説明

簡易乗用作業車

【課題】 作業部材を牽引することができる作業車であって、簡単に使用することができ、畝間や枕地が狭い圃場等においても操作性及び取扱性の良い、簡易乗用作業車を提供する。
【解決手段】 自動走行機体2と、該走行機体2で牽引される作業部材4を取り付けるための作業部材取付部3と、作業者Mが座席11で前記作業部材取付部3を作業休止時地上高H1と作業時地上高H2に昇降操作するための昇降操作装置6と、前記走行機体2の後部に配設された左右一対の持ち上げ用ハンドル7,7を備えている。そして、前記作業部材4を取り付けた状態において、前記左右一対の持ち上げ用ハンドル7,7によって前輪8を支点として後輪9,9が地面から浮き上がるまで前記走行機体2の後部を作業者Mが持ち上げられるように重量設定及び重量配分がなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引式の作業部材を取り付けて使用する簡易乗用作業車に関するものであり、特に、畑での除草作業に利用して好適な作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畑等の地面に対して所定の作業を行う作業部材として、特許文献1や2で提案されているような除草具が知られている。この除草具は、ばね鋼製の複数の除草爪からなる除草爪群を備えている。該除草爪群は、各除草爪の先端を畑の地面に突入させた状態で、トラクタ等の走行機体や人力で牽引される。これにより、畑の草を効率的且つ確実に除去することができる。
【0003】
しかしながら、前記除草具を人力で牽引するのは、疲労が大きく、作業効率も悪い。また、畝を跨ぐようにしてトラクタを走行させながら前記除草具を牽引する場合には、畝の端部に十分な広さの枕地がないと、次の畝間へトラクタを回行させ難い等の問題もあった。
【0004】
そこで、トラクタのような大型のものではなく、小型の乗用作業車で前記除草具を牽引することが考えられる。
【0005】
ところで、下記特許文献3には、運転席でステアリングハンドルを操作して走行させることができるとともに、前方へ突出したバーハンドルを保持して歩行しながら走行させることもできる簡易乗用作業車が記載されている。
【0006】
前記作業車は、左右一対の駆動前輪を備えたものとされ、前記ステアリングハンドルの左右への操向回動により、車輪伝動ケース内の左右の操向クラッチの入り・切りを操作するか、あるいは、遊転自在な後輪である補助輪を前記ステアリングハンドルで操舵して、乗用時の機体の操向を行う構成とされている(特許文献3の0015段落第8〜12行目参照)。
【0007】
また、下記特許文献4には、左右一対の接地車輪付農作業機の操縦用ハンドルの下方位置に、乗用足載台を配設したものが記載されている。この作業機によれば、作業者は、前記乗用足載台に乗って前記操縦用ハンドルを操作することもできるし、前記乗用足載台から降りて、歩行しながら前記操縦用ハンドルを操作することもできるとされている。
【特許文献1】特開平10−313604号公報
【特許文献2】特許第3280925号公報
【特許文献3】特開2004−8082号公報
【特許文献4】実公昭44−29369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献3の作業車においては、駆動前輪が左右一対のものとされていること、それに対応して左右一対の操向クラッチを備えていること、等により、必然的に全体のサイズや重量が大きくなってしまい、操作性や取扱性が悪い等の欠点がある。また、前記二種類の操向機構の内、後者を採用した場合には、後輪の操向操作で機体を操向することになるので、運転が難しい等の問題もある。
【0009】
また、前記特許文献3,4のいずれのものも、狭い場所で機体の方向転換を省力的に行うのに適した構成とは言えず、畝間が狭い、又は枕地が狭い等の作業現場でそのまま使用することには無理がある。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、作業部材を牽引することができる作業車であって、簡単に使用することができ、畝間や枕地が狭い圃場等においても操作性及び取扱性の良い、簡易乗用作業車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係る簡易乗用作業車は、操向前輪、後輪、運転用の座席及び操向ハンドルを有する自動走行機体と、該走行機体で牽引される作業部材を取り付けるための作業部材取付部と、作業者が前記座席で前記作業部材取付部を作業休止時地上高と作業時地上高に昇降操作するための昇降操作装置と、前記走行機体の後部に配設された左右一対の持ち上げ用ハンドルと、を備え、前記作業部材を取り付けた状態において、前記左右一対の持ち上げ用ハンドルによって前記前輪を支点として前記後輪が地面から浮き上がるまで前記走行機体の後部を作業者が持ち上げられるように重量設定及び重量配分がなされたものである(請求項1)。
