説明

米糠分離装置および米糠分離方法

【課題】米と米粒に付着または混じった糠および米粒より軽い夾雑物を遠心分離させ米は円錐部内壁に沿って落下させ、米粒に付着または混じった糠等を舞い上がらせ、糠等をドーム形状部から吸い出し米粒の割れの発生が抑えられる品質のよい精白米を得る米糠分離装置およびその分離方法を提供する。
【解決手段】原料投入口より原料が投入され、糠は上部吸引口の吸引力により吸い込まれ、旋回気流により遠心力が働き壁面に移動する。米はこれら影響を殆ど受けることなく中央部を通り、落下し、円錐部の内壁に当たり、円錐部内壁を滑り落ちる。内壁に当たって舞った糠および米の表面に付着した糠粉は回転式圧縮エアノズルで吹き飛ばされ、旋回気流発生用圧縮エアノズルにより旋回気流に乗り、旋回気流吸引排出口より排出される。リング状7連式エアノズルで流下してくる米(糠)に対して逆噴射及びエアカーテンを発生させ、糠のみを押し戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄米を精米した後に米粒から糠を除去する米糠分離装置および米糠分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糠取り装置等の容器内壁に接線方向に空気を導入し、比重の軽い糠等を上方から、比重の重いものを下方から排出する装置の発明が多数知られている。
特許文献1は、精穀装置に連通して除糠手段が設けられ、除糠手段の縦型サイクロンに吸引された除糠風のうち、軽い糠は上部の吸引ファンに吸い上げられ、それより重い未熟粒および砕粒は下方に落下して排出口およびロータリーバルブを介して排出されるものが開示されている。
特許文献6は、糠を除去する装置ではないが、プラスチックを主成分とする破砕物から軽量物と重量物を分離し、筒体の上端部から軽量物が、下端部から重量物がそれぞれ排出される構成が開示されている。
【0003】
また、穀粒に含まれる夾雑物(塵埃,穂切れ,わらくずが混ざったもの)を除去する装置が知られている。
特許文献2はそのような装置として竪形円筒部の上部にその接線方向から貫設された流入管から分離すべき材料を流入し、穀粒は下部落下口から落下し、それよりも比重の軽い塵埃を含む夾雑物は上部の排風管から排出されるものである。選別用空気は筒上部の排風装置によって円筒部下部の漏斗状円錐部の通気孔から導入されるようになっている。なお、図4,5の実施例において、円錐漏斗状体の所定箇所に、材料の旋回方向とほぼ直角に交差するように、旋回する材料を下方に誘導させるための切欠き部を設けている。
さらに精米機で発生する糠を空気搬送し、空気と糠の混合物を空気と糠に分離するサイクロン装置が知られている。
特許文献3はそのような装置であり、大きな円筒の外周部に接線方向に精米機から送られてきた空気と糠の混合物を搬送する小円筒を設け、大きな円筒の下部に円錐台形の渦室を設けて、落下した糠を糠箱に入れるようにしている。分離された空気は上部の筒を通って精米機へ戻されるようになっている。
【0004】
さらには玄米,白米,麦,蕎麦などの穀粒に付着した糠などを取り除く穀粒処理装置が知られている。
特許文献4はそのような家庭用精米機等の穀粒処理装置であって、かき回し具とともに回転されるファンの回転により、分離かご内から処理容器内に排出された糠を、ファンの回転に伴う遠心力及び風圧により搬送して、処理容器の外側上部に設けられた糠溜め容器に排出するものである。
また、特許文献5は、螺旋状に形成され、回転することによって米粒どうしをすり合わせることで米粒に付着した米ヌカを除去する装置であって、米に残存付着した米ヌカを回転電着ドラムに帯電付着させることで米粒から分離する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−113188号公報
【特許文献2】特開昭53−17150号公報
【特許文献3】特開2003−1144号公報
【特許文献4】特開2002−66353号公報
【特許文献5】特開平7−203878号公報
