a,302b)の高さが変動する方向へ振動又は揺動ができるようにしてあるものは、落下式の扉(2)が各係合挿入部(302a,302b)と接触しながら落下する際に、部材(32)が振動又は揺動することにより各係合挿入部(302a,302b)と各係合受部(21,22,23,24)の係合孔(200)とが合致しにくく、落下式の扉(2)を途中で止まることなく円滑に落下させることができる。
【0020】
落下式の扉(2)をセットする際にトリガー手段(3)の各係合挿入部(302a,302b)と各係合受部(21,22,23,24)の係合孔(200)との係合深さを調節する係合深さ調節手段(32)を備えているものは、例えば係合深さをより浅くして感度を鋭くし、係合深さをより深くして感度を鈍くする等、作動感度の調節ができる。
【0021】
落下式の扉(2)がある高さまで下降したときに、その高さ以上への上昇を止める上昇止め手段(25,25a,25b)を備えており、該上昇止め手段(25,25a,25b)が高さ方向に所要数設けられているものは、落下式の扉(2)が一旦上昇止め手段(25,25a,25b)がある高さまで下降すると、仮に落下式の扉(2)が小動物に触れて止まったとしても、それ以上の高さに上昇することはなく、後は閉じる方向に落ちるしかないので、小動物の逃げ出しを最小限に抑えて、より確実に捕獲することができる。
【0022】
罠本体(1)の餌又は餌容器(4)が配される場所の近傍に、取付軸(141)を中心として回動することにより開閉ができる蓋部材(14)が設けられているものは、蓋部材(14)を開いた開口部から餌又は餌容器(4)が配される場所が近いので、餌の補充や交換がしやすい。また、罠本体(1)の内部の様子を確認する覗き口にもなり、狩猟者は捕獲した小動物の種類や数及び状態等の確認を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の箱形罠装置は、仕掛ける際にトリガー手段の各係合挿入部を落下式の扉の所要の組の係合受部の各係合孔に係合させてセットすることにより、捕獲しようとする小動物に最も適した高さを選択して落とし扉をセットすることができ、例えばより小さく俊敏な小動物に逃げられてしまうことを防止できるので、捕獲対象の小動物をより確実に捕獲することができる。
【0024】
また、上昇止め手段が高さ方向に所要数設けられているものは、落下式の扉が一旦上昇止め手段がある高さまで下降すると、仮に落下式の扉が小動物に触れて止まったとしても、それ以上の高さに上昇することはなく、後は閉じる方向に落ちるしかないので、小動物の逃げ出しを最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る箱形罠装置の第1の実施の形態を示す前方から見た斜視図。
【図2】箱形罠装置の後方から見た斜視図。
【図3】上昇止め金具の作用を示す説明図。
【図4】箱形罠装置の仕掛け状態及び作動している状態を示す断面説明図。
【図5】箱形罠装置により小動物が捕獲された状態を示す断面説明図。
【図6】箱形罠装置の第2の実施の形態を仕掛けた状態を示す断面説明図。
【図7】箱形罠装置の第3の実施の形態を仕掛けた状態を示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1乃至図5を参照する。
箱形罠装置A1は、金属板で形成された罠本体1と、同じく金属板で形成された落下式の扉である落とし扉2と、落とし扉2をセット状態で支えると共に作動時に落下させるトリガー3(感知要素である餌容器4(図4参照)を含む)を備えている。
なお、以下の説明において、箱形罠装置A1の落とし扉2が設けられている側を「前側」とし、後述する後蓋板14が設けられている側を「後側」として、位置関係や方向等を説明する場合がある。
【0027】
罠本体1は、長方形状の底板10、側板11、12、天板13及び後蓋板14で構成されており、内部が捕獲室16となっている。各板10、11、12、13、14は、接続側の端縁部が折り曲げられ、ネジ又はビスで固定され、一方が後蓋板14で封鎖された角筒状に形成されており、後蓋板14と反対側には、捕獲対象獣である小動物の侵入口となる入り口15が設けられている。
【0028】
側板11、12の上部側には、ほぼ全長にわたり所要数の通気口110、120が設けられている。また、後蓋板14は、上部にツマミ140を有し、側板11、12間に内嵌めされ、下部寄りが取付軸141で側板11、12に対し取り付けられている。後蓋板14は、取付軸141を中心として上部側が後側へ開くように回動することができ(図4参照)、閉塞状態では上端部両側を蝶ネジ142で天板13に固定するようにしてある。
