簡易合成セグメント
【課題】セグメントとしての十分な耐力を確保しつつ、簡単な構造で安価な簡易合成セグメントを提供すること。
【解決手段】主桁3、継手板4、スキンプレート5および縦リブ6を備えた鋼製系セグメントにおける主桁3に、セグメント内において主桁長手方向に間隔をおいて複数の縦リブ6が固定され、前記各縦リブ6のトンネル内空側に渡ってトンネル周方向に棒状鋼材7が配置され、前記セグメントにおけるトンネル周方向に間隔をおいて配置されている縦リブ6間の中間部のみにおいて、間隔をおいて対向する各主桁3に、これらの主桁の対向面側に向けて突出するように少なくとも一対のずれ止め9が設けられ、前記縦リブ6および棒状鋼材7並びにずれ止め9を埋め込むようにセグメント内部に中詰めコンクリート8が充填・固化されて合成一体化されている。
【解決手段】主桁3、継手板4、スキンプレート5および縦リブ6を備えた鋼製系セグメントにおける主桁3に、セグメント内において主桁長手方向に間隔をおいて複数の縦リブ6が固定され、前記各縦リブ6のトンネル内空側に渡ってトンネル周方向に棒状鋼材7が配置され、前記セグメントにおけるトンネル周方向に間隔をおいて配置されている縦リブ6間の中間部のみにおいて、間隔をおいて対向する各主桁3に、これらの主桁の対向面側に向けて突出するように少なくとも一対のずれ止め9が設けられ、前記縦リブ6および棒状鋼材7並びにずれ止め9を埋め込むようにセグメント内部に中詰めコンクリート8が充填・固化されて合成一体化されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦リブを有する鋼殻内に中詰めコンクリートを充填してなる合成セグメントに関し、特に、合成セグメントの構造を簡素にし、より安価な合成セグメントとした簡易合成セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図14に示すような合成セグメント1Aが知られている。この合成セグメント1Aの構造は、主桁3と継手板4とスキンプレート5および縦リブ6を備えた鋼殻2の内部において前記主桁3に、主桁長手方向に間隔をおいて並行に複数の縦リブ6を固定した構造である。
【0003】
そして、前記各縦リブ6の外側に渡ってトンネル周方向に棒状鋼材7が配置され、前記縦リブ6および棒状鋼材7を埋め込むようにセグメント内部に中詰めコンクリート8を充填・固化した構造の合成セグメント1Aである。
【0004】
このような合成セグメント1Aを地中の所定の位置に設置してセグメントリングによるトンネルを構築する。このようなトンネルに地山側からの土水圧P(例えば、図13における設計荷重P参照)が作用した場合、中詰めコンクリート8がはらみだすような2次曲げモーメントが作用するようになり、中詰めコンクリート8がトンネル内空側にはらみ出し、図14に2点鎖線で示すように分離するようになる。
【0005】
このようになると、鋼殻2と中詰めコンクリート8との一体化が図れなくなるばかりでなく、中詰めコンクリート8によりトンネル周方向の圧縮力を負担することができなくなるので、合成セグメント1Aとしての耐力が急激に低下するようになる。
【0006】
通常、合成セグメント1Aでは、中詰めコンクリートによりトンネル周方向の圧縮力を負担し、主桁等の鋼殻2によりトンネル周方向の引張力を負担し、トンネル軸方向のジャッキ推力を、縦リブ6または中詰めコンクリート8により負担するようにしている。
【0007】
前記の縦リブ6は、トンネル半径方向に角度間隔をおいて配置されているため、縦リブ6がトンネル半径方向中心に向かう板状の縦リブ6であっても、トンネル周方向に隣り合う縦リブ6により、中詰めコンクリート8は、トンネル中心側に向かって狭くなるようにクサビ状に支持されてはいるが、隣り合う各縦リブ6とトンネル中心を結ぶ間の角度は、30度以上の楔角度ではなく、10度〜20度程度の小さい角度である。
継手板4とトンネル中心と縦リブ6を結ぶ間の角度も前記と同様に小さい角度である。そのため、隣り合う各縦リブ6間の中詰めコンクリート8は、隣り合う各縦リブ6に強固に支持されているものではない。同様に継手板4と縦リブ6間の中詰めコンクリート8も同様に、継手板4と縦リブ6により強固に支持されているものではない。
セグメントにおける隣り合う縦リブ6または継手板4と縦リブ6は、前記のような楔角度があっても、トンネル半径寸法が大きくなるにつれて、平行に近い状態になり、前記の楔角度によって、縦リブ6または継手板4を利用した中詰めコンクリート8の支持作用が小さくなる。
【0008】
そして、前記のような鋼殻2と中詰めコンクリート8との分離する状態を防止する手段として、下記のようなことも知られている。
【0009】
すなわち、主桁と中詰めコンクリートの合成化を図るために主桁内面側に多数のずれ止めを配置する構造が知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0010】
前記のようにセグメントを構成する鋼殻と、その鋼殻内に充填されるコンクリートとの、合成一体化を図るために、鋼殻側に、間隔をおいて多数のずれ止めを設けて一体化することが一般的に知られている。
【0011】
前記のずれ止めの設け方としては、鋼殻におけるトンネル周方向あるいはトンネル軸方向の構造材である主桁または継手板あるいは縦リブ等の各構造材に間隔をおいて、それぞれ多数のずれ止めを設けるようにしている。
【0012】
前記のように多数のずれ止めを設ける合成セグメントは、鋼殻と中詰めコンクリートとを強固な一体化を図るようにした構造である。
【0013】
前記のようにセグメントを構成する各構造材に、多数のずれ止めを設けるようにすると、その溶接作業等に多大な時間を要すると共に、高度の熟練を必要とし、しかも施工が煩雑であり、合成セグメントのコストが格段に高くなる要因をなしているという問題がある。
【0014】
【特許文献1】特開2002−38888号公報(合成セグメント)
【特許文献2】特開平8−296398号公報(鋼製セグメント)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
また、主桁を断面溝形あるいは断面L型または断面H形にし、主桁におけるトンネル内空側にフランジを配置する構造にして、前記フランジを中詰めコンクリートのトンネル内空側へのはらみだすのを防止することも考えられるが、このような主桁を断面溝形またはL形あるいは断面H形にすると、主桁のコストが格段に高くなるため、合成セグメントが高価になるという問題がある。
【0016】
合成セグメントにおける主桁間に渡って配置されている縦リブに支持される中詰めコンクリートは、ずれ止めを配置しなければ、縦リブ間隔の中央位置を最大とする2次曲げが発生する。
そのため、主桁に比べて大きな作用力がコンクリートに発生し、耐力低下を引き起こす。
【0017】
本発明者は、主桁間に渡って配置されているトンネル周方向の縦リブ間において、複数または多数のずれ止めが配置されている技術に着目するとともに、そのようにトンネル周方向における縦リブ間に複数または多数のずれ止めを設ける必要性について種々検討した。
【0018】
主桁内面側のずれ止めを最小限としながらも中詰めコンクリートの2次曲げを抑制することが可能になると、セグメント鋼殻とコンクリートとの合成化を図りながら、合成セグメントを安価に製作することが可能になることを知見した。
【0019】
そしてまた、縦リブ間に複数のずれ止めを設ける形態では、施工手間がかかり、製作費用が高くなること。また、縦リブ間に1対または1本のずれ止めを設けても、セグメント鋼殻とコンクリートとの合成化を図ることが可能なことを知見した。したがって、少なくともトンネル周方向の縦リブ6間の中間部にずれ止め9を設けて、中詰めコンクリート8と鋼殻2とのずれ止め9を介した簡易な合成一体化を図る必要がある。
【0020】
