説明

米質改良材、米質改良製品および米質改良方法

【課題】 稲や米の周辺環境を変化させて米質を改良することができる、米質改良材、米質改良製品および米質改良方法を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる米質改良材は、木炭を必須とする、ことを特徴とする。本発明にかかる米質改良製品は、前記米質改良材を含む、ことを特徴とする。本発明にかかる米質改良方法は、前記米質改良材および/または米質改良製品を、稲の生育環境内および/または米の保存環境内に配置する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米質改良材、米質改良製品および米質改良方法に関する。詳しくは、米びつや米倉庫に設置したり、田んぼに埋設したりすることで、米質を改良することのできる米質改良材と、このような米質改良材を用いた米質改良製品および米質改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、古くから、米が主食として広く一般に親しまれ、その品質を如何にして向上させるか、ということは、米の生産・販売を業とするものにとっても、米を食する需要者にとっても、非常に大きな関心事であった。そのため、品種改良や米の栽培方法、精米方法など、様々な観点からの米質改良が試みられてきた。しかし、米質が気候や土壌などの周辺環境に大きく影響を受けるにも関わらず、従来、米質の改良のために、稲の生育環境や米の保存環境など、稲や米の周辺環境を変化させることにより、米質を改良しようとする試みはなされてこなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、稲や米の周辺環境を変化させることで、米質を改良することのできる、米質改良材、米質改良製品および米質改良方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、米質改良材として、木炭を用いれば良いことを見出した。木炭によって米質が改良されることについて、詳しいメカニズムは未だ解明できていないが、木炭が有する調湿機能、ガス吸着機能、電磁気的機能などの諸機能、中でも、特に電磁気的機能による何らかの作用が米質に影響を与えることによるものではないかと推察される。さらに、本発明者の検討の結果、このような電磁気的機能を有する木炭には微生物が群がりやすく、この微生物が何らかの作用によって稲や米の周辺環境を改善しているのではないかと考えられた。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0005】
すなわち、本発明にかかる米質改良材は、木炭を必須とする、ことを特徴とする。
本発明にかかる米質改良製品は、前記米質改良材を含む、ことを特徴とする。
本発明にかかる米質改良方法は、前記米質改良材および/または米質改良製品を稲の生育環境内および/または米の保存環境内に配置する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、稲や米の周辺環境を変化させるという、従来とは異なる手法によって米質の改良を実現することによって、現在流通している米全般の品質について、その水準を一挙に引き上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明にかかる米質改良材、米質改良製品および米質改良方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔米質改良材〕
本発明にかかる米質改良材には、木炭が含まれる。
<木炭>
木炭としては、特に限定されず、例えば、活性化木炭、備長炭、竹炭などが挙げられるが、特に活性化木炭を用いると、顕著な米質改良効果が発揮され、好ましい。
【0008】
前記活性化木炭は、木材の細片すなわち木材チップを低温炭化させ、次いで、高温炭化させた後、水に接触させて活性化させることにより得ることができる。前記木材チップの原木としては、特に限定されないが、例えば、杉材、ヒマラヤ杉材、赤松材等の針葉樹材が用いられ、特に赤松材が好ましい。木材製品として利用し難く安価な細い木材や廃材を利用することができる。パルプ製造やボード建材の原料として大量に工業生産されている木材チップ製品を用いることもできる。木材チップの形状および寸法は特に限定されないが、木材チップの差し渡し径を測ったときに、その最大径が10〜60mmのものが好ましい。大き過ぎる木材チップは十分な炭化を行い難く、小さ過ぎる木材チップは取扱い難く、製造歩留りも悪い。