【0029】
罠本体1の後蓋板14とは反対側の端部には、入り口15の開放及び閉塞を行う前記落とし扉2が設けられている。落とし扉2は、上端と下端の縁部が前側へ曲げられて補強されている。落とし扉2は、入り口15を構成している側板11、12の端縁部に沿って鉛直に固定されているガイド部材20、20aの内側に設けられている嵌装部29間に昇降自在に嵌装されている。ガイド部材20、20aの上端部は、補強のために連結部材28でつながれている。
【0030】
落とし扉2の下側には、上下方向に等間隔で四組の係合受部21、22、23、24が設けられている。各係合受部21、22、23、24は高さ調節手段を構成し、それぞれ水平方向に一定間隔で設けられ表裏を貫通した係合孔200で構成されている。また、落とし扉2の下端縁部には、係合孔200の横方向の間隔と同じ間隔で二箇所に、係合凹部201が半円形に切り欠くようにして設けられている。
【0031】
一方のガイド部材20の嵌装部29より後部側には、L板状の取付台具202が固定されている。取付台具202には、上昇止め手段である上昇止め具25、25a、25bが上下方向に等間隔で取り付けられている。各上昇止め具25、25a、25bは、図3に示すように互いに同じ構造を有しており、それぞれ回動金具250を有している。回動金具250は板状であり、基部側を取付台具202にネジ251で回動自在に止められている。回動金具250の先端部には、前側へ突出した止め部252が形成されており、止め部252の基部には錘となる錘ネジ253が固定されている。
【0032】
各上昇止め具25、25a、25bは、錘ネジ253の作用により、隣に落とし扉2がない状態では、止め部252の先端部が落とし扉2の位置より前に出た状態(又は重なる状態)で静止するようになっている(図3の上昇止め具25、25aを参照)。なお、セット時等、落とし扉2が隣にある状態では、止め部252は先端部が落とし扉2に当接し、前記に比べてやや後退回動した状態で静止するようになっている(図3の上昇止め具25bを参照)。
【0033】
また、天板13には、前記トリガー3が設けられている。トリガー3は、棒体で形成された作動制御要素である進退部材30を有している。進退部材30は、所要長さの直棒部300を有し、直棒部300の先部には、直棒部300と所要角度(本実施の形態では20°程度)で傾斜した傾斜部301を有している。傾斜部301の先端には、左右両側に係合挿入部302a、302bを有するコ字状の先端具302が固定されている。
【0034】
進退部材30は、天板13の上面の前端寄りに固定されたガイド具36と、後端寄りに固定されたガイド具37にわたるように前後方向へ進退動自在に装入されている。図4乃至図7に示すようにガイド具36は、滑車360を有し、そのやや上方には所要間隔をおいて止めピン361を有している。また、ガイド具37は、滑車370を有している。
進退部材30は、直棒部300と傾斜部301との境界部近傍を前部のガイド具36の止めピン361と滑車360の間に通すようにし、直棒部300の後部側を後部のガイド具37の滑車370の下を通すようにしてある。
【0035】
この状態では、直棒部300は天板13と接触せず上方へ離してあり、作動時の摩擦抵抗を緩和すると共に、冬期において天板13との間で雨水や露水が凍結することによりトリガー3が作動しなくなることを防止できるようになっている。また、傾斜部301が下方へ傾斜していることで重心が下がり、進退部材30の軸周方向への転動が大きくならないよう抑制されるが、先端具302の左右のバランスをとりながら直棒部300を中心として軸周方向へ容易に振動又は揺動し、この振動又は揺動により係合挿入部302a、302bの高さは変動し、同じ高さで長く維持されることが防止できる。また、傾斜部301の一部は、作動時、進退部材30が後退したときに滑車360に乗り上げるので、それにより進退部材30に生じる元に戻ろうとする力が進退部材30が戻しバネ34の付勢力で前方へ戻るときの加勢になる。
【0036】
直棒部300の前端寄りには、係合深さ調節手段である感度調節具31が直棒部300に沿って移動調節ができるようにしてネジ止めされている。直棒部300の後端寄りには、掛け具33が直棒部300に沿って移動調節ができるようにしてネジ止めされている。また、直棒部300の中間部より後方には、バネ止め具32が直棒部300に沿って移動調節ができるようにしてネジ止めされている。バネ止め具32とガイド具37の間には、圧縮コイルバネである戻しバネ34が嵌装されている。掛け具33は、直棒部300に沿って移動調節することで後述するワイヤ330の張りを調節することができる。
