説明

簾昇降具の線材が係合する係合部

【課題】 簾上部への取付を容易かつ迅速に行うことができ簾の上縁に沿って不意に移動することがなく、簾上部の一面側と他面側との間の寸法(厚み)のある程度の変化にも対応することができる、簾昇降具に用いられる係合部を提供する。
【解決手段】簾の下端近傍を支持する線材と、該簾の上端近傍に取り付けられ該線材が係合する係合部と、を備えてなる簾昇降具に用いられる該係合部であって、該簾の一面側から該上端近傍に当接する一当接部と、該簾の他面側から該上端近傍に当接する他当接部と、該一当接部と該他当接部との間の距離を所定範囲内で連続的に調節する距離調節手段と、を有してなる、簾昇降具に用いられる係合部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簾昇降具の線材が係合する係合部に関し、より詳細には、簾の下端近傍を支持する線材と、該簾の上端近傍に取り付けられ該線材が係合する係合部と、を備えてなる簾昇降具に用いられる該係合部に関する。
【背景技術】
【0002】
簾は、日射を遮ったり他人からの視線を遮る(他人から見られたくないものを隠す等)ため、支持物(例えば、建物の軒先、建物の柱、窓枠、これらに取り付けられた簾支持具等)に簾の上端近傍が支持され、吊り下げられて用いられてきた。かかる簾は、日射を遮ったり他人からの視線を遮りたいときは上下方向に長く垂下された状態(簾の下端が下方に位置する状態)にされるが、そうでないとき(例えば、日射を遮らず室内に取り込みたいとき等)には簾の下端を引き上げた状態にすることが好ましく、このように状況に応じて簾の下端部分を昇降させるため、従来から簾の昇降具が用いられてきた(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、従来から用いられてきた簾の昇降具が開示されている。即ち、「従来のすだれ用昇降具は、図3に示すように、一対の滑車台31、32と紐45とから成り、各滑車台31、32の上部に引掛け部33、34を設け、各滑車台31、32の後面下部には紐用孔35、36を設け、一方の滑車台32にはストッパー37を設けたものである。そして、従来のすだれ用昇降具を使用するには、すだれに一対の滑車台を固着して、一対の滑車台と紐を組み立てて使用する。すなわち、一対の滑車台31、32のうち、まず左側の滑車台31をすだれAの上部枠A1にネジ38でネジ止めし、もう一方の右側の滑車台32もすだれAの上部枠A1にネジ39でネジ止めする。つぎに、左側の滑車台31の紐用孔35に紐45を結び、紐45をすだれAの下部枠を持ち上げるように通し、紐45の先端を左側の滑車台31の滑車40に通す。つづいて、紐45の先端を右側の滑車台32に通し、紐45をたぶらせて、再度、右側の滑車台32の滑車41を通し、すだれAの下部枠を持ち上げるように通し、紐45の先端を右側の滑車台32の紐用孔36に紐45を結ぶ。」(特許文献1、考案の詳細な説明中の段落番号0002)ようにした簾の昇降具が開示されている。
【0004】
また、特許文献1に開示された簾の昇降具は、1本の紐45が張り渡された一対の滑車40、41を備えてなるものであるが、1本の紐と1の滑車とから構成される簾の昇降具も知られている(例えば、特許文献2)。
特許文献2には、「窓枠等に取り付けられたすだれの上部枠で、すだれの左右の荷重が平均して掛かる位置に、U字型枠を嵌め込み止めネジの螺入より、U字型枠とすだれの上部枠を固着し、巻き取り器から紐を引き出し滑車にかける、さらに紐をすだれの横棒に結線具で結束したリング内部を順次通過せしめ、すだれの下部枠に繋止する」(特許文献2、発明の詳細な説明中の段落番号0005)ようにした簾の昇降具が開示されている。
以降、1本の紐が張り渡された一対の滑車を備えてなる簾の昇降具を「一対滑車型昇降具」といい、1本の紐と1の滑車とから構成される簾の昇降具を「単滑車型昇降具」という。
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3001041号公報(例えば、考案の詳細な説明中、段落番号0002、第3図等)
【特許文献2】特開2001−46219号公報(例えば、発明の詳細な説明中、段落番号0005、第1図、第3図及び第4図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来から用いられてきた簾の昇降具は、簾の上部に滑車(係合部の一部)を取り付け、該滑車に紐(線材)を係合させたものであり、紐(線材)を引き取ったり緩めたりすることで、紐(線材)により支持された簾の下端部分を昇降させるものであった。
この簾上部への滑車(係合部の一部)の取付は、特許文献2の第3図及び第4図に示されるU字型枠1(すだれの上部枠を嵌め込める幅を備え、滑車が取り付けられる。)のようなもので簾上部を一面側と他面側とから挟持することで行われることが多かった。このようなU字型枠1のように決められた幅で簾上部を一面側と他面側とから挟持し簾上部へ滑車(係合部の一部)を取り付ければ、簾上部への滑車(係合部の一部)の取付を容易かつ迅速に行うことができる。しかしながら、決められた幅で簾上部を一面側と他面側とから挟持することのみで簾上部へ滑車(係合部の一部)を取り付けた場合、簾上部を一面側と他面側とから十分な挟持力により挟持することができないことが多く(例えば、簾上部の一面側と他面側との間の第1の幅と、U字型枠1のように簾上部を一面側と他面側とから挟持するものが挟持する予め定められた第2の幅と、を比較したとき、第1の幅よりも第2の幅をやや小さくすれば挟持力は大きくなるが、反面、U字型枠1等を簾上部に装着しにくくなったり装着時に簾が破損するといった問題が生じうる。)、このため簾の昇降具を使用しているときに、滑車(係合部の一部)が簾の上縁に沿って不意に移動するという問題があった。例えば、風を受けることや移動物(例えば、人や自転車等)に引っかかる等して紐(線材)の位置が不意に動いた状態で簾を昇降させると、滑車(係合部の一部)が簾の上縁に沿って不意に移動する。この不意の移動が生じると簾をうまく昇降させることができなくなるので、滑車(係合部の一部)を簾の上縁の元の位置に戻す必要があり(滑車(係合部の一部)は通常高い位置に存するので、滑車(係合部の一部)を元の位置に戻す作業は難儀なものとなりうる。)、かかる不意の移動は簾の昇降具の使用を不便なものとする。