本発明は、前記のように、鋼殻セグメントとその中に充填されるコンクリートとの合成一体化を簡易に図りながら、セグメントとしての十分な耐力を確保しつつ、簡単な構造で安価な合成セグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の簡易合成セグメントでは、主桁、継手板、スキンプレートおよび縦リブを備えた鋼製系セグメントにおける前記主桁に、セグメント内において主桁長手方向に間隔をおいて複数の縦リブが固定され、前記各縦リブのトンネル内空側に渡ってトンネル周方向に棒状鋼材が配置され、前記セグメントにおけるトンネル周方向に間隔をおいて配置されている少なくとも縦リブ間の中間部のみにおいて、間隔をおいて対向する各主桁に、これらの主桁の対向面側に向けて突出するように少なくとも一対のずれ止めが設けられ、前記縦リブおよび棒状鋼材並びにずれ止めを埋め込むようにセグメント内部に中詰めコンクリートが充填・固化されて合成一体化されていることを特徴とする簡易合成セグメント。
また、第2発明の簡易合成セグメントでは、主桁、継手板、スキンプレートおよび縦リブを備えた鋼製系セグメントにおける前記主桁に、セグメント内において主桁長手方向に間隔をおいて複数の縦リブが固定され、前記各縦リブのトンネル内空側に渡ってトンネル周方向に棒状鋼材が配置され、前記セグメントにおけるトンネル周方向に間隔をおいて配置されている少なくとも縦リブ間の中間部のみにおいて、間隔をおいて対向する各主桁を互いに対向面側へ向けて架け渡すように連結するずれ止めが少なくとも1本設けられ、前記縦リブおよび棒状鋼材並びにずれ止めを埋め込むようにセグメント内部に中詰めコンクリートが充填・固化されて合成一体化されていることを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明または第2発明の簡易合成セグメントにおいて、ずれ止めがトンネル周方向の棒状鋼材よりもトンネル内空面側に位置するように設けられて、コンクリートに埋め込まれていることを特徴とする。
また第4発明では、第1発明〜第3発明に記載の簡易合成セグメントにおいて、前記棒状鋼材が鉄筋であることを特徴とする。
また第5発明では、第1発明〜第4発明に記載の簡易合成セグメントにおいて、前記ずれ止めが山形鋼であることを特徴とする。
また第6発明では、第1発明〜第5発明に記載の簡易合成セグメントにおいて、前記主桁が板状鋼材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、次のような効果が得られる。
(1)トンネル周方向の少なくとも縦リブ間の中間部のみにおいて、主桁に向かって突出するようにずれ止めを設けたり、主桁に渡ってずれ止めを設けて、中詰めコンクリートに埋め込むだけで、鋼殻と周方向の棒状鋼材と中詰めコンクリートとを簡単に一体化した簡易な合成セグメントとすることができる効果が得られる。
(2)ずれ止めを多数設けることがなく、トンネル周方向に隣合う縦リブ間のほぼ中間位置のみにおいてずれ止めを設ければよいので、ずれ止めの設置が容易で設置費用も安価であり、製作も容易で安価で簡易な合成セグメントとすることができる。
(3)合成セグメントに地山側から土水圧が作用しても、ずれ止めを備えているので、中詰めコンクリートの2次曲げ(トンネル内空側への曲げ)を抑制することができ、このような中詰めコンクリートの2次曲げ抑制によるトンネル構造安全性の向上を図ることができる。
(4)ずれ止めによる中詰めコンクリートの2次曲げ抑制作用があるため、中詰めコンクリートのひび割れ幅を軽減することができ、その中詰めコンクリートのひび割れ幅の軽減により、トンネル耐久性の向上を図ることができる。
(5)主桁間を連結するずれ止めであると、縦リブ間における主桁を補強することができると共に、より確実に中詰めコンクリートのはらみ出しを防止することができ、より確実に鋼殻と中詰めコンクリートとの一体化を図ることができる。
(6)トンネル周方向の棒状鋼材よりもトンネル半径方向内空側に位置するようにずれ止めを主桁間に渡って配置していると、トンネル周方向の棒状鋼材をトンネル半径方向内空側に移動しないように拘束することができる。
(7)トンネル周方向の棒状鋼材として鉄筋を使用し、主桁として板状鋼材を使用している簡易合成セグメントであると、市販の安価な鋼材を使用してより安価で簡易な簡易合成セグメントとすることができる。
(8)ずれ止めとして山形鋼を使用し、主桁として板状鋼材を使用している簡易合成セグメントであると、市販の安価な鋼材を使用してより安価で簡易な簡易合成セグメントとすることができる。この場合、トンネル周方向の棒状鋼材として鉄筋を使用すると、さらに一段と安価で簡易な簡易合成セグメントとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1〜図3は、本発明の第1実施形態の簡易合成セグメント1を示すものである。鋼殻2は、トンネル周方向に延長する鋼板製で円弧状の一対の主桁3と、これらの主桁3の端部に渡って配置され溶接等により一体に固着された鋼板製の継手板4と、これらに溶接により固定される地山側の鋼製のスキンプレート5と、主桁3におけるトンネル周方向に間隔をおいて並行に配置されると共にトンネル軸方向に架け渡すように配置され、主桁3に溶接により固定された複数の縦リブ6により構成されている。
【0025】
また、前記鋼殻2における各縦リブ6よりもトンネル内空側に位置するように、各縦リブ6に渡って、トンネル周方向に架け渡すようにトンネル周方向の棒状鋼材7が配置されている。
【0026】
図示の形態では、トンネル軸方向に平行に複数(図示の場合には、5本)の異形鉄筋からなるトンネル周方向の棒状鋼材7が縦リブ6に載置されて、セグメント内に充填される中詰めコンクリート8に埋め込み固定されている。
【0027】
そして、トンネル周方向に間隔をおいて隣り合う各縦リブ6間の中間部(好ましくは、ほぼ中央位置の1箇所のみ)のみにおいて、トンネル軸方向に間隔をおいて対向する各主桁3に、これらの主桁3の対向面側に向けて突出するように、短尺な一対のずれ止め9が配置されて、各ずれ止め9の基端側が溶接により主桁3に固定されている。
同様に、トンネル周方向に隣り合う継手板4と縦リブ6間の中間部(好ましくは、ほぼ中央位置の1箇所)のみにおいて、トンネル軸方向に間隔をおいて対向する各主桁3に、これらの主桁3の対向面側に向けて突出するように、短尺な一対のずれ止め9が設けられ、前記各ずれ止め9は、中詰めコンクリート8に埋め込まれている。
前記のずれ止め9の突出長さは、例えば、図2に示すように、主桁3に最も近い位置に配置されているトンネル周方向の棒状鋼材7に達する程度でよい。前記の各ずれ止め9は片持ち式に主桁3に支持されている形態であるので、長くすると曲げ応力が大きく作用するので好ましくない。
なお、継手板4と縦リブ6間の寸法が、小さい寸法(例えば、隣り合う縦リブ4間の寸法の1/2以下の狭い間隔であって、中詰めコンクリート8のはらみだしを防止できる場合)である場合には、ずれ止め9を省略する場合がある。したがって、少なくともトンネル周方向の縦リブ6間の中央部にずれ止め9を設けて、中詰めコンクリート8と鋼殻2とのずれ止め9を介した簡易な合成一体化を図る必要がある。
【0028】
前記のずれ止め9は、等辺山形鋼9A等の形鋼からなり、等辺山形鋼9Aの一端側を鋼殻2内の主桁3の側面に溶接により固定している。ずれ止め9のトンネル半径方向の配置位置としては、スキンプレート5からトンネル内空側に離れた位置とされ、好ましくは、セグメントの桁高の中央付近あるいは、より内空側に位置するように配置される。前記のずれ止め9としては、等辺山形鋼9A以外にも、他の形鋼あるいは、鉄筋、異形鋼棒等の鋼材を使用することができる。
ずれ止め9としての等辺山形鋼9Aにおける溝部をスキンプレート5側に向くように配置しているので、等辺山形鋼9Aの各辺より地山側の中詰めコンクリート8を広く確実に支承することができる。そのため、地山側からの土水圧Pによる中詰めコンクリート8のはらみ出しを確実に防止することができる。
そして、前記の縦リブ4および棒状鋼材7並びに各ずれ止め9は、中詰めコンクリート8に埋め込まれ、棒状鋼材7は中詰めコンクリート8に埋め込み固定されて、鋼殻2側と棒状鋼材7と中詰めコンクリート8が一体に固定されて、簡易合成セグメント1とされている。
【0029】
なお、前記のずれ止め9あるいは縦リブ6の表面を粗面としたり、あるいは前記ずれ止め9あるいは縦リブ6の表面に凹部または貫通する透孔を設けたりして、より強固な中詰めコンクリート7との一体化を図るようにしてもよい。
