説明

米類の乳酸発酵食品およびその製造方法

【課題】ご飯を食べやすい形態でかつ新たな食感を有する食品として提供する。
【解決手段】米および/または米粉の加水加熱溶融物または加水溶融物を、糖類の添加条件下においてデンプン非分解性の植物性乳酸菌で発酵させることによって製造される、粒様食感を有する流動もしくは半流動状の乳酸発酵食品。
米および/または米粉を流動もしくは半流動状とした加水加熱溶融物または加水溶融物を調製し、得られる上記溶融物にデンプン非分解性の植物性乳酸菌を接種し、糖類の添加条件下で発酵させることを特徴とする、上記乳酸発酵食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な乳酸発酵食品の製造技術に関し、さらに具体的には、本発明は、米や米粉(米類)の加水加熱溶融物または加水溶融物をデンプン非分解性の植物性乳酸菌で発酵させることにより得ることができる、新たな食感を有する米類の発酵食品、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳酸発酵物を配合した米飯食品としては、脱脂粉乳等の食材の乳酸発酵物を炭水化物系加工食品に添加して生産されたバクテリオシンによりその保存性を高めるようにしたもの(特開2007−23号公報:特許文献1)、あるいは米糠等の材料を乳酸発酵させて生産したGABA含有発酵組成物を米類に添加して特色ある食品にしたもの(特開2006−271283号公報:特許文献2)が知られている。これらは、いずれも乳酸菌発酵物を保存剤あるいは栄養機能成分として添加した形態のもので、通常の米飯として利用されるものである。
【0003】
米飯を発酵させた食品としては、特殊なデンプン分解酵素を有する乳酸菌を使用して甘酒を製造する方法が知られている。特開2003−209号公報(特許文献3)には、乳酸菌を含む乳酸菌発酵液に米飯を添加してデンプンを糖化させた甘酒様飲料が開示されている。この発酵飲料は、デンプン分解性の乳酸菌を用いて米飯中のデンプンを分解・糖化して甘酒として利用されるものである。
【0004】
特開2004−222684号公報(特許文献4)には、生澱粉にタンパク質を加えた後乳酸菌などの微生物を複合させた発酵澱粉に多糖類、果汁液類等を加えた縣濁液を沸騰加熱処理した、ゼリー状澱粉発酵食品の製造方法が開示されている。この方法は、酵母、乳酸菌、酢酸菌等の微生物を用いて発酵させた澱粉の縣濁液を加熱処理してゼリー状の発酵食品とするものである。
【0005】
また、特開2003−125721号公報(特許文献5)には、米を乳酸菌で発酵させて得られる乳酸菌発酵米に、糖類あるいはグリコール類を配合した乳酸菌発酵米組成物が開示されている。この組成物は、未加熱の米を乳酸菌で発酵させて得られる乳酸菌発酵米に、水分散性等の改善を目的としてさらに糖類やグリコール類を配合したものである。
【0006】
乳酸菌を利用した他の食品としてはヨーグルトがあり、主に牛乳を原料として製造されている。また、最近では豆乳や野菜絞り汁を原料とした乳酸発酵飲料やデザートもある。いずれも乳、大豆アレルギーの人には摂取しがたいデザートである。
【0007】
上記のように、米飯に関連する従来の乳酸発酵食品は、いずれも他の食材の乳酸発酵物を米飯に添加する形態のものか、特殊なデンプン分解性の乳酸菌を用いた発酵食品であり、米類の加水加熱溶融物または加水溶融物をデンプン非分解性の乳酸菌で発酵させた食品はまだ知られていない。
【0008】
【特許文献1】特開2007−23号公報
【特許文献2】特開2006−271283号公報
【特許文献3】特開2003−209号公報
【特許文献4】特開2004−222684号公報
【特許文献5】特開2003−125721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
米は日本の重要な作物であり、炭水化物供給源である。植物性乳酸菌は、古来より日本人が漬け物用として好んで利用してきたものである。どちらも日本人の食生活に合った食品といえる。ところが、昨今ご飯の消費が減少傾向にあり、朝食の欠食率も高い。そこで、ご飯を食べやすい形態でかつ新たな食感を有する食品として提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明者等は、米や米粉の米類の処理方法について様々な条件で検討を行った結果、米や米粉を加水加熱溶融または加水溶融後、従来漬け物に用いられている植物性乳酸菌を用いて乳酸発酵させることにより、ざらざらした新たな食感を有する流動もしくは半流動状の発酵食品を得ることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の構成を要旨とする乳酸発酵食品およびその製造方法に関するものである。
