説明

米胚芽抽出方法

【課題】簡易な方法でありながら、玄米の精米時に生じた米糠から高純度に分級させた胚芽を取り出すことができる米胚芽抽出方法を提供する。
【解決手段】精米後の米糠から胚芽を対象として分級し、該分級した胚芽群を塩水に浸して胚芽を沈殿させた後、該胚芽群からなる沈殿物を脱塩乾燥させる。上記分級は、篩い分け分級、湿式分級、又は乾式分級の何れかを用いることが可能である。本抽出方法では、精米後の米糠からの胚芽の分級が第1の抽出行程であり、まず胚芽より小径の糠片を分離させる。また、糠片を除いて胚芽の比率をより高めた胚芽群を塩水に浸して胚芽を沈殿させる行程が第2の抽出行程であり、胚芽群から胚芽とそれ以外の米糠の糠細片を比重差によって分離させる。ここで用いる塩水の塩分濃度は、例えば約10重量%としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、玄米の精米時に発生する米糠から胚芽のみを抽出する米胚芽抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米糠とは、玄米を精米処理する時に玄米から分離した外皮構成物を主構成物として、これに胚芽が混合した状態の粉状物である。上記精米処理は通常は精米機により行われるものであるが、白米を得ることが目的であるため、処理工程で発生する米糠は廃棄の対象であったり、漬物の糠床に利用される程度のものであった。
【0003】
しかし、この米糠に混合する胚芽には、ビタミン、ミネラル、その他の栄養成分を豊富に含んでいることから、健康食品としての利用価値が昨今は注目されている。健康食品等に胚芽を利用するには、米糠から胚芽のみを効果的に抽出する必要があり、以下の抽出方法が開示されている。
【0004】
特許文献1には、容器の底板に縦横1.3mmの正方形の貫通孔を1200個程均一に設け、この容器に米糠を入れて数分間シェイク(篩い分け)し、容器に胚芽を残留させると共に米糠は貫通孔を通過させて篩い分け分級する胚芽抽出方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、底面に多数の小透孔を形成した篩容器をより大きい支持容器内に配設し、篩容器を横方向に往復運動させつつ支持容器に衝突させて米糠に衝撃を付与して胚芽と糠を篩い分け分級する米胚芽篩い分け装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−137781号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献2】特開2003−169615号公報(第2−4頁、第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献で開示された胚芽抽出方法は、米糠を空隙や小透孔を有する容器で単純に篩い分ける、所謂「篩い分け分級」の行程のみである。このため、抽出された胚芽の表層面には、多くのパウダー状(微粒子状)の米糠が残留することとなる。
【0007】
かかる米糠が残留した胚芽は、言わば不純物が含まれていることと同等であり、その胚芽成分(胚芽エキス)としての純度は低下したものである。したがって、かかる胚芽の用途はふりかけ、白米やクッキー等の材料への添加物等、胚芽成分が底純度でも許容される食品に限定されるものとなっており、高純度の胚芽成分が望まれる健康飲料や健康補助食品(サプリメント)には不向きなものであった。
【0008】
そこで、本願発明は、簡易な方法でありながら、玄米の精米時に生じた米糠から高純度に分級させた胚芽を取り出すことができる米胚芽抽出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本願発明にかかる米胚芽抽出方法は、以下のように構成している。
【0010】
すなわち、精米後の米糠(正確には、玄米の精米後に生じる白米以外の、種皮・外胚乳・膠質層・胚芽などの粉砕片や微細片が混合した物)から有用な胚芽を対象として分級し、該分級した胚芽群を塩水に浸して胚芽を沈殿させた後、該胚芽群からなる沈殿物を脱塩乾燥させて胚芽を効率良くかつ高純度に分級させて抽出することを特徴としている。
【0011】
上記の分級においては、篩い分け分級、湿式分級、又は乾式分級の何れかを用いることが可能である。上記それぞれの分級の手法は一般的な技術を用いているが、本願発明においては、それぞれ単独に用いる他に、複合して用いても良い。例えば、水流中において篩い分けする方法や風速をもった気流中で篩い分けする方法などがある。
さらにまた、この分級行程は各分級方法を段階的に複数段(いわゆるカスケード式)に配置して行うようにしても良い。
【0012】
上記した抽出方法では、精米後の米糠からの胚芽群の分級が第1の抽出行程となっている。この第1の抽出行程により、まず胚芽より小径の米糠(以下、「糠片」と称する。)が分離されることとなる。この分離された糠片には、胚芽の粉砕部分を含有するかその比率は僅かであり、胚芽以外の米糠の部分が殆どとなる。
【0013】
この糠片を除いて胚芽の比率をより高めた胚芽群(以下、「胚芽主群」と称する。)を塩水に浸して胚芽を沈殿させる行程が第2の抽出行程となっている。この第2の抽出行程は、胚芽主群から胚芽とそれ以外の米糠(以下、「糠細片」と称する。)を比重差によって分離する方法であり、浸漬させる液体を所定濃度の塩水として比較的比重の小さい糠細片を水面付近に浮遊させて分離する方法である。ここで用いる塩水の塩分濃度は、例えば約10重量%としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の米胚芽抽出方法は、上記の構成であるため、以下の効果を奏する。
すなわち、適宜の分級方法で米糠から胚芽を分離すると共に、胚芽を塩水に浸して胚芽以外の糠細片を分離するため、簡易な方法でありながら米糠から胚芽を高純度に分級して抽出することができる。