【0030】
図示の形態では、前記のずれ止め9は、トンネル周方向の棒状鋼材7よりもトンネル半径方向で地山側(外側)に位置するように配置されている。前記のずれ止め9は、トンネル周方向の棒状鋼材7よりもトンネル内空側に位置するように配置して、ずれ止め9に対する中詰めコンクリート8のかぶり厚が少なくなるような場合は好ましくない。
【0031】
本発明では、以下に示すように、トンネル周方向の棒状鋼材7を縦リブ6に、単に載置するようにすることにより、簡易合成セグメント1の製作が容易になるばかりでなく、製作費用を安価にすることができる。
【0032】
簡易合成セグメント1を製作する場合は、ずれ止め9を取り付けた鋼殻2を製作した後、内空側を上にして、各縦リブ6のトンネル内空側に渡って所定の曲率に彎曲したトンネル周方向の棒状鋼材7を載置し、必要に応じ、トンネル周方向の各棒状鋼材7の位置ずれを防止するために、結束線等により仮止めする。
【0033】
なお、鋼殻2内側凹部を上にして鋼殻2内にコンクリートが充填される時に、トンネル周方向の各棒状鋼材7の位置ずれを防止するために、組立鉄筋を配置するようにして、トンネル周方向の各棒状鋼材7の位置決めするようにしてもよい。
【0034】
前記のように、所定の位置にずれ止め9およびトンネル周方向の棒状鋼材7が配置された状態で、中詰めコンクリート8が充填・固化され、鋼殻2と中詰めコンクリート8との一体化が図られるようにしている。
前記の中詰めコンクリート8が硬化した状態では、ずれ止め9により中詰めコンクリート8のはらみだしが防止されるため、棒状鋼材7は縦リブ6上に載置するだけであっても、棒状鋼材7は縦リブ6上に載置された所定の位置を保持される。また、前記のように棒状鋼材7は所定の位置に保持されるため、中詰めコンクリート8と共同して圧縮あるいは引張に抵抗するようになる。そのため、ずれ止め9を備えていない従来の合成セグメントの場合に比べて、合成セグメントとしての耐力を向上させることができる。
【0035】
なお、前記のトンネル周方向の各棒状鋼材7は、各縦リブ6に挿通するように設ける形態あるいは、各縦リブ6に棒状鋼材7を挿通して溶接等により固定する形態は、セグメントの加工コストが高くなるので、前記のように縦リブ6のトンネル内空側に配置するのが、より安価に簡易合成セグメント1を製作できるのでよい。
【0036】
前記実施形態のように、鋼板製の一対の主桁3、継手板4、スキンプレート5、縦リブ6および棒状鋼材7を備えた鋼製系セグメントに、トンネル周方向の縦リブ6間の中間部にずれ止め9を主桁3に設けた状態で、中詰めコンクリート8を充填・固化する。このようにして、鋼殻2側と中詰めコンクリート8を一体化するだけで、中詰めコンクリート8のはらみ出しを防止した簡易に合成一体化した簡易合成セグメント1とすることができる。
【0037】
なお、前記の縦リブ6としては、鋼製板状の縦リブ6以外にも、断面L形の縦リブとすることも考えられるが、前記のように平板状の鋼板を使用するほうが、安価な簡易合成セグメント1とすることができる。
【0038】
また、図示を省略するが、前記段落0015に記載したように、主桁を断面溝形あるいは断面L型または断面H形にし、主桁におけるトンネル内空側にフランジを配置する構造では、主桁のコストが格段に高くなるため、合成セグメントが高価になる。しかし、図示の前記実施形態のように、主桁3におけるセグメントの内側面に、セグメント内に張り出すような突出フランジを備えていない形態の鋼殻2内に中詰めコンクリート8を充填・固化して棒状部材7を埋め込むように合成セグメントを製作する場合、前記のようなずれ止め9を設けて、鋼殻2と中詰めコンクリート8との簡易な合成化一体化を図ると、容易に安価で簡易な合成セグメント1を構成することができる。
【0039】
前記のように構成された簡易合成セグメント1では、地山側から土水圧Pが作用した場合、縦リブ6間のほぼ中央に配置されたずれ止め9により、縦リブ6間に充填されている中詰めコンクリート8のトンネル内空側へのはらみ出しが防止され、簡易合成セグメント1の耐力の低下を防止するようにされている。
【0040】
前記の主桁3としては、断面板状の主桁あるいは鋼殻の内側に張り出すようなフランジを備えていない鋼殻では、本発明のようなずれ止め9を設けるようにするとよい。
【0041】
前記のずれ止め9は、縦リブ6間において、トンネル周方向に1箇所のみ、例えば前記実施形態のように対向するように一対あればよいが、トンネル周方向に縦リブ6間の中央部付近においてトンネル周方向に2箇所等複数個所あってもよいが、経済的でなくなるため、極力1箇所にするのがよい(後記の実施形態においても同様である)。
【0042】
図4〜図6は、本発明の第2実施形態の簡易合成セグメント1を示すものであって、この形態では、トンネル周方向における縦リブ6間の中間部において、主桁3に渡って、長尺の一本の山形鋼からなるずれ止め9の両端部が溶接により各主桁3に溶接により固定されている。また、トンネル周方向における継手板4と縦リブ6間の中間部において、主桁3に渡って、長尺の一本の山形鋼からなるずれ止め9の両端部が溶接により各主桁3に溶接により固定されている。前記山形鋼からなるずれ止め9における山部がトンネル半径方向の内空側に位置するように配置されている。
【0043】
このような形態では、主桁3間がずれ止め9により連結されているので、縦リブ6間における主桁3を補強することができると共に、より確実に中詰めコンクリート8のはらみ出しを防止することができ、より確実に鋼殻2と中詰めコンクリート8との一体化を図ることができる。
前記の山形鋼からなるずれ止め9に代えて、断面矩形状棒鋼等の棒状鋼材のずれ止め9としてもよい。その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同様な部分には同様な符号を付した。
【0044】
図7〜図9は、本発明の第3実施形態の簡易合成セグメント1を示すものであって、この形態では、板状の主桁3間に渡って、異形鉄筋からなるずれ止め9を設けた形態である。
【0045】
また、この形態では、トンネル周方向の棒状鋼材7よりもトンネル半径方向内空側に位置するようにずれ止め9を主桁3間に渡って配置し、ずれ止め9の両端部を主桁3のセグメント内側面に溶接により固定し、トンネル周方向の棒状鋼材7をトンネル半径方向内空側に移動しないように拘束するずれ止め9とされている。
このような形態とする場合には、トンネル周方向の棒状鋼材7を配置した後、その棒状鋼材7に載置するようにトンネル内空側にずれ止め9を配置し、各ずれ止め9の両端部をそれぞれ主桁3に溶接により固着すればよい。
この形態のように、トンネル周方向の棒状鋼材7よりもトンネル半径方向内空側に位置するようにずれ止め9が配置されている分、合成セグメント1におけるトンネル周方向の中立軸が、ずれ止め9がない場合に比べて、よりトンネル内空側よりに位置するようになる。そのため、地山側からの土水圧Pにより、合成セグメントをトンネル内空側にはらみ出すような曲げが作用した場合に、前記中立軸を境とする合成セグメントの内空側に位置する引張領域が少なくなる分、圧縮領域が多くなり有利になる。
【0046】
また、図示の形態では、例えば、直径(D)が25mmの異形鉄筋からなるずれ止め9とされ、市販の安価な異形鉄筋を使用できるため、安価な簡易合成セグメント1とすることができる。なお、前記のずれ止め9としては、断面矩形状の棒状の鋼材を使用するようにしてもよい。
【0047】
本発明を実施する場合、前記トンネル周方向の棒状鋼材7として鉄筋を使用し、前記ずれ止め9として山形鋼を使用し、前記主桁3として板状鋼材を使用している簡易合成セグメント1であると、市販の安価な鋼材を使用した安価な簡易合成セグメントとすることができる。
【0048】
次に、図7〜図9に示す形態の異形鉄筋からなるずれ止め9を備えた本発明の第3実施形態の簡易合成セグメント1と、そのようなずれ止め9を備えていない図14に示す合成セグメント1Aとを数値解析により比較した結果について説明する。
【0049】
