説明

簡易トイレ

【課題】使用時は外部から見えにくいプライベート空間を容易に形成することができるとともに、非使用時は嵩張りが無くて移動が容易で、また工具を一切使用せず、組み立て分解することが可能な簡易トイレを提供する。
【解決手段】簡易トイレ1は、上下が開口し水平断面が台形状をなす筒体状の台座2と、台座2の上面に設けられた便座3と、便座3の後端部に回動自在に連結され便座3の上面を覆う蓋4と、台座2の内部に収容されその上端部が便座3の上面を覆うように設置された屎尿袋5を有している。蓋4の内側には着脱自在な収納部材6が設けられており、収納部材6には小さく折り畳まれたマント8が収納されている。使用時には円錐状のマント8を頭から被り、使用者の首から下及びトイレ全体を覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等の災害時や常設トイレが使用できない場合等に緊急的に用いられる簡易トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の簡易トイレとしては、例えば特開平11−056679号公報に開示されているように、箱体形状の台座内に屎尿袋を張り、台座の上面に便座を設け、該便座に回動自在に蓋を設けた構造のものが知られている。屎尿袋には適宜防臭剤が入れられる。
一般に屎尿袋はポリエチレン製のものが使用され、屎尿袋に溜められた屎尿は凝固剤で固めた後ごみとして廃棄するようになっている。
【0003】
このような簡易トイレは災害時等に使用されるため、屋外使用のケースが多く、プライバシーの無い状態で用いられることも少なくない。
この問題に対処すべく、特開平9−075259号公報には組み立て式のパイプ部材でドーム状の骨組みを作り、その上を幕で覆ってプライベート空間を形成する構造のものが提案されている。
特開平9−220175号公報には、簡易トイレの上部空間を上から吊り下げたフード用シートで覆う構造のものが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−056679号公報
【特許文献2】特開平9−075259号公報
【特許文献3】特開平9−220175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来において、外部から使用状態が見えにくいプライベート空間を形成する方式のものでは、骨組みの組み立て等が必要で面倒であるとともに、組み立てた後は非使用時にも常設状態となるため嵩張りが大きく移動(持ち運び)も容易ではないという問題があった。
フード用シートを吊り下げる方式では、吊り下げるための固定要素が必要で設置場所が限定され、移動が困難であるという問題があった。
また、プライベート空間を形成するための部品点数が多く、コンパクト化が損なわれるという問題があった。すなわち、この種の簡易トイレは大規模災害時には大量に必要となるため、梱包したときのコンパクト性は保管や運搬の観点から非常に重要となる。
【0006】
保管、運搬時におけるコンパクト性の重要性に鑑み、箱体形状をなす台座等においても組み立て方式とするものが提案されているが、組み立てが容易ではなく、簡易トイレとしての使い勝ってのよさの観点からは満足のいく状況になかった。
また、いくら簡易トイレといっても大人でも使用に耐え得る安定した強度がなければならない。
【0007】
本発明は、使用時は外部から見えにくいプライベート空間を容易に形成することができるとともに、非使用時は嵩張りが無くて移動が容易である簡易トイレの提供を、その目的とする。
また、本発明は、組み立て方式で保管、運搬時のコンパクト性に優れ、組み立ても容易で強度も確保できる簡易トイレの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、持ち運び可能で任意の場所に設置可能な簡易トイレにおいて、使用者の使用状態を外部から見えないように覆う袋状で折り畳み可能な覆い具が着脱自在に設けられていることを特徴とする簡易トイレである。
【0009】
請求項1記載の発明は、請求項1記載の簡易トイレにおいて、便座と、該便座を覆う回動自在な蓋を有し、上記覆い具が上記蓋の内側に設けられていることを特徴とする簡易トイレである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の簡易トイレにおいて、上記覆い具は、軟質素材で上下に開口部を有する円錐状に形成され、上開口部は伸縮自在であることを特徴とする簡易トイレである。
【0011】