【0007】
この滑車(係合部の一部)が簾の上縁に沿って不意に移動することを防止するため、特許文献2に記載の簾の昇降具においては、U字型枠を簾上部に嵌め込み、さらにネジ穴2に止めネジ3を嵌入し、U字型枠と簾上部を固着するようにしている。このようにネジ止めにより簾上部へ滑車(係合部の一部)を取り付ければ、上述したような滑車(係合部の一部)の簾上縁に沿った不意の移動は防止可能であるが、簾上部への滑車(係合部の一部)の取付作業及び取外作業が手間や時間がかかるものとなる。
さらに、特許文献2の第3図及び第4図に示されるU字型枠1のようなもので簾上部を一面側と他面側とから挟持することで簾上部へ滑車(係合部の一部)を取り付ける場合には、簾上部の一面側と他面側との間の寸法(厚み)に応じたU字型枠1をそれぞれ用意する必要があり、多くの種類の簾に昇降具を取り付けようとすると多くの種類の簾の昇降具を準備する必要があった(簾の昇降具の製造者及び販売者等は多数少量の製造や取り扱いを余儀なくされる。)。
【0008】
そこで、本発明においては、簾上部への取付を容易かつ迅速に行うことができ簾の上縁に沿って不意に移動することがなく、簾上部の一面側と他面側との間の寸法(厚み)のある程度の変化にも対応することができる、簾昇降具に用いられる係合部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の簾昇降具に用いられる係合部(以下、「本係合部」という。)は、簾の下端近傍を支持する線材と、該簾の上端近傍に取り付けられ該線材が係合する係合部と、を備えてなる簾昇降具に用いられる該係合部であって、該簾の一面側から該上端近傍に当接する一当接部と、該簾の他面側から該上端近傍に当接する他当接部と、該一当接部と該他当接部との間の距離を所定範囲内で連続的に調節する距離調節手段と、を有してなる、簾昇降具に用いられる係合部である。
なお、簾の「上端」及び「下端」とは、簾が上方から吊り下げられて使用される状態(例えば、簾の一縁が上方に存する支持物(例えば、建物の軒先、建物の柱、窓枠、これらに取り付けられた簾支持具等)に支持され吊り下げられて使用される状態)における「上端」及び「下端」をいう。また、「線材」とは、簾の下端近傍を支持する線材であればいかなるものであってもよく何ら制限されるものではないが、一例を挙げれば、紐、糸、綱、ロープ等を例示することができる。簾の一面と他面とは、簾が日射を遮ったり他人からの視線を遮るため等に形成する面(簾が上方から吊り下げられて使用される状態においては、通常、鉛直な平面を形成することが多い。)の表面と裏面とをいう。
【0010】
本係合部は、簾の下端近傍を支持する線材(特許文献1及び特許文献2では紐が本発明にいう線材に該当する。)と共に簾昇降具を構成し、該線材が係合するためのものであり、簾の上端近傍に取り付けられる。本係合部は、簾の上端近傍に簾の一面側から当接する一当接部と、簾の上端近傍に簾の他面側から当接する他当接部と、を有しており、さらに本係合部が有する距離調節手段が該一当接部と該他当接部との間の距離を所定範囲内で連続的に調節することにより、本係合部は該一当接部と該他当接部との間で簾の上端近傍を確実に挟持することができる。そして、距離調節手段が該一当接部と該他当接部との間の距離を所定範囲内で連続的に調節することにより、簾上部の一面側と他面側との間の寸法(厚み)のある程度の変化にも対応し簾の上端近傍を確実に挟持することができる。このように本係合部は、距離調節手段により該一当接部と該他当接部との間の距離を所定範囲内で連続的に調節することで、簾の上端近傍を確実に挟持することができることから、従来の技術にて説明したようなネジ止めのように手間や時間を要することなく、簾上部への取付を容易かつ迅速に行うことができ、(距離調節手段により該一当接部と該他当接部との間の距離を適切に調節することで簾の上端近傍を確実に挟持することにより)簾の上縁に沿って不意に移動することがなく、(距離調節手段により該一当接部と該他当接部との間の距離を所定範囲内で連続的に調節することで)簾上部の一面側と他面側との間の寸法(厚み)のある程度の変化にも対応することができる。
なお、本係合部は、簾昇降具において簾の下端近傍を支持する線材が係合する係合部として何ら制限されることなく広く用いることができ、例えば、上述した一対滑車型昇降具及び単滑車型昇降具のいずれの係合部としても用いることができる。
【0011】
距離調節手段が、該一当接部に固定された雌ねじ部分と、該雌ねじ部分に螺合する雄ねじ部分と、を有しており、該雄ねじ部分が該雌ねじ部分に対して相対的に回転することで、前記距離(一当接部と他当接部との間の距離)を調節するもの(以下、「ねじ調節本係合部」という。)であってもよい。
一当接部に固定された雌ねじ部分に螺合する雄ねじ部分が、雌ねじ部分に対して相対的に回転すれば、雄ねじ部分が雌ねじ部分に対し雄ねじ部分の軸方向(正逆両方向)に相対的に移動することができる。これにより雌ねじ部分が固定された該一当接部と、雄ねじ部分の軸方向に関し雄ねじ部分に対する相対的な位置関係が所定範囲内に制限(制限は直接又は間接を問わない)される該他当接部と、の間の距離を(該雄ねじ部分が該雌ねじ部分に対して相対的に回転することで)所定範囲内で連続的に調節することができる。このような該雄ねじ部分と該雌ねじ部分とを距離調節手段が有して構成されることで、該一当接部と該他当接部との間の距離を簡単な構成にて確実かつ容易に所定範囲内で連続的に調節することができる。
【0012】
ねじ調節本係合部の場合、距離調節手段が、前記雄ねじ部分の基端側に形成された把持部分を有してなり、該他当接部が、該把持部分と前記雌ねじ部分との間の前記雄ねじ部分に貫通されるものであってもよい。