図10は、本発明の簡易合成セグメント1と比較例の合成セグメント1Aの数値解析した部分を示す説明図であり、前記各セグメントにおけるトンネル周方向で1/2部分のみであり、かつトンネル軸方向で1/2部分のみで、セグメント全体として1/4部分の寸法の領域について数値解析の対象とし、その部分における各部の寸法を示す一部概略斜視図である。
【0050】
図11は、図10に示すセグメントの1/4部分で図14に示す比較例の合成セグメント1Aにおける中詰めコンクリート8を取り除いた状態を示す有限要素法解析を説明するための斜視図である。
【0051】
また、図12は、図10に示すセグメントの1/4部分で図7に示す本発明の第3実施形態の簡易合成セグメント1における中詰めコンクリート8を取り除いた状態を示す有限要素法解析を説明するための斜視図である。本数値解析では効果を明確にするためにずれ止め9をセグメント1Aのトンネル周方向センターライン位置Aの1箇所のみに設けた場合を想定している。なお、実際の本発明ではこの1箇所以外にも継手板4と縦リブ6との間並びに縦リブ同士の間にもずれ止めがある。
【0052】
図14は、本発明第3実施形態の簡易合成セグメント1と、比較例として、ずれ止め9を設けていない場合の合成セグメント1Aのそれぞれについて、トンネル周方向一端側を固定するように支持して、トンネル周方向他端側に荷重を付加させる形態を示す斜視図である。
【0053】
本発明の簡易合成セグメント1と、比較例としての合成セグメント1Aの主要部の寸法は、以下の通りである。
セグメント幅650mm、主桁高さ86mm、スキンプレート5の鋼板の板厚tは3mm、縦リブ6の板厚t6mm、主桁3の板厚tは9mm
セグメントにより構成されるトンネル外径3.3mに、トンネル地山側から設計荷重として7.5kNが負荷されている場合を想定した。
図13にトンネル周方向の1/2部分でトンネル軸方向の1/2部分の1/4部分を示すように、継手板側を支持するように支点として、セグメント周方向中央部に等分布荷重の設計荷重P(7.5kN)を付加させた3点曲げ状況が示されている。そして、合成セグメント1および合成セグメント1Aについて解析した。
【0054】
図12に示す本発明の簡易合成セグメント1の測定地点は、主桁3については、トンネル半径方向の内空側で、トンネル周方向切断端部の位置Aで、矢印A1で示すトンネル周方向の伸びを解析すると共に、トンネル周方向の鉄筋からなる棒状鋼材7におけるトンネル周方向の切断端部側の位置Bで矢印B1で示すトンネル周方向の伸びを解析した。
【0055】
比較例の合成セグメント1Aの場合も、前記の本発明の合成セグメント1の測定位置と同様で、主桁3については、トンネル半径方向の内空側で、トンネル周方向切断端部の位置Aで矢印A1で示すトンネル周方向の伸びを解析すると共に、トンネル周方向の棒状鋼材におけるトンネル周方向の切断端部側の位置Bで、矢印B1で示すトンネル周方向の伸びを解析した。
【0056】
解析結果および主桁3と鉄筋からなる周方向の棒状鋼材7との伸びを比較し、その結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示すように、ずれ止め9を設けた本発明の簡易合成セグメント1の場合は、ずれ止めがない比較例の合成セグメント1Aに比べて、主桁3および周方向の鉄筋(周方向の)のひずみが小さいことがわかる。このように、主桁3および周方向の鉄筋のひずみが小さい分、中詰めコンクリート8を含めてセグメント幅方向で平均的に負担していることがわかる。また、前記実施形態の本発明の簡易合成セグメント1の場合は、主桁3とトンネル周方向の棒状鋼材7との負担割合が近く、幅方向で均等に負担していることがわかる。
【0059】
図示の実施形態のように、間隔をおいた一対の主桁3と継手板4と縦リブ6とが平板状の鋼板であり、このような鋼殻2内に中詰めコンクリート8を充填・固化すると、鋼製系セグメントにおける縦リブ6と中詰めコンクリート8とをずれ止め9を介して極めて合理的に合成一体化した簡易合成セグメントとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態の簡易合成セグメントを示すものであって、(a)は縦断側面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
【図2】図1(c)を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示す本発明の第1実施形態の簡易合成セグメントにおける中詰めコンクリートおよびスキンプレートを省略して地山側から見た透視斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態の簡易合成セグメントを示すものであって、(a)は縦断側面図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は(a)のD−D線断面図である。
【図5】図4(c)を拡大して示す断面図である。
【図6】図4に示す本発明の第2実施形態の簡易合成セグメントにおける中詰めコンクリートおよびスキンプレートを省略して地山側から見た透視斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態の簡易合成セグメントを示すものであって、(a)は縦断側面図、(b)は(a)のE−E線断面図、(c)は(a)のF−F線断面図である。
【図8】図7(c)を拡大して示す断面図である。
【図9】図7に示す本発明の第3実施形態の簡易合成セグメントにおける中詰めコンクリートおよびスキンプレートを省略して地山側から見た透視斜視図である。
【図10】合成セグメントを数値解析するための寸法を示す斜視図である。
【図11】ずれ止めを備えていない合成セグメントの寸法および測定位置を示す説明図である。
【図12】ずれ止めを備えている本発明の合成セグメントの寸法および測定位置を示す説明図である。
【図13】セグメントの荷重を付加させる状態を示す説明図である。
【図14】従来または比較例の合成セグメントを示すものであって、(a)は縦断側面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 簡易合成セグメント1
1A 合成セグメント
2 鋼殻
3 主桁
4 継手板
5 スキンプレート
6 縦リブ
7 トンネル周方向の棒状鋼材
8 中詰めコンクリート
9 ずれ止め
9A 等辺形鋼
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦リブを有する鋼殻内に中詰めコンクリートを充填してなる合成セグメントに関し、特に、合成セグメントの構造を簡素にし、より安価な合成セグメントとした簡易合成セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図14に示すような合成セグメント1Aが知られている。この合成セグメント1Aの構造は、主桁3と継手板4とスキンプレート5および縦リブ6を備えた鋼殻2の内部において前記主桁3に、主桁長手方向に間隔をおいて並行に複数の縦リブ6を固定した構造である。
【0003】
そして、前記各縦リブ6の外側に渡ってトンネル周方向に棒状鋼材7が配置され、前記縦リブ6および棒状鋼材7を埋め込むようにセグメント内部に中詰めコンクリート8を充填・固化した構造の合成セグメント1Aである。
【0004】
このような合成セグメント1Aを地中の所定の位置に設置してセグメントリングによるトンネルを構築する。このようなトンネルに地山側からの土水圧P(例えば、図13における設計荷重P参照)が作用した場合、中詰めコンクリート8がはらみだすような2次曲げモーメントが作用するようになり、中詰めコンクリート8がトンネル内空側にはらみ出し、図14に2点鎖線で示すように分離するようになる。
【0005】
このようになると、鋼殻2と中詰めコンクリート8との一体化が図れなくなるばかりでなく、中詰めコンクリート8によりトンネル周方向の圧縮力を負担することができなくなるので、合成セグメント1Aとしての耐力が急激に低下するようになる。
【0006】