【0009】
前記活性化木炭を得るための低温炭化工程および高温炭化工程では、基本的には、通常の木炭製造装置および製造処理条件を採用すればよい。
前記低温炭化工程では、特に限定しないが、例えば、熱処理の温度を450〜550℃に設定することができる。また、熱処理時間は、木材チップの全体が十分に炭化される程度で良く、木材チップあるいは製造装置の条件によっても異なるが、通常は100〜120時間をかけて処理する。熱処理雰囲気は、空気の流入を遮断した状態で行う。モミ殻やオガクズで木材チップを覆った状態で処理することができる。
前記高温炭化工程では、特に限定しないが、例えば、熱処理の温度を800〜900℃、熱処理時間を好ましくは3〜60分、さらに好ましくは5〜15分に設定することができる。高温炭化工程では、前工程で低温炭化された木材チップ炭化物の表面に近い一部分のみを高温炭化し、木材チップ炭化物の中心部分には低温炭化部分を残しておく。処理時間によって、得られる活性化木炭に含まれる高温炭化部分と低温炭化部分との比率が調整される。処理時間が短すぎたり長すぎたりすると、高温炭化部分と低温炭化部分とのそれぞれの特性が十分に発揮できない。前記低温炭化工程と同じ装置で、熱処理温度を上昇させることで、低温炭化された木材チップ炭化物をそのまま高温炭化させることが好ましい。熱処理雰囲気は、酸素を供給した状態にする。
【0010】
高温炭化工程で熱処理を行った炭化物に水を接触させると、炭化物は急速に冷却されて消火する。その際に、水の化学的および物理的な作用によって、炭化物に複雑な形状の微細孔が形成されたり、炭化物の表面が改質されて吸着能などが向上したりする活性化が行われる。なお、水は液体状態であってもよいが、通常は水蒸気状態で炭化物に接触することになる。活性化工程の具体的処理装置や処理条件は、既知の活性炭製造技術において行われている水との接触処理と同様でよい。
このようにして得られる活性化木炭は、内部に多数の微細孔を有する多孔質構造であり、この微細孔による物理的な吸着作用を有するとともに、微細孔の表面が化学的あるいは物理的に活性化されていて高い吸着能を発揮する。前記製造方法から判るように、活性化木炭は、原料となる木材チップ以外の添加剤や活性化処理剤を使用する必要がない。
【0011】
活性化木炭は、吸着能に優れ、吸放湿性、脱臭性、防黴性、遠赤外線放射性、導電性、電磁波吸収性、イオン調整機能などに優れている。活性化木炭の吸着能は、吸着物質と接触したときの立ち上がり速度が大きい。また、吸着物質を分解する作用があるため、活性化木炭の微細孔に吸着物質が詰まって吸着能が低下することが防げ、長期間にわたって安定した吸着能を発揮できる。
活性化木炭には、低温炭化工程で炭化された低温炭化部分と、高温炭化工程でさらに炭化された高温炭化部分とが混在している。通常は、中心側に低温炭化部分、外周側に高温炭化部分が存在する。活性化木炭は、低温炭化部分と高温炭化部分の機能や役目を相乗的に発揮させることができる。
【0012】
前記活性化木炭は、粉砕して活性化木炭粉にすることで、他の材料に対する担持や含有の処理が行い易くなる。
粉砕装置および粉砕条件は、通常の木炭粉の製造技術が適用できる。
活性化木炭粉を粒径5mm以下に粉砕するのが好ましい。粒径が小さいほど、単位重量当たりの表面積が大きくなり、表面性状に基づく諸特性が向上する。
前記したように低温炭化部分と高温炭化部分とが混在する活性化木炭を粉砕した活性化木炭粉にも、低温炭化部分と高温炭化部分とが混在する。個々の活性化木炭に低温炭化部分と高温炭化部分が存在することが好ましいが、低温炭化部分からなる活性化木炭粉と高温炭化部分からなる活性化木炭粉とが均一に分散していてもよい。
【0013】
本発明で用いる前記木炭は、予め帯電させたものであることが好ましい。予め帯電しておくことにより、米質改良効果も向上する。これは、帯電により、木炭の電磁気的作用が向上し、さらに、木炭に微生物が群がりやすくなり、微生物による作用が向上することによるものと考えられる。
