説明

簡易保温体及び保温布

断熱材とカバー材との間に、空気の存在下で発熱する発熱体が挿入されてなる簡易保温体、及び該簡易保温体が、複数個、平面状に連結されてなる保温布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、軽量でコンパクトな簡易保温体及びそれを用いた保温布に関するものであり、該保温布は、例えば、人体を包むことができ、特に携帯に便利である。
【背景技術】
従来から、人体の一部を暖める物として、使い捨てカイロが多く使用されている。また、関節などの痛みの部分に貼り、体を部分的に暖めるために、カイロなどが使用されている。このカイロは、手、足、腰などの局部的に小さい部分の加熱には良いが、身体全体を暖めることができない。
特開平11−216157号公報には、空気中の酸素と接触して発熱する発熱組成物が収納された通気性を有する内袋を、複数個まとめた気密性の優れた包装袋が開示されている。しかし、この文献には、発熱組成物が収納された発熱体を複数個収納することが開示されているだけである。
特開平7−59809号公報には、吸水性繊維の不織布からなる支持体に、空気と接触して発熱する発熱組成物を保持せしめてなるシート状発熱体が開示されている。しかし、このシート状発熱体は、不織布の支持体に500〜10000gの発熱組成物を保持させてから、熱圧着して扁平状にしたシート状の発熱体であり、任意の形状に切り取って使用することが特徴である。
特開平7−112006号公報には、片面に粘着剤を付与し、外面に設けた基材シートと、他面が通気性包材からなる発熱収納袋に、空気の存在下で発熱する発熱剤が収納された粘着発熱体が開示されている。この粘着発熱体は、ホットメルト型粘着剤が塗布されているため装着が簡便であるが、しかし、粘着力が温度により変化して、使用する環境温度が低い条件では使用し難いなどの問題が生じる。
実開昭62−197955号公報には、保温性の座布団が開示されている。この考案では保温側にポケットに挿入された発熱体が記載されており、座布団側が連続発泡型クッション材でコンパクトに真空包装されていることが記載されている。しかしながら、この考案は、座布団として使用するものであり、保温布を目的としたものではない。
【発明の開示】
本発明の課題は、携帯時には、コンパクトで運搬または携帯に便利であり、使用時には、必要な時に簡便な操作で使用でき、人体への装着性が良く、適温で長時間の保温性が良い簡易保温体及びそれを用いた保温布を提供することである。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討の結果、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
1.断熱材とカバー材との間に、空気の存在下で発熱する発熱体が挿入されてなる簡易保温体。
2.断熱材が、厚み0.2〜20.0mm、目付け30〜700g/m、空隙率が40〜95%の不織布または樹脂発泡体であることを特徴とする上記1記載の簡易保温体。
3.カバー材が、厚み0.05〜0.5mm、目付け20〜100g/mの不織布または布帛であることを特徴とする上記1又は2記載の簡易保温体。
4.断熱材とカバー材の端部が、熱融着または縫製により接合されてなることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の簡易保温体。
5.発熱体が包装袋に収納されており、該包装袋が連続した碁盤の目状の仕切りを有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の簡易保温体。
6.不織布が、部分熱圧着率3〜35%の熱可塑性合成長繊維不織布であることを特徴とする上記3記載の簡易保温体。
7.布帛が、織物、編物、寒冷紗、押し出しメッシュまたはネットであることを特徴とする上記3記載の簡易保温体。
8.上記1〜7のいずれかに記載の簡易保温体が、脱気状態または脱酸素状態で、非通気性のフイルム外袋により包装されシールされてなる簡易保温体。
9.上記1〜7のいずれかに記載の簡易保温体が、複数個、平面状に連結されてなる保温布。
10.脱気状態または脱酸素状態で、非通気性のフイルム外袋により包装されシールされてなる上記9記載の保温布。
11.外層に熱反射能を有するマットを装着又は脱着しうる治具を有することを特徴とする上記9又は10記載の保温布。
以下、本発明につき詳述する。