通常、合成セグメント1Aでは、中詰めコンクリートによりトンネル周方向の圧縮力を負担し、主桁等の鋼殻2によりトンネル周方向の引張力を負担し、トンネル軸方向のジャッキ推力を、縦リブ6または中詰めコンクリート8により負担するようにしている。
【0007】
前記の縦リブ6は、トンネル半径方向に角度間隔をおいて配置されているため、縦リブ6がトンネル半径方向中心に向かう板状の縦リブ6であっても、トンネル周方向に隣り合う縦リブ6により、中詰めコンクリート8は、トンネル中心側に向かって狭くなるようにクサビ状に支持されてはいるが、隣り合う各縦リブ6とトンネル中心を結ぶ間の角度は、30度以上の楔角度ではなく、10度〜20度程度の小さい角度である。
継手板4とトンネル中心と縦リブ6を結ぶ間の角度も前記と同様に小さい角度である。そのため、隣り合う各縦リブ6間の中詰めコンクリート8は、隣り合う各縦リブ6に強固に支持されているものではない。同様に継手板4と縦リブ6間の中詰めコンクリート8も同様に、継手板4と縦リブ6により強固に支持されているものではない。
セグメントにおける隣り合う縦リブ6または継手板4と縦リブ6は、前記のような楔角度があっても、トンネル半径寸法が大きくなるにつれて、平行に近い状態になり、前記の楔角度によって、縦リブ6または継手板4を利用した中詰めコンクリート8の支持作用が小さくなる。
【0008】
そして、前記のような鋼殻2と中詰めコンクリート8との分離する状態を防止する手段として、下記のようなことも知られている。
【0009】
すなわち、主桁と中詰めコンクリートの合成化を図るために主桁内面側に多数のずれ止めを配置する構造が知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0010】
前記のようにセグメントを構成する鋼殻と、その鋼殻内に充填されるコンクリートとの、合成一体化を図るために、鋼殻側に、間隔をおいて多数のずれ止めを設けて一体化することが一般的に知られている。
【0011】
前記のずれ止めの設け方としては、鋼殻におけるトンネル周方向あるいはトンネル軸方向の構造材である主桁または継手板あるいは縦リブ等の各構造材に間隔をおいて、それぞれ多数のずれ止めを設けるようにしている。
【0012】
前記のように多数のずれ止めを設ける合成セグメントは、鋼殻と中詰めコンクリートとを強固な一体化を図るようにした構造である。
【0013】
前記のようにセグメントを構成する各構造材に、多数のずれ止めを設けるようにすると、その溶接作業等に多大な時間を要すると共に、高度の熟練を必要とし、しかも施工が煩雑であり、合成セグメントのコストが格段に高くなる要因をなしているという問題がある。
【0014】
【特許文献1】特開2002−38888号公報(合成セグメント)
【特許文献2】特開平8−296398号公報(鋼製セグメント)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
また、主桁を断面溝形あるいは断面L型または断面H形にし、主桁におけるトンネル内空側にフランジを配置する構造にして、前記フランジを中詰めコンクリートのトンネル内空側へのはらみだすのを防止することも考えられるが、このような主桁を断面溝形またはL形あるいは断面H形にすると、主桁のコストが格段に高くなるため、合成セグメントが高価になるという問題がある。
【0016】
合成セグメントにおける主桁間に渡って配置されている縦リブに支持される中詰めコンクリートは、ずれ止めを配置しなければ、縦リブ間隔の中央位置を最大とする2次曲げが発生する。
そのため、主桁に比べて大きな作用力がコンクリートに発生し、耐力低下を引き起こす。
【0017】
本発明者は、主桁間に渡って配置されているトンネル周方向の縦リブ間において、複数または多数のずれ止めが配置されている技術に着目するとともに、そのようにトンネル周方向における縦リブ間に複数または多数のずれ止めを設ける必要性について種々検討した。
【0018】
主桁内面側のずれ止めを最小限としながらも中詰めコンクリートの2次曲げを抑制することが可能になると、セグメント鋼殻とコンクリートとの合成化を図りながら、合成セグメントを安価に製作することが可能になることを知見した。
【0019】
そしてまた、縦リブ間に複数のずれ止めを設ける形態では、施工手間がかかり、製作費用が高くなること。また、縦リブ間に1対または1本のずれ止めを設けても、セグメント鋼殻とコンクリートとの合成化を図ることが可能なことを知見した。したがって、少なくともトンネル周方向の縦リブ6間の中間部にずれ止め9を設けて、中詰めコンクリート8と鋼殻2とのずれ止め9を介した簡易な合成一体化を図る必要がある。
【0020】
本発明は、前記のように、鋼殻セグメントとその中に充填されるコンクリートとの合成一体化を簡易に図りながら、セグメントとしての十分な耐力を確保しつつ、簡単な構造で安価な合成セグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の簡易合成セグメントでは、主桁、継手板、スキンプレートおよび縦リブを備えた鋼製系セグメントにおける前記主桁に、セグメント内において主桁長手方向に間隔をおいて複数の縦リブが固定され、前記各縦リブのトンネル内空側に渡ってトンネル周方向に棒状鋼材が配置され、前記セグメントにおけるトンネル周方向に間隔をおいて配置されている少なくとも縦リブ間の中間部のみにおいて、間隔をおいて対向する各主桁に、これらの主桁の対向面側に向けて突出するように少なくとも一対のずれ止めが設けられ、前記縦リブおよび棒状鋼材並びにずれ止めを埋め込むようにセグメント内部に中詰めコンクリートが充填・固化されて合成一体化されていることを特徴とする簡易合成セグメント。
また、第2発明の簡易合成セグメントでは、主桁、継手板、スキンプレートおよび縦リブを備えた鋼製系セグメントにおける前記主桁に、セグメント内において主桁長手方向に間隔をおいて複数の縦リブが固定され、前記各縦リブのトンネル内空側に渡ってトンネル周方向に棒状鋼材が配置され、前記セグメントにおけるトンネル周方向に間隔をおいて配置されている少なくとも縦リブ間の中間部のみにおいて、間隔をおいて対向する各主桁を互いに対向面側へ向けて架け渡すように連結するずれ止めが少なくとも1本設けられ、前記縦リブおよび棒状鋼材並びにずれ止めを埋め込むようにセグメント内部に中詰めコンクリートが充填・固化されて合成一体化されていることを特徴とする。
また、第3発明では、第1発明または第2発明の簡易合成セグメントにおいて、ずれ止めがトンネル周方向の棒状鋼材よりもトンネル内空面側に位置するように設けられて、コンクリートに埋め込まれていることを特徴とする。
また第4発明では、第1発明〜第3発明に記載の簡易合成セグメントにおいて、前記棒状鋼材が鉄筋であることを特徴とする。
また第5発明では、第1発明〜第4発明に記載の簡易合成セグメントにおいて、前記ずれ止めが山形鋼であることを特徴とする。
また第6発明では、第1発明〜第5発明に記載の簡易合成セグメントにおいて、前記主桁が板状鋼材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、次のような効果が得られる。
(1)トンネル周方向の少なくとも縦リブ間の中間部のみにおいて、主桁に向かって突出するようにずれ止めを設けたり、主桁に渡ってずれ止めを設けて、中詰めコンクリートに埋め込むだけで、鋼殻と周方向の棒状鋼材と中詰めコンクリートとを簡単に一体化した簡易な合成セグメントとすることができる効果が得られる。
(2)ずれ止めを多数設けることがなく、トンネル周方向に隣合う縦リブ間のほぼ中間位置のみにおいてずれ止めを設ければよいので、ずれ止めの設置が容易で設置費用も安価であり、製作も容易で安価で簡易な合成セグメントとすることができる。
(3)合成セグメントに地山側から土水圧が作用しても、ずれ止めを備えているので、中詰めコンクリートの2次曲げ(トンネル内空側への曲げ)を抑制することができ、このような中詰めコンクリートの2次曲げ抑制によるトンネル構造安全性の向上を図ることができる。
(4)ずれ止めによる中詰めコンクリートの2次曲げ抑制作用があるため、中詰めコンクリートのひび割れ幅を軽減することができ、その中詰めコンクリートのひび割れ幅の軽減により、トンネル耐久性の向上を図ることができる。