該他当接部が、把持部分と雌ねじ部分との間の雄ねじ部分に貫通されるようにすれば、雄ねじ部分の軸方向に関し雄ねじ部分に対する相対的な(該他当接部の)位置関係を所定範囲内に確実かつ容易に制限することができ、該一当接部と該他当接部との間の距離を、雄ねじ部分が雌ねじ部分に対して相対的に回転することで所定範囲内で連続的に調節することができる。また、雄ねじ部分の基端側に形成された把持部分によって、把持部分を手で把持して雄ねじ部分をうまく回転させることができる。なお、他当接部は、把持部分と雌ねじ部分との間の雄ねじ部分から不意に抜け落ちないようにされる(例えば、雄ねじ部分が貫通する他当接部の貫通孔を把持部分が通過不可能にされたり、雄ねじ部分が貫通する他当接部の貫通部分に雄ねじ部分が螺合する雌ねじ(該一当接部に固定された雌ねじ部分とは逆ネジにされる。なお、こうすれば雄ねじ部分を回転させた際の前記距離の変化を大きくすることができる。)を螺刻し雄ねじ部分と螺合させる等。)。
【0013】
ねじ調節本係合部の場合、前記雄ねじ部分が、前記雌ねじ部分の一端側と他端側とのいずれからも螺合可能であり、前記一当接部は、前記雄ねじ部分が前記雌ねじ部分の一端側から螺合したときに簾の上端近傍に当接する一当接面と、前記雄ねじ部分が前記雌ねじ部分の他端側から螺合したときに簾の上端近傍に当接する他当接面と、を有するもの(以下、「両面当接本係合部」という。)であってもよい。
雄ねじ部分が、雌ねじ部分を貫通可能であり一端側と他端側とのいずれからも螺合可能であり、雄ねじ部分が雌ねじ部分の一端側から螺合したときに簾の上端近傍に当接する一当接面と、雄ねじ部分が雌ねじ部分の他端側から螺合したときに簾の上端近傍に当接する他当接面と、を該一当接部が有すれば、雄ねじ部分が雌ねじ部分の一端側から螺合した場合と他端側から螺合した場合とのいずれの場合も該一当接部が簾の上端近傍に当接することができる。このため簾の上端近傍に当接する面として一当接面と他当接面との両面を用いることができるので、いずれか片方の面が破損したようなときも他方の面を用いることで本係合部の使用を継続することができるし、一当接面により簾の上端近傍に当接する状態と他当接面により簾の上端近傍に当接する状態とを異ならせること(当接すべき簾の上端近傍の状態等に応じ、当接面積、当接面の形状、当接面の角度、当接面の粗度(突起や凹凸の有無や状態を含む)等を互いに異ならせた一当接面及び他当接面のいずれかを選択することもできる。)もできる。
【0014】
両面当接本係合部の場合、前記雌ねじ部分の一端と他端との間の中心点を含み、前記雌ねじ部分の進退方向に対して垂直な平面である基準面に対し、前記一当接面と前記他当接面とが略平行であり、前記一当接面と該基準面との間の距離と、前記他当接面と該基準面との間の距離と、が異なるものであってもよい。
基準面は、雌ねじ部分の一端と他端との間の中心点を含み、雌ねじ部分の進退方向(雄ねじ部分が雌ねじ部分に対して相対的に回転することで、雄ねじ部分に対して相対的に雌ねじ部分が移動する方向をいう。通常、雄ねじ部分の軸方向である。)に対して垂直な平面をいう。このような基準面に対し、該一当接面と該他当接面とが略平行であり、該一当接面と基準面との間の距離と、該他当接面と基準面との間の距離と、が異なるようにすれば、該一当接面が簾の上端近傍に当接する場合(雄ねじ部分が雌ねじ部分の一端側から螺合する場合)と該他当接面が簾の上端近傍に当接する場合(雄ねじ部分が雌ねじ部分の他端側から螺合する場合)とで該一当接部と該他当接部との間の距離を変化させることができる。該距離の変化は、様々な目的に用いられることができるが、例えば、簾上部の一面側と他面側との間の寸法(厚み)が大幅に変わることに対応することができるよう用いられてもよい。
【0015】
上述したように、本係合部は、簾の下端近傍を支持する線材と共に簾昇降具(以下、「本昇降具」という。)を構成する。即ち、本昇降具は、本係合部と、本係合部が係合し簾の下端近傍を支持する線材と、を有してなる簾昇降具である。
【0016】
本昇降具においては、簾の上縁に沿った異なる2点に取り付けられる第1係合部(第1の本係合部)及び第2係合部(第2の本係合部)を有してなり、線材が、第1係合部と第2係合部との間に張設されるものであり、少なくとも簾の下端近傍を上昇させる際、第1係合部と第2係合部との間の線材の張力が増加するもの(以下、「対係合部本昇降具」という。)であってもよい。
このように簾の上縁に沿った異なる2点に取り付けられる一対の係合部を有してなり、線材が、該一対の係合部の間に張設されるものであり、少なくとも簾の下端近傍を上昇させる際、該一対の係合部の間の線材の張力が増加する簾の昇降具は、特許文献1にも示したように従来から用いられてきたが、かかる昇降具は簾の下端近傍を上昇させる際に該一対の係合部の間の線材の張力が増加することにより、該一対の係合部の間の距離が小さくなるよう該一対の係合部の少なくとも一方が不意に移動するという問題があった。これに対し、対係合部本昇降具においては、第1係合部(第1の本係合部)及び第2係合部(第2の本係合部)のいずれも、該一当接部と該他当接部との間で簾の上端近傍を確実に挟持することにより、かかる係合部の不意の移動を効果的に防止することができる。
【0017】
対係合部本昇降具においては、第1係合部が、線材の一端が固定される一端固定部と、線材に沿った方向に移動自在に支持する第1支持部と、を有し、第2係合部が、線材の他端が固定される他端固定部と、線材に沿った方向に移動自在に支持する第2支持部と、を有し、第1支持部と第2支持部との間に線材が張設され、一端固定部と第1支持部との間の線材の部分と、他端固定部と第2支持部との間の線材の部分と、が簾の下端近傍を支持するものであってもよい。