【0012】
本発明に係る前記簡易乗用作業車は、前記作業部材取付部に前記作業部材を取り付けて使用する。作業者(運転者)は、前記座席に座った状態で、前記昇降操作装置を操作して、前記作業部材を作業休止時地上高と作業時地上高に昇降操作することができる。前記作業部材取付部を作業時地上高に保持して前記走行機体を前進走行させると、前記作業部材によって、除草等の所定の作業が行われる。乗用牽引式であるので、疲労は少なく作業性も良い。
【0013】
また、作業者は、前記作業部材を取り付けた状態において、前記左右一対の持ち上げ用ハンドルを保持して、前記前輪を支点として前記後輪を浮かせるように、前記走行機体の後部を持ち上げることができる。このため、狭い場所でも容易に方向転換させることができ、あるいは、前輪のみで手押し車としても使用することができる。
【0014】
なお、前記前輪を駆動輪とした場合には、前記後輪をスキッド式等の接地部材とすることも、本発明の範囲内である。
【0015】
好適な実施の一形態として、前記作業部材取付部が、左右方向に水平に延びるように前記前輪と前記後輪との間に配設されたツールバーとされ、前記昇降操作装置は、前記ツールバーを前記走行機体に対して上下動自在に支持する昇降リンクと、該昇降リンクを作業者が前記座席で操作するための昇降操作レバーと、該昇降操作レバーの上下操作に応じて前記昇降リンクを昇降駆動するリンク駆動部材と、前記昇降操作レバーを前記作業休止時地上高に対応する作業休止時操作位置と前記作業時地上高に対応する作業時操作位置に保持する操作レバー保持部材を備えたものとすることもできる(請求項2)。
【0016】
この場合、前記作業部材を前記ツールバーの長さ方向に複数配設することで、地面に対して複数の作業位置で同時に作業を行うことができる。また、作業者が前記昇降操作レバーを上下動させると、前記リンク駆動部材を介して前記昇降リンクが駆動され、前記ツールバーが昇降する。さらに、前記昇降操作レバーを作業休止時操作位置で前記操作レバー保持部材に保持させることで、前記ツールバー及び前記作業部材を、作業休止時地上高に固定することができる。同様に、前記昇降操作レバーを作業時操作位置で前記操作レバー保持部材に保持させることで、前記ツールバー及び前記作業部材を、作業時地上高に固定することができる。
【0017】
好適な実施の一形態として、前記操作レバー保持部材が前記走行機体の左右方向へ位置調整可能とされ、これに対応して、前記昇降操作レバーも左右方向へ揺動可能とされたものとすることもできる(請求項3)。このようにすれば、前記操作レバー保持部材の位置を左右に調整することにより、前記座席に座った作業者が操作し易い左右位置で、前記昇降操作レバーを操作することができる。よって、どの作業者にとっても良好な操作性が得られる。
【0018】
好適な実施の一形態として、前記操作レバー保持部材が、前記昇降操作レバーを前記作業時操作位置に保持する作業時係止部材を備え、該作業時係止部材の前記走行機体に対する上下位置が無断階に調整自在とされたものとすることもできる(請求項4)。この場合、前記作業時係止部材の前記走行機体に対する上下位置を微調整することにより、前記昇降操作レバーの前記作業時操作位置を上下に微調整することができる。その結果、前記ツールバーの前記作業時地上高を上下に微調整することができるので、前記作業部材による作業効果を細かく制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の一形態に係る簡易乗用作業車の右側面図、図2は、図1の作業車の平面図、図3は、図1の作業車の要部の斜視図である。
【0021】