本発明の簡易保温体は、断熱性、保温性などに優れた断熱材と、薄くて、伝熱性の良好なカバー材との間に、空気の存在下で発熱する発熱体が挿入されたものであり、この簡易保温体のカバー材の側を対象物に接触させることにより、対象物を暖め、保温することができる(図1参照)。発熱体は、空気の存在下で発熱するものであるから、使用前は、空気(酸素)を遮断して保管する必要がある。したがって、保管時は、脱気状態または脱酸素状態で、非通気性のフイルム外袋によりシールして包装されていることが好ましい(図2参照)。
本発明において、断熱材は、嵩高で柔軟性、断熱性、強度に優れていればよく、特に限定されないが、断熱性、柔軟性、クッション性などに優れた樹脂発泡体、不織布などが好ましい。
断熱材は、厚みが0.2〜20mmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜15mmであり、目付けが30〜700g/mであることが好ましく、より好ましくは50〜500g/mである。厚みが0.2mm以上、目付けが30g/m以上であると、適度な厚みで、嵩高性、断熱性、保温性に優れる。また、厚みが20mm以下、目付けが700g/m以下であると、良好な断熱性と共に、優れた柔軟性が得られ、コンパクトにすることが容易で、取り扱い性が良好である。
断熱材中に空気を多く含むと断熱性、柔軟性に優れることから、断熱材としては、空隙率が比較的大きいことが好ましい。空隙率は40〜95%が好ましく、より好ましくは50〜97%である。空隙率が上記の範囲であると、空気の含有量が適度で、優れた柔軟性、断熱性が得られ、また、強度、取り扱い性などに優れる。なお、空隙率は下記式で定義される。
空隙率(%)=〔1−Da/D0〕×100
但し、Daは平均みかけ密度、D0は樹脂の密度を表す。
さらに、断熱材の放熱を防止して断熱効果をいっそう向上させる手段として、例えば、断熱材の内側(即ち、発熱体側)に、金属のスパッタリング加工を施すこと、または、アルミ蒸着などの蒸着フィルムを貼ることも好ましい手段である。
断熱材として好ましく用いられる樹脂発泡体は、ポリウレタン系樹脂、合成ゴム系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などの発泡体が好ましく、特に、反発弾性に優れているウレタンフーム、または、樹脂発泡体と不織布との貼り合わせ品が好ましく用いられる。
断熱材として好ましく用いられる不織布は、嵩高性に富むことが好ましい。不織布を構成する繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなどのオレフイン系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系繊維、あるいは、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエステル等で、芯がポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の芯鞘構造の複合繊維などの熱可塑性合成繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、綿、麻、毛などの天然繊維などが挙げられる。これらの短繊維または長繊維は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
断熱材として好ましく用いられる不織布は、これらの繊維ウエブを、公知のスパンボンド法、カード法、エアーレイ法などを用いて得られ、更に、繊維ウエブを公知の接合方法、例えば、加熱エンボスロールで加熱加圧する部分熱圧着法、ニードルパンチなどの機械交絡法などで処理することもできる。特に、嵩高性に優れたスパンボンド法の合繊長繊維不織布、ニードルパンチなどの機械交絡法で得られた合繊長繊維不織布が好ましく用いられる。
なお、長繊維不織布は、部分熱圧着率が3〜35%であることが好ましい。部分熱圧着率がこの範囲であると、繊維ウエブの接合が良好で十分な強度が得られ、風合いがソフトであり、凹凸形状への馴染みが良好である。
本発明において、カバー材は、柔軟性があり、薄く且つ強度に優れている不織布または布帛が好ましい。
カバー材は、厚みが0.05〜0.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4mmであり、目付けが20〜100g/mであることが好ましく、より好ましくは25〜80g/mである。厚みが0.05mm以上、目付けが20g/m以上であると、十分な強度が得られ、また、厚みが0.5mm以下、目付けが100/g/m以下であると、優れた柔軟性と熱伝導性が得られる。