【特許文献6】特開2002−35699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、本件出願人は、スーパ−マーケット、デパート、コンビニエンスストア等への袋詰精白米の卸商品の製造や、外食産業、レストラン、ホテル、病院等の大量消費者への多岐にわたる精白米の提供に応じることができる米糠分離装置の開発を行っている。
本件出願人は、精白米から糠および米粒より軽い夾雑物を除去する工程で割れや米の表面の亀裂などの米粒が混ざらない品質のよい精白米を提供しつつ本装置の後工程の設備(選別や搬送する機器)の汚れを防止することで、メンテナンス頻度を軽減することができる装置の開発を目指している。メンテナンスの目的は(1)選別機器の性能低下(ふるいの目詰まりや色彩選別機のカメラのガラス面のくもりなど)防止と(2)糠のかたまりが機器から脱落して精白米への異物混入になるのを防止することである。
米粒から糠などの軽いものを除くための上述した従来例は、本件出願人が目的とする効果を持つようにして米糠および米粒より軽い夾雑物を分離することはできない。
精白米を加工する工程を考えた場合、精白米に付着していたり、混ざっている糠が少量であっても精白米を流通させるパイプなどに目詰まりやセンサ部にこびりついて自動ライン制御の誤作動、選別機の内部においては付着により精度の低下を発生させる原因になる。そのため、パイプなどに付着した糠を除去する清掃作業を多頻度でしなければならない。
【0007】
また、米糠を除去する方法として、従来例に示されているようなサイクロンを用いる場合では、サイクロン装置内を米粒が旋回して内壁に滞留する時間が長くなり内壁にぶつかる頻度が大きくなるため、米粒に割れや米の表面の亀裂が生じ易い。これによって炊飯するとべちゃついたり花咲米ができ米の品質の低下を招くことにもなる。
本発明は上述した諸問題を解決するもので、その目的は、装置内壁付近に旋回流を発生させることにより、投入された米粒に付着したり、混じったりしている糠および米粒より軽い夾雑物を遠心分離させるとともに米粒は円錐部内壁に沿って落下させ、回転空気の発生によりさらに米粒に付着または混じった糠を舞い上がらせ、糠を装置上部のドーム部から吸い出すことにより、米粒が装置内壁にぶつかる頻度を少なくするとともに米粒が装置内に滞留する時間を短くし、米粒の割れや米の表面の亀裂の発生が抑えられる品質のよい精白米を得ると共に清掃やメンテナンスを軽減させることができる米糠分離装置および米糠分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明による請求項1記載の米糠分離装置は、円筒状の胴部,前記胴部の上側に配置されたドーム形状部および前記胴部の下側に配置された円錐部からなる容器と、前記胴部に米,糠および米粒より軽い夾雑物が混在している原料を連続的に投入する原料投入手段と、前記胴部に圧力空気接続管を接続し圧力空気を胴部内に導入することにより旋回気流を発生させ、前記原料から該旋回気流により糠および米粒より軽い夾雑物を遠心分離させる旋回気流発生手段と、前記円錐部中央に、圧力空気を吹き出すことにより回転する圧力空気噴出管を配置し、前記原料投入手段から原料を投入し前記胴部内で米,糠および米粒より軽い夾雑物の慣性が異なることを利用して米と糠および米粒より軽い夾雑物とを分離するとともに前記円錐部の内壁に衝突して舞い上がった糠,米の表面に付着した糠粉および米粒より軽い夾雑物を吹き飛ばす回転圧力空気発生手段と、前記円錐部から米を取り出す米取出手段と、吸引する機能を有し前記ドーム形状部から糠および米粒より軽い夾雑物を取り出す糠取出手段とを備えたことを特徴とする。
本発明による請求項2記載の米糠分離装置は、請求項1記載の米糠分離装置において、前記円錐部の下部に上昇気流を発生する上昇気流発生手段を配置したことを特徴とする。
本発明による請求項3記載の米糠分離装置は、請求項2記載の米糠分離装置において、前記上昇気流発生手段は、上部に圧縮空気を噴出する噴出管を1以上備えたことを特徴とする。
本発明による請求項4記載の米糠分離装置は、請求項1,2または3記載の米糠分離装置において、前記円錐部に、該円錐部の内壁面に米と糠および米粒より軽い夾雑物が衝突する部分に糠が付着するのを防止する加熱手段を設けたことを特徴とする。