まず、本発明の実施の一形態に係る簡易乗用作業車1の概要を説明する。図1及び図2に示すように、前記作業車1は、畑で畝を跨いで走行する際に畝の作物に接触しないように、グランドクリアランスを大きくして形成された自動走行機体2を備えている。該走行機体2には、作業部材取付部としてのツールバー3が左右方向へ向けて水平に設けられている。該ツールバー3には、前記走行機体2で牽引される作業部材として、除草具4が取り付けられる。該除草具4としては、種々の形式のものを採用することができるが、図1及び図2の例では、ばね鋼線製の複数の除草爪5からなる除草爪群を備えたものを簡略化して図示している。
【0022】
前記ツールバー3は、前記走行機体2に備えられた昇降操作装置6の操作によって、作業休止時地上高H1と作業時地上高H2に昇降操作することができる。図2に示すように、前記除草具4は、前記ツールバー3を作業時地上高H2に保持させた時に、前記各除草爪5の先端が、例えば2cm程度畑の地面に突入するように上下位置を調整して、前記ツールバー3に取り付ける。そして、前記走行機体2を前進させて前記除草具4を牽引することで、畑の草を効率的且つ確実に除去することができる。
【0023】
なお、図2の例では、前記前輪8及び後輪9,9の走行路となる畝間の除草を行うように前記除草具4が配設されているが、前記ツールバー3の左右長さ方向における前記除草具4の取り付け位置を適宜に変更することで、畝の除草にも対応できる。作物が生育中の畝の除草を行う場合には、作物を損傷することなく除草できる形式の除草具を用いるべきことは勿論である。
【0024】
前記走行機体2の後部には、左右一対の持ち上げ用ハンドル7,7が固着されている。前記作業車1は、前記除草具4を取り付けた状態において、前記左右一対の持ち上げ用ハンドル7,7によって、前輪8を支点として後輪9,9が地面から浮き上がるまで前記走行機体2の後部を作業者Mが持ち上げられるように、重量設定及び重量配分がなされている。このため、前記作業車1は、前記持ち上げ用ハンドル7,7で前記走行機体2の後部を持ち上げて、前輪一輪の手押し車又は一輪自走車としても使用することができる。これにより、狭い場所でも容易に方向転換を行うことができる。例えば、乗車したままで方向転換を行うのに必要な広さの枕地が畝の端部にない場合でも、前記走行機体2の後部を持ち上げ、一輪車の状態にして次の畝間へと容易に回行することができる。
【0025】
次に、図1及び図2を参照して、前記走行機体2について詳細に説明する。前記走行機体2は、機体フレーム10と、該機体フレーム10の前部に操向可能に設けられた畝間走行可能な前記前輪8と、前記機体フレーム10の後部に接地部材として設けられた左右一対の前記後輪9,9と、前記機体フレーム10に支持された座席(運転席)11と、作業者Mが前記座席11に座って前記前輪8を操向操作するための操向ハンドル12と、前記前輪8を駆動する原動機13を備えている。
【0026】
本実施の形態では、前記前輪8が一輪の駆動輪とされ、前記左右一対の後輪9,9が遊転輪とされている。しかし、前記走行機体2の後部を人力で持ち上げ可能な重量設定及び重量配分が可能であれば、前記前輪8を遊転輪とし、前記後輪9を駆動輪としても良い。また、前記駆動輪8は、畝間を転動可能な横幅内で必要に応じてWタイヤ式等とすることもでき、前記各遊転輪9を、畝間を滑走可能なスキッド式の接地部材とすることも、本発明の範囲内である。
【0027】
図2に示すように、前記機体フレーム10は、前後方向に延びる中央枠部14と、該中央枠部14の後部に横長水平に固着された横枠部15と、該横枠部15の左右の各端部に伸縮自在に装着された左右一対の腕部16,16を備えている。該各腕部16は、任意の延び出し位置で前記横枠部15に対して固定自在とされている。前記各腕部16には、前記各後輪9を遊転自在に支持する後輪支持杆17が上下位置調整自在に連結されている。前記横枠部15からの前記左右一対の腕部16,16の張り出し長さを調整することで、前記左右一対の後輪9,9間のトレッドを、畝間のピッチに合わせて適宜に変更することができる。前記各後輪9は、向き可変なキャスター式等の後輪とすることもできる。
【0028】
前記座席11は、前記機体フレーム10の前部、すなわち、前記中央枠部14の前部に配置されている。これは、前記原動機13の荷重に加えて、作業者Mの体重のできるだけ多くを駆動輪である前記前輪8に負荷させることで、乗用運転時に大きな前進駆動力及び牽引力が得られるようにするためである。具体的には、前記座席11は、少なくともその一部が前記前輪8の直進時の上側に位置するように配設するのが好ましい。
