説明

簡易トレー

【課題】1枚のシートの折り曲げにより組立可能なトレーを用いて、個箱内での2つの物品の衝突を解消する。
【解決手段】第1の物品Aと第2の物品Bを個箱30内に並置する簡易トレー1Aが、1枚のシートの折り曲げにより組み立てられる。この簡易トレー1Aでは、第1の物品Aの周壁を囲む第1パネル領域10と、第2の物品Bを載置する第2パネル領域20とが連設し、第1パネル領域10は、フロントパネル11、バックパネル12、一対の側面パネル13a、13b、及び差込片15を有し、差込片15は第1パネル領域10の第2パネル領域20と反対側の縁部にある。第2パネル領域20は、第2バックパネル21、及び第2パネル領域の第1パネル領域と反対側の縁部に起立したエンドパネル22を有する。差込片15の差込口23は、バックパネル12、第2バックパネル21又はこれらの境界部に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの物品を個箱内で並置するのに好適な簡易トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション、チーク、シャドウ等の化粧料のコンパクトケースと、そのコンパクトケースに嵌め込む化粧料の詰替用ケーキ(粉末状の化粧料をケーキ状に皿に充填したもの)とを個箱に収容したセット品のように、2つの物品を個箱に収容する場合、2つの物品の位置ずれ、がたつき等を抑制するため、従来より、インジェクション成型容器や真空成型トレー等のプラスチック製の保護部材が使用されている。
【0003】
しかしながら、インジェクション成型容器も真空成型トレーも製造コストが高い。さらに、詰替用ケーキをコンパクトケースに嵌め込んだ後は、これらの保護部材は不要になり、廃棄されるだけであるから、保護部材にコストをかけることは望ましくない。
【0004】
また、インジェクション成型容器も真空成型トレーも詰替用ケーキに対して嵩高いため、これらを用いてコンパクトケースと詰替用ケーキを個箱に収容すると、本来のこれらの合計容積よりも相当に個箱を大きくしなくてはならない。
【0005】
一方、1枚のシートの折り曲げにより組み立て可能な組立トレーが提案されている(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、従来の組立トレーでは、個箱内で物品同士の衝突を解消することができず、物品の保護が十分とはいえない。そのため、個箱内で詰替用ケーキが割れるおそれがある。
【0006】
【特許文献1】特開平3−187838号公報
【特許文献2】特開2001−192021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、2つの物品を個箱内に収容するトレーについて、(i)1枚のシートの折り曲げにより簡単に組み立てることができ、(ii)個箱内での物品同士の衝突を解消することにより、物品を保護し、(iii)トレーを用いた物品の収容状態が嵩張らないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、2つの物品を個箱内に収容する際に保護部材として使用するトレーを、1枚のシートの折り曲げにより組み立てるにあたり、シートを筒状にして一方の物品の外周を囲むようにすると、個箱内で物品同士が衝突しないので物品の保護作用が向上し、かつ、物品の収容状態も嵩張らないことを見出した。
即ち、本発明は、第1の物品と第2の物品を個箱内に並置する簡易トレーであって、
1枚のシートの折り曲げにより組み立てられ、
第1の物品の周壁を囲む第1パネル領域と、第2の物品を載置する第2パネル領域とが連設し、
第1パネル領域が、フロントパネル、バックパネル、一対の側面パネル、及び差込片を有し、該簡易トレーの展開状態において差込片が第1パネル領域の第2パネル領域と反対側の縁部にあり、
第2パネル領域が、第2バックパネル、及び第2パネル領域の第1パネル領域と反対側の縁部に起立したエンドパネルを有し、
差込片の差込口が、バックパネル、第2バックパネル又はこれらの境界部に形成されている簡易トレーを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の簡易トレーによれば、第1パネル領域で第1の物品の周壁を囲み、第1の物品と第2の物品を個箱内に並置させることができるので、個箱に外部から衝撃が加わっても第1の物品と第2の物品が互いに衝突することがなく、これらを並置した状態に維持し、保護することができる。