本発明による請求項5記載の米糠分離装置は、請求項1,2,3または4記載の米糠分離装置において、前記原料投入手段は、原料投入傾斜落下管を備え、前記原料投入傾斜落下管の開口部は、前記ドーム形状部の前記糠取出手段の接続位置の下方であって前記胴部の前記圧力空気接続管の接続位置の上方に配置され、前記開口部には、開口可能にヒンジ止めされた蓋が設けられ、前記原料投入傾斜落下管より傾斜落下する原料の導入で前記蓋が開き、且つ開口した蓋の面で、傾斜落下する方向以外の米粒の飛び散りを防止することを特徴とする。
本発明による請求項6記載の米糠分離装置は、請求項1,2,3,4または5記載の米糠分離装置において、前記糠取出手段は前記ドーム形状部の壁に前記胴部の旋回流の旋回方向に沿って接合された1以上の管を備え、該管内に前記ドーム形状部内部まで飛び跳ねた米の吸い込みを防止するファンを設けたことを特徴とする。
本発明による請求項7記載の米糠分離装置は、請求項1,2,3,4または5記載の米糠分離装置において、前記糠取出手段は前記ドーム形状部の壁の頂点に垂直方向に接合された管を備え、該管内に前記ドーム形状部内部まで飛び跳ねた米の吸い込みを防止するファンを設けたことを特徴とする。
本発明による請求項8記載の米糠分離装置は、請求項1,2,3,4,5,6または7記載の米糠分離装置において、前記圧力空気接続管は、前記胴部の内壁面に沿って1以上配置し、前記圧力空気接続管のノズルは圧縮空気を円周方向に噴出することを特徴とする。
本発明による請求項9記載の米糠分離装置は、請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の米糠分離装置において、前記圧力空気噴出管は、前記容器の中心軸回りに回転可能に支持され噴射反力により回転するノズルであって噴射方向は、糠および米粒より軽い夾雑物を遠心分離する旋回流と共通する旋回方向成分を有することを特徴とする。
本発明による請求項10記載の米糠分離装置は、請求項1,2,3,4,5,6,7,8または9記載の米糠分離装置において、前記旋回気流発生手段と前記回転圧力空気発生手段には同一圧力源からの圧力空気が接続されていることを特徴とする。
本発明による請求項11記載の米糠分離方法は、先端に蓋を有する原料投入手段より米,糠および米粒より軽い夾雑物が混在している原料を連続的に投入し、前記蓋を押し拡げて円筒胴部内に原料を供給する原料投入工程と、円筒胴部内に供給した原料を円筒胴部の略中央を通って円筒胴部下部に結合されている円錐部の内壁に衝突させる内壁衝突工程と、旋回気流発生手段により、前記円筒胴部内に供給された原料の内、糠および米粒より軽い夾雑物を旋回気流にのせて上昇させ、前記円筒胴部上部に結合されているドーム形状部に配置された米糠取出手段より排出させる糠等旋回上昇排出工程と、回転圧力空気発生手段により、前記円錐部の内壁に衝突して舞い上がった米の表面に付着した糠粉および米粒より軽い夾雑物を吹き飛ばし前記旋回気流の軌道にのせる糠等上昇補助工程と、上昇気流発生手段により前記円錐部の内壁に沿って流下してくる原料の内、糠および米粒より軽い夾雑物に対し逆噴射してカーテンを発生させ糠および米粒より軽い夾雑物を押し戻す押戻工程とを含み、米と糠および米粒より軽い夾雑物とを分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1によれば、円筒の胴部に原料投入手段を設け、該胴部に圧力空気接続管を接続し圧力空気を胴部内に導入し旋回気流を発生させる構造であるので、該旋回気流により原料の米から糠および米粒より軽い夾雑物を遠心分離させ、米粒は旋回気流に乗ることなく、円錐部の内壁に当たり、円錐部の内壁に沿って落下する。また、回転圧力空気発生手段により旋回気流が助長され落下する米粒に付着している糠および米粒より軽い夾雑物が除去され巻き上げられる。このような空気流の流れにより米粒に付着したり、混ざったりしている糠および米粒より軽い夾雑物の多くは分離され、米粒も割れなどが生じることなく品質が維持され、糠および米粒より軽い夾雑物を除去した米粒が得られ、本装置の後工程の設備(選別や搬送する機器)の汚れを防止することで、メンテナンス頻度を軽減することができる。