前記木炭の帯電方法としては、特に限定するわけではないが、例えば、電圧をかけて静電場を作り、この静電場の中に木炭を置いた状態で1昼夜放置する、という方法が挙げられる。このとき、木炭は、該木炭中の電荷が外部へ伝導しないように、絶縁状態の架台の上に置いておく。高電圧をかけることが好ましく、限定するわけではないが、例えば、50〜150Vとすることができる。
【0014】
<他の材料>
本発明にかかる米質改良材には、本発明の効果を該しない範囲で、木炭以外の材料を用いることができる。そのような木炭以外の材料としては、特に限定されないが、例えば、コークス(特に、ピッチコークス、高温焼成コークス)、フェライト、焼成無機物、天然塩、波動性鉱物(水晶、ショールトルマリン、天照石、ブラックシリカ、アパタイト、麦飯石など)、石炭、黒鉛、人造黒鉛、炭素繊維、木酢液、竹酢液、EM菌などを用いることができる。
前記他の材料として、好ましくはピッチコークスを用い、より好ましくはフェライトも用い、さらに好ましくは焼成無機物も用い、特に好ましくは天然塩、水晶、ショールトルマリン、天照石、ブラックシリカ、アパタイトおよび麦飯石からなる群より選ばれる少なくとも1種も用いる。これらの他の材料を木炭と併用することにより、米質の改良効果が相乗的に向上する。先に述べたように、木炭によって発揮される米質の改良効果は、木炭が有する調湿機能、ガス吸着機能、電磁気的機能などの諸機能、中でも、特に電磁気的機能に基づく効果ではないかと推察されるが、本発明者が先に出願した特開2005−305126号公報においても明らかとされているように、ピッチコークスは電磁気的な環境改善効果に優れており、焼成無機物は木炭やピッチコークスの機能を高める。また、本発明者の更なる研究の下、フェライトも電磁気的な環境改善効果に優れていること、前記した天然塩、水晶、ショールトルマリン、天照石、ブラックシリカ、アパタイト、麦飯石などは更なる電磁気的な環境改善機能の向上に寄与すること、が判明している。このように、木炭の他に、前記した種々の材料を併用することで、相乗的に、電磁気的な環境改善効果が向上し、これにより、米質の改良効果も相乗的に向上するものと推察される。
【0015】
前記ピッチコークスは、コールタールや石炭を蒸留して得られるピッチを原料にして製造される。ピッチコークスは炭素を主成分としており、環境の改善機能として木炭と同様の特性を有している。特に、炭素率98%以上のピッチコークスは、導電率が非常に高く、木炭と同様あるいは上回る特性を有している。ピッチコークスは、木炭に比べて固くて強度があり比重も大きいので、地下に埋設して使用するときなどに、戴荷力が高く、崩れたり変形したりし難い。特に、硬度5.1kg以上のピッチコークスは、木炭に比べて戴荷力が大幅に向上する。また、ピッチコークスは、安価に入手可能である点でも好ましい。平均粒径0.5〜2mmのものが取り扱いやすく、電磁気的機能も良好に発揮される。
【0016】
前記フェライトは、MO・Feなる組成をもつ一群の鉄酸化物であり、優れた磁性体材料である。Mは2価の金属イオンで、例えば、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+などである。金属酸化物と酸化鉄との粉末を混合し、圧縮成形した後に焼成することにより得ることができる。Mは1種だけに限らず、2種以上を組み合わせて混入し、固溶体をつくることにより、種々の磁化特性を生じさせることもできる。
例えば、平均粒径100μm以下の粉末として使用できる。
前記焼成無機物は、原料を焼成することで得られた無機物であり、他の材料の周囲に存在して、それらの機能を高めるものである。焼成無機物自体には、電磁気的機能などは無くても構わないが、前記電磁気的機能などを有するものを用いれば、本発明の効果を高めることができるため、より好ましい。焼成無機物の材料としては、例えば、鉱物や粘度などの天然原料を焼成したセラミックやガラスなどが用いられる。有機物と無機物を含む原料を焼成することで、無機物だけを残したものでも良い。焼成無機物の焼成温度は、高い方が好ましく、具体的には800℃以上であることが好ましい。高温焼成された無機物は、他の材料の機能を損なうことなく、相乗的な機能の向上を果たすことができる。
【0017】
