説明

米粉クッキー及び米粉クッキーの製造方法

【課題】好適に製造することが可能で好適な外観及び食感が得られる米粉クッキー及び米粉クッキーの製造方法を提供する。
【解決手段】米粉に、ペースト状に調製した里芋が配合されている米粉クッキーである。この米粉クッキーは、米粉を含む第一生地にペースト状に調製した里芋を混練りし、米粉にペースト状に調製した里芋が配合された第二生地を生成しS5、第二生地を、所定の分量に分割した分割生地を生成しS6、分割生地を焼成しS7、製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粉クッキー及び米粉クッキーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、米粉を用いた焼き菓子等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的に、特許文献1には、卵、乳、小麦粉およびこれら由来成分を含まず、米粉および米粉100質量部に対し30〜180質量部の糖類、60〜390質量部の豆乳、2〜90質量部の起泡性油脂を含む生地を焼成して得られる焼き菓子及びその製造方法が開示されている。なお、特許文献1には、焼き菓子として、クッキー等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−230348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クッキーを製造する場合、デポジッターと称される装置が用いられる。デポジッターはホッパーを有し、このホッパーに、焼成前のクッキー用の生地が投入される。投入された生地は、ホッパーから所定量が搾り出され、所定量に分割された状態で、鉄板等のようなプレート上に、それぞれ並べられ、オーブン等で焼成される。ここで、米粉を主原料とする米粉クッキーでは、焼成前の生地の硬度が、例えば小麦を用いる場合と比較して高くなる。従って、米粉クッキーの製造においては、小麦による生地と同様に、ホッパーから生地を搾り出すことが困難となる。また、米粉クッキーでは、生地の焼成後に割れが発生し、食感に「粉ぽっさ」が残ることがある。
【0005】
本発明は、好適に製造することが可能で好適な外観及び食感が得られる米粉クッキー及び米粉クッキーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題に鑑みなされた本発明の一側面は、米粉に、ペースト状に調製した里芋が配合されている米粉クッキーである。これによれば、焼成されて米粉クッキーとなる生地の硬度を低下させ、粘性を向上させることができる。そして、ペースト状に調製した里芋によって米粉が好適に繋ぎ合わせられ、粉っぽさが感じられず、割れの発生が抑制された米粉クッキーとすることができる。
【0007】
ここで、ペースト状の里芋は、ペースト状に調製した里芋の親芋とするとよい。これによれば、上述したような優れた米粉クッキーを得るために、里芋の親芋を有効利用することができる。ここで、人は、里芋の子芋、孫芋を食する。一方、里芋の親芋は食されず、廃棄されることが多い。前述の米粉クッキーでは、このような里芋の親芋を有効利用することができる。
【0008】
本発明の他の側面は、米粉を含む第一生地にペースト状に調製した里芋を混練りし、米粉にペースト状に調製した里芋が配合された第二生地を生成する混練工程と、前記混練工程で生成された前記第二生地を、所定の分量に分割した分割生地を生成する分割工程と、前記分割工程で生成された前記分割生地を焼成する焼成工程と、を含む米粉クッキーの製造方法である。これによれば、焼成されて米粉クッキーとなる生地(第二生地)の硬度を低下させ、粘性を向上させることができる。そして、ペースト状に調製した里芋によって米粉が好適に繋ぎ合わせられ、粉っぽさが感じられず、割れの発生が抑制された米粉クッキーを製造することができる。
【0009】
ここで、前記混練工程では、ペースト状の里芋の親芋を混練りし、前記第二生地を生成するとよい。これによれば、上記同様、里芋の親芋を有効利用した米粉クッキーの製造方法とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、好適に製造することが可能で好適な外観及び食感が得られる米粉クッキー及び米粉クッキーの製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】複数枚の米粉クッキーを示す図である。
【図2】米粉クッキーの製造方法を説明するための工程図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。また、他の構成を含むようにしてもよい。
【0013】
米粉クッキー1は、図1に示すように、従来のクッキー同様、例えば円板状の形状を有する。なお、図1には5枚の米粉クッキー1が示されている。米粉クッキー1は、円板状とは異なる形状としてもよい。米粉クッキー1は、米粉を主原料とするクッキーであって、例えばハードクッキーと称されるタイプのクッキーである。米粉としては、種々の米から製造される米粉を用いることができる。例えば、コシヒカリの米粉を用いることができる。米粉クッキー1は、米粉の他、原料として、例えば、表1に示すように、マーガリンと、蜂蜜と、砂糖と、黒ごまと、白ごまと、クラッシュピーナッツと、小麦粉と、卵と、ペースト状に調製した里芋とを含む。
【表1】