請求項2,3によれば、上昇気流発生手段が円錐部の下部に配置されているので、ドーム形状部の排出管による吸引だけでなく下からの中央部分を上昇する空気流が加えられ、旋回気流と上昇気流との間に境界となるような空気層が形成される。そして旋回気流から漏れ出て下降しようとする糠や落下する米粒に未だ付着している糠および米粒より軽い夾雑物は巻き上げられ、排出管に吸引されて排出される。米粒は装置内部を旋回して胴部に多数回衝突せず、滞留時間も長くなることなく円錐部の下から排出される。
請求項4によれば、加熱手段により円錐部の内壁面に米と糠および米粒より軽い夾雑物が衝突する部分に糠が付着するのを防止することができる。
請求項5によれば、原料投入手段は、原料投入傾斜落下管を備え、管の開口部は、ドーム形状部の糠取出手段の接続位置の下方で胴部の圧力空気接続管の接続位置の上方に配置され、開口部には、開口可能にヒンジ止めされた蓋が設けられ、原料投入傾斜落下管より傾斜落下する原料の導入で前記蓋が開き、且つ開口した蓋の面に、飛び散ろうとする米粒を当てて他の方向に向かうことを抑制するので、傾斜落下する米粒のほとんどが円錐部の壁部分に当たるようになる。
請求項6,7によれば、上に舞い上がった糠および米粒より軽い夾雑物は確実に排出管より回収できる。
請求項11の米糠分離方法によれば、原料の中の米粒に付着したり、混ざったりしている糠および米粒より軽い夾雑物の多くは分離され、米粒も割れなどが生じることなく品質が維持され、糠および米粒より軽い夾雑物を除去した米粒が得られ、米糠分離装置の後工程の設備の汚れを防止することで、メンテナンス頻度を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による米糠分離装置の実施の形態を示す正面断面図である。
【図2A】図1のA−A断面図で、上部中心吸引口を下から見た図である。
【図2B】図1のB−B断面図で、旋回気流吸引口を上から見た図である。
【図2C】図1のD−D断面図で、旋回気流発生用圧縮エアノズルを上から見た図である。
【図2D】図1のE−E断面図で、回転式圧縮エアノズルを下から見た図である。
【図2E】図1のF−F断面図で、リング状7連式エアノズルを上から見た図である。
【図3A】図1のC−C断面図で、原料投入部を下から見た図である。
【図3B】原料投入部の正面図である。
【図3C】原料投入部の側面図である。
【図4】回転式圧縮エアノズルおよびリング状7連式エアノズルの側面図である。
【図5A】本発明による米糠分離装置の動作を説明するための模式図で、原料投入口付近の原料の流れを説明するための図である。
【図5B】本発明による米糠分離装置の動作を説明するための模式図で、ホッパ部(円錐部)の壁面に衝突するときの流れを説明するための図である。
【図5C】本発明による米糠分離装置の動作を説明するための模式図で、旋回気流発生用の圧縮エアノズルによる流れおよび旋回気流吸引口の排出の流れを説明するための図である。
【図5D】本発明による米糠分離装置の動作を説明するための模式図で、回転式圧縮エアノズルによる流れおよびアルミ箔ヒータの効果を説明するための図である。
【図5E】本発明による米糠分離装置の動作を説明するための模式図で、リング状7連式エアノズルによる流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1は、本発明による米糠分離装置の実施の形態を示す正面断面図である。
円筒胴部11は透明アクリルパイプにより構成され、円筒胴部11の上部に透明アクリル製のドーム形状部12が取り付けられている。円筒胴部11の下部は円錐形状のホッパ部13が取り付けられている。ホッパ部13下部は、円筒形の米排出管21が接続されている。
円筒胴部11側面下方に旋回気流発生用圧縮エアノズル18が等間隔で壁面の接線方向に若干上向きに4個配置され、円筒胴部11上部に、アルミ蓋162を有する原料投入部16が配設されている。
ドーム形状部12の中央上部に上部中心吸引口14が、側壁の対角線上に2個接線方向に旋回気流吸引口15が配設されている。