こうすることで線材を引き取ったり(通常、第1支持部と第2支持部との間に張設された線材をだぶらせるように引き取る。)緩め出すことで、一端固定部と第1支持部との間の線材の長さと、他端固定部と第2支持部との間の線材の長さと、を同時に変化させることができ、簾の下端近傍を容易に昇降させることができるので便利である。このように構成すると、簾の下端近傍を上昇させる際に第1支持部と第2支持部との間の線材の張力が増加するが、これら第1支持部と第2支持部との不意の移動は上記の通り効果的に防止される。なお、簾の下端近傍が、一端固定部と第1支持部との間の線材の部分と、他端固定部と第2支持部との間の線材の部分と、により支持された状態を保持可能にするには、一端固定部と第1支持部との間の線材の長さと、他端固定部と第2支持部との間の線材の長さと、が所定値よりも大きくなることを制限する長さ制限手段をさらに有するようにしてもよい。
【0018】
本昇降具は、本係合部と線材とが組み付けられた完成品として製造や販売等がされてもよいが、線材は汎用のものが容易に入手可能であるので、本係合部のみとして製造や販売等がされてもよく、さらに本係合部と線材とを少なくとも含んでなる、本昇降具を製作する製作セットとして製造や販売等がされてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。しかしながら、これらによって本発明は何ら制限されるものではない。
【0020】
図1は、一対の本発明の係合部(本係合部)と、一対の本係合部との間に張設された紐(線材)と、を有してなる簾昇降具(本昇降具)11が、簾101に取り付けられたところを示す正面図(一部省略)である。図1を参照して、本昇降具11が簾101に取り付けられた状態を説明する。なお、「上」(鉛直上方)及び「下」(鉛直下方)を、以降の図中、矢印P1(上)及び矢印P2(下)にてそれぞれ示した。
簾101は、ほぼ直線に沿ってのびる真っ直ぐな棒状部材(長手方向に対して垂直な断面形状は扁平)たる上端部材103と、ほぼ直線に沿ってのびる真っ直ぐな棒状部材(長手方向に対して垂直な断面形状は扁平)たる下端部材105と、ほぼ直線に沿ってのびる真っ直ぐな棒状部材たる複数の中間部材107と、これら部材103、105及び107が1平面に略属しかつそれぞれの長手方向が互いに略平行になるようこれら部材103、105及び107を縛り付ける一対の紐材109a、109bと、を有してなるものであり、従来から用いられてきた簾と同様のものである。なお、図示していないが、上端部材103は、建物の窓枠に取り付けられた簾吊り下げ具により支持されており、複数の中間部材107及び下端部材105は、重力により垂れ下がっている(部材103、105及び107の長手方向は略水平方向に向いている。また、部材103、105及び107が略属する前記1平面はここでは略鉛直になっている。)。
【0021】
本昇降具11は、第1の本係合部たる第1係合部21aと、第2の本係合部たる第2係合部21bと、第1係合部21aと第2係合部21bとの間に張設された紐(線材)13と、を有してなる。
第1係合部21a及び第2係合部21bは、一部異なる構成を有するが、多くの同様の構成を有するので、まず両係合部21a、21bの同様の構成について説明する。
図2は、簾101から取り外した第1係合部21a及び第2係合部21bの左側面図(図1中、矢印F1、F2方向から見たところを示している。第1係合部21a及び第2係合部21bを係合部21として示す。)であり、図3は図2のAーA断面図であり、図4は係合部21を構成する要素(後述の一当接部41と他当接部31とネジ部材61)を取り外した分解図であり、図5は図4のBーB断面図であり、図6は後述の一当接部41の正面図(図4中、矢印C方向から見たところを示している。)である。図2乃至図6を参照して、係合部21(第1係合部21a、第2係合部21b)について説明する。
【0022】
係合部21は、簾101の一面側(ここでは図1に示した表面101aとは反対の裏面)から簾101の上端近傍(ここでは上端部材103)に当接する一当接部41と、簾101の他面側(ここでは図1に示した表面101a)から簾101の上端近傍(ここでは上端部材103)に当接する他当接部31と、ネジ部材61と、を有してなる。
【0023】
一当接部41は、内周面に雌ねじ(雌ねじ部分)が螺刻された円筒状(両端が開放)金属製の雌ねじ部材43と、雌ねじ部材43に外嵌された樹脂製のコマ部分45(雌ねじ部材43の内周面に形成された雌ねじの方向(図2及び図4中、矢印Dにて示す。以下、「ネジ方向」という。)に対して垂直な断面における外面形状はネジ方向のいずれの位置も同じ形状である。)と、コマ部分45のネジ方向に関し一端寄りにコマ部分45と樹脂により一体に形成された板状部分47と、を有している。
コマ部分45は、柱本体部45k(半円と、該半円の直径と同じ一辺の長さを有する長方形と、を該半円の弦(直径)と該一辺とを重ね合わせた形状の底面を有する直柱体)と、溝形成部45m(長方形(2辺とも該一辺よりも短い)を底辺とする直柱体)と、を一体に有してなり、溝形成部45mの両側に凹溝46が形成されている。また、内嵌された雌ねじ部材43の内周面に形成された雌ねじに雄ねじが嵌入できるよう、コマ部分45には嵌入孔45nが形成されている。
板状部分47は、両主表面がネジ方向に対して略垂直になるようコマ部分45と一体に形成された板状本体部47dと、板状本体部47dの下端に板状本体部47dと一体に形成されたリング状の紐固定部47p(紐13が孔47hに貫入され結び付けられる。)と、板状本体部47dの両主表面のうち一主表面に貼着されたゴム板47rと、を有している。また、板状本体部47dの両主表面のうち他主表面には、複数の凸条47daが形成されている。
【0024】
他当接部31は、一当接部41のコマ部分45をネジ方向にスライド自在に嵌入する外筒部分33と、外筒部分33の一端寄りに外筒部分33と樹脂により一体に形成された滑車保持部35と、滑車保持部35に貼着されたゴム板37と、を有している。