(5)主桁間を連結するずれ止めであると、縦リブ間における主桁を補強することができると共に、より確実に中詰めコンクリートのはらみ出しを防止することができ、より確実に鋼殻と中詰めコンクリートとの一体化を図ることができる。
(6)トンネル周方向の棒状鋼材よりもトンネル半径方向内空側に位置するようにずれ止めを主桁間に渡って配置していると、トンネル周方向の棒状鋼材をトンネル半径方向内空側に移動しないように拘束することができる。
(7)トンネル周方向の棒状鋼材として鉄筋を使用し、主桁として板状鋼材を使用している簡易合成セグメントであると、市販の安価な鋼材を使用してより安価で簡易な簡易合成セグメントとすることができる。
(8)ずれ止めとして山形鋼を使用し、主桁として板状鋼材を使用している簡易合成セグメントであると、市販の安価な鋼材を使用してより安価で簡易な簡易合成セグメントとすることができる。この場合、トンネル周方向の棒状鋼材として鉄筋を使用すると、さらに一段と安価で簡易な簡易合成セグメントとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1〜図3は、本発明の第1実施形態の簡易合成セグメント1を示すものである。鋼殻2は、トンネル周方向に延長する鋼板製で円弧状の一対の主桁3と、これらの主桁3の端部に渡って配置され溶接等により一体に固着された鋼板製の継手板4と、これらに溶接により固定される地山側の鋼製のスキンプレート5と、主桁3におけるトンネル周方向に間隔をおいて並行に配置されると共にトンネル軸方向に架け渡すように配置され、主桁3に溶接により固定された複数の縦リブ6により構成されている。
【0025】
また、前記鋼殻2における各縦リブ6よりもトンネル内空側に位置するように、各縦リブ6に渡って、トンネル周方向に架け渡すようにトンネル周方向の棒状鋼材7が配置されている。
【0026】
図示の形態では、トンネル軸方向に平行に複数(図示の場合には、5本)の異形鉄筋からなるトンネル周方向の棒状鋼材7が縦リブ6に載置されて、セグメント内に充填される中詰めコンクリート8に埋め込み固定されている。
【0027】
そして、トンネル周方向に間隔をおいて隣り合う各縦リブ6間の中間部(好ましくは、ほぼ中央位置の1箇所のみ)のみにおいて、トンネル軸方向に間隔をおいて対向する各主桁3に、これらの主桁3の対向面側に向けて突出するように、短尺な一対のずれ止め9が配置されて、各ずれ止め9の基端側が溶接により主桁3に固定されている。
同様に、トンネル周方向に隣り合う継手板4と縦リブ6間の中間部(好ましくは、ほぼ中央位置の1箇所)のみにおいて、トンネル軸方向に間隔をおいて対向する各主桁3に、これらの主桁3の対向面側に向けて突出するように、短尺な一対のずれ止め9が設けられ、前記各ずれ止め9は、中詰めコンクリート8に埋め込まれている。
前記のずれ止め9の突出長さは、例えば、図2に示すように、主桁3に最も近い位置に配置されているトンネル周方向の棒状鋼材7に達する程度でよい。前記の各ずれ止め9は片持ち式に主桁3に支持されている形態であるので、長くすると曲げ応力が大きく作用するので好ましくない。
なお、継手板4と縦リブ6間の寸法が、小さい寸法(例えば、隣り合う縦リブ4間の寸法の1/2以下の狭い間隔であって、中詰めコンクリート8のはらみだしを防止できる場合)である場合には、ずれ止め9を省略する場合がある。したがって、少なくともトンネル周方向の縦リブ6間の中央部にずれ止め9を設けて、中詰めコンクリート8と鋼殻2とのずれ止め9を介した簡易な合成一体化を図る必要がある。
【0028】
前記のずれ止め9は、等辺山形鋼9A等の形鋼からなり、等辺山形鋼9Aの一端側を鋼殻2内の主桁3の側面に溶接により固定している。ずれ止め9のトンネル半径方向の配置位置としては、スキンプレート5からトンネル内空側に離れた位置とされ、好ましくは、セグメントの桁高の中央付近あるいは、より内空側に位置するように配置される。前記のずれ止め9としては、等辺山形鋼9A以外にも、他の形鋼あるいは、鉄筋、異形鋼棒等の鋼材を使用することができる。
ずれ止め9としての等辺山形鋼9Aにおける溝部をスキンプレート5側に向くように配置しているので、等辺山形鋼9Aの各辺より地山側の中詰めコンクリート8を広く確実に支承することができる。そのため、地山側からの土水圧Pによる中詰めコンクリート8のはらみ出しを確実に防止することができる。
そして、前記の縦リブ4および棒状鋼材7並びに各ずれ止め9は、中詰めコンクリート8に埋め込まれ、棒状鋼材7は中詰めコンクリート8に埋め込み固定されて、鋼殻2側と棒状鋼材7と中詰めコンクリート8が一体に固定されて、簡易合成セグメント1とされている。
【0029】
なお、前記のずれ止め9あるいは縦リブ6の表面を粗面としたり、あるいは前記ずれ止め9あるいは縦リブ6の表面に凹部または貫通する透孔を設けたりして、より強固な中詰めコンクリート7との一体化を図るようにしてもよい。
【0030】
図示の形態では、前記のずれ止め9は、トンネル周方向の棒状鋼材7よりもトンネル半径方向で地山側(外側)に位置するように配置されている。前記のずれ止め9は、トンネル周方向の棒状鋼材7よりもトンネル内空側に位置するように配置して、ずれ止め9に対する中詰めコンクリート8のかぶり厚が少なくなるような場合は好ましくない。
【0031】
本発明では、以下に示すように、トンネル周方向の棒状鋼材7を縦リブ6に、単に載置するようにすることにより、簡易合成セグメント1の製作が容易になるばかりでなく、製作費用を安価にすることができる。
【0032】
簡易合成セグメント1を製作する場合は、ずれ止め9を取り付けた鋼殻2を製作した後、内空側を上にして、各縦リブ6のトンネル内空側に渡って所定の曲率に彎曲したトンネル周方向の棒状鋼材7を載置し、必要に応じ、トンネル周方向の各棒状鋼材7の位置ずれを防止するために、結束線等により仮止めする。
【0033】
なお、鋼殻2内側凹部を上にして鋼殻2内にコンクリートが充填される時に、トンネル周方向の各棒状鋼材7の位置ずれを防止するために、組立鉄筋を配置するようにして、トンネル周方向の各棒状鋼材7の位置決めするようにしてもよい。
【0034】
前記のように、所定の位置にずれ止め9およびトンネル周方向の棒状鋼材7が配置された状態で、中詰めコンクリート8が充填・固化され、鋼殻2と中詰めコンクリート8との一体化が図られるようにしている。
前記の中詰めコンクリート8が硬化した状態では、ずれ止め9により中詰めコンクリート8のはらみだしが防止されるため、棒状鋼材7は縦リブ6上に載置するだけであっても、棒状鋼材7は縦リブ6上に載置された所定の位置を保持される。また、前記のように棒状鋼材7は所定の位置に保持されるため、中詰めコンクリート8と共同して圧縮あるいは引張に抵抗するようになる。そのため、ずれ止め9を備えていない従来の合成セグメントの場合に比べて、合成セグメントとしての耐力を向上させることができる。
【0035】
なお、前記のトンネル周方向の各棒状鋼材7は、各縦リブ6に挿通するように設ける形態あるいは、各縦リブ6に棒状鋼材7を挿通して溶接等により固定する形態は、セグメントの加工コストが高くなるので、前記のように縦リブ6のトンネル内空側に配置するのが、より安価に簡易合成セグメント1を製作できるのでよい。
【0036】
前記実施形態のように、鋼板製の一対の主桁3、継手板4、スキンプレート5、縦リブ6および棒状鋼材7を備えた鋼製系セグメントに、トンネル周方向の縦リブ6間の中間部にずれ止め9を主桁3に設けた状態で、中詰めコンクリート8を充填・固化する。このようにして、鋼殻2側と中詰めコンクリート8を一体化するだけで、中詰めコンクリート8のはらみ出しを防止した簡易に合成一体化した簡易合成セグメント1とすることができる。
【0037】
なお、前記の縦リブ6としては、鋼製板状の縦リブ6以外にも、断面L形の縦リブとすることも考えられるが、前記のように平板状の鋼板を使用するほうが、安価な簡易合成セグメント1とすることができる。
【0038】