カバー材として好ましく用いられる不織布を構成する繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなどのオレフイン系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系繊維、あるいは、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエステル等で、芯がポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の芯鞘構造の複合繊維などの熱可塑性合成繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、綿、麻、毛などの天然繊維が挙げられる。これらの短繊維または長繊維は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
カバー材として好ましく用いられる不織布は、これらの繊維ウエブを、公知のスパンボンド法、カード法、エアーレイ法などを用いて得られ、更に繊維ウエブを公知の接合方法、例えば、加熱エンボスロールで加熱加圧する部分熱圧着法、ニードルパンチなどの機械交絡法、ウオーターニードルなどの水流交絡法などで処理することもできる。特に、薄くて、強度に優れたスパンボンド法の合繊長繊維不織布が好ましい。
カバー材として好ましく用いられる不織布を構成する繊維の平均繊維径は、好ましくは1〜40μm、より好ましくは10〜30μmである。平均繊維径が上記の範囲であると、強度が十分でフイラメントが切れにくく、紡糸性が良好であり、十分な嵩高性が得られ、また、柔軟性に優れ、生産性が高い。
カバー材として好ましく用いられる不織布は、部分熱圧着率が3〜35%の合繊長繊維不織布であることが好ましい。部分熱圧着率が上記の範囲であると、繊維ウエブの接合が良好で、十分な強度が得られ、また、接合が適度であるため、風合いがソフトで、凹凸形状に馴染み易い。
カバー材として好ましく用いられる不織布は、引張強度が、好ましくは20N/5cm以上、より好ましくは30N/5cm以上である。引張強度が20N/5cm以上であると、人体を被覆して移動する時などでも、破断することがない。また上記長繊維不織布の引張強度のタテ/ヨコ比は、好ましくは0.7〜3.5、より好ましくは0.9〜3.0である。不織布の繊維分散が均等化されていると、取り扱い作業での破断問題などが起こりにくくなり、好ましい。
本発明において、カバー材として好ましく用いられる布帛は、例えば、織物、編物、寒冷紗、押し出しメッシュ、テープヤーンクロス、ネットなどが挙げられる。該布帛を構成する繊維は、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン繊維、綿、麻、毛などの天然繊維などが挙げられ、これらを、単独または混紡、混繊して用いる。
カバー材として好ましく用いられる不織布または布帛の剛軟度は、好ましくは10cm以下、より好ましくは8cm以下である。剛軟度が小さいということは、風合いが柔らかく、柔軟であり、凹凸の形状に馴染み易いということである。剛軟度が10cm以下であると、風合いがソフトで、凹凸の形状に馴染み易い。
本発明において、発熱体としては、空気の存在下で発熱するものであればよく、公知のものを用いることができる。例えば、鉄粉等の金属粉末、水、塩化ナトリウム等の酸化助剤、及び木粉、ヒル石、活性炭等の保水剤を主成分とする組成物、アルカリ金属硫化物、多硫化物、またはこれらの含水塩及び炭素質及び/または炭化鉄を主成分とする組成物などが挙げられる。
本発明において、発熱体は、包装袋の中に収納されていることが好ましい。包装袋としては、発熱体が空気(または酸素)と十分に接触して速やかに効率良く発熱するためには、通気性が比較的大きく、通気性を調整しうる包装袋が好ましい。したがって、包装袋として用いる材料としては、通気孔が設けられた熱シール性を有するフイルムが好ましい。例えば、ポリエチレンフイルムに穴あけ加工した有孔フイルム、または樹脂に無機充填剤を混入してなる微多孔フイルムなどに、不織布などの補強材を貼り合わせた材料等が好ましいものとして挙げられる。
なお、本発明においては、保温体の使用開始初期の昇温速度を早くするために、包装袋の通気性を比較的大きくすることが好ましい。例えば、フイルムの穴の大きさが100〜500μmで、穴の数は、直径2.86cm円形面積当り30〜100個が好ましい。また、通気度は0.5〜10秒/100ccが好ましい。
包装袋の大きさや形状は、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択することができる。