請求項4記載の発明は、便座と、該便座を支持する筒体状の台座と、該台座の内部に少なくとも一部が収容される屎尿袋と、上記便座の上面を覆う蓋を備えた簡易トイレにおいて、上記台座は、側面を構成する複数のプレートと、該プレートの下端部に嵌合してプレート間を連結する断面コ字状で屈曲したレール状の下枠と、同じく上記プレートの上端部に嵌合してプレート間を連結する断面コ字状で屈曲したレール状の上枠とを備え、上記プレートと、上記下枠及び上枠との間には、嵌合時の押圧力で係合する凹部と凸部が相対的に設けられていることを特徴とする簡易トイレである。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の簡易トイレにおいて、上記台座が段重ね構成を有し、高さを調整可能であることを特徴とする簡易トイレである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トイレ使用時の姿を外部から見えにくくするプライベート空間を、コンパクト化を維持しながら容易に形成することができる。非使用時は容易に収納することができるので、嵩張りが無くて移動が容易となる。また、設置場所の制限が無く、任意の場所においてプライベート空間を形成することができる。
また、ワンタッチ操作で容易に組み立てることができ、簡易トイレとしての機能を十分に活かすことができる。
また、高さ調整が可能であるので、老人や体の不自由な人でも楽な姿勢で使用することができ、介護用にも資することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施形態を図1乃至図5に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて、本実施形態における簡易トイレ1の全体構成を説明する。簡易トイレ1は、上下が開口し水平断面が台形状をなす筒体状の台座2と、台座2の上面に設けられたプラスチック製の便座3と、便座3の後端部に上下方向に回動(開閉)自在に連結され、便座3の上面を覆う面積を有するプラスチック製の蓋4と、台座2の内部に収容され、その上端部が便座3の上面を覆うように設置された屎尿袋5を有している。
屎尿袋5は例えばビニール製やポリエチレン製のものが用いられ、屎尿袋5に溜まった排泄物は凝固剤で固められて廃棄処理される。また、屎尿袋5には適宜防臭剤が入れられる。
【0015】
本実施形態では屎尿袋5の上部を便座3の上面を覆うように広げてセットしているが、台座2の上面に広げてその上に便座3を乗せて止めるようにしてもよい。
蓋4の内側には、便座3側へ突出する形状のプラスチック製の収納部材(収納ケース)6が着脱自在に設けられている。収納部材6は、収納部本体6aと、フランジ6bとからなり、フランジ6bには3箇所に穴が開いている。
蓋4の内側には便座3側へ突出するピン7が3箇所に形成されており、上記フランジ6bの穴をピン7にスナップ係合することにより着脱自在となっている。収納部本体6aは便座3の便穴3aよりも小さい寸法に設定されている。
収納部本体6a内には、後述する覆い具としてのマント8が折り畳んだ状態で収納されている。
【0016】
図2に示すように、台座2は、台座2の側面を構成する前プレート9、横プレート10、11、後プレート12と、前プレート9と横プレート10、11の下端部間を連結・補強する下枠13と、後プレート12と横プレート10、11の下端部間を連結・補強する下枠14と、前プレート9と横プレート10、11の上端部間を連結・補強する上枠15と、後プレート12と横プレート10、11の上端部間を連結・補強する上枠16とを有している。
前プレート9は後プレート12よりも横幅が小さく設定されており、組み立て後の形状は水平断面において台形状となる。
前プレート9、横プレート10、11、後プレート12は、例えば2.5mm程度の2枚の薄板を重ね合わせて連結することにより形成している。即ち、薄板にはリブが形成され、薄板どうしを重ね合わせるとリブの高さ寸法分、薄板どうしの間が開くことになる。そこで、この薄板どうしの間の空間に図3に示すように防臭剤40を収容する構成としてもよい。防臭剤40を備えることにより、悪臭の発生を完全に防止することができる。
符号17、18はプレートと枠との一体化を高めるための弾性体としての伸縮性を有するワイヤを示す。
【0017】
蓋4の後端部には水平面において左右に弾性力で突出する出没自在な連結ピンを備えた連結部19が一体に設けられており、これに対応して便座3の後端部には上記ピンで連結される連結部20が一体に設けられている。
蓋4の連結部19のピンを押し込めた状態で便座3の連結部20に挿入することにより連結ピンが突出し、蓋4は便座3に対して回動自在に連結される。
さらに、便座3には、連結部20を収容するジョイント21が上記連結ピンにより一体に連結されている。ジョイント21は上枠16に押し込んで固定するための嵌合凹部21aを有している。これらの連結構造については後述する。
便座3の下面には、台座2に対する安定した載置性及びクッション性(ソフトな座り心地)を得るための弾性部材22、23が固定されている。弾性部材22、23としては、ゴム、発泡スチロール、スポンジ、ウレタンフォーム、発泡ゴム等を採用することができる。