【0029】
前記座席11に座った作業者Mは、前記前輪8の左右両側に設けた左右一対の足掛部18,18に足を掛けて運転する。図1に示すように、前記座席11の高さは、そこに座った作業者Mの両足が容易に地面につく高さとされているので、横転等の心配はない。
【0030】
なお、前記機体フレーム10において、前記座席11の後方のスペースは、荷台として利用することができる。
【0031】
前記機体フレーム10の前端部には、前記座席11より前方の位置で上下方向に延びるハンドルポスト19が固着され、該ハンドルポスト19内には、上端部に前記操向ハンドル12が固着されたハンドル軸20が、回動自在且つ上下不動に支持されている。該ハンドル軸20の前記ハンドルポスト19から突出した下端部には操向フレーム21が取着され、該操向フレーム21の下部には、前記前輪8が回転自在に支持されている。前記操向フレーム21には、前記原動機13が支持されている。該原動機13は、前記前輪8の上方に配設され、ベルトテンション式等の適宜の形式のクラッチ22及び適宜の減速伝動機構23を介して、前記前輪8に駆動上連結されている。前記原動機13としては、小型で軽量なものを採用するのが好ましく、例えば、小型の内燃エンジン等を採用することができる。
【0032】
作業者Mは、前記操向ハンドル12の下方に配設されたクラッチ操作部材としてのクラッチレバー24を操作することにより、前記クラッチ22を断接させ、前記原動機13から前記前輪8への駆動力の伝達を制御することができる。
【0033】
前記原動機13の出力を制御するための出力制御部材は、例えば、操作位置保持式スロットルレバー25(図2参照)として、前記操向ハンドル12等に配設することができる。
【0034】
前記操向ハンドル12の左右の一方にはブレーキレバー26を取り付けることもできるが、その場合は、その配設位置を前記クラッチレバー24の反対側にすると、互いの操作が干渉せずに操作性が良い。
【0035】
なお、前記作業車1を前輪のみの一輪車として使用する場合の便宜のため、前記前輪8の向きを前記機体フレーム10に対して固定する解除操作自在な固定機構(前輪操向固定機構)を設けておくと好適である。該固定機構としては、例えば、前記操向フレーム21と前記機体フレーム10(前記中央枠部14)との間に、挿脱自在なロックピン27を設けることができる。
【0036】
図2に示すように、前記左右一対の持ち上げ用ハンドル7,7のいずれか一方にも、クラッチ操作部材としてのクラッチレバー28が設けられている。該クラッチレバー28は、例えば、ボーデンケーブル等の操作力伝達部材を介して、前記クラッチ22に作動上連結されている。このため、作業者Mは、前記持ち上げ用ハンドル7を握った状態でも、前記クラッチ22を遠隔的に操作することができる。よって、前記左右一対の持ち上げ用ハンドル7,7で前記後輪9,9を地面から浮かせて前記前輪8のみを接地輪として使用する場合に、該前輪8を必要に応じて駆動させることにより、前記作業車1の移動を省力的に行うことができる。
【0037】
前記持ち上げ用ハンドル7に前記クラッチレバー28を設けると、圃場での後部持ち上げ移動時に便利であるのは勿論であるが、特に、トラックの荷台等へ前記作業車を積み込み又は積み降ろす場合に、その作業を安全且つ確実に行える利点もある。すなわち、前記作業車1の走行操作を前側及び後側のいずれからでも行えるので、前記荷台へ斜めに掛け渡した踏み板を上り下りさせる際に、作業者は前記作業車1の上側に位置することにより、常に安全且つ容易に操作できるからである。
【0038】
なお、図1に示すように、前記クラッチレバー28は、前記持ち上げ用ハンドル7,7で前記作業車1の後部側を持ち上げた状態でも親指で操作し易いように、前記持ち上げ用ハンドル7の内側位置に配設するのが好ましい。
【0039】
図示してはいないが、前記左右一対の持ち上げ用ハンドル7,7のいずれか他方には、前記前輪8を向きを遠隔的に固定操作するための操作部材として、操舵ロックレバーを設けることもできる。この場合には、前記前輪操向固定機構として、遠隔操作自在なものを採用することは勿論である。その具体例としては、ボーデンケーブル等で操作力を伝達され、前記機体フレーム10側から前記操向フレーム21側へと圧接して該操向フレーム21の向きを前記機体フレーム10に対して固定する圧接部材を備えたものが挙げられる。