【0037】
なお、前記感度調節具31は、直棒部300に沿って移動調節することにより、前記係合挿入部302a、302bの戻しバネ34で押されることで前方向に進出する限界位置を調節することができる。これにより、係合挿入部302a、302bと係合孔200との掛かりの深さ、すなわち作動感度を調節することができる。また、バネ止め具32は、直棒部300に沿って移動調節することにより、戻りバネ34の反発力を調節して、作動後の進退部材30の戻り方向の付勢力を調節することができる。
【0038】
天板13の後端寄りには、通し孔130が貫通して設けられている。通し孔130は、後述する感知ロッド35の上部が貫通した状態で前後方向へ進退動ができるように前後方向に長い長孔である。また、天板13の後端寄りの下面側(内面側)には、軸支具38が固定されている。軸支具38には、感知ロッド35が軸380により上部寄りを軸支して前後方向に回動自在に取り付けられている。
【0039】
感知ロッド35の上部側は、前記通し孔130を貫通し、天板13の上面側へ突出している。感知ロッド35の上端部と前記掛け具33は、ワイヤ330によってつながれている。なお、ワイヤ330の長さは、前記進退部材30がセット位置にあり、感知ロッド35が鉛直方向となっているときに、ワイヤ330がほぼ緩みなく緊張する長さに設定されている(図4参照)。
【0040】
捕獲室16の後端側(後蓋板14の近傍)の下部側中央には、上部が開放され開放部に餌を入れる餌容器4が配されている。餌容器4の後端部には、係合部40が上方へ延長して設けられている。また、餌容器4の底部下面側の後端部寄りには、下方へ突出した部分に係合凹部41が形成されている。係合部40は、後方から前方へ動くことで前記感知ロッド35の下部側に係合し前方へ回動させる構造である。
【0041】
餌容器4は、側板11、12間に水平に架設されている受けロッド101に載置されている。餌容器4は、底部の係合凹部41を受けロッド101に回動自在に嵌め入れ、係合部40を感知ロッド35の後方に位置させて係合させてあり、この状態がセット位置となる(図4参照)。また、この状態では、餌容器4の底部の下面がほぼ水平になり、バランスがとれている。なお、餌容器4に餌を入れるときには、このバランスが崩れないようにする。
【0042】
また、受けロッド101の更に後方のやや高い位置には、側板11、12の内面側に突出して係止ピン102が設けられている。各係止ピン102は、後述するように後蓋板14の上部側を開くときに後蓋板14の下端部両側を止めて、後蓋板14が必要以上に開きすぎないようにするものである(図4参照)。
【0043】
(作用)
主に図4及び図5を参照して箱形罠装置A1の作用を説明する。
箱形罠装置A1を獣道等に仕掛ける。仕掛ける際には、図4に示すように落とし扉2を上昇させ、トリガー3の進退部材30を構成している係合挿入部302a、302bを所要の組の係合受部(本実施の形態では最も下の段の係合受部24)の各係合孔200に係合させてセットする。
【0044】
また、より小さい小動物を捕獲使用とする場合は、更に上の段の係合受部21、22、23の何れかの組の各係合孔200に係合させ、落とし扉2をより低い高さでセットするようにする。これにより、落とし扉2が落ちるまでの時間が短縮され、より小さく俊敏な小動物の捕獲ができるようになる。このように、捕獲しようとする小動物に最も適した高さに落とし扉2をセットすることができる。
【0045】
落とし扉2のセット状態では、前記のように感知ロッド35は、鉛直方向又はほぼ鉛直方向となっており、感知ロッド35の下部側の後部には、餌容器4の係合部40が接している。なお、餌容器4には餌(図示省略)が適量入れられ、前記水平状態を保つようにバランスがとられている。餌は後蓋板14を開いて、後部側から入れることができる。
【0046】
そして、罠本体1の入り口15から小動物5が侵入し、餌を食べようとして餌容器4の前部に足を掛ける等して下に落とすと、係合部40が感知ロッド35の下部側を前に押し回し、感知ロッド35の上部側は反対に後退して、ワイヤ330でつながっている進退部材30を後方へ引く。進退部材30が後退すると、戻しバネ34が圧縮されるので、進退部材30は戻しバネ34の付勢力で直ちに前方向へ戻ろうとする。
【0047】
このように、進退部材30に前方向へ戻る動きをさせるには、連動する餌容器4も水平に戻る必要があるが、例えば作動時においてワイヤ330が緩んだり切れるように太さを調節し、或いは結び方に工夫をしておけば、作動後に餌容器4を水平に戻さなくても進退部材30だけを前方向へ戻すことができる。
【0048】