ホッパ部13の中央位置に回転式圧縮エアノズル20が配置され、ホッパ部13直下の米排出管21内にリング状7連式エアノズル19が設けられている。ホッパ部13の外部側面にはアルミ箔ヒータ17が付設されている。
【0012】
円筒胴部11の直径は例えば350mm,長さは350mm,厚さは5mmである。直径および長さ共、400mmにするのが米と糠および米粒より軽い夾雑物との分離機能を効率的に発揮する上で理想である。原料投入部16はステンレスパイプにより構成され、径は例えば90mmである。円錐形状のホッパ部13の円錐壁の傾斜角は65°以上の角度がよい。
旋回気流発生用圧縮エアノズル18および回転式圧縮エアノズル20には圧縮空気供給装置(図示しない)が接続され、同一圧力源の圧縮空気が供給される。
【0013】
図2Aは図1のA−A断面図で、上部中心吸引口を下から見た図である。
上部中心吸引口14は吸引パイプ142で構成され、ドーム形状部12の中央部に設けられている。上部中心吸引口14の入り口付近に米粒吸引防止ファン141が設置されている。
米粒吸引防止ファン141は吸引している空気により回転する。その機能は上部中心吸引口14に米粒が吸い込まれないようにするものである。具体的には装置内部で若干米粒が跳ね回っており、それが吸引空気により上部中心吸引口14から吸い込まれてしまう現象が発生する。この吸引を防止するために吸引空気で回転する羽(ファン)を吸引口付近に設置し、吸い込まれた米粒が羽に当たることによって跳ね返され、吸引されることを目詰まり無くガードする。
ドーム形状部12の機能は米粒とそれ以外を分離することである。ドーム形状部12下部の円筒胴部11の旋回気流がドームの頂上に向かうにつれて遠心力が徐々に弱まる。このことによって米粒は下部ホッパ方向に落下するが、それ以外の糠や米粒より軽い夾雑物は頂上まで登っていくので上部中心吸引口14からは米粒以外だけを排出することができる。
【0014】
図2Bは図1のB−B断面図で、旋回気流吸引口を上から見た図である。
旋回気流吸引口15は先端部が絞られた吸引パイプ152で構成され、内部に糠および米粒より軽い夾雑物のみ吸引する為の米粒吸引防止ファン151が配置されている。
旋回気流吸引口15はドーム形状部12の側壁の対角線上に2個配置されており、吸引パイプ152の先端部がドーム上の表面に接続されている状態となっている。旋回気流発生用圧縮エアノズル18で発生させられる旋回気流の旋回運動を助長し、糠および米粒より軽い夾雑物が旋回気流の軌道に乗って排出されるのを促す。
米粒吸引防止ファン151は米粒吸引防止ファン141と同様、吸引空気によって回転しており、米粒より軽い糠および米粒より軽い夾雑物はファンと筒の間を通り抜けるが米粒はファンに衝突し跳ね返されて吸い込まれない機能があり、製品の歩留低下を防止する。従来、このような機能として米粒より小さなメッシュなどで吸引口をふさぐが、メッシュの場合はこれ自体に糠や異物が付着して吸引機能が低下してしまう問題があるので、米粒吸引防止ファンにはこのような問題を防止する効果がある。
【0015】
図2Cは図1のD−D断面図で、旋回気流発生用圧縮エアノズルを上から見た図である。
旋回気流発生用圧縮エアノズル18は円筒胴部11側壁下方に等間隔で壁面の接線方向に若干上向き方向で4つ配置されており、強力な旋回気流を発生させる。これにより螺旋上昇気流を発生させ、米と糠および米粒より軽い夾雑物との分離を行い、上部中心吸引口14より糠を排出させる。空気の旋回により遠心力を発生させている。
【0016】
図2Dは図1のE−E断面図で、回転式圧縮エアノズルを下から見た図である。
回転式圧縮エアノズル20はホッパ部13の下部中央に配置され、中央部から両方向にパイプ201が伸び先端部が屈曲した形状であり、屈曲した先端部より圧縮エアが噴出するように構成されている。2つの屈曲した先端部からはそれぞれ反対方向に圧縮エアが噴出し、中心パイプ部202を支点に右方向に回転する。
回転式圧縮エアノズル20はエアスプリンクラーであり、旋回気流の旋回運動を助長し、流下する米を向かい打ち、米の表面に付着している糠粉と円筒内を舞い降りてきた糠粉および米粒より軽い夾雑物を吹き飛ばして上部の旋回気流に送り込む。