【0040】
前記操向ハンドル12は、前記作業車1の左右方向にほぼ直線状に延びたバーハンドルとされていて、作業者Mが前記作業車1の横を歩行しながらでも操作可能な位置に配設されている。このため、前記作業者Mは、前記座席11に座り、前記バーハンドル12を握って前記作業車1を運転することができるほか、前記座席11から降りて前記走行機体2の横に立ち、前記操向ハンドル12の左右いずれか一端部を握って、動力により低速で自走する前記作業車1に添って歩行しながらでも前記前輪8の操向操作を行うことができる。
【0041】
次に、前記ツールバー3及び前記昇降操作装置6について説明する。
【0042】
図1及び図2に示すように、前記ツールバー3は、前記除草具4等の作業部材を前記走行機体2に取り付けるための作業部材取付部であり、前記走行機体2の左右方向に水平に延びるように前記前輪8と前記後輪9との間に配設されている。前記ツールバー3は、長さ調整自在な構成とすることもできる。
【0043】
図1に示すように、前記昇降操作装置6は、前記ツールバー3を作業休止時地上高H1と作業時地上高H2に昇降操作するためのものである。ここで、前記作業休止時地上高H1とは、前記除草具4を畝又は畝間の地面から浮き上がった状態に保持するための地上高であり、前記作業時地上高H2とは、前記各除草爪5の先端を地面に所定量だけ突入させた状態に前記除草具4を保持するための地上高である。
【0044】
図1に示すように、前記昇降操作装置6は、前記ツールバー3を前記走行機体2に対して上下動自在に支持する昇降リンク30と、該昇降リンク30を作業者Mが前記座席11で操作するための昇降操作レバー31と、該昇降操作レバー31の上下操作に応じて前記昇降リンク30を昇降駆動するリンク駆動部材32と、前記昇降操作レバー31を前記作業休止時地上高H1に対応する作業休止時操作位置P1と前記作業時地上高H2に対応する作業時操作位置P2に保持する操作レバー保持部材33を備えている。
【0045】
図3に示すように、前記昇降リンク30は、左右一対の上リンク部材34,34と、左右一対の下リンク部材35,35と、左右一対の中央リンク部材36,36を備えている。前記各上リンク部材34の前端部と前記各下リンク35の前端部は、互いに重ね合わせた状態で、前記座席11の下方位置の前支軸37によって前記機体フレーム2に対して相対回動自在に連結されている。前記各中央リンク部材36の上端部は、後支軸38によって、前記各上リンク部材34の後端部に対して相対回動自在に連結されている。前記各下リンク部材35の後端部には、その長さ方向に延びる長孔39が形成されている。前記各中央リンク部材36の下端部は、前記長孔39に挿通された下支軸40によって、前記各下リンク部材35の後端部に対して前記長孔39の長さ分だけ移動自在に連結されている。
【0046】
前記左右一対の中央リンク部材36,36には、ツールバー支持金具41が固着され、このツールバー支持金具41に、前記ツールバー3が固定されている。前記ツールバー支持金具41に対する前記ツールバー3の取付位置は、左右に調整自在とされているので、前記除草具4による除草位置を前記走行機体2の左右方向に大幅に変更することができる。
【0047】
前記昇降操作レバー31は、その後端部31rを前記走行機体2の後部に支持されて、前記座席11の真横の位置まで前方へ延び出している。このため、作業者Mは、前記座席11に座った状態で、前記昇降操作レバー31の前部のグリップ部31f(図3では省略。図1及び図2参照)を握って、前記昇降操作レバー31を上下に揺動操作することができる。
【0048】
前記リンク駆動部材32は、リンク駆動軸42と、該リンク駆動軸42に後端部43rが固着されたリンク駆動アーム43を備えている。該リンク駆動アーム43の前端部43fには、その長さ方向に延びる長孔44が形成されている。前記リンク駆動アーム43の前記前端部43fは、前記長孔44に挿通された連結ピン45により、前記ツールバー支持金具41に形成されたブラケット46に連結されている。
【0049】