【0010】
また、この簡易トレーを用いて第1の物品と第2の物品を並置した状態でのこれらの合計容積は、第1の物品と第2の物品を直接並置した場合とほとんど変わらず、簡易トレーを使用した場合でも個箱を大きくすることが不要となる。
【0011】
さらに、個箱や簡易トレーを透明材料等から形成した場合には、第1の物品のフロント面も第2の物品のフロント面も個箱の外側から観察できるので、これらの物品のデザインを消費者にアピールすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0013】
図1は、本発明の一実施例の簡易トレー1Aの斜視図、図2は、その展開状態の平面図、図3は、この簡易トレー1Aを用いて個箱30に第1の物品Aと第2の物品Bを収容した状態の模式的斜視図及び断面図である。
【0014】
この簡易トレー1Aは、図2に示すように、1枚のシートに展開されるもので、図3に示すように第1の物品Aの周壁を囲む第1パネル領域10と第1パネル領域10に連設した第2パネル領域20とを備えている。
【0015】
第1パネル領域10は、第1の物品Aと第2の物品Bの個箱30への収容時に、第1の物品の外周を囲めるように、フロントパネル11、該フロントパネル11の対辺に連設した一対の側面パネル13a、13b、及び一方の側面パネル13bに連設したバックパネル12を有している。ここで、フロントパネル11は、図3に示すように簡易トレー1Aを個箱30へ収容した状態で、個箱30の正面側に位置し、バックパネル12は個箱30の背面側に位置する。
【0016】
フロントパネル11の残りの対辺には、一対のフラップ14a、14bが連設している。このフラップ14a、14bは、後述するように、第1の物品Aのがたつきを抑制するものであり、本発明において第1の物品Aの大きさにより、必要に応じて設けられる。
【0017】
また、第1パネル領域10の第2パネル領域20と反対側の縁部には差込片15が連設されている。
【0018】
一方、第2パネル領域20は、簡易トレー1Aを個箱30へ収容した状態で個箱30の背面側に位置する第2バックパネル21と、第2バックパネル21に第1パネル領域10と反対側の縁部において連設したエンドパネル22とを有している。
【0019】
側面パネル13aと第2バックパネル21との境界部、又はそれよりも僅かに第2バックパネル21の中央部寄りに、差込片15を差し込むための差込口23が形成されている。
【0020】
ここで、各パネルの境界には、折り曲げ用罫線が形成されている。
【0021】
第1パネル領域10のフロントパネル11の幅L1は、第1の物品Aの幅W1(第3図(a))に合わせて定められる。第1パネル領域10のバックパネル12の幅L2と第2パネル領域20の第2バックパネル21の幅L3とは等しく、これらは第2の物品Bの幅W2に合わせて定められる。本実施例では、フロントパネル11の幅L1がバックパネル12の幅L2よりも狭くなっている。
【0022】
展開状態の簡易トレー1Aの長手方向の、側面パネル13a、13bの長さL4は、第1の物品Aの高さH1(第3図(b))に合わせて定められ、その長手方向のエンドパネル22の長さL5は、個箱30の高さH2(第3図(b))に合わせて定められる。
【0023】
展開状態の簡易トレー1Aを組み立て、第1の物品Aと第2の物品Bを個箱30へ収容するためのトレーとして使用する方法の一例は、以下のとおりである。
【0024】
まず、図1に示すように、第1パネル領域10を四角筒状に折り曲げ、差込片15を差込口23へ第2バックパネル21の背面側からその表面側に差し込む。そして、エンドパネル22を第2バックパネル21から起立させる。
【0025】
次に、第1パネル領域10で形成した四角筒状体の中に第1の物品Aを挿入し、フラップ14a、14bで挿入方向の両端を押さえる。
【0026】
さらに、第2バックパネル21の上に第2の物品Bを載せ、その状態で個箱30に収容する。
【0027】
これにより、第1の物品Aを、簡易トレー1Aの第1パネル領域で囲んだ状態で、第2の物品Bと並置させることができるので、第1の物品Aと第2の物品Bが個箱30内で衝突することを防止できる。
【0028】