外筒部分33は、一方の底部は、ネジ貫入孔33hが形成された底壁部33kにより閉じられているが、他方の底部は開放されると共に、一方の底部と他方の底部との間にはネジ方向に沿った側面開口33s(図5参照)が形成されている。側面開口33sの両縁には外筒部分33の内方に向けて突出するように凸条33t1、33t2が形成されている(特に図3及び図5参照)。凸条33t1、33t2は、図3に示すように凹溝46に係合し、外筒部分33に関しコマ部分45をネジ方向に相対的にスライド自在にすると共に、外筒部分33の側面開口33sを経由してコマ部分45が脱落することを防止する。
滑車保持部35は、両主表面がネジ方向に対して略垂直になるよう外筒部分33のネジ方向の一端寄りに取り付けられた第1板状部分34と、第1板状部分34の主表面と両主表面が略平行になるように配設された第2板状部分36と、第1板状部分34と第2板状部分36とを連結する一対の連結板38c、38d(互いに略平行)と、を有してなり、上方向(矢印P1)と下方向(矢印P2)に開放された長方形状の枠体(無底無蓋の箱体)を形成している。なお、後で詳述するが、第1板状部分34と第2板状部分36との間に、第1係合部21a及び第2係合部21bいずれも滑車91の軸93が回転自在になるよう、また第2係合部21bにおいてはストッパー95の軸97が回動自在になるよう支持されている。
ゴム板37は、第1板状部分34の両主表面のうち板状本体部47d側の主表面に貼着されている。
【0025】
ネジ部材61は、雌ねじ部材43の内周面に螺刻された雌ねじ(雌ねじ部分)に螺合可能な雄ねじ部分63と、雄ねじ部分63の基端側に形成された把持部分65(雄ねじ部分63に対して相対的に回動不可能にされる。手により把持されたとき、滑りにくいように外周面に凹凸が形成されている。)と、を有してなる。
図4に示す状態から、コマ部分45を外筒部分33内部にネジ方向(図4中、矢印D)に向けてスライドさせて嵌入し(図4中、矢印G)、その後、雄ねじ部分63の先端側からネジ貫入孔33hへ貫入する(なお、雄ねじ部分63は、ネジ貫入孔33hへ遊嵌される。)。さらに、雄ねじ部分63の先端側をコマ部分45(外筒部分33内部にスライド自在に嵌入されている。)の嵌入孔45nへ貫入し、雌ねじ部材43の内周面に螺刻された雌ねじ(雌ねじ部分)に雄ねじ部分63を螺合させれば図2に示すような状態になる。かかる図2のような状態においては、把持部分65を手で把持して雄ねじ部分63を軸の周りに回転させれば、一当接部41と他当接部31とをネジ方向(図4中、矢印D)に関し相対的に両方向(図2中、左右方向)に移動(スライド)させることができる。これにより板状本体部47d(ゴム板47r)と第1板状部分34(ゴム板37)との間に簾101の上端近傍(上端部材103)を挟持したり取り外したりを自由に行うことができる。また、図7に示すように、図4とはコマ部分45を180度回転させた状態で、コマ部分45を外筒部分33内部にネジ方向(図7中、矢印D)に向けてスライドさせて嵌入し(図7中、矢印G)、その後、雄ねじ部分63の先端側をネジ貫入孔33hへ貫入し(雄ねじ部分63は、ネジ貫入孔33hへ遊嵌される。)、コマ部分45(外筒部分33内部に嵌入されている。)の嵌入孔45nへ貫入し、雌ねじ部材43の内周面に螺刻された雌ねじ(雌ねじ部分)に雄ねじ部分63を螺合させるようにすることもできる。こうすることで板状本体部47d(複数の凸条47da)と第1板状部分34(ゴム板37)との間に簾101の上端近傍(上端部材103)を挟持することができる。なお、ここでは雌ねじ部材43の内周面に螺刻された雌ねじ(雌ねじ部分)の一端E1と他端E2との間の中心点E3(ネジ方向(図7中、矢印D)に関しての中心点)を含み、前記雌ねじ部分の進退方向(ネジ方向(図7中、矢印D))に対して垂直な平面である基準面(図7中、平面J)に対し、ゴム板47rの当接面と複数の凸条47daが形成された面とが略平行であり、ゴム板47rの当接面と基準面Jとの間の距離L2と、複数の凸条47daが形成された面と基準面Jとの間の距離L1と、が異なるため、図4(図2)の状態と図7の状態とでは挟持することができる簾101の上端近傍(上端部材103)の寸法(厚み)が異なる。
【0026】
以上のように第1係合部21aと第2係合部21bとで同様の構成について係合部21として説明したが、次いで、第1係合部21aと第2係合部21bとで異なる構成について説明する。なお、第1係合部21aと第2係合部21bとでは、他当接部31のみが異なり、一当接部41とネジ部材61とは同様であるので、第1係合部21aと第2係合部21bとの他当接部31の違いについて主として説明する(以下の説明では、第1係合部21aの他当接部を他当接部31aとし、第2係合部21bの他当接部を他当接部31bとして説明する。)。
【0027】
図8は、第1係合部21aの他当接部31aを示す図(図8(a)は他当接部31aの正面図であり、図8(b)は他当接部31aの平面図(図8(a)中、矢印Q方向から見たところを示している。)である。)である。図8を参照して、他当接部31aについて説明する。なお、上で説明した係合部21と同じ要素には同じ参照番号を図8においても用いている。
滑車保持部35の第1板状部分34と第2板状部分36とは、一対の連結板38c、38d(互いに略平行)により連結されており、上方向(矢印P1)と下方向(矢印P2)に開放された直方体形状の枠体(無蓋無底の箱体。図8(b)中には、上下に開放された部分35pを示した。)を形成している。第1板状部分34と第2板状部分36との間には、直円筒形状の滑車91の軸93(ネジ方向と略平行)が支持されており、滑車91は軸93の周りに回転自在に配設されている。
【0028】
図9は、第2係合部21bの他当接部31bを示す図(図9(a)は他当接部31bの正面図であり、図9(b)は他当接部31bの平面図(図9(a)中、矢印Q方向から見たところを示している。)である。)である。そして、図10は、図9(b)のN−N断面図である。図9及び図10を参照して、他当接部31bについて説明する。なお、上で説明した係合部21と同じ要素には同じ参照番号を図9及び図10においても用いている。