前記焼成無機物として、より具体的には、例えば、火力発電所などからの廃棄物として得られるフライアッシュが使用できる。石炭燃焼時に発生する炭のうち、燃焼ガス中に浮遊した状態で排出されて集塵機などで回収される微細な粒状の灰である。
前記焼成無機物の市販品としては、例えば、商品名「AZP」(ラサ工業社製、リン酸エステル製品、化学名:オイレルアシッドホスフェート)が挙げられる。また、商品名「イオニード」(昭和電気硝子工業社製、ガラス素材)も使用できる。この物質には、マイナスイオンや遠赤外線の放出機能があるとされる。
前記焼成無機物として、例えば、平均粒径30μm以下のものが使用できる。
【0018】
<米質改良材の組成>
本発明にかかる米質改良材の組成として、特に限定するわけではないが、例えば、木炭(ピッチコークスおよび/または焼成無機物をさらに含む場合は、木炭、ピッチコークス、焼成無機物の混合物)30〜70重量部に対して、フェライトを30〜70重量部の割合で混合することが好ましい。さらに、木炭、ピッチコークス、焼成無機物からなる混合物とする場合、それら各材料の割合を、木炭29〜70重量%、ピッチコークス29〜70重量%、焼成無機物1〜5重量%とすることがより好ましい。
〔米質改良製品〕
本発明にかかる米質改良製品は、上述した本発明の米質改良材を材料とし、該米質改良材を容器に充填したり、成形したりすることによって製造される。
【0019】
具体的には、粉体状の米質改良材を、通気性のある包装容器に収容すれば、取扱い、持ち運びが容易で、外観性も向上する。包装容器として、布や不織布などからなる通気性袋を使用すれば、製造が容易で取扱い易い。合成樹脂の成形品からなる容器であって、外壁に微細な孔を有するものや、紙箱、紙筒なども使用できる。
包装容器に収容された米質改良材は、例えば、田んぼに埋設して、稲の生育環境を変化させたり、米びつや米倉庫などに設置して、米の保存環境を変化させたりして、米質を改良することができる。包装袋として、合成繊維あるいは天然繊維で編織された布袋や、不織布からなる袋が使用できる。具体的には、麻袋が使用できる。
【0020】
粒体状の米質改良材を成形材料に配合し、成形材料を成形硬化させて米質改良製品とすることもできる。成形材料には、セメントなどの水硬性材料あるいは無機系バインダーを適量の水とともに配合しておいたり、熱可塑性・熱硬化性の合成樹脂を配合しておいたりすることができる。成形方法としては、プレス成形、押出成形などが挙げられる。成形品として、シート材やボード材、ブロック材、管材、さらには、置物や日用品、その他、より複雑な立体構造物を得ることもできる。一般的なセメント建材や窯業系建材と同様の形状や構造を有するものが製造できる。発泡樹脂成形に適用することもできる。
この場合において、例えば、練炭製造用のプレス成形型を用いて成形するときは、練炭形の米質改良製品が得られる。練炭状成形品からなる米質改良製品は、その全体が円柱状をなすとともに、円の中心軸方向に貫通する多数の孔が設けられている。このような多数の貫通孔を有することで、表面積が増大し、環境中の空気や水などとの接触による米質改良機能が効率的に発揮できるようになる。
【0021】
米質改良材の成形品を製造するための成形材料の配合として、米質改良材100重量部に対して、セメントなどの水硬性の無機系バインダーを5〜60重量部の範囲で配合することができる。さらに、米質改良材と無機系バインダーとの混合物100重量部に対して、水を20〜50重量部の範囲で配合することができる。樹脂バインダーを使用する場合も、無機系バインダーと同じ程度の配合量が採用できる。成形材料中に占める米質改良材の割合が少な過ぎると、目的の機能が十分に発揮できない。バインダーが少な過ぎると、成形がうまく出来なかったり、成形品の強度が低下したりする。
成形品のうち、シート材やボード材は、建材として使用することができる。建材が施工された壁や天井、床などに隣接する空間に存在する米質の改良を果たす。置物や日用品、その他の成形品も同様である。シート材で米を包めば、内部の米の品質を改良できる。
【0022】
シート材として、不織布や編織布、紙などに、米質改良材の粉体を担持させたり、塗工したりしておくこともできる。シート材の裏面に粘着層を設けておけば、米質改良材を設置する機器や装置などへの取付けが容易になる。
〔米質改良材やその製品の使用〕
本発明にかかる米質改良材やその製品の使用について、以下に説明する。