また、第1の物品Aの幅W1が第1の物品Bの幅W2より狭くても、第1の物品Aは、フラップ14a、14bによって個箱30の幅方向の中央部に固定されるので、第1の物品Aが個箱30内でがたつくことを抑制できる。
【0029】
さらに、エンドパネル22が第2バックパネル21から起立していることにより、簡易トレー1Aを個箱30に収容するときに第2の物品Bが簡易トレー1Aから外れることを防止できる。また、エンドパネル22の高さL5が個箱30の高さH2に合わせて定められているので、個箱30内で簡易トレー1Aがこの高さ方向でがたつくことも抑制できる。
【0030】
したがって、この簡易トレー1Aによれば、例えば、第2の物品Bがファンデーションのコンパクトケースで、第1の物品Aが、第2の物品Bに嵌めるファンデーションの詰替用ケーキであった場合に、個箱30内で、第1の物品Aであるファンデーションの詰替用ケーキが割れてしまうおそれを著しく低減させることができる。
【0031】
また、図3のように、簡易トレー1Aを用いて第1の物品Aと第2の物品Bを個箱30内に収容する場合に必要とされる個箱30の大きさと、簡易トレー1Aを使用することなく、第1の物品Aと第2の物品Bを接するように並置して個箱30に収容する場合に必要とされる個箱の30の大きさは実質的に同じである。したがって、簡易トレー1Aの使用により個箱30への包装状態が嵩高くなることはない。
【0032】
さらに、簡易トレー1Aを用いて個箱30に収容した第1の物品Aと第2の物品Bを、個箱30から取り出す場合には、まず、簡易トレー1Aを個箱30から取り出し、次に、第2の物品Bを簡易トレー1A上から取り出した後、差込片15を第1の物品A側に押し戻すことにより、四角筒状になっていた第1パネル領域10を容易に開くことができるので、第1の物品Aも取り出すことができる。
【0033】
この簡易トレー1Aを形成するシートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET等のプラスチックシートや板紙等を使用することができ、それらは透明でも又は不透明でもよいが、特に、透明なプラスチックシートを使用した場合には、個箱30の形成材料も透明プラスチックシートとすることにより、個箱30の外から個箱30内に並置した第1の物品Aと第2の物品Bとを良好に観察することが可能となる。そのため、これらの商品の外観を消費者にアピールすることができるので好ましい。
【0034】
本発明の簡易トレーは種々の態様をとることができる。例えば、図4に示す簡易トレー1Bは、図1の簡易トレー1Aのフロントパネル11に、第1の物品Aの観察用窓16を開口したものである。これにより、この簡易トレー1Bを不透明なプラスチックシートや板紙から形成した場合でも、個箱30を透明材料から形成することにより、簡易トレー1Bを用いて個箱30に収容した第1の物品Aと第2の物品Bを、個箱30の外から容易に観察することが可能となる。
【0035】
図5は、本発明の異なる実施例の簡易トレー1Cの斜視図及びその断面図であり、図6は、その簡易トレー1Cの展開状態の平面図である。この簡易トレー1Cにおいては、第1パネル領域10で第1の物品Aを囲み、差込片15を差込口23に差し込むにあたり、差込片15を、第2パックパネル21の表面側から背面側へ差し込むようにしたものである。
【0036】
そのため、第1パネル領域10のバックパネル12が第2パネル領域20の第2バックパネル21に連設し、差込片15は、側面パネル13aに連設している。
【0037】
また、第1パネル領域10のバックパネル12と第2パネル領域20の第2バックパネル21との間では折り曲げないので、バックパネル12と第2バックパネル21との間には、他のパネルの間とは異なり折り曲げ用罫線は設けていない。
【0038】
図7は、さらに異なる実施例の簡易トレー1Dの斜視図及び断面図であり、図8は、その簡易トレー1Cの展開状態の平面図である。この簡易トレー1Dは、図5の簡易トレー1Cにおいて、差込片15の差込口23を第2バックパネル21内に形成し、それに伴い、図7に示すように、組立後に第2バックパネル21と重なり合う折りしろ片17を側面パネル13aに連設し、この折りしろ片17に差込片15を連設させたものである。
【0039】