【0017】
図2Eは図1のF−F断面図で、リング状7連式エアノズルを上から見た図である。
リング状7連式エアノズル19は米排出管21の出口付近に設けられ、リング状に7個のエアノズルが上向きに配置されている。上方向に噴射してエアカーテンを発生させ、糠の下降を抑え、回収量を増加させる。
ホッパ部13の外側に設けられているアルミ箔ヒータ17は、円筒胴部11の内壁およびホッパ部13の内壁面の米と糠および米粒より軽い夾雑物が衝突する部分に糠が付着するのを抑制し、メンテナンスの頻度を削減する(図1参照)。
一般的に米と糠が衝突する部分(特に冷えた金属)には糠が付着し米粒の流れを阻害したり、糠の付着部分に米粒が乗って残ってしまう。これにより米の搬送系統やパイプが目詰まりを起こしたり、異品種混入の原因になる。アルミ箔ヒータ17による加熱は上記問題を防止するためである。
【0018】
図3Aは図1のC−C断面図で、原料投入部を下から見た図、図3Bは原料投入部の正面図,図3Cは原料投入部の側面図である。
原料投入部16はステンレスパイプにより構成され、先端部は円筒胴部11内に突出している。投入口161部分のパイプの上部が延出しており、この延出した部分に蝶番163の一方の板が、アルミ蓋162の端部に蝶番163の他方の板がそれぞれビス164,165で固定されている。
アルミ蓋162は円形状の投入口161全体を覆う角形板形状であり、アルミ蓋162の先端部は折り曲げられており、アルミ蓋折曲部1621を形成している。
【0019】
アルミ蓋162の動きは蝶番163を支点にフリーであり、例えば図1の原料投入部16で示すように、重力により下方向に下がった状態である。
アルミ蓋162は円筒胴部11内からのエアの逆流を防止し、さらに過剰な米の飛び散りを抑制する役割を果たす。
また、原料投入部16は径を小さくすることにより円筒胴部11内の気流が逃げにくくなる。
【0020】
図4は回転式圧縮エアノズルおよびリング状7連式エアノズルの配置関係を示す側面図である。
回転式圧縮エアノズル20の配管パイプ203は米排出管21の上部付近の壁から米排出管21内に入り、ホッパ部13内に挿入されている。また、リング状7連式エアノズル19の配管パイプ191も同様に米排出管21の側壁から米排出管21内に入り、配管パイプ191の端部にリング状7連式エアノズル19が接続されている。
【0021】
図5A〜図5Eは糠が混入した米の投入から分離までのそれぞれの工程を説明するための模式図である。
図5Aは原料投入時の米・糠の動きを示している。
ドーム形状部は米粒とそれ以外を分離する機能がある。ドーム形状部下部の円筒胴部の旋回気流がドームの頂上に向かうにつれて遠心力が徐々に弱まる。これによって米粒は下部ホッパ方向に落下するが、それ以外の糠および米粒より軽い夾雑物は頂上まで登っていくので上部中心吸引口および旋回気流吸引口から米粒以外を排出することができる。
原料投入口(投入パイプ)より流下する米と糠は比重が異なることにより流入速度の慣性の違いを利用している。糠および米粒より軽い夾雑物は上部吸引口の吸引力に影響されるので、上部吸引口の方向に移動する。また、旋回気流により遠心力の影響も受けて壁面に移動し、旋回気流の軌道にも乗る。米は殆ど影響を受けず、下方に流下する。通常のサイクロンのように旋回させながら流下させると、米は割れてしまうような品質劣化の可能性が高いため、円筒胴部容器の中心を通過させている。
【0022】
図5Bは、投入された原料のうち米がホッパ部の円錐壁に当たっている状態を示している。
胴部内壁面は強力な旋回気流が発生しているため、壁面に接触すると米粒も旋回軌道に乗ってしまうので、原料投入口の出口にアルミ蓋(抵抗蓋)を設けて、過剰な飛び出しを防止している。アルミ蓋は蝶番を支点に開くようになっており、原料が投入されていない状態では、想像線(二点鎖線)で示す位置になっている。原料が投入されると、原料に押されて実線に示す位置まで開口する。原料の一部は例えば上方向に向けて飛び出す場合があり、アルミ蓋がなければ、そのまま進み円筒胴部の壁に衝突することになる。アルミ蓋があれば、上方向に飛び出そうとする原料はアルミ蓋にあたって、軌道が修正され、ホッパ部の壁の中央位置を的に送り出される。