【0018】
図3に示すように、前プレート9、横プレート10、11及び後プレート12は、上下方向の強度(座ったときの強度)を確保しつつ軽量化を図るために、薄肉のプラスチック板を、スペーサを介して2枚貼り合わせた構造を有している。
面積の大きい横プレート10、11の上下端部両側には、それぞれ係合用の穴10a、10b、11a、11bが形成されている。
前側に位置する下枠13は、断面コ字状で屈曲したレール状(溝付レール状)に形成されており、前プレート9の下端部が嵌合する嵌合本体部13aと、この嵌合本体部13aの両端部から屈曲して後方に延び、横プレート10、11の下端部の一部が嵌合する連結部13b、13cを有している。
【0019】
連結部13bの溝内の対向位置には、横プレート10の下端部に形成された穴10aに係合する凸部13b−1が形成されており、連結部13cにおいても同様に、横プレート11の下端部に形成された穴11aに係合する凸部13c−1が形成されている。
連結部13bと連結部13cの内側の対向部位には、ワイヤ17、18を係止するためのフック13b−2、13c−2が形成されている。
下枠14、上枠15、16においても同様の構成を有しており、対応する符号を付して説明は省略する。下枠13、14及び上枠15、16はアルミ合金材で形成されている。
台座2の組み立て方は、例えば平坦な床面や机の上に下枠13、14を並べ、前プレート9の下端部を下枠13に、後プレート12の下端部を下枠14に嵌合し、次いで横プレート10、11の下端部を連結部13b、13c、14b、14cに押し込んで嵌合する。
【0020】
横プレート10、11を押し込むと、横プレート10、11又は下枠13、14の何れか一方又は双方の弾性変形により上記穴と凸部がスナップ係合し、嵌合が補強される。
その後、上枠15、16を上側から押し込むことにより下側と同様の嵌合状態が得られ、全体としての枠強度が高まる。すなわち、押し込みによるワンタッチ操作で台座2を組み立てることができる。
本実施形態では、下枠、上枠ともに2分割構造としたが、それぞれ一体構造としてもよい。軽量化、コンパクト化、組み立て時の自由度の大きさ、製造容易化等の観点からは分割構造が望ましい。
また、プレート側に穴を形成し、枠側に凸部を形成する構成としたが、逆態様でもよい。
組み立てた状態を長期に維持する場合や、組み立てた状態で移動する場合には、ワイヤ17、18をそれぞれ、フック13b−2、13c−2、14b−2、14c−2、15b−2、15c−2、16b−2、16c−2間に例えば図1、図2に示すようにタスキ状ないし十字状にして掛ければ、プレートと枠間の一体化強度が向上し、望ましい。
【0021】
図4は、便座3と蓋4の連結部及びジョイント21の結合状態の断面図である。
蓋4の連結部19には、その内部にバネ24が収容されており、両端部には連結ピン25、26が付勢された状態で収容されている。ジョイント21の内側面にはガイド凹部21bが設けられ、このガイド凹部21bの内面はほぼ球面状に形成されている。従って、先端部が球面状の連結ピン25、26がガイド凹部21bに入ると、連結ピン25、26は凹部21bにガイドされようにして、ジョイント21の穴に入り込む。
また、ジョイント21の外側面には押し込み用凹部21aが形成されている。この押し込み用凹部21aに指を入れるようにして、仮想線で示すように連結ピン25、26を押し込むことにより、連結部19、連結部20、ジョイント21を容易に外すことができる。
このように簡易トイレ1は工具を一切使用せず、組み立て分解することが可能である。
本実施形態ではジョイント21を便座3側に着脱自在に一体的に設ける構成としたが、台座2の上枠16に一体に設けるようにしてもよい。
【0022】
次に、図5に基づいて、トイレ使用時のプライベート空間を形成するためのマント8の使用方法を説明する。
蓋4を上げて収納部材6を引いて外し、折り畳み状態にあるマント8を取り出す。マント8は外部から見えない色で着色されたビニールやナイロン、幕布地、カーテン生地等の軟質素材により上下が開口した円錐状ないしスカート状に形成されており、広げて頭から被るようになっている。
マント8は、トイレと使用者の首から下全体を、余裕をもって覆うことができる大きさを有している。
マント8の上開口部8aは図示しないゴムテープ(弾性材)で絞られて伸縮自在に広げることができるようになっており、使用者の首にソフトにフィットする。
【0023】
マント8はトイレの使用状態を外部から見られないようにすることを第1の目的としているが、さらに防水性、防風性、防寒性等の機能も備えているのが望ましく、ビニールやナイロン等の合成樹脂が好適である。下端から上端に亘ってファスナーで開閉する方式としてもよい。
使用が終わったら折り畳んで収納部材6に収納し、収納部材6を蓋4の内側に嵌め込む。