【0014】
ペースト状に調製した里芋は、米粉それぞれを好適に繋ぎ合わせ、米粉クッキー1の食感を向上させる。具体的に、米粉による粉っぽさを改善することができる。里芋には、里芋の親芋が用いられ、この里芋の親芋をペースト状に調製したものが用いられる。里芋の親芋は、酵素処理によって、ペースト状に調製される。酵素処理に際し、里芋の親芋は、例えば、表皮が剥き取られ、所定の大きさに分割され、所定の硬さに茹でられ、そして、潰される。酵素処理は、潰された里芋の親芋を対象として行われる。酵素処理の具体的手法は、従来から用いられている手法と同様である。従って、酵素処理の具体例についての説明は、省略する。
【0015】
ここで、人が食する里芋は、里芋の子芋又は孫芋であって、里芋の親芋は、人に食されることはなく、例えば廃棄されることが多い。従って、米粉クッキー1に、里芋の親芋を用いると、これを有効利用することができる。なお、米粉クッキー1に用いるペースト状に調製した里芋は、里芋の子芋又は孫芋を、前述したような酵素処理によってペースト状に調製したものとしてもよい。何れの里芋としても、米粉それぞれを好適に繋ぎ合わせ、粉っぽさを改善し、食感を向上させることができる。
【0016】
表1に示す各原料の分量は、1枚あたり、概ね22g〜28gの米粉クッキー1を、120枚〜130枚程度、製造する場合のものである。従って、米粉クッキー1の製造量(製造数)が異なる場合、各原料の分量は、製造量に応じて変化される。すなわち、米粉クッキー1では、米粉1000gに対して、マーガリンが500g、蜂蜜が250g、砂糖が500g、黒ごま100g、白ごま100g、クラッシュピーナッツが300g、小麦粉が500g、卵が600gの各割合で配合される。また、米粉クッキー1では、上述したような特性及び食感を得るために、米粉1000gに対して、ペースト状に調製した里芋が300ccの割合で配合される。なお、表1に示す、米粉及びペースト状に調製した里芋を除く原料の一部は、省略し又は他の原料に置換してもよい。さらに他の原料を含むようにしてもよい。また、各原料の分量は、風味及び/又は食感等を考慮し、所定の範囲で適宜変更してもよい。
【0017】
米粉クッキー1は、図2に示すような工程(S1〜S6)を経て製造される。なお、以下では、表1に示す分量の各原料で、概ね22g〜28gの米粉クッキー1を、120枚〜130枚程度、製造する場合を例に説明する。里芋(里芋の親芋)は、上述したような手法によって、予めペースト状に調製されているものとする。
【0018】
米粉クッキー1の製造方法における第一工程(S1)は、原料の計量工程である。第一工程(S1)では、マーガリンと、蜂蜜と、砂糖と、黒ごまと、白ごまと、クラッシュピーナッツと、米粉と、小麦粉と、卵と、ペースト状に調製した里芋とが、それぞれ計量され、表1に示す分量の原料とされる。
【0019】
第二工程(S2)は、攪拌工程である。第二工程(S2)では、第一工程で計量された各原料のうち、マーガリン500gと、蜂蜜250gと、砂糖500gと、小麦粉500gとが、攪拌される。具体的に、これら原料は、攪拌機に投入される。そして、攪拌機によって、マーガリンがポマード状の柔らかさとなるまで約2分程度攪拌される。なお、以下では、原料の攪拌は、攪拌機を用いる場合を例に説明する。
【0020】
第三工程(S3)は、第二工程に続けて行われる攪拌工程である。第三工程(S3)では、さらに、第一工程で計量された卵が、攪拌機に投入される。そして、攪拌機によって、これに投入された卵と、第一工程で攪拌されたマーガリンと蜂蜜と砂糖とによる生地とが、均一に混ざる(満遍なく混ざる)まで攪拌される。
【0021】
第四工程(S4)は、第三工程に続けて行われる攪拌工程である。第四工程(S4)では、さらに、第一工程で計量された、黒ごまと、白ごまと、クラッシュピーナッツと、米粉とが、攪拌機に投入される。そして、攪拌機によって、これに投入された黒ごまと、白ごまと、クラッシュピーナッツと、米粉とが、第二工程(S2)及び第三工程(S3)で攪拌された生地に、好適に混ぜ合わせられるよう、攪拌され、米粉を含む第一生地が生成される。
【0022】
第五工程(S5)は、混練工程である。第五工程(S5)では、第一工程で計量されたペースト状に調製した里芋300ccが、第四工程(S4)で生成された第一生地の硬さを確認しつつ、第一生地に混練りされる。そして、米粉にペースト状に調製した里芋が配合された第二生地が生成される。すなわち、第五工程(S5)では、第一生地の硬さを確認しつつ、米粉1000gに対し、ペースト状に調製した里芋300ccが混練りされた第二生地が生成される。
【0023】
第六工程(S6)は、分割工程である。第六工程(S6)では、第五工程(S5)で生成された第二生地が、所定の分量(質量)、具体的には30g程度に分割され、所定の型で薄く伸ばされ、分割生地が複数枚(120枚〜130枚程度)生成される。そして、生成された複数枚の分割生地は、鉄板等のプレート(以下、「鉄板」を例とする。)上に、それぞれ並べられる。なお、鉄板に並べられた分割生地には、例えばガラスシートが被せられ、さらにその上に鉄板が、例えば2枚程度載せられる。ここで、ガラスシートは、次の第七工程における焼成において、米粉クッキー1の焼きを薄くするために用いられる。また、例えば2枚程度載せられる鉄板は、米粉クッキー1を膨らませないようにするために用いられる。第六工程(S6)は、デポジッターを用いて行うこともできる。この場合、第二生地はデポジッターのホッパーに投入される。ホッパーに投入された第二生地は、デポジッターの所定の位置に載せ置かれた鉄板上に、ホッパーから搾り出され、所定の量(30g程度)に分割(切断)される。デポジッターでは、このような作業に連動して、載せ置かれた鉄板が搬送され、複数の分割生地が、自動的に鉄板上に、それぞれ並べられる。
【0024】
第七工程(S7)は、焼成工程である。第七工程(S7)では、第六工程(S6)で上述したような状態にセットされ、分割生地がそれぞれ並べられた鉄板が、オーブンに投入される。そして、複数枚の分割生地が焼成される。ここで、分割生地の焼成は、二段階で行われる。すなわち、まず、前述のように投入された状態で10分程度、焼成される。その後、オーブンへの投入状態が表裏反転され、この状態で、再度、5分程度、焼成される。なお、表裏反転した状態での焼成は、省略してもよい。第七工程(S7)においてオーブンの温度は、例えば170℃〜180℃程度に設定される。第七工程(S7)終了後、焼き上がった米粉クッキー1は、例えば、所定の枚数毎に所定の容器に収容され、出荷、販売等される。
【0025】
本実施形態では、米粉に、ペースト状に調製した里芋、詳細には、ペースト状に調製した里芋の親芋を配合することとした。そのため、米粉が好適に繋ぎ合わせられ、粉っぽさが感じられず、割れの発生が抑制された米粉クッキー1とすることができる。そして、しっかりとした歯ごたえのあるハードクッキーとすることができる。なお、黒ごまと、白ごまと、クラッシュピーナッツとを配合することで、より香ばしい風味の米粉クッキー1とすることができる。また、米粉に、ペースト状に調製した里芋の親芋を配合することで、第五工程(S5)で生成される第二生地の硬度を低下させ、粘性を向上させることができる。そのため、第六工程(S6)でデポジッターを用いて、好適に搾り出し、分割することができ、これによって、米粉クッキー1を数多く製造することも可能となる。
【0026】
上記では、米粉の繋ぎ材として、ペースト状に調製した里芋(里芋の親芋)が配合された米粉クッキー1を例に説明した。米粉に配合する繋ぎ材としては、豆乳を用いることもできる。表2は、豆乳が配合された米粉クッキーの配合表の一例を示すものである。なお、表2に示す各原料の分量は、表1の場合と同じく、1枚あたり、概ね22g〜28gの米粉クッキーを、120枚〜130枚程度、製造する場合のものであって、米粉クッキーの製造量(製造数)が異なる場合、各原料の分量は、製造量に応じて変化される。
【表2】