発熱体が粉体状物の場合は、片寄ることなくなるべく均等に包装袋中で分布することが好ましい。粉体状の発熱体を均等に配置させるためには、包装袋に仕切りを設けることが好ましい。仕切りの形状、数、間隔(大きさ)等は、特に限定されるものではなく、包装袋の大きさや用途に応じて適宜選択することができる。仕切りとしては、例えば、碁盤の目状、円状、異型のものでもよく、連続した碁盤の目状の仕切りが好ましい。発熱体の包装袋の製造ラインにおいて、包装袋のスリット工程、切出し工程を省略することで、連続した仕切り、碁盤の目状の仕切りが可能である。したがって、発熱体の包装袋の製造工程を有効に活用して、連続した仕切り、碁盤の目状の仕切りができる。
仕切りは、発熱体の収納部分ができるだけ小さく分割されるように設けられていることが好ましいが、実用的に好ましい例としては、一辺が5〜10cm、他辺が7〜15cmの四角形状に仕切られた区画で、その仕切られた1区画あたりに5〜60gの粉体状の発熱体が収納されたものが挙げられる。全体の重さと加温性、保温時間等を考慮して、1区画あたりの粉体の質量を適宜決めることができる。例えば、保温時間を短くするために、発熱体を包装材の1区画あたりに10〜40g充填することがより好ましい。また、仕切りを設ける方法も、特に限定されるものではなく、例えば、縫製や熱シールによる方法を用いることができる。
本発明の簡易保温体は、複数個が平面状に連結された形状の保温布とすることができる(図3参照)。このような形状の保温布を得るためには、上記で説明した簡易保温体のユニットを複数個、縦方向、横方向に平面状に縫製等により連結してもよいが、好ましくは、毛布のような広い面積の断熱材とカバー材を用い、発熱体の包装袋を挿入する部分を複数箇所、縫製等により区画して設けたものが好ましい。区画する手段は、縫製以外にも、熱シール、超音波シール、インパレスシール等が挙げられ、特に限定されるものではない。
保温布とすることにより、広い面積を保温することができるので、例えば、対象物が人体の場合、半身あるいは全身を覆って保温することができる等、広範囲の使用が可能となる。保温布とは、例えば、ブランケット状のもの、あるいはガウン等のように衣服状に縫製されたものであってもよく、その大きさや形状は、用途に応じて適宜選択され、特に限定されるものではない。
ブランケット状のものの場合、例えば、幅25〜160cm、長さ30〜220cm程度で、前記発熱体の包装袋を挿入する部分が複数箇所設けられているものが好ましい。包装袋を挿入する部分の形状や大きさ等は、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択することができるが、発熱体の包装袋より1〜5cm大きい寸法であることが好ましい。
具体例としては、幅120cm、長さ210cmの断熱材およびカバー材を1枚ずつ用意し、両者を重ねて、幅方向を2等分し、長さ方向を3等分して6ヶ所の区画を、公知の接合方法、例えば、ミシン縫製、超音波縫製、熱シールなどで作る。隣接する区画は、必要により数センチメートル程度の適当な間隔をとって、幅50〜55cm、長さ60〜65cmの区画を6ヶ所設け、それぞれに、幅45〜50cm、長さ55〜60cmの発熱体の包装袋を挿入して使用することができる。但し、包装袋は、1区画当たりに発熱体を20〜30g充填し、4〜8区画とすることが好ましい。
上記のような保温布の場合、使用後に発熱体の包装袋を交換して、断熱材およびカバー材を繰り返して使用し得るように、例えば、下記のような工夫をすることが好ましい。
発熱体の包装袋を挿入する各区画は、該包装袋が安定に保持され、破損せず且つ使用時に外部に脱落しないことが重要ある。そのため、例えば、包装袋の挿入口の大きさを、該包装袋の大きさよりも約2〜10cm大きくなるように縫製または熱シールし、包装袋を折り曲げて各区画に挿入することにより、使用時に、保温布を畳んだり広げたりしても挿入された包装袋の脱落やズレが起こり難くなる。また、該包装袋の挿入口は、カバー材の側に設けることが好ましい。発熱体の包装袋が脱落して外に出ないよう、必要により、挿入口に、紐、ボタン、マジックテープ、ファスナーなどの止め具などを設けること、または、発熱体の包装袋の一部に両面テープを貼ること、包装袋の挿入口に両面テープ又は粘着テープ止めをすることが好ましい。
本発明において、発熱体は、空気の存在下で発熱するものであるから、使用前は、空気(酸素)を遮断して保管する必要がある。したがって、保管時は、脱気状態または脱酸素状態で、非通気性のフイルム外袋によりシールして包装されていることが好ましい。