(1)米および/または米粉の加水加熱溶融物または加水溶融物を、糖類の添加条件下においてデンプン非分解性の植物性乳酸菌で発酵させることによって製造されることを特徴とする、粒様食感を有する流動もしくは半流動状の乳酸発酵食品。
(2)上記植物性乳酸菌が、Lactobacillus属またはLeuconostoc属に属する乳酸菌から選択される、上記(1)に記載の乳酸発酵食品。
(3)上記植物性乳酸菌が抗アレルギー作用、抗炎症作用または体脂肪率抑制作用の機能性を有するLactobacillus属の菌株である、上記(1)に記載の乳酸発酵食品。
(4)米および/または米粉を流動もしくは半流動状とした加水加熱溶融物または加水溶融物を調製し、得られる上記溶融物にデンプン非分解性の植物性乳酸菌を接種し、糖類の添加条件下で発酵させることを特徴とする、流動もしくは半流動状の乳酸発酵食品の製造方法。
(5)上記植物性乳酸菌が、Lactobacillus属またはLeuconostoc属に属する乳酸菌から選択される、上記(4)に記載の方法。
(6)上記植物性乳酸菌が抗アレルギー作用、抗炎症作用または体脂肪率抑制作用の機能性を有するLactobacillus属の菌株である、上記(4)に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、米や米粉の加水加熱溶融物または加水溶融物を、デンプン非分解性の植物性乳酸菌を用いて乳酸発酵させることにより、ざらざらした新たな食感(粒様食感)を有する米類の飲用あるいは食用形態の発酵食品を提供することができる。
本発明の特徴および従来技術と異なる点は以下の通りである。
・本発明の発酵食品は、そのざらざらした食感が独特であって、米類の溶融およびデンプン非分解性の植物性乳酸菌での発酵により、通常の固形の米飯に乳酸発酵物を添加した加工食品(特許文献1、2)とは形態および食感においてが明らかに異なることはもちろん、デンプン分解性の乳酸菌で発酵させた甘酒様飲料(特許文献3)あるいは通常のおかゆと比較しても、特に、粘性がありながらさらさら感を有し、かつpHが低下しても適度な酸味を有するという点において食感および味感が大きく異なっており、そのためにもったり感(胃もたれ感)なしに腹持ちの良さを実感として付与することができる。
・本発明においては、水に溶出したデンプン、タンパク質を含む粘性液状物中に、溶出しないで米類原料中に残ったデンプンとタンパク質が粘性感の中に粒状食感を与える粒子として存在する発酵食品を形成するのに対して、特許文献4のように単なるデンプンを原料とした場合には、デンプン非分解性の乳酸菌を用いたとしても加水または加水加熱の段階で溶解して粒子が残らない。
・本発明は、タンパク質、ビタミン等の成分を含む米類を原料とし、さらに糖類を添加することにより、デンプンを分解する菌をあえて選抜する必要がない。仮に、本発明においてデンプン分解性の乳酸菌を用いても、デンプンおよびタンパク質の両者が分解されるために粒子が微少になって粒様食感はなく、また、過度の酸を生じてしまう。
・本発明は、原料が単なるデンプンではないので、米本来が持つ栄養分と添加される糖類だけで増殖する植物性乳酸菌(デンプン非分解性)であれば広い範囲で使用可能である。
・デンプン分解性の乳酸菌では、発酵によりpHが過度に低下して発酵物の酸味が強くなり過ぎるが、本発明において、デンプン非分解性の植物性乳酸菌の使用、あるいはさらに糖類の添加により、適度な酸味を生じるか酸味がマスキングされることが初めて判明した。
・デンプン非分解性の植物性乳酸菌として、抗アレルギー作用、抗炎症作用または体脂肪率抑制作用の機能性を有する乳酸菌株を使用することにより、生理機能が上昇して通常の食事の代わりとしてだけでなく健康に留意した食品を提供することができる。