また、図示を省略するが、前記段落0015に記載したように、主桁を断面溝形あるいは断面L型または断面H形にし、主桁におけるトンネル内空側にフランジを配置する構造では、主桁のコストが格段に高くなるため、合成セグメントが高価になる。しかし、図示の前記実施形態のように、主桁3におけるセグメントの内側面に、セグメント内に張り出すような突出フランジを備えていない形態の鋼殻2内に中詰めコンクリート8を充填・固化して棒状部材7を埋め込むように合成セグメントを製作する場合、前記のようなずれ止め9を設けて、鋼殻2と中詰めコンクリート8との簡易な合成化一体化を図ると、容易に安価で簡易な合成セグメント1を構成することができる。
【0039】
前記のように構成された簡易合成セグメント1では、地山側から土水圧Pが作用した場合、縦リブ6間のほぼ中央に配置されたずれ止め9により、縦リブ6間に充填されている中詰めコンクリート8のトンネル内空側へのはらみ出しが防止され、簡易合成セグメント1の耐力の低下を防止するようにされている。
【0040】
前記の主桁3としては、断面板状の主桁あるいは鋼殻の内側に張り出すようなフランジを備えていない鋼殻では、本発明のようなずれ止め9を設けるようにするとよい。
【0041】
前記のずれ止め9は、縦リブ6間において、トンネル周方向に1箇所のみ、例えば前記実施形態のように対向するように一対あればよいが、トンネル周方向に縦リブ6間の中央部付近においてトンネル周方向に2箇所等複数個所あってもよいが、経済的でなくなるため、極力1箇所にするのがよい(後記の実施形態においても同様である)。
【0042】
図4〜図6は、本発明の第2実施形態の簡易合成セグメント1を示すものであって、この形態では、トンネル周方向における縦リブ6間の中間部において、主桁3に渡って、長尺の一本の山形鋼からなるずれ止め9の両端部が溶接により各主桁3に溶接により固定されている。また、トンネル周方向における継手板4と縦リブ6間の中間部において、主桁3に渡って、長尺の一本の山形鋼からなるずれ止め9の両端部が溶接により各主桁3に溶接により固定されている。前記山形鋼からなるずれ止め9における山部がトンネル半径方向の内空側に位置するように配置されている。
【0043】
このような形態では、主桁3間がずれ止め9により連結されているので、縦リブ6間における主桁3を補強することができると共に、より確実に中詰めコンクリート8のはらみ出しを防止することができ、より確実に鋼殻2と中詰めコンクリート8との一体化を図ることができる。
前記の山形鋼からなるずれ止め9に代えて、断面矩形状棒鋼等の棒状鋼材のずれ止め9としてもよい。その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同様な部分には同様な符号を付した。
【0044】
図7〜図9は、本発明の第3実施形態の簡易合成セグメント1を示すものであって、この形態では、板状の主桁3間に渡って、異形鉄筋からなるずれ止め9を設けた形態である。
【0045】
また、この形態では、トンネル周方向の棒状鋼材7よりもトンネル半径方向内空側に位置するようにずれ止め9を主桁3間に渡って配置し、ずれ止め9の両端部を主桁3のセグメント内側面に溶接により固定し、トンネル周方向の棒状鋼材7をトンネル半径方向内空側に移動しないように拘束するずれ止め9とされている。
このような形態とする場合には、トンネル周方向の棒状鋼材7を配置した後、その棒状鋼材7に載置するようにトンネル内空側にずれ止め9を配置し、各ずれ止め9の両端部をそれぞれ主桁3に溶接により固着すればよい。
この形態のように、トンネル周方向の棒状鋼材7よりもトンネル半径方向内空側に位置するようにずれ止め9が配置されている分、合成セグメント1におけるトンネル周方向の中立軸が、ずれ止め9がない場合に比べて、よりトンネル内空側よりに位置するようになる。そのため、地山側からの土水圧Pにより、合成セグメントをトンネル内空側にはらみ出すような曲げが作用した場合に、前記中立軸を境とする合成セグメントの内空側に位置する引張領域が少なくなる分、圧縮領域が多くなり有利になる。
【0046】
また、図示の形態では、例えば、直径(D)が25mmの異形鉄筋からなるずれ止め9とされ、市販の安価な異形鉄筋を使用できるため、安価な簡易合成セグメント1とすることができる。なお、前記のずれ止め9としては、断面矩形状の棒状の鋼材を使用するようにしてもよい。
【0047】
本発明を実施する場合、前記トンネル周方向の棒状鋼材7として鉄筋を使用し、前記ずれ止め9として山形鋼を使用し、前記主桁3として板状鋼材を使用している簡易合成セグメント1であると、市販の安価な鋼材を使用した安価な簡易合成セグメントとすることができる。
【0048】
次に、図7〜図9に示す形態の異形鉄筋からなるずれ止め9を備えた本発明の第3実施形態の簡易合成セグメント1と、そのようなずれ止め9を備えていない図14に示す合成セグメント1Aとを数値解析により比較した結果について説明する。
【0049】
図10は、本発明の簡易合成セグメント1と比較例の合成セグメント1Aの数値解析した部分を示す説明図であり、前記各セグメントにおけるトンネル周方向で1/2部分のみであり、かつトンネル軸方向で1/2部分のみで、セグメント全体として1/4部分の寸法の領域について数値解析の対象とし、その部分における各部の寸法を示す一部概略斜視図である。
【0050】
図11は、図10に示すセグメントの1/4部分で図14に示す比較例の合成セグメント1Aにおける中詰めコンクリート8を取り除いた状態を示す有限要素法解析を説明するための斜視図である。
【0051】
また、図12は、図10に示すセグメントの1/4部分で図7に示す本発明の第3実施形態の簡易合成セグメント1における中詰めコンクリート8を取り除いた状態を示す有限要素法解析を説明するための斜視図である。本数値解析では効果を明確にするためにずれ止め9をセグメント1Aのトンネル周方向センターライン位置Aの1箇所のみに設けた場合を想定している。なお、実際の本発明ではこの1箇所以外にも継手板4と縦リブ6との間並びに縦リブ同士の間にもずれ止めがある。
【0052】
図14は、本発明第3実施形態の簡易合成セグメント1と、比較例として、ずれ止め9を設けていない場合の合成セグメント1Aのそれぞれについて、トンネル周方向一端側を固定するように支持して、トンネル周方向他端側に荷重を付加させる形態を示す斜視図である。
【0053】
本発明の簡易合成セグメント1と、比較例としての合成セグメント1Aの主要部の寸法は、以下の通りである。
セグメント幅650mm、主桁高さ86mm、スキンプレート5の鋼板の板厚tは3mm、縦リブ6の板厚t6mm、主桁3の板厚tは9mm
セグメントにより構成されるトンネル外径3.3mに、トンネル地山側から設計荷重として7.5kNが負荷されている場合を想定した。
図13にトンネル周方向の1/2部分でトンネル軸方向の1/2部分の1/4部分を示すように、継手板側を支持するように支点として、セグメント周方向中央部に等分布荷重の設計荷重P(7.5kN)を付加させた3点曲げ状況が示されている。そして、合成セグメント1および合成セグメント1Aについて解析した。
【0054】
図12に示す本発明の簡易合成セグメント1の測定地点は、主桁3については、トンネル半径方向の内空側で、トンネル周方向切断端部の位置Aで、矢印A1で示すトンネル周方向の伸びを解析すると共に、トンネル周方向の鉄筋からなる棒状鋼材7におけるトンネル周方向の切断端部側の位置Bで矢印B1で示すトンネル周方向の伸びを解析した。
【0055】
比較例の合成セグメント1Aの場合も、前記の本発明の合成セグメント1の測定位置と同様で、主桁3については、トンネル半径方向の内空側で、トンネル周方向切断端部の位置Aで矢印A1で示すトンネル周方向の伸びを解析すると共に、トンネル周方向の棒状鋼材におけるトンネル周方向の切断端部側の位置Bで、矢印B1で示すトンネル周方向の伸びを解析した。
【0056】
解析結果および主桁3と鉄筋からなる周方向の棒状鋼材7との伸びを比較し、その結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示すように、ずれ止め9を設けた本発明の簡易合成セグメント1の場合は、ずれ止めがない比較例の合成セグメント1Aに比べて、主桁3および周方向の鉄筋(周方向の)のひずみが小さいことがわかる。このように、主桁3および周方向の鉄筋のひずみが小さい分、中詰めコンクリート8を含めてセグメント幅方向で平均的に負担していることがわかる。また、前記実施形態の本発明の簡易合成セグメント1の場合は、主桁3とトンネル周方向の棒状鋼材7との負担割合が近く、幅方向で均等に負担していることがわかる。