滑車保持部35の第1板状部分34と第2板状部分36とは、一対の連結板38c、38d(互いに略平行)により連結されており、上方向(矢印P1)と下方向(矢印P2)に開放された直方体形状の枠体(無蓋無底の箱体。図9(b)及び図10中、上下に開放された部分35pを示した。)を形成している。第1板状部分34と第2板状部分36との間のうちやや一方に寄った位置(第1係合部21a側)には、直円筒形状の滑車91の軸93(ネジ方向と略平行)が支持されており、滑車91は軸93の周りに回転自在に配設されている。そして、第1板状部分34と第2板状部分36との間のうちやや他方に寄った位置(第1係合部21aとは反対側)には、ストッパー95の軸97(ネジ方向と略平行)が支持されており、ストッパー95は軸97の周りに回動自在(図10中、矢印R)に配設されている。ストッパー95は、外周面に凸部として形成された回動止め部95cと、外周面に複数の突起として形成された紐係合突起95dと、を有してなり、ストッパー95の軸97の周りの回動(図10中、矢印R)は、一方向(図10中、時計回り)には紐係合突起95dが滑車91に当接するまで許容され、他方向(図10中、反時計回り)には回動止め部95cが連結板38dに当接するまで許容される(即ち、紐係合突起95dが滑車91に当接する状態と、回動止め部95cが連結板38dに当接する状態と、の間でストッパー95は軸97の周りに自由に回動することができる。)。なお、重力以外の力が作用していない状態におけるストッパー95の軸97の周りの回動位置は、ストッパー95の重心95gが軸97の下方に位置する回動位置(図10の状態)になる。
【0029】
以上説明した本昇降具11の使用方法の一例について簡単に説明する。
(1)簾101を支持物に支持させる。ここでは具体的には、簾101の上端部材103を、建物の窓枠に取り付けられた簾吊り下げ具により支持してもよい。
(2)板状本体部47d(ゴム板47r又は凸条47da)と第1板状部分34(ゴム板37)との間に簾101の上端近傍(上端部材103)を挟持することで、第1係合部21aと第2係合部21bとを簾101の上端近傍(上端部材103)の所定位置に取り付ける。具体的には、まず、簾101の上端近傍(上端部材103)の寸法(厚み)に応じ、図2(図4)又は図7のいずれの方向かを選択し、コマ部分45を外筒部分33内部にネジ方向(図4及び図7中、矢印D)に向けてスライドさせて嵌入し(図4及び図7中、矢印G)、その後、雄ねじ部分63を雄ねじ部分63の先端側からネジ貫入孔33hへ貫入する(なお、雄ねじ部分63は、ネジ貫入孔33hへ遊嵌される。)。さらに、雄ねじ部分63の先端側をコマ部分45の嵌入孔45nへ貫入し、雌ねじ部材43の内周面に螺刻された雌ねじ(雌ねじ部分)に雄ねじ部分63を螺合させる。その後、把持部分65を手で把持して雄ねじ部分63を軸の周りに回転させ、一当接部41と他当接部31とをネジ方向(矢印D)に関し相対的に正逆両方向に移動(スライド)させて板状本体部47d(ゴム板47r(図2(図4))又は凸条47da(図7))と第1板状部分34(ゴム板37)との間の距離を調整して簾101の上端近傍(上端部材103)を該間に挟持し、第1係合部21a及び第2係合部21bを簾101の上端近傍(上端部材103)に取り付ける。
(3)紐(線材)13の一端を、第1係合部21aの紐固定部47pの孔47hに貫入し結びつける。
(4)紐(線材)13を、簾101の一面側(ここでは図1に示した表面101aとは反対の裏面。第1係合部21aの紐固定部47pが該一面側に存する。)に沿って下方に向けて垂下させ、簾101の下端から簾101の他面側(ここでは図1に示した表面101a)に沿って上方に向けて上昇させ、第1係合部21aの滑車91に図11(断面位置は、図8(b)のT−T断面(一部省略)を示している。)に示すように係合させる。
(5)第1係合部21aの滑車91に係合した紐(線材)13の他端を、第2係合部21bに図12(図10と同様の断面を示す。)に示すように係合させる。具体的には、第1係合部21aの滑車91に係合した紐(線材)13を、第2係合部21bの滑車91の上方を通過させ、滑車91とストッパー95との間から下方に垂下させ、再び下方から上方に向かうように折り返し、第2係合部21bの滑車91に係合させる。これによって第2係合部21bの滑車91とストッパー95との間に、紐(線材)13がだぶるように折り返されたループ部13rが形成される。
(6)第2係合部21bの滑車91に係合した紐(線材)13の他端を、簾101の他面側(ここでは図1に示した表面101a)に沿って下方に向けて垂下させ、簾101の下端から簾101の一面側(ここでは図1に示した表面101aとは反対の裏面。第2係合部21bの紐固定部47pが位置する側)に沿って上方に向けて上昇させ、第2係合部21bの紐固定部47pの孔47hに貫入し結びつける。
以上のようにして、図1に示したように、本昇降具11を簾101に取り付けることができる。なお、上記した取付工程(1)〜(6)の順番は適宜変更されてよいことはいうまでもない。
【0030】
このようにして図1のように簾101に取り付けられた本昇降具11は、紐(線材)13がだぶるように折り返されたループ部13rの長さを調節することで、簾101の下端を自由に上下させ、固定することができる。具体的には、前述の図12に示した状態においては、ループ部13rの長さを減少させる方向に紐(線材)13には張力(紐(線材)13は簾101の下端を支持しているので、図12中、矢印t1と矢印t2の方向に張力が加わる。)が加わっているので、図12の状態からループ部13rを下方に引く力を減少させると、紐(線材)13とストッパー95(主として紐係合突起95d)との摩擦力によりストッパー95が図12中時計回り方向(図12中、矢印S方向)に回動し、図13に示すようになる。図13においては、紐(線材)13は、紐係合突起95dがくい込むように滑車91とストッパー95との間に挟まれることで強く係止されており(紐(線材)13に加わる張力(図13中、矢印t1と矢印t2の方向の張力)は、紐(線材)13が滑車91とストッパー95との間に挟まれる力を増加させる。)ループ部13rから紐(線材)13が引き出されることを禁止している(ループ部13rの長さが短くなることを禁止する。)。これによって第1係合部21aの紐固定部47pと第1係合部21aの滑車91との間の紐(線材)13の部分と、第2係合部21bの滑車91と第2係合部21bの紐固定部47pとの間の紐(線材)13の部分と、が簾101の下端を支持し固定することができる。