本発明において、上記したような流動もしくは半流動状の発酵食品のざらざらした独特の食感と腹持ちの良さは、米や米粉の上記溶融物がデンプン非分解性の植物性乳酸菌により主としてタンパク質が部分的に分解され、水に一部のデンプン、タンパク質等が溶解した粘性液状物中に主として残りのデンプンとタンパク質で構成される米粒子によるものと推測され、このように本発明による流動もしくは半流動状の発酵食品が上記のような独特の粒様食感および腹持ちの良さを与えることは当業者にとって思いがけなかったことと解される。
【発明の具体的説明】
【0013】
本発明による流動もしくは半流動状の乳酸発酵食品は、前記(1)に記載されたような粒様食感を有する流動もしくは半流動状の乳酸発酵食品であり、代表的には、米および/または米粉の加水加熱溶融物を糖類の添加条件下においてデンプン非分解性の植物性乳酸菌で発酵させて得られるものである。このような発酵食品は、基本的には上記(4)に記載されたような本発明による製造方法により製造することができ、代表的には、米および/または米粉を加水加熱して流動もしくは半流動状の加水加熱溶融物を調製し、得られる加水加熱溶融物にデンプン非分解性の植物性乳酸菌を接種し、糖類の添加条件下で発酵させる方法により製造することができる。ここで、本発明による乳酸発酵食品の原料としての米は、未加熱のうるち米(白米、玄米、赤米、黒米等)、もち米等のいずれも単独または混合物で使用することができ、米粉はこれらの米を粉末にしたもので、混合物(白玉粉など)にしたものでもよい。また後述のように、原料として、すでに加水加熱処理によりα化された米飯、それを急速に乾燥したα化米(乾燥飯)あるいはさらに製粉化したα化米粉を使用することもできる。
【0014】
原料としての米および/または米粉の加水加熱溶融物とは、この原料を加水加熱して米デンプンがα化(湖化)した状態の流動状もしくは半流動状としたものであり、粘性を有する糊状のデンプン水溶液(一部タンパク質、ビタミン等が溶解)中に溶解せずに残ったデンプン、タンパク質等で形成される米粒子が存在する形態のものである。加水加熱溶融物の調製は、原料と適量の水を混合して全体が上記のように流動もしくは半流動の糊状になるまで加熱すればよい。原料と水の割合は、使用する原料の種類あるいは目的の発酵食品の形態等により異なりうるが、例えば、未処理の米粒を原料とした場合、通常原料1重量部に対して水2〜100重量部程度、好ましくは5〜20重量程度であり、加熱処理された米飯、乾燥飯を原料とした場合、通常原料1重量に対して水0.5〜20重量程度、好ましくは2.5〜10重量程度であり、また、米粉を原料とした場合、通常原料1重量に対して水2〜100重量程度、好ましくは5〜20重量程度である。加熱条件は、同様に原料の種類や目的の発酵食品の形態等により異なりうるが、例えば、未処理の米粒を原料とした場合、通常70〜100℃で10〜60分間程度、好ましくは20〜40分間程度であり、加熱処理された米飯、乾燥飯を原料とした場合、通常70〜100℃で1〜30分間程度、好ましくは1〜10分間程度であり、未処理の米粉を原料とした場合、通常70〜100℃で1〜30分間程度、好ましくは1〜10分間程度である。また、α化した米粉(例えば市販の寒梅粉、味甚粉、道明寺粉等)を原料とした場合は、通常70〜100℃で1〜30分間程度、好ましくは1〜10分間程度であるが、加熱なしでも原料が水に溶解して糊化するため、加熱により溶解・糊化を早める目的を除いては加熱工程を省略して本発明における上記加水溶融物とすることができる。また、米と米粉は別々に使用するのが一般的であるが、嗜好の食感等により必要があれば両者を適当な割合で混合して用いて溶融物を調製してもよい。上述のように、原料と水の割合は、発酵前の溶融物として全体が最終的に上記のような流動もしくは半流動の糊状になる条件で任意に設定することができる。
【0015】
上記のように調製された流動状もしくは半流動状の溶融物は、次いでデンプン非分解性の植物性乳酸菌を接種して発酵工程に付される。本発明において、デンプン非分解性の植物性乳酸菌とは、デンプンを全くもしくはほとんど分解する能力がなく、動物性乳酸菌と比べて栄養バランス等の悪い過酷な環境でも生存しうる植物由来の乳酸菌を意味するものであり、例えば、Lactobacillus属、Leuconostoc属、Pediococcus属に属する乳酸菌等が例示される。好ましい態様において、抗アレルギー作用、抗炎症作用または体脂肪率抑制作用の機能性を有する乳酸菌を使用することができる。