前記リンク駆動軸42は、前記機体フレーム10の後部の前記横枠部15に固着された左右一対のブラケット46,46で水平に支持され、その軸線を中心として前後に回動自在とされている。前記リンク駆動軸42の一端部42aは、前記ブラケット46から突出しており、前記一端部42aには、前記リンク駆動軸42の半径方向への突片47が固着されている。この突片47上には、前記リンク駆動軸42に対して直角な方向に延びる縦支軸48を介して、前記昇降操作レバー31の前記後端部31rが連結されている。したがって、前記昇降操作レバー31を上下に揺動させると、前記リンク駆動軸42が前後に回動し、前記リンク駆動アーム43の前記前端部43fが上下に揺動駆動される。このため、前記連結ピン45を介して、前記昇降リンク30に案内されながら、前記ツールバー3が昇降する。
【0050】
なお、前記昇降操作レバー31は、前記縦支軸48を中心として左右方向へ揺動自在であるが、これについては後述する。
【0051】
前記操作レバー保持部材33は、作業休止時レバー係止凹部50と、作業時レバー係止凹部51を備えている。相対的に上側に位置する前記作業休止時レバー係止凹部50に前記昇降操作レバー31を係止させると、該昇降操作レバー31が作業休止時操作位置P1に保持され、これに対応して、前記ツールバー3が前記作業休止時地上高H1に保持される。また、相対的に下側に位置する前記作業時レバー係止凹部51に前記昇降操作レバー31を係止させると、該昇降操作レバー31が作業時操作位置P2に保持され、これに対応して、前記ツールバー3が前記作業時地上高H2に保持される。除草作業中には、前記走行機体2で牽引される前記除草爪5に対して、圃場からの押し返し力が作用するが、前記作業時レバー係止凹部51に前記昇降操作レバー31を係止しておけば、該レバー31及び前記ツールバー3の上方への揺動が規制されるので、前記除草具4の浮き上がりが防止され、除草作業が確実に行える。
【0052】
なお、図3に示すように、前記作業休止時レバー係止凹部50として、上下位置の異なる複数の凹部50a,50bを備えた構成とし、畝間の除草を休止する場合と、畝の除草を休止する場合に別々に対応できるようにすることもできる。また、前記作業休止時レバー係止凹部50を上下に複数備えることで、様々な形式の除草具に対応可能であるほか、他の作業部材への対応可能性も広がる。
【0053】
前記操作レバー保持部材33は、前記走行機体2に対して取り付けられているが、その取付位置は、左右方向に調整自在とされている。具体的には、前記機体フレーム2に、前記操作レバー保持部材33の水平取付腕52を受け入れる筒部53が固着されている。この筒部53に前記取付腕52を水平に挿通して、取付腕固定ボルト54により任意の左右位置で固定する。
【0054】
前記操作レバー保持部材33の左右位置調整自在な構成に対応して、前記昇降操作レバー31も、前記縦支軸48を中心として左右方向へ揺動可能とされている。このため、前記操作レバー保持部材33の位置を左右に調整することにより、前記座席11に座った作業者Mが操作し易い左右位置で前記昇降操作レバー31を上下操作することができる。よって、どの作業者にとっても良好な操作性が得られる。
【0055】
本実施の形態では、前記操作レバー保持部材33が、前記昇降操作レバー31を前記作業時操作位置P2に保持する作業時係止部材55を備え、該作業時係止部材55の前記走行機体2に対する上下位置が無断階に調整自在とされている。具体的には、前記操作レバー保持部材33が、前記作業休止時レバー凹部50を有する作業休止時係止部材56と、前記作業時レバー凹部51を有する前記作業時係止部材55の結合によって形成されている。前記作業休止時係止部材56には、前記水平取付腕52が固着されている。前記作業時係止部材55には、上下方向の位置調整用長孔57が形成され、該長孔57に挿通される固定ボルト58によって、前記作業休止時係止部材56に対して前記作業時係止部材55が固定される。したがって、前記固定ボルト58を緩めることで、前記作業時係止部材55の取付位置を上下に無断階に調整することができる。
【0056】
この場合、前記作業時係止部材55の前記作業休止時係止部材56に対する上下位置を微調整することにより、前記昇降操作レバー31の前記作業時操作位置を上下に微調整することができる。その結果、前記ツールバー3の前記作業時地上高H2を上下に微調整することができるので、前記除草爪5による除草効果を細かく制御することが可能となる。
【0057】