非通気性のフイルム外袋は、酸素の通気がない、ガスバリヤー性フイルムであることが好ましい。例えば、ポリ塩化ビニルフイルム、ポリ塩化ビニリデンフイルム、ナイロンフイルム及び塩化ビニリデン樹脂のコート加工品などが挙げられる。このような非通気性のフイルム外袋で酸素を遮断して保管することにより、発熱体の発熱反応が抑制され、消耗、劣化が防止されて、長時間の保管が可能となる。外袋により包装されシールされた簡易保温体の内部は、発熱体が酸素と接触しない状態であればよく、例えば、脱気状態、窒素等の不活性ガスが充填された状態でもよい。
特に、救護用保温布等に用いる場合、コンパクトな形態が望まれ、運搬、携帯に便利なように薄く、コンパクトな簡易保温体を得るためには、外袋の中の空気を除き、脱気状態にして包装し、真空にしてシールすることが好ましい。このようにすることで、運搬時にはコンパクトで携帯に便利であり、発熱体は発熱することが無く安全であり、また、使用時には、極めて簡単な操作で加温、保温ができるという優れた効果を発揮する。このような効果は、救護用保温布として特に有用であるといえる。
特に、上記の保温布のように大きく嵩高いものは、保管状態の時は、折り畳むかまたはロール状にしてから、外袋の中の空気を除き、脱気状態でシールすることにより、薄く、コンパクトにすることができるので、保管、運搬等に便利である。また、必要により、発熱体の包装袋のみを非通気性のフイルム外袋でシールしておき、使用時に、断熱材およびカバー材の間に発熱体の包装袋を挿入することもできる。
以上のようにして構成された本発明の保温布は、使用時には、非通気性のフイルム外袋を破いて空気を導入することにより、速やかに発熱し、保温効果を発揮する。
本発明において、保温布の外層(断熱材側の表面)に熱反射能を有するマットを用いると、保温布の保温性は更に向上し、長時間の保温ができる。熱反射能を有するマットとしては、例えば、アルミニュウム等の金属を表面に蒸着したマット又はシートが好ましい。そのために、保温布の外層に、熱反射能を有するマットを装着又は脱着できる治具を有することが好ましい。
本発明の簡易保温体及び保温布は、保管、運搬等に便利であることから、病人、負傷者などに、救急用の保温体として有用である。例えば、雪山での遭難者の救助などの際には、本発明の保温布で全身を覆い、40〜50℃で3〜24時間保温することができる。
病人、負傷者など向けの用途においては、断熱材やカバー材などの使用材料として、抗菌性やバクテリアフリーの材料が好ましい。抗菌性を付与する方法としては、例えば、樹脂に銀セラミック系などの抗菌剤を添加して繊維化する方法、シート状物に、ポリリジン、キトサン、パラベンなどの抗菌剤を塗布する方法が挙げられる。バクテリアフリーについては、極細繊維ウエブを中間層として積層した不織布が有効である。
また、滅菌処理して用いることが好ましく、例えば、エチレンオキサイドガス、電子線、ガンマ線などによる滅菌、あるいは、オートクレーブ滅菌などが可能な材料が好ましい。さらにまた、断熱材やカバー材などを、顔料、染料、印刷等により補色性の色で着色して、血液などの付着が目立たないようにすると、意匠性の点から好ましい。着色方法としては、布帛を公知の方法で印刷加工、染色加工することが可能であるが、樹脂に着色剤を添加して着色繊維を得る方法が、安価で、堅牢度に優れるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の簡易保温体の一例を概略的に示す断面図である。
図2は、本発明の簡易保温体を非通気性のフイルム外袋により包装してシールされた簡易保温体の一例を概略的に示す断面図である。
図3は、本発明の簡易保温体を複数個、連結してなる保温布の一例を概略的に示す平面図である。
なお、図1〜3における符号は下記のものを示す。
1…断熱材、2…カバー材、3…発熱体の包装袋、4…非通気性のフイルム外袋、5…発熱体の包装袋の挿入口。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
なお、測定方法等は下記の通りである。
(1)目付け(g/m
JIS−L−1906に準じた。縦20cm×横25cmの試料を3ヶ所切り取り、質量を測定し、その平均値を単位面積当たりの質量に換算して求めた。
(2)厚み(mm)
JIS−L−1906に準じて、荷重2kPaで測定した。
(3)平均繊維径(μm)
500倍の拡大写真をとり、10本の平均で求めた。
(4)引張強度(N/5cm)
幅5cm×長さ30cmの試料を、縦、横各々3ヶ所切り取り、引張試験機を用いて、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/分で測定し、平均値で求めた。
(5)平均みかけ密度(g/cm
厚みと目付けから、下記式により求めた。