【0027】
米粉に、豆乳が配合されている米粉クッキーにおける原料の分量は、表2から明らかな通り、表1による米粉クッキー1の場合と同じである。すなわち、豆乳は、ペースト状に調製した里芋の場合と同じく、米粉1000gに対して、300ccの割合で配合(混練り)される。なお、表2に示す、米粉及び豆乳を除く原料の一部は、上述したペースト状に調製した里芋の場合と同様、省略し又は他の原料に置換してもよい。さらに他の原料を含むようにしてもよい。また、各原料の分量は、風味及び/又は食感等を考慮し、所定の範囲で適宜変更してもよい。米粉に、豆乳が配合されている米粉クッキーの製造方法等については、上述したペースト状に調製した里芋の場合と同様であるため、省略する。
【0028】
米粉に、豆乳が配合されている米粉クッキーでは、ペースト状に調製した里芋を配合する場合と比較し、焼成後の割れが発生し易くなる傾向がある。しかし、この他の点については、上述した有利な特徴を実現することが可能で、好適な米粉クッキーとすることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 米粉クッキー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粉に、ペースト状に調製した里芋が配合されている米粉クッキー。
【請求項2】
ペースト状の里芋は、ペースト状に調製した里芋の親芋である請求項1に記載の米粉クッキー。
【請求項3】
米粉を含む第一生地にペースト状に調製した里芋を混練りし、米粉にペースト状に調製した里芋が配合された第二生地を生成する混練工程と、
前記混練工程で生成された前記第二生地を、所定の分量に分割した分割生地を生成する分割工程と、
前記分割工程で生成された前記分割生地を焼成する焼成工程と、を含む米粉クッキーの製造方法。
【請求項4】
前記混練工程では、ペースト状の里芋の親芋を混練りし、前記第二生地を生成する請求項3に記載の米粉クッキーの製造方法。

【図2】
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【図1】
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