また、原料投入口のパイプを壁面内部に若干突出させることにより、米の投入口付近での旋回気流の直撃を防止している。
【0023】
図5Cは、旋回気流にのって旋回気流吸引口に糠および米粒より軽い夾雑物が導かれている状態を示している。
胴部内壁面下方に均等にエアノズルを壁面の接線方向に若干上向きに4つ配置して強力な旋回気流を発生させている。また、上部壁面の対角線位置に設けられた2箇所の旋回気流吸引口により旋回気流の方向を妨げないように吸引することにより旋回運動が助長される。糠はこの旋回気流の軌道に乗って旋回気流吸引口より排出される。
【0024】
図5Dは回転式圧縮エアノズルによる圧縮エアにより糠が上昇し旋回気流に乗っている状態を示している。
ホッパ部(円錐部)壁面に衝突して舞い上がった糠および米の表面に付着した糠粉および米粒より軽い夾雑物を回転式圧縮エアノズルで吹き飛ばし旋回気流の軌道に乗せる。また、アルミ箔ヒータにより糠の付着が抑制される。
【0025】
図5Eはリング状7連式エアノズルにより糠および米粒より軽い夾雑物のみを押し戻している状態を示している。
ホッパ部直下に設置されたリング状7連式エアノズルは、ホッパ部壁面に沿って流下してくる米(糠および米粒より軽い夾雑物)に対して逆噴射及びエアカーテンを発生させ、糠および米粒より軽い夾雑物のみを押し戻し、次工程に糠等が搬送されないように抑制する。
【0026】
以上の実施の形態は、旋回気流発生用圧縮エアノズルを4個配置する例について述べたが、その数は4個以上または以下にすることができる。また、旋回気流吸引口の数を2個とする例について述べたが、同様に2個以外の数でも同様な効果を得ることができる。また、上部中心吸引口をドーム形状部の中心に設けた例を説明したが、糠および米粒より軽い夾雑物の吸引効率を上げるという点では少し劣るが、中心から外れた位置に配置しても良い。さらに米排出管内にリング状7連式ノズルを設け、逆噴射およびエアカーテンを発生させているが、ノズルはリング状に配置しなくても、さらに数は7連式でなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
玄米を精米した後に米粒から糠および米粒より軽い夾雑物を除去し、本装置の後工程の設備(選別や搬送する機器)の汚れを防止することで、糠のかたまりの発生を抑制できるのでメンテナンス頻度を軽減することができる米糠分離装置である。
【符号の説明】
【0028】
11 円筒胴部
12 ドーム形状部
13 ホッパ部(円錐部)
14 上部中心吸引口
141,151 米粒吸引防止ファン
15 旋回気流吸引口
16 原料投入部
161 投入口
162 アルミ蓋(抵抗蓋)
17 アルミ箔ヒータ
18 旋回気流発生用圧縮エアノズル(圧力空気接続管)
19 リング状7連式エアノズル
20 回転式圧縮エアノズル(圧力空気噴出管)
21 米排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部,前記胴部の上側に配置されたドーム形状部および前記胴部の下側に配置された円錐部からなる容器と、
前記胴部に米,糠および米粒より軽い夾雑物が混在している原料を連続的に投入する原料投入手段と、
前記胴部に圧力空気接続管を接続し圧力空気を胴部内に導入することにより旋回気流を発生させ、前記原料から該旋回気流により糠および米粒より軽い夾雑物を遠心分離させる旋回気流発生手段と、
前記円錐部中央に、圧力空気を吹き出すことにより回転する圧力空気噴出管を配置し、前記原料投入手段から原料を投入し前記胴部内で米,糠および米粒より軽い夾雑物の慣性が異なることを利用して米と糠および米粒より軽い夾雑物とを分離するとともに前記円錐部の内壁に衝突して舞い上がった糠,米の表面に付着した糠粉および米粒より軽い夾雑物を吹き飛ばす回転圧力空気発生手段と、
前記円錐部から米を取り出す米取出手段と、
吸引する機能を有し前記ドーム形状部から糠および米粒より軽い夾雑物を取り出す糠取出手段と、