平均みかけ密度=(目付け)/(厚み)
(6)剛軟度(cm)
JIS−L−1906に準じ、45度カンチレバー法で、縦方向、横方向各々につき求めた。
【実施例1】
カバー材として、公知のスパンボンド法により得られた、厚み0.22mm、目付け50g/m、平均繊維径16μm、空隙率80%、剛軟度が縦3.5cm、横2.3cmで、部分熱圧着率11%である合繊ナイロン長繊維不織布を用いた。
断熱材として、公知のスパンボンド法により得られた、厚み0.67mm、目付け100g/m、平均繊維径14μm、空隙率83%、剛軟度が縦5.4cm、横3.7cmであり、部分熱圧着率5%である合繊ナイロン長繊維不織布を用いた。
上記のカバー材および断熱材を、それぞれ幅90cm、長さ180cmに切り取り、両者を重ねてから、幅方向の2等分した中央部分をミシン縫製し、長さ方向を3等分してミシン縫製して、発熱体の包装袋を挿入できる袋形状の区画を6個有するブランケットを作製した。次いで、ブランケットの袋形状の各区画のカバー材と断熱材の間に、空気中の酸素と発熱反応する発熱体(鉄粉、水分、木炭、バーキュライト、食塩)の包装袋を1個ずつ(計6個)挿入して、本発明の簡易保温体が複数個連結されてなる保温布を得た。なお、この発熱体の包装袋は、1個が、縦4列、横4列、計16区画に碁盤の目状に仕切られたものであり、1区画当たり発熱体を10g充填した。
人体を被覆した後、固定するため、マジックテープ(登録商標)を4箇所ブランケット端部に付けた。次いで、折り畳んで幅約45cm×長さ約25cm×高さ約7cmの大きさにしてから、脱気状態で非通気性のナイロンフイルムで包装してシールし、保管した。
上記の保温布を使用するため、外袋の非通気性のナイロンフイルムを破り、広げて人体の前面を覆い使用した。使用開始10分後40℃、20分後45℃であり、温度40〜45℃で約6時間保温することができた。
【実施例2】
カバー材として、公知のスパンボンド法により得られた、厚み0.15mm、目付け30g/m、平均繊維径14μm、空隙率86%、剛軟度が縦4.5cm、横3.8cmで、部分熱圧着率15%である合繊ポリエステル長繊維不織布を用いた。
断熱材として、公知のスパンボンド法により得られた、目付け50g/mの合繊ポリエステル長繊維不織布に、目付け150g/mのポリエステル短繊維のカードウエブを積層して、ニードル針36番レギュラータイプでパンチ回数80回/cmの両面加工でニードルパンチ法の機械交絡したものを用いた。断熱材は、厚み3.5mm、目付け200g/m、平均繊維径14μmと20μm、空隙率93%、剛軟度は縦7.5cm、横5.8cmであった。
上記のカバー材および断熱材を、それぞれ幅120cm、長さ210cmに切り取り、両者を重ねてから、幅方向の両端の内側5cmおよび幅方向の2等分した中央部分を約10cmの間隔で2列をミシン縫製し、長さ方向の一方の端の内側5cmをミシン縫製して、発熱体の包装袋を2個収納できる袋形状のブランケットを作製した。
上記ブランケットの縫製されていない長さ方向の他方の端部から、カバー材と断熱材の間に、発熱体の包装袋を1個ずつ(計2個)挿入して、本発明の簡易保温体が複数個連結されてなる保温布とした。この保温布で人体の全面を覆い使用した結果、使用開始から13分後に40℃となり、最高温度は48℃であり、40〜48℃で10時間の保温をすることができた。
なお、発熱体の包装袋は、1個が、横2列、縦15列、計30区画に碁盤の目状に仕切られ、1区画当たり発熱体(鉄粉、水分、木炭、バーキュライト、食塩)を15g充填したものである。この包装袋は、あらかじめ非通気性の塩化ビニリデン樹脂コーティング加工のポリプロピレンフイルムで包装し、シールして別に保管しておいたものであり、使用時にシールを破いてブランケットに挿入した。また、ブランケットには、人体を被覆した後、固定するため、紐を両端部、中央部の3ヶ所に設けた。
【実施例3】
カバー材として、公知のスパンボンド法により得られた、厚み0.18mm、目付け30g/m、平均繊維径20μm、空隙率83%、剛軟度が縦4.5cm、横3.8cmで、部分熱圧着率25%である合繊ポリプロピレン長繊維不織布を用いた。
断熱材として、公知のスパンボンド法により得られた、厚み0.25mm、目付け50g/m、平均繊維径13μm、空隙率87%、剛軟度が縦3.6cm、横3.2cmで、部分熱圧着率11%である合繊ナイロン長繊維不織布を用いた。(なお、不織布の原料のナイロンポリマーには、グリーンの顔料を3wt%添加して用いた。)