本発明において使用できる乳酸菌の具体例としては、例えば、Lactobacillus属では、Lactobacillus plantarumLactobacillus fermentumLactobacillus brevis等があげられ、Leuconostoc属ではLeuconostoc mesenteroides等があげられ、一般に市販もされている。上記のような機能性を有する乳酸菌は、例えば特開2007−126365号公報、特開2007−077054号公報等の文献に記載されているLactobacillus plantarum No.14が例示される。この菌株は工業技術院微生物工業技術研究所(現在の独立行政法人産業技術総合研究所・特許生物寄託センター)に微工研菌寄第11550号(FERM P−11550、寄託日:平成2年6月22日)として寄託されている。
【0016】
上記溶融物の発酵は、通常、MRS培地等で前培養したデンプン非分解性の植物性乳酸菌を発酵に十分な量接種した後、使用される乳酸菌の培養条件で行うことができる。具体的には、例えば、上記溶融物に対して、前培養した上記植物性乳酸菌を10〜10個/g程度の量で接種した後、好気性条件下、20〜40℃程度、好ましくは25〜35℃程度で16〜96時間程度、好ましくは24〜72時間程度発酵を行う。本発明においては、デンプン非分解性の植物性乳酸菌は溶融液中あるいは米粒子中の遊離の糖やわずかなタンパク質あるいはビタミン等デンプン以外の成分しか利用(分解)しないため、資化できる栄養源を補足するために糖源を添加する。糖源の添加は、上記溶融物の調製時等の発酵工程前または発酵工程時(好ましくは発酵初期)でもよい。糖源としては、基本的には、糖類であってデンプン非分解性の植物性乳酸菌が利用しうるものであれば使用可能であり、例えば、砂糖(もしくはショ糖)、ブドウ糖、果糖、トレハロース、還元水飴等が例示される。糖源の添加量は乳酸菌が本発明における所期の発酵を行える量であれば特に制限はないが、通常加水加熱物に対して1〜20重量%程度、好ましくは8〜15重量%程度である。
【0017】
発酵工程終了の目安は、上記のように発酵時間を基準とすることができるが、発酵生成物の所望の性状等により幅があるため、pHの変化を基準にして例えばpH4.5〜3.0程度になった時点等を基準とすることもできる。また、別の観点より、本願においては前述のように、発酵生成物はさらさら感のある粘性を有し、またpHが低いにもかかわらず適度な酸味を有し、かつ粒様食感(ざらざら感)と、もったり感のない腹持ちの良さの官能感を付与することを特徴とするものであり、このような特徴を官能評価の基準にして発酵工程終了の目安としてもよい。
【0018】
上記のように発酵が終了した乳酸発酵生成物は、流動もしくは半流動様の形態で飲用または食用としてそのまま乳酸発酵食品とすることができる。また、所望により、発酵を終了した生成物に他の食材、例えば小豆、黒豆、緑豆等の煮豆をそのままあるいは適宜細片したもの、果汁としてレモン、グレープフルーツ、マスカット等、香料、食物繊維、ミネラル、ビタミン等の添加もしくは強化も可能である。さらに、上記の発酵生成物は、ゼラチン、寒天等の糊化剤を添加して所望の流動もしくは半流動のゼリー状形態に調製して飲用または食用の乳酸発酵食品することができる。
【0019】
上記のように製造された本発明の乳酸発酵食品は、米および/または米粉の加水加熱溶融物または加水溶融物がデンプン非分解性の植物性乳酸菌で発酵されたもので、ざらざらした独特の食感を有する流動もしくは半流動状の形態のものであり、そのまま食べるかあるいは飲むことができる腹持ちのよい食品である。上記の発酵食品はまた、デンプン非分解性の植物性乳酸菌として抗アレルギー作用、抗炎症作用または体脂肪率抑制作用の機能性を有する菌株を使用することにより、生理機能が上昇して通常の食事に代わりとしてだけでなく健康に留意した食品でもある。
【0020】
本明細書において、特に断りのない限り%表示は重量%を意味する。以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