米質改良材やその製品を配置することで、米質を改良することができる。上述したが、木炭を予め帯電しておき、これを含む木炭改良材やその製品を用いるようにすると、米質改良効果が向上する。また、米質改良材やその製品を稲の生育環境内および/または米の保存環境内、特に、稲や米の近く、具体的には、例えば、稲や米の周囲1m以内、より好ましくは0.5m以内に配置すると、顕著な米質改良効果が発揮される。
【0023】
米質改良材やその製品の配置に関しては、前記したように、例えば、置物として露出した状態で配置したり、壁に埋め込んだり、埋設して地中に配置したりすることができる。
具体的には、例えば、図1に示す米質改良方法のように、米質改良材10を田んぼ20に埋設して、稲の生育環境を改善する方法が挙げられる。地中30に埋設した米質改良材10の上で稲を生育させている。米質改良材を包装袋などに充填して米質改良製品10として用いても良い。図中、31は埋め戻し土を表す。図2や図3に示す米質改良方法のように、米の保存環境を改善する方法も挙げられる。図2の方法では、米質改良材を包装袋などに充填して米質改良製品10とし、これを米びつ40の中に配置して、米質改良製品10の上で米50を保存することで、米質を簡易に改良することができる。図3の方法では、米50を保存するための米倉庫60について、米倉庫の壁の内層61と外層62の間や、床の上層63と下層64の間に、米質改良材を含むシート状またはボード状の米質改良製品10を埋め込んでいる。図示しないが、例えば、図2において、米質改良材を含むシート状またはボード状の米質改良製品10を、米びつ40の内部に埋め込んでおくこともできるし、図3において、米質改良材を包装袋などに充填してなる米質改良製品10を米倉庫60の中に配置したり、米倉庫60の下の地中に埋設したりしても良い。
【0024】
前記田んぼなどへの埋設の方法としては、特に限定されないが、例えば、以下のようにして行う。
地面を掘削して米質改良材やその製品を埋設するための穴を作る。掘削方法としては、特に限定されず、手掘りであっても良いし、機械を用いて行っても良い。穴の形状は、特に限定されず、例えば、円柱、直方体などの形状が挙げられる。穴の寸法については、用いる米質改良材の種類によっても異なるが、例えば、円柱状であれば、直径1.5〜2.0m、深さ1.5〜2.0m、直方体であれば、縦1.0〜2.0m、横1.0〜2.0m、深さ1.5〜2.0mの寸法とすることができる。
【0025】
掘削後、作成した穴に、米質改良材やその製品を入れる。米質改良材やその製品の投入量としては、用いる米質改良材やその製品の種類によっても異なるが、例えば、120〜200kgとすることができる。
木炭以外の材料も用いる場合には、各材料は次のようにして投入することが好ましい。すなわち、まず、コークス、フェライト、焼成無機物、石炭、黒鉛、人造黒鉛、炭素繊維などの材料について、木炭とともに予めニーダーなどで均一混合しておき、合成繊維や天然繊維で編織された布袋や、不織布からなる袋などに充填した状態で穴に投入し、次に、その上に、好ましくは水を投入した後、天然塩、水晶、ショールトルマリン、天照石、ブラックシリカ、アパタイトおよび麦飯石からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料を投入する。さらに、木酢液、竹酢液、EM菌などを投入すると、より一層本発明の効果が高まる。
【0026】
各材料を投入後、掘り返していた土を戻して、米質改良材やその製品の埋設が完了する。
このような埋設作業を複数個所にわたって行えば、より一層の米質改良効果が発揮される。
〔米質改良材やその製品の用途〕
本発明にかかる米質改良材やその製品は米質の改良に用いることができる。特に限定するわけではないが、例えば、稲の生育段階では、田んぼや米倉庫下の地中に埋設して、米の流通段階では、米の包装容器に材料として混入させて、さらに、米の保存段階では、米倉庫の壁や床へ埋入させたり、米びつを構成する箱自体に材料として混入させたり、あるいはまた、米倉庫や米びつ内の置物などとして配置したりすることによって、米質の改良に利用することができる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例によって本発明の米質改良材、米質改良製品および米質改良方法をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例における、米質の測定方法を以下に示す。