なお、図13の状態から、ループ部13rを図13中において左下方向に引っ張れば、滑車91とストッパー95との間に紐(線材)13が挟まれ係止された状態を解くことができ(図12の状態)、紐(線材)13とストッパー95(主として紐係合突起95d)とが接触しないようループ部13rを図13中において左下方向に引っ張りつつループ部13rの長さを自由に調節することができる。これにより簾101の下端を自由に上下させることができ、該下端が所望の高さになったら、紐(線材)13とストッパー95(主として紐係合突起95d)とが接触するようループ部13rを図13中において右下方向に引っ張りつつループ部13rを下方に引く力を減少させれば、前述の通り、紐(線材)13とストッパー95(主として紐係合突起95d)との摩擦力によりストッパー95が図12中時計回り方向(図12中、矢印S方向)に回動し、再び紐(線材)13が係止される図13の状態になる。
【0031】
以上説明したように、第1係合部21aと第2係合部21bとはいずれも、簾101の下端近傍を支持する線材たる紐13と、簾101の上端近傍(ここでは上端部材103)に取り付けられ線材たる紐13が係合する係合部と、を備えてなる簾昇降具11に用いられる該係合部であって、簾101の一面側(ここでは図1に示した表面101aとは反対の裏面)から該上端近傍に当接する一当接部41と、簾101の他面側(ここでは図1に示した表面101a)から該上端近傍に当接する他当接部31と、一当接部41と他当接部31との間の距離を所定範囲内で連続的に調節する距離調節手段(雌ねじ部材43の内周面に螺刻された雌ねじと、該雌ねじに螺合する雄ねじ部分63と、雄ねじ部分63の基端側に形成された把持部分65と、を含んで構成される。)と、を有してなる、簾昇降具に用いられる係合部である。
そして、距離調節手段が、一当接部41に固定された雌ねじ部分(雌ねじ部材43の内周面に螺刻された雌ねじ)と、該雌ねじ部分に螺合する雄ねじ部分63と、を有しており、雄ねじ部分63が該雌ねじ部分に対して相対的に回転することで、前記距離を調節する。
加えて、距離調節手段が、雄ねじ部分63の基端側に形成された把持部分65を有してなり、他当接部31が、把持部分65と前記雌ねじ部分(雌ねじ部材43の内周面に螺刻された雌ねじ)との間の雄ねじ部分63に貫通されるものである(他当接部31のネジ貫入孔33hに雄ねじ部分63が遊嵌(貫通)される。)。
【0032】
第1係合部21aと第2係合部21bとのいずれも、雄ねじ部分63が、前記雌ねじ部分(雌ねじ部材43の内周面に螺刻された雌ねじ)の一端側と他端側とのいずれからも螺合可能であり(ここでは雄ねじ部分63が前記雌ねじ部分を貫通可能であり、図2(図4)及び図7のいずれの状態も可能である。)、一当接部41は、雄ねじ部分63が前記雌ねじ部分の一端側から螺合したときに簾101の上端近傍に当接する一当接面(ゴム板47rの当接面)と、雄ねじ部分63が前記雌ねじ部分の他端側から螺合したときに簾101の上端近傍に当接する他当接面(複数の凸条47daが形成された面)と、を有する。
さらに、前記雌ねじ部分(雌ねじ部材43の内周面に螺刻された雌ねじ)の一端E1と他端E2との間の中心点E3を含み、前記雌ねじ部分の進退方向(ネジ方向(矢印D))に対して垂直な平面である基準面(図7中、平面J)に対し、一当接面(ゴム板47rの当接面)と他当接面(複数の凸条47daが形成された面)とが略平行であり、一当接面(ゴム板47rの当接面)と該基準面(図7中、平面J)との間の距離L2と、他当接面(複数の凸条47daが形成された面)と該基準面(図7中、平面J)との間の距離L1と、が異なる。
【0033】
本昇降具11は、第1係合部21a及び第2係合部21bと、第1係合部21a及び第2係合部21bが係合し簾101の下端近傍を支持する線材たる紐13と、を有してなる簾昇降具である。
さらに、本昇降具11は、簾101の上縁(ここでは上端部材103)に沿った異なる2点に取り付けられる第1係合部21a及び第2係合部21bを有してなり、線材たる紐13が、第1係合部21aと第2係合部21bとの間に張設されるものであり、少なくとも簾101の下端近傍を上昇させる際、第1係合部21aと第2係合部21bとの間の線材たる紐13の張力が増加する。
また、第1係合部21aが、線材たる紐13の一端が固定される一端固定部たる第1係合部21aの紐固定部47pと、線材たる紐13に沿った方向に移動自在に支持する第1支持部たる滑車91と、を有し、第2係合部21bが、線材たる紐13の他端が固定される他端固定部たる第2係合部21bの紐固定部47pと、線材たる紐13に沿った方向に移動自在に支持する第2支持部たる滑車91と、を有し、第1係合部21aと第2係合部21bとの間に線材たる紐13が張設され、一端固定部(第1係合部21aの紐固定部47p)と第1支持部(第1係合部21aの滑車91)との間の線材たる紐13の部分と、他端固定部(第2係合部21bの紐固定部47p)と第2支持部(第2係合部21bの滑車91)との間の線材たる紐13の部分と、が簾101の下端近傍を支持する。そして、ここでは一端固定部(第1係合部21aの紐固定部47p)と第1支持部(第1係合部21aの滑車91)との間の線材たる紐13の長さと、他端固定部(第2係合部21bの紐固定部47p)と第2支持部(第2係合部21bの滑車91)との間の線材たる紐13の長さと、が所定値よりも大きくなることを制限する長さ制限手段たるストッパー95をさらに有する。