なお、第一部材としての前記作業時係止部材55の上下位置調整を可能にするための前記長孔57は、第二部材としての前記作業休止時係止部材56側に設けてもよいことは勿論である。
【0058】
前記昇降操作装置6によれば、前記座席11の真横まで延び出した単一の前記昇降操作レバー31を上下に操作することで、前記除草具4の昇降操作及び前記除草爪5の地面に対する押し付け力の操作を行うことができる。よって、操作性が良い。また、前記昇降操作レバー31を左右方向の任意の揺動位置で上下に操作することができ、且つ、任意の左右位置で前記操作レバー保持部材33に係止させることができるので、作業部材の種類や作業者の好みに応じた位置での操作が可能であり、汎用性がある。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の一形態に係る簡易乗用作業車の右側面図である。
【図2】図1の作業車の平面図である。
【図3】図1の作業車の要部(昇降操作装置)の斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
2 走行機体
3 作業部材取付部(ツールバー)
4 作業部材(除草具)
6 昇降操作装置
7 持ち上げ用ハンドル
8 操向前輪
9 後輪
11 座席
12 操向ハンドル
30 昇降リンク
31 昇降操作レバー
32 リンク駆動部材
33 操作レバー保持部材
55 作業時係止部材
H1 作業休止時地上高
H2 作業時地上高
P1 作業休止時操作位置
P2 作業時操作位置
M 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向前輪(8)、後輪(9,9)、運転用の座席(11)及び操向ハンドル(12)を有する自動走行機体(2)と、該走行機体(2)で牽引される作業部材(4)を取り付けるための作業部材取付部(3)と、作業者(M)が前記座席(11)で前記作業部材取付部(3)を作業休止時地上高(H1)と作業時地上高(H2)に昇降操作するための昇降操作装置(6)と、前記走行機体(2)の後部に配設された左右一対の持ち上げ用ハンドル(7,7)を備え、前記作業部材(4)を取り付けた状態において、前記左右一対の持ち上げ用ハンドル(7,7)によって前記前輪(8)を支点として前記後輪(9,9)が地面から浮き上がるまで前記走行機体(2)の後部を作業者(M)が持ち上げられるように重量設定及び重量配分がなされている、簡易乗用作業車。
【請求項2】
前記作業部材取付部が、左右方向に水平に延びるように前記前輪(8)と前記後輪(9,9)との間に配設されたツールバー(3)とされ、前記昇降操作装置(6)は、前記ツールバー(3)を前記走行機体(2)に対して上下動自在に支持する昇降リンク(30)と、該昇降リンク(30)を作業者(M)が前記座席(11)で操作するための昇降操作レバー(31)と、該昇降操作レバー(31)の上下操作に応じて前記昇降リンク(30)を昇降駆動するリンク駆動部材(32)と、前記昇降操作レバー(31)を前記作業休止時地上高(H1)に対応する作業休止時操作位置(P1)と前記作業時地上高(H2)に対応する作業時操作位置(P2)に保持する操作レバー保持部材(33)を備えている、請求項1に記載の簡易乗用作業車。
【請求項3】
前記操作レバー保持部材(33)が前記走行機体(2)の左右方向へ位置調整可能とされ、これに対応して、前記昇降操作レバー(31)も左右方向へ揺動可能とされている、請求項2に記載の簡易乗用作業車。
【請求項4】
前記操作レバー保持部材(33)が、前記昇降操作レバー(31)を前記作業時操作位置(P2)に保持する作業時係止部材(55)を備え、該作業時係止部材(55)の前記走行機体(2)に対する上下位置が無断階に調整自在とされている、請求項2又は3に記載の簡易乗用作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−282595(P2007−282595A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115631(P2006−115631)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000141990)株式会社共立 (110)
【出願人】(595034891)株式会社キュウホー (14)
【Fターム(参考)】