本実施形態ではマント8を蓋4の内側に収納部材6により収納する構成としたが、蓋4の内側下端部に網袋を取り付け、この網袋に折り畳んだマント8を直に、あるいは携帯用袋に入れて出し入れするようにしてもよい。
また、蓋4の内側に面状ファスナーを貼り付け、同様の面状ファスナーを有する携帯用袋にマント8を収納し、該携帯用袋を着脱するようにしてもよい。
携帯用袋は蓋4の外側や台座2の側面に着脱自在に設けてもよい。特に、後プレート12の外側は外観をあまり損なわないので好適である。
上記実施形態では、組み立て式の簡易トイレ1へのマント8の適用例を示したが、全ての形態の簡易トイレにおいても同様に実施することができ、同様の機能、効果を得ることができる。
【0024】
次に、図6及び図7に基づいて、第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する。
台座2の高さは、一般の人が使い勝手がよいように設定されるが、特に身長が高い人、あるいは通常の位置に腰を落とせない(屈めない)老人や体の不自由な人にとっては苦痛を伴う場合がある。
本実施形態ではこのような問題に対処すべく、台座2を段重ね構成としている。
すなわち、台座2は、下段部2Aと、上段部2Bとから構成されている。下段部2Aと、上段部2Bは同じ寸法である。
図7に示すように、重ね構成によるズレを防止するために、下段部2Aの上枠16と上段部2Bの下枠14には2箇所の位置に連通穴16d、14dが形成されており、ピン27を挿し通すようになっている。
前方と後方に1箇所ずつ、すなわち、下段部2Aの上枠16と上段部2Bの下枠14、下段部2Aの上枠15と上段部2Bの下枠13にそれぞれ1箇所連通穴を設けてピン27を挿し通すようにしてもよい。勿論、ボルト・ナットで強固に固定するようにしてもよい。
また、本実施形態では同サイズの台座を2段重ねにする構成としたが、高さの低い上段部を複数個用意し、高さ調整を細かくするようにしてもよい。
【0025】
上記各実施形態では特定の寸法、材質を例示したが、これに限定される趣旨ではなく、上述した機能が得られる範囲で適宜変更することができる。例えば、伸縮性を有するワイヤの代わりにゴム紐等を用いることも可能性である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態における簡易トイレの蓋を開けた状態の斜視図である。
【図2】同分解斜視図である。
【図3】台座の拡大分解斜視図である。
【図4】便座と蓋の連結部の断面図である。
【図5】トイレ使用時に外部から見えないようにマントを被った状態の概要側面図である。
【図6】第2の実施形態における簡易トイレの斜視図である。
【図7】第2の実施形態における台座の段重ね構成の位置ずれ防止構成を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
2 台座
3 便座
4 蓋
5 屎尿袋
8 覆い具としてのマント
9、10、11、12 プレート
13、14 下枠
15、16 上枠
10a、10b、11a、11b 凹部としての穴
13b−1、13c−1、14b−1、14c−1、15b−1、15c−1、16b−1、16c−1 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
持ち運び可能で任意の場所に設置可能な簡易トイレにおいて、
使用者の使用状態を外部から見えないように覆う袋状で折り畳み可能な覆い具が着脱自在に設けられていることを特徴とする簡易トイレ。
【請求項2】
請求項1記載の簡易トイレにおいて、
便座と、該便座を覆う回動自在な蓋を有し、上記覆い具が上記蓋の内側に設けられていることを特徴とする簡易トイレ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の簡易トイレにおいて、
上記覆い具は、軟質素材で上下に開口部を有する円錐状に形成され、上開口部は伸縮自在であることを特徴とする簡易トイレ。
【請求項4】
便座と、該便座を支持する筒体状の台座と、該台座の内部に少なくとも一部が収容される屎尿袋と、上記便座の上面を覆う蓋を備えた簡易トイレにおいて、
上記台座は、側面を構成する複数のプレートと、該プレートの下端部に嵌合してプレート間を連結する断面コ字状で屈曲したレール状の下枠と、同じく上記プレートの上端部に嵌合してプレート間を連結する断面コ字状で屈曲したレール状の上枠とを備え、上記プレートと、上記下枠及び上枠との間には、嵌合時の押圧力で係合する凹部と凸部が相対的に設けられていることを特徴とする簡易トイレ。
【請求項5】
請求項4記載の簡易トイレにおいて、
上記台座が段重ね構成を有し、高さを調整可能であることを特徴とする簡易トイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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