<米質の測定>
炊飯食味計STA1A(サタケ社製)を用いて、精米後の米の外観、硬さ、粘り、バランス、食味を測定した。
外観、粘り、バランスはそれぞれ10点満点で評価され、硬さは10点中、点が低いほど柔らかく、高いほど硬いという評価基準である。食味値は、それらの総合評価として100点満点で評価される。一般的な目安を以下に示す。
【0028】
外観、粘り、バランスについては、3.5点未満は悪い、3.5点以上5.0点未満はやや悪い、5.0点以上6.5点未満は普通、6.5点以上8.0点未満はやや良い、8.0点以上は良い。
硬さについては、3.5点未満は柔らかい、3.5点以上5.0点未満はやや柔らかい、5.0点以上6.5点未満は良い、6.5点以上8.0点未満はやや硬い、8.0点以上は硬い。
そして、食味値については、50点未満は悪い、50点以上60点未満はやや悪い、60点以上70点未満は普通、70点以上80点未満はやや良い、80点以上は良い。
【0029】
〔米質改良材〕
<米質改良材a>
平均粒径1.0mmの活性化木炭10重量%、平均粒径2.0mmのピッチコークス85重量%、平均粒径30μmのフライアッシュ5重量%をニーダーで混練して混合物を得た後、さらに、前記混合物70重量部に対して平均粒径100μmのフェライト30重量部を添加し、ニーダーで混練することにより、米質改良材aを得た。このとき用いた前記活性化木炭は、100Vの電圧をかけて生じさせた静電場の中に1昼夜放置することにより、帯電させておいたものを用いた。前記帯電は、活性化木炭中の電荷が外部へ伝導しないように、該活性化木炭を横幅2m、縦幅4m架台(架台は絶縁状態)の上に載せた状態で行った。電圧の強さは、100Vであった。
【0030】
<米質改良材b>
市販製品「マジカルタンソ」(商品名、日の丸カーボテクノ社製)である。平均粒径2.0mm、炭素率90%、硬度5.3kgのピッチコークス粒と、粒径2.0mm以下の粉末備長炭と、酸化鉄粉を含む。ピッチコークス粒:粉末備長炭:酸化鉄粉=7:3:0.2である。
<米質改良材c>
市場で入手できる市販の紀州備長炭を米質改良材cとした。
<米質改良材d>
平均粒径1.0mmの活性化木炭を米質改良材dとした。前記活性化木炭は、米質改良材aと同様の方法で、予め帯電させておいたものを用いた。
【0031】
<米質改良材e>
平均粒径1.0mmの活性化木炭95重量部と天照石5重量部をニーダーで混練することにより、米質改良材eを得た。前記活性化木炭は、米質改良材aと同様の方法で、予め帯電させておいたものを用いた。
〔試験例1〕
各米質改良材a〜eの性能を試験した。
具体的には、コシヒカリ(品種名)とキヌヒカリ(品種名)のブレンド米(徳島産)を、6月の田植えから10月の収穫まで、米質改良材aを田んぼに埋設した状態で栽培し、収穫後の米を精米して、その品質を後述の方法により評価した。米質改良材の埋設は、地面を掘削して、縦1.5m、横1.5m、深さ1.5mの穴を作り、そこへ前記米質改良材を120kg入れた後、掘り返していた土を戻す、という方法で行い、米質改良材の効果が田んぼ全体に均一に発揮されるように、1ha当たり2箇所埋設した。
【0032】
米質改良材b〜eについても同様の試験を行った。
結果を表1に示す。なお、表1では、比較のために、コシヒカリ(品種名)とキヌヒカリ(品種名)のブレンド米(徳島産)の精米についても、その外観、硬さ、粘り、バランス、食味の測定結果を示している。
【0033】
【表1】

【0034】
〔試験例2〕
米質改良材の性能について、その再現性を確認するために、同一品種(コシヒカリ)について、複数箇所で、同一の米質改良材aを用いて、米質を改良した後に、米の品質を後述の方法により評価した。
具体的には、愛知県A地区にて、米(品種名:コシヒカリ)を、6月の田植えから10月の収穫まで、田んぼに前記米質改良材aを埋設した状態で栽培し、収穫後の米を精米して、その米質を、後述の評価方法により評価した。米質改良材の埋設は、地面を掘削して、縦1.5m、横1.5m、深さ1.5mの穴を作り、そこへ前記米質改良材を120kg入れた後、掘り返していた土を戻す、という方法で行い、米質改良材の効果が田んぼ全体に均一に発揮されるように、1ha当たり2箇所埋設した。