前記のように進退部材30が後方へ引かれることにより、進退部材30の先端の係合挿入部302a、302bが係合受部24の各係合孔200から抜け外れ、落とし扉2は自重で落下する。このとき、落とし扉2は係合孔200の方向へ付勢されている各係合挿入部302a、302bと接触しないで落下することもあるが、場合によっては戻しバネ34の付勢力で戻った各係合挿入部302a、302bと接触しながら落下することもある。
【0049】
その場合において、進退部材30が軸周方向に振動又は揺動することにより各係合挿入部302a、302bの高さが変動し、同じ高さで長く維持されることが防止できるので、一方側の係合挿入部302aと他方側の係合受部302bとが同時に同じ高さの係合孔200と合致する可能性は極めて小さい。これにより、落とし扉2を途中で停止させることなく円滑に落下させることができる。
【0050】
また、前記作用は、落とし扉2をガイド部材20、20aの嵌装部29に動きに多少遊びをもって嵌装して、いわゆるガタが生じるように構成してあると、前記係合挿入部302aと係合受部302bが同時に同じ高さの係合孔200と合致する可能性をより小さくすることができる。
なお、落とし扉2が落ちる際、例えばその上端部が図3に示すように、中段の上昇止め具25aを超えると、その瞬間、上昇止め具25aが前方側へ回動し、上部側の上昇止め具25と同じように止め部252の先端部が落とし扉2の後面位置より前に出た状態になる。
【0051】
これにより、仮に落とし扉2が小動物5の尻尾等に触れて止まったり跳ね返ったとしても、落とし扉2は上昇止め具25aの止め部252で止められ、それ以上の高さに上昇することはない。そして、後は閉じる方向に落ちるしかないので、小動物5の逃げ出しを最小限に抑えて、より確実に捕獲することができる。しかも、本実施の形態では上昇止め具25、25a、25bが三段階(複数段階)であるので、前記のような落とし扉2の落下途中の上昇を止める作用が段階的又は小刻みに発揮され、小動物5の逃げ出しの防止効果はより高い。
【0052】
落とし扉2が最下部まで落ちると、トリガー3の進退部材30の係合挿入部302a、302bが落とし扉2の上側で落とし扉2を超えて前方へ突出し、落とし扉2が上昇しないように止めることができる。また、落とし扉2の内面側には凹凸がほとんどなく、捕獲した小動物5の爪等が掛かる部分もないので、小動物5が捕獲室16内で暴れても、閉じた落とし扉2を開けることは難しい。このように、入り口15を封鎖した落とし扉2を捕獲室16内に入った小動物5が開けることは困難であるので、小動物5はより確実に捕獲される。
【0053】
なお、箱形罠装置A1が作動し落とし扉2が入り口15を閉塞した後も、通気口110、120により、捕獲室16内の通気が確保されている。
また、捕獲された小動物5の種類や数及び状態等を確認したい場合は、後蓋板14の上部側を少し開き、内部を覗いて確認することができる。
【0054】
図6を参照し、本発明の第2の実施の形態である箱形罠装置A2について説明する。なお、図6において、前記箱形罠装置A1と同一又は同等箇所には同一の符号を付して示し、構造や作用について重複する説明は省略する。
【0055】
箱形罠装置A2は、前記箱形罠装置A1における餌容器4の代替として内部に餌を入れた餌袋4aを使用している。
感知ロッド35の下端部と餌袋4aは紐42でつながれている。紐42の長さは、進退部材30がセット位置にあり、感知ロッド35が鉛直方向となっているときに、紐42がほぼ緩みなく緊張する長さに設定されている。
【0056】
そして、箱形罠装置A2をセットした後、捕獲室16内に侵入した小動物5が餌袋4aを引っ張り、感知ロッド35の下側が前方へ回動することにより進退部材30が後方へ引かれて落とし扉2が落ちるようになっている。
【0057】
図7を参照し、本発明の第3の実施の形態である箱形罠装置A3について説明する。なお、図7において、前記箱形罠装置A1と同一又は同等箇所には同一の符号を付して示し、構造や作用について重複する説明は省略する。
【0058】
箱形罠装置A3は、前記箱形罠装置A1における軸支具38の代替として天板13の後端寄りの下面側にガイド具38bが固定されている。ガイド具38bには滑車381が設けられている。そして、箱形罠装置A3は、箱形罠装置A2と同様に内部に餌を入れた餌袋4aを使用している。
【0059】
進退部材30の後端部の掛け具33と餌袋4aはワイヤ330aでつながれている。ワイヤ330aは、通し孔130を貫通し、滑車381に掛けられている。ワイヤ330aの長さは、進退部材30と餌袋4aがセット位置にあるときに、ワイヤ330aがほぼ緩みなく緊張する長さに設定されている。