を備えたことを特徴とする米糠分離装置。
【請求項2】
請求項1記載の米糠分離装置において、
前記円錐部の下部に上昇気流を発生する上昇気流発生手段を配置したことを特徴とする米糠分離装置。
【請求項3】
請求項2記載の米糠分離装置において、
前記上昇気流発生手段は、上部に圧縮空気を噴出する噴出管を1以上備えたことを特徴とする米糠分離装置。
【請求項4】
請求項1,2または3記載の米糠分離装置において、
前記円錐部に、該円錐部の内壁面に米と糠および米粒より軽い夾雑物が衝突する部分に糠が付着するのを防止する加熱手段を設けたことを特徴とする米糠分離装置。
【請求項5】
請求項1,2,3または4記載の米糠分離装置において、
前記原料投入手段は、原料投入傾斜落下管を備え、
前記原料投入傾斜落下管の開口部は、
前記ドーム形状部の前記糠取出手段の接続位置の下方であって前記胴部の前記圧力空気接続管の接続位置の上方に配置され、
前記開口部には、開口可能にヒンジ止めされた蓋が設けられ、前記原料投入傾斜落下管より傾斜落下する原料の導入で前記蓋が開き、且つ開口した蓋の面で、傾斜落下する方向以外の米粒の飛び散りを防止することを特徴とする米糠分離装置。
【請求項6】
請求項1,2,3,4または5記載の米糠分離装置において、
前記糠取出手段は前記ドーム形状部の壁に前記胴部の旋回流の旋回方向に沿って接合された1以上の管を備え、
該管内に前記ドーム形状部内部まで飛び跳ねた米の吸い込みを防止するファンを設けたことを特徴とする米糠分離装置。
【請求項7】
請求項1,2,3,4または5記載の米糠分離装置において、
前記糠取出手段は前記ドーム形状部の壁の頂点に垂直方向に接合された管を備え、
該管内に前記ドーム形状部内部まで飛び跳ねた米の吸い込みを防止するファンを設けたことを特徴とする米糠分離装置。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,5,6または7記載の米糠分離装置において、
前記圧力空気接続管は、前記胴部の内壁面に沿って1以上配置し、前記圧力空気接続管のノズルは圧縮空気を円周方向に噴出することを特徴とする米糠分離装置。
【請求項9】
請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の米糠分離装置において、
前記圧力空気噴出管は、前記容器の中心軸回りに回転可能に支持され噴射反力により回転するノズルであって噴射方向は、糠および米粒より軽い夾雑物を遠心分離する旋回流と共通する旋回方向成分を有することを特徴とする米糠分離装置。
【請求項10】
請求項1,2,3,4,5,6,7,8または9記載の米糠分離装置において、
前記旋回気流発生手段と前記回転圧力空気発生手段には同一圧力源からの圧力空気が接続されていることを特徴とする米糠分離装置。
【請求項11】
先端に蓋を有する原料投入手段より米,糠および米粒より軽い夾雑物が混在している原料を連続的に投入し、前記蓋を押し拡げて円筒胴部内に原料を供給する原料投入工程と、
円筒胴部内に供給した原料を円筒胴部の略中央を通って円筒胴部下部に結合されている円錐部の内壁に衝突させる内壁衝突工程と、
旋回気流発生手段により、前記円筒胴部内に供給された原料の内、糠および米粒より軽い夾雑物を旋回気流にのせて上昇させ、前記円筒胴部上部に結合されているドーム形状部に配置された米糠取出手段より排出させる糠等旋回上昇排出工程と、
回転圧力空気発生手段により、前記円錐部の内壁に衝突して舞い上がった米の表面に付着した糠粉および米粒より軽い夾雑物を吹き飛ばし前記旋回気流の軌道にのせる糠等上昇補助工程と、
上昇気流発生手段により前記円錐部の内壁に沿って流下してくる原料の内、糠および米粒より軽い夾雑物に対し逆噴射してカーテンを発生させ糠および米粒より軽い夾雑物を押し戻す押戻工程とを含み、
米と糠および米粒より軽い夾雑物とを分離することを特徴とする米糠分離方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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