上記のカバー材および断熱材を、それぞれ幅90cm、長さ100cmに切り取り、両者を重ねて下記のように縫製し、袋状とした。幅方向は、両端から17cm内側部分と、中央部を縫製した。また、長さ方向は、上から10cmを折り返した部分、下から15.5cmの部分、及び中央部を3等分した部分をそれぞれ縫製した。但し、発熱体の包装袋は両端から挿入するようにし、5cmの重ねしろを取って縫製した。また、周囲はオーバーロックミシン縫製、他は本縫い縫製した。即ち、発熱体包装袋の挿入個所は6区画設けられ、1区画のサイズは、幅28cm、長さ21.5cmである。
発熱体は、厚み0.22mm、目付け40g/mのナイロン長繊維不織布に、低密度ポリエチレンフィルムの有孔フィルムを貼り合わせた包装袋に、発熱体(鉄粉、水分、木炭、バーキュライト、食塩)を25g/m/個充填した。但し、包装袋は、幅方向26cm、長さ方向20cmとし、それぞれ2等分して、発熱体の偏りの少ない4分割構成とした。
得られた保温布は、幅21cm、長さ28cm、高さ4cmに折り畳み、小さい梱包にしてから、塩化ビニリデン樹脂コーティング加工したポリプロピレンフイルムの外袋で包装した。重さは730gであった。
この保温布を使用するため、外袋を破り、広げて人体の全面を覆い使用した。この時、断熱材の表面側の面に、アルミ蒸着したポリエチレン発泡樹脂マット(厚み5mm)を使用した。その結果、使用開始から10分後に40℃となり、最高温度は50℃であり、40〜50℃で12時間の保温をすることができた。
なお、上記のマットを使用しなかった場合は、使用開始から13分後に40℃となり、最高温度は45℃であり、40〜45℃で7時間の保温をすることができた。
産業上の利用の可能性
本発明の簡易保温体は、柔軟性、断熱性などに優れた断熱材と、カバー材と、空気の存在下で発熱する発熱体からなり、保管時及び運搬時は、軽量でコンパクトであるため、持ち運びに便利で安全であり、使用時には、電気や発電機等を使用する必要がなく、簡便な操作で保温性ブランケット(保温布)とすることができ、大面積でも適度な温度で一定時間保温できる。
したがって、緊急に保温が必要になった場合、例えば、海、山などで病人、遭難者等を40〜50℃で、3〜24時間保温することが容易に可能であるため、緊急救助用の保温体又は保温布としても有用である。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材とカバー材との間に、空気の存在下で発熱する発熱体が挿入されてなる簡易保温体。
【請求項2】
断熱材が、厚み0.2〜20.0mm、目付け30〜700g/m、空隙率が40〜95%の不織布または樹脂発泡体であることを特徴とする請求項1記載の簡易保温体。
【請求項3】
カバー材が、厚み0.05〜0.5mm、目付け20〜100g/mの不織布または布帛であることを特徴とする請求項1又は2記載の簡易保温体。
【請求項4】
断熱材とカバー材の端部が、熱融着または縫製により接合されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の簡易保温体。
【請求項5】
発熱体が包装袋に収納されており、該包装袋が連続した碁盤の目状の仕切りを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の簡易保温体。
【請求項6】
不織布が、部分熱圧着率3〜35%の熱可塑性合成長繊維不織布であることを特徴とする請求項3記載の簡易保温体。
【請求項7】
布帛が、織物、編物、寒冷紗、押し出しメッシュまたはネットであることを特徴とする請求項3記載の簡易保温体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の簡易保温体が、脱気状態または脱酸素状態で、非通気性のフィルム外袋により包装されシールされてなる簡易保温体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の簡易保温体が、複数個、平面状に連結されてなる保温布。
【請求項10】
脱気状態または脱酸素状態で、非通気性のフィルム外袋により包装されシールされてなる請求項9記載の保温布。
【請求項11】
外層に熱反射能を有するマットを装着又は脱着しうる治具を有することを特徴とする請求項9又は10記載の保温布。

【国際公開番号】WO2004/108031
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506836(P2005−506836)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008149
【国際出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】