なお、本昇降具11は、これらの本係合部(第1係合部21a及び第2係合部21b)と線材たる紐13とが組み付けられた完成品として製造や販売等がされてもよいが、線材たる紐13は汎用のものが容易に入手可能であるので、本係合部(第1係合部21a及び第2係合部21b)のみとして製造や販売等がされてもよく、さらに本係合部(第1係合部21a及び第2係合部21b)と線材たる紐13とを少なくとも含んでなる、本昇降具11を製作する製作セットとして製造や販売等がされてもよい。
また、ここでは1本の紐13が張り渡された一対の滑車91(第1係合部21aと第2係合部21bとの滑車91)を備えてなる一対滑車型昇降具を示したが、上述したように1本の紐と1の滑車とから構成される単滑車型昇降具として構成してよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本昇降具が簾に取り付けられたところを示す正面図(一部省略)である。
【図2】係合部(第1係合部及び第2係合部)の左側面図である。
【図3】図2のAーA断面図である。
【図4】係合部の分解図(一当接部と他当接部とネジ部材とを取り外したところを示している。)である。
【図5】図4のBーB断面図である。
【図6】一当接部の正面図である。
【図7】コマ部分を外筒部分内部に嵌入する別の状態を示す係合部(第1係合部及び第2係合部)の左側面図である。
【図8】第1係合部の他当接部を示す図である。
【図9】第2係合部の他当接部を示す図である。
【図10】図9(b)のN−N断面図である。
【図11】第1係合部の滑車に紐を係合させた状態を示す一部省略断面図である。
【図12】第2係合部に紐を係合させた状態を示す断面図である。
【図13】紐が滑車とストッパーとの間に挟まれ係止された状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
11 本昇降具
13 紐(線材)
13r ループ部
21 係合部
21a 第1係合部
21b 第2係合部
31、31a、31b 他当接部
33 外筒部分
33h ネジ貫入孔
33k 底壁部
33s 側面開口
33t1、33t2 凸条
34 第1板状部分
35 滑車保持部
35p 上下に開放された部分
36 第2板状部分
37 ゴム板
38c、38d 連結板
41 一当接部
43 雌ねじ部材
45 コマ部分
45k 柱本体部
45m 溝形成部
45n 嵌入孔
46 凹溝
47 板状部分
47d 板状本体部
47da 凸条
47h 孔
47p 紐固定部
47r ゴム板
61 ネジ部材
63 雄ねじ部分
65 把持部分
91 滑車
93 軸
95 ストッパー
95c 回動止め部
95d 紐係合突起
95g 重心
97 軸
101 簾
101a 表面
103 上端部材
105 下端部材
107 中間部材
109a、109b 紐材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
簾の下端近傍を支持する線材と、該簾の上端近傍に取り付けられ該線材が係合する係合部と、を備えてなる簾昇降具に用いられる該係合部であって、
該簾の一面側から該上端近傍に当接する一当接部と、
該簾の他面側から該上端近傍に当接する他当接部と、
該一当接部と該他当接部との間の距離を所定範囲内で連続的に調節する距離調節手段と、
を有してなる、簾昇降具に用いられる係合部。
【請求項2】
距離調節手段が、該一当接部に固定された雌ねじ部分と、該雌ねじ部分に螺合する雄ねじ部分と、を有しており、
該雄ねじ部分が該雌ねじ部分に対して相対的に回転することで、前記距離を調節するものである、請求項1に記載の簾昇降具に用いられる係合部。
【請求項3】
距離調節手段が、前記雄ねじ部分の基端側に形成された把持部分を有してなり、
該他当接部が、該把持部分と前記雌ねじ部分との間の前記雄ねじ部分に貫通されるものである、請求項2に記載の簾昇降具に用いられる係合部。
【請求項4】
前記雄ねじ部分が、前記雌ねじ部分の一端側と他端側とのいずれからも螺合可能であり、
前記一当接部は、前記雄ねじ部分が前記雌ねじ部分の一端側から螺合したときに簾の上端近傍に当接する一当接面と、前記雄ねじ部分が前記雌ねじ部分の他端側から螺合したときに簾の上端近傍に当接する他当接面と、を有するものである、請求項2又は3に記載の簾昇降具に用いられる係合部。
【請求項5】
前記雌ねじ部分の一端と他端との間の中心点を含み、前記雌ねじ部分の進退方向に対して垂直な平面である基準面に対し、前記一当接面と前記他当接面とが略平行であり、
前記一当接面と該基準面との間の距離と、前記他当接面と該基準面との間の距離と、が異なるものである、請求項4に記載の簾昇降具に用いられる係合部。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の簾昇降具に用いられる係合部と、該係合部が係合し簾の下端近傍を支持する線材と、を有してなる簾昇降具。
【請求項7】
簾の上縁に沿った異なる2点に取り付けられる第1係合部及び第2係合部を有してなり、
線材が、第1係合部と第2係合部との間に張設されるものであり、
少なくとも簾の下端近傍を上昇させる際、第1係合部と第2係合部との間の線材の張力が増加するものである、請求項6に記載の簾昇降具。
【請求項8】
第1係合部が、線材の一端が固定される一端固定部と、線材に沿った方向に移動自在に支持する第1支持部と、を有し、
第2係合部が、線材の他端が固定される他端固定部と、線材に沿った方向に移動自在に支持する第2支持部と、を有し、
第1支持部と第2支持部との間に線材が張設され、
一端固定部と第1支持部との間の線材の部分と、他端固定部と第2支持部との間の線材の部分と、が簾の下端近傍を支持するものである、請求項7に記載の簾昇降具。
【請求項9】
前記係合部と前記線材とを少なくとも含んでなる、請求項6乃至8のいずれか1に記載の簾昇降具を製作する製作セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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