この他、本発明においては、折りしろ片17が、筒状にした第1パネル領域10のバックパネル11と重なり合うように折りしろ片17を折り曲げ、バックパネル11に形成した差込口23に差込片15を差し込んでもよい。このように、本発明においては、差込片15を差し込む差込口23は、バックパネル12、第2バックパネル21又はこれらの境界部のいずれに形成してもよい。
【0040】
図9の簡易トレー1Eは、バックパネル12の中央部に、フロントパネル11側に突出する段部24が形成されるように、第1パネル領域10を折り曲げたものである。図10は、この簡易トレー1Eを用いて第1の物品Aと第2の物品Bを個箱30に収容した状態の模式的断面図である。図10に示すように、段部24の高さは、第1の物品Aの高さH1と第2の物品Bの高さH2との差となるように形成することが好ましい。これにより、第1の物品Aと第2の物品Bを個箱30に収容した状態で、第1の物品Aの表面と第2の物品Bの表面を面一に揃えることができ、第1、第2の物品A、Bを収容した個箱30の外観を向上させることができ、また、これらの物品A、Bのがたつきをより一層低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の簡易トレーは、例えば、ファンデーション、チーク、シャドウ等の化粧料のコンパクトケースと、それらの詰替用ケーキを個箱に収容する場合のように、2つの物品を併置して個箱に収容する包装分野で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】簡易トレー1Aの斜視図である。
【図2】簡易トレー1Aの展開状態の平面図である。
【図3】簡易トレー1Aを用いて個箱に物品を収容した状態の模式的斜視図及びその断面図である。
【図4】簡易トレー1Bの斜視図である。
【図5】簡易トレー1Cの斜視図及び断面図である。
【図6】簡易トレー1Cの展開状態の平面図である。
【図7】簡易トレー1Dの斜視図及び断面図である。
【図8】簡易トレー1Dの展開状態の平面図である。
【図9】簡易トレー1Eの斜視図である。
【図10】簡易トレー1Eを用いて個箱に物品を収容した状態の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1A、1B、1C、1D、1E 簡易トレー
10 第1パネル領域
11 フロントパネル
12 バックパネル
13a、13b 側面パネル
14a、14b フラップ
15 差込片
16 観察用窓
17 折りしろ片
20 第2パネル領域
21 第2バックパネル
22 エンドパネル
23 差込口
24 段部
30 個箱
A 第1の物品
B 第2の物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の物品と第2の物品を個箱内に並置する簡易トレーであって、
1枚のシートの折り曲げにより組み立てられ、
第1の物品の周壁を囲む第1パネル領域と、第2の物品を載置する第2パネル領域とが連設し、
第1パネル領域が、フロントパネル、バックパネル、一対の側面パネル、及び差込片を有し、該簡易トレーの展開状態において差込片が第1パネル領域の第2パネル領域と反対側の縁部にあり、
第2パネル領域が、第2バックパネル、及び第2パネル領域の第1パネル領域と反対側の縁部に起立したエンドパネルを有し、
差込片の差込口が、バックパネル、第2バックパネル又はこれらの境界部に形成されている簡易トレー。
【請求項2】
フロントパネルのパネル幅が、バックパネルのパネル幅よりも狭く、フロントパネルの1組の対辺にフラップが設けられている請求項1記載の簡易トレー。
【請求項3】
フロントパネルに、第1の物品の観察用窓が形成されている請求項1又は2記載の簡易トレー。
【請求項4】
透明なプラスチックシートから形成されている請求項1又は2記載の簡易トレー。
【請求項5】
第1パネル領域のバックパネルの中央部に、フロントパネル側に突出する段部が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の簡易トレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−126205(P2010−126205A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304005(P2008−304005)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】