そして、箱形罠装置A3をセットした後、捕獲室16内に侵入した小動物5が餌袋4aを引っ張り、ワイヤ330aによって進退部材30が後方へ引かれて落とし扉2が落ちるようになっている。
【0060】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0061】
A1 箱形罠装置
1 罠本体
10 底板
11、12 側板
110、120 通気口
13 天板
130 通し孔
14 後蓋板
140 ツマミ
141 取付軸
142 蝶ネジ
15 入り口
16 捕獲室
101 受けロッド
102 受けロッド
2 落とし扉
20 ガイド部材
21、22、23、24 係合受部
200 係合孔
201 係合凹部
25、25a、25b 上昇止め具
250 回動金具
251 ネジ
252 止め部
253 錘ネジ
202 取付台具
28 連結部材
29 嵌装部
3 トリガー
30 進退部材
300 直棒部
301 傾斜部
302 先端具
302a、302b 係合挿入部
31 感度調節具
32 バネ止め具
33 掛け具
330 ワイヤ
34 戻しバネ
35 感知ロッド
36 ガイド具
360 滑車
37 ガイド具
370 滑車
38 軸支具
380 軸
4 餌容器
40 係合部
41 係合凹部
A2 箱形罠装置
4a 餌袋
42 紐
A3 箱形罠装置
38b ガイド具
381 滑車
330a ワイヤ
5 小動物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
落下式扉を有する箱形罠装置であって、
捕獲室(16)を有する罠本体(1)と、前記捕獲室(16)に通じる入り口(15)を閉塞する落下式の扉(2)と、当該扉(2)を作動させるトリガー手段(3)と、
を備えており、
前記トリガー手段(3)は、
前記捕獲室(16)内に居る捕獲獣を感知する感知要素(4)と、
前記感知要素(4)の感知作用により前記扉(2)の動作を制御する、少なくとも二つの係合挿入部(302a,302b)を備える作動制御要素(30)と、
を有しており、
前記扉(2)は、板材で作られるか、少なくとも板材部分を有し、板面には、前記係合挿入部(302a,302b)と協働して扉(2)の仕掛け高さを調節する高さ調節手段が形成されており、
前記高さ調節手段は、板面の上下方向に形成されている複数の係合受部(21,22,23,24)で構成され、各係合受部(21,22,23,24)は、前記係合挿入部(302a,302b)が挿入される少なくとも二つの係合孔(200)を備えており、
前記作動制御要素(30)は、常時扉(2)の方向へ付勢されており、トリガー手段(3)が作動して前記扉(2)が最下部まで落下したときには、前記作動制御要素の係合挿入部(302a,302b)は、落下した扉(2)の上側に突出して扉(2)が上がるの防止するように構成されている、
箱形罠装置。
【請求項2】
感知要素(4)は、捕獲獣が触れることによって捕獲室(16)内に居ることを感知する、
請求項1記載の箱形罠装置。
【請求項3】
トリガー手段(3)の各係合挿入部(302a,302b)は共通の部材(302)に設けられており、該部材(302)は各係合挿入部(302a,302b)の高さが変動する方向へ振動又は揺動ができるようにしてある、
請求項1又は2記載の箱形罠装置。
【請求項4】
落下式の扉(2)をセットする際にトリガー手段(3)の各係合挿入部(302a,302b)と各係合受部(21,22,23,24)の係合孔(200)との係合深さを調節する係合深さ調節手段(32)を備えている、
請求項1、2又は3記載の箱形罠装置。
【請求項5】
落下式の扉(2)がある高さまで下降したときに、その高さ以上への上昇を止める上昇止め手段(25,25a,25b)を備えており、該上昇止め手段(25,25a,25b)が高さ方向に所要数設けられている、
請求項1、2、3又は4記載の箱形罠装置。
【請求項6】
罠本体(1)の餌又は餌容器(4)が配される場所の近傍に、取付軸(141)を中心として回動することにより開閉ができる蓋部材(14)が設けられている、
請求項1、2、3、4又は5記載の箱形罠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−39928(P2012−39928A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183565(P2010−183565)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(591181023)
【Fターム(参考)】