【0035】
愛知県B地区、C地区、D地区でも同様の試験を行った。
結果を表2に示す。なお、表2では、比較のために、平成17年度で最も評価の高かった、新潟県魚沼産のコシヒカリの精米についても、その外観、硬さ、粘り、バランス、食味の測定結果を示している。
【0036】
【表2】

【0037】
〔評価〕
(1)表1から、いずれの米質改良材を用いた場合であっても、米質改良材を用いていない米より、全ての評価項目において優れた米を得ることができるということが分かる。特に、活性化木炭、ピッチコークス、フライアッシュ、フェライトを用いた米質改良材aの米質改良効果が顕著である。
(2)表2から、本発明の米質改良材が安定して米質改良効果を発揮するものであることが分かる。また、全ての試験例で、全ての評価項目が、比較として挙げた、平成17年度における最高水準の品質を有する魚沼産コシヒカリよりも上回っていることが分かる。このように、本発明によれば、米質改良材を米の近くに配置する、という簡易な方法によって、従来最高水準とされていた米よりも高い水準にまで、その米質を向上させることができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明にかかる米質改良材、米質改良製品および米質改良方法は、例えば、従来とは異なる手法によって米質を改良することのできる材料、製品、方法として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明にかかる米質改良方法を示す簡略図である。
【図2】本発明にかかる米質改良方法を示す簡略図である。
【図3】本発明にかかる米質改良方法を示す簡略図である。
【符号の説明】
【0040】
10 米質改良材、米質改良製品
20 田んぼ
30 地中
31 埋め戻し土
40 米びつ
50 米
60 米倉庫
61 壁の内層
62 壁の外層
63 床の上層
64 床の下層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木炭を必須とする、米質改良材。
【請求項2】
前記木炭が、木材チップを低温炭化させ、次いで、高温炭化させた後、水に接触させて活性化させることにより得られる活性化木炭である、請求項1に記載の米質改良材。
【請求項3】
ピッチコークスも含む、請求項1または2に記載の米質改良材。
【請求項4】
フェライトも含む、請求項1から3までのいずれかに記載の米質改良材
【請求項5】
焼成無機物も含む、請求項1から4までのいずれかに記載の米質改良材。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載の米質改良材を含む、米質改良製品。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれかに記載の米質改良材および/または米質改良製品を、稲の生育環境内および/または米の保存環境内に配置する、米質改良方法。
【請求項8】
前記配置が埋設である、請求項7に記載の米質改良方法。
【請求項9】
前記埋設が、地面に穿たれた穴の中に、前記米質改良材および/または米質改良製品と水を投入し、さらに、天然塩、水晶、ショールトルマリン、天照石、ブラックシリカ、アパタイトおよび麦飯石からなる群より選ばれる少なくとも1種を投入し、前記穴を埋め戻すことである、請求項8に記載の米質改良方法。
【請求項10】
前記埋設が、田んぼへの埋設である、請求項8または9に記載の米質改良方法。
【請求項11】
前記配置が、米びつの中に置くこと、および/または、米びつの内部に埋め込むことである、請求項7に記載の米質改良方法。
【請求項12】
前記配置が、米倉庫の中に置くこと、および/または、米倉庫の天井、床および壁の少なくとも1箇所に埋め込むことである、請求項7に記載の米質改良方法。
【請求項13】
前記米質改良材および/または米質改良製品に含まれる木炭を、予め帯電させておく、請求項7から12までのいずれかに記載の米質改良方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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