上新粉を5%、砂糖を10%の濃度で水に分散または溶解し、80〜100℃で1〜10分間加熱した。この加熱物を30℃まで冷却した後に、デンプン非分解性の各種植物性乳酸菌の前培養物を、生理食塩水で2回洗浄してから加熱物に対して10〜10個/gの量でスターターとして添加し、30℃で2日間培養した。表1に結果を示すが、乳酸菌種によって発酵の程度は若干異なるものの、どれもpH4前半以下となった。味、香りは、漬け物臭のするものもあったが適度の酸味を有しており、漬け物臭はレモンフレーバーなどを添加することでマスキングできた。なお、本実施例および下記の実施例において、官能評価は5名のパネラーによるものである。
【実施例2】
【0022】
上新粉を5%、各種糖源を10%の濃度で、ただしステビアのみ0.05%の濃度で水に分散または溶解し、80〜100℃で1〜10分間加熱した。この加熱物を30℃まで冷却した後、前培養したLactobacillus plantarum No.14株を、生理食塩水で2回洗浄してから加熱物に対して10〜10個/gの量でスターターとして添加し、30℃で2日間培養した。表2に結果を示すが、ステビアは糖源とはならないので発酵しなかった。それ以外の糖源は添加した量(0〜10%)および甘味度と質によって多少異なる味となったが、実質的に表2に示されるような性状の目的の発酵生成物が得られた。基本的には、一般的に糖といわれる成分であれば問題なく使用可能である。糖を全く添加しない場合は、米粉中のわずかな遊離の糖によりわずかにpHが低下した程度であった。上新粉の濃度を1〜15%の範囲で変えたものでもほぼ同様の結果が得られた。
【実施例3】
【0023】
各種米原料として表3のような素材(未処理の玄米、赤米、黒米の粉砕品)、加水加熱(炊飯)した米飯、および対照としてデンプンのみを取り出したトウモロコシデンプンのコーンスターチ、じゃがいもデンプンの片栗粉を使用した。これらを各5%(米飯は10%)、砂糖を10%の濃度で水に分散または溶解し、未処理の粉砕品は80〜100℃で1〜10分間、米飯は80〜100℃で0.5〜5分間加熱した。この加熱物を30℃まで冷却した後、前培養したLactobacillus plantarum No.14株を、生理食塩水で2回洗浄してから加熱物に対して10〜10個/gの量でスターターとして添加し、30℃で2日間培養した。表3に結果を示すが、白玉粉とデンプンは粘性が高いので若干発酵が弱かった。しかし、さらに発酵を継続することでpHは低下した。ただし、デンプンについては目的とするざらざらした食感がなく、もの足りなかった。米飯の場合は、可溶化した上層部と米粒の残る下層部で異なる新鮮な食感であった。また、市販のα化米粉を使用して上記の条件で加水加熱した溶融物および加熱処理なしに加水溶融物を調製して発酵させた場合にも、同様の官能評価が得られた。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
米および/または米粉の加水加熱溶融物または加水溶融物を、糖類の添加条件下においてデンプン非分解性の植物性乳酸菌で発酵させることによって製造されることを特徴とする、粒様食感を有する流動もしくは半流動状の乳酸発酵食品。
【請求項2】
上記植物性乳酸菌が、Lactobacillus属またはLeuconostoc属に属する乳酸菌から選択される、請求項1に記載の乳酸発酵食品。
【請求項3】
上記植物性乳酸菌が抗アレルギー作用、抗炎症作用または体脂肪率抑制作用の機能性を有するLactobacillus属の菌株である、請求項1に記載の乳酸発酵食品。
【請求項4】
米および/または米粉を流動もしくは半流動状とした加水加熱溶融物または加水溶融物を調製し、得られる上記溶融物にデンプン非分解性の植物性乳酸菌を接種し、糖類の添加条件下で発酵させることを特徴とする、流動もしくは半流動状の乳酸発酵食品の製造方法。
【請求項5】
上記植物性乳酸菌が、Lactobacillus属またはLeuconostoc属に属する乳酸菌から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記植物性乳酸菌が抗アレルギー作用、抗炎症作用または体脂肪率抑制作用の機能性を有するLactobacillus属の菌株である、請求項4に記載の方法。

【公開番号】特開2009−131183(P2009−131183A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309207(P2007−309207)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(591104848)株式会社桃屋 (17)
【Fターム(参考)】