【0015】
本願発明の米胚芽抽出方法に得られた高純度の胚芽は、煮詰めて胚芽エキスとしたり、温風乾燥により粉末状にして多様な健康飲料、健康補助食品、食品添加物に利用することが可能であり、その産業への貢献は顕著なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本願発明の米胚芽抽出方法(以下、「本発明方法」と略称する。)の実施形態例について、詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明方法を示すフローチャートである。本発明方法は、図1に示すように、分級行程、塩水浸積行程、脱塩乾燥工程の3つの行程により構成している。なお、本発明方法で処理対象となる米糠は、玄米の精米処理により発生するものであり、玄米から分離した外皮構成物を主構成物として、これに胚芽が混合した状態の粉状物である。
【0018】
まず、この米糠から胚芽を既存の分級機(例えば、各種のサイザー等)により分級する(分級行程)。この分級行程では、胚芽の粒径より小さいメッシュ程度(例えば、約1.0mmの正方形の網目)の篩い網を用い、篩い処理時に篩い網の振動と上方から水流を付加した所謂「水力分級」を行っている。この分級行程により、米糠に含まれる胚芽主群は篩い網に残留し、糠片は水流によって流されることとなる。
【0019】
また、分級行程において用いる所謂湿式分級には、上記の方法の他に、所定量の水に米糠を混合混濁させた米糠含有水を、上方に開口を持った所定深さの容器に溜置き、これに所定水量と勢いを持った水流を注入して、この水流の勢いにより撹拌させて比重差を利用して米糠から胚芽主群を分離する方法を取っている。そして、この状態を一定時間(数時間から一日程度)続けて行うことにより、胚芽より比重の軽い糠片は水面付近に浮遊し、この浮遊物を容器の上方開口からオーバーフローさせて容器外に排出させることにより、胚芽の比率を可能な限り高めた部分を容器内に残留させる方法を採っている。さらに、この後に後述する次行程へ移行させてより胚芽の比率を高めて分級するようにしている。なお、ここで用いる容器は既述のような底部に篩い網を配置した容器に限定するものではなく、一般的な貯液容器で良い。また、その容積や注入する水流量、さらにはその注入位置は、処理する米糠の量や処理時間等で適宜に設定値が決定されるものである。すなわち、勢いの強い水流を注入した場合には、必要な胚芽の流出量が増えてしまい、逆に勢いが弱い場合は十分な撹拌が行われずに、分離の効率が悪くなってしまうためこれらのバランスを考慮して、適宜に最適値が設定されるものである。
【0020】
次に、分級後の胚芽主群を、塩分濃度が約10重量%とした塩水を貯留させた沈殿槽に投入して浸漬させる(塩水浸積行程)。所定時間(約10時間前後)経過すると、比重が大きい胚芽主群は槽底部に沈殿するが、糠片や胚芽の表層面に付着していたパウダー状(微粒子状)の糠細片は、比重差によって浮沈分離することとなる。なお、この塩分濃度はこの値に限定するものではなく、胚芽の量や他の混合物との粒径や混合割合により適宜に設定されるものである。
【0021】
最後に、塩水の液面付近に浮上して浮遊している糠細片(例えば、種皮・外胚乳・膠質層等)を除去すると共に、沈殿した胚芽主群を塩水から取り出し、塩水に浸潤させた胚芽主群を水洗いするなどして脱塩した後に乾燥させる(脱塩乾燥工程)。この脱塩乾燥行程は、例えば、2キログラム程度の量を広げて自然乾燥させた場合は一昼夜程度を要したが、熱風や送風による強制乾燥により時間短縮を計っても良い。
【0022】
上記した本発明方法により抽出された胚芽は、所定メッシュの篩い網を用いた一般的な篩い分けに比べて残留する糠細片等の含有が殆ど無いため、成分的には高純度なものとなる。このため、例えば、これらを再び水に浸漬して煮詰めることにより、胚芽の有効成分を浸漬水に溶出させて得られる胚芽エキスを健康飲料の主成分とし利用することもできる。また、温風乾燥により粉末状とし、これを小麦や米や肉等の食材に混合させることにより、栄養価を高めた飲食物製造用の健康補助食品として利用することも可能である。例えば、白米にこの胚芽を混合させて炊飯したご飯は、精米によって失ったビタミン、ミネラル等の栄養成分が補給できる上、胚芽を残して挽いた(いわゆる8分挽き)胚芽米として炊いたご飯に比べて色、艶、味が共に良くなり、かつ消化も良好となる利点を有しており、産業上の利用性も高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0024】
11 分級行程
12 塩水浸積行程
13 脱塩乾燥行程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
精米後の米糠から胚芽を対象として分級し、
該分級した胚芽群を塩水に浸して胚芽を沈殿させた後、
該胚芽群からなる沈殿物を脱塩乾燥させて胚芽を抽出することを特徴とする米胚芽抽出方法。
【請求項2】
分級において、篩い分け分級、湿式分級、又は乾式分級の何れかを用いたことを特徴とする請求項1記載の米胚芽抽出方法。
【請求項3】
湿式分級において、水に混合混濁させた米糠を上方開口の容器内に貯留させて、これに所定量の水流を注入して、撹拌すると共に、水面付近の浮遊物をオーバーフローさせて容器外に流出させる方法を採ったこと特徴とする請求項1記載の米胚芽抽出方法。


【図1】
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【公開番号】特開2008−54546(P2008−54546A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233312(P2006−233312)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(501308937)
【Fターム(参考)】