【0059】
図示の実施形態のように、間隔をおいた一対の主桁3と継手板4と縦リブ6とが平板状の鋼板であり、このような鋼殻2内に中詰めコンクリート8を充填・固化すると、鋼製系セグメントにおける縦リブ6と中詰めコンクリート8とをずれ止め9を介して極めて合理的に合成一体化した簡易合成セグメントとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態の簡易合成セグメントを示すものであって、(a)は縦断側面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
【図2】図1(c)を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示す本発明の第1実施形態の簡易合成セグメントにおける中詰めコンクリートおよびスキンプレートを省略して地山側から見た透視斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態の簡易合成セグメントを示すものであって、(a)は縦断側面図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は(a)のD−D線断面図である。
【図5】図4(c)を拡大して示す断面図である。
【図6】図4に示す本発明の第2実施形態の簡易合成セグメントにおける中詰めコンクリートおよびスキンプレートを省略して地山側から見た透視斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態の簡易合成セグメントを示すものであって、(a)は縦断側面図、(b)は(a)のE−E線断面図、(c)は(a)のF−F線断面図である。
【図8】図7(c)を拡大して示す断面図である。
【図9】図7に示す本発明の第3実施形態の簡易合成セグメントにおける中詰めコンクリートおよびスキンプレートを省略して地山側から見た透視斜視図である。
【図10】合成セグメントを数値解析するための寸法を示す斜視図である。
【図11】ずれ止めを備えていない合成セグメントの寸法および測定位置を示す説明図である。
【図12】ずれ止めを備えている本発明の合成セグメントの寸法および測定位置を示す説明図である。
【図13】セグメントの荷重を付加させる状態を示す説明図である。
【図14】従来または比較例の合成セグメントを示すものであって、(a)は縦断側面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 簡易合成セグメント1
1A 合成セグメント
2 鋼殻
3 主桁
4 継手板
5 スキンプレート
6 縦リブ
7 トンネル周方向の棒状鋼材
8 中詰めコンクリート
9 ずれ止め
9A 等辺形鋼
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主桁、継手板、スキンプレートおよび縦リブを備えた鋼製系セグメントにおける前記主桁に、セグメント内において主桁長手方向に間隔をおいて複数の縦リブが固定され、前記各縦リブのトンネル内空側に渡ってトンネル周方向に棒状鋼材が配置され、前記セグメントにおけるトンネル周方向に間隔をおいて配置されている少なくとも縦リブ間の中間部のみにおいて、間隔をおいて対向する各主桁に、これらの主桁の対向面側に向けて突出するように少なくとも一対のずれ止めが設けられ、前記縦リブおよび棒状鋼材並びにずれ止めを埋め込むようにセグメント内部に中詰めコンクリートが充填・固化されて合成一体化されていることを特徴とする簡易合成セグメント。
【請求項2】
主桁、継手板、スキンプレートおよび縦リブを備えた鋼製系セグメントにおける前記主桁に、セグメント内において主桁長手方向に間隔をおいて複数の縦リブが固定され、前記各縦リブのトンネル内空側に渡ってトンネル周方向に棒状鋼材が配置され、前記セグメントにおけるトンネル周方向に間隔をおいて配置されている少なくとも縦リブ間の中間部のみにおいて、間隔をおいて対向する各主桁を互いに対向面側へ向けて架け渡すように連結するずれ止めが少なくとも1本設けられ、前記縦リブおよび棒状鋼材並びにずれ止めを埋め込むようにセグメント内部に中詰めコンクリートが充填・固化されて合成一体化されていることを特徴とする簡易合成セグメント。
【請求項3】
ずれ止めがトンネル周方向の棒状鋼材よりもトンネル内空面側に位置するように設けられて、コンクリートに埋め込まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の簡易合成セグメント。
【請求項4】
前記棒状鋼材が鉄筋であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の簡易合成セグメント。
【請求項5】
前記ずれ止めが山形鋼であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の簡易合成セグメント。
【請求項6】
前記主桁が板状鋼材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の簡易合成セグメント。
【請求項1】
主桁、継手板、スキンプレートおよび縦リブを備えた鋼製系セグメントにおける前記主桁に、セグメント内において主桁長手方向に間隔をおいて複数の縦リブが固定され、前記各縦リブのトンネル内空側に渡ってトンネル周方向に棒状鋼材が配置され、前記セグメントにおけるトンネル周方向に間隔をおいて配置されている少なくとも縦リブ間の中間部のみにおいて、間隔をおいて対向する各主桁に、これらの主桁の対向面側に向けて突出するように少なくとも一対のずれ止めが設けられ、前記縦リブおよび棒状鋼材並びにずれ止めを埋め込むようにセグメント内部に中詰めコンクリートが充填・固化されて合成一体化されていることを特徴とする簡易合成セグメント。
【請求項2】
主桁、継手板、スキンプレートおよび縦リブを備えた鋼製系セグメントにおける前記主桁に、セグメント内において主桁長手方向に間隔をおいて複数の縦リブが固定され、前記各縦リブのトンネル内空側に渡ってトンネル周方向に棒状鋼材が配置され、前記セグメントにおけるトンネル周方向に間隔をおいて配置されている少なくとも縦リブ間の中間部のみにおいて、間隔をおいて対向する各主桁を互いに対向面側へ向けて架け渡すように連結するずれ止めが少なくとも1本設けられ、前記縦リブおよび棒状鋼材並びにずれ止めを埋め込むようにセグメント内部に中詰めコンクリートが充填・固化されて合成一体化されていることを特徴とする簡易合成セグメント。
【請求項3】
ずれ止めがトンネル周方向の棒状鋼材よりもトンネル内空面側に位置するように設けられて、コンクリートに埋め込まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の簡易合成セグメント。
【請求項4】
前記棒状鋼材が鉄筋であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の簡易合成セグメント。
【請求項5】
前記ずれ止めが山形鋼であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の簡易合成セグメント。
【請求項6】
前記主桁が板状鋼材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の簡易合成セグメント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−74291(P2009−74291A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